(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】本開示の一実施形態に係る印刷配線板を示す説明図である。
【
図2】(a)は
図1に示す印刷配線板に設けられたEBG構造の一実施形態を示す説明図であり、(b)はEBG構造に含まれる電源層パターンを示す説明図であり、(c)はEBG構造に含まれる容量結合素子を示す説明図である。
【
図3】本開示の電源電極を2層構造にすることによる小型化の原理説明のためのEBG単位セルに含まれる並列共振回路の等価回路図である。
【
図4】並列共振回路の共振周波数が電源層電極と容量結合素子との距離に依存することを示す電磁界シミュレーション結果のグラフである。
【
図5】透過特性の電磁界シミュレーション用の印刷配線板の一実施形態を示す説明図である。
【
図6】
図5の印刷配線板を用いた電磁界シミュレーション結果を示すグラフである。
【
図7】(a)はEBG構造の他の実施形態を示す説明図であり、(b)はEBG構造に含まれる電源層パターンを示す説明図であり、(c)はEBG構造に含まれる容量結合素子を示す説明図である。
【
図8】
図7(a)に示すEBG構造を構成しているEBG単位セルに含まれる共振回路部分の等価回路である。
【
図9】
図7(a)に示すEBG単位セル中の共振回路の共振周波数を求めるための電磁界シミュレーション結果を示すグラフである。
【
図10】(a)はEBG構造のさらに他の実施形態を示す説明図であり、(b)はEBG構造に含まれる電源層パターンを示す説明図であり、(c)はEBG構造に含まれる容量結合素子を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
一般に使用されているコンデンサでは、等価直列インダクタンス(ESL)の影響によって、数百MHz以上でノイズ抑制の効果を期待できない。1GHz以上の周波数でのノイズ伝搬抑制については、EBG構造を基板に設けることが有効とされている。しかし、実用化にはEBG構造の小型化が不可欠であり、小型化が容易なオープンスタブを使用したEBG構造が報告されている。このEBG構造では、電源層−グラウンド層間にビアを形成する必要があり、コスト面で不利となる。一方、電源層−グラウンド層間にビアが形成されていないEBG構造は、一般的に小型化しにくいという問題がある。
【0007】
本開示の印刷配線板に設けられているEBG構造は、電源層−グラウンド層間にビアが形成されていなくても、電源層に容量結合素子を付加して電源電極を2層構造とすることによって、より小型化を実現することができる。以下、本開示の印刷配線板について詳細に説明する。
【0008】
本開示の一実施形態に係る印刷配線板1は、
図1に示すように、電源層2とグラウンド層3とを含み、この電源層2は、その一部にEBG構造4を有している。電源層2とグラウンド層3の間は絶縁層9が設けられている。電源層2およびグラウンド層3は、例えば銅などの導電性材料を含むベタパターンで形成されている。電源層2の厚さは特に限定されず、例えば18〜70μm程度である。グラウンド層3の厚さも特に限定されず、例えば18〜70μm程度である。
【0009】
電源層2とグラウンド層3との間、電源層2の上面、およびグラウンド層3の下面には、絶縁層9が形成されている。絶縁層9は絶縁性を有する素材で形成されていれば特に限定されない。絶縁性を有する素材としては、例えば、エポキシ樹脂、ビスマレイミド−トリアジン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂などの有機樹脂などが挙げられる。これらの有機樹脂は2種以上を混合して用いてもよい。
【0010】
絶縁性を有する素材として有機樹脂を使用する場合、有機樹脂に補強材を配合して使用してもよい。補強材としては、例えば、ガラス繊維、ガラス不織布、アラミド不織布、アラミド繊維、ポリエステル繊維などの絶縁性布材が挙げられる。補強材は2種以上を併用してもよい。さらに、絶縁性を有する素材には、シリカ、硫酸バリウム、タルク、クレー、ガラス、炭酸カルシウム、酸化チタンなどの無機充填材が含まれていてもよい。
【0011】
EBG構造4は、EBG単位セル41をブランチに沿った方向に複数個、周期的に一次元配置して、または、これに直交する方向にも複数個、周期的に二次元配置して並べて形成される。
【0012】
以下、
図2(a)〜(c)に基づいて一実施形態に係るEBG構造4を説明する。
図2(a)に示す一実施形態に係るEBG構造4では、EBG単位セル41をブランチに沿った方向に3つ並べて配置しているが、使用形態に応じて適宜配置の変更は可能である。
【0013】
EBG単位セル41は、
図2(a)に示すように、電源層パターン42の上方に層間を設けて容量結合素子43が配置された構造を有する。このEBG単位セル41は、設計段階で印刷配線板1内に設置するため、ノイズ抑制部品と異なり印刷配線板作製後の実装コストが不要となる。EBG単位セル41の形状は特に限定されないが、配置した際に省スペースとなる略矩形状であるのがよい。
【0014】
電源層パターン42は、
図2(b)に示すように、隣接するEBG単位セル41間を、電源給電に必要な直流電流を流せる範囲でなるべく細いブランチ45で接続した構造を有している。このブランチ45とスリット46を隔てて端部で接続した電源層電極47が設けられている。さらに、電源層パターン42は容量結合素子43のビア44bと接続するビア44aを少なくとも1つ有する。ここで「端部」とは、EBG単位セル41において、スリット46を挟んでブランチ45と対向する電源層電極47の辺の端部、具体的には、ビア44aと反対側の端部(角)から辺の長さの約1/8までの位置のことを意味する。
【0015】
容量結合素子43は、
図2(c)に示すように、電源層パターン42のビア44aと接続するビア44bを少なくとも1つ有する。この容量結合素子43は電源層電極47の上方から重ねるように配置する。この容量結合素子43は、例えば銅などの導電性材料で形成されている。また、容量結合素子43は電源層パターン42と同じ導電性材料であってもよい。
【0016】
この電源層電極47と容量結合素子43とは、平行平板コンデンサを形成し、容量結合(結合容量Cs)を実現する。
【0017】
図2(a)に示すように、EBG単位セル41内においてブランチ45のインダクタンスLbと、前記結合容量Csとビア44のインダクタンスLvの直列回路により
図3で示す並列共振回路が形成される。この共振周波数が2.4GHzになるようにインダクタンスLbと結合容量Csを設計すると、2.4GHz付近の帯域に電磁波が伝搬しない阻止域を設定することができる。電源層電極47や容量結合素子43の形状や間隔をCsが増加するよう設計すると共振周波数を下げることができ、EBG構造4の小型化が実現できる。
【0018】
ブランチ45は、電源供給に必要な直流電流を流すためのものであり、EBG単位セル41内に配置されている。スリット46を介して、平行平板コンデンサを形成するための電源層電極47を配置する。この電源層電極47に、対向電極となる容量結合素子43を、層間を設けて設置する。電源層電極47と容量結合素子43との層間の厚さは25μm以下であってもよく、十分な結合容量Csを有するようにするため5〜20μmであってもよい。ブランチ45はEBG単位セル41の任意の場所に配置されてもよい。容量結合素子43が重ならないように配置されると、よりインダクタンスを大きくすることができる。
図4や
図6の電磁界シミュレーション結果が得られた時のブランチ45の幅やEBG単位セル41のサイズは、それぞれ0.25mm角および2.0mm角である。
【0019】
このように、本開示では、電源層電極47の上方に容量結合素子43を配置することにより平行平板コンデンサを形成し、容量結合を実現する。詳細に述べると、電源層電極47と容量結合素子43との層間に結合容量Csを持たせ、ブランチ45の端で電源層電極47と接続すると共に、ブランチ45のもう一方の端に設置されたビア44で容量結合素子43とを接続させ、ブランチ45で発生するインダクタンスLbとの間で並列共振回路をEBG単位セル41内に形成した。
【0020】
図3は、
図2(a)に示すEBG単位セル41に含まれる並列共振回路部分の等価回路である。このとき、Lbはブランチ45のインダクタンス成分を示す。また、Csは、電源層パターン42がスリット46で分割された電源層電極47と容量結合素子43の結合容量を示し、Lvは電源層パターン42からビア44(44a、44b)を介して容量結合素子43へ接続される経路のインダクタンス成分を示している。電源層電極47と容量結合素子43との層間の厚さにLvは依存するが、厚さが十分に薄ければ設計上無視してよい。精度を求める場合はLvの大きさを考慮して設計を行うこともできる。
【0021】
図2に示すものと同じEBG構造を有し、電源層電極と容量結合素子との層間厚の異なる3つのEBG構造(25μm厚、12μm厚および8μm厚)に含まれる並列共振回路の共振周波数を電磁界シミュレーションにより調べたグラフを
図4に示す。
図4によれば、25μm厚のEBG構造を用いた場合、共振周波数は3.45GHzであった。
【0022】
12μm厚および8μm厚ではそれぞれ2.4GHz、1.9GHzが共振周波数となり、薄くなるほど共振周波数が低周波側にシフトすることがわかる。これは、電源層電極と容量結合素子との層間の厚さを薄くするほどEBG構造を小型化できることを示している。
【0023】
図5は、透過特性のシミュレーション用の印刷配線板10の一実施形態を示す説明図である。この印刷配線板10において、ポート51,ポート52,53とは、EBG構造40で分断されている。EBG構造40は、EBG単位セル41を印刷配線板10の長手方向に3個、横断面方向に24個配置した構造を示している。印刷配線板10の長手方向はEBG単位セル41をブランチに沿った方向と同じである。EBG単位セル41は、上述の
図2(a)に示すものと同じ形状であり、電源層電極と容量結合素子との層間の厚さが12μmで、EBG単位セル41は2.0mm角で形成される。このとき、EBG構造40の幅は、長手方向が6.0mm、横断面方向が48.0mmである。印刷配線板10の厚さ方向のグラウンド層および絶縁層は省略している。
【0024】
印刷配線板10を用いた電磁界シミュレーションで、ポート51−ポート52およびポート51−ポート53間の透過特性をそれぞれ評価した結果を
図6に示す。太線はEBG構造40を設けた場合、細線はEBG構造40が無い(ベタ構造)場合(Reference)の透過特性を示している。さらに、図中のS21はポート51−ポート52間、S31はポート51−ポート53間を示している。
【0025】
図6から、EBG構造40を設けた場合、2.4GHz付近で透過量が20dB以上減少し、高周波の電磁ノイズを伝搬させない阻止域が形成されていることが分かる。この結果から、EBG単位セル内の電源層パターンや容量結合素子の形状を変えれば、更なる小型化、あるいは異なる周波数域に阻止域を形成することが可能であることがわかる。
【0026】
次に、
図7(a)〜(c)に基づいて他の実施形態に係るEBG構造4’を説明する。上述の一実施形態に係るEBG構造4と同一の部材については同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0027】
他の実施形態に係るEBG構造4’では、電源層パターン42’は、
図7(a)および(b)に示すように、隣接するEBG単位セル41間をブランチ45で接続し、このブランチ45とスリット46を隔てて端部以外で接続した電源層電極47を設けている。ここで「端部以外」とは、上述の「端部」以外の部分をいい、ビア44aと反対側の端部(角)から辺の長さの約1/8の位置からビア44a側の端部(角)までのことを意味する。EBG構造4’において、電源層電極47と容量結合素子43との層間厚は12μmである。
【0028】
図8は、
図7(a)に示すEBG単位セル41に含まれる並列共振回路部分の等価回路である。このとき、L
b/2はブランチ45のインダクタンス成分を示す。また、Csは、電源層パターン42’がスリット46で分割された電源層電極47と容量結合素子43の結合容量を示す。
図7(a)では、電源層パターン42’は、ブランチ45とスリット46を隔ててほぼ中央部で接続した電源層電極47を設けているため、インダクタンス成分はL
b/2である。接続位置によって、分母は異なる値を採る。
【0029】
図9は、
図7(a)に示すEBG構造4’中の並列共振回路の共振周波数を求めるための電磁界シミュレーション結果を示すグラフである。この共振解析結果から、EBG構造4’は、3.3GHz付近の帯域に電磁ノイズ伝搬を抑制する阻止域を設定できることがわかる。「端部」のグラフは、上述のEBG単位セル41(12μm厚)の結果を示す。
【0030】
本開示の印刷配線板によると、EBG構造体が電源層とグラウンドのビアを有しないにも関わらず、EBG構造体(EBG単位セル)の小型化が可能である。さらに、設計段階で、EBG構造を印刷配線板内に設置するため、印刷配線板作製後の実装コストが不要となる。
【0031】
また、
図7(a)に示すEBG構造4’のように、接続位置を変更するという比較的容易な設計変更で、適用する周波数を変更することができる。
【0032】
以上、本開示の印刷配線板を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、種々の改善や改良が可能である。
【0033】
ブランチはEBG単位セル内のどこに配置されてもよい。例えば、
図10に示すさらに他の実施形態に係るEBG構造4’’では、ブランチ45’がEBG単位セル41の略中央部に配置されている。上述の一実施形態に係るEBG構造4と同一の部材については同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。