(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
給水源から供給された湯水を吐水する第一吐水部材と、該第一吐水部材とは異なる位置に配置されて前記湯水を吐水する第二吐水部材と、前記給水源と接続されて前記湯水を前記第一吐水部材または前記第二吐水部材に供給する流路切替部材と、前記第一吐水部材と前記流路切替部材とを接続する第一接続管と、前記給水源と前記流路切替部材とを接続する給水管と、を備えた吐水装置であって、
前記流路切替部材が、壁面に固定されて前記給水管および前記第一接続管と接続される基部と、該基部を内挿して基部と連通すると共に使用者により操作される流路切替部と、前記流路切替部材と前記基部との間に設けられるパッキンと、を備え、
前記基部の外周面から突出する突起が、前記壁面より露出する前記基部の前端部に形成され、
前記流路切替部の内周面から突出し前記突起と係合する係合突起が、前記流路切替部の後方に形成され、
前記流路切替部の係合突起と前記基部の突起とのいずれか一方が、前記流路切替部あるいは前記基部の外周全周に形成され、
前記いずれか一方の突起において、他方の突起を通過させる突起通過溝が形成されており、
前記突起と前記係合突起とが、前記流路切替部材と前記基部によって前記パッキンが押し付けられる位置である所定の使用位置において前記流路切替部を前記基部に対して回転させることで、前記流路切替部を前記基部に対して脱落することを防止することを特徴とする吐水装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<1.第1実施形態>
図1乃至
図6に基づいて、本発明の第1実施形態である吐水装置100について説明する。
図1は本発明の第1実施形態である吐水装置の構成を示す概略構成図であり、
図2は
図1の流路切替部材の斜視断面図であり、
図3は
図1の流路切替部材を壁面に取り付けた状態の側面断面図であり、
図4は
図3の状態から切替弁を動かしてオーバーヘッドシャワーと給水源とを連通させた状態の側面断面図であり、
図5は本発明の第1実施形態における流路切替部材の背面斜視図および基部の斜視図であり、
図6は本発明の第1実施形態における流路切替部材の基部への組立の概要図である。
【0015】
<1.1.吐水装置の構成>
本発明の第1実施形態である吐水装置100は、主に浴室に設置されるものである。
図1に示すように、吐水装置100は、給水源Sから供給された湯水Hを吐水する第一吐水部材であるオーバーヘッドシャワー110と、このオーバーヘッドシャワー110とは異なる位置に配置されて湯水Hを吐水する第二吐水部材であるハンドシャワー120とを備えている。
さらに、吐水装置100は、給水源Sと接続されて湯水Hをオーバーヘッドシャワー110またはハンドシャワー120に供給する流路切替部材130を備えている。
また、給水源Sは開閉機能を有しており、下流側(すなわち吐水装置100)への湯水Hの供給を制御することができる。
【0016】
次に、吐水装置100のおおよその流路構成について説明する。
給水源S、オーバーヘッドシャワー110、ハンドシャワー120、流路切替部材130は、配管140によってそれぞれ接続されている。
具体的には、オーバーヘッドシャワー110と流路切替部材130とは第一接続管141で接続されており、ハンドシャワー120と流路切替部材130とは第二接続管142で接続されており、給水源Sと流路切替部材130とは給水管143で接続されている。
【0017】
<1.2.流路切替部材の構造>
次に、
図2乃至
図4に基づいて、流路切替部材130の構造について詳説する。
【0018】
流路切替部材130は、概ね円柱状の部材であり、壁面Wに固定される基部Bと、基部Bを内挿して基部Bと連通すると共に使用者により操作される流路切替部Cとから構成されている。
【0019】
<1.2.1.基部の構造>
まず、
図2および
図3に基づいて、基部Bの構造について説明する。
基部Bは、壁面Wの裏側に取り付けられる円盤状の配管接続基材131と、この配管接続基材131に嵌挿される環状パッキンP1と、壁面Wより露出し概ね円環状の壁固定部材132とを備えている。
【0020】
配管接続基材131は、壁面Wへ固定した際に壁面Wの裏側と接触する円盤状のフランジ部131aと、このフランジ部131aから背面(壁面Wの裏側方向)に突出する概ねT字状の流路部131bと、フランジ部131aの中央から前面(壁面Wの表側方向)に向けて突出する円筒状の壁面挿入部131cと、この壁面挿入部131cの先端から前面に更に突出する突出部131dとを備えている。
【0021】
フランジ部131aには雌ねじの形成された被締結孔131eが複数形成されている。
流路部131bには、第一接続管141と連通する流出孔131fが水平方向に2つ形成されており(
図2参照)、これら2つの流出孔131fは対向する位置に配置されている。
さらに、流路部131bには、給水源Sから延びる給水管143と連通する流入孔131gが鉛直方向に形成されている。
壁面挿入部131cは、壁面Wに形成された開口Whの内径とほぼ等しい外径(開口Whと壁面挿入部131cとが嵌合できる程度)を有しており、開口Whに挿入される。
突出部131dは、前述のように壁面挿入部131cの先端から前面に突出しており、壁面Wよりも前方に突出している。
【0022】
環状パッキンP1は、壁固定部材132と壁面Wとの間を密閉するものであり、その内径は壁面Wの開口Whの直径より大きい。
【0023】
壁固定部材132は概ね円環柱状の部材であり、その内径は配管接続基材131の突出部131dの外径とほぼ等しく(壁固定部材132と配管接続基材131の突出部131dとが嵌合できる程度)なっている。
【0024】
また壁固定部材132の開口両端にはそれぞれ円形のフランジ(前端フランジ132a、後端フランジ132b)が形成されている。
前端フランジ(突起)132aは壁固定部材132の外周面から突出しており、後端フランジ132bよりも直径が小さい。
また、前端フランジ132aの外周端には雄ネジが形成されている。
【0025】
後端フランジ132bは、基部Bを壁面Wに取り付けた際に環状パッキンP1と当接する。
また、後端フランジ132bには締結ボルトBO(
図5参照)を貫通する貫通孔132cが複数形成されている。
【0026】
ここで、上述のように構成された基部Bを壁面Wへ固定手順を説明する。
まず、配管接続基材131の壁面挿入部131cおよび突出部131dを壁面Wに予め形成しておいた開口Whに壁面Wの裏側から挿入する。
そして、壁面Wの表側から、配管接続基材131の突出部131dに環状パッキンP1および壁固定部材132を、この順番で嵌挿する。
そして、締結ボルトBOを貫通孔132cに通して、配管接続基材131のフランジ部131aに形成された被締結孔131eに螺合させる。
締結ボルトBOを被締結孔131eに締結させることで、壁面Wが基部Bで挟持されるため、基部Bが壁面Wに固定される。
【0027】
<1.2.2.流路切替部の構造>
続いて、流路切替部Cの構造について説明する。
流路切替部Cは、壁面Wの表側に取り付けられる概ね円柱状の切替本体部材133と、切替本体部材133の前方(壁面Wの表側)に配置される操作ハンドル134とから形成されている。
【0028】
切替本体部材133は、後端側(後方)に形成された概ね円盤状のフランジ部133aが壁固定部材132と結合することで壁面Wに固定される。
フランジ部133aの後端側には円柱状の開口が形成されており、フランジ部133aの内周面からこの開口に向けて突出する係合部(係合突起)133bがフランジ部133aの後端側に形成された開口の全周にわたって形成されている。
この係合部133bには雌ネジが設けられており、前述の壁固定部材132の前端フランジ132aの外周端に形成された雄ネジと螺合する。
【0029】
なお、切替本体部材133と壁固定部材132との間からの漏水を防ぐために、切替本体部材133と壁固定部材132との間には環状パッキンP2が挟み込まれている。
【0030】
また、切替本体部材133の長手方向の中心には切替本体部材133を貫通する開口空間CSが形成されており、この開口空間CS内には様々な機能部品が収容される。
さらに、この開口空間CSは、切替本体部材133の後端から長手方向中央付近まで延びる仕切り壁133cにより概ね二重構造となっている。
すなわち、開口空間CSは、切替本体部材133の前端から長手方向中央付近までは概ね円柱状の空間CS1と、切替本体部材133の長手方向中央付近から後端までは切替本体部材133と仕切り壁133cにより外周空間CS2および内周空間CS3とからなる二重構造の空間と、で形成されている。
【0031】
概ね円柱状の空間CS1は、更に、切替本体部材133の底面側から上方に延びるハンドシャワー連通孔133dと連通している。
ハンドシャワー連通孔133dは、ハンドシャワー120に接続される第二接続管142と連通している。
【0032】
内周空間CS3は、更に、仕切り壁133cに形成され切替本体部材133の底面側から上方に延びる通気孔133eと連通している。
この通気孔133eには、空気流入弁(水密破壊用逆止弁)135および空気流入弁抑え136が設けられている。
また、内周空間CS3の後端部には流路切替部材130の下流側へ供給される流量を絞る流量絞り部材である逆止弁137および逆止弁抑え138が設けられている。
【0033】
次に操作ハンドル134について説明する。
操作ハンドル134は、使用者が把持するハンドル本体134aと、ハンドル本体134aに取り付けられた円柱状の軸134bと、この軸134bに取付られて切替本体部材133と係合して切替本体部材133の長手方向を密閉する封止部材134cと、軸134bの先端に取り付けられて仕切り壁133cの前端側の弁座133f(
図4参照)と当接する概ね円環状の切替弁134dとを備えている。
さらに、軸134bの封止部材134cと切替弁134dとの間には、切替弁付勢機構である付勢バネ134eが挿入されている。
【0034】
切替弁134dは、弁座133fだけでなく、封止部材134cの後端に設けられた弁座134fにも当接する。
すなわち、切替弁134dは、操作ハンドル134の切替に応じて、切替本体部材133の弁座133fと封止部材134cの弁座134fとの間を移動する。
【0035】
<1.2.3.流路切替部材の流路構成>
続いて、流路切替部材130の流路について、
図3および
図4を用いて説明する。
まず、内周空間CS3と配管接続基材131の流出孔131fとを連通し、第一接続管141と連通する流路を第一内部流路L1とする。
また、空間CS1と切替本体部材133のハンドシャワー連通孔133dとを連通し、第二接続管142と連通する流路を第二内部流路L2とする。
また、切替本体部材133の外周空間CS2と配管接続基材131の流入孔131gとを連通し、給水管143と連通する流路を供給流路L3とする。
【0036】
このように構成された流路切替部材130の流路において、
図4のように、操作ハンドル134を操作して切替弁134dを弁座133fから離間させて弁座134fと当接させることで、供給流路L3と第一内部流路L1とが接続され、供給流路L3から第一接続管141に渡る第一流路が形成される。
また、
図3のように、操作ハンドル134を操作して切替弁134dを弁座134fから離間させて弁座133fに当接させることで、供給流路L3と第二内部流路L2とが接続され、供給流路L3から第二接続管142に渡る第二流路が形成される。
【0037】
<1.3.切替本体部材の壁固定部材への固定手順>
続いて、
図2、
図3、
図5および
図6を用いて切替本体部材133の壁固定部材132への固定手順について説明する。
図5に示すように、壁固定部材132により配管接続基材131が壁面Wに固定された状態(すなわち、基部Bが壁面Wに固定された状態)で、壁固定部材132の前端フランジ132aに切替本体部材133のフランジ部133aを外挿する。
そして、壁固定部材132の前端フランジ132aの外周端に形成された雄ネジと切替本体部材133のフランジ部133aにおける係合部133bの外周端に形成された雌ネジとを螺合させて、切替本体部材133のフランジ部133aを螺進させる。
【0038】
切替本体部材133のフランジ部133aが壁固定部材132の前端フランジ132aに形成されたネジ長さだけ螺入されると、切替本体部材133の係合部133bが壁固定部材132の前端フランジ132aと後端フランジ132bとの間の任意の位置に配置される。
なお、切替本体部材133を壁固定部材132から取り外すときは、壁固定部材132の前端フランジ132aの外周端に形成された雄ネジと切替本体部材133のフランジ部133aにおける係合部133bの外周端に形成された雌ネジとを螺合させた後、取り付け時と逆方向に切替本体部材133を螺進させればよい。
このようにすることで、流路切替部Cと基部Bとの間に流路切替部Cの着脱構造が形成される。
【0039】
そして、切替本体部材133の係合部133bが壁固定部材132の前端フランジ132aと後端フランジ132bとの間の任意の位置に配置されているときは、壁固定部材132の前端フランジ132aの外周端に形成された雄ネジと切替本体部材133のフランジ部133aにおける係合部133bの外周端に形成された雌ネジとを螺合させた後、切替本体部材133を取り付け時と逆方向に螺進させなければ、切替本体部材133を壁固定部材132から取り外すことができない。
したがって、切替本体部材133のフランジ部133aにおける係合部133bの外周端に形成された雌ネジと壁固定部材132の前端フランジ132aに形成された雄ネジとが切替本体部材133の脱落防止構造となり、重量物である切替本体部材133が床に落下することを防ぐことができる。
【0040】
次に、切替本体部材133と壁固定部材132との間の環状パッキンP2が十分に密封性能を発揮する程度に切替本体部材133を環状パッキンP2に押し付けると共に
図3等で示すような位置、換言するとハンドシャワー連通孔133dが鉛直下向きに伸びる位置に切替本体部材133を配置する(この位置を本実施形態において「使用位置」という)。
この状態で、
図6に示すように、フランジ部133aの正面視側方から止めネジ139(
図2参照)を挿入して、止めネジ139と壁固定部材132とを当接させる。
これにより、止めネジ139は流路切替部Cを使用位置で基部Bに固定する回転規制部材として機能する。
また、止めネジ139によって、切替本体部材133が使用位置に固定された状態では、切替本体部材133の係合部133b(すなわち、流路切替部Cの突起)と壁固定部材132の前端フランジ132a(すなわち、基部Bの係合突起)とが、流路切替部Cの基部Bへの挿入方向(流路切替部材130の長手方向)で対向する。
【0041】
<1.4.動作>
続いて、このように構成された吐水装置100の動作について説明する。
<1.4.1.止水時>
まず、給水源Sから湯水Hが供給されない止水時について説明する。
このとき、切替弁134dには、付勢バネ134eの付勢力と、切替弁134dと逆止弁137との間の湯水の水圧とが作用する。
ここで、付勢バネ134eの付勢力が切替弁134dと逆止弁137との間の湯水の水圧より大きくなるように設定されている。
したがって、止水時においては、
図3のように切替弁134dは弁座133fに当接し、第一流路中の水が第二流路に流れることがない。
【0042】
<1.4.2.ハンドシャワーからの吐水>
次に、給水源Sから湯水Hが供給されている状態において、使用者が操作ハンドル134を操作しない場合について説明する。
このとき、切替弁134dには、付勢バネ134eの付勢力および第二内部流路L2内の水圧と、切替弁134dと逆止弁137との間の湯水の水圧とが作用する。
したがって、給水源Sから湯水が供給されている状態において、使用者が操作ハンドル134を操作しない場合でも、切替弁134dは弁座133fに当接し、供給流路L3と第二内部流路L2とが接続される。
よって、供給流路L3から第二接続管142に渡る第二流路が形成され、ハンドシャワー120から吐水がされる。
このとき、切替弁134dが弁座133fに当接しているので、第一流路中の湯水が第二流路に流れることはない。
【0043】
<1.4.3.オーバーヘッドシャワーからの吐水>
次に、給水源Sから湯水Hが供給されている状態において、使用者が操作ハンドル134を引いた場合について説明する。
このとき、使用者の操作力により、切替弁134dが切替本体部材133の弁座133fから離間し、封止部材134cの弁座134fと当接する。
そして、この状態で使用者が操作ハンドル134から手を離すと、切替弁134dには、付勢バネ134eの付勢力と、第一流路中の水圧とが作用する。
ここで、付勢バネ134eの付勢力が、第一流路中の水圧より大きくなるように設定されている。
したがって、給水源Sから湯水Hが供給されている状態において、使用者が操作ハンドル134を操作引くと、切替弁134dは封止部材134cの弁座134fに当接し、供給流路L3と第一内部流路L1とが接続される。
よって、供給流路L3から第一接続管141に渡る第一流路が形成され、オーバーヘッドシャワー110から吐水がされる。
【0044】
<1.5.作用効果>
このようにして得られた本発明の第1実施形態である吐水装置100は、流路切替部Cと基部Bとを着脱する着脱構造と流路切替部Cの基部Bからの脱落を防ぐ脱落防止構造とが、基部Bと流路切替部Cとの間に形成されていることにより、流路切替部Cと基部Bとを着脱自在にしつつも、流路切替部Cの基部Bからの脱落を防いでいるため、流路切替部Cの基部Bへの装着が不完全であっても、流路切替部Cが基部Bから落下する可能性を低減することができる。
【0045】
また、突起である前端フランジ132aと係合突起である係合部133bとが、所定の使用位置で流路切替部Cの基部Bへの挿入方向で対向することにより、使用位置で流路切替部材130を基部Bへの挿入方向と反対の取外方向に移動させると前端フランジ132aと係合部133bとが当接するため、流路切替部Cを使用位置では基部Bから取り外せなくなり、流路切替部Cの基部Bからの脱落を防ぐことができる。
【0046】
さらに、流路切替部Cの係合部133bが、基部Bの前端フランジ132aに向かって突出し、流路切替部Cの係合部133bと基部Bの前端フランジ132aとが、流路切替部Cを基部Bに取り付ける際に螺合することにより、挿入位置でも螺進させないと流路切替部Cを基部Bから取り外せないため、挿入位置であっても流路切替部Cが基部Bから簡単に脱落することを抑制することができる。
【0047】
また、流路切替部材130が、流路切替部Cを所要の使用位置で固定する回転規制部材である止めネジ139を備えていることにより、流路切替部Cが使用位置で固定されて流路切替部Cの基部Bに対する回転が抑制されるため、第二吐水部材がハンドシャワー120であっても、流路切替部Cが基部Bから脱落する可能性を抑制することができる。
【0048】
<2.第二実施形態>
続いて、
図7および
図8により、本発明の第2実施形態である吐水装置200について説明する。
図7は、本発明の第2実施形態における流路切替部材を壁面に取り付けた状態の側面断面図であり、
図8は本発明の第2実施形態における流路切替部材の背面斜視図および基部の斜視図である。
【0049】
<2.1.構成>
第2実施形態の吐水装置200は、第1実施形態の吐水装置100の流路切替部材130の壁固定部材132および切替本体部材133の構造を変更したものであり、多くの要素について第1実施形態の吐水装置100と共通するので、共通する事項については詳しい説明を省略し、下2桁が共通する200番台の符号を付すのみとする。
【0050】
まず、壁固定部材232について説明する。
壁固定部材232には、開口両端にはそれぞれ円形のフランジ(前端フランジ232a、後端フランジ232b)が形成されている。
前端フランジ(突起)232aは壁固定部材232の外周面から突出しており、後端フランジ232bよりも直径が小さい。
これにより、流路切替部Cを基部Bに取り付けた際に、後端フランジ232bは後述する切替本体部材233と当接する。
【0051】
前端フランジ232aの下端には正面視で矩形の突起通過溝232dが形成されており、突起通過溝232dは前端フランジ232aを貫通している。
なお、突起通過溝232dの位置は前端フランジ232aに形成されていれば、下端以外の場所であってもよい。
【0052】
後端フランジ232bは、基部Bを壁面Wに取り付けた際に環状パッキンP1と当接する。
また、後端フランジ232bには締結ボルトBO(
図8では図示されない)を貫通する貫通孔232cが複数形成されている。
【0053】
次いで切替本体部材233について説明するが、多くの要素について第1実施形態の切替本体部材133と共通するので、共通する事項については詳しい説明を省略する。
切替本体部材233は、後端側(後方)に形成された概ね円盤状のフランジ部233aが壁固定部材232と結合することで壁面Wに固定される。
フランジ部233aの後端側には円柱状の開口が形成されており、フランジ部233aの内周面からこの開口に向けて突出する係合部(係合突起)233bが形成されている。
【0054】
係合部233bは、切替本体部材233の正面視中央より上方の頂部に形成されており、ハンドシャワー連通孔233dとは切替本体部材233の長手方向の中心軸に対して対向している。
係合部233bの幅(正面視左右方向の長さ)は、壁固定部材232の突起通過溝232dの幅(正面視左右方向の長さ)よりも小さく形成されている。
すなわち、切替本体部材233の係合部233bは、壁固定部材232の突起通過溝232dを通過自在である。
なお、本実施形態においては、係合部233bは1つのみであるが、複数個存在してもよい。
さらに、係合部233bの位置は、本実施形態の位置が最も好ましいが、フランジ部233aの内周面から突出していれば、如何なる位置であってもよい。
【0055】
また、本実施形態においては、壁固定部材232の突起(前端フランジ232a)が壁固定部材232(すなわち、基部B)の外周全周に形成されると共にこの突起上に切替本体部材233の係合突起(係合部233b)の通過する突起通過溝232dが形成されている。
しかしながら、切替本体部材233の係合突起(係合部233b)が切替本体部材233(すなわち、流路切替部C)の外周全周に形成されると共にこの係合突起上に壁固定部材232の突起(前端フランジ232a)が通過する突起通過溝を形成してもよい。
【0056】
<2.2.切替本体部材の壁固定部材への固定手順>
続いて、
図7および
図8を用いて切替本体部材233の壁固定部材232への固定手順について説明する。
図8に示すように、壁固定部材232が壁面Wに固定された状態(すなわち、基部Bが壁面Wに固定された状態)で、切替本体部材233の係合部233bが壁固定部材232の前端フランジ232aにおける突起通過溝232dを通過できる位置(以下、「挿入位置」という。)に切替本体部材233を配置する。
本実施形態における「挿入位置」とは、切替本体部材233のハンドシャワー連通孔233dに挿入された円筒状のホース継手234gが鉛直上向きを成す位置、換言すると係合部233bが切替本体部材233の下端に位置する位置を意味する。
【0057】
切替本体部材233を挿入位置に配置することで、切替本体部材233の係合部233bが壁固定部材232の前端フランジ232aにおける突起通過溝232dを通過できるため、切替本体部材233を壁固定部材232に挿入及び抜去することができる。
したがって、切替本体部材233の係合部233bおよび壁固定部材232の突起通過溝232dによって、流路切替部Cと基部Bとの間に流路切替部Cの着脱構造が形成される。
【0058】
切替本体部材233を壁固定部材232に挿入した後、使用位置まで切替本体部材233を回転させる。
本実施形態における「使用位置」とは、
図7で示すような切替本体部材233の位置、換言するとホース継手234gを鉛直下向きに伸びる位置を意味する。
すなわち、挿入位置は、使用位置と前記流路切替部材の長手方向の中心軸に対して対向している。
【0059】
使用位置まで切替本体部材233を回転させることで、切替本体部材233の係合部233bが壁固定部材232の前端フランジ232aと後端フランジ232bとの間の任意の位置に配置され、切替本体部材233を挿入位置まで回転させなければ、切替本体部材233が壁固定部材232から脱落しない。
したがって、切替本体部材233のフランジ部233aにおける係合部233bと壁固定部材232の前端フランジ232aが切替本体部材233の脱落防止構造となり、重量物である切替本体部材233が床に落下することを防ぐことができる。
【0060】
次に、切替本体部材233と壁固定部材232との間の環状パッキンP2が十分に密封性能を発揮する程度に、切替本体部材233を環状パッキンP2に押し付ける。
この状態で、フランジ部233aの正面視側方から止めネジを挿入して、止めネジと壁固定部材232とを当接させる。
これにより、止めネジ239は流路切替部Cを所要の使用位置で基部Bに固定する回転規制部材として機能する。
【0061】
<2.3.作用効果>
このようにして得られた本発明の第2実施形態である吐水装置200は、流路切替部Cと基部Bとを着脱する着脱構造と流路切替部Cの基部Bからの脱落を防ぐ脱落防止構造とが、基部Bと流路切替部Cとの間に形成されていることにより、流路切替部Cと基部Bとを着脱自在にしつつも、流路切替部Cの基部Bからの脱落を防いでいるため、流路切替部Cの基部Bへの装着が不完全であっても、流路切替部Cが基部Bから落下する可能性を低減することができる。
【0062】
また、突起である前端フランジ232aと係合突起である係合部233bとが、所定の使用位置で流路切替部Cの基部Bへの挿入方向で対向することにより、使用位置で流路切替部材230を基部Bへの挿入方向と反対の取外方向に移動させると前端フランジ232aと係合部233bとが当接するため、流路切替部Cを使用位置では基部Bから取り外せなくなり、流路切替部Cの基部Bからの脱落を防ぐことができる。
【0063】
また、流路切替部Cの係合部233bと基部Bの前端フランジ232aとのいずれか一方が、流路切替部Cあるいは基部Bの外周全周に形成され、前端フランジ232aにおいて、挿入位置で他方の突起を通過させる突起通過溝232dが形成されていることにより、挿入位置では流路切替部Cを基部Bに挿入することができると共に挿入位置以外では流路切替部Cを基部Bに挿入できなくなる、すなわち流路切替部Cを基部Bから取り外せなくなるため、流路切替部Cを挿入位置に移動させないと基部Bから取り外せなくなり、流路切替部Cの基部Bからの脱落を防ぐことができる。
【0064】
さらに、挿入位置と使用位置とが、流路切替部材230の長手方向の中心軸に対して対向していることにより、挿入位置が使用位置と離れているため、仮に止めネジ239による流路切替部材230の固定が解除されたとしても、流路切替部Cが基部Bから脱落する可能性を減らすことができる。
【0065】
また、流路切替部材230が、流路切替部Cを使用位置で固定する回転規制部材である止めネジ239を備えていることにより、流路切替部Cが使用位置で固定されて流路切替部Cの基部Bに対する回転が抑制されるため、第二吐水部材がハンドシャワー220であっても、流路切替部Cが基部Bから脱落する可能性を抑制することができる。
【0066】
<3.変形例>
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明は上記に限定されるものではない。
【0067】
例えば、本発明を実施するための形態では、吐水装置がオーバーヘッドシャワーとハンドシャワーとを備えていたが、更にカランを備えるものであってもよい。
【0068】
また、第一吐水部材であるオーバーヘッドシャワーは、壁面に固定されており、かつ、使用者の頭上に湯水を降り注がせるものであれば、如何なるものであってもよく、浴室の天井に取り付けられて使用者に向かって吐水するものであってもよいし、浴室の立壁面から突出して使用者の頭上に向かって吐水するものであってもよい。
【0069】
また、第二吐水部材であるハンドシャワーは、使用者が把持して使用するものであれば、形状や吐水形態は如何なるものであってもよい。
【0070】
また、前述した実施形態が備える各要素は技術的に可能である限り組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。