(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6611102
(24)【登録日】2019年11月8日
(45)【発行日】2019年11月27日
(54)【発明の名称】連棟式雪室
(51)【国際特許分類】
A01F 25/00 20060101AFI20191118BHJP
F25D 3/00 20060101ALI20191118BHJP
F25D 23/06 20060101ALI20191118BHJP
A23B 7/04 20060101ALI20191118BHJP
A23L 3/36 20060101ALI20191118BHJP
【FI】
A01F25/00 A
F25D3/00 Z
F25D23/06 X
F25D23/06 T
A23B7/04
A23L3/36 Z
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-153867(P2018-153867)
(22)【出願日】2018年8月20日
【審査請求日】2019年7月26日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516131201
【氏名又は名称】株式会社中村建設ナカフサ
(74)【代理人】
【識別番号】100105692
【弁理士】
【氏名又は名称】明田 莞
(74)【代理人】
【識別番号】100161252
【弁理士】
【氏名又は名称】明田 佳久
(72)【発明者】
【氏名】中村 肇
【審査官】
庭月野 恭
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−059666(JP,A)
【文献】
特開平09−074893(JP,A)
【文献】
特開平08−047332(JP,A)
【文献】
特開平07−091787(JP,A)
【文献】
特開平06−194024(JP,A)
【文献】
特開昭62−252871(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 3/00
F25D 23/06
A01F 25/00
A23B 7/04
A23L 3/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単数又は複数個の野菜を貯蔵する貯蔵室を設けたドライコンテナと、該ドライコンテナの両長辺側を挟み込むように連設し、かつ雪を貯蔵するための複数個のリファーコンテナと、からなり、前記各コンテナの扉を前面に揃えて開口面を設けたコンテナ群と、
該コンテナ群の外周側面部及び天井部を覆った内側断熱層と、
該内側断熱層の外周側面部と天井部を覆った外側断熱層と、
該外側断熱層の外周側面部と天井部を覆った外周保護部と、
該内側断熱層と該外側断熱層の間であって、前記コンテナ群の前記開口面以外の外周側面部と天井部とを連通した空気層と、
前記外周側面部の空気層の下部の地中に布設され、該空気層と連通した排水樋と、
該排水樋の流末に設けた排水桝と、
前記リファーコンテナに設けた排水孔と、
前記リファーコンテナ内に貯蔵した前記雪が溶けてできた雪解水を、該排水孔から前記排水樋に排水するための排水パイプと、
前記ドライコンテナと該ドライコンテナの前記長辺で隣接する前記リファーコンテナとを連結して冷気を通気させる通気パイプと、
を、少なくとも備え、
前記空気層が、空気を対流させるために、天井部で、少なくとも一つの外周側面で前記外側断熱層と前記外周保護部を貫通して外部に開口部で連通していることを特徴とする連棟式雪室。
【請求項2】
単数又は複数個の野菜を貯蔵する貯蔵室を設けたドライコンテナと、該ドライコンテナの両長辺側を挟み込むように連設し、雪を貯蔵するための複数個のリファーコンテナと、からなり、前記各コンテナの扉を1面に揃えて開口面を設けたコンテナ群2個を、該開口面側の反対面が互いに接するように設けたコンテナ大群と、
該コンテナ大群の外周側面部及び天井部を覆った内側断熱層と、
該内側断熱層の外周側面部と天井部を覆った外側断熱層と、
該外側断熱層の外周側面部と天井部を覆った外周保護部と、
該内側断熱層と該外側断熱層の間であって、前記コンテナ大群の前記開口面以外の外周側面部と天井部とを連通した空気層と、
前記外周側面部の空気層の下部の地中に布設され、該空気層と連通した排水樋と、
該排水樋の流末に設けた排水桝と、
前記リファーコンテナに設けた排水孔と、
前記リファーコンテナ内に貯蔵した前記雪が溶けてできた雪解水を、該排水孔から前記排水樋に排水するための排水パイプと、
前記ドライコンテナと該ドライコンテナの前記長辺で隣接する前記リファーコンテナとを連結して冷気を通気させる通気パイプと、
を、少なくとも備え、
前記空気層が、空気を対流させるために、天井部で、少なくとも一つの外周側面で前記外側断熱層と前記外周保護部を貫通して外部に開口部で連通していることを特徴とする連棟式雪室。
【請求項3】
前記リファーコンテナが、電気冷蔵装置および電気冷凍装置が取外されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の連棟式雪室。
【請求項4】
前記空気層の前記開口部が、前記開口面に設けられたことを特徴とする請求項1又は2又は3に記載の連棟式雪室。
【請求項5】
前記コンテナ群と、前記内側断熱層と、前記外側断熱層の下部の地表に地表部断熱層を布設したことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の連棟式雪室。
【請求項6】
前記内側断熱層及び前記外側断熱層の熱伝導率(W/m・k)が0.022以下であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の連棟式雪室。
【請求項7】
前記外周保護部が、アルミ薄膜で構成されていることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の連棟式雪室。
【請求項8】
前記ドライコンテナおよび前記リファーコンテナのサイズが40フィートコンテナであることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の連棟式雪室。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却装置や冷凍装置を用いずに、コンテナに貯蔵した雪のみで1年間野菜の鮮度を保って冷蔵保存することができる連棟式雪室に関するものである。
【背景技術】
【0002】
豪雪地帯では、雪を堆く盛り上げ雪の中にうめたり、土中に埋めて雪で覆ったりして、野菜等の食物を保存する方法が一般的に行われていた。このように野菜等を0℃近くで、湿度も90%以上で、日光の届かない場所で保存されるので、乾燥もせずに、甘味や旨味が増すなど保存状態が非常に良かった。
【0003】
そこで、従来、積雪を利用して野菜や穀物を冷蔵して貯蔵する施設の発明がなされ、例えば、地盤を掘り下げて、貯蔵庫を設け、貯蔵庫の周囲に集めた大量の雪とその雪の表面を覆った断熱シートからなる雪中貯蔵施設の先行技術が開示されている(参考文献1)。
【0004】
また、穀物等を貯蔵する貯蔵室と、雪を集積して収容する雪室から溶けた水を収容する氷水室に配設された冷気管を設け、送風機で貯蔵室内の空気を吸引して、冷気管を介して空気を冷却し、その空気を貯蔵室に循環させて貯蔵室の低温状態を維持させる穀物等の保存保湿貯蔵方法とその倉庫の先行技術が開示されている(参考文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】平2−127306号公報
【特許文献2】特開平8−47332号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の先行技術は、大量の雪によって、長期に亘り野菜の保存状況を良好に維持できる点で優れているが、大量の雪が必要であるので、豪雪地帯でないと使用できないという問題があった。
【0007】
また、特許文献2の先行技術は、送風機を使って、冷気を巡回させ、貯蔵室の湿度や温度を一定に保てる点で優れているが、長期に亘る保存期間中、送風機を稼動させなければならないので、電気代がかさむという問題と共に、停電や電気機械の故障によって送風できなくなると保存状態が悪くなって、貯蔵物の品質が保てなくなるおそれがあった。
【0008】
本発明は、これらの問題を解決したものであって、雪室の二重構造の断熱材と、その間の空気層の作用によって、雪を利用するが大量の積雪や電気設備を必要とせず、また、設置も簡単で容易な連棟式雪室を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本願発明の請求項1に係る連棟式雪室は、単数又は複数個の野菜を貯蔵する貯蔵室を設けたドライコンテナと、該ドライコンテナの両長辺側を挟み込むように連設し、かつ雪を貯蔵するための複数個のリファーコンテナと、からなり、前記各コンテナの扉を前面に揃えて開口面を設けたコンテナ群と、該コンテナ群の外周側面部及び天井部を覆った内側断熱層と、該内側断熱層の外周側面部と天井部を覆った外側断熱層と、該外側断熱層の外周側面部と天井部を覆った外周保護部と、該内側断熱層と
該外側断熱層の間であって、前記コンテナ群の前記開口面以外の外周側面部と天井部とを連通した空気層と、前記外周側面部の空気層の下部の地中に布設され、該空気層と連通した排水樋と、該排水樋の流末に設けた
排水桝と、前記リファーコンテナに設けた排水孔と、前記リファーコンテナ内に貯蔵した前記雪が溶けてできた雪解水を、該排水孔から前記排水樋に排水するための排水パイプと、前記ドライコンテナと該ドライコンテナの前記長辺で隣接する前記リファーコンテナとを連結して冷気を通気させる通気パイプと、を、少なくとも備え、前記空気層が、空気を対流させるために、天井部で、少なくとも一つの外周側面で前記外側断熱層と前記外周保護部を貫通して外部に開口部で連通していることを特徴とする。
【0010】
また、本願発明の請求項2に係る連棟式雪室は、単数又は複数個の野菜を貯蔵する貯蔵室を設けたドライコンテナと、該ドライコンテナの両長辺側を挟み込むように連設し、雪を貯蔵するための複数個のリファーコンテナと、からなり、前記各コンテナの扉を1面に揃えて開口面を設けたコンテナ群2個を、該開口面側の反対面が互いに接するように設けたコンテナ大群と、該コンテナ大群の外周側面部及び天井部を覆った内側断熱層と、該内側断熱層の外周側面部と天井部を覆った外側断熱層と、該外側断熱層の外周側面部と天井部を覆った外周保護部と、
該内側断熱層と
該外側断熱層の間であって、前記コンテナ大群の前記開口面以外の外周側面部と天井部とを連通した空気層と、前記外周側面部の空気層の下部の地中に布設され、該空気層と連通した排水樋と、該排水樋の流末に設けた
排水桝と、前記リファーコンテナに設けた排水孔と、前記リファーコンテナ内に貯蔵した前記雪が溶けてできた雪解水を、該排水孔から前記排水樋に排水するための排水パイプと、前記ドライコンテナと該ドライコンテナの前記長辺で隣接する前記リファーコンテナとを連結して冷気を通気させる通気パイプと、を、少なくとも備え、前記空気層が、空気を対流させるために、天井部で、少なくとも一つの外周側面で前記外側断熱層と前記外周保護部を貫通して外部に開口部で連通していることを特徴とする。
【0011】
これらの構成を採用することにより、本願発明に係る請求項1の連棟式雪室は、野菜等を貯蔵するドライコンテナの両長辺側に、雪を貯蔵したリファーコンテナ(コンテナ内の温度を一定に保つために壁に断熱材が挟み込まれているコンテナ)を隣り合わせに挟みこんで、扉のある面を揃えたコンテナ群として設置している。なお、ドライコンテナを2つ用いる場合は、各コンテナの長辺が接するようにして、リファーコンテナ、ドライコンテナ、リファーコンテナ、ドライコンテナ、リファーコンテナの順に配置する。また、請求項2の連棟式雪室は、前記コンテナ群を2つ合わせたものであって、コンテナ群と反扉側の面同士を隣り合わせてコンテナ大群として設けている。即ち、コンテナ大群は、扉が反対を向いた表裏の面に設けられている。
【0012】
また、隣合うリファーコンテナとドライコンテナを単数又は複数の通気パイプで連通した構成にしており、リファーコンテナ内に貯蔵された雪や雪解水によって冷却された湿気を有する冷気を、ドライコンテナ内に循環させることができる。よって、ドライコンテナ内の温度を1〜4℃に、また湿度を90%以上に保つことができるので、野菜等の鮮度を1年間維持することができると共に、低温状態によって、野菜等のでんぷんが、糖に分解されて、甘くなり旨くすることができる。
【0013】
また、リファーコンテナ内部に貯蔵された雪が解けた雪解水は、リファーコンテナの底部に設けられた単数又は複数個の排水孔から、それに対応した排水パイプを通って空気層の下部に布設された排水樋へと排水され、さらに排水樋の下流に設けた排水桝に流れていく。この雪解水は、非常に少量ずつであるので、排水樋の底部を流れて排水すると共に、底部以外の空間を直通する排水桝から進入した空気を冷却して空気層に通気させることができる。
【0014】
また、ドライコンテナとリファーコンテナとからなるコンテナ群の外周側面全体と天井を囲うように、内側断熱層と、その外側に外側断熱層と、を設け、その2つの断熱層の間に空気層を設け、さらに外側断熱層の外周側面全体と天井部を覆うように外周保護部を設けている。この構造によって、それぞれの断熱層と空気層によって、直射日光や外気温によって暖められた外周保護部の熱が、コンテナ内部へと伝導するのを防止できる。また、空気層の空気は、暖められると対流により開口部から連棟式雪室の外部に放出され、そして、放出された空気の代わりに、排水桝から入ってきた空気が、リファーコンテナからの雪解け水が流れている排水樋を通過することによって冷却されながら、該空気層に入ってくる。よって、空気層内の空気の温度が上昇することを防止し、0〜4℃の温度を維持することができる。ここで、一般的には、断熱層に、熱伝導率の低い断熱材を使用しても、長い時間経過と共に徐々に内部に熱が伝導してしまい、そのままではコンテナが温められてしまう。しかしながら、本発明では、内側断熱層と外側断熱層との間に設けられた空気層によって、外部からの熱の伝導を断熱することができると共に、その空気層自体が雪解水によって低温で維持されているので、外周保護部からの高温が、外側断熱層から内側断熱層に伝導することを完全に防止する。よって、電気冷蔵設備や電気冷凍設備がなくとも、リファーコンテナ内の雪が解けるのを非常に遅くすることができる。したがって、本発明の連棟式雪室を用いれば、冬場にリファーコンテナ内に積雪を充填させ貯蔵しておけば、一年間その貯蔵された雪が解けずに残り、リファーコンテナに連通しているドライコンテナ内に保存した野菜等の鮮度を保ち続けることができる。
【0015】
本発明に係る請求項3の連棟式雪室は、請求項1又は2に記載の連棟式雪室において、前記リファーコンテナが、電気冷蔵装置および電気冷凍装置が取外されていることを特徴とする。また、本発明に係る請求項4の連棟式雪室は、請求項1又は2又は3に記載の連棟式雪室において、前記空気層の前記
開口部が、
前記開口面
に設けられたことを特徴とする。また、本発明に係る請求項5の連棟式雪室は、請求項1から4に記載の連棟式雪室において、前記コンテナ
群と、前記内側断熱層と、前記外側断熱層の下部の地表に地表部断熱層を布設したことを特徴とする。また、本発明に係る請求項6の連棟式雪室は、請求項1から5に記載の連棟式雪室において、前記内側断熱層及び前記外側断熱層の熱伝導率(W/m・k)が0.022以下であることを特徴とする。また、本発明に係る請求項7の連棟式雪室は、請求項1から6に記載の連棟式雪室において、前記外周保護部が、アルミ薄膜で構成されていることを特徴とする。また、本発明に係る請求項8の連棟式雪室は、請求項1から7に記載の連棟式雪室において、前記ドライコンテナおよび前記リファーコンテナのサイズが40フィートコンテナであることを特徴とする。
【0016】
本発明に係る連棟式雪室は、電気冷蔵装置や電気冷凍設備を必要としないので、冷蔵状態を維持するのに電気が不要である。したがって、本発明に係る連棟式雪室を用いれば、電気代が不要で、雪室の設置費用と積雪を搬入する手間代だけですむので、非常に安価で経済的である。
【0017】
また、本発明に係る連棟式雪室は、空気層の開口部が、扉(開口面)側に設けられているので、排水樋から上昇してきた空気が淀むことなく効率よく流すことができる。よって、空気層の空気を効率よく冷却することができるので、連棟式雪室の温度上昇を、確実に防止することができる。また、本発明に係る連棟式雪室は、地表にも地表部断熱層を設けているので地中からの熱が、ドライコンテナやリファーコンテナに伝導することを妨げることができる。また、本発明に係る連棟式雪室は、熱伝導率が0.022(W/m・k)以下の非常に小さな断熱素材を使用しているので、断熱効果が高く、リファーコンテナおよびドライコンテナの温度上昇を効率よく妨げることができる。具体的に、本発明の断熱層に用いる素材としては、例えば、ポリスチレンフォーム(伝導率0.022(W/m・k))やポリウレタンフォーム断熱材(伝導率0.021(W/m・k))やフェノールフォーム断熱材(伝導率0.022(W/m・k))などがある。また、本発明に係る連棟式雪室は、外周保護部が、アルミ薄膜で構成されているので、直射日光を反射して、断熱層の温度が上昇するのを軽減させることができる。
【0018】
また、本発明に係る連棟式雪室は、汎用性があり、また、貯蔵容量の大きいコンテナを使用しているので、設置費用を抑えると共に、大量の野菜を保存することができて、野菜等の冷却保存対象物の冷却に要する維持費用を抑制することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る請求項1から8に記載の連棟式雪室によれば、リファーコンテナに貯蔵できるだけの積雪があればよい。また、一年に一度、積雪をコンテナ内に搬入できれば、一年間、ドライコンテナ内の温度を1〜4℃に、また湿度を90%以上に保つことができる。よって、少量の積雪があればよいので、豪雪地帯でなくとも設置して使用することができ、設置場所の汎用性が高い。また、電気が不要であるので、維持費が非常に安くし、また、停電や電気設備の故障による貯蔵物の劣化の心配もない。また、設置面積が小さいので設置場所も選ばない。また、野菜等をが低温で保存するので、保存した野菜のでんぷんが糖に分解されて、甘く、旨くすることができる。前述したように、天然資源(雪)の活用で、電気エネルギ(冷凍、冷蔵を含む)を必要としない省エネルギを実施できる。また、冷凍機能が壊れた中古のリファーコンテナが活用できるなど省資源に秀でた連棟式雪室である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施するための形態に係る連棟式雪室の模式的斜視図である。
【
図2】本発明の実施するための形態に係る連棟式雪室であって、
図1における模式的A−A矢視断面図(正面図)である。
【
図3】本発明の実施するための形態に係る連棟式雪室であって、
図1における模式的B−B矢視断面図(平面図)である。
【
図4】本発明の実施するための形態に係る連棟式雪室であって、C−C矢視断面図(平面図)である。
【
図5】本発明の実施するための形態に係る連棟式雪室であって、別のパターンの模式的断面図(平面図)である。
【
図6】発明の実施するための形態に係る連棟式雪室であって、
図3における模式的D−D矢視拡大断面図(正面図)である。
【
図7】発明の実施するための形態に係る連棟式雪室であって、
図3における模式的E−E矢視断面図(側面図)である。
【
図8】本発明の実施するための形態に係る連棟式雪室の空気の流れを示す模式的斜視図である。
【
図9】本発明の実施するための形態に係る連棟式雪室の排水樋部の詳細を示す模式的断面図である。
【
図10】本発明の実施するための形態に係る連棟式雪室における4月から11月までのグラフであって、ドライコンテナ内の温度(野菜入庫時以外は1〜4℃)と外気温(4〜37℃)を示している。
【
図11】本発明の実施するための形態に係る連棟式雪室における8月3日から6日までのグラフであって、ドライコンテナ内の温度(ほぼ4℃)と外気温(22〜36℃)を示している。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に係る本連棟式雪室1は、
図2、
図3に示すように、野菜100を保管するドライコンテナ2と、該ドライコンテナ2の長辺側を挟み込むように設置され、雪110を貯蔵するための2つのリファーコンテナ3と、該リファーコンテナ3内の冷気と湿気をドライコンテナ2に通気させるための複数個の通気パイプ4と、を備えたコンテナ群5と、そのコンテナ群5の天井部と外周側面部とを覆った内側断熱層11、12と、その内側断熱層11、12の天井部と外周側面部とを覆った外側断熱層13、14と、内側断熱層11、12と外側断熱層13、14との間に設けた空気層15、16と、側面部の空気層16の下部の位置に布設している排水樋21と、リファーコンテナ3内に貯蔵された雪110が解けてできた雪解水120をリファーコンテナ3の排水孔3−3から排水樋21に流す排水パイプ22と、その排水樋21の流末に設けた排水
桝23と、から少なくとも構成されている。なお、コンテナ群5は、
図5に示すように、2つのコンテナ群5を、扉側を表側に配置して、合わせて、コンテナ大群6にすることもできる。
【0022】
ドライコンテナ2は、内部の貯蔵室100に野菜等を貯蔵している。ドライコンテナ2の長辺に並んで設けられたリファーコンテナ3から、複数個の通気パイプ4が連通していて、その通気パイプ4を通って貯蔵室100に湿気を有する冷気が入ってきて、ドライコンテナ内の貯蔵室100の温度を1〜4℃に、湿度を90%以上の状態を維持させる。これによって、例えば、ドライコンテナ2内の貯蔵室100に貯蔵された野菜は、鮮度を保つだけでなく、湿気によって野菜が乾燥しないので目減りするのを防止し、また、長時間の冷蔵によって熟成されて甘味や旨味が増す。なお、コンテナサイズは、40ftコンテナ(長さ外寸12,192mm、幅外寸2,438mm)を使用するのが貯蔵量が多く効率がよいが、20ftコンテナ(長さ外寸6,058mm、幅外寸2,438mm)を使用してもよい。また、コンテナ2の高さはハイキューブ(高さ外寸2,896mm)のものが、リファーコンテナ3の高さ外寸と同じとなるので、断熱層11の設置がし易くなって好適である。
【0023】
また、リファーコンテナ3は、コンテナの壁の厚さが断熱材によって厚くなっており、断熱効果が高く、底には脚部3−2がついていて、コンテナの床面が地盤よりも高くなっている。リファーコンテナ3の所定の位置に排水をするための排水孔3−3が複数個設けてあり、各排水孔3−3は、それらに対応する各排水パイプ22を通じて排水樋21につながっている。よって、リファーコンテナ3に貯蔵されている雪110が解けてできた雪解水120は、この排水孔3−3から、排水パイプ22を通って、排水樋21に流下していく。また、本発明に用いるリファーコンテナ3は、コンテナ群5の周囲に設けられた断熱層11,12,13,14と空気層15,16の断熱効果によって、コンテナ3の周囲から温められることがない。よって、リファーコンテナ3の温度を維持するのに冷蔵装置や冷凍装置の必要がないので、取り外すことができる。よって、冷却用の電気が一切不要であるので、電気代が掛からず経済的である。また、停電や電気設備の故障のリスクもないので安心である。
【0024】
また、内側断熱層11、12は、材質が、例えば、ポリスチレンフォーム断熱材やポリウレタンフォーム断熱材やフェノールフォーム断熱材などであって、熱伝導率が0.022(W/m・k)以下の断熱素材を使用しているので、外部から熱が伝わるのを防ぐ断熱効果が高く、リファーコンテナ3およびドライコンテナ2の温度上昇を効率よく妨げることができる。なお、内側断熱層の厚さとしては、300mmぐらいが、断熱効果があって、かつ、材料費、設置費用が安くて好適である。
【0025】
また、外側断熱層13,14は、材質が、例えば、ポリスチレンフォーム断熱材やポリウレタンフォーム断熱材やフェノールフォーム断熱材などであって、熱伝導率が0.022(W/m・k)以下の断熱素材を使用しているので、外周保護部17が太陽からの輻射によって暖められた熱が伝導するのを妨げる断熱効果が高く、リファーコンテナ3およびドライコンテナ2の温度上昇を効率よく防ぐことができる。なお、外側断熱層の厚さとしては、50mmぐらいが、断熱効果があって、かつ、材料費及び設置費用が安くて好適である。
【0026】
また、空気層15,16は、厚さが約20mmであって、その中の空気によって、外側断熱層内側まで伝導してきた熱を、内側の内側断熱層に伝導することを防ぐ。ここで、空気層15、15−1、16、16−1の中を空気は、排水桝23から自然な空気の流れによって吸込まれ、排水樋21を通って、側面部の空気層16に至り、そこから天井部の空気層15に流れて、コンテナ群5の扉部の上部に設けられた連通部の空気層15−1を通って外部に流出する。この際に、空気が、排水樋21を通過する際に雪解水120に接して冷却されつづけるので、空気層15,16内の空気は常に低温状態になる。よって、外側断熱層13,14から伝わる熱を空気層15,16の空気が奪って、外部に放出するので、内側断熱層11,12に熱が伝わることを確実に防止できる。なお、側面部空気層16は、図のように、側面毎に分離しても良いし、隣り合う側面部空気層16同士が、繋がっていても良い。
【0027】
また、外周保護部17は、紫外線、風、雨、埃等によって外側断熱層13,14が劣化するのを防止する。例えば、アルミ薄膜(膜厚10〜100μm)などを用いるのが、耐久性があって、しかも太陽光を反射することもできるので、好適である。
【0028】
また、排水樋21は、リファーコンテナ3内の雪110が解けてできる雪解水120が排水孔3−3から排水パイプ22を通って流れていき、排水桝23に流下する。なお、排水流量はわずかであるので、底面×側面が150×120mmの塩ビ樋で十分であり、底面にわずかに流れるぐらいである。よって、この排水問1の断面で雪解水120以外のところを空気が流入していくことができる。なお、排水樋21は、
図3の連棟式雪室1の場合は、空気層16の下面に接する深さで、排水桝23から排水桝23まで、コの字型に布設されている。また、
図5の連棟式雪室1の場合は、両側面の空気層16の一番奥から手前の排水桝23に向かって、布設されている。
【0029】
また、排水桝23は、連棟式雪室1の外部の位置に設けられている。排水桝23は、一辺が240mm以上大きさであれば、塩ビ製でもコンクリート製でもよい。
【0030】
次に、本発明に係る連棟式雪室1の設置方法の一例を示す。コンテナ2,3と、断熱層12,14、18と、排水樋21と、排水桝23と、を設置する場所に所定の深さに掘削して、床均しをする。そして、コンテナ2,3の長辺の位置と排水樋21の位置に、均しコンクリート(図示しない)を所定の厚さで打設する。そして、地表部断熱層18として厚さ150mmの断熱材を敷き、コンテナ2,3の四隅の位置で、その断熱材を所定の大きさにくり貫いて、コンテナ2,3の高さを合わせために、そのくり貫いた箇所にコンクリートを所定の高さまで打設する。そして、ドライコンテナ2とリファーコンテナ3とをクレーンで所定の位置に設置する。そして、均しコンクリート上の所定の位置に排水樋21を布設して、流末に排水桝23を設置する。そして、ドライコンテナ2とリファーコンテナ3の側面及び天井に内側断熱層11,12として、厚さ300mmの断熱材を貼り付け、スペーサーの役割を果たす厚さ20mmの断熱材の小片を介して、厚さ50mmの断熱材をその外部に外側断熱層13,14として貼り付けて固定する。この隙間が空気層15,16となる。そして外側断熱層13,14の外部に外周保護部17としてアルミ薄膜を貼り付ける。次いで、連棟式雪室1の周囲を所定の高さまで埋め戻して連棟式雪室1は完成する。なお、使用する断熱材は、全てポリウレタンフォーム製の熱伝導率が0.022(W/m・k)である。
【0031】
また、本発明に係る連棟式雪室1の使用方法の一例を示す。3月に、両リファーコンテナ3内に雪110を詰込めるだけ詰込む。次に、ドライコンテナ2に、所定の時期に収穫された野菜(例えば、ジャガイモ、たまねぎ、かぼちゃ、にんじん等)を収納する。そして、少なくとも2月間熟成させ、その後、必要に応じて、ドライコンテナ2から野菜を搬出して出荷又は利用する。そして、翌年の3月に、残った残雪を除去した後に、再度積雪をリファーコンテナ3に詰め込んで、上記と同様にして繰り返し利用する。
【0032】
本発明に係る連棟式雪室1を使用すれば、ドライコンテナ2内の野菜(例えば、ジャガイモ)は、
図10及び
図11に示すように(上側の折れ線グラフが兵庫県豊岡市の外気温を、下側の折れ線グラフが本発明に係る連棟式雪室1の貯蔵室100の室温を、それぞれ示している。)、一年を通じて、また、昼夜関係なく、1〜4℃の低温で、かつ湿度90%以上の状態を維持される。よって、野菜の鮮度が落ちず、また、野菜の甘味や旨味が増して、野菜の付加価値が上がる。また、貯蔵された野菜が乾燥しないので、重量が目減りしない。よって、野菜100の出荷トン数が変わらない。また、冷蔵用の電気代が不要なので、維持費が安いし、停電や電気設備の故障のリスクもない。また、2つのリファーコンテナ3に詰めるだけの雪110の量があればよいので、豪雪地帯でなくとも設置し、使用できる。また、設置スペースの小さいので、どこにでも設置可能である。
【産業上の利用可能性】
【0033】
雪や氷を用いた貯蔵施設として広く利用することができる。
【符号の説明】
【0034】
1:連棟式雪室
2:ドライコンテナ(野菜等貯蔵コンテナ) 2−1:ドライコンテナ扉
3:リファーコンテナ(雪貯蔵コンテナ)
3−1:リファーコンテナ扉 3−2:脚部 3−3:排水孔
4:通気パイプ
5:コンテナ群
6:コンテナ大群
11:内側断熱層(天井部)
12:内側断熱層(側面部) 12−1:内側断熱層(扉部)
13:外側断熱層(天井部)
14:外側断熱層(側面部) 14−1:外側断熱層(扉部)
15:空気層(天井部) 15−1:空気層(開口部)
16:空気層(側面部) 16−1:空気層(排水樋接続部)
17:外周保護部
18:地表部断熱層
21:排水樋 22:排水パイプ 23:排水桝
100:(野菜等)貯蔵室 110:雪 120:雪解水
130:地表
【要約】
【課題】二重構造の断熱材と、その間の空気層の作用によって、大量の積雪や電気設備を必要とせず、また、設置手間も掛からない連棟式雪室を提供する。
【解決手段】野菜を貯蔵するドライコンテナと、雪を貯蔵するリファーコンテナと、からなるコンテナ群と、該コンテナ群の外周を覆った内側断熱層と、該内側断熱層を覆った外側断熱層と、該外側断熱層を覆った外周保護部と、該内側断熱層と外側断熱層の間の空気層と、冷却排水樋と、該ドライコンテナと該リファーコンテナに通ずる通気パイプと、を、少なくとも備え、前記空気層が、天井部で、空気を対流させるために少なくとも一つの外周側面で前記外側断熱層と前記外周保護部を貫通して外部に開口部で連通していることを特徴とする。
【選択図】
図1