特許第6611205号(P6611205)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6611205
(24)【登録日】2019年11月8日
(45)【発行日】2019年11月27日
(54)【発明の名称】ショベル及びショベルの表示装置
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/26 20060101AFI20191118BHJP
【FI】
   E02F9/26 A
【請求項の数】11
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-559218(P2017-559218)
(86)(22)【出願日】2016年12月27日
(86)【国際出願番号】JP2016088954
(87)【国際公開番号】WO2017115810
(87)【国際公開日】20170706
【審査請求日】2018年9月18日
(31)【優先権主張番号】特願2015-256681(P2015-256681)
(32)【優先日】2015年12月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】502246528
【氏名又は名称】住友建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】塚本 浩之
【審査官】 富士 春奈
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2015/162710(WO,A1)
【文献】 特開平08−144317(JP,A)
【文献】 特開2012−172428(JP,A)
【文献】 特開2000−291076(JP,A)
【文献】 特開2003−056010(JP,A)
【文献】 特開平08−333769(JP,A)
【文献】 特開昭55−055732(JP,A)
【文献】 特開2012−172431(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/194601(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0191431(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/20
E02F 9/26
E02F 3/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行動作を行う下部走行体と、
前記下部走行体に旋回自在に搭載される上部旋回体と、
前記上部旋回体に取り付けられるアタッチメントと、
作業対象の現在の地面形状を取得する地面形状取得部と、
前記地面形状取得部により取得された現在の地面形状において前記アタッチメントで掘削するのに適した推奨ラインを算出する推奨ライン算出部と、
前記作業対象の現在の地面形状及び前記現在の地面形状よりも地中側に位置する前記推奨ラインを表示する表示装置と、
を有することを特徴とするショベル。
【請求項2】
前記表示装置は、前記アタッチメントにより掘削が行われる度に、前記作業対象の掘削後の地面形状から前記推奨ライン算出部により算出される前記推奨ラインに更新して表示することを特徴とする請求項1に記載のショベル。
【請求項3】
前記推奨ライン算出部は、前記アタッチメントにより掘削された後の前記作業対象の地面形状に対する前記推奨ラインを算出することを特徴とする請求項1に記載のショベル。
【請求項4】
前記地面形状取得部は、撮像装置による前記作業対象の掘削部分の撮像結果及び前記アタッチメントの姿勢の推移の少なくとも一方に基づいて、前記作業対象の掘削後の地面形状を求めることを特徴とする請求項1に記載のショベル。
【請求項5】
前記推奨ライン算出部は、掘削長さ及び掘削深さを求めることを特徴とする請求項1に記載のショベル。
【請求項6】
前記表示装置は、前記推奨ラインに沿って掘削する前記アタッチメントの掘削位置を表示することを特徴とする請求項1に記載のショベル。
【請求項7】
前記推奨ライン算出部は、前記作業対象の現在の地面形状及び前記作業対象の土質に基づいて前記推奨ラインを算出することを特徴とする請求項1に記載のショベル。
【請求項8】
前記表示装置は、前記作業対象の現在の地面形状から、目標面に到達するまでの複数サイクル分の推奨ラインを表示することを特徴とする請求項1に記載のショベル。
【請求項9】
前記表示装置は、前記推奨ライン算出部により、埋設物と干渉しない推奨ラインが算出された場合、当該算出された推奨ラインと当該埋設物を示す画像とを表示することを特徴とする請求項1に記載のショベル。
【請求項10】
前記表示装置は、前記作業対象を上面から見た場合の推奨ラインと、該推奨ラインに沿って掘削する場合の前記アタッチメントの掘削位置までの前記上部旋回体の旋回方向または旋回角度とを、更に表示することを特徴とする請求項1に記載のショベル。
【請求項11】
ショベルの表示装置であって、
前記ショベルは、
走行動作を行う下部走行体と、前記下部走行体に旋回自在に搭載される上部旋回体と、前記上部旋回体に取り付けられるアタッチメントと、を有し、
前記ショベルの表示装置は、
作業対象の現在の地面形状を取得する地面形状取得部と、
前記地面形状取得部により取得された現在の地面形状において前記アタッチメントで掘削するのに適した推奨ラインを算出する推奨ライン算出部と、
前記作業対象の現在の地面形状及び前記現在の地面形状よりも地中側に位置する前記推奨ラインを表示する表示部と
を有することを特徴とするショベルの表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ショベルに関する。
【背景技術】
【0002】
ショベルの操作者は、各種操作レバーを操作してアタッチメントを動かし、例えば作業対象が目標形状になるように掘削等の作業を行う。このような掘削作業において、操作者が目視で目標とする形状通りに正確に掘削するのは困難である。
【0003】
そこで、作業対象の目標形状を示す設計面の位置情報に基づく目標面の断面を示す線分である目標面線と、目標面線を延長した延長線とバケットの刃先の位置と、を含む案内画面を表示する油圧ショベルの表示システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−148893号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に係る表示システムを備えるショベルで作業を行う場合であっても、現在の地面形状からどのように掘削作業を進めるかは、操作者が経験に基づいて判断する必要がある。したがって、熟練した作業者でなければ掘削作業完了までに時間を要し、作業効率が低下する可能性がある。
【0006】
本発明は上記に鑑みてなされたものであって、作業効率の向上が可能なショベルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係るショベルによれば、走行動作を行う下部走行体と、前記下部走行体に旋回自在に搭載される上部旋回体と、前記上部旋回体に取り付けられるアタッチメントと、作業対象の現在の地面形状を取得する地面形状取得部と、前記地面形状取得部により取得された現在の地面形状において前記アタッチメントで掘削するのに適した推奨ラインを算出する推奨ライン算出部と、前記作業対象の現在の地面形状及び前記現在の地面形状よりも地中側に位置する前記推奨ラインを表示する表示装置と、を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の実施形態によれば、作業効率の向上が可能なショベルが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、一実施形態に係るショベルの側面図である。
図2図2は、図1のショベルに搭載される姿勢検出装置を構成する各種センサの出力内容を例示するショベルの側面図である。
図3図3は、図1のショベルに搭載される駆動系の構成を例示する図である。
図4図4は、コントローラの構成を例示する機能ブロック図である。
図5図5は、砂質土を掘削する場合に表示装置に表示される画像を例示する図である。
図6図6は、粘性土を掘削する場合に表示装置に表示される画像を例示する図である。
図7図7は、砂質土を複数サイクル掘削する場合に表示装置に表示される画像を例示する図である。
図8図8は、埋設物を加味して砂質土を掘削する場合に表示装置に表示される画像を例示する図である。
図9図9は、掘削作業を上面から見た場合の画像の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0011】
[第1の実施形態]
まず、本発明の一実施形態に係るショベルについて説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るショベルの側面図である。
【0012】
ショベルの下部走行体1には、旋回機構2を介して上部旋回体3が搭載されている。上部旋回体3には、ブーム4が取り付けられている。ブーム4の先端には、アーム5が取り付けられ、アーム5の先端にはバケット6が取り付けられている。ブーム4、アーム5、及びバケット6は、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9によりそれぞれ油圧駆動される。作業要素としてのブーム4、アーム5、及びバケット6は、掘削アタッチメントを構成する。なお、アタッチメントは、床堀アタッチメント、均しアタッチメント、浚渫アタッチメント等の他のアタッチメントであってもよい。
【0013】
上部旋回体3には、キャビン10が設けられ、エンジン11等の動力源が搭載されている。また、上部旋回体3には、通信装置M1、測位装置M2、姿勢検出装置M3、及び前方カメラS1が取り付けられている。
【0014】
通信装置M1は、ショベルと外部との間の通信を制御する装置である。本実施形態では、通信装置M1は、GNSS(Global Navigation Satellite System)測量システムとショベルとの間の無線通信を制御する。具体的には、通信装置M1は、例えば1日1回の頻度で、ショベルの作業を開始する際に作業現場の地形情報を取得する。GNSS測量システムは、例えばネットワーク型RTK−GNSS測位方式を採用する。
【0015】
測位装置M2は、ショベルの位置及び向きを測定する装置である。本実施形態では、測位装置M2は、電子コンパスを組み込んだGNSS受信機であり、ショベルの存在位置の緯度、経度、高度を測定し、且つ、ショベルの向きを測定する。
【0016】
姿勢検出装置M3は、ブーム4、アーム5、及びバケット6といったアタッチメント各部の姿勢を検出する装置である。
【0017】
前方カメラS1は、ショベルの前方を撮像する撮像装置である。前方カメラS1は、アタッチメントによって掘削された後の地面形状を撮像する。
【0018】
図2は、本実施形態に係るショベルに搭載される姿勢検出装置M3を構成する各種センサの出力内容の一例を示すショベルの側面図である。具体的には、姿勢検出装置M3は、ブーム角度センサM3a、アーム角度センサM3b、バケット角度センサM3c、及び車体傾斜センサM3dを含む。
【0019】
ブーム角度センサM3aは、ブーム角度θ1を取得するセンサであり、例えば、ブームフートピンの回転角度を検出する回転角度センサ、ブームシリンダ7のストローク量を検出するストロークセンサ、ブーム4の傾斜角度を検出する傾斜(加速度)センサ等を含む。ブーム角度θ1は、XZ平面において、ブームフートピン位置P1とアーム連結ピン位置P2とを結ぶ線分の水平線に対する角度である。
【0020】
アーム角度センサM3bは、アーム角度θ2を取得するセンサであり、例えば、アーム連結ピンの回転角度を検出する回転角度センサ、アームシリンダ8のストローク量を検出するストロークセンサ、アーム5の傾斜角度を検出する傾斜(加速度)センサ等を含む。アーム角度θ2は、XZ平面において、アーム連結ピン位置P2とバケット連結ピン位置P3とを結ぶ線分の水平線に対する角度である。
【0021】
バケット角度センサM3cは、バケット角度θ3を取得するセンサであり、例えば、バケット連結ピンの回転角度を検出する回転角度センサ、バケットシリンダ9のストローク量を検出するストロークセンサ、バケット6の傾斜角度を検出する傾斜(加速度)センサ等を含む。バケット角度θ3は、XZ平面において、バケット連結ピン位置P3とバケット爪先位置P4とを結ぶ線分の水平線に対する角度である。
【0022】
車体傾斜センサM3dは、ショベルのY軸回りの傾斜角θ4、及び、ショベルのX軸回りの傾斜角θ5(図示せず)を取得するセンサであり、例えば2軸傾斜(加速度)センサ等を含む。なお、図2におけるXY平面は水平面である。
【0023】
図3は、本実施形態に係るショベルに搭載される駆動系の構成例を示す図であり、機械的動力伝達ライン、高圧油圧ライン、パイロットライン、及び電気制御ラインがそれぞれ二重線、実線、破線、及び点線で示されている。
【0024】
ショベルの駆動系は、主に、エンジン11、メインポンプ14L、14R、パイロットポンプ15、コントロールバルブ17、操作装置26、操作内容検出装置29、及びコントローラ30を含む。
【0025】
エンジン11は、例えば、所定の回転数を維持するように動作するディーゼルエンジンである。また、エンジン11の出力軸は、メインポンプ14L、14R及びパイロットポンプ15の入力軸に接続されている。
【0026】
メインポンプ14L、14Rは、高圧油圧ラインを介して作動油をコントロールバルブ17に供給するための装置であり、例えば斜板式可変容量型油圧ポンプである。メインポンプ14L,14Rの吐出圧は、吐出圧センサ18によって検出される。吐出圧センサ18によって検出されたメインポンプ14L,14Rの吐出圧の値は、コントローラ30に出力される。
【0027】
パイロットポンプ15は、パイロットライン25を介して操作装置26等の各種油圧制御機器に作動油を供給するための装置であり、例えば固定容量型油圧ポンプである。
【0028】
コントロールバルブ17は、ショベルにおける油圧系を制御する油圧制御装置である。コントロールバルブ17は、メインポンプ14L、14Rが吐出する作動油の流れを制御する流量制御弁171〜176を含む。コントロールバルブ17は、流量制御弁171〜176を通じて、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、バケットシリンダ9、走行用油圧モータ1A(左用)、走行用油圧モータ1B(右用)、及び旋回用油圧モータ2Aのうちの1又は複数に対しメインポンプ14L、14Rが吐出する作動油を選択的に供給する。なお、以下では、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、バケットシリンダ9、走行用油圧モータ1A(左用)、走行用油圧モータ1B(右用)、及び旋回用油圧モータ2Aを集合的に「油圧アクチュエータ」と称する。
【0029】
操作装置26は、操作者が油圧アクチュエータの操作のために用いる装置である。本実施形態では、操作装置26は、パイロットライン25を通じ、パイロットポンプ15が吐出する作動油を油圧アクチュエータのそれぞれに対応する流量制御弁のパイロットポートに供給する。なお、パイロットポートのそれぞれに供給される作動油の圧力(パイロット圧)は、油圧アクチュエータのそれぞれに対応する操作装置26のレバー又はペダル(図示せず。)の操作方向及び操作量に応じた圧力である。
【0030】
操作内容検出装置29は、操作装置26を用いた操作者の操作内容を検出する装置である。本実施形態では、操作内容検出装置29は、油圧アクチュエータのそれぞれに対応する操作装置26のレバー又はペダルの操作方向及び操作量を圧力の形で検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。なお、操作装置26の操作内容は、ポテンショメータ等、圧力センサ以外の他のセンサの出力を用いて導き出されてもよい。
【0031】
コントローラ30は、ショベルを制御するための制御装置であり、例えば、CPU、RAM、不揮発性メモリ等を備えたコンピュータで構成される。また、コントローラ30は、各種機能要素に対応するプログラムをROMから読み出してRAMにロードし、各種機能要素に対応する処理をCPUに実行させる。
【0032】
コントローラ30は、吐出圧センサ18、表示装置50、通信装置M1、測位装置M2、姿勢検出装置M3、及び前方カメラS1に接続されている。コントローラ30は、吐出圧センサ18、通信装置M1、測位装置M2、姿勢検出装置M3、及び前方カメラS1から入力される各種データに基づいて各種演算を実行し、演算結果を表示装置50に出力する。
【0033】
表示装置50は、例えばキャビン10の内部であって操作者が表示画面を視認できる位置に取り付けられ、コントローラ30による演算結果を表示する。なお、表示装置50は、例えば操作者が装着するゴーグル等に一体に設けられたウェアラブルデバイスであってもよい。表示される情報の視認性が向上し、ショベルの操作者が作業をより効率的に行うことが可能になる。
【0034】
次に、コントローラ30の機能について説明する。図4は、コントローラ30の構成を例示する機能ブロック図である。
【0035】
図4に示すように、コントローラ30は、地形データベース更新部31、位置座標更新部32、地面形状取得部33、土質検出部34、及び推奨ライン算出部35を含む。
【0036】
地形データベース更新部31は、作業現場の地形情報を参照可能に体系的に構成する地形データベースを更新する機能要素である。本実施形態では、地形データベース更新部31は、例えばショベルの起動時に通信装置M1を通じて作業現場の地形情報を取得して地形データベースを更新する。地形データベースは、不揮発性メモリ等に記憶される。また、作業現場の地形情報は、例えば世界測位系に基づく3次元地形モデルで記述される。
【0037】
位置座標更新部32は、ショベルの現在位置を表す座標及び向きを更新する機能要素である。本実施形態では、位置座標更新部32は、測位装置M2の出力に基づいて世界測位系におけるショベルの位置座標及び向きを取得し、不揮発性メモリ等に記憶されるショベルの現在位置を表す座標及び向きに関するデータを更新する。
【0038】
地面形状取得部33は、作業対象の地面の現在の形状に関する情報を取得する機能要素である。本実施形態では、地面形状取得部33は、位置座標更新部32が更新したショベルの現在位置を表す座標及び向きに基づいて、地形データベース更新部31が更新した地形情報から、作業対象の地面の掘削前の初期形状を取得する。
【0039】
また、地面形状取得部33は、姿勢検出装置M3によって検出されたアタッチメントの姿勢の過去の推移に基づいて、ショベルで掘削された後の作業対象の地面の現在の形状を算出する。地面形状取得部33は、前方カメラS1による掘削後の地面の撮像結果に基づいて、ショベルで掘削された後の作業対象の地面の現在形状を算出してもよい。また、地面形状取得部33は、姿勢検出装置M3によって検出されたアタッチメントの姿勢の過去の推移及び前方カメラS1によって撮像された掘削後の地面の画像データの両方に基づいて、掘削後の作業対象の地面の現在形状を算出してもよい。
【0040】
このように、地面形状取得部33は、ショベルの掘削前における作業対象の地面の初期形状を取得し、ショベルによって掘削が実行される度に掘削後の作業対象の地面の現在形状を算出する。地面形状取得部33は、例えば、ブーム4が下降して、アーム5及びバケット6が回転して作業対象である地面を掘削し、再びブーム4が上昇して1サイクルの掘削が行われる度に、掘削後の作業対象の地面の現在形状を算出する。
【0041】
土質検出部34は、作業対象の地面の土質を検出する機能要素である。土質検出部34は、掘削時に吐出圧センサ18から出力されるメインポンプ14L,14Rの吐出圧に基づいて、作業対象の地面の土質を検出する。土質検出部34は、姿勢検出装置M3が検出したアタッチメントの姿勢に基づいて、バケット6が作業対象の地面に接触して掘削が実行されているか否かを判定し、吐出圧センサ18から出力される吐出圧の値を取得して土質を検出する。
【0042】
例えば作業対象の地面が砂質土の場合には、大きな出力馬力を必要とせずに掘削を行うことができるため、出力馬力が低くなるようにメインポンプ14L,14Rが制御され、メインポンプ14L,14Rの吐出圧が低くなる。そこで、土質検出部34は、例えば掘削時に吐出圧センサ18によって検出されたメインポンプ14L,14Rの吐出圧の値が予め設定されている閾値未満の場合には、作業対象の地面が砂質土であると判定する。
【0043】
また、例えば作業対象の地面が粘性土である場合には、掘削に大きな出力馬力が必要となり、出力馬力が上昇するようにメインポンプ14L,14Rが制御され、メインポンプ14L,14Rの吐出圧が高くなる。そこで、土質検出部34は、例えば掘削時に吐出圧センサ18によって検出されたメインポンプ14L,14Rの吐出圧の値が予め設定されている閾値以上の場合には、作業対象の地面が粘性土であると判定する。
【0044】
なお、土質検出部34は、砂質土及び粘性土以外に、礫質土等を吐出圧センサ18によって検出されるメインポンプ14L,14Rの吐出圧の値に基づいて判定してもよい。また、土質検出部34は、掘削時におけるブームシリンダ圧、アームシリンダ圧、及びバケットシリンダ圧の何れか1つ以上に基づいて、作業対象の地面の土質を検出してもよい。
【0045】
推奨ライン算出部35は、地面形状取得部33により取得又は算出された作業対象の現在の地面形状において掘削するのに適した推奨ラインを算出する機能要素である。推奨ライン算出部35は、アタッチメントとして取り付けられているバケット6の容量と、土質検出部34によって検出された作業対象の地面の土質とに基づいて、作業対象の現在の地面形状において掘削するのに適した推奨ラインを算出する。本実施形態では、推奨ラインはバケット6の爪先の軌跡で表される。
【0046】
推奨ライン算出部35は、掘削深さ及び掘削長さで推奨ラインを規定する。例えば作業対象の地面が砂質土であった場合には、バケット6を地面に深く挿し込んで回転させるような掘削作業を低馬力で実行できる。そこで、推奨ライン算出部35は、作業対象の地面が砂質土であった場合には、掘削深さが深く且つ掘削長さが短くなるように推奨ラインを算出する。掘削深さ及び掘削長さは、バケット6の容量、積載最大荷重等に基づいて求められる。
【0047】
また、例えば作業対象の地面が粘性土であった場合には、バケット6を地面に深く挿し込んで回転させるような掘削作業では高馬力が必要となり燃費等のエネルギー消費が悪化する可能性がある。そこで、推奨ライン算出部35は、作業対象の地面が粘性土であった場合には、作業対象の地面が砂質土であった場合に比べて掘削深さが浅く且つ掘削長さが長くなるように推奨ラインを算出する。
【0048】
推奨ライン算出部35は、ショベルによって掘削が実行される度に、掘削後の作業対象の地面の現在形状に対する推奨ラインを算出する。上記したように、ショベルによって1サイクルの掘削が行われると、地面形状取得部33によって掘削後の作業対象の地面の現在形状が算出される。推奨ライン算出部35は、地面形状取得部33によって掘削後の作業対象の地面の現在形状が算出されると、算出された地面の現在形状に対して掘削を行うのに適した推奨ラインを算出する。
【0049】
また、推奨ライン算出部35は、算出した推奨ラインに沿って掘削を行う場合に適したバケット6の角度等のアタッチメントの姿勢を算出する。推奨ライン算出部35は、例えば推奨ラインに沿って掘削する場合におけるバケット6の角度を算出する。なお、推奨ライン算出部35は、推奨ラインに沿って掘削を行う場合に適したブーム4及びアーム5の角度をそれぞれ算出してもよい。
【0050】
推奨ライン算出部35は、地面形状取得部33によって取得又は算出された作業対象の地面の現在形状、作業対象の地面の現在形状に対する推奨ライン、及び推奨ラインに沿って掘削する場合のバケット6の角度を表示装置50に出力する。
【0051】
表示装置50は、推奨ライン算出部35から出力される作業対象の地面の現在形状と、推奨ラインとを画面に表示する。また、表示装置50は、姿勢検出装置M3によって検出されるアタッチメントの現在位置と、推奨ラインに沿って掘削を行う場合のバケット6の角度とを画面に表示する。
【0052】
図5は、表示装置50が表示する画像51を例示する図である。図5には、砂質土を掘削する場合における画像51が例示されている。図5に示すように、画像51には、バケット6の現在の位置を示すバケット現在位置61、作業対象の地面の現在形状71が実線で表示されている。
【0053】
操作者によってショベルのアタッチメントが操作されてバケット6の爪先が地面に挿し込まれると、土質検出部34によって作業対象の地面の土質が検出され、推奨ライン算出部35によって推奨ラインが算出される。また、推奨ライン算出部35は、推奨ラインに沿って掘削する場合のバケット6の角度を算出する。推奨ライン算出部35により推奨ライン及びバケット6の角度が算出されると、図5に示すように、作業対象の地面の現在形状71に対する推奨ライン72が破線で表示される。また、アタッチメントの掘削位置として、推奨ライン72に沿って掘削する場合のバケット掘削位置62,63,64が破線で表示される。
【0054】
操作者がアタッチメントを操作すると、姿勢検出装置M3の検出結果に基づいて、バケット現在位置61が画像51において実際の動きに合わせて変位するように表示される。操作者は、表示装置50に表示される画像51を見ながら、推奨ライン72に沿ってバケット6が動くようにアタッチメントを操作する。また、バケット掘削位置62,63,64に示される角度に合わせるようにバケット6を回転操作する。
【0055】
操作者によりアタッチメントが操作され、推奨ライン72に沿った掘削が実行されてブーム4が引き上げられて1サイクルの掘削作業が完了すると、画像51における地面の現在形状71が掘削後の地面形状に更新される。掘削後の地面形状は、地面形状取得部33によって、姿勢検出装置M3が検出したアタッチメントの姿勢の過去の推移及び前方カメラS1が撮影した掘削後の地面の画像の少なくとも一方に基づいて算出される。
【0056】
また、推奨ライン算出部35によって掘削後の地面の現在形状に対する推奨ラインが算出され、画像51における推奨ライン72が更新して表示される。ショベルの操作者は、アタッチメントで掘削を行う度に画像51に更新して表示される地面の現在形状71及び推奨ライン72を見ながら、掘削作業を進めていくことができる。
【0057】
このように、ショベルの操作者は、表示装置50に表示される画像51を見ながらアタッチメントを操作して推奨ラインに沿って掘削することで、短時間で効率良く作業を行うことが可能になる。
【0058】
図6は、粘性土を掘削する場合に表示装置50に表示される画像51を例示する図である。粘性土を掘削する場合に、砂質土を掘削する場合と同様にバケット6を地面に深く挿し込んで回転させると、大きな出力が必要となり燃費等のエネルギー消費が増加する可能性がある。このため、土質検出部34によって作業対象の地面が粘性土と検出された場合には、推奨ライン算出部35により作業対象の地面が砂質土であった場合(図5)に比べて、掘削深さD2が浅く(D2<D1)且つ掘削長さL2が長く(L2>L1)となるように推奨ラインが算出される。
【0059】
作業対象の地面が粘性土であった場合も同様に、推奨ライン72に沿った掘削が実行されてブーム4が引き上げられて1サイクルの掘削作業が完了すると、画像51における地面の現在形状71及び推奨ライン72が更新して表示される。
【0060】
このように、作業対象の地面の土質に応じた推奨ラインが表示されることで、例えば操作者がバケット6を地面に必要以上に深く挿し込んで燃費等を低下させることなく、作業対象の土質に応じて効率良く掘削作業を進めていくことが可能になる。
【0061】
以上で説明したように、本実施形態に係るショベルによれば、表示装置50に作業対象の地面の現在形状及び掘削するのに適した推奨ラインが、バケット6の現在位置と共に表示される。ショベルの操作者は、推奨ラインに沿って掘削を実行すればよいため、掘削作業に熟練していなくても効率良く作業を実行することが可能となる。
【0062】
[第2の実施形態]
上記第1の実施形態では、操作者によりアタッチメントが操作され、掘削が行われるたびに、地面の現在形状を更新するとともに、次の推奨ラインを算出し表示するものとして説明した。これに対して、第2の実施形態では、目標面近傍に到達するまでに複数サイクルの掘削作業が必要な場合に、複数サイクル分の推奨ラインを予め算出し、まとめて表示する。これにより、操作者は、あと何サイクル掘削作業を行うことで、目標面近傍に到達するのかを容易に把握することができる。
【0063】
図7は、砂質土を複数サイクル掘削する場合に表示装置に表示される画像を例示する図である。図5と同様に、図7に示す画像51には、バケット6の現在の位置を示すバケット現在位置61、作業対象の地面の現在形状71が実線で表示されている。
【0064】
操作者によってショベルのアタッチメントが操作されてバケット6の爪先が地面に差し込まれると、土質検出部34によって作業対象の地面の土質が検出される。また、推奨ライン算出部35によって、1サイクル目の掘削作業における推奨ラインである、第1の推奨ラインが算出される。更に、推奨ライン算出部35によって、第1の推奨ラインに沿って掘削する場合のバケット6の角度が算出される。
【0065】
推奨ライン算出部35により第1の推奨ライン及びバケット6の角度が算出されると、図7に示すように、作業対象の地面の現在形状71に対する第1の推奨ライン72が破線で表示される。また、アタッチメントの掘削位置として、推奨ライン72に沿って掘削する場合のバケット掘削位置62、63、64が破線で表示される。
【0066】
ここで、推奨ライン算出部35には、予め目標面100の位置が設定されているものとする。このため、推奨ライン算出部35では、第1の推奨ライン72の算出が終了すると、算出した第1の推奨ライン72が目標面100の近傍範囲101に含まれているか否かの判定を行う。なお、近傍範囲101は、例えば、1サイクル分の掘削深さD2に基づいて設定されているものとする。
【0067】
算出した第1の推奨ライン72が近傍範囲101に含まれていないと判定した場合、推奨ライン算出部35は、2サイクル目の掘削作業を行う場合の推奨ラインである、第2の推奨ライン73を算出する。第2の推奨ライン73の算出が終了すると、推奨ライン算出部35では、算出した第2の推奨ライン73が目標面100の近傍範囲101に含まれているか否かの判定を行う。
【0068】
算出した第2の推奨ライン73が近傍範囲101に含まれていないと判定した場合、推奨ライン算出部35は、更に、3サイクル目の掘削作業を行う場合の推奨ラインである、第3の推奨ライン74を算出する。第3の推奨ライン74の算出が終了すると、推奨ライン算出部35では、算出した第3の推奨ライン74が目標面100の近傍範囲101に含まれているか否かの判定を行う。
【0069】
算出した第3の推奨ライン74が近傍範囲101に含まれていると判定した場合、推奨ライン算出部35は、第1の推奨ライン72に加えて、第2及び第3の推奨ライン73、74を破線で表示する。
【0070】
このように、第2の実施形態によれば、操作者は、表示された推奨ラインを視認することで、掘削前に、目標面近傍に到達するまでの掘削作業のサイクル数を容易に把握することができる。
【0071】
なお、図7に示すように、推奨ライン算出部35は、あわせて目標面100及び近傍範囲101を表示してもよい。また、推奨ライン算出部35は、掘削作業のサイクル数を明示するようにしてもよい。
【0072】
[第3の実施形態]
上記第1の実施形態では、土質に基づいて推奨ラインを算出するものとして説明した。しかしながら、推奨ラインの算出に用いる要素は、土質に限定されず、土質以外の要素を加味して推奨ラインの算出を行うようにしてもよい。第3の実施形態では、土質以外の要素として、埋設物の大きさ、形状、位置を加味して推奨ラインを算出する場合について説明する。
【0073】
図8は、埋設物を加味して砂質土を掘削する場合に表示装置に表示される画像を例示する図である。図5と同様に、図8に示す画像51には、バケット6の現在の位置を示すバケット現在位置61、作業対象の地面の現在形状71が実線で表示されている。
【0074】
操作者によってショベルのアタッチメントが操作されてバケット6の爪先が地面に差し込まれると、土質検出部34によって作業対象の地面の土質が検出される。ここで、本実施形態の推奨ライン算出部35には、予め土中の埋設物の大きさ、形状、位置が登録されているものとする。そして、土質検出部34によって土質が検出されると、本実施形態の推奨ライン算出部35では、埋設物に干渉することがないように、当該土質に基づいて推奨ラインを算出する。
【0075】
図8において推奨ライン82は、埋設物の大きさ、形状、位置と、検出した土質とに基づいて、推奨ライン算出部35により算出された推奨ラインを示している。なお、図8では、比較対象のため、埋設物の大きさ、形状、位置を考慮せずに算出した推奨ライン72も、あわせて明示している。
【0076】
図8に示すように、埋設物の大きさ、形状、位置を考慮せずに算出される推奨ライン72は、埋設物90と干渉する。これに対して、埋設物の大きさ、形状、位置を考慮して算出された推奨ライン82の場合、埋設物90と干渉しない。
【0077】
このように、第3の実施形態によれば、土中の埋設物と干渉することのない推奨ラインを算出して表示することが可能となる。
【0078】
なお、図8に示すように、推奨ライン算出部35は、予め登録された埋設物の大きさ、形状、位置に基づいて、埋設物90の画像を生成し、画像51に表示してもよい。
【0079】
[第4の実施形態]
上記各実施形態では、掘削作業を側面から見た場合のバケット6の爪先の位置を推奨ラインとして表示するとともに、バケット掘削位置を表示する場合について説明した。これに対して、第4の実施形態では、掘削作業を上面から見た場合のバケット6の爪先の位置を推奨ラインとして表示するとともに、バケット掘削位置及び上部旋回体3の旋回方向(及び旋回角度)を表示する場合について説明する。
【0080】
一般に、升掘り等の掘削作業を行う場合、操作者は、バケット6の刃先の端部が所定のライン上に位置するように、1サイクルごとに上部旋回体3を旋回させる。
【0081】
そこで、本実施形態の推奨ライン算出部35では、升掘り等の掘削作業を上面から見た場合の画像として、バケット6の刃先の端部の位置を示す推奨ラインと、各サイクルでのバケット掘削位置及び上部旋回体3の旋回方向(及び旋回角度)を含む画像を表示する。
【0082】
図9は、掘削作業を上面から見た場合の画像の一例を示す図である。図9に示すように、画像51には、バケット6の刃先の端部の位置を示す推奨ライン72が表示される。また、画像51には、バケット6の現在の位置を示すバケット現在位置61と、バケット現在位置61の基準方向200に対する、旋回中心300まわりの旋回方向201が実線で表示される。なお、旋回方向201に加えて、バケット現在位置61の基準方向200に対する旋回角度が表示されてもよい。
【0083】
更に、画像51には、推奨ライン72に沿って掘削する場合の各サイクルにおけるバケット掘削位置62、63、64が破線で表示される。また、それぞれのバケット掘削位置62、63、64の基準方向200に対する、旋回中心300まわりの旋回方向202〜204が破線で表示される。なお、それぞれのバケット掘削位置62、63、64の基準方向200に対する、旋回角度が表示されてもよい。
【0084】
このように、掘削作業を側面から見た場合の推奨ライン等に加えて、掘削作業を上面から見た場合の推奨ライン等を表示することで、ショベルの操作者は、効率よく掘削作業を実行することが可能となる。
【0085】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳説したが、本発明は上記した実施形態に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなしに上述した実施形態に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0086】
本出願は、2015年12月28日に出願された日本国特許出願第2015−256681号に基づきその優先権を主張するものであり、同日本国特許出願の全内容を参照することにより本願に援用する。
【符号の説明】
【0087】
1 下部走行体
3 上部旋回体
4 ブーム
5 アーム
6 バケット
7 ブームシリンダ
8 アームシリンダ
9 バケットシリンダ
30 コントローラ
31 地形データベース更新部
32 位置座標更新部
33 地面形状取得部
34 土質検出部
35 推奨ライン算出部
50 表示装置
M1 通信装置
M2 測位装置
M3 姿勢検出装置
S1 前方カメラ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9