【実施例】
【0051】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0052】
[実施例1]ヒポキサンチン塩基に置換したQProbeを用いた融解曲線分析
核酸プローブが有するオリゴヌクレオチドにおいて、蛍光色素を結合させたシトシン塩基から1塩基離れて存在するグアニン塩基を、ヒポキサンチン塩基に置換したQProbe(以下、「IQP1」という)を用いて融解曲線分析を行った。また、比較例として置換を行っていないQProbe(以下、「QP1」という)を用いて融解曲線分析を行った。
【0053】
(材料)
標的核酸:配列番号1の塩基配列を有する合成DNA(以下、「モデル1」ともいう) 10μM。
QProbe:配列番号2、3の塩基配列を有するオリゴヌクレオチドを備え、オリゴヌクレオチドの末端シトシン塩基にTAMRAを結合させたプローブ(QP1及びIQP1) 2μM。
ハイブリダイズ用バッファー:KCl、Tris−HCl(pH8.0)及びTween−20を含むバッファー。
なお、標的核酸及びQProbeは、株式会社日本バイオサービスに合成を委託した。
【0054】
モデル1、QP1及びIQP1の特徴を表1に示す。なお、塩基配列において、ヒポキサンチン塩基をIで表す。
【0055】
【表1】
【0056】
(方法)
モデル1 3.2μL、QP1又はIQP1 0.5μL及びハイブリダイズ用バッファー21.3μLを混合して、終濃度がそれぞれモデル1 1.28μM、QP1又はIQP1 0.04μM、KCl 50mM、Tris−HCl(pH8.0)10mM及びTween−20 0.1%である混合液を調製した。また、モデル1を混合せず、QP1又はIQP1 0.5μL及びハイブリダイズ用バッファー 24.5μLを混合して混合液を調製した。混合液の調製は8連チューブで行なった。混合液の温度を95℃から20℃まで下降させながら、蛍光強度を測定し、融解曲線分析を行った。降温速度は、−0.06℃/秒で行い、測定は、1℃あたり5回行った。なお、測定には、LightCycler(登録商標) 480 Instrument II(ロシュ社)を用い、533nmの波長で励起し、580nmにおける蛍光強度を測定した。
なお、同様の測定を二回行った。
【0057】
(結果)
IQP1は、QP1と同様、混合液中にモデル1が存在する場合には、一定温度以下になると消光し始めるのに対し、混合液中にモデル1が存在しない場合には、消光は観測されなかった(
図2)。
また、IQP1は、QP1と比べて、消光開始時(以下、「ピーク時」ともいう)の蛍光強度が大きかった。すなわち、IQP1を用いた場合には、QP1を用いた場合と比べて、ピーク時の蛍光強度と、混合液の温度低下に伴う蛍光強度の減少が観測されなくなり蛍光強度が一定に達したときの蛍光強度との差(減少量)が大きくなった。
【0058】
実施例1の結果から、混合液中に標的核酸が存在する場合に、IQP1は消光し、標的核酸を検出可能であることが示された。また、IQP1は、QP1に比べて、感度に優れることが示された。
【0059】
[実施例2]種々の塩基に置換したQProbeを用いた融解曲線分析
蛍光色素を結合されたシトシン塩基に隣接するグアニン塩基を、ヒポキサンチン、チミン、シトシン、アデニン、ネブラリン、2−ジメチルアミノメチレンアミノ−6−メトキシアミノプリン及び3−ニトロピロールから選ばれるいずれかの塩基に置換したQProbe(以下、それぞれ「IQP1」、「TQP」、「CQP」、「AQP」、「NQP」、「dKQP」及び「NitQP」という)を用いて融解曲線分析を行った。
【0060】
(材料)
標的核酸:モデル1 10μM。
QProbe:配列番号2〜9の塩基配列を有するオリゴヌクレオチドを備え、オリゴヌクレオチドの末端シトシン塩基にTAMRAを結合させたプローブ(QP1、IQP1、TQP、CQP、AQP、NQP、dKQP及びNitQP) 2μM。
ハイブリダイズ用バッファー:KCl、Tris−HCl(pH8.0)及びTween−20を含むバッファー。
なお、標的核酸及びQProbeは、株式会社日本バイオサービスに合成を委託した。
【0061】
モデル1、QP1、IQP1、TQP、CQP、AQP、NQP、dKQP及びNitQPの特徴を表2に示す。以下、場合により、蛍光色素を結合させたシトシン塩基に隣接するグアニン塩基を、チミン、シトシン、アデニン、ネブラリン、2−ジメチルアミノメチレンアミノ−6−メトキシアミノプリン及び3−ニトロピロールに置換した塩基をそれぞれ、T、C、A、N、dK及びNitで表す。
【0062】
【表2】
【0063】
(方法)
TQP、CQP、AQP、NQP、dKQP及びNitQPを用いたこと、並びに各QProbeとハイブリダイズ用バッファーとからなる混合液の調製を行わなかったことを除いて、実施例1と同様の方法により、融解曲線分析を行った。
【0064】
(結果)
IQP1、TQP、CQP、AQP及びNQPから選ばれるいずれかのQProbeを用いた場合、ピーク時の蛍光強度が、QP1を用いた場合と比べて、上昇した(
図3(a)〜(d))。すなわち、IQP1、TQP、CQP、AQP及びNQPから選ばれるいずれかのQProbeを用いた場合に、QP1を用いた場合に対して、ピーク時の蛍光強度と、混合液の温度低下に伴う蛍光強度の減少が観測されなくなり蛍光強度が一定に達したときの蛍光強度との差(減少量)が大きくなった。
【0065】
実施例2の結果から、IQP1、TQP、CQP、AQP及びNQPは、QP1に対して、感度に優れることが示された。
【0066】
[実施例3]置換位置の選定
ヒポキサンチン塩基に置換するグアニン塩基と、蛍光色素を結合させたシトシン塩基との距離を段階的に変えたQProbeを用いて、融解曲線分析を行った。具体的には、配列番号1、10〜12の塩基配列を有する合成DNA(以下、それぞれ「モデル1」、「モデル2」、「モデル3」及び「モデル4」という)を標的核酸とし、蛍光色素を結合させたシトシン塩基から1、3、5又は7塩基離れて存在するグアニン塩基をヒポキサンチン塩基に置換したQProbe(以下、それぞれ「IQP1」、「IQP3」、「IQP5」及び「IQP7」という)を用いて、融解曲線分析を行った。また、比較例として置換を行なっていないQProbe(以下、それぞれ「QP1」、「QP3」、「QP5」及び「QP7」という)を用いて融解曲線分析を行なった。
【0067】
(材料)
標的核酸:配列番号1、10〜12の塩基配列を有するDNA(モデル1〜4) 10μM。
QProbe:配列番号2、3、13〜18の塩基配列を有するオリゴヌクレオチドを備え、オリゴヌクレオチドの末端シトシン塩基にTAMRAを結合させたプローブ(QP1、QP3、QP5、QP7、IQP1、IQP3、IQP5及びIQP7) 2μM。
ハイブリダイズ用バッファー:KCl、Tris−HCl(pH8.0)及びTween−20を含むバッファー。
なお、標的核酸及びQProbeは、株式会社日本バイオサービスに合成を委託した。
【0068】
モデル1〜4、QP1、QP3、QP5、QP7、IQP1、IQP3、IQP5及びIQP7の特徴を表3に示す。
【0069】
【表3】
【0070】
(方法)
モデル2〜4、QP3、QP5、QP7、IQP3、IQP5及びIQP7を用いたことを除いて、実施例2と同様の方法により、融解曲線分析を行った。
【0071】
(結果)
IQP1、IQP3、IQP5及びIQP7から選ばれるいずれかの置換を行ったQProbeを用いた場合に、置換を行っていないQProbeを用いた場合と比べて、消光開始時の蛍光強度が上昇した(
図4)。すなわち、IQP1、IQP3、IQP5及びIQP7から選ばれるいずれかの置換を行ったQProbeを用いた場合に、置換を行っていないQProbeを用いた場合に対して、ピーク時の蛍光強度と、混合液の温度低下に伴う蛍光強度の減少が観測されなくなり蛍光強度が一定に達したときの蛍光強度との差(減少量)が大きくなった。
【0072】
実施例3の結果から、IQP1、IQP3、IQP5及びIQP7は、置換を行っていないQProbeに対して、感度が改善された。
【0073】
[実施例4]複数塩基を置換したQProbeを用いた融解曲線分析
蛍光色素を結合させたシトシン塩基から1〜7塩基以内に存在する、複数のグアニン塩基をヒポキサンチン塩基に置換したQProbeを用いて融解曲線分析を行った。具体的には、配列番号19の塩基配列を有する合成DNA(以下、「モデル5」という)を標的核酸とし、ヒポキサンチン塩基に置換されたグアニン塩基の個数が1又は2塩基であるQProbe(以下、それぞれ「I1QP」及び「I2QP」という)を用いて、融解曲線分析を行った。なお、配列番号20の塩基配列を有するQProbeを、以下「2QP」という。
【0074】
(材料)
標的核酸:配列番号19の塩基配列を有する合成DNA(モデル5) 10μM。
QProbe:配列番号20〜22を有するオリゴヌクレオチドを備え、オリゴヌクレオチドの末端シトシン塩基にTAMRAを結合させたプローブ(2QP、I1QP及びI2QP) 2μM。
ハイブリダイズ用バッファー:KCl、Tris−HCl(pH8.0)及びTween−20を含むバッファー。
なお、標的核酸及びQProbeは、株式会社日本バイオサービスに合成を委託した。
【0075】
モデル5並びに2QP、I1QP及びI2QPの特徴を表4に示す。
【0076】
【表4】
【0077】
(方法)
2QP、I1QP及びI2QPを用いたことを除いて、実施例2と同様の方法により、融解曲線分析を行った。
【0078】
(結果)
I2QPを用いた場合に、I1QPを用いた場合と比べて、ピーク時の蛍光強度が上昇した(
図5)。すなわち、I2QPを用いた場合に、I1QPを用いた場合に対して、ピーク時の蛍光強度と、混合液の温度低下に伴う蛍光強度の減少が観測されなくなり蛍光強度が一定に達したときの蛍光強度との差(減少量)が大きくなった。
【0079】
実施例4の結果から、蛍光色素を結合させたシトシン塩基から1〜7塩基以内に存在する複数のグアニン塩基をヒポキサンチン塩基に置換することにより、プローブの感度が改善することが示された。
【0080】
[実施例5]LAMP法によるMycoplasmapneumoniaeの検出
蛍光色素を結合させたシトシン塩基から1〜7塩基以内に存在するグアニン塩基をヒポキサンチン塩基に置換したQProbeを用い、LAMP法によってMycoplasmapneumoniaeを検出した。具体的には、配列番号23の塩基配列を有するMycoplasmapneumoniae FH株の精製ゲノムDNA(以下、「MycPゲノム」という)を標的核酸とし、蛍光色素を結合させたシトシン塩基から2塩基離れて存在するグアニン塩基をヒポキサンチン塩基に置換したQProbe(以下、「MycP−IQP」という)を用い、LAMP法によってリアルタイムにMycPゲノムを検出した。なお、比較例として置換を行なっていないQProbe(以下、「MycP−QP」という)を用いてMycPゲノムを検出した。
【0081】
(材料)
標的核酸:配列番号23の塩基配列を有するMycoplasmapneumoniae FH株の精製ゲノムDNA(MycPゲノム)。
QProbe:配列番号24〜25を有するオリゴヌクレオチドを備え、オリゴヌクレオチドの末端シトシン塩基にTAMRAを結合させたプローブ(MycP−QP及びMycP−IQP) 2μM。
Loopamp(登録商標) マイコプラズマP検出試薬キット(リアクションミックスMycP(RM MycP)、鎖置換型DNA合成酵素(Bst Pol))
なお、MycPゲノムとして、95℃で5分間熱処理し、急冷したものを測定に用いた。QProbeは、株式会社日本バイオサービスに合成を委託した。
【0082】
MycPゲノム並びにMycP−QP及びMycP−IQPの特徴を表5に示す。
【0083】
【表5】
【0084】
(方法)
RM MycP 20.00μLとBst Pol 1.00μLとを混合して混合溶液を得た。この混合溶液 20.00μL、MycP−QP又はMycP−IQP 0.50μL、及びMycPゲノム 4.50μLを混合して、MycP−QP又はMycP−IQPの終濃度が0.04μMである混合液25.00μLを得た。前記混合液を65℃、60分間インキュベートし、混合液中の蛍光強度をリアルタイムに測定した。また、MycPゲノムの代わりに精製水を混合して得た混合液についても、MycPゲノムを用いた場合と同様にして混合液中の蛍光強度をリアルタイムに測定した。なお、測定には、Mx3005P(アジレント・テクノロジー株式会社製)を用い、556nmの波長で励起し、580nmにおける蛍光強度を測定した。解析には、MxProソフトフェアを用いた。同様の測定を二回行った。
【0085】
(結果)
MycP−IQPを用いた場合とMycP−QPを用いた場合とを対比すると、混合液中にMycPゲノムが存在する場合の蛍光強度と混合液中にMycゲノムが存在しない場合の蛍光強度との差は、前者の方が後者より大きかった(
図6)。
【0086】
実施例5の結果から、蛍光色素を結合させたシトシン塩基から1〜7塩基以内に存在する複数のグアニン塩基をヒポキサンチン塩基に置換したQProbeを用いた場合、当該置換を行っていないQProbeを用いた場合に比べて、LAMP法によるMycoplasmapneumoniaeの検出をより高感度に行えることがわかった。
【0087】
[実施例6]PCR法及び融解曲線分析によるヒト型結核菌の検出
蛍光色素を結合させたシトシン塩基から1〜7塩基以内に存在するグアニン塩基をヒポキサンチン塩基に置換したQProbeを用い、PCR法及び融解曲線分析によってヒト型結核菌Mycobacteriumtuberculosisを検出した。具体的には、配列番号26の塩基配列を有するMycobacteriumtuberculosis H37Rv株の精製ゲノムDNA(以下、「TBゲノム」という)を標的核酸とし、蛍光色素を結合させたシトシン塩基から1塩基又は2塩基離れて存在するグアニン塩基をヒポキサンチン塩基に置換したQProbe(以下、それぞれ「TB−IQP1」及び「TB−IQP2」という)を用い、PCR法によって増幅したTBゲノムを融解曲線分析で検出した。なお、比較例として置換を行なっていないQProbe(以下、「TB−QP」という)を用いてTBゲノムを検出した。
【0088】
(材料)
標的核酸:配列番号26の塩基配列を有するMycobacteriumtuberculosis H37Rv株の精製ゲノムDNA(TBゲノム)。
PCR用プライマー:配列番号27〜28の塩基配列を有するプライマー(TB−dnaJ1−PCR26及びTB−dnaJ1−PCR11) 10μM。
10×PCR用バッファー
dNTPs 2mM
MgSO
4 25mM
KOD plus DNA polymerase 1U
QProbe:配列番号27〜29を有するオリゴヌクレオチドを備え、オリゴヌクレオチドの末端シトシン塩基にBODIPY(登録商標)−FLを結合させたプローブ(TB−QP、TB−IQP1及びTB−IQP2) 2μM。
【0089】
TB−dnaJ1−PCR26及びTB−dnaJ1−PCR11、並びにTB−QP、TB−IQP1及びTB−IQP2の特徴を以下の表6に示す。
【0090】
【表6】
【0091】
(方法)
以下の試薬を含むPCR反応液を調製した。
[PCR反応液(10.00μL)]
蒸留水 2.20μL
TB−dnaJ1−PCR26V2 0.250μM 0.25μL
TB−dnaJ1−PCR11 1.500μM 1.50μL
QProbe(TB−QP、TB−IQP1又はTB−IQP2) 0.250μM 1.25μL
緩衝液 1× 1.00μL
dNTPs 0.2mM 1.00μL
MgSO
4 4.0mM 1.60μL
KOD plus DNA polymerase 0.2U 0.20μL
TBゲノム 20.0ng 1.00μL
【0092】
以下の条件で、PCR反応及び融解曲線分析を行った。融解曲線分析(以下の6))では、反応液の温度を40℃から75℃まで上昇させながら、蛍光強度を測定した。上温速度は、0.5℃/秒であり、測定は、1℃あたり5回行った。測定した蛍光強度に基づいて、蛍光強度の変化量(−(d/dt)蛍光強度)を求めた。なお、測定には、LightCycler(登録商標) 480 Instrument II(ロシュ社)を用い、465nmの波長で励起し、510nmにおける蛍光強度を測定した。同様の測定を二回行った。
[PCR反応及び融解曲線分析の条件]
1)94℃ 2分間
2)98℃ 1秒間
3)65℃ 5秒間
4)94℃ 1分間
5)40℃ 1分間
6)40℃〜75℃
PCR反応では、2)〜4)の工程を50サイクル繰り返した。
【0093】
(結果)
蛍光色素を結合させたシトシン塩基から1〜7塩基以内に存在するグアニン塩基をヒポキサンチン塩基に置換したプローブ(TB−IQP1又はTB−IQP2)を用いた場合、蛍光色素を結合させたシトシン塩基から1〜7塩基以内に存在するグアニン塩基をヒポキサンチン塩基に置換していないプローブ(TB−QP)を用いた場合に比べて、蛍光強度の変化量が増加した(
図7)。すなわち、TB−IQP1又はTB−IQP2を用いた場合に、TB−QPを用いた場合に対して、標的核酸へのハイブリダイズによる蛍光強度の変化量が大きくなった。また、蛍光色素を結合させたシトシン塩基から1〜7塩基以内に存在する複数のグアニン塩基をヒポキサンチン塩基に置換したプローブ(TB−IQP2)を用いた場合、蛍光色素を結合させたシトシン塩基から1〜7塩基以内に存在する1つのグアニン塩基をヒポキサンチン塩基に置換したプローブ(TB−IQP1)を用いた場合に比べて、蛍光強度の変化量が増加した(
図7)。すなわち、TB−IQP2を用いた場合に、TB−IQP1を用いた場合に対して、標的核酸へのハイブリダイズによる蛍光強度の変化量がさらに大きくなった。
【0094】
実施例6の結果から、蛍光色素を結合させたシトシン塩基から1〜7塩基以内に存在するグアニン塩基をヒポキサンチン塩基に置換することにより、PCR反応及び融解曲線分析によるMycobacterium tuberculosisの検出をより高感度に行えることがわかった。また、蛍光色素を結合させたシトシン塩基から1〜7塩基以内に存在する複数のグアニン塩基をヒポキサンチン塩基に置換することにより、上記検出をより高感度に行えることがわかった。
【0095】
[実施例7]SNPの検出
蛍光色素を結合させたシトシン塩基から1塩基離れて存在する、「一塩基多型」に対向するオリゴヌクレオチド上の塩基をヒポキサンチン、チミン、シトシン及びアデニンから選ばれるいずれかの塩基に置換したQProbeを用い、SNPを有する標的核酸を融解曲線分析により検出した。
【0096】
(材料)
標的核酸:配列番号32〜35の塩基配列を有する合成DNA(以下、それぞれ「モデルA」、「モデルG」、「モデルT」及び「モデルC」ともいう)。
QProbe:配列番号36〜40を有するオリゴヌクレオチドを備え、オリゴヌクレオチドの末端シトシン塩基にTAMRAを結合させたプローブ(以下、それぞれ「SNP−GQP」、「SNP−IQP」、「SNP−AQP」、「SNP−TQP」及び「ANP−CQP」ともいう) 2μM。
ハイブリダイズ用バッファー:KCl、Tris−HCl(pH8.0)及びTween−20を含むバッファー。
なお、標的核酸及びQProbeは、株式会社日本バイオサービスに合成を委託した。
【0097】
標的核酸及びQProbeの特徴を表7に示す。
【0098】
【表7】
【0099】
(方法)
標的核酸(モデルA、モデルG、モデルT又はモデルC) 3.2μL、SNP−GQP 0.5μL及びハイブリダイズ用バッファー21.3μLを混合して、終濃度がそれぞれ標的核酸(モデルA、モデルG、モデルT又はモデルC) 1.28μM、SNP−GQP 0.04μM、KCl 50mM、Tris−HCl(pH8.0)10mM及びTween−20 0.1%である混合液を調製した。混合液の温度を95℃から20℃まで下降させながら、蛍光強度を測定し、融解曲線分析を行った。降温速度は、−0.06℃/秒であり、測定は、1℃あたり5回行った。測定した蛍光強度に基づいて、蛍光強度の変化量(−(d/dt)蛍光強度)を求めた。なお、測定には、LightCycler(登録商標) 480 Instrument II(ロシュ社)を用い、533nmの波長で励起し、580nmにおける蛍光強度を測定した。同様の測定を二回行った。SNP−GQPの代わりに、SNP−IQP、SNP−AQP、SNP−TQP及びSNP−CQPのいずれかを用いた以外は、SNP−GQPを用いた場合と同様にして、融解曲線分析を行った。
【0100】
(結果)
蛍光色素を結合させたシトシン塩基から1〜7塩基以内に存在する、「一塩基多型」に対向するオリゴヌクレオチド上の塩基をヒポキサンチン塩基に置換したプローブ(SNP−IQP)を用いた場合、モデルC、モデルA、モデルG及びモデルTの順に消光開始温度が低くなった(
図8(a))。したがって、モデルC、モデルA、モデルG及びモデルTにおける消光開始温度はそれぞれ異なっていることから、SNP−IQPを用いることにより、変異塩基の種類ごとにSNPを検出可能であることがわかった。蛍光色素を結合させたシトシン塩基から1〜7塩基以内に存在する、「一塩基多型」に対向するオリゴヌクレオチド上の塩基をチミン塩基に置換したプローブ(SNP−TQP)を用いた場合も、モデルC、モデルA、モデルG及びモデルTにおける消光開始温度はそれぞれ異なっていることから、SNP−TQPを用いることにより、変異塩基の種類ごとにSNPを検出可能であることがわかった(
図8(b))。
【0101】
[実施例8]SNPの位置を段階的に変えた標的核酸の検出
蛍光色素を結合させたシトシン塩基から1〜7塩基以内に存在する、「一塩基多型」に対向するオリゴヌクレオチド上の塩基をヒポキサンチン塩基に置換したQProbeを用い、SNPの位置を段階的に変えた標的核酸を融解曲線分析により検出した。
【0102】
(材料)
標的核酸:配列番号32〜35、41〜44及び46〜49の塩基配列を有する合成DNA(41〜44、46〜49の塩基配列を有する合成DNAのことを、以下それぞれ「モデルA3」、「モデルG3」、「モデルT3」及び「モデルC3」、並びに「モデルA5」、「モデルG5」、「モデルT5」及び「モデルC5」ともいう)。
QProbe:配列番号37、45及び50を有するオリゴヌクレオチドを備え、オリゴヌクレオチドの末端シトシン塩基にTAMRAを結合させたプローブ(配列番号45及び50を有するオリゴヌクレオチドを備え、オリゴヌクレオチドの末端シトシン塩基にTAMRAを結合させたプローブのことを、以下それぞれ「SNP−IQP3」及び「SNP−IQP5」ともいう) 2μM。
ハイブリダイズ用バッファー:KCl、Tris−HCl(pH8.0)及びTween−20を含むバッファー。
なお、標的核酸及びQProbeは、株式会社日本バイオサービスに合成を委託した。
【0103】
標的核酸及びQProbeの特徴を表8に示す。
【0104】
【表8】
【0105】
(方法)
実施例7においてSNP−IQPを用いた場合と同様にして、モデルA、モデルG、モデルT及びモデルCを標的核酸として融解曲線分析を行った。また、標的核酸としてモデルA、モデルG、モデルT及びモデルCの代わりに、モデルA3、モデルG3、モデルT3及びモデルC3を用いたこと、並びにQprobeとしてSNP−GQP、SNP−IQP、SNP−AQP、SNP−TQP及びANP−CQPの代わりに、SNP−IQP3を用いたこと以外は、実施例7と同様にして融解曲線分析を行った。また、標的核酸としてモデルA、モデルG、モデルT及びモデルCの代わりに、モデルA5、モデルG5、モデルT5及びモデルC5を用いたこと、並びにQprobeとしてSNP−GQP、SNP−IQP、SNP−AQP、SNP−TQP及びANP−CQPの代わりにSNP−IQP5を用いたこと以外は、実施例7と同様にして融解曲線分析を行った。
【0106】
(結果)
SNPの位置を段階的に変えた標的核酸についてSNP−IQP3を用いて検出した場合、モデルA3、モデルC3、及びモデルT3(又はモデルG3)における消光開始温度はそれぞれ異なっていることから、変異塩基の種類(A、C及びT(又はG))の判別は可能であることがわかった(
図9(b))。具体的には、モデルA3、モデルG3、モデルT3及びモデルC3をSNP−IQP3を用いて検出した場合、モデルC3、モデルA3、及びモデルT3(又はモデルG3)の順に消光開始温度が低くなった(
図9(b))。また、モデルA5、モデルG5、モデルT5及びモデルC5をSNP−IQP5を用いて検出した場合、モデルA5、モデルC5、及びモデルT5(又はモデルG5)における消光開始温度はそれぞれ異なっていることから、変異塩基の種類(A、C及びT(又はG))の判別は可能であることがわかった(
図9(c))。具体的には、モデルC5、モデルA5、及びモデルG5(又はモデルT5)の順に消光開始温度が低くなった(
図9(c))。
【0107】
実施例8の結果から、SNPの位置を段階的に変えた標的核酸についても、蛍光色素を結合させたシトシン塩基から1〜7塩基以内に存在する、「一塩基多型」に対向するオリゴヌクレオチド上の塩基をヒポキサンチン塩基に置換したプローブを用いて、SNPを検出可能であることがわかった。