(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記伝送線路側誘電体層の厚さは、前記伝送線路の周囲の環境での電磁波の実効波長の0.2倍以下であることを特徴とする、請求項1に記載の導波管/伝送線路変換器。
前記整合素子側誘電体層の厚さは、前記整合素子の周囲の環境での電磁波の実効波長の0.2倍以下であることを特徴とする、請求項3に記載の導波管/伝送線路変換器。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
次に、特許文献2では、整合素子に伝送線路を結合し、伝送線路から導波管へ電波を伝搬する技術を利用している。以下の説明から明らかなように、特許文献2では、特許文献1と比べて、導波管/伝送線路変換器を小型化することができ、アレー/平面アンテナの指向性を劣化させる原因となる短絡面を形成する構造体を無くすことができる。
【0005】
従来技術の導波管/伝送線路変換器の構成を
図1に示す。最上段は、導波管/伝送線路変換器1’の側面断面図を示す。第2段は、導波管/伝送線路変換器1’の矢視A’−A’平面断面図を示す。第3段は、導波管/伝送線路変換器1’の矢視B’−B’平面断面図を示す。最下段は、後述する整合素子17’の共振長の方向の電界分布を示す。
【0006】
導波管/伝送線路変換器1’は、導波管11’により伝送される電力と、伝送線路12’により伝送される電力と、を相互に変換するために、誘電体基板13’、短絡金属層14’、金属部材15’、接地金属層16’及び整合素子17’を備える。
【0007】
誘電体基板13’は、導波管11’の開口部を塞ぐように配置される。誘電体基板13’の面は、導波管11’の導波方向に垂直な面である。
図1の第2、3段において、誘電体基板13’のうちパターンが配置される部分は、白地で示され、誘電体基板13’のうちパターンが配置されない部分は、斜線で示される。
【0008】
短絡金属層14’は、誘電体基板13’の表面かつ導波管11’の外部に配置され、誘電体基板13’を貫通する金属部材15’及び誘電体基板13’の表面かつ導波管11’の外枠に配置される接地金属層16’により、導波管11’と同電位に保持される。
【0009】
整合素子17’は、誘電体基板13’の表面かつ導波管11’の内部に配置され、誘電体基板13’を介して伝送線路12’と電磁的に結合され、整合素子17’の周囲の環境における実効波長λ
g’の電磁波を定在波として立てるための共振長(ほぼλ
g’/2)を、導波管11’内の電界方向及び伝送線路12’の給電方向に有する。
【0010】
従来技術を利用した第1の平面アンテナの概要を
図2に示す。平面アンテナP1’は、特許文献1、2に開示されていない。平面アンテナP1’では、アンテナ素子が平面上に格子状に配置される。格子状に配置されるアンテナ素子は、各列のアレーアンテナA1’に分割される。各列のアレーアンテナA1’は、各列のほぼ中央に配置され各列分の中央給電を行なう導波管/伝送線路変換器1’に接続される1本の伝送線路12’により、導波管/伝送線路変換器1’を挟んで逆方向に逆位相で給電される。導波管/伝送線路変換器1’を挟んで逆方向のアンテナ素子において、同方向の電界及び同方向の指向性を得るためである。誘電体基板13’は、アンテナ素子が格子状に配置される平面である。導波管11’の広壁面の断面は、各列のアレーアンテナA1’の方向に平行な方向に配置される。導波管11’の狭壁面の断面は、各列のアレーアンテナA1’の方向に垂直な方向に配置される。
【0011】
従来技術を利用した第2の平面アンテナの概要を
図3に示す。平面アンテナP2’は、特許文献1、2に開示されていない。平面アンテナP2’では、アンテナ素子が平面上に格子状に配置される。格子状に配置されるアンテナ素子は、各列のアレーアンテナA2’に分割される。各列のアレーアンテナA2’は、各列のほぼ中央に配置され各列分の中央給電を行なう導波管/伝送線路変換器1’に接続される2本の伝送線路12’により、導波管/伝送線路変換器1’を挟んで逆方向に逆位相で給電される。導波管/伝送線路変換器1’を挟んで逆方向のアンテナ素子において、同方向の電界及び同方向の指向性を得るためである。誘電体基板13’は、アンテナ素子が格子状に配置される平面である。導波管11’の狭壁面の断面は、各列のアレーアンテナA2’の方向に平行な方向に配置される。導波管11’の広壁面の断面は、各列のアレーアンテナA2’の方向に垂直な方向に配置される。
【0012】
各列のアレーアンテナA1’、A2’が各列の中央で給電されることにより、平面アンテナP1’、P2’の中心周波数からずれた周波数において、各列を構成する各アンテナ素子の励振位相が互いにずれても、各列を構成する各アンテナ素子の合成結果は、広い周波数範囲で任意の一方向に利得の高い指向性を形成できる。
【0013】
しかし、導波管/伝送線路変換器1’において、誘電体基板13’の表面に配置されるパターンのサイズのうち、導波管11’の狭壁面及び広壁面の断面に沿う方向のサイズp
N’、p
W’(
図1を参照。)は、大きくならざるを得ない。よって、平面アンテナP1’、P2’において、互いに隣り合う各列のアレーアンテナA1’、A2’の間隔d’は、放射される電磁波が有する波長λ
0の半分に等しい長さλ
0/2より広くならざるを得ない。これにより、アレーアンテナA1’、A2’における可視領域は、広くならざるを得ず、平面アンテナP1’、P2’における指向性は、特に、各アンテナ素子の位相情報を調整し、広角までビームを走査する際に、グレーティングローブを発生しやすくなる。
【0014】
そこで、前記課題を解決するために、本発明は、導波管/伝送線路変換器において、誘電体基板の表面に配置されるパターンのサイズを小さくして、平面アンテナにおいて、互いに隣り合う各列のアレーアンテナの間隔を狭くして、これにより、平面アンテナにおける指向性が、特に、各アンテナ素子の位相情報を調整し、広角までビームを走査する際に、グレーティングローブを発生しにくくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、誘電体基板の表面に形成される伝送線路に、誘電体層を密着又は近接して形成することにより、伝送線路の周囲の環境での実効誘電率を高くして、伝送線路の周囲のパターンのサイズを小型化することとした。
【0016】
具体的には、本発明は、導波管により伝送される電力と、伝送線路により伝送される電力と、を相互に変換する導波管/伝送線路変換器であって、前記導波管の開口部を塞ぐように配置される誘電体基板と、前記誘電体基板の表面かつ前記導波管の外部に配置される前記伝送線路と、前記誘電体基板の表面かつ前記導波管の内部に配置される整合素子と、前記伝送線路の表面に形成される伝送線路側誘電体層と、を備えることを特徴とする導波管/伝送線路変換器である。
【0017】
この構成によれば、導波管/伝送線路変換器において、誘電体基板の表面に形成される伝送線路の周囲のパターンのサイズを小さくすることができる。
【0018】
また、本発明は、前記伝送線路側誘電体層の厚さは、前記伝送線路の周囲の環境での電磁波の実効波長の0.2倍以下であることを特徴とする導波管/伝送線路変換器である。
【0019】
この構成によれば、伝送線路及び整合素子の間の誘電体基板から電界が漏れ出す領域をカバーするために、最小限の厚さの誘電体層を形成すれば足りるようになる。
【0020】
上記目的を達成するために、誘電体基板の表面に形成される整合素子に、誘電体層を密着又は近接して形成することにより、整合素子の周囲の環境での実効誘電率を高くして、整合素子の周囲のパターンのサイズを小型化することとした。
【0021】
具体的には、本発明は、導波管により伝送される電力と、伝送線路により伝送される電力と、を相互に変換する導波管/伝送線路変換器であって、前記導波管の開口部を塞ぐように配置される誘電体基板と、前記誘電体基板の表面かつ前記導波管の外部に配置される前記伝送線路と、前記誘電体基板の表面かつ前記導波管の内部に配置される整合素子と、前記整合素子の表面に形成される整合素子側誘電体層と、を備えることを特徴とする導波管/伝送線路変換器である。
【0022】
この構成によれば、導波管/伝送線路変換器において、誘電体基板の表面に形成される整合素子の周囲のパターンのサイズを小さくすることができる。
【0023】
また、本発明は、前記整合素子側誘電体層の厚さは、前記整合素子の周囲の環境での電磁波の実効波長の0.2倍以下であることを特徴とする導波管/伝送線路変換器である。
【0024】
この構成によれば、伝送線路及び整合素子の間の誘電体基板から電界が漏れ出す領域をカバーするために、最小限の厚さの誘電体層を形成すれば足りるようになる。
【0025】
また、本発明は、アンテナ素子が平面上に直線状に配置されるアレーアンテナであって、直線状に配置されるアンテナ素子は、一列のほぼ中央に配置され一列分の中央給電を行なう上記の導波管/伝送線路変換器(伝送線路側誘電体層を備える)に接続される前記伝送線路により、上記の導波管/伝送線路変換器(伝送線路側誘電体層を備える)を挟んで逆方向に逆位相で給電され、前記誘電体基板の表面のうちの前記伝送線路が配置される表面に配置され、前記伝送線路側誘電体層により素子の表面を覆われることを特徴とするアレーアンテナである。
【0026】
また、本発明は、アンテナ素子が平面上に格子状に配置される平面アンテナであって、格子状に配置されるアンテナ素子は、各列のほぼ中央に配置され各列分の中央給電を行なう上記の導波管/伝送線路変換器(伝送線路側誘電体層を備える)に接続される前記伝送線路により、上記の導波管/伝送線路変換器(伝送線路側誘電体層を備える)を挟んで逆方向に逆位相で給電され、前記誘電体基板の表面のうちの前記伝送線路が配置される表面に配置され、前記伝送線路側誘電体層により素子の表面を覆われることを特徴とする平面アンテナである。
【0027】
この構成によれば、導波管/伝送線路変換器において、誘電体基板の表面に配置されるパターンのサイズを小さくすることができ、平面アンテナにおいて、互いに隣り合う各列のアレーアンテナの間隔を狭くすることができる。これにより、平面アンテナにおける指向性が、特に、各アンテナ素子の位相情報を調整し、広角までビームを走査する際に、グレーティングローブを発生しにくくすることができる。
【0028】
そして、誘電体基板の一の表面に形成される伝送線路と同様に、誘電体基板のその表面に形成されるアンテナ素子導体に、誘電体層を密着又は近接して形成することにより、アンテナ素子導体から放射された電磁波を、ほぼ球面波の状態で誘電体層に入射させることができる。すると、誘電体層に0度の入射角で入射した電磁波については、誘電体層内部の伝搬距離はより短くなり、誘電体層による位相遅れはより少なくなる。一方で、誘電体層に有限の入射角で入射した電磁波については、誘電体層内部の伝搬距離はより長くなり、誘電体層による位相遅れはより多くなる。よって、誘電体層から出射した電磁波は、誘電体層を設けない場合の電磁波と比べ、広角指向性を有することができる。
【0029】
さらに、誘電体層をアンテナ素子導体に密着又は近接して形成する場合には、誘電体層を形成することなく誘電体基板のみを配置する場合より、アンテナ素子導体の周囲の環境での実効誘電率が高くなるため、放射効率を高く維持したうえで、アンテナ素子導体を小型化することができ、アンテナ素子に広角指向性を持たせることができる。
【発明の効果】
【0030】
このように、本発明は、導波管/伝送線路変換器において、誘電体基板の表面に配置されるパターンのサイズを小さくして、平面アンテナにおいて、互いに隣り合う各列のアレーアンテナの間隔を狭くして、これにより、平面アンテナにおける指向性が、特に、各アンテナ素子の位相情報を調整し、広角までビームを走査する際に、グレーティングローブを発生しにくくすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本発明の実施の例であり、本発明は以下の実施形態に制限されるものではない。
【0033】
(導波管/伝送線路変換器の構成)
本発明の第1の導波管/伝送線路変換器の構成を
図4に示す。最上段は、導波管/伝送線路変換器1の側面断面図を示す。第2段は、導波管/伝送線路変換器1の矢視A−A平面断面図を示す。第3段は、導波管/伝送線路変換器1の矢視B−B平面断面図を示す。最下段は、後述する整合素子17の共振長の方向の電界分布を示す。
【0034】
導波管/伝送線路変換器1は、導波管11により伝送される電力と、伝送線路12により伝送される電力と、を相互に変換するために、誘電体基板13、短絡金属層14、金属部材15、接地金属層16、整合素子17及び誘電体層10L、10Pを備える。
【0035】
誘電体基板13は、導波管11の開口部を塞ぐように配置される。誘電体基板13の面は、導波管11の導波方向に垂直な面である。
図4の第2、3段において、誘電体基板13のうちパターンが配置される部分は、白地で示され、誘電体基板13のうちパターンが配置されない部分は、斜線で示される。
【0036】
短絡金属層14は、誘電体基板13の表面かつ導波管11の外部に配置され、誘電体基板13を貫通する金属部材15及び誘電体基板13の表面かつ導波管11の外枠に配置される接地金属層16により、導波管11と同電位に保持される。
【0037】
整合素子17は、誘電体基板13の表面かつ導波管11の内部に配置され、誘電体基板13を介して伝送線路12と電磁的に結合され、整合素子17の周囲の環境における実効波長λ
g(誘電体層とともに後述。)の電磁波を定在波として立てるための共振長(ほぼλ
g/2)を、導波管11内の電界方向及び伝送線路12の給電方向に有する。
【0038】
ここで、整合素子17及び伝送線路12は、別層に存在する。そして、伝送線路12の先端形状は、切り欠き付きのスタブ又はスロットである。よって、整合素子17及び伝送線路12は、電磁的な結合を実現することができる。
【0039】
図4の説明では、金属部材15は、導波管11の2面の広壁面及び2面の狭壁面の断面に沿って誘電体基板13を貫通する「スルーホール」で形成されている。
図4の変形例としては、金属部材15は、導波管11の2面の広壁面及び2面の狭壁面の断面に沿って誘電体基板13を貫通する「導体壁」であってもよい。
【0040】
誘電体層10Lは、伝送線路12及び短絡金属層14の表面に、密着又は近接して形成される。よって、
図4において、
図1と比べて、伝送線路12及び短絡金属層14の周囲の環境での実効誘電率を高くすることができ、伝送線路12及び短絡金属層14の周囲の環境での電磁波の実効波長λ
gを短くすることができ、導波管11の狭壁面及び広壁面の断面に沿う方向のサイズp
N、p
Wを小さくすることができる。
【0041】
誘電体層10Lの厚さは、伝送線路12及び短絡金属層14の周囲の環境での電磁波の実効波長λ
gの0.2倍以下であることが望ましい。すると、伝送線路12及び整合素子17の間の誘電体基板13から電界が漏れ出す領域をカバーするために、最小限の厚さの誘電体層10Lを形成すれば足りるようになる。
図4の説明では、誘電体層10Lは、伝送線路12及び短絡金属層14の表面のみに形成されている。
図4の変形例としては、誘電体層10Lは、誘電体基板13の全面に形成されてもよい。更なる変形例としては、誘電体層10Lは形成されるが、誘電体層10Pはなくてもよい。
【0042】
誘電体層10Pは、整合素子17の表面に、密着又は近接して形成される。よって、
図4において、
図1と比べて、整合素子17の周囲の環境での実効誘電率を高くすることができ、整合素子17の周囲の環境での電磁波の実効波長λ
gを短くすることができ、整合素子17の共振長(ほぼλ
g/2)を短くすることができ、導波管11の狭壁面及び広壁面の断面に沿う方向のサイズp
N、p
Wを小さくすることができる。
【0043】
誘電体層10Pの厚さは、整合素子17の周囲の環境での電磁波の実効波長λ
gの0.2倍以下であることが望ましい。すると、伝送線路12及び整合素子17の間の誘電体基板13から電界が漏れ出す領域をカバーするために、最小限の厚さの誘電体層10Pを形成すれば足りるようになる。
図4の説明では、誘電体層10Pは、整合素子17の表面及び導波管11の内部のみに形成されている。
図4の変形例としては、誘電体層10Pは、接地が確保される限りにおいて、誘電体基板13の全面に形成されてもよい。更なる変形例としては、誘電体層10Pは形成されるが、誘電体層10Lはなくてもよい。
【0044】
本発明の第2の導波管/伝送線路変換器の構成を
図5に示す。最上段は、導波管/伝送線路変換器2の側面断面図を示す。第2段は、導波管/伝送線路変換器2の矢視C−C平面断面図を示す。第3段は、導波管/伝送線路変換器2の矢視D−D平面断面図を示す。最下段は、後述する整合素子27の共振長の方向の電界分布を示す。
【0045】
導波管/伝送線路変換器2は、導波管21により伝送される電力と、伝送線路22により伝送される電力と、を相互に変換するために、誘電体基板23、短絡金属層24、金属部材25、接地金属層26、整合素子27及び誘電体層20L、20Pを備える。
【0046】
図5における導波管21、伝送線路22、誘電体基板23、短絡金属層24、金属部材25、接地金属層26及び誘電体層20L、20Pは、
図4における導波管11、伝送線路12、誘電体基板13、短絡金属層14、金属部材15、接地金属層16及び誘電体層10L、10Pと、それぞれほぼ同様のものである。
【0047】
図5において、パッチの周囲の環境における電磁波の実効波長のほぼ1/4に等しい共振長を有し、誘電体基板を貫通する金属部材により、共振長の方向の一端を金属地板と同電位に保持される、パッチアンテナを応用した。すなわち、整合素子27は、整合素子27の周囲の環境における電磁波の実効波長λ
gのほぼ1/4に等しい共振長を、導波管21内の電界方向及び伝送線路22の給電方向に有し、誘電体基板23を貫通する金属部材25により、共振長の方向の一端を導波管21と同電位に保持される。
【0048】
よって、
図5において、
図4と比べて、導波管21の狭壁面の断面に沿う方向のサイズp
Nを小さくすることができる。そして、
図5において、
図4と同様に、導波管21の広壁面の断面に沿う方向のサイズp
Wを小さくすることができる。
【0049】
本発明の第3の導波管/伝送線路変換器の構成を
図6に示す。最上段は、導波管/伝送線路変換器3の側面断面図を示す。第2段は、導波管/伝送線路変換器3の矢視E−E平面断面図を示す。第3段は、導波管/伝送線路変換器3の矢視F−F平面断面図を示す。最下段は、後述する整合素子37の共振長の方向の電界分布を示す。
【0050】
導波管/伝送線路変換器3は、導波管31により伝送される電力と、伝送線路32により伝送される電力と、を相互に変換するために、誘電体基板33、短絡金属層34、金属部材35、接地金属層36、整合素子37及び誘電体層30L、30Pを備える。
【0051】
図6における導波管31、伝送線路32、誘電体基板33、整合素子37及び誘電体層30L、30Pは、
図4における伝送線路12、誘電体基板13、整合素子17及び誘電体層10L、10Pと、それぞれほぼ同様のものである。
【0052】
図6において、導波管スロットアンテナにおいて、狭壁面を流れる電流が、狭壁面の断面に平行な方向に流れるところ、狭壁面に設けるスロットが、狭壁面の断面に平行な方向に設けられると、電磁波が放射されないことを応用した。すなわち、導波管31を誘電体基板33内に延長するとともに短絡金属層34を導波管31と同電位に保持するための金属部材35及び接地金属層36を(これらとともに短絡金属層34も)、導波管31の2面の広壁面の断面に沿っては残し、導波管31の2面のうちの両面又は片面の狭壁面の断面に沿っては除き、不用意に電磁波が放射されないようにする。
【0053】
よって、
図6において、
図4と比べて、導波管31の広壁面の断面に沿う方向のサイズp
Wを2n
W又はn
Wだけ小さくすることができる。そして、
図6において、
図4と同様に、導波管31の狭壁面の断面に沿う方向のサイズp
Nを小さくすることができる。
【0054】
本発明の第4の導波管/伝送線路変換器の構成を
図7に示す。左欄第1段は、導波管/伝送線路変換器4の側面断面図を示す。左欄第2段は、導波管/伝送線路変換器4の矢視G−G平面断面図を示す。右欄最上段は、導波管/伝送線路変換器4の矢視H−H平面断面図を示す。右欄第2段は、導波管/伝送線路変換器4の矢視I−I平面断面図を示す。右欄第3段は、後述する整合素子48の共振長の方向の電界分布を示す。右欄最下段は、後述する無給電素子49の共振長の方向の電界分布を示す。
【0055】
導波管/伝送線路変換器4は、導波管41により伝送される電力と、伝送線路42により伝送される電力と、を相互に変換するために、誘電体基板43、44、短絡金属層45、金属部材46、接地金属層47、整合素子48、無給電素子49及び誘電体層40L、40Pを備える。
【0056】
図7における導波管41、伝送線路42、誘電体基板43、44、短絡金属層45、金属部材46、接地金属層47及び誘電体層40L、40Pは、
図4における導波管11、伝送線路12、誘電体基板13、短絡金属層14、金属部材15、接地金属層16及び誘電体層10L、10Pと、それぞれほぼ同様のものである。
【0057】
図7において、パッチアンテナにおいて、パッチ素子の近傍に、寄生素子を配置することにより、広帯域化を図ることを応用した。すなわち、整合素子48の近傍かつ整合素子48と導波方向に異なる層に、無給電素子49を配置することにより、広帯域化を図ることができ、誘電体基板43、44のパターンの配置精度及び誘電体基板43、44のパターンと導波管41の間の位置精度が低いと想定される実際の場合においても、低い反射特性及び高い透過特性を再現性よく満足することができる。
【0058】
よって、
図7において、
図4と同様に、導波管41の狭壁面の断面に沿う方向のサイズp
Nを小さくすることができる。そして、
図7において、
図4と同様に、導波管41の広壁面の断面に沿う方向のサイズp
Wを小さくすることができる。
【0059】
本発明の第5の導波管/伝送線路変換器の構成を
図8に示す。最上段は、導波管/伝送線路変換器5の側面断面図を示す。第2段は、導波管/伝送線路変換器5の矢視J−J平面断面図を示す。第3段は、導波管/伝送線路変換器5の矢視K−K平面断面図を示す。最下段は、後述する整合素子57の電流に沿う方向の電界分布を示す。
【0060】
導波管/伝送線路変換器5は、導波管51により伝送される電力と、伝送線路52により伝送される電力と、を相互に変換するために、誘電体基板53、短絡金属層54、金属部材55、接地金属層56、整合素子57及び誘電体層50L、50Pを備える。
【0061】
図8における導波管51、伝送線路52、誘電体基板53、短絡金属層54、金属部材55、接地金属層56及び誘電体層50L、50Pは、
図4における導波管11、伝送線路12、誘電体基板13、短絡金属層14、金属部材15、接地金属層16及び誘電体層10L、10Pと、それぞれほぼ同様のものである。
【0062】
図8において、周縁部が開放される開放穴58が整合素子57に形成されることにより、誘電体基板53の等価誘電率が高くなることを応用した。
【0063】
整合素子57に開放穴58を形成する以前には、整合素子57の電流方向は、整合素子57の長さ方向と平行方向である。よって、整合素子57の長さaは、整合素子57の電流経路の長さ(例えば、整合素子57の周囲の環境における電磁波の実効波長λ
gに対して、整合素子57の長さ方向の両端を開放する場合にはλ
g/2。)に等しくなる。
【0064】
整合素子57に開放穴58を形成した以後には、整合素子57の電流方向は、開放穴58を迂回するような方向である。よって、整合素子57の長さaは、整合素子57の電流経路の長さ(例えば、整合素子57の周囲の環境における電磁波の実効波長λ
gに対して、整合素子57の長さ方向の両端を開放する場合にはλ
g/2。)より短くなる。
【0065】
このように、整合素子57に開放穴58を形成した以後には、整合素子57に開放穴58を形成する以前より、整合素子57の同一の共振周波数に対して、整合素子57の長さaが短くなるようにでき、誘電体基板53の等価誘電率が高くなったように見える。
【0066】
よって、
図8において、
図4と比べて、導波管51の狭壁面の断面に沿う方向のサイズp
Nを小さくすることができる。そして、
図8において、
図4と同様に、導波管51の広壁面の断面に沿う方向のサイズp
Wを小さくすることができる。
【0067】
(アレーアンテナ及び平面アンテナの概要)
本発明の第1の平面アンテナの概要を
図9に示す。平面アンテナP1では、アンテナ素子が平面上に格子状に配置される。格子状に配置されるアンテナ素子は、各列のアレーアンテナA1に分割される。各列のアレーアンテナA1は、各列のほぼ中央に配置され各列分の中央給電を行なう導波管/伝送線路変換器1〜5に接続される1本の伝送線路により、導波管/伝送線路変換器1〜5を挟んで逆方向に逆位相で給電される。導波管/伝送線路変換器1〜5を挟んで逆方向のアンテナ素子において、同方向の電界及び同方向の指向性を得るためである。導波管/伝送線路変換器1〜5の誘電体基板は、アンテナ素子が格子状に配置される平面である。導波管/伝送線路変換器1〜5に接続される導波管の広壁面の断面は、各列のアレーアンテナA1の方向に平行な方向に配置される。導波管/伝送線路変換器1〜5に接続される導波管の狭壁面の断面は、各列のアレーアンテナA1の方向に垂直な方向に配置される。
【0068】
本発明の第2の平面アンテナの概要を
図10に示す。平面アンテナP2では、アンテナ素子が平面上に格子状に配置される。格子状に配置されるアンテナ素子は、各列のアレーアンテナA2に分割される。各列のアレーアンテナA2は、各列のほぼ中央に配置され各列分の中央給電を行なう導波管/伝送線路変換器1〜5に接続される2本の伝送線路により、導波管/伝送線路変換器1〜5を挟んで逆方向に逆位相で給電される。導波管/伝送線路変換器1〜5を挟んで逆方向のアンテナ素子において、同方向の電界及び同方向の指向性を得るためである。導波管/伝送線路変換器1〜5の誘電体基板は、アンテナ素子が格子状に配置される平面である。導波管/伝送線路変換器1〜5に接続される導波管の狭壁面の断面は、各列のアレーアンテナA2の方向に平行な方向に配置される。導波管/伝送線路変換器1〜5に接続される導波管の広壁面の断面は、各列のアレーアンテナA2の方向に垂直な方向に配置される。
【0069】
各列のアレーアンテナA1、A2が各列の中央で給電されることにより、平面アンテナP1、P2の中心周波数からずれた周波数において、各列を構成する各アンテナ素子の励振位相が互いにずれても、各列を構成する各アンテナ素子の合成結果は、広い周波数範囲で任意の一方向に利得の高い指向性を形成できる。
【0070】
そして、導波管/伝送線路変換器1〜5において、誘電体基板の表面に配置されるパターンのサイズのうち、導波管の狭壁面及び広壁面の断面に沿う方向のサイズp
N、p
W(
図4〜8を参照。)は、小さくすることができる。特に、導波管/伝送線路変換器2、5において、導波管の狭壁面の断面に沿う方向のサイズp
N(
図5、8を参照。)は、さらに小さくすることができる。また、導波管/伝送線路変換器3において、導波管の広壁面の断面に沿う方向のサイズp
W(
図6を参照。)は、さらに小さくすることができる。よって、平面アンテナP1、P2において、互いに隣り合う各列のアレーアンテナA1、A2の間隔dは、放射される電磁波が有する波長λ
0の半分に等しい長さλ
0/2より狭くすることができ、アレーアンテナA1、A2における可視領域は、狭くすることができ、平面アンテナP1、P2における指向性は、特に、各アンテナ素子の位相情報を調整し、広角までビームを走査する際に、グレーティングローブを発生しにくくすることができる。
【0071】
(アンテナ素子の構成)
本発明のアンテナ素子の構成を
図11に示す。本発明のアンテナ素子6は、誘電体基板61、地板導体62、アンテナ素子導体63及び誘電体層64から構成される。誘電体基板61は、導波管/伝送線路変換器1〜5の誘電体基板である。地板導体62は、導波管/伝送線路変換器1〜5の接地金属層であり、誘電体基板61の一方の表面に形成される。アンテナ素子導体63は、パッチアンテナ素子導体等であり、誘電体基板61の他方の表面に形成される。誘電体層64は、導波管/伝送線路変換器1〜5に接続される伝送線路の表面及びアンテナ素子導体63の表面に形成される誘電体層である。
【0072】
誘電体層64は、レドームの機能を有し、アンテナ素子導体63に密着又は近接して形成されている。誘電体層64の厚さは、アンテナ素子6に広角指向性を持たせるように、そして、アンテナ素子6の指向性の正面方向のヌルを生じさせないように、アンテナ素子導体63の周囲の環境での電磁波の実効波長λ
gの0.1倍以上0.2倍以下である。
【0073】
誘電体層64をアンテナ素子導体63に密着又は近接して形成するために、例えば、誘電体基板61の上記他方の表面及びアンテナ素子導体63の表面に、プリプレグ(接着剤)を塗布した後に、誘電体薄膜基板を搭載すればよい。この場合には、誘電体薄膜基板及びプリプレグ(接着剤)の厚さの合計が、アンテナ素子導体63の周囲の環境での電磁波の実効波長λ
gの0.1倍以上0.2倍以下となればよい。
【0074】
このように、誘電体層64は、電磁波の波源であるアンテナ素子導体63に密着又は近接されている。よって、アンテナ素子導体63から放射された電磁波は、ほぼ球面波の状態で、誘電体層64に入射すると考えることができる。
【0075】
すると、誘電体層64に0度の入射角で入射した電磁波については、誘電体層64内部の伝搬距離はより短く、誘電体層64による位相遅れはより少ない。一方で、誘電体層64に有限の入射角で入射した電磁波については、誘電体層64内部の伝搬距離はより長く、誘電体層64による位相遅れはより多い。よって、誘電体層64から出射した電磁波は、誘電体層64を設けない場合の電磁波と比べ、広角指向性を有する。
【0076】
そして、誘電体層64をアンテナ素子導体63に密着又は近接して形成する場合には、誘電体層64を形成することなく誘電体基板61のみを配置する場合より、アンテナ素子導体63の周囲の環境での実効誘電率が高くなるため、放射効率を高く維持したうえで、アンテナ素子導体63を小型化することができ、アンテナ素子6に広角指向性を持たせることができる。特に、中央給電進行波型アレーアンテナにおいて、有利な効果を奏する。
【0077】
(アレーアンテナ及び平面アンテナの構成)
本発明の第1及び第2のアレーアンテナの構成を
図12及び
図13に示す。本発明のアレーアンテナA1、A2では、アンテナ素子6が直線状に配置され、単一の誘電体基板61、単一の地板導体62及び単一の誘電体層64が、直線状に配置される複数のアンテナ素子導体63により共有される。
図12及び
図13で説明するアレーアンテナA1、A2は、中央給電進行波型アレーアンテナである。アレーアンテナA1、A2の水平方向を、アレーアンテナA1、A2の延伸方向に垂直な方向と定義する。アレーアンテナA1、A2の垂直方向を、アレーアンテナA1、A2の延伸方向に平行な方向と定義する。
【0078】
本発明の第1及び第2の平面アンテナの構成を
図14及び
図15に示す。本発明の平面アンテナP1、P2では、アンテナ素子6が格子状に配置され、単一の誘電体基板61、単一の地板導体62及び単一の誘電体層64が、格子状に配置される複数のアンテナ素子導体63により共有される。
図14及び
図15で説明する平面アンテナP1、P2は、中央給電進行波型平面アンテナである。平面アンテナP1、P2の水平方向を、アレーアンテナA1、A2の延伸方向に垂直な方向と定義する。平面アンテナP1、P2の垂直方向を、アレーアンテナA1、A2の延伸方向に平行な方向と定義する。
【0079】
ここで、
図12及び
図14に示したように、アレーアンテナA1は、各列のほぼ中央に配置され各列分の中央給電を行なう導波管/伝送線路変換器1〜5に接続される1本の伝送線路により、導波管/伝送線路変換器1〜5を挟んで逆方向に逆位相で給電される。例えば、
図12及び
図14に示したように、導波管/伝送線路変換器1〜5に接続される1本の伝送線路の給電箇所は、アレーアンテナA1の中央位置から90度分の位相回転に対応する線路長分だけずらした位置である。或いは、図示していないが、導波管/伝送線路変換器1〜5に接続される1本の伝送線路の給電箇所から一方向のアンテナ素子への伝送路長と、導波管/伝送線路変換器1〜5に接続される1本の伝送線路の給電箇所から他方向のアンテナ素子への伝送路長は、90度分の位相回転に対応する線路長差を有する。
【0080】
そして、
図13及び
図15に示したように、アレーアンテナA2は、各列のほぼ中央に配置され各列分の中央給電を行なう導波管/伝送線路変換器1〜5に接続される2本の伝送線路により、導波管/伝送線路変換器1〜5を挟んで逆方向に逆位相で給電される。例えば、
図13及び
図15に示したように、導波管/伝送線路変換器1〜5に接続される2本の伝送線路の給電位相は、互いに逆位相である。
【0081】
共振波型アレーアンテナは、狭帯域特性を有する一方で、進行波型アレーアンテナは、広帯域特性を有するため、広帯域用途では、進行波型アレーアンテナが利用されている。本出願の発明者は、進行波型アレーアンテナについて、以下に示す課題を突き止めた。
【0082】
つまり、進行波型アレーアンテナの全アンテナ素子が同相で励振されるときには、全アンテナ素子から同相で反射が起きるため、この周波数において反射ロスが大きくなり放射効率が低くなる。一方で、進行波型アレーアンテナの各アンテナ素子が異相で励振されるときには、各アンテナ素子から異相で反射が起きるため、正面方向からチルトした方向に放射が起きるものの、広帯域において反射ロスが小さくなり放射効率が高くなる。
【0083】
そして、進行波型アレーアンテナが一端において給電されるときには、動作周波数が変化すると、正面方向に対する放射方向の角度が変化する。一方で、進行波型アレーアンテナが中央において給電されるときには、動作周波数が変化しても、正面方向に対する放射方向の角度が変化しない。そこで、進行波型アレーアンテナを広帯域において利用する際に、アレーの中央において給電することを目標とした。
【0084】
アレーの中央において給電する場合において、アレーの一端において給電する場合と同様に、アレーの垂直方向のサイズ(すなわち、アンテナ素子数)を維持することが必要となる。つまり、アレーの中央において給電する場合において、アレーの一端において給電する場合と比べて、垂直方向の各々のサイズ(すなわち、アンテナ素子数)が半分である二体のアレーを、給電部を挟んで形成することになる。
【0085】
ここで、進行波型アレーアンテナは、給電部に近いアンテナ素子において、給電電力の一部を放射し、給電部から遠いアンテナ素子において、残りの電力の一部を放射し、アレーの終端の抵抗において、残りの電力を散逸する。よって、アレーの中央において給電する場合において、アレーの一端において給電する場合と比べて、放射効率が低くなる。
【0086】
アレーの中央において給電する場合において、アレーの一端において給電する場合と同様に、放射効率を高くするために、各アンテナ素子の放射量を増やすことが考えられる、すなわち、各アンテナ素子の幅を広げることが考えられる。しかし、各アンテナ素子の幅が広がれば、アレーの水平方向の指向性が狭くなる。本出願の発明者は、このことが、監視領域を広げたいレーダ等の用途において、問題になると突き止めた。
【0087】
そこで、
図12及び
図13に示したように、アンテナ素子6を適用することにより、放射効率を高く維持したうえで、アンテナ素子6を幅方向に小型化することができ、アンテナ素子6に水平方向の広角指向性を持たせることができる。
【0088】
そして、
図12及び
図13に示したように、伝送線路65の経路上に、スタブ66を配置することにより、全アンテナ素子6が同相で励振されるときでも、全アンテナ素子6からの同相での反射が起きにくいため、この周波数において反射ロスが小さくなり放射効率が高くなるとともに、正面方向に放射が起こるようになる。
【0089】
さらに、
図12及び
図13に示したように、伝送線路65の末端部に、終端素子67を配置することにより、アレーアンテナA1、A2は、元々終端抵抗において散逸された電力を、終端素子67において放射するため、放射効率をさらに向上させることができる。
【0090】
図14及び
図15においては、導波管/伝送線路変換器1〜5は、平面アンテナP1、P2の水平方向に千鳥状に配置されている。変形例としては、導波管/伝送線路変換器1〜5は、平面アンテナP1、P2の水平方向に直線状に配置されてもよい。