特許第6611239号(P6611239)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6611239
(24)【登録日】2019年11月8日
(45)【発行日】2019年11月27日
(54)【発明の名称】金融体験システムおよびその制御方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 40/02 20120101AFI20191118BHJP
【FI】
   G06Q40/02
【請求項の数】10
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2015-182610(P2015-182610)
(22)【出願日】2015年9月16日
(65)【公開番号】特開2017-58905(P2017-58905A)
(43)【公開日】2017年3月23日
【審査請求日】2018年5月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】302064762
【氏名又は名称】株式会社日本総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110001830
【氏名又は名称】東京UIT国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】清水 僚一
(72)【発明者】
【氏名】戸塚 章一郎
【審査官】 永野 一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−334210(JP,A)
【文献】 特開2004−227467(JP,A)
【文献】 特開2002−259695(JP,A)
【文献】 特開2003−030449(JP,A)
【文献】 特開2004−295277(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0281721(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに関連付けられた親口座および子口座のそれぞれについての取引情報を記憶するファイル,
少なくとも取引金額,取引種類および口座番号の入力を受け付ける受付装置,ならびに
取引が,親口座に対して行われた取引である場合に,取引金額および取引種類に応じて親口座残高を算出し,
取引が,子口座に対して行われた取引である場合に,取引金額および取引種類に応じて子口座残高を算出し,かつ子口座に関連づけられた親口座残高も算出し,
上記算出した子口座残高および親口座残高を記録する処理装置を備え
上記処理装置はさらに,子口座から外部口座への振込において,子口座の残高を減額するとともに親口座から外部口座への振込が行われたものとして処理するように構成されている,
金融体験システム。
【請求項2】
上記処理装置はさらに,上記親口座残高から上記子口座残高を減算した金額を親処分可能残高として上記親口座残高とは別に記録するものである,
請求項1に記載の金融体験システム。
【請求項3】
互いに関連付けられた親口座および子口座のそれぞれについての取引情報を記憶するファイル,
少なくとも取引金額,取引種類および口座番号の入力を受け付ける受付装置,ならびに
取引が,親口座と子口座との間または子口座同士間で行われる取引である場合に,取引金額および取引種類に応じて子口座残高を増減し,かつ親口座残高を増減させず,
取引が,子口座と外部口座との間で行われる取引または子口座に対する入出金である場合に,取引金額および取引種類に応じて子口座残高を増減し,かつ親口座残高も取引金額および取引種類に応じて増減し,
上記親口座残高から上記子口座残高を減算した金額を親処分可能残高として上記親口座残高とは別に記録する処理装置,
を備えている,金融体験システム。
【請求項4】
上記処理装置は,
上記親口座残高から取引金額を減算し,それと同額を親口座残高に加算することによって,上記親口座残高を増減させないようにするものである,
請求項3に記載の金融体験システム。
【請求項5】
上記取引が親口座からの出金または親口座から外部口座への振込である場合,
上記処理装置は,上記親口座から上記出金金額または振込金額を減算して親口座残高を減額し,かつ上記親処分可能残高からも上記出金金額または振込金額を減算して親処分可能残高を減額するものである,
請求項3または4に記載の金融体験システム。
【請求項6】
上記取引が親口座への入金または外部口座から親口座への振込である場合,
上記処理装置は,上記親口座に上記入金金額または振込金額を加算して親口座残高を増額し,かつ上記親処分可能残高にも上記入金金額または振込金額を加算して親処分可能残高を増額するものである,
請求項3から5のいずれか一項に記載の金融体験システム。
【請求項7】
上記処理装置は,子口座に対する取引が行われた場合に,その子口座を特定するフラグを上記取引情報に記録するものである,
請求項1から6のいずれか一項に記載の金融体験システム。
【請求項8】
互いに関連付けられた親口座および子口座のそれぞれについての取引情報を記憶するファイル,少なくとも取引金額,取引種類および口座番号の入力を受け付ける受付装置,ならびに処理装置を備える金融体験システムを制御する方法であって,
上記処理装置が,
取引が,親口座に対して行われた取引である場合に,取引金額および取引種類に応じて親口座残高を算出し,
取引が,子口座に対して行われた取引である場合に,取引金額および取引種類に応じて子口座残高を算出し,かつ子口座に関連づけられた親口座残高も算出し,
上記算出した子口座残高および親口座残高を記録
子口座から外部口座への振込において,子口座の残高を減額するとともに親口座から外部口座への振込が行われたものとして処理する,
金融体験システムの制御方法。
【請求項9】
互いに関連付けられた親口座および子口座のそれぞれについての取引情報を記憶するファイル,少なくとも取引金額,取引種類および口座番号の入力を受け付ける受付装置,ならびに処理装置を備える金融体験システムを制御する方法であって,
上記処理装置が,
取引が,親口座と子口座との間または子口座同士間で行われる取引である場合に,取引金額および取引種類に応じて子口座残高を増減し,かつ親口座残高を増減させず,
取引が,子口座と外部口座との間で行われる取引または子口座に対する入出金である場合に,取引金額および取引種類に応じて子口座残高を増減し,かつ親口座残高も取引金額および取引種類に応じて増減し,
上記親口座残高から上記子口座残高を減算した金額を親処分可能残高として上記親口座残高とは別に記録する,
金融体験システムの制御方法。
【請求項10】
請求項8または9に記載の金融体験システムの制御方法の各工程をコンピュータに実行させるための処理手順が記述された,制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は,金融体験システム,特に未成年者(子供)が金融経験を実体験することができる金融体験システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には,口座所有者(子供)と預金者(大人)と口座管理者(両親)のそれぞれについて,異なるセキュリティレベルを提供することができる子供用バンキングシステムを開示する。口座所有者(子供)は口座管理者(両親)によって選択される特権に応じて利用可能な資金の上限が設定される。
【0003】
利用可能な資金の上限が設定されることで,口座所有者(子供)はその上限内において口座から資金を引出し,商品等を購入することができる。しかしながら,このシステムでは口座所有者(子供)の口座は管理者(両親)の口座とは切り離されている。また,たとえば口座振込の場合には,口座所有者(子供)の口座の資金についてたとえ両親が子供に対してその処分を許しているとしても,第三者は未成年者との間で取引をすることになる。取引主体が子供であると,取引が後日取消されることにつながりかねない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2005−524902号公報
【発明の開示】
【0005】
この発明は,子供の収支管理ないし収支計画をアシストすることを目的とする。
【0006】
この発明はまた,子供用口座(子口座)の金融資産(預金)の処分の自由を子供に許しつつも,実際の支払い等を管理者(親,親口座)が行うことができるようにすることを目的とする。
【0007】
この発明はさらに,実際には子供に金融資産を譲渡せずに,しかしながら金融資産を譲渡した状態を仮想的に構築することができるようにすることを目的とする。
【0008】
第1の発明による金融体験システムは,互いに関連付けられた親口座および子口座のそれぞれについての取引情報を記憶するファイル,少なくとも取引金額,取引種類および口座番号の入力を受け付ける受付装置,ならびに取引が,親口座に対して行われた取引である場合に,取引金額および取引種類に応じて親口座残高を算出し,取引が,子口座に対して行われた取引である場合に,取引金額および取引種類に応じて子口座残高を算出し,かつ子口座に関連づけられた親口座残高も算出し,上記算出した子口座残高および親口座残高を記録する処理装置を備えている。
【0009】
親口座と子口座は互いに関連づけられた口座であり,関連づけられていない別の口座,すなわち外部口座と区別される。典型的には,両親(またはその一方)が所持するのが親口座であり,その子供が所持するのが子口座である。取引種類には入金(預け入れ),出金(払い戻し),振替,振込等が含まれる。上記親口座に対して行われる取引(親口座に係る取引)は,親口座からの出金,親口座への入金,親口座からの振込もしくは振替,または親口座への振込もしくは振替のいずれかである。上記子口座に対して行われる取引(子口座に係る取引)は,子口座からの出金,子口座への入金,子口座からの振込もしくは振替,または子口座への振込もしくは振替のいずれかである。
【0010】
この発明によると,親口座に対して行われた取引である場合には,取引金額および取引種類に応じて親口座残高が算出されて記録される。他方,子口座に対して行われた取引である場合には,取引金額および取引種類に応じて子口座残高が算出されて記録され,かつ子口座に関連づけられた親口座残高も算出されて記録される。
【0011】
たとえば子供が子口座からお金をおろせば(出金),子口座残高はおろした金額分だけ減ることになり,逆に子口座にお金を預ければ子口座残高は預けた金額分だけ増えることになる。子口座から外部口座に振込が行われると,子口座残高は振込金額分減ることになる。このような子口座に対する取引が行われた場合,取引後の子口座残高が算出されるとともに,親口座に対しても同じ取引が行われたものとして親口座残高も算出される(子口座の増減と同様に増減する)。すなわち,現実には子供が子口座に対して行ったものであっても,あたかも親が親口座に対して行ったものとしても記録される。これにより,たとえば子口座から外部口座に振込をする,一例をあげると毎月の塾代を子口座から塾の外部口座に振込むと,子口座において振込の情報が記録され(子口座残高が減る),かつ親口座にも振込の情報が記録される(親口座残高が減る)。子口座を用いた振込によって子供は振込を実体験することができる(塾に通うには費用が必要であることを知る)とともに,親口座から外部口座への振込が行われたものとして処理を行うことができる。外部口座を所持する第三者(塾)にとってみれば,未成年者である子供を取引主体とする取引ではなく,親を取引主体とする取引を行うものとすることができるから,第三者の取引の安全も確保することができる。このようにこの発明によれば,子口座の金融資産の処分の自由を子供に許しつつも,実際の振込(支払い)等を親口座の管理下で,すなわち親を取引主体にして行うことができる。
【0012】
すなわち,第1の発明による金融体験システムでは,子口座を所有する子供に現金の引出し,現金の預け入れ,振替,振込等を現実に体験させることができるようにしつつ,子口座からの現金の引出し,預け入れ,振込等が行われたときには,それはすべて親口座から行われたものとして処理することができる。すなわち実際には子供に金融資産は譲渡されないが,しかしながら金融資産を譲渡した状態を仮想的に構築することができ,これにより親の管理下で子供に現実の取引を体験させることができる。
【0013】
一実施態様では,上記処理装置はさらに,上記親口座残高から上記子口座残高を減算した金額を親処分可能残高として上記親口座残高とは別に記録するものである。
【0014】
たとえば,親口座から子口座に振替が行われることで,子口座における残高は増える。その分,親口座において処分可能な残高は減ることになる。これを記録するために,親口座残高とは別に親処分可能残高が設けられる。親処分可能残高は親口座残高から子口座残高を減算することで算出される。親口座と子口座との間で振替が行われた場合に,親口座残高に増減はないが子口座および親処分可能残高は増減することになる。親処分可能残高により親にとっての家計の収支計画を立てやすくなる。
【0015】
親処分残高は,取引金額および取引種類に応じた親口座残高および子口座残高の算出を終えた後に算出してもよいし,取引金額および取引種類に応じた算出を行う前の親口座残高から子口座残高を減算し,算出された値に対して取引種類に応じて取引金額を増減して算出してもよい。
【0016】
第2の発明による金融体験システムは,互いに関連付けられた親口座および子口座のそれぞれについての取引情報を記憶するファイル,少なくとも取引金額,取引種類および口座番号の入力を受け付ける受付装置,ならびに上記取引が,親口座と子口座との間,または子口座同士間で行われる取引である場合に,取引金額および取引種類に応じて子口座残高を増減し,かつ親口座残高を増減させず,上記取引が,子口座と外部口座との間で行われる取引である場合または子口座に対する入出金取引である場合に,取引金額および取引種類に応じて子口座残高を増減し,かつ親口座残高も取引金額および取引種類に応じて増減し,上記親口座残高から上記子口座残高を減算した金額を,親処分可能残高として上記親口座残高とは別に記録する処理装置を備えている。
【0017】
第2の発明によると,互いに関連づけられた親口座および子口座との間,または親口座が複数の子口座を持つ場合の子口座同士の間の取引(対内的取引,内部取引)と,対内的取引以外の取引,すなわち子口座と外部口座との間の取引および子口座に対する入出金取引(対外的取引,外部取引)の2種類の取引で処理装置の処理が異なる。
【0018】
対内的取引はいわば家族内(家庭内)の取引である。親口座および子口座の全体,すなわち家族を単位とすると,親口座と子口座との間で振替が行われても家族単位での入出金はないと考えることができる。対内的取引が行われた場合には,親口座残高は増減されず,子口座残高が増減される。
【0019】
たとえば,親口座から子口座に振替が行われることで,子口座における残高は増える。その分,親口座において処分可能な残高は減ることになる。これを記録するために,親口座残高とは別に親処分可能残高が設けられる。上述と同様に,親処分可能残高は親口座残高から子口座残高を減算することで算出される。親口座と子口座との間で振替が行われた場合に,親口座残高に増減はないが,子口座残高および親処分可能残高は増減することになる。
【0020】
子供にとって見れば自分が自由に処分することができる金融資産を子口座(その残高)により管理することになる。子口座からの出金(払い戻し),子口座への入金(預け入れ),親口座からの振替(親から子への小遣いの受け渡し),外部口座への振込等が行われると,それが取引情報としてファイルに記録される。子供にお金の収支を経験させることができ,子供の収支管理ないし収支計画をアシストすることができる。また,親にとっては,子口座残高は,いわば親口座残高のうちの支出目的が定められた金額であり,これを除いた金額が親処分可能残高として提示される。したがって親にとっても家計の収支計画を立てやすくなる。
【0021】
子口座を用いた対外的取引において,たとえば子供が子口座からお金をおろせば,子口座残高はおろした金額分だけ減ることになり,逆に子口座にお金を預ければ子口座残高は預けた金額分だけ増えることになる。子口座から外部口座に振込が行われると,子口座残高は振込金額分減ることになる。このような対外的取引の場合は,子口座残高が増減するとともに親口座残高も増減する。すなわち,対外的取引については現実には子供が子口座に対して行ったものであっても,あたかも親が親口座に対して行ったものとしても記録される。このように,子口座の金融資産の処分の自由を子供に許しつつも,実際の振込(支払い)等を親口座の管理下で,すなわち親を取引主体にして行うことができる。
【0022】
一実施態様では,上記処理装置は,取引が対内的取引である場合に,上記親口座残高から取引金額を減算し,それと同額を親口座残高に加算することによって,上記親口座残高を増減させないようにするものである。子口座残高を増減させつつ,親口座残高を増減させないようにするときに,処理装置におけるコンピュータ処理(そのアルゴリズム)を,シンプルなものにすることができる。
【0023】
なお,上記取引が親口座からの出金または親口座から外部口座への振込である場合には,上記処理装置は,上記親口座から上記出金金額または振込金額を減算して親口座残高を減額し,かつ上記親処分可能残高からも上記出金金額または振込金額を減算して親処分可能残高を減額する。
【0024】
また,上記取引が親口座への入金または外部口座から親口座への振込である場合には,上記処理装置は,上記親口座に上記入金金額または振込金額を加算して親口座残高を増額し,かつ上記親処分可能残高にも上記入金金額または振込金額を加算して親処分可能残高を増額する。
【0025】
好ましくは,子口座に対する取引が行われた場合に,その子口座を特定するフラグが上記取引情報中に記録される。取引情報のうち子口座を特定するフラグを有する情報のみを抽出することで,特定の子口座における取引履歴を一覧にすることができる。子供には,特定の子口座の取引履歴を提示するようにすればよい。
【0026】
この発明は金融体験システムの制御方法およびこの制御方法をコンピュータに実行させるための処理手順が記述された制御プログラムも提供する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】口座の種類およびその関係を示すブロック図である。
図2】親子口座情報ファイルを示す。
図3】子口座Iについての取引履歴を示す。
図4】子口座IIについての取引履歴を示す。
図5】取引処理を実行するシステムを示すブロック図である。
図6】取引処理のフローチャートを示す。
図7】取引処理のフローチャートを示す。
図8】取引処理の他の例を示すフローチャートである。
【実施例】
【0028】
図1は,この発明による実施例を示すもので,口座の種類およびその関係を示すブロック図である。
【0029】
この実施例では,顧客は親口座(本体口座)および子口座(仮想口座)の2種類の口座を開設することができる。親口座は親(両親)によって管理される口座(親用口座)を,子口座はその子供によって管理される口座(子供用口座)を,それぞれ意味する。親口座と子口座とは互いに関連付けられ(紐付けられ),関連付けられる親口座および子口座を包括的に親子口座と呼ぶ。親口座および子口座のそれぞれには独自の口座番号およびフラグが与えられる。口座番号に親子関係を表す数字を含ませてもよく,この場合には,口座番号によって,親口座であるか,子口座であるか,いずれの親口座または子口座に関連付けられているかを特定することができる。もっとも,親口座(その口座番号)と子口座(その口座番号)の関連をデータベース等に記憶させておいてもよい。また,一つの親口座に対して複数の子口座を関連付けることもできる。親口座には一般に通帳およびキャッシュカードが発行される。子口座にも通帳およびキャッシュカードを発行することができる。
【0030】
取引の種類として対内的取引(内部取引)と対外的取引(外部取引)とがある。対内的取引は親口座と子口座との間の取引,または子口座同士の取引であり,親口座から子口座への振替,子口座から親口座への振替,および子口座同士の間の振替が含まれる。対外的取引は上述した対内的取引以外の取引であり,現金の預入れ(入金),払戻し(出金),親子口座以外の口座(以下,外部口座という)からの,または外部口座への振込が含まれる。出金には,ATM(Automated Teller Machine)ないし銀行窓口を用いた現金の出金のみならず,店舗におけるキャッシュカードを用いたデビットカード決済による出金(口座からの即時の代金の引き落とし)も含まれる。
【0031】
親口座は,銀行に開設される一般的な預金口座であり,現金の預入れ,払戻し,振替および振込を行うことができる。子口座についても,親口座と同様に,現金の預入れ,払戻し,振替および振込を行うことができるが,以下に説明するように,子口座を対象にして対外的取引が行われた場合には,子口座のみならず,親口座にもその内容が反映される。また,対内的取引が行われた場合,親子口座全体を見れば入出金は無いので親口座の残高は変化せず,対内的取引が行われたこと,およびそのことによる親口座および子口座のそれぞれにおける処分可能な残高の増減は記録されることになる。
【0032】
図2は親子口座ごとに作成される親子口座情報ファイルを示している。図2を参照して,上述した対内的取引および対外的取引が行われたときの親子口座の増減の様子を具体的に説明する。
【0033】
親子口座情報ファイル14には,取引が行われるごとに,取引種類(種別)(入金または出金の区別,振替または振込であれば振替(振込)先名義,振替(振込)元名義など),取引金額,親口座残高,子口座残高,親処分可能残高およびフラグを含む取引明細(取引情報)が記録される。ここでは親口座に関連づけられて子口座Iおよび子口座IIの2つの子口座が開設されている場合を例に説明する。なお,取引種類について,たとえば親口座から子口座Iに振替があった場合には,親口座においては子口座I(または子供の名前)が振替先名義として,子口座Iにおいては親口座(または親の名前)が振替元名義として,それぞれ記録されるが,図2においては,分かりやすくするために,「親→子Iの振替」と簡潔に記載することにする。また,以下の説明のために,図2の親子口座情報ファイル14の第1列に,ケース番号1〜8を便宜的に記載する。ケース1〜ケース8は,この順番に取引が行われたものとする。
【0034】
ケース1を参照して,ケース1は親口座に100,000円の入金があったときの取引明細である。親口座に入金があった場合,親口座の残高が入金金額分,ここで100,000円増額される。親処分可能残高も入金金額分増額する。フラグには親口座に対する取引であること(子口座に対する取引でないこと)を示す「M」が記録される。子口座I,IIの残高に増減はない。増減があった残高を図2においてハッチングで示す。
【0035】
ケース2を参照して,ケース2は親口座から子口座Iへの10,000円の振替(資金移動)があったときの取引明細であり,典型的には親が子Iに対して10,000円の小遣いを与えたケースである。子口座Iの残高が10,000円増額され,親処分可能残高が10,000円減額されて90,000円が記録される。対内的取引であり,家族を単位とすれば,収入ないし支出はないので,親口座残高は変化せずに100,000円のままである。フラグには子口座Iに対する取引であることを示す「K1」が記録される。このように,親口座と子口座の間で取引があると,親口座残高は変化せずに,子口座残高および親処分可能残高が変化する。親処分可能残高は親口座残高から子口座残高を減じることで算出することができる。
【0036】
ケース3を参照して,ケース3は親口座から子口座IIへの10,000円の振替があったときの取引明細である。ケース2と同様,親口座残高は変化せず,子口座IIの残高が10,000円増額され,親処分可能残高が10,000円減額されて80,000円となる。フラグには子口座IIに対する取引であることを示す「K2」が記録される。
【0037】
ケース4を参照して,ケース4は子口座Iから5,000円が出金されたときの取引明細である。子口座Iから外部口座に5,000円が振り込まれたときにも同様の取引明細が作られる。子口座Iの残高が5,000円分減額されるとともに,対外的取引であるので,親口座からも5,000円が減額されて親口座残高が95,000円になる。子口座から出金が行われた場合,親処分可能残高は変化せず80,000円のままである。フラグには「K1」が記録される。
【0038】
ケース5を参照して,ケース5は子口座IIに6,000円の入金があったときの取引明細である。外部口座から子口座IIに6,000円の振込があったときにも同様の取引明細が作られる。子口座IIに対する現金の入金(ATMや銀行窓口からの現金入金)があった場合,または外部口座からの振込による入金,たとえば親戚からのお年玉,餞別等が口座振込によって行われたときに,ケース5の取引明細が作成される。子口座IIに6,000円の入金ないし振込があると,子口座IIの残高が6,000円増額されて16,000円になる。対外的取引であるので,親口座も6,000円増額されて親口座残高は101,000円になる。子口座に入金が行われた場合も親処分可能残高は変化せず,80,000円のままである。フラグには「K2」が記録される。
【0039】
ケース6を参照して,ケース6は親口座から30,000円の出金があったときの取引明細である。この出金も,親口座からの現金の出金であってもよいし,親口座から外部口座への振込による出金であってもよい。この場合,親口座から30,000円が減額されて親口座残高が71,000円となり,かつ親処分可能残高も30,000円減額されて50,000円となる。子口座I,IIに変化がないのは言うまでもない。フラグには「M」が記録される。
【0040】
ケース7を参照して,ケース7は親口座から子口座Iに5,000円の振替があったときの取引明細である。ケース2と同様,子口座Iの残高が5,000円増額されて10,000となり,親処分可能残高が5,000円減額されて45,000円となる。対内的取引であるから,親口座残高は変化せず71,000円のままである。フラグには「K1」が記録される。
【0041】
ケース8を参照して,ケース8は子口座Iから子口座IIへの5,000円の振替があったときの取引明細である。子口座Iの残高が5,000円減額されるとともに,子口座IIの残高が5,000円増額される。対内的取引であるから親口座残高は変化しない。親処分可能残高も変化しない。子口座Iの減額についてフラグ「K1」が記録され,子口座IIの増額についてフラグ「K2」が記録される。
【0042】
ケース1〜ケース8に含まれていないが,子口座Iまたは子口座IIから親口座への振替があれば,子口座残高が減額され,かつ親処分可能残高が増額される。親口座残高は変化しない。親口座に入金があれば,親口座残高および親処分可能残高が増額される。子口座残高は変化しない。
【0043】
子供は,自分の子口座に関する取引明細のみを参照できるようにしてもよい。また,子口座に関する取引のみを通帳形式に印字できるようにしてもよい。このようにすることで,子供は自分が処分した金融資産の実績を確認することができる。
【0044】
一方,親は,親子口座に関する取引明細のすべてを参照できるようにしてもよい。子供の実際の支払い等を管理することができる。
【0045】
図3は子口座Iについての取引履歴を示している。図4は子口座IIについての取引履歴を示している。
【0046】
図2に示す親子口座情報ファイル14に含まれる複数の取引明細のうち,フラグ「K1」を持つ取引明細を抽出し,取引種類,金額およびフラグK1に対応する残高(すなわち子口座Iの残高)を示す(他の項目を隠す)ことで,図3に示す子口座Iについての取引履歴を作成することができる。同様に,フラグ「K2」を持つ取引明細を抽出し,取引種類,金額およびフラグK2に対応する残高(すなわち子口座IIの残高)を示すことで,図4に示す子口座IIについての取引履歴を作成することができる。フラグ欄は取引履歴に含ませなくてもよい。
【0047】
子口座に対して取引が発生した場合に,上述のように子口座に対する取引明細をまとめた取引履歴を作成することができる。すなわち,ATMを用いた子口座からの出金,ATMを用いた子口座への入金,デビットカード決済をしたときの子口座からの出金,親からの振替(小遣い),子口座から外部口座への振込等を取引履歴に含ませることができる。子供にお金の収支を実体験させることができ,子供の収支管理ないし収支計画をアシストすることができる。
【0048】
子口座からの出金または子口座から外部口座への振込が発生した場合には,子口座において出金または振込についての取引明細は作成されるが,出金ないし振込は親口座(口座本体)から行うことができる(親口座の残高が減る)。すなわち,銀行では親口座から出金ないし振込が行われたものとして取り扱うことができる。子口座への入金または外部口座から子口座への振込も同様である。すなわち,子口座を使用した金融処理(入金,出金,振替,振込)は現実の口座と変わりはないが,対内的取引以外の取引が行われた場合には子口座を用いずに親口座を用いることができる(取引明細は子口座に対しても残される)。この意味で,子口座はいわば仮想的な口座と位置づけることができる。すなわち,実際には子供に金融資金(預金)を譲渡せずに,しかしながら金融資金を譲渡した状態を仮想的に構築するものと言える。これにより,子口座の資金の処分の自由を子供に許しつつも,実際の支払い等を親の管理下で,すなわち親を取引主体にして行うことができ,現実社会に即した金融経験を親の管理下において安全に子供に積ませることができる。
【0049】
また,上述のように,親子口座情報ファイル14には,親口座残高,すなわち現実に存在する口座本体の残高に加えて,親口座残高から子口座残高を減算した親処分可能残高が記録される。子口座残高はいわば親口座残高のうちの支出目的が定められた金額であり,これを除いた金額が親処分可能残高として提示されるので,親にとっても家計の収支計画を立てやすくなる。
【0050】
図5は金融機関における取引処理を実行するシステムを示すブロック図である。
【0051】
取引処理は,銀行,コンビニエンスストア,スーパー,駅構内その他に設置された自動取引処理装置(以下,ATMという)15,家庭におけるパーソナル・コンピュータ16,銀行の窓口処理装置(以下,WMという)17などが用いられて行われる。これらのATM15,パーソナル・コンピュータ16,WM17はネットワークを介して金融機関の取引処理システム10に接続される。
【0052】
金融機関の取引処理システム10は,取引処理システム10の動作全体を統括的に制御する処理装置11を備えている。処理装置11に,プログラムおよび各種データを記憶し,かつデータ格納領域を提供するメモリ12,ならびにネットワークを通じてATM15,パーソナル・コンピュータ16およびWM17との通信を行う通信装置13が接続されている。また,取引処理システム10は,親子口座ごとに,取引に関するデータが記録される親子口座情報ファイル14(図2参照)を記憶する記憶装置を備える。上述したように,取引が行われることで親子口座情報ファイル14には取引明細が順次記録される。
【0053】
図6および図7は金融機関の取引処理システム10によって行われる取引処理のフローチャートを示している。取引処理における取引種類は,入金,出金,および口座間の取引(振替または振込)を含む。
【0054】
ATM15,パーソナル・コンピュータ16またはWM17から取引金額,取引種類,口座番号等を含む取引データが伝送されて通信装置13によって受け付けられると,はじめに,出金口座番号,出金口座残高,入金口座番号,入金口座残高,金額およびフラグのそれぞれについてのデータ格納領域がメモリ12に確保される。ATM15,パーソナル・コンピュータ16またはWM17から伝送される取引データにしたがって,各データ格納領域にデータが格納される(ステップ21)。ここでフラグのデータ格納領域には初期状態においてデフォルト・データの「M」が格納される。フラグMは子口座ではないことを意味する。
【0055】
たとえば,出金取引である場合には,取引データには口座番号および出金額を表すデータが含まれる。口座番号から顧客の口座が検索されて,出金口座番号,出金口座残高および金額のデータ格納領域にデータが格納される。入金口座番号および入金口座残高のデータ格納領域は用いられない(NULLデータが格納される)。入金取引であれば,取引データには口座番号および入金額を表すデータが含まれる。口座番号から顧客の口座が検索されて,入金口座番号および入金口座残高および金額のデータ格納領域にデータが格納される。出金口座番号および出金口座残高のデータ格納領域は用いられない(NULLデータが格納される)。親口座および子口座の間の取引であれば,出金口座番号,出金口座残高,入金口座番号および入金口座残高のすべてのデータ格納領域にデータが格納される。
【0056】
以下,図2に示す親子口座情報ファイル14のケース2,ケース4,ケース5,ケース6およびケース8のそれぞれを具体例にして,図6に示すフローチャート,すなわち金融機関における取引処理を説明する。
【0057】
(ケース2)
ケース2は,親口座から子口座Iへ10,000円の振替が行われたケースである。親によってATM15またはパーソナル・コンピュータ16が操作され,または銀行職員によってWM17が操作される。たとえば,ATM15を用いる場合,親は親口座のキャッシュカードをATM15に挿入し,振替先口座として子口座Iを指定し,かつ振替金額(10,000円)を入力する。一般にはキャッシュカードの使用が正当な者による使用であるかを確かめるために,パスコード(暗証番号)の入力が求められる。
【0058】
キャッシュカードによって特定される親口座の番号が出金口座番号のデータ格納領域にセットされ,親口座の残高が出金口座残高のデータ格納領域にセットされる。さらに,指定された子口座Iの口座番号が入金口座番号のデータ格納領域にセットされ,子口座Iの残高が入金口座残高のデータ格納領域にセットされる。金額のデータ格納領域には10,000円がセットされる(ステップ21)。
【0059】
出金口座番号および出金口座残高のデータ格納領域にNULLデータが格納されているかどうかが判断される(ステップ22)。ケース2の場合,出金口座番号のデータ格納領域には親口座番号が,出金口座残高のデータ格納領域には親口座残高がそれぞれセットされるので,ステップ22はNOに進む。
【0060】
出金口座番号が子口座の番号であるかどうかが判定される(ステップ23)。ケース2では出金口座番号は親口座の番号であり,子口座の番号ではない。ステップ23もNOとなる。
【0061】
出金口座残高が,現在の出金口座残高から金額(ここでは振替金額)を減算した値に書き換えられ,取引明細が更新(作成)される(ステップ27)。すなわち,親口座の残高から10,000円が減額される(出金される)ことになる。
【0062】
次に,入金口座番号および入金口座残高のデータ格納領域にNULLデータが格納されているかどうかが判断される(ステップ28)。ケース2の場合,上述のように,入金口座番号のデータ格納領域には子口座Iの番号が,入金口座残高には子口座Iの残高が,それぞれセットされるので,ステップ28はNOに進む。
【0063】
入金口座番号が子口座の番号であるかどうかが判定される(ステップ29)。ケース2では入金口座番号は子口座Iの口座番号である。ステップ29はYES となる。
【0064】
入金口座である子口座IのフラグK1が取得され,フラグのデータ格納領域にセットされる。すなわち,デフォルトでフラグのデータ格納領域にセットされているフラグMが,フラグK1に書き換えられる。また,子口座Iが関連付けられている親口座の残高が取得される(ステップ30)。
【0065】
入金口座残高が,現在の入金口座残高に金額(ここでは振替金額)を加算した値に書き換えられる(ステップ31)。すなわち,子口座Iの残高に10,000円が加算される(子口座Iに入金される)ことになる。取引明細が更新され,子口座Iの残高が10,000円増額される。
【0066】
ステップ30において取得された親口座残高が,入金口座残高のデータ格納領域にセットされる(ステップ32)。すなわち,入金口座残高のデータ格納領域にセットされている子口座Iの残高が,親口座残高に置き換えられる。
【0067】
入金口座残高が,現在の入金口座残高に金額(ここでは振替金額)を加算した値に書き換えられる(ステップ33)。ステップ32において入金口座残高のデータ格納領域には親口座残高がセットされているので,親口座残高に10,000円が加算される(入金される)ことになる。
【0068】
上述したように,親口座残高はステップ27において10,000円が減額され,ステップ33において同額の10,000円が増額される。したがって親口座残高は結局増減が無いことになる。増減のない金額によって取引明細の親口座残高は更新される。
【0069】
最後に,親口座残高から子口座残高を減算することによって親処分可能残高が算出され,算出された親処分可能残高が取引明細に記録される(ステップ34)。上述のように,親口座残高に増減はなく,子口座Iの残高が10,000円増額するので,10,000円が減額された金額によって取引明細の親処分可能残高は更新される。
【0070】
以上の処理を経ることにより,図2のケース2の取引明細が作成されることになる。すなわち,親口座から子口座Iへの10,000円の振替があったときに,子口座Iの残高を10,000円増額させ,親処分可能残高を10,000円減額させ,親口座残高を変化させないようにし,フラグに子口座IのフラグK1を記録することができる。
【0071】
(ケース4)
ケース4は子口座Iから5,000円の出金が行われたケース,または子口座Iから外部口座への振込が行われたケースである。出金の場合,たとえば子Iが子口座IのキャッシュカードをATM15に挿入してパスコードを入力し,かつ出金額(5,000円)を入力する。正当なパスコードが入力されると,現金5,000円がATM15から排出される。外部口座への振込であれば,振込先の外部口座の口座番号が入力され,子口座Iから外部口座に5,000円の振込が行われる。
【0072】
キャッシュカードによって特定される子口座Iの口座番号が出金口座番号のデータ格納領域にセットされ,かつ子口座Iの残高が出金口座残高のデータ格納領域にセットされる。入金口座番号および入金口座残高のデータ格納領域にはNULLデータがセットされる。もっとも入金口座番号および入金口座残高のデータ格納領域にデータを格納しないようにし,その状態をNULLデータが格納されている状態であると判断してもよい。金額のデータ格納領域には5,000円が格納される。フラグのデータ格納領域は初期状態ではMが格納される(ステップ21)。
【0073】
出金口座番号および出金口座残高のデータ格納領域にデータが格納されているのでステップ22はNOに進む。また,出金口座番号は子口座Iの口座番号であるから,ステップ23の判断はYES となる。
【0074】
出金口座である子口座のフラグ,ここでは子口座IのフラグK1が取得されてフラグのデータ格納領域にセットされ,デフォルトでフラグのデータ格納領域にセットされているフラグMがフラグK1に書き換えられる。また,子口座Iが関連付けられている親口座の口座残高が取得される(ステップ24)。
【0075】
出金口座残高が,現在の出金口座残高から金額(ここでは出金額)を減算した値に書き換えられる(ステップ25)。すなわち子口座Iの残高から5,000円が減額される(出金される)ことになる。取引明細が更新(作成)される。
【0076】
親口座の口座残高が出金口座残高のデータ格納領域にセットされる(ステップ26)。すなわち,出金口座残高のデータ格納領域にセットされている子口座Iの口座残高が,親口座の口座残高に書き換えられる。
【0077】
出金口座残高が,現在の出金口座残高から金額(ここでは出金額)を減算した値に書き換えられる(ステップ27)。すなわち,親口座の残高からも5,000円が減算されることになる。取引明細が更新される。
【0078】
次に,入金口座番号および入金口座残高のデータ格納領域にNULLデータが格納されているかどうかが判断される(ステップ28)。上述のように,子口座Iから出金が行われるケース4では入金口座番号および入金口座残高のデータ格納領域にはNULLデータがセットされているので,ステップ28はYES に進む。
【0079】
親口座残高から子口座残高が減算されて親処分可能残高が算出される(ステップ34)。子口座Iの残高が5,000円減額され(ステップ25),親口座の残額も5,000円減額されている(ステップ27)ので,親処分可能残高は変化しないことになる。
【0080】
以上の処理を経ることにより,図2のケース4の取引明細が作成されることになる。すなわち,子口座Iから5,000円が出金されたときに,子口座Iの残高を5,000円減額させ,親口座残高も5,000円減額させ,親処分可能残高を変化させないようにし,フラグに子口座IのフラグK1を記録することができる。
【0081】
(ケース5)
ケース5は子口座IIへの6,000円の入金が行われたケース,または外部口座から子口座IIへの6,000円の振込が行われたケースである。入金の場合,たとえば子IIが子口座IIの通帳をATM15に挿入し,入金額を指示するとともに,現金をATM15に挿入する。外部口座からの振込であれば,振込先として指示される子口座IIに外部口座から6,000円の振込が行われる。
【0082】
子口座IIの口座番号が入金口座番号のデータ格納領域にセットされ,かつ子口座IIの残高が入金口座残高のデータ格納領域にセットされる。出金口座番号および出金口座残高のデータ格納領域にはNULLデータがセットされる。金額のデータ格納領域には6,000円がセットされ,フラグのデータ格納領域にはMがセットされる(ステップ21)。
【0083】
出金口座番号および出金口座残高のデータ格納領域にNULLデータがセットされているので,ステップ22はYES に進む。
【0084】
入金口座番号および入金口座残高のデータ格納領域にはデータが格納されており,入金口座番号は子口座IIの番号であるから,ステップ28の判断がNOとなり,ステップ29の判断はYES となる。
【0085】
入力口座である子口座IIのフラグK2が取得され,フラグのデータ格納領域にセットされる。また,子口座IIが関連付けられている親口座の口座残高が取得される(ステップ30)。
【0086】
入金口座残高が,現在の入金口座残高に金額(入金額)を加算した値に書き換えられる(ステップ31)。すなわち子口座IIの残高に6,000円が加算される(入金される)ことになる。取引明細が更新(作成)される。
【0087】
親口座の口座残高が入金口座残高のデータ格納領域にセットされる(ステップ32)。すなわち,入金口座残高のデータ格納領域にセットされている子口座IIの口座残高が,親口座の口座残高に書き換えられる。
【0088】
入金口座残高が,現在の入金口座残高に金額(ここでは入金額)を加算した値に書き換えられる(ステップ33)。すなわち,親口座の残高にも6,000円が加算されることになる。取引明細が更新される。
【0089】
最後に,親口座残高から子口座残高が減算されて親処分可能残高が算出される(ステップ34)。子口座IIの残高が6,000円増額され(ステップ31),親口座残高も6,000円増額されているので(ステップ33),親処分可能残高は変化しないことになる。
【0090】
以上の処理を経ることにより,図2のケース5の取引明細が作成されることになる。すなわち,子口座IIへ6,000円が入金(振込)されたときに,子口座IIの残高を6,000円増額させ,親口座残高も6,000円増額させ,親処分可能残高を変化させず,フラグにK2を記録することができる。
【0091】
(ケース6)
ケース6は,親口座から30,000円の出金が行われたケース,または親口座から外部口座への振込が行われたケースである。たとえば親が親口座のキャッシュカードをATM15に挿入してパスコードを入力し,かつ出金額(30,000円)を入力する。正当なパスコードが入力されると,現金30,000円がATM15から排出される。出金指示に代えて外部口座への振込指示があれば,30,000円が親口座から外部口座に振込まれる。
【0092】
キャッシュカードによって特定される親口座の口座番号が出金口座番号のデータ格納領域にセットされ,かつ親口座の残高が出金口座残高のデータ格納領域にセットされる。入金口座番号および入金口座残高のデータ格納領域にはNULLデータがセットされる。金額のデータ格納領域には30,000円がセットされ,フラグのデータ格納領域にはMがセットされる(ステップ21)。
【0093】
出金口座番号および出金口座残高のデータ格納領域にデータが格納されているのでステップ22はNOに進む。また,出金口座番号は親口座の口座番号であり,子口座の口座番号ではないので,ステップ23の判断もNO となる。
【0094】
出金口座残高が,現在の出金口座残高から金額(ここでは出金額)を減算した値に書き換えられる(ステップ27)。すなわち親口座残高から30,000円が減額される(出金される)ことになる。取引明細が更新(作成)される。
【0095】
入金口座番号および入金口座残高のデータ格納領域にNULLデータが格納されているかどうかが判断される(ステップ28)。親口座から出金が行われるケース6では,入金口座番号および入金口座残高のデータ格納領域にはNULLデータがセットされているので,ステップ28はYES に進む。
【0096】
親口座残高から子口座残高が減算されて親処分可能残高が算出される(ステップ34)。ケース6では子口座残高に変化はないが,親口座残高が30,000円分減額されているので,親処分可能残高も30,000円分減額されることになる。
【0097】
以上の処理を経ることにより,図2のケース6の取引明細が作成されることになる。すなわち,親口座から30,000円が出金されたときに,親口座残高を30,000円減額させ,親処分可能残高も30,000円減額させ,フラグに親口座のフラグMを記録することができる。子口座残高には一切変化はない。
【0098】
(ケース8)
ケース8は,子口座Iから子口座IIへ5,000円の振替が行われたケースである。子IによってたとえばATM15が操作される。子口座IのキャッシュカードがATM15に挿入され,振替先口座として子口座IIが指定され,かつ振替金額(5,000円)が入力される。ケース8の場合(すなわち,子口座間の振替),2つの取引明細がつくられる(図2参照)。
【0099】
子口座Iの番号が出金口座番号のデータ格納領域にセットされ,子口座Iの残高が出金口座残高のデータ格納領域にセットされる。さらに指定された子口座IIの口座番号が入金口座番号のデータ格納領域にセットされ,子口座IIの残高が入金口座残高のデータ格納領域にセットされる。金額のデータ格納領域には5,000円が,フラグのデータ格納領域にはMがセットされる(ステップ21)。
【0100】
ケース8では出金口座番号のデータ格納領域には子口座Iの口座番号が,出金口座残高のデータ格納領域には子口座Iの残高がそれぞれセットされるので,ステップ22はNOに進む。
【0101】
出金口座番号は子口座Iの番号であるから,ステップ23はYES となる。
【0102】
出金口座である子口座IのフラグK1が取得され,フラグのデータ格納領域にセットされる。また,子口座Iが関連付けられている親口座の残高が取得される(ステップ24)。
【0103】
出金口座残高が,現在の出金口座残高から金額(ここでは振替金額)を減算した値に書き換えられる(ステップ25)。すなわち,子口座Iの残高から5,000円が減算されることになる。取引明細が更新(作成)され,子口座Iの残高に5,000円の出金が記録される。
【0104】
ステップ24で取得された親口座残高が,出金口座残高のデータ格納領域にセットされる(ステップ26)。すなわち,出金口座残高のデータ格納領域にセットされている子口座Iの残高が,親口座残高に置き換えられる。
【0105】
出金口座残高が,現在の出金口座残高から金額(ここでは振替金額)を減算した値に書き換えられ,取引明細が更新される(ステップ27)。すなわち,親口座の残高から5,000円が減額される(出金される)ことになる。
【0106】
次に,入金口座番号および入金口座残高のデータ格納領域にNULLデータが格納されているかどうかが判断される(ステップ28)。ケース8の場合,上述のように,入金口座番号のデータ格納領域には子口座IIの番号が,入金口座残高には子口座IIの残高が,それぞれセットされるので,ステップ28はNOに進む。入金口座番号は子口座IIの番号であるから,ステップ29はYES に進む。
【0107】
入金口座である子口座IIのフラグK2が取得され,フラグのデータ格納領域にセットされる。また,子口座IIが関連付けられている親口座残高が取得される(ステップ30)。
【0108】
入金口座残高が,現在の入金口座残高に金額(ここでは振替金額)を加算した値に書き換えられる(ステップ31)。すなわち,子口座IIの残高に5,000円が加算される(子口座IIに入金される)ことになる。取引明細が更新され,子口座IIの残高に5,000円の入金が記録される。
【0109】
ステップ30において取得された親口座残高が,入金口座残高のデータ格納領域にセットされる(ステップ32)。すなわち,入金口座残高のデータ格納領域にセットされている子口座IIの残高が親口座残高に置き換えられる。
【0110】
入金口座残高が,現在の入金口座残高に金額(ここでは振替金額)を加算した値に書き換えられる(ステップ33)。ステップ32において入金口座残高のデータ格納領域には親口座残高がセットされているので,親口座残高に5,000円が加算される(入金される)ことになる。
【0111】
上述したように,親口座残高はステップ27において5,000円減額され,ステップ33において5,000円増額されるので,親口座残高は結局増減がないことになる。増減のない金額によって取引明細の親口座残高は更新される。
【0112】
最後に,親口座残高から子口座残高を減算することによって,親処分可能残高が算出され,取引明細に記録される(ステップ34)。親口座残高に増減はなく,子口座Iは5,000円減額し,子口座IIは5,000円増額するので,親処分可能残高にも増減はない。
【0113】
以上の処理を経ることにより,図2のケース8の取引明細が作成されることになる。すなわち,子口座Iから子口座IIへの5,000円の振替があったときに,子口座Iの残高を5,000円減額させ,子口座IIの残高を5,000円増額させ,親口座残高および親処分可能残高を変化させないようにすることができる。また子口座Iの減額についてフラグK1を,子口座IIの増額についてフラグK2をそれぞれ記録することができる。
【0114】
図8は金融機関の取引処理システム10によって行われる取引処理の他の実施例を示すフローチャートを示している。図6および図7に示す処理と同様の処理には同じ符号を付し,重複した詳細な説明は省略する。
【0115】
図8に示すフローチャートは,取引が親口座に対してなされたのか,または子口座に対してなされたのかに着目して図6図7と同様の処理を行うときのものである。計算結果は,図6図7を用いて説明したものと同じになる。簡潔に説明すると,取引が親口座に対してなされた場合には(ステップ23でNO,ステップ29でNO)親口座の残高を算出し(ステップ25,ステップ31),取引が子口座に対してなされた場合には(ステップ23でYES ,ステップ29でYES )子口座の残高が算出され(ステップ25,ステップ31),それのみならず,関連する親口座の残高も算出する処理(ステップ41,ステップ42)が行われる。
【0116】
親口座から子口座Iへ10,000円の振替が行われたケース2を説明する。出金口座は親口座である。ステップ22でNOに進み,親口座から10,000円が減算(減額)される(ステップ25)。入金口座は子口座Iである。ステップ28でNOに進み,子口座Iの残高に10,000円が加算(増額)される(ステップ31)。
【0117】
出金口座は親口座であるからステップ23はNOに進み,入金口座は子口座Iであるからステップ29でYES に進む。ここで,親口座残高に10,000円が加算されることになる(ステップ42)。上述したように,親口座残高はステップ25で10,000円が減算されているので,ステップ25の処理とステップ42の処理とが行われることによって親口座残高は結局増減(変化)しないことになる。子口座Iの残高を増額させ,かつ親口座残高を増減しない処理が実現される。
【0118】
最後に,親口座残高から子口座残高を減算することによって親処分可能残高が算出され,取引明細が更新されることになる(ステップ34)。
【0119】
子口座Iから5,000円の出金が行われたケース4では,ステップ25において子口座Iの残高が5,000円減額される。また,ステップ41において親口座残高も5,000円減額される。子口座Iの残高を減算するのみならず,親口座残高についても同額を減算することができる。なお,親口座残高から子口座残高を減算して得られる親処分可能残高は変化しない(ステップ34)。
【0120】
子口座IIに6,000円の入金が行われたケース5では,ステップ31において子口座IIの残高が6,000円増額され,ステップ42で親口座残高も6,000円増額される。子口座IIの残高を加算するのみならず,親口座残高についても同額を加算することができる。この場合も親処分可能残高は変化しない(ステップ34)。
【0121】
親口座から30,000円の出金が行われたケース6では,ステップ25において親口座残高が30,000円減額される。ステップ31,41,42の処理は行われない(ステップ28でYES ,ステップ23でNO,ステップ29でNO)。親口座残高のみを減算することができる。親処分可能残高も30,000円減額されることになる(ステップ34)。
【0122】
子口座Iから子口座IIへ5,000円の振込が行われたケース8では,ステップ25において子口座Iの残高が5,000円減額され,ステップ31で子口座IIの残高が5,000円増額される。ステップ41で親口座残高は5,000円減額されるが,ステップ42において5,000円増額されるので,結局親口座残高は変わらない。子口座Iの残高を減額させ,子口座IIの残高を増額させ,かつ親口座残高を増減しない処理が実現される。親処分可能残高にも増減はない(ステップ34)。
【符号の説明】
【0123】
10 取引処理システム(金融体験システム)
11 処理装置
12 メモリ
13 通信装置(受付装置)
14 親子口座情報ファイル(取引情報ファイル)
15 ATM
16 パーソナル・コンピュータ
17 WM
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8