特許第6611264号(P6611264)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大陽日酸株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6611264-ガス精製方法及び装置 図000002
  • 特許6611264-ガス精製方法及び装置 図000003
  • 特許6611264-ガス精製方法及び装置 図000004
  • 特許6611264-ガス精製方法及び装置 図000005
  • 特許6611264-ガス精製方法及び装置 図000006
  • 特許6611264-ガス精製方法及び装置 図000007
  • 特許6611264-ガス精製方法及び装置 図000008
  • 特許6611264-ガス精製方法及び装置 図000009
  • 特許6611264-ガス精製方法及び装置 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6611264
(24)【登録日】2019年11月8日
(45)【発行日】2019年11月27日
(54)【発明の名称】ガス精製方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/047 20060101AFI20191118BHJP
   C01B 3/56 20060101ALI20191118BHJP
【FI】
   B01D53/047
   C01B3/56 Z
【請求項の数】9
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-59215(P2017-59215)
(22)【出願日】2017年3月24日
(65)【公開番号】特開2018-161605(P2018-161605A)
(43)【公開日】2018年10月18日
【審査請求日】2018年12月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000231235
【氏名又は名称】大陽日酸株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 良彦
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 一彦
(72)【発明者】
【氏名】富岡 孝文
(72)【発明者】
【氏名】足立 貴義
(72)【発明者】
【氏名】小野 宏之
【審査官】 佐々木 典子
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭52−122273(JP,A)
【文献】 特表昭60−500563(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0188634(US,A1)
【文献】 特開平10−015331(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/146766(WO,A1)
【文献】 特開2014−205138(JP,A)
【文献】 特開平04−065302(JP,A)
【文献】 特開平05−192527(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/02−53/12
B01D 53/34−53/85
C01B 3/00− 6/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸着剤を充填した複数の吸着塔の圧力を相対的に高い圧力とした吸着工程と相対的に低い圧力とした再生工程とに交互に切り換えてガス分離を行う圧力変動吸着分離法によって主成分ガス中に不純物成分ガスを含む原料ガスを前記吸着塔の入口側から導入し、前記不純物成分ガスを前記吸着剤に吸着させて分離することにより、前記主成分ガスからなる精製ガスを前記吸着塔の出口側から導出するガス精製方法において、前記再生工程は、前記吸着工程を終了した一つの吸着塔内ガスを入口側から脱着ガスとして導出する脱着段階と、吸着工程を終了した他の吸着塔の脱着段階で導出した脱着ガスの少なくとも一部を、前記脱着段階を終了した一つの吸着塔のガス流れ方向中間部に導入して入口側から導出する脱着ガスパージ段階とを含んでいることを特徴とするガス精製方法。
【請求項2】
前記脱着ガスパージ段階において、前記他の吸着塔から前記一つの吸着塔に導入する脱着ガスは、他の吸着塔内に充填されている吸着剤に対する吸着力が相対的に弱い弱吸着成分ガスを主成分としていることを特徴とする請求項1記載のガス精製方法。
【請求項3】
前記脱着ガスパージ段階において、前記一つの吸着塔の入口側から導出されるガスは、一つの吸着塔内に充填されている吸着剤に対する吸着力が相対的に強い強吸着成分ガスを主成分としていることを特徴とする請求項1又は2記載のガス精製方法。
【請求項4】
前記脱着ガスパージ段階において、前記他の吸着塔の入口側から導出されるガスは、前記一つの吸着塔内の圧力を上昇させない流量に調節して一つの吸着塔内に導入することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載のガス精製方法。
【請求項5】
前記吸着塔を4塔備え、前記4塔の吸着塔は、各吸着塔それぞれに、吸着工程と、均圧操作における均圧減圧段階と、再生工程初期の脱着段階と、待機状態と、再生工程中期の脱着ガスパージ段階と、再生工程後期のガス併用パージ段階及び再生ガスパージ段階と、均圧操作における均圧昇圧段階と、充圧操作とを順次行って吸着工程に戻る一連の状態を繰り返し、第1吸着塔が前記吸着工程を行っている状態のときに、第2吸着塔は前記均圧減圧段階と前記脱着段階とを行い、第3吸着塔は、前記待機状態と前記脱着ガスパージ段階と前記ガス併用パージ段階と再生ガスパージ段階とを行い、第4吸着塔は前記均圧昇圧段階と充圧操作とを行うことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載のガス精製方法。
【請求項6】
吸着剤を充填した複数の吸着塔の圧力を相対的に高い圧力とした吸着工程と相対的に低い圧力とした再生工程とに交互に切り換えてガス分離を行う圧力変動吸着分離法によって主成分ガス中に不純物成分ガスを含む原料ガスを前記吸着塔の入口側から導入し、前記不純物成分ガスを前記吸着剤に吸着させて分離することにより、前記主成分ガスからなる精製ガスを前記吸着塔の出口側から導出するガス精製装置において、前記吸着塔は、前記再生工程で吸着塔から脱着ガスを導出する脱着ガス導出経路に、該脱着ガス導出経路を流れる脱着ガスの一部を他の吸着塔のガス流れ方向中間部に導入する脱着ガス導入経路の一端が接続されていることを特徴とするガス精製装置。
【請求項7】
前記吸着剤は、前記吸着塔内のガス流れ方向に対して2種類の吸着剤が積層充填されており、前記脱着ガス導入経路の他端は、前記2種類の吸着剤の境界部に接続されていることを特徴とする請求項6記載のガス精製装置。
【請求項8】
前記脱着ガス導入経路は、該脱着ガス導入経路内を流れるガス流量を調節する流量調節弁を備えていることを特徴とする請求項6又は7記載のガス精製装置。
【請求項9】
前記吸着塔を4塔有していることを特徴とする請求項6乃至8のいずれか1項記載のガス精製装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス精製方法及び装置に関し、詳しくは、吸着剤を充填した吸着塔の圧力を相対的に高い圧力とした吸着工程と相対的に低い圧力とした再生工程とに交互に切り換えてガス分離を行う圧力変動吸着分離法によってガスを精製する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
主成分ガス中に含まれる不純物成分ガスを分離して主成分ガスを精製する方法として、圧力変動吸着式ガス分離法(PSA)が知られている。このPSAは、不純物成分ガスを含む原料ガスを相対的に高い圧力で吸着塔の入口側から導入するとともに、吸着塔の出口側から精製ガスを導出する吸着工程と、吸着塔を相対的に低い圧力として吸着剤から不純物成分ガスを脱着させ、脱着した不純物成分ガスを吸着塔の入口側から導出する再生工程とを繰り返すことにより、不純物成分ガスを分離した精製ガスを得るようにしている。
【0003】
再生工程では、吸着塔を減圧して吸着剤に吸着している不純物成分ガスを吸着剤から脱着させるとともに、吸着塔の出口側から精製ガスの一部を導入し、脱着した不純物成分ガス(脱着ガス)を吸着塔の入口側から導出することにより、吸着塔内から不純物成分ガスをパージして吸着剤が不純物成分ガスを吸着可能な状態になるように再生している(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
また、吸着塔内からの不純物成分のパージを確実に行うため、再生工程の最終段階で、吸着塔内に精製ガスを再生ガスとして逆流させる再生パージ段階を行ったり、精製ガスの収率向上や動力費の低減を図るため、吸着工程と再生工程との間に均圧操作を挟んだり、吸着工程開始前に精製ガスを吸着塔内に導入して吸着塔内圧力を上昇させる充圧操作を行ったりすることも行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開2008/056579号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記再生パージ段階で吸着塔内から不純物成分ガスをパージする際に、パージ効果を十分に得るためには、過剰量の精製ガスを使用する必要があり、精製ガスの収率を低下させる要因となっている。また、一般に、原料ガス中には、複数の不純物成分ガスが含まれており、複数の不純物ガス成分のなかには、吸着剤に対する吸着力が相対的に強い強吸着成分ガスと、吸着力が相対的に弱い弱吸着成分ガスとがあり、強吸着成分ガスは、吸着塔入口側の吸着剤に多くが吸着され、弱吸着成分ガスは、吸着塔全体、特に出口側の吸着剤に多くが吸着された状態になる。前記再生工程で吸着塔から排出される脱着ガスは、強吸着成分ガスも弱吸着成分ガスも、何も利用することなく全量が系外に放出されている。
【0007】
そこで本発明は、再生工程の初期に吸着塔から排出される脱着ガスを有効利用することにより、精製ガスの収率向上を図ることができるガス精製方法及び装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明のガス精製方法は、吸着剤を充填した複数の吸着塔の圧力を相対的に高い圧力とした吸着工程と相対的に低い圧力とした再生工程とに交互に切り換えてガス分離を行う圧力変動吸着分離法によって主成分ガス中に不純物成分ガスを含む原料ガスを前記吸着塔の入口側から導入し、前記不純物成分ガスを前記吸着剤に吸着させて分離することにより、前記主成分ガスからなる精製ガスを前記吸着塔の出口側から導出するガス精製方法において、前記再生工程は、前記吸着工程を終了した一つの吸着塔内ガスを入口側から脱着ガスとして導出する脱着段階と、吸着工程を終了した他の吸着塔の脱着段階で導出した脱着ガスの少なくとも一部を、前記脱着段階を終了した一つの吸着塔のガス流れ方向中間部に導入して入口側から導出する脱着ガスパージ段階とを含んでいることを特徴としている。
【0009】
さらに、本発明のガス精製方法は、前記脱着ガスパージ段階において、前記他の吸着塔から前記一つの吸着塔に導入する脱着ガスは、他の吸着塔内に充填されている吸着剤に対する吸着力が相対的に弱い弱吸着成分ガスを主成分としていること、前記脱着ガスパージ段階において、前記一つの吸着塔の入口側から導出されるガスは、一つの吸着塔内に充填されている吸着剤に対する吸着力が相対的に強い強吸着成分ガスを主成分としていること、前記脱着ガスパージ段階において、前記他の吸着塔の入口側から導出されるガスは、一つの吸着塔内の圧力を上昇させない流量に調節して一つの吸着塔内に導入することをそれぞれ特徴としている。
【0010】
さらに、前記吸着塔を4塔備え、前記4塔の吸着塔は、各吸着塔それぞれに、吸着工程と、均圧操作における均圧減圧段階と、再生工程初期の脱着段階と、待機状態と、再生工程中期の脱着ガスパージ段階と、再生工程後期のガス併用パージ段階及び再生ガスパージ段階と、均圧操作における均圧昇圧段階と、充圧操作とを順次行って吸着工程に戻る一連の状態を繰り返し、第1吸着塔が前記吸着工程を行っている状態のときに、第2吸着塔は前記均圧減圧段階と前記脱着段階とを行い、第3吸着塔は、前記待機状態と前記脱着ガスパージ段階と前記ガス併用パージ段階と再生ガスパージ段階とを行い、第4吸着塔は前記均圧昇圧段階と充圧操作とを行うことを特徴としている。
【0011】
また、本発明のガス精製装置は、吸着剤を充填した複数の吸着塔の圧力を相対的に高い圧力とした吸着工程と相対的に低い圧力とした再生工程とに交互に切り換えてガス分離を行う圧力変動吸着分離法によって主成分ガス中に不純物成分ガスを含む原料ガスを前記吸着塔の入口側から導入し、前記不純物成分ガスを前記吸着剤に吸着させて分離することにより、前記主成分ガスからなる精製ガスを前記吸着塔の出口側から導出するガス精製装置において、前記吸着塔は、前記再生工程で吸着塔から脱着ガスを導出する脱着ガス導出経路に、該脱着ガス導出経路を流れる脱着ガスの一部を他の吸着塔のガス流れ方向中間部に導入する脱着ガス導入経路の一端が接続されていることを特徴としている。
【0012】
さらに、本発明のガス精製装置は、前記吸着剤が、前記吸着塔内のガス流れ方向に対して2種類の吸着剤が積層充填されており、前記脱着ガス導入経路の他端が、前記2種類の吸着剤の境界部に接続されていること、前記脱着ガス導入経路が、該脱着ガス導入経路内を流れるガス流量を調節する流量調節弁を備えていること、前記吸着塔を4塔有していることを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、吸着塔の再生工程を効率よく行うことができ、再生工程で使用する精製ガスの使用量を低減できるので、精製ガスの収率向上が図れ、運転コストの低減が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明のガス精製方法を実施可能な本発明のガス精製装置の一形態例を示す系統図である。
図2】本発明のガス精製方法における吸着塔内の各種ガスの状態を示す説明図である。
図3】本発明のガス精製方法を適用した4塔式PSA装置における運転方法の一例を示すもので、第1吸着塔が吸着工程、第2吸着塔が均圧減圧段階、第3吸着塔が待機状態、第4吸着塔が均圧昇圧段階を行っている状態を示す説明図である。
図4】同じく、第1吸着塔が吸着工程、第2吸着塔が脱着段階、第3吸着塔が脱着ガスパージ段階、第4吸着塔が充圧操作を行っている状態を示す説明図である。
図5】同じく、第1吸着塔が吸着工程、第2吸着塔が脱着段階、第3吸着塔がガス併用パージ段階、第4吸着塔が充圧操作を行っている状態を示す説明図である。
図6】同じく、第1吸着塔が吸着工程、第2吸着塔が脱着段階、第3吸着塔が再生ガスパージ段階、第4吸着塔が充圧操作を行っている状態を示す説明図である。
図7】同じく、第1吸着塔が均圧減圧段階、第2吸着塔が待機状態、第3吸着塔が均圧昇圧段階、第4吸着塔が吸着工程を行っている状態を示す説明図である。
図8】同じく、第1吸着塔が脱着段階、第2吸着塔が脱着ガスパージ段階、第3吸着塔が充圧操作、第4吸着塔が吸着工程を行っている状態を示す説明図である。
図9】第1吸着塔が吸着工程を開始してから充圧操作を終えるまでの各弁の開閉切換ステップを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明のガス精製方法を実施可能な本発明のガス精製装置の一形態例を示す系統図である。本形態例に示すガス精製装置は、吸着剤を充填した4つの吸着塔(第1吸着塔10,第2吸着塔20,第3吸着塔30,第4吸着塔40)を使用した4塔式の圧力変動吸着式ガス分離装置(PSA装置)であって、各吸着塔の圧力を、相対的に高い圧力とした吸着工程と相対的に低い圧力とした再生工程とに、あらかじめ設定された順序及び時間で交互に切り換えることにより、主成分ガス中に不純物成分ガスを含む原料ガスから不純物成分ガスを分離し、高純度の主成分ガスからなる精製ガスを連続的に導出できるように形成している。また、吸着工程と再生工程とを切り換える際に一方の吸着塔から他方の吸着塔に塔内ガスを移動させる均圧操作及び吸着工程開始前の吸着塔に精製ガスを導入する充圧操作を行い、吸着塔内ガスの有効利用を図るとともに、吸着塔内の急激な圧力変動を抑制するようにしている。
【0016】
各吸着塔10,20,30,40の原料ガス入口側(塔下部)には、入口弁11V,21V,31V,41Vを有する原料ガス入口経路11,21,31,41と、脱着ガス導出弁12V,22V,32V,42Vを有する脱着ガス導出経路12,22,32,42と、減圧排気弁13V,23V,33V,43Vを有する減圧排気経路13,23,33,43とが設けられている。
【0017】
また、各吸着塔11〜41の精製ガス出口側(塔上部)には、出口弁14V,24V,34V,44Vを有する精製ガス出口経路14,24,34,44と、精製ガス導入弁15V,25V,35V,45Vを有する精製ガス導入経路15,25,35,45と、均圧弁16V,26V,36V,46Vを有する均圧経路16,26,36,46とが設けられている。
【0018】
さらに、原料ガス入口経路11,21,31,41は、圧縮機51を有する原料ガス導入経路52にそれぞれ接続しており、減圧排気経路13,23,33,43は、真空ポンプ53を有する真空排気経路54にそれぞれ接続している。この真空排気経路54における真空ポンプ53の入口側には、ポンプ吸入弁53Vとバイパス弁55Vとによって排気経路を切り換えるためのバイパス経路55が設けられている。また、脱着ガス導出経路12,22,32,42は、排気弁56Vを有する排気経路56に纏められている。一方、精製ガス出口経路14,24,34,44及び精製ガス導入経路15,25,35,45は、精製ガス貯槽57を有する精製ガス導出経路58にそれぞれ接続している。さらに、均圧経路16,26,36,46は、一つの均圧主経路59にそれぞれ接続している。
【0019】
そして、前記脱着ガス導出経路12,22,32,42からは、流量調節弁17V,27V,37V,47Vを有する脱着ガス導入経路17,27,37,47の一端がそれぞれ接続されており、脱着ガス導入経路17,27,37,47の他端は、各吸着塔10,20,30,40のガス流れ方向(上下方向)の中間部にそれぞれ接続されている。
【0020】
また、各吸着塔10,20,30,40の内部には、不純物成分ガスを吸着するための第1吸着剤61と第2吸着剤62との2種類の吸着剤が積層充填されており、第1吸着剤61と第2吸着剤62との境界部63に対応する位置に前記脱着ガス導入経路17,27,37,47の他端が配置されている。
【0021】
第1吸着剤61及び第2吸着剤62は、主成分ガスの種類と吸着除去する不純物成分ガスの種類とに応じて選定されるものであって、例えば、都市ガス、アンモニア、有機ハイドライド(MCH)、バイオガス、バイオマスなどを原料として製造される水素ガスを主成分ガスとし、水素ガス中に含まれる各種不純物成分ガスを分離、除去して水素ガスを精製する場合には、各吸着塔10,20,30,40の入口側に配置される第1吸着剤61には、不純物成分ガスのなかのベンゼン、トルエンなどの有機物、有機溶剤、アンモニア、水分などを主に吸着除去するための活性アルミナや、椰子殻系又は石油系活性炭を使用することができ、各吸着塔10,20,30,40の出口側に配置される第2吸着剤62には、炭化水素、無機ガスなどを主に吸着除去するためのLi−X型、Ca−X型、Na−X型、Ca−A型のゼオライトを使用することができる。この場合、ベンゼン、トルエン、アンモニア、水分などは、第1吸着剤61に対する吸着力が相対的に強い強吸着成分ガスであり、炭化水素、無機ガスなどは、第1吸着剤61に対する吸着力が相対的に弱い弱吸着成分ガスである。
【0022】
図2は、本発明のガス精製方法において、吸着工程から再生工程にわたる吸着塔内の各主成分ガスの分布状態を示している。なお、以下の説明において、図1に示したガス精製装置の構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。また、各図において、黒塗りの弁は閉弁状態、白抜きの弁は開弁状態を示し、各矢印はガスの流れ方向を示している。
【0023】
まず、図2(a)に示す吸着工程では、一つの吸着塔、例えば第1吸着塔10の下部の入口側に接続した原料ガス入口経路から所定の大気圧以上の吸着工程圧力、例えばゲージ圧で900kPaに昇圧された原料ガスGが導入され、強吸着成分ガスGAが塔下部の吸着剤に吸着するとともに、弱吸着成分ガスGBが塔上部の吸着剤に吸着し、精製されたガス(精製ガス)GCが塔上部の出口側に接続した精製ガス出口経路14から導出されている。この吸着工程は、吸着剤が不純物成分で飽和する前に終了する。
【0024】
図2(b)は、第1吸着塔10が再生工程初期の脱着段階を行い、他の吸着塔、例えば第2吸着塔20が脱着段階終了後の脱着ガスパージ段階を行っている状態を示している。脱着段階にある第1吸着塔10では、塔内ガスが塔下部の脱着ガス導出弁12Vを通って脱着ガス導出経路12に排出されることによる塔内圧力の低下に伴って吸着剤に吸着していた不純物成分ガスが脱着し、脱着ガスGDとなって第1吸着塔10から導出されるとともに、脱着ガスの一部GDdが、脱着ガス導入経路27に分流し、流量調節弁27Vで流量調節されて脱着ガスパージ段階を行っている第2吸着塔20のガス流れ方向中間部に導入される。
【0025】
このときの第2吸着塔20への脱着ガスの一部GDdの導入位置は、脱着段階終了後において塔内に低濃度で残留している残留強吸着成分ガスGaの部分より僅かに上方に設定する。すなわち、脱着段階初期の第1吸着塔10から導出される脱着ガスGDの大部分は、塔内圧力の低下による脱着速度が相対的に速い弱吸着成分ガスであることから、第1吸着塔10からの脱着ガスの一部GDdを第2吸着塔20内で強吸着成分ガスが残留している部分より上方に導入することにより、第1吸着塔10からの脱着ガスの一部GDdによって第2吸着塔20内の残留強吸着成分ガスGaを第2吸着塔20の塔下部から減圧排気経路33に排気ガスGEとして塔外に導出することができ、吸着剤からの強吸着成分ガスGAの脱着を促進することができる。
【0026】
また、第2吸着塔20内における残留強吸着成分ガスGaの部分より僅か上方に第1吸着塔10からの脱着ガスの一部GDdを導入することにより、第1吸着塔10からの脱着ガスGDに僅かに含まれている強吸着成分ガスGAが第2吸着塔20の上方の吸着剤に再吸着することがなくなり、脱着ガスの一部GDd中の強吸着成分ガスGAを第2吸着塔20内の残留強吸着成分ガスGaと一緒に第2吸着塔20の下部から導出できるので、吸着剤からの不純物成分ガスの脱着及び排出を効果的に行うことができる。この脱着ガスパージ段階において第2吸着塔20に導入される脱着ガスの一部GDdの主成分である弱吸着成分ガスは、吸着力が弱いため、第2吸着塔20内の吸着剤に再吸着することはほとんどない。
【0027】
脱着ガスパージ段階で脱着ガスの一部GDdを第2吸着塔20に導入する際には、第2吸着塔20内の圧力が上昇しないように、流量調節弁27Vによって脱着ガスの一部GDdの流量を調節することで、第2吸着塔20内の圧力上昇によって脱着ガスの一部GDd中の強吸着成分ガスGAが第2吸着塔20内の吸着剤に再吸着することを防止できる。また、脱着ガスパージには、脱着ガスGDの全量又は一部を流量調節して使用することが可能である。脱着ガスパージ段階は、第1吸着塔10からの脱着ガスGDに含まれる強吸着成分ガスGA量が、第2吸着塔20内の吸着剤から脱着した強吸着成分ガスGA量より増加する前に終了させる。
【0028】
一方、第1吸着塔10では、弱吸着成分ガスGBの大部分と、強吸着成分ガスGAの一部が脱着し、脱着ガスGDとして塔下部から導出されるので、第1吸着塔10の塔内には、塔上部から順に、低濃度で残留した大量の弱吸着成分ガス(残留弱吸着成分ガスGb)と、未だ高濃度で残る少量の弱吸着成分ガスGBと、低濃度で残留した少量の残留強吸着成分ガスGaと、未だ高濃度で残る大量の強吸着成分ガスGAとが存在する状態になり、塔下部からの塔内ガスの排出が進むことにより、塔上半部からは弱吸着成分ガスGBのほとんどが脱着して排出され、塔下半部では強吸着成分ガスGAの脱着が進んで大部分が低濃度の残留強吸着成分ガスGaとなる。
【0029】
前記脱着ガスパージ段階で塔内から残留強吸着成分ガスGaの大部分を排出し、より低濃度の残留強吸着成分ガスGa及び残留弱吸着成分ガスGbが塔内に残留する状態になったときに第2吸着塔20の脱着ガスパージを終了する。そして、脱着ガスパージ段階の終了直前あるいは終了後 塔内圧力が大気圧あるいは大気圧以下になったときに、図2(c)に示すように、第2吸着塔20の出口側の精製ガス導入経路25から精製ガスGCの一部を導入し、入口側の減圧排気経路33から導出する精製ガスパージ段階を開始することにより、少量の精製ガスGCで、塔内に残留する残留強吸着成分ガスGa及び残留弱吸着成分ガスGbを排気ガスGEとして塔外に排出することができる。これにより、第2吸着塔20内の吸着剤に吸着していた各種不純物成分ガスを脱着させて排出する第2吸着塔20の再生工程が終了する。また、塔内圧力を大気圧以下、例えば絶対圧力で5〜20kPa、好ましくは10kPaに減圧することにより、吸着剤からの不純物成分ガスの脱着をより確実に行うことができる。
【0030】
このように、再生工程の初期において、脱着段階を行っている他の吸着塔から導出した脱着ガスの少なくとも一部を利用した脱着ガスパージ段階を行うことにより、塔内に残留する強吸着成分ガスの脱着、排出を効果的に行うことができ、脱着ガスパージ段階を行わず、脱着段階に続いて精製ガスパージ段階を行う従来の方法に比べ、再生工程後期の精製ガスパージ段階で使用する精製ガス量を少なくすることができる。例えば、精製ガスパージ段階で使用する精製ガス量を従来の半分以下に低減することが可能であり、精製ガスの回収率を従来の80%程度から90%程度にまで向上させることが可能となり、精製ガスの収率を大幅に向上させることができる。
【0031】
次に、図1に示した4塔式の圧力変動吸着式ガス分離装置を使用して本発明方法を適用した運転方法の一例を、図3乃至図8を参照して説明する。なお、図3乃至図8では、ガスが流れている経路を太線で表し、ガスの流れ方向を矢印で示しており、ガスの流れに関係する主要部分にのみ符号を付している。
【0032】
まず、図3は、第1吸着塔10が吸着工程に切り換わり、第2吸着塔20が吸着工程から再生工程に切り換わる際に行われる均圧操作の均圧減圧段階に切り換わり、第3吸着塔30が再生工程前の待機状態であり、第4吸着塔40が再生工程から吸着工程に切り換わる際に行われる均圧操作の均圧昇圧段階に切り換わった状態を示している。
【0033】
吸着工程を開始した第1吸着塔10では、圧縮機51であらかじめ設定された圧力に昇圧された原料ガス、例えば、各種不純物成分ガスを含んだ水素ガスを主成分ガスとした原料ガスが、原料ガス導入経路52、原料ガス入口経路11、入口弁11Vを通って塔下部に導入され、塔内に充填した第1吸着剤61及び第2吸着剤62に各種不純物成分ガスを吸着させて水素ガスから分離し、精製した水素ガスが塔上部から出口弁14V、精製ガス出口経路14に導出され、精製ガス導出経路58を通って精製ガス貯槽57に一時貯留された後、精製ガス貯槽57内の水素ガスが充填場などの使用先に供給される。
【0034】
均圧減圧段階に切り換わった第2吸着塔20は、塔上部の均圧弁26V、均圧経路26を通して塔内に高圧状態で残留しているガス(水素ガス)が均圧主経路59に導出されており、均圧昇圧段階に切り換わった第4吸着塔40は、第2吸着塔20から均圧主経路59に導出されたガスが塔上部の均圧弁46V、均圧経路46を通して第4吸着塔40内に導入される。これにより、第2吸着塔20内は高圧状態から中間圧力に減圧し、第4吸着塔40内は低圧状態から中間圧力に昇圧する。
【0035】
図4は、第1吸着塔10が吸着工程を継続し、第2吸着塔20が均圧減圧操作から再生工程における脱着段階に切り換わり、第3吸着塔30が待機状態から再生工程における脱着ガスパージ段階に切り換わり、第4吸着塔40が均圧昇圧段階から充圧操作に切り換わった状態を示している。
【0036】
第1吸着塔10は、前記同様に、圧縮機51で昇圧された原料ガスが原料ガス入口経路11から塔下部に導入され、精製された水素ガスが塔上部から精製ガス出口経路14に導出され、精製ガス導出経路58を通って精製ガス貯槽57に貯留されている。
【0037】
均圧弁26Vが閉じて脱着段階に切り換わった第2吸着塔20では、塔内のガスが脱着ガス導出弁22Vを通って脱着ガス導出経路22に脱着ガスとして導出され、該脱着ガスの一部又は全量が、脱着ガス導入経路37を通り、流量調節弁37Vで流量調節された後、第3吸着塔30のガス流れ方向中間部に形成された第1吸着剤61と第2吸着剤62との境界部63に対応する位置に導入されるとともに、該第3吸着塔30内のガスが減圧排気弁33V、減圧排気経路33を通り、排気ガスとして塔外に導出されることによって第3吸着塔30の脱着ガスパージ段階が行われる。第3吸着塔30から減圧排気経路33を経て真空排気経路54に導出される排気ガスの圧力が系外に排出可能な圧力を有している場合は、ポンプ吸入弁53Vが閉じられてバイパス弁55Vが開き、バイパス経路55を通して排気ガス自身の圧力によって系外に排気される。
【0038】
また、充圧操作に切り換わった第4吸着塔40では、均圧弁46Vが閉じて精製ガス導入弁45Vが開き、精製ガス導出経路58から精製された水素ガスの一部が精製ガス導入経路45に分流して第4吸着塔40に導入され、第4吸着塔40内が吸着工程圧力に昇圧される。
【0039】
図5は、第1吸着塔10が前記吸着工程を、第2吸着塔20が前記脱着段階を、第4吸着塔40が前記充圧操作をそれぞれ継続しつつ、第3吸着塔30が脱着ガスパージ段階を終了して再生ガスと脱着ガスとを併用したガス併用パージ段階に切り換わった状態を示している。
【0040】
ガス併用パージ段階に切り換わった第3吸着塔30では、精製ガス導入弁35Vが開き、精製ガス導出経路58を流れる精製された水素ガスの一部が精製ガス導入経路35を通って第3吸着塔30に導入される。同時に、バイパス弁55Vが閉じてポンプ吸入弁53Vが開き、真空排気経路54を流れる排気ガスが、真空ポンプ53に吸引されることにより、第3吸着塔30内が減圧され、より低圧での吸着剤の再生が行われるとともに、吸着剤から脱着した不純物成分が、塔上部から導入される水素ガスと塔中間部に導入される脱着ガスとによって塔外に排出され、吸着剤の再生が促進される。
【0041】
図6は、第1吸着塔10が吸着工程を、第2吸着塔20が脱着段階を、第4吸着塔40が充圧操作をそれぞれ継続し、第3吸着塔30が再生工程における脱着ガスパージ段階から再生ガスパージ段階に切り換わった状態を示している。
【0042】
再生ガスパージ段階に切り換わった第3吸着塔30では、流量調節弁37Vが閉じられて脱着ガス導入経路37からの脱着ガスの導入が終了し、精製ガス導入経路35を通って第3吸着塔30に導入される水素ガスを使用した再生ガスが塔内を流れ、減圧排気経路33を介して真空ポンプ53で吸引排気されることにより、第3吸着塔30内に充填された両吸着剤61,62の再生処理が十分に進行し、第3吸着塔30内が低圧の水素ガスで満たされた状態になる。
【0043】
また、第3吸着塔30への脱着ガスの導入が終了した第2吸着塔20では、排気弁56Vが開くことにより、脱着ガス導出経路22に導出された脱着ガスが排気経路56を通って系外に排気され、第2吸着塔20内が略大気圧まで減圧されて両吸着剤61,62からの不純物成分の脱着が進行する。
【0044】
図7は、第1吸着塔10が吸着工程を終了して均圧操作の均圧減圧段階に切り換わり、第2吸着塔20が再生工程における脱着段階を終了して待機状態になり、第3吸着塔30が脱着ガスパージ段階から均圧操作における均圧昇圧段階に切り換わり、第4吸着塔40が充圧操作から吸着工程に切り換わった状態を示している。
【0045】
吸着工程が終了した第1吸着塔10では、入口弁11Vが閉じて原料ガスの導入が終了し、均圧弁16Vが開くとともに、再生ガスパージ段階を終了した第3吸着塔30では、精製ガス導入弁35Vが閉じて再生ガスである水素ガスの導入が導入し、均圧弁36Vが開く。これにより、吸着工程を終了した高圧状態の第1吸着塔10内のガスが、再生ガスパージ段階を終了した低圧状態の第3吸着塔30内に導入され、第1吸着塔10では均圧減圧段階が行われて塔内に水素ガスが第3吸着塔30内に導入され、第3吸着塔30の均圧昇圧段階が行われ、第1吸着塔10内の水素ガスが第3吸着塔30内に回収されることにより、第1吸着塔10及び第3吸着塔30の内部圧力が、吸着工程圧力と再生工程圧力との間の中間圧力になる。
【0046】
第2吸着塔20では、塔上下の全ての弁が閉じられて待機状態になり、ポンプ吸入弁53Vが閉じ、真空ポンプ53による真空排気も終了する。一方、吸着工程に切り換わった第4吸着塔40は、入口弁41V及び出口弁44Vが開き、圧縮機51で昇圧された原料ガスが、原料ガス導入経路52、原料ガス入口経路41、入口弁41Vを通って塔下部に導入され、第1吸着剤61及び第2吸着剤62に各種不純物成分ガスを吸着させることによって精製された水素ガスが、出口弁44V、精製ガス出口経路44、精製ガス導出経路58を通って精製ガス貯槽57に貯留される。
【0047】
この図7に示す状態は、前記図3に示した状態と同様の状態であり、図7における第1吸着塔10は図3における第2吸着塔20と、図7における第2吸着塔20は図3における第3吸着塔30と、図7における第3吸着塔30は図3における第4吸着塔40と、図7における第4吸着塔40は図3における第1吸着塔10と、それぞれ同じ状態になっている。
【0048】
図8は、第1吸着塔10が均圧減圧段階から再生工程における脱着段階に切り換わり、第2吸着塔20が待機状態から再生工程における脱着ガスパージ段階に切り換わり、第3吸着塔30が均圧昇圧段階から充圧操作に切り換わり、第4吸着塔40が吸着工程を継続している状態を示している。
【0049】
均圧減圧段階で中間圧力に減圧した第1吸着塔10では、脱着ガス導出弁12Vが開くことによって塔内ガスが脱着ガス導出経路12に導出される。同時に、脱着ガスパージ段階に切り換わった第2吸着塔20では、流量調節弁27Vがあらかじめ設定された流量になるような開度に開弁し、第1吸着塔10から脱着ガス導出経路12に導出された脱着ガスが、脱着ガス導入経路27を通って第1吸着剤61と第2吸着剤62との境界部63に導入される。これにより、第2吸着塔20内のガスが減圧排気弁23V、減圧排気経路23、開弁状態のバイパス弁55V、バイパス経路55を通って系外に導出される。
【0050】
均圧昇圧段階から充圧操作に切り換わった第3吸着塔30では、均圧弁36Vが閉じて精製ガス導入弁35Vが開くことにより、吸着工程を継続している第4吸着塔40から精製ガス出口経路44に導出され、精製ガス導出経路58を流れる吸着工程圧力の水素ガスの一部が精製ガス導入経路35を通って第3吸着塔30に導入され、第3吸着塔30内が吸着工程圧力の水素ガスで満たされる。
【0051】
この図8に示す状態は、前記図4に示した状態と同様の状態であり、図8における第1吸着塔10は図4における第2吸着塔20と、図8における第2吸着塔20は図4における第3吸着塔30と、図8における第3吸着塔30は図4における第4吸着塔40と、図8における第4吸着塔40は図3における第1吸着塔10と、それぞれ同じ状態になっており、以下、同様の状態が各吸着塔について繰り返されていく。
【0052】
例えば、第1吸着塔10においては、図3乃至図6に示す吸着工程を行った後、均圧操作における均圧減圧段階を経て再生工程に入り、再生工程における脱着段階を行って脱着ガスを他の吸着塔に供給し、待機状態を挟んで他の吸着塔からの脱着ガスを使用した脱着ガスパージ段階を行う。次いで、脱着ガスパージ状態を継続しつつ出口側から精製された水素ガス(再生ガス)を塔内に導入しながら塔内を真空排気するガス併用パージ段階を行った後、塔中間部への他の吸着塔からの脱着ガスの導入を停止し、再生ガスを塔内に流通させる再生ガスパージ段階を行うことによって再生工程を終了する。そして、吸着工程を終えた他の吸着塔との上部同士を連通させて均圧操作における均圧昇圧段階を経て水素ガスを塔内に導入して塔内を吸着工程圧力に昇圧する充圧操作を行う。
【0053】
すなわち、各吸着塔は、吸着工程、均圧減圧段階、脱着段階、待機状態、脱着ガスパージ段階、ガス併用パージ段階、再生ガスパージ段階、均圧昇圧段階、充圧操作を行って吸着工程に戻る一連の状態を繰り返していくことになる。
【0054】
図9は、第1吸着塔10が吸着工程を開始してから充圧操作を終えるまでの各弁の開閉切換ステップを示す図であって、黒塗り部分が開弁状態を示している。但し、流量調節弁は流量調節状態である。このように、第1吸着塔が前記吸着工程を行っている状態のときに、第2吸着塔は前記均圧減圧段階と前記脱着段階とを行い、第3吸着塔は、前記待機状態と前記脱着ガスパージ段階と前記ガス併用パージ段階と再生ガスパージ段階とを行い、第4吸着塔は前記均圧昇圧段階と充圧操作とを行う状態に設定することにより、4塔の吸着塔のいずれか一つの吸着塔が吸着工程を行う状態にでき、原料ガスを連続的に精製することができる。
【0055】
なお、吸着塔の設置数は任意であって2塔以上で実施可能であり、精製ガス導入経路は、精製ガス貯槽に接続するようにしてもよい。また、前記形態例に示す4塔式とすれば、精製ガスを連続して導出できるという利点を有しており、さらに、精製ガス貯槽を省略することが可能である。吸着剤の種類は、精製ガス及び不純物成分ガスの種類に応じて1種類以上を使用すればよく、吸着剤が1種類の場合、脱着ガスパージ段階における脱着ガスの導入位置は、吸着剤への藤生物成分ガスの吸着状態に応じて最適な位置を選定すればよい。また、各工程、各段階の切換時間は、精製ガスの必要量、吸着塔の容積、吸着工程と再生工程との圧力差、吸着剤の種類などの条件に応じて適宜設定することができる。
【符号の説明】
【0056】
10,20,30,40…吸着塔、11,21,31,41…原料ガス入口経路、11V,21V,31V,41V…入口弁、12,22,32,42…脱着ガス導出経路、12V,22V,32V,42V…脱着ガス導出弁、13,23,33,43…減圧排気経路、13V,23V,33V,43V…減圧排気弁、14,24,34,44…精製ガス出口経路、14V,24V,34V,44V…出口弁、15,25,35,45…精製ガス導入経路、15V,25V,35V,45V…精製ガス導入弁、16,26,36,46…均圧経路、16V,26V,36V,46V…均圧弁、17,27,37,47…脱着ガス導入経路、17V,27V,37V,47V…流量調節弁、51…圧縮機、52…原料ガス導入経路、53…真空ポンプ、53V…ポンプ吸入弁、54…真空排気経路、55…バイパス経路、55V…バイパス弁、56…排気経路、56V…排気弁、57…精製ガス貯槽、58…精製ガス導出経路、59…均圧主経路、61…第1吸着剤、62…第2吸着剤、63…境界部、G…原料ガス、GA…強吸着成分ガス、Ga…残留強吸着成分ガス、GB…弱吸着成分ガス、GC…精製ガス、GD…脱着ガス、GDd…一部の脱着ガス、GE…排気ガス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9