(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6611295
(24)【登録日】2019年11月8日
(45)【発行日】2019年11月27日
(54)【発明の名称】ゼオライト膜の製造方法
(51)【国際特許分類】
B01D 71/02 20060101AFI20191118BHJP
C01B 39/02 20060101ALI20191118BHJP
【FI】
B01D71/02
C01B39/02
【請求項の数】3
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2019-89194(P2019-89194)
(22)【出願日】2019年5月9日
【審査請求日】2019年7月4日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518126144
【氏名又は名称】株式会社三井E&Sマシナリー
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】前川 和也
【審査官】
増田 健司
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−99338(JP,A)
【文献】
特開2008−285365(JP,A)
【文献】
特開2010−17606(JP,A)
【文献】
特開2010−58015(JP,A)
【文献】
特開2018−167267(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 71/02
C01B 39/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の第1工程から第4工程;
支持体の表面にゼオライトの微細結晶を付着する第1工程、
前記微細結晶を成長させるための合成ゲルを調製する第2工程、
反応器内に、前記支持体および前記合成ゲルを入れ、水熱合成を行う第3工程、
水熱合成された前記支持体を洗浄する第4工程、
からなる前記支持体の表面にゼオライトを形成するゼオライト膜の製造方法であって、
前記第3工程において、前記反応器として、恒温装置内で移動可能に配置された複数の容器を用い、前記恒温装置内の温度および圧力により前記水熱合成の温度および圧力を調節し、前記反応器が前記恒温装置へ入ってから出てくるまでの時間を設定し前記水熱合成の反応時間を調節することを特徴とするゼオライト膜の製造方法。
【請求項2】
前記第2工程において、少なくとも2つの前記調製設備を使用し、前記合成ゲルを連続的に調製することを特徴する請求項1に記載のゼオライト膜の製造方法。
【請求項3】
前記第4工程において、前記恒温装置から出された前記反応器から、ゼオライト膜を有する支持体を順次取出し、連続的に洗浄することを特徴する請求項1または2に記載のゼオライト膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゼオライト膜を工業的に連続式に製造するゼオライト膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、商業プラントにおいて、液体混合物または気体混合物を分離・濃縮するプロセスへのゼオライト膜の利用が拡大している。一般に分離・濃縮用のゼオライト膜は、多孔質の支持体の表面に合成され、支持体と一体として利用される。このようなゼオライト膜は、工業的にも支持体の表面に種結晶を塗布し、その支持体を水性ゲル中に浸漬して水熱合成するという、バッチ式で製造されていた(例えば、特許文献1参照)。このため、ゼオライト膜の製造工程に人手がかかり生産コストが高くなるという課題があった。ゼオライト膜を連続式に自動操作で製造する方法は、未だ確立されていない。
【0003】
今後、ますます需要が高くなるゼオライト膜を工業的に製造するにあり、人手をかけずに、効率的、かつ高品質のゼオライト膜を安定的に製造する方法が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−131600号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、ゼオライト膜を連続的かつ効率的に製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成する本発明のゼオライト膜の製造方法は、以下の第1工程から第4工程からなる前記支持体の表面にゼオライトを形成するゼオライト膜の製造方法であって;
支持体の表面にゼオライトの微細結晶を付着する第1工程、
前記微細結晶を成長させるための合成ゲルを調製する第2工程、
反応器内に、前記支持体および前記合成ゲルを入れ、水熱合成を行う第3工程、
水熱合成された前記支持体を洗浄する第4工程、
前記第3工程において、前記反応器として、恒温装置内で移動可能に配置された複数の容器を用い、前記恒温装置内の温度および圧力により前記水熱合成の温度および圧力を調節し、前記反応器が前記恒温装置へ入ってから出てくるまでの時間を設定し前記水熱合成の反応時間を調節することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明のゼオライト膜の製造方法は、恒温装置内で移動可能に配置した反応器内で、支持体の表面にゼオライトが膜状に形成するようにしたので、ゼオライト膜を連続的かつ効率的に製造することができる。
【0008】
前記第2工程において、少なくとも2つの前記調製設備を使用し、前記合成ゲルを連続的に調製することができる。
【0009】
前記第4工程において、前記恒温装置から出された前記反応器から、ゼオライト膜を有する支持体を順次取出し、連続的に洗浄することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の製造方法の実施形態の一例を示す模式的説明図である。
【
図2】本発明の製造方法の実施形態の他の一例を示す模式的説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明で製造するゼオライト膜は、多孔質の支持体の表面にゼオライト結晶の膜が形成されたゼオライト膜である。ゼオライト結晶の種類は、例えば、A型ゼオライト、Y型ゼオライト、NaA型ゼオライト、T型ゼオライト、ZSM−5型ゼオライト、モルデナイト、CHA型ゼオライト、X型ゼオライト、ソーダライト等を挙げることができる。
【0012】
多孔質の支持体は、その表面にゼオライトを膜状に結晶化できる安定な多孔質構造であれば、特に限定されるものではない。好ましくは、シリカ、アルミナ、ムライト、ジルコニア、窒化ケイ素、炭化ケイ素などのセラミックス焼結体、鉄、ステンレス等の焼結金属やガラス、カーボン成型体等が例示され、より好ましくは、シリカ、アルミナ、ムライト等のセラミックス焼結体が例示される。多孔質支持体の形状には特に制限はなく、平膜状、平板状、円筒状(パイプ)、円柱状等の形状を使用目的に応じて選択することができる。
【0013】
本発明の製造方法に使用する支持体は、その平均気孔径が、好ましくは0.05〜10μm、より好ましくは0.1〜4μmである。平均気孔径が、0.05μm未満であると、透過速度が小さく、10μmを越えると選択性が低下するため好ましくない。また、本発明の製造方法に使用する支持体は、好ましくは気孔率が10〜80%、より好ましくは40〜80%である。気孔率が10%未満では透過速度が小さく、80%を越えると水選択透過性が低下する上に、支持体としての強度が得られないため好ましくない。好ましい多孔質支持体としては、平均気孔径が0.1〜2μm、気孔率が30〜50%の多孔質構造をもつシリカ、アルミナ、ムライト等のセラミックス焼結体である。
【0014】
本発明のゼオライト膜の製造方法は、以下の第1工程から第4工程からなる。
第1工程:支持体の表面にゼオライトの微細結晶を付着する工程
第2工程:微細結晶を成長させるための合成ゲルを調製する工程
第3工程:反応器内に、支持体および合成ゲルを入れ、水熱合成を行う工程
第4工程:水熱合成された支持体を洗浄する工程
【0015】
図1,2は、ゼオライト膜の製造方法の実施形態を模式的に例示する。
図1,2において、支持体(図示せず)は、第1工程11に供され、その表面にゼオライトの微細結晶が付着され、第3工程13の反応器1へ供される。また第2工程12では、合成ゲルが調製され、第3工程13の反応器1へ供される。第3工程13では、反応器1内に、支持体および合成ゲルが入れられ、恒温装置2内を移動しながら、水熱合成が行われる。恒温装置2から出された反応器1は、第4工程14へ供され、水熱合成された支持体が洗浄される。
【0016】
第1工程は、上述した多孔質の支持体のゼオライト膜を形成すべき表面に、ゼオライトの微細結晶を塗布して付着させる工程である。ゼオライトの微細結晶は、製造するゼオライトと同じ種類のもの又は結晶骨格上類似したもの又は結晶骨格のパーツとなるものとする。ゼオライトの微細結晶を付着する方法は、特に制限されるものではなく、例えばゼオライトの微細結晶を適切な溶媒に分散させ、支持体に塗布することができ、又はゼオライトの微細結晶を適切な溶媒に分散させ、その溶媒に支持体を浸漬させて引き上げる方法、一般的にはディップコート法、で支持体に塗布することもできる。塗布した後、乾燥することで支持体への微細結晶の付着力を強くすることができる。
【0017】
第2工程では、ゼオライト結晶を成長させるための合成ゲルを調製する工程である。ゼオライトの合成ゲルは、アルミナ源、シリカ源、フッ素化合物および水から選ばれる成分を含み、必要に応じて構造規定剤を含むことができる。合成ゲルの仕込み組成として、ゼオライトの種類に応じて、Si/Alモル比、F/Alモル比、およびH
2O/Siモル比等を適切に決めることができる。構造規定剤は、必要に応じて添加すればよい。
【0018】
なお第2工程は、調製した合成ゲルを更に熟成することもできる。熟成温度は、好ましくは室温〜50℃、より好ましくは15〜40℃であり、熟成時間は、好ましくは0.5〜24時間、より好ましくは1〜2時間であるとよい。熟成温度および熟成時間は、ゼオライトの種類により適切に決めることができる。
【0019】
合成ゲルは、調製設備により、後に続く第3工程に必要な量を、連続的に調製するようにする。調製設備は、大型設備で合成ゲルの必要量を製造してもよいし、複数小規模の設備を用いて合成ゲルを連続的に調製してもよい。第2工程は、第1工程と並列的に行うことができる。また、第1工程および第2工程は、人手をかけずにロボット等により自動化して行うことができる。
【0020】
第3工程は、反応器内に、支持体および合成ゲルを入れ、水熱合成を行う工程である。支持体は、第1工程でゼオライトの微細結晶が、その表面に付着されており、反応器内に把持される。また、合成ゲルは、第2工程で調製されたものが反応器に供され、支持体を浸漬する。第3工程では、恒温装置内で移動可能に配置された複数の容器を反応器として用い、この反応器が恒温装置内を移動しながら、水熱合成が行われる。水熱合成は、恒温装置内の温度および圧力により、その温度および圧力を調節され、反応器が恒温装置へ入ってから出てくるまでの時間がその反応時間になる。反応時間は、恒温装置内を反応器が移動する経路の長さおよび速度により調節することができる。
【0021】
反応器は、ゼオライトの水熱合成が可能なものであれば特に制限されるものではない。ゼオライトのバッチ式の製造方法に用いる反応器を使用してもよいし、その反応器の装備を簡略化して使用してもよい。反応器は、例えば支持体を反応器内に把持する手段、撹拌手段、温度調節手段、圧力調節手段、等を備えることができる。
【0022】
反応器が、恒温装置内を移動する手段は、特に制限されるものではない。例えば反応器をベルトコンベヤやローラーコンベヤに載せて移動させることができる。反応器の移動は、連続的でも間欠でもよい。すなわち、反応器は、恒温装置内を常時移動してもよいし、移動と停止を繰り返してもよい。
【0023】
反応器が、恒温装置内を移動する経路は特に制限されるものではない。例えば
図1に示すように、反応器1が直列的に配置され、恒温装置の入口から直進、右折を2回、直進、左折を2回、直進して出口へのように、直進と方向転換を組み合わせて移動してもよい。また
図2に示すように、恒温装置内の進行方向に対し直角に複数の反応器1を並べ、それを進行方向に直列的に配置し、恒温装置への入口から出口に向かって直進するように移動してもよい。なお、恒温装置内を移動する経路は、上記の例に限定されるものではない。
【0024】
反応器が恒温装置内を移動する間に、水熱合成が行われ、支持体の表面にゼオライトの薄膜状の結晶が形成され、所定の滞在時間を経た後、反応器が恒温装置から出て、第4工程に供される。第4工程では、水熱合成された支持体が反応器から取り出され洗浄される。反応器から支持体を取り出す方法、および支持体を洗浄する方法は、通常行われる方法を採用することができる。第4工程は、人手をかけずにロボット等により自動化して行うこともできる。
【0025】
本発明のゼオライト膜の製造方法は、恒温装置内で移動可能に配置した反応器内で、支持体の表面にゼオライトの薄膜が形成するようにしたので、ゼオライト膜を連続的かつ効率的に製造することができる。
【符号の説明】
【0026】
1 反応器
2 恒温装置
11 第1工程
12 第2工程
13 第3工程
14 第4工程
【要約】
【課題】ゼオライト膜を連続的かつ効率的に製造する方法を提供する。
【解決手段】支持体の表面にゼオライトの微細結晶を付着する第1工程、前記微細結晶を成長させるための合成ゲルを調製する第2工程、反応器内に、前記支持体および前記合成ゲルを入れ、水熱合成を行う第3工程、水熱合成された前記支持体を洗浄する第4工程からなり、前記第3工程において、前記反応器として、恒温装置内で移動可能に配置された複数の容器を用い、前記恒温装置内の温度および圧力により前記水熱合成の温度および圧力を調節し、前記反応器が前記恒温装置へ入ってから出てくるまでの時間を設定し前記水熱合成の反応時間を調節することにより、前記支持体の表面にゼオライトを形成する。
【選択図】
図1