特許第6611300号(P6611300)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6611300
(24)【登録日】2019年11月8日
(45)【発行日】2019年11月27日
(54)【発明の名称】信号調整を有する電力増幅器
(51)【国際特許分類】
   H03F 1/02 20060101AFI20191118BHJP
【FI】
   H03F1/02 188
【請求項の数】9
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2014-194947(P2014-194947)
(22)【出願日】2014年9月25日
(65)【公開番号】特開2015-73270(P2015-73270A)
(43)【公開日】2015年4月16日
【審査請求日】2017年8月31日
(31)【優先権主張番号】14/045,607
(32)【優先日】2013年10月3日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】504199127
【氏名又は名称】エヌエックスピー ユーエスエイ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】NXP USA,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ジョセフ シュタウディンガー
(72)【発明者】
【氏名】ラマヌジャム スリニディ エンバー
【審査官】 ▲高▼橋 徳浩
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−311485(JP,A)
【文献】 特開2007−116259(JP,A)
【文献】 特開2002−124840(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0120061(US,A1)
【文献】 特開2004−222151(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0238245(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0194023(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 1/04
H03F1/00−H03F3/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
デバイスであって、
第1の経路および第2の経路を有する増幅器であって、前記第2の経路は、キャリア増幅器を含むキャリア経路であり、前記第1の経路は、ピーク増幅器を含むピーク経路である、前記増幅器と、
前記第1の経路に接続されている第1の可変減衰器と、
前記第1の可変減衰器に結合されているコントローラとを備え、
前記コントローラは、
前記増幅器に対する入力信号の大きさを判定し、
前記入力信号の大きさが閾値を下回るとき、前記第1の可変減衰器の減衰を第1の減衰値に設定し、
前記入力信号の大きさが閾値を上回るとき、前記第1の可変減衰器の減衰を、前記第1の減衰値と第2の減衰値との間のゼロ個ではない減衰値を経て前記第2の減衰値に遷移させるように構成され、
前記第2の減衰値は、前記第1の減衰値よりも小さく、
前記デバイスは、
前記第1の経路に接続されている第1の調整可能位相調整器をさらに備え、
前記コントローラは、
前記入力信号の大きさが前記閾値を下回るとき、前記第1の調整可能位相調整器の位相シフトを第1の位相シフト値に設定し、
前記入力信号の大きさが前記閾値を上回るとき、前記第1の調整可能位相調整器の前記位相シフトを第2の位相シフト値に設定するように構成され、
前記第2の位相シフト値は、前記第1の位相シフト値よりも大きい、デバイス。
【請求項2】
前記デバイスは、
前記第2の経路に接続されている第2の可変減衰器をさらに備え、
前記コントローラは、
前記入力信号の大きさが前記閾値を下回るとき、前記第2の可変減衰器の減衰を第3の減衰値に設定し、
前記入力信号の大きさが前記閾値を上回るとき、前記第2の可変減衰器の前記減衰を第4の減衰値に設定するように構成され、
前記第3の減衰値は、前記第4の減衰値と異なる、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記デバイスは、
前記第2の経路に接続されている第2の調整可能位相調整器をさらに備え、
前記コントローラは、
前記入力信号の大きさが前記閾値を下回るとき、前記第2の調整可能位相調整器の位相シフトを第3の位相シフト値に設定し、
前記入力信号の大きさが前記閾値を上回るとき、前記第2の調整可能位相調整器の前記位相シフトを第4の位相シフト値に設定するように構成され、
前記第4の位相シフト値は、前記第3の位相シフト値よりも大きい、請求項2に記載のデバイス。
【請求項4】
システムであって、
キャリア経路およびピーク経路を有するドハティ増幅器であって、前記ドハティ増幅器は、前記キャリア経路から受信される信号を増幅するように構成されているキャリア増幅器、および、前記ピーク経路から受信される信号を増幅するように構成されているピーク増幅器を含む、前記ドハティ増幅器と、
前記キャリア経路および前記ピーク経路に結合されている電力分配器と、
前記ピーク経路に接続されている第1の可変減衰器と、
前記第1の可変減衰器に結合されているコントローラとを備え、
前記コントローラは、
前記ドハティ増幅器に対する入力信号の大きさを判定し、
前記入力信号の大きさが閾値を下回るとき、前記第1の可変減衰器の減衰を第1の減衰値に設定し、
前記入力信号の大きさが前記閾値を上回るとき、前記第1の可変減衰器の減衰を、前記第1の減衰値と第2の減衰値との間のゼロ個ではない減衰値を経て第2の減衰値に遷移させるように構成され、
前記第2の減衰値は、前記第1の減衰値よりも小さく、
前記システムは、
前記ピーク経路に接続されている第1の調整可能位相調整器をさらに備え、
前記コントローラは、
前記入力信号の大きさが前記閾値を下回るとき、前記第1の調整可能位相調整器の位相シフトを第1の位相シフト値に設定し、
前記入力信号の大きさが前記閾値を上回るとき、前記第1の調整可能位相調整器の前記位相シフトを第2の位相シフト値に設定するように構成され、
前記第2の位相シフト値は、前記第1の位相シフト値よりも大きい、システム。
【請求項5】
前記システムは、
前記キャリア経路に結合されている第2の可変減衰器をさらに備え、
前記コントローラは、
前記入力信号の大きさが前記閾値を下回るとき、前記第2の可変減衰器の減衰を第3の減衰値に設定し、
前記入力信号の大きさが前記閾値を上回るとき、前記第2の可変減衰器の前記減衰を第4の減衰値に設定するように構成され、
前記第3の減衰値は、前記第4の減衰値と異なる、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記システムは、
前記キャリア経路に結合されている第2の調整可能位相調整器をさらに備え、
前記コントローラは、
前記入力信号の大きさが前記閾値を下回るとき、前記第2の調整可能位相調整器の位相シフトを第3の位相シフト値に設定し、
前記入力信号の大きさが前記閾値を上回るとき、前記第2の調整可能位相調整器の前記位相シフトを第4の位相シフト値に設定するように構成され、
前記第4の位相シフト値は、前記第3の位相シフト値よりも大きい、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
方法であって、
増幅器に対する入力信号の大きさを判定することであって、前記増幅器は、第1の経路と、第2の経路と、前記増幅器の第1の経路に接続されている第1の可変減衰器と、を含み、前記第2の経路は、キャリア増幅器を含むキャリア経路であり、前記第1の経路は、ピーク増幅器を含むピーク経路である、前記判定すること、
前記入力信号の大きさが閾値を下回るとき、前記第1の可変減衰器の減衰を第1の減衰値に設定すること、
前記入力信号の大きさが前記閾値を上回るとき、前記第1の可変減衰器の減衰を、前記第1の減衰値と第2の減衰値との間のゼロ個ではない減衰値を経て第2の減衰値に遷移させることを備え、
前記第2の減衰値は、前記第1の減衰値よりも小さく、
前記増幅器は、前記第1の経路に接続されている第1の調整可能位相調整器をさらに含み、
前記方法は、
前記入力信号の大きさが前記閾値を下回るとき、前記第1の調整可能位相調
整器の位相シフトを第1の位相シフト値に設定すること、
前記入力信号の大きさが前記閾値を上回るとき、前記第1の調整可能位相調整器の前記位相シフトを第2の位相シフト値に設定することをさらに備え、
前記第2の位相シフト値は、前記第1の位相シフト値よりも大きい、方法。
【請求項8】
前記増幅器は、第2の経路に接続されている第2の可変減衰器をさらに含み、
前記方法は、
前記入力信号の大きさが前記閾値を下回るとき、前記第2の可変減衰器の減衰を第3の減衰値に設定すること、
前記入力信号の大きさが前記閾値を上回るとき、前記第2の可変減衰器の前記減衰を第4の減衰値に設定することをさらに備え、
前記第3の減衰値は、前記第4の減衰値と異なる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記増幅器は、前記第2の経路に接続されている第2の調整可能位相調整器をさらに含み、
前記方法は、
前記入力信号の大きさが前記閾値を下回るとき、前記第2の調整可能位相調整器の位相シフトを第3の位相シフト値に設定すること、
前記入力信号の大きさが前記閾値を上回るとき、前記第2の調整可能位相調整器の前記位相シフトを第4の位相シフト値に設定することをさらに備え、
前記第4の位相シフト値は、前記第3の位相シフト値よりも大きい、請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の主題の実施形態は、改善した効率を有することができる増幅器に関し、より具体的には、改善した増幅器効率および性能を提供するために改善した信号調整を有することができる増幅器に関する。
【背景技術】
【0002】
ドハティ増幅器(Doherty amplifiers)は、無線通信システムに一般的に利用されている増幅器である。今日、たとえば、ドハティ増幅器は、無線通信ネットワークの動作を可能にする基地局にますます使用されるようになっている。ドハティ増幅器は、別個の増幅経路、一般的にはキャリア経路およびピーク経路を含むため、そのような用途に使用するのに適している。2つの経路は異なる級で動作するように構成されている。より詳細には、キャリア増幅経路は一般的にAB級モードで動作し、ピーク増幅経路はC級モードで動作するようにバイアスされる。これによって、無線通信用途で一般的に用いられる電力レベルにおいて、平衡増幅器と比較して、増幅器の電力付加効率および線形性を改善することができる。
【0003】
一般的に、ドハティ増幅器において電力分配器が各増幅経路に入力信号を供給する。電力分配器もしくは信号分配器または分割器が既知であり、名称が示唆するとおり、信号を既知の所定の振幅および位相関係で2つ以上の信号に分割または分配するのに使用されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ドハティ増幅器において、多くの場合、増幅器が高い効率を呈することが望ましい。不都合なことに、従来のドハティ増幅器で各経路内の増幅器が伝導を開始する手段または挙動する手段によって増幅器の全体的な効率が低減する可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一側面は、デバイスであって、第1の経路および第2の経路を有する増幅器と、前記第1の経路に接続されている第1の可変減衰器と、前記第1の可変減衰器に結合されているコントローラとを備え、前記コントローラは、前記増幅器に対する入力信号の大きさを判定し、前記入力信号の大きさが閾値を下回るとき、前記第1の可変減衰器の減衰を第1の減衰値に設定するように構成されている。
【0006】
本発明の一側面は、システムであって、キャリア経路およびピーク経路を有するドハティ増幅器であって、前記ドハティ増幅器は、前記キャリア経路から受信される信号を増幅するように構成されているキャリア増幅器、および、前記ピーク経路から受信される信号を増幅するように構成されているピーク増幅器を含む、前記ドハティ増幅器と、前記キャリア経路および前記ピーク経路に結合されている電力分配器と、前記ピーク経路に接続されている第1の可変減衰器と、前記第1の可変減衰器に結合されているコントローラとを備え、前記コントローラは、前記ドハティ増幅器に対する入力信号の大きさを判定し、前記入力信号の大きさが閾値を下回るとき、前記第1の可変減衰器の減衰を第1の減衰値に設定し、前記入力信号の大きさが前記閾値を上回るとき、前記第1の可変減衰器の前記減衰を第2の減衰値に設定するように構成され、前記第2の減衰値は、前記第1の減衰値よりも小さい。
【0007】
本発明の一側面は、方法であって、増幅器に対する入力信号の大きさを判定することであって、前記増幅器は、前記増幅器の第1の経路に接続されている第1の可変減衰器を含む、前記判定すること、前記入力信号の大きさが閾値を下回るとき、前記第1の可変減衰器の減衰を第1の減衰値に設定すること、前記入力信号の大きさが前記閾値を上回るとき、前記第1の可変減衰器の前記減衰を第2の減衰値に設定することを備え、前記第2の減衰値は、前記第1の減衰値よりも小さい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】主またはキャリア経路およびピーク経路を含む従来のドハティ増幅器配列を示す図。
図2A】キャリア増幅器およびピーク増幅器が理想的な電圧源としてモデル化されている、従来のドハティ増幅器の理想化された動作を示すグラフ図。
図2B】キャリア増幅器およびピーク増幅器が理想的な電流源としてモデル化されている、従来のドハティ増幅器の理想化された動作を示すグラフ図。
図3A】ドハティ増幅器の実際の動作を描写するように修正された図2Aのグラフを示す図。
図3B】ドハティ増幅器の実際の動作を描写するように修正された図2Bのグラフを示す図。
図4A】増幅器デバイスのいくつかのam/am曲線を示すグラフ図。
図4B】増幅器デバイスのいくつかのam/pm曲線を示すグラフ図。
図5】増幅器の各経路上に可変減衰器および位相調整器を有する二重経路増幅器を示す図。
図6A】可変減衰器の減衰が入力信号RFINの大きさに基づいてどのように設定され得るかを示すグラフ図。
図6B】位相調整器の位相シフトが入力信号RFINの大きさに基づいてどのように設定され得るかを示すグラフ図。
図7A】第2の可変減衰器の減衰が入力信号RFINの大きさに基づいてどのように設定され得るかを示すグラフ図。
図7B】第2の位相調整器の位相シフトが入力信号RFINの大きさに基づいてどのように設定され得るかを示すグラフ図。
図8A】理想化されたドハティ増幅器、従来のドハティ増幅器、ならびに、本明細書に説明するようなコントローラによって制御される可変減衰器および位相調整器を含むドハティ増幅器の動作を示すグラフ図。
図8B】理想化されたドハティ増幅器、従来のドハティ増幅器、ならびに、本明細書に説明するようなコントローラによって制御される可変減衰器および位相調整器を含むドハティ増幅器の動作を示すグラフ図。
図9】ピーク増幅器のゲートバイアス変調入力に対する入力を、増幅器に対する入力信号の大きさに基づいてどのように設定することができるかを示すグラフ図。
図10図9に示すゲートバイアス変調と組み合わせて可変減衰器の減衰を変更するための手法を示すグラフ図。
図11A】いくつかのam/am歪み曲線を示すグラフ図。
図11B】いくつかのam/pm歪み曲線を示すグラフ図。
図12】1つのキャリア経路および2つのピーク経路を含む3ウェイドハティ増幅器の簡略図。
図13A】多経路増幅器デバイスの第1の経路における減衰を変更するための手法を示すグラフ図。
図13B】多経路増幅器デバイスの第1の経路における位相シフトを変更するための手法を示すグラフ図。
図14A】多経路増幅器デバイスの第2の経路における減衰を変更するための手法を示すグラフ図。
図14B】多経路増幅器デバイスの第2の経路における位相シフトを変更するための手法を示すグラフ図。
図15A】多経路増幅器デバイスの第3の経路における減衰を変更するための手法を示すグラフ図。
図15B】多経路増幅器デバイスの第3の経路における位相シフトを変更するための手法を示すグラフ図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
添付の図面において、同様の参照符号は別個の図全体を通じて同一または機能的に類似の要素を指しており、当該図面は下記の詳細な説明とともに本明細書に組み込まれてその一部を形成しているが、添付の図面は、様々な実施形態をさらに例示し、すべて本発明の主題に応じた様々な原理および利点を説明する役割を果たす。
【0010】
全体的に、本開示は、改善した効率を有することができる増幅器に関し、より具体的には、改善した増幅器効率および性能を提供するために改善した信号調整を有することができる増幅器に関する本発明の主題の実施形態を記載する。
【0011】
本開示において、システムの実施形態がドハティ増幅器に関連して説明されているが、本開示において、ドハティ増幅器は様々な実施形態において代替的な二重経路または多経路増幅器に置き換えてもよいことが諒解されるべきである。
【0012】
本開示は、出願時の本発明に応じた様々な実施形態を作成および使用する最良の形態を可能にする様式をさらに説明するために提供されている。本開示はさらに、本発明の範囲を決して限定するものではなく、本発明の原理およびその利点の理解および認識を高めるために提供される。
【0013】
第1、第2の、上部および底部などのような関係語が使用されている場合、それらは、1つの実体または動作を別のものから区別するためにのみ使用されており、必ずしもそのような実体または動作の間に任意の実際のそのような関係または順序があることを必要としまたは示唆するものではないことがさらに理解される。
【0014】
本発明の機能の多くおよび本発明の原理の多くは、可能性として特定用途向けICまたは集積処理もしくは制御または他の構造を有するICを含む集積回路(IC)を用いてまたはその中で最良に実装される。当業者は、たとえば、利用可能な時間、現行の技術および経済的事情によって動機づけされる相当の努力および多くの設計選択にかかわらず、本明細書に開示されている概念および原理によって指針を与えられれば、最小限の実験でそのようなICおよび構造を生成することが容易に可能になることが予測される。それゆえ、簡潔にすること、および、本発明の下記に記載する実施形態に応じた原理および概念を曖昧にする一切の危険性を最小限に抑えることを目的に、そのような構造およびICがさらに説明されている場合、それは、様々な実施形態の原理および概念に関連する要点に限定されることになる。
【0015】
ドハティ増幅器は、広い出力電力範囲にわたって高い効率を可能にし、様々な線形化方式を使用して所望の線形性を達成することができるため、いくつかの無線用途に使用されている。多くの実施態様において、ドハティ増幅器は、2つの増幅器、すなわち、キャリアまたは主増幅器(carrier or main amplifier)と、ピーク増幅器(peaking amplifier)とを含む。対称ドハティ増幅器(Symmetric Doherty amplifiers)において、キャリア増幅器およびピーク増幅器は同じサイズである。対称ドハティ増幅器は、現在一般的に使用されているが、キャリア増幅器よりも大きいピーク増幅器を利用する非対称性ドハティ増幅器は、さらに効率を改善する可能性を提供する。
【0016】
ドハティ増幅器において、入力信号が、入力または電力分配器において主増幅経路とピーク増幅経路との間または回路間で分配される。その後、分配信号がドハティ増幅器の主増幅器およびピーク増幅器によって別個に増幅されて、出力段において組み合わされる。主増幅器およびピーク増幅器の出力を組み合わせるとき、増幅器の各経路の出力の間に最適な平衡をもたらすために、ドハティデバイスの入力分配器の位相および振幅または減衰に微調整を行うことが望ましい場合がある。この調整を容易にするために、ドハティ増幅器は、主増幅器およびピーク増幅器の両方に対する入力信号の構成を微調整するように使用することができる調整可能電力分割器または分配器を含み得る。ドハティ増幅器は、ドハティ増幅器の1つ以上の経路のうちの1つの位相シフトおよび/または振幅を選択的に変更するように構成されている調整可能位相遅延および/または振幅調整をも含み得る。
【0017】
図1は、主またはキャリア経路およびピーク経路を含む従来のドハティ増幅器配列10を示す。図示のような図1において、電力分配器12がドハティ増幅器10の主またはキャリア経路14およびピーク経路16に結合されている。電力分配器12は、入力信号18(たとえば、無線周波数入力(RFIN)を、各々が異なる増幅経路に沿って送信される複数の信号に分割するように構成されている。各増幅経路は、いくつかの減衰器、位相調整器、および/または増幅器を含んでもよい。図1において電力分配器12は2つの出力信号を生成する。
【0018】
一実施態様において、電力分配器12は、入力無線周波数信号を受信するための入力、ならびに第1の分割器出力および第2の分割器出力を有する電力分割器を含むことができる。対称ドハティ増幅器に接続されると、電力分配器12は、入力18において受信される入力信号を、非常に類似した、いくつかの実施形態では等しい電力を有する2つの信号に分割または分配することができる。しかしながら、他の場合において、電力分配器12は、等しくない電力を有する信号を出力してもよい。
【0019】
電力分配器12の出力は、主またはキャリア増幅器20およびピーク増幅器22に接続される。キャリア増幅器20の入力は、マッチングネットワークまたは回路(図示せず)を介して電力分配器12の第1の出力に結合されている。ピーク増幅器22の入力は、マッチングネットワークまたは回路(図示せず)を介して電力分配器12の第2の出力に結合されている。本明細書の記載に基づいて当業者には諒解されるように、キャリア増幅器20およびピーク増幅器22は、相対的に低い電力レベルの増幅および相対的に高い電力レベルの増幅の1つ以上の段からなり得る。
【0020】
インピーダンスインバータまたはλ/4伝送線路位相シフト要素24が、キャリア増幅器20の出力と加算ノードとの間に接続されており、ピーク増幅器22の出力も加算ノードに結合されている。要素24によって導入される位相シフトは、いくつかの実施形態では、位相シフト要素26によって導入される経路16上に存在する90度相対位相シフトによって補償される。
【0021】
インピーダンス28を含むインピーダンスネットワークは、キャリア増幅器20およびピーク増幅器22の各々に適切な負荷インピーダンスを提供するように機能し、共通出力ノードにおいて各増幅器から生成される信号を組み合わせる。出力負荷30(たとえば、50オーム)は、キャリア増幅器20およびピーク増幅器22の出力に接続される。
【0022】
増幅器10は、キャリア増幅器20がより低いレベルの入力信号に対する増幅を提供し、増幅器20および22の両方が協働して高入力レベル信号に対する増幅を提供するように構成されている。一実施態様において、キャリア増幅器20は、主経路14から受信される信号を増幅するように構成されており、一方で、ピーク増幅器22は、増幅器に対する入力信号が、下記に説明する、本明細書においては遷移点αと称する所定閾値を超える場合にのみ、ピーク経路16から受信される信号を増幅するように構成されている。
【0023】
これは、たとえば、キャリア増幅器20がAB級モードで動作するようにキャリア増幅器20をバイアスし、ピーク増幅器22がC級モードで動作するようにピーク増幅器22をバイアスすることによって達成され得る。
【0024】
図1に示すドハティ増幅器10アーキテクチャは、アーキテクチャが、拡大した入力信号範囲にわたって高い効率をもたらすことができることに起因して、通信システムに広く使用されている。このアーキテクチャは、デジタル歪補償(Digital Pre-Distortion:DPD)技法を使用して良好に線形化することもできる。
【0025】
図2Aおよび図2Bは、キャリア増幅器およびピーク増幅器が理想的な電圧および電流源としてモデル化されている、従来のドハティ増幅器の理想化された動作を示すグラフである。図2Aにおいて、垂直軸は図1のキャリア増幅器20およびピーク増幅器22の出力ノードにおける電圧VcarrierおよびVpeakingを表し、一方で水平軸は、正規化入力信号電圧(normalized input signal voltage)Vin/Vin_max図1に示す)を表し、Vinは最大入力電圧Vin_maxに対して正規化されている。図2Bにおいて、垂直軸は電流IpeakingおよびIcarrier図1に示す)を表し、一方で水平軸は正規化入力信号電圧Vin/Vin_maxを表す。電流IcarrierおよびIpeakingは、入力電力を、ゼロから、単位元に等しいVin/Vin_maxをもたらすより高い値まで掃引した結果である。両方のグラフにおいて、電圧および電流値は1.0ボルト(V)またはアンペア(A)の値付近で正規化されている。図2Aおよび図2Bに示す曲線は、理想化されたキャリアおよびピーク増幅器のすべての可能な動作点を表す。図2Aにおいて、線200は、キャリア増幅器の電圧を示し、一方で線202はピーク増幅器の電圧を示す。図2Bにおいて、線204は、キャリア増幅器の電流を示し、一方で線206はピーク増幅器の電流を示す。
【0026】
図2Aおよび図2Bに示すドハティ増幅器の動作は、キャリア増幅器20およびピーク増幅器22が飽和していないときの電流源および飽和しているときの電圧源としてモデル化されている既知の一次概念に基づいている。遷移点αを下回る低入力電流レベルにおいて、増幅器10のピーク増幅器22はピーク増幅器22のC級バイアスに起因して非伝導(non-conducting)である。そのため、遷移点αよりも下で増幅器10によって生成されるすべての増幅は、キャリア増幅器20のみを使用して達成される。
【0027】
入力電力レベルが増大すると、無線周波数(RF)入力信号が十分に大きく、それによって、キャリア増幅器20が飽和の始まりにあり、1V(正規化)の一貫したRF出力電圧を生成するという点(すなわち、図2Aおよび図2Bの両方にラベリングされている遷移点α)に達する(図2Aの線200の水平部分参照)。飽和すると、キャリア増幅器20は、入力電力がさらに増大してもVcarrierが単位元(正規化)にあるままであるような電圧源としての一次原理によって表現およびモデル化することができる。インピーダンスインバータ24および28(図1に示す)に起因して、電圧Vpeakingは単位元よりも小さい。入力電力がさらに増大することによって、キャリア増幅器20およびピーク増幅器22の動作は遷移点αを超えて移動する。ピーク増幅器は、キャリア増幅器20で見られるインピーダンスを変調する効果を有する電流Ipeakingを伝達(conducting)し始め、それに寄与し、その後、これはさらに、キャリア増幅器20がさらなるRF電流に寄与することを可能にする。Vin/Vin_maxが単位元に等しいフル駆動状態下では、キャリア増幅器20およびピーク増幅器22の両方が飽和しており、最大電力を生成している。
【0028】
遷移点αの値は、キャリアおよびピーク増幅器の電力容量に関係する所望の負荷変調によって決定することができる。一般的に、遷移点αは1/(1+Pp/Pc)として選択され、PpおよびPcはそれぞれピーク増幅器およびキャリア増幅器の電力容量である。これは、水平軸上の遷移点αの上での図2Bの線206に示すピーク増幅器22からの電流の増大によって示されている。
【0029】
ドハティ増幅器の性能を評価するとき、入力電力レベルが遷移点α付近であるか、それよりも上、およびそれよりも下であるときの増幅器の動作、ならびに、その領域におけるドハティ増幅器の全体的な効率が考慮され得る。キャリアおよびピーク増幅器が理想的な電圧および電流源として表現されているドハティアーキテクチャの従来の分析は、遷移点αにおいて、ドハティ増幅器全体の効率が、キャリア増幅器のみによって決定されることを示唆しており、キャリア増幅器についてB級動作を仮定して、π/4の効率値はVin/Vin_max=αにおいて示唆される。この分析は、理想化されたモデルにおいて、Ipeakingが遷移点αにおいてゼロであるため、ピーク増幅器が不寄与であると仮定している。
【0030】
現実には、ピーク増幅器は理想的な電圧および電流源ではない。ピーク増幅器がC級動作することに起因して、Vin/Vin_maxがαより下からαより上へと遷移するときにIpeakingがゼロから急激にゼロより上に遷移することはない。言い換えれば、図2Aおよび図2Bの遷移点αにおける線200および206における鋭角は、現実のドハティ増幅器の動作を正確に描写していない。実際には、応答はIpeakingおよびVcarrierの両方についてより漸進的である。
【0031】
図3Aおよび図3Bは、遷移点α周辺のドハティ増幅器の実際の動作を描写するように修正された、それぞれ図2Aおよび図2Bのグラフを示す。図3Aに見られるように、遷移点α周辺で、キャリア増幅器の電圧(線200によって示す)は、増大から1.0Vの最大値に達するまで急激に遷移していない。そうではなく、破線302によって示すように、遷移は漸進的である。そのため、現実の増幅器において、たとえ遷移点αよりもいくらか大きい出力電力レベルにあっても、ここでも理想化されたモデルに反して、キャリア増幅器は依然として完全な飽和には達していない。
【0032】
同様に、図3Bに示すように、ピーク増幅器の電流(線206によって示す)は、ピーク増幅器が遷移点α付近で伝導(conducting)を始めるときに急激に遷移しない。そうではなく、破線304によって示すように、遷移は漸進的である。そのため、現実の増幅器において、たとえ遷移点αよりもいくらか小さい出力電力にあっても、理想化されたモデルに反して、ピーク増幅器はすでに伝導している。このように、ピーク増幅器が早くオンになる属性が、入力が遷移点αを上回るまでキャリア増幅器が完全な飽和に達しない一因となる(図3Aの曲線302参照)。
【0033】
効率に加えて、線形性が、増幅器のもう1つの重要な属性である。増幅器線形性は、振幅−振幅歪み(amplitude-to-amplitude distortion : am/am)および振幅−位相歪み(amplitude-to-phase distortion : am/pm)を単位として表現することができる。図4Aは、いくつかのam/am歪み曲線を示すグラフである。図4Aにおけるグラフの垂直軸はam/am歪みを示し、一方で、水平軸は図1の増幅器10のような、増幅器の出力電力を表す。線400は、完璧な線形性を示す理想化された曲線であり、一方で線404は、従来の増幅器の劣化したam/am応答を示す。本開示は、従来のデバイスにまさる改善されたam/am応答を示し、理想的なデバイスのものをより近密に近似する、線402が示すものと同様の応答を有することができる改善された増幅器デバイスを提供する。一般的に、増幅器のam/am歪み属性が可能な限り線400に近くなり、増幅器のゲインが圧縮する点まで駆動入力が増大するときに一定のままであることが望ましい。
【0034】
図4Bは、いくつかのam/pm曲線を示すグラフである。図4Bにおけるグラフの垂直軸はam/pm歪みを示し、一方で水平軸は出力電力を表す。線406は、完璧な線形性を示す理想化された曲線であり、一方で線410は、従来の増幅器の劣化したam/pm応答を示す。本開示は、従来のデバイスにまさる改善されたam/pm応答を示し、理想的なデバイスのものをより近密に近似する、線408が示すものと同様の応答を有することができる改善された増幅器デバイスを提供する。一般的に、増幅器のam/pm歪み属性が可能な限り線406に近くなり、増幅器のゲインが圧縮する点まで駆動入力が増大するときに一定のままであることが望ましい。
【0035】
したがって、従来のドハティ増幅器の全体的な効率および線形性は、いくつかの要因によって劣化している可能性がある。最初に、図3Aおよび図3Bに示すように、ピーク増幅器が伝導し始める様式がデバイスの効率を低減する可能性がある。一般的に、ピーク増幅器は、αを下回る信号レベルに対してはオフ状態で伝導していないままであり、αを上回る信号レベルに対して瞬時にオンになることが望ましい。このとき、この挙動は、図2Aおよび図2Bに示す理想化されたキャリアおよびピーク増幅器の応答を模倣することになる。この特性を近似するための通常の方法は、ピーク増幅器をC級動作モードにバイアスすることであるが、これはなお、図3Aおよび図3Bに示す理想的な挙動に及ばない結果をもたらす。
【0036】
加えて、遷移点αと最大出力との間の出力レベルについて、増幅器の線形性に影響を及ぼされると、ピーク増幅器は、入力信号を増幅し、増幅器の加算ノードにおいてキャリア増幅器によって生成される信号にベクトル的に寄与する信号成分を生成し、結果的に非線形的な応答をもたらす。実際に、αと1との間の出力レベルにおけるピーク増幅器のゲイン応答は、ピーク増幅器のC級バイアスに起因して理想的でなく、全体的なドハティ増幅器線形性の低下に大きく寄与する。
【0037】
これらの影響を軽減するために、いくつかの増幅器構成は、増幅器内でキャリア経路とピーク経路とを完全に分離するように構成されている。これらのデバイスにおいて、各経路は、他の送信機から独立して動作して、キャリアおよびピーク増幅器の各々に入力信号を供給するそれ自体の送信機を有する。この構成は、キャリアおよびピーク増幅器の各々に入力される信号の精密な制御を可能にするが、送信機が加わる結果として、増幅器の費用、サイズ、および電力消費が相当に増大することになる。
【0038】
本発明のシステムおよび方法の実施形態においては、可変減衰器および位相調整器が、多経路増幅器デバイスの増幅器の1つ以上の入力側に位置づけられる。キャリア増幅器およびピーク増幅器を有するドハティ増幅器において、たとえば、可変減衰器および位相調整器は、ピーク増幅器のみの入力、ピーク増幅器およびキャリア増幅器の両方、または、代替的に、キャリア増幅器のみの入力に位置づけられ得る。このとき、可変減衰器および位相調整器の構成は、増幅器の1つ以上に入力されている信号を成形(shape)するために制御または調整することができる。このように、可変減衰器および位相調整器を使用して、遷移点α付近のピーク増幅器のより瞬時のターンオンおよび/またはターンオフ応答をもたらすことができる。加えて、ピーク増幅器、および、任意選択的にキャリア増幅器における入力信号は、結果として、より線形的で、図4Aおよび図4Bに示す理想的なam/amおよびam/pm応答を近似することができる増幅器出力をもたらすように制御することができる。
【0039】
たとえば、図5は、増幅器の各経路上に位置づけられている可変減衰器および位相調整器を有する二重経路増幅器500を示す。増幅器500は、整列モジュールまたは電力分配器501を含む。電力分配器501は、入力信号を複数の増幅経路へと分割し、各増幅経路は、可変減衰器(たとえば、減衰器515、521のうちの1つ)と、調整可能位相調整器(たとえば、位相調整器513、519のうちの1つ)と、増幅器(たとえば、増幅器535、539のうちの1つ)とを含む。
【0040】
電力分配器501は、入力無線周波数信号(RFIN)を受信するための入力507、ならびに第1の分割器出力509および第2の分割器出力511を有する電力分割器505を含む。対称ドハティ増幅器において、電力分割器505は、入力507において受信される入力信号を、非常に類似した、いくつかの実施形態では等しい電力を有する2つの信号に分割または分配するように動作する。この等しい電力形態の電力分割器は、結果生じる信号が各々、入力における信号よりも3dB小さいとき、3デシベル(dB)分割器と称される場合がある。3dB分割器が一般的であるが、他の実施形態において、複数の出力または等しくない信号を有する出力を有する他の分割器がいくつかの用途において作成および使用され得る。
【0041】
電力分配器501は、第1の調整可能位相調整器513および第1の可変減衰器515を含み、これらは第1の分割器出力509に結合され、第1の出力電力517を提供するように構成されている。調整可能位相調整器および可変減衰器は任意の順序で互いに結合することができることが諒解されよう(たとえば、図示のように減衰器の後に位相調整器がくる、またはその逆)。電力分配器501は、第2の調整可能位相調整器519および第2の可変減衰器521を含み、これらは第2の分割器出力511に結合され、第2の出力電力523を提供するように構成されている。上記のように、これらの構成要素が互いに結合される順序は変更することができる。
【0042】
調整可能電力分配器501の様々な実施形態において、第1の調整可能位相調整器513および第2の調整可能位相調整器519は各々、(たとえば、インターフェース525を使用して)デジタル制御され、様々なレベルの位相シフトをもたらす複数の状態を有する。第1の調整可能位相調整器513および第2の調整可能位相調整器519は、たとえば、各々8つの位相シフト状態を有してもよく、各位相シフト状態が特定の位相シフトを度単位で定義する。一例において、位相シフト状態は、約6.5度ずつ分離することができる。第1の調整可能位相調整器513および第2の調整可能位相調整器519は一般的に、基本的には同じになるが、互いから異なる位相シフト状態を有してもよく、異なる範囲をカバーしてもよく、異なる刻み幅を有してもよいことが諒解されよう。デジタル制御されるが、調整可能位相調整器は、多くの実施形態においてアナログ位相調整器である。
【0043】
電力分配器501の様々な実施形態において、第1の可変減衰器515および一般的に第2の可変減衰器521は各々、(たとえば、インターフェース525を使用して)デジタル制御され、複数の減衰レベルを有し、減衰レベルは数デシベル(dB)ずつ分離され、一例において、0.5dBが減衰レベルを分離する。第1の可変減衰器515および第2の可変減衰器521は各々、たとえば、8つの減衰状態または減衰レベルを有してもよいが、他の実施形態においては、より多いまたはより少ない減衰状態または減衰レベルを有してもよい。第1の可変減衰器および第2の可変減衰器は一般的に、基本的には同じになるが、互いから異なる減衰状態を有してもよく、異なる範囲をカバーしてもよく、異なる減衰刻み幅を有してもよいことが諒解されよう。デジタル制御されるが、可変減衰器はいくつかの実施形態において、アナログ減衰器とすることができる。
【0044】
電力分配器501のいくつかの実施形態は、それぞれ第1の出力電力517および第2の出力電力523における第1の信号および第2の信号の間に固定位相シフトを追加するように構成されている任意選択の固定位相調整器をさらに含んでもよい。いくつかの実施形態においては、これは、1つの増幅経路(たとえば、出力509と出力電力517との間の増幅経路、または出力511と出力電力523との間の増幅経路)に追加される、固定された所定の位相シフト(たとえば、90度)とすることができる。
【0045】
特定の用途において(たとえば、ドハティ増幅器503内で)、90度位相シフトが増幅器内の1つの経路に追加され、固定位相シフトはこの増幅器位相シフトをずらすように使用することができる。固定位相シフトは、いくつかの実施形態において、第1の出力電力517における第1の信号に対する負または正方向の位相シフト(たとえば、負45度シフトのような負シフトλ/8)、および、第2の出力電力523における第2の信号に対する反対方向の位相シフト(たとえば、正45度位相シフトのような正シフトλ/8)を含む。反対符号の45度位相シフトを使用することによって、出力電力517、523において信号間の90度相対位相シフトがもたらされる。位相調整器は、各々が誘導および容量リアクタンスを有する集中素子回路として実装することができる。
【0046】
インターフェース525は、入力533において受信される入力に応答して電力分配器501の調整可能位相調整器513、519および可変減衰器515、521を設定するように構成および配置することができる。インターフェース525を使用して、コントローラ527は、本開示に記載する方法に従って電力分配器501を調整および変更するように構成されてもよい。インターフェース525の入力533(または入出力)は、データインターフェース(たとえば、シリアル周辺インターフェース(SPI)のようなシリアルインターフェース、図示せず)を含んでもよい。データインターフェース(たとえば、SPI)は電力分配器501と同じ集積回路チップ(たとえば、単一のシリコンまたはガリウムヒ素チップ)上に実装されてもよく、または、データインターフェースと電力分配器501とは異なる集積回路チップ(たとえば、2つのシリコンチップ、2つのガリウムヒ素チップ、または1つのシリコンチップ(たとえば、SPI用)および1つのガリウムヒ素チップ(たとえば、電力分配器501用)の組合せ)上に実装されてもよい。
【0047】
一般的に、減衰器515、521および/または位相調整器513、519はいくつかのスイッチ、一般的にはトランジスタとして実装されるもののような、ソリッドステート(solid state)または統合スイッチを使用して制御される。したがって、インターフェース525は、すべての減衰器515、521および位相調整器513、519内のすべてのスイッチに関する状態情報を提供されることができ、インターフェース525は、すべてのスイッチが適切なONおよびOFF状態にあることを保証するように配置および結合されている出力を有する1つ以上のラッチバッファとして機能する。代替的に、インターフェース525は、符号化値(たとえば、2進値)または2つ以上の符号化値を提供されることができ、符号化値の各々は、各減衰器515、521および位相調整器513、519の状態を一意に指定する。たとえば、すべての位相調整器513、519および減衰器515、521が「8」状態デバイス(8 state devices)である場合、各々に対する3ビット符号化値を使用して特定の状態を一意に指定することができる。したがって、動作中、4つのそのような符号化値がインターフェース525に提供され得る(たとえば、各減衰器515、521に1つずつ、および、各位相調整器513、519に1つずつ)。その後、インターフェース525は、各符号価値を各減衰器515、521および位相調整器513、519に対する適切な制御信号(たとえば、スイッチ制御信号)に変換して、これらの値にラッチしてもよい。他の実施形態において、4つのデバイス513、515、519、521の各々の位相シフトおよび減衰の量がインターフェース525に送られ、インターフェース525は、所望のシフトおよび減衰を実現するのに適切な状態を決定することができる。別の代替の実施形態において、インターフェース525は、アドレスまたはオフセットを受信してもよく、受信したアドレスまたはオフセットに基づいてルックアップテーブル(図示せず)内の位相状態および/または減衰器状態情報を検索してもよい。
【0048】
コントローラ527はRFIN507に結合されており、増幅器500に供給される入力信号を分析するように構成されている。後述するように、その入力信号、特にその信号の大きさを分析することによって、コントローラ527は、増幅器500の効率および線形性を改善するためにインターフェース525を使用して可変減衰器515、521および位相調整器513、519の1つ以上を制御するように構成することができる。
【0049】
増幅器500のドハティ増幅器503は、マッチングネットワークまたは回路(図示せず)を介して第1の出力電力517に結合されている主またはキャリア増幅器535と、マッチングネットワークまたは回路(図示せず)を介して第2の出力電力523に結合されているピーク増幅器539とを含む。本明細書の記載に基づいて当業者には諒解されるように、主増幅器535およびピーク増幅器539は、相対的に低い電力レベル増幅および相対的に高い電力レベル増幅の1つ以上の段から構成されてもよい。代替の実施形態において、デバイス500は、「反転ドハティ(inverted Doherty)」構成を有してもよい。そのような構成において、インピーダンスインバータまたはλ/4線路位相シフト要素547が、キャリア増幅器535の出力と加算ノードとの間に接続されるのではなく、ピーク増幅器539の出力と加算ノードとの間に接続されている。
【0050】
キャリア増幅器535およびピーク増幅器539は、それぞれの出力マッチング回路(図示せず)を介してドハティ結合器547、および出力ノード549に結合されている。ドハティ結合器547は、キャリア増幅器535がより低いレベルの信号に対する増幅を可能にし、両方の増幅器535、539が協働して、入力信号が遷移点αを超える高レベル信号に対する増幅を可能にするように構成されている。これは、たとえば、キャリア増幅器535を、AB級モードで動作するようにバイアスし、ピーク増幅器539を、C級モードで動作するようにバイアスすることによって達成されてもよい。
【0051】
電力分配器501が3つの出力を有し、ドハティ増幅器503が1つの主増幅器および2つのピーク増幅器を有し、たとえば、各ピーク増幅器が異なるC級動作点においてバイアスされている、より複雑な増幅器500の実施態様が可能である。そのような実施形態において、電力分配器501は、3つの増幅経路(各々が調整可能位相調整器および可変減衰器を含む)を含んでもよい。
【0052】
本発明のシステムの実施形態において、可変減衰器515、521および位相調整器513、519は、コントローラ527によって、遷移点α付近でピーク増幅器のより瞬時のターンオンおよび/またはターンオフ応答をもたらすように、増幅器の1つ以上(たとえば、キャリア増幅器535およびピーク増幅器539)に入力されている信号を成形するように制御される。加えて、ピーク増幅器539、および、任意選択的にキャリア増幅器535における入力信号は、図4Aおよび図4Bに示す理想的なam/amおよびam/pm応答をより近密に近似するように制御することができる。
【0053】
図5を参照すると、本発明のシステムの第1の実施態様において、ピーク増幅器539に対する入力信号を成形するように、可変減衰器521および位相調整器519のみが制御されている。そのような実施態様において、可変減衰器515および位相調整器513は任意選択であり、ノード509および517が互いに直接接続されるように、回路から取り外されてもよい。しかしながら、一般的に、可変減衰器515および521ならびに位相調整器513および519が各々増幅器内に存在しており、最適な性能を可能にするためにキャリア増幅器535およびピーク増幅器539の両方に入力されている信号を成形するために共に使用される。
【0054】
コントローラ527は、遷移点α付近のピーク増幅器539のターンオン特性を変更し、その結果としてピーク増幅器539の出力を変更して増幅器500の理想的なam/amおよびam/pm応答をより近密に近似するために、可変減衰器521および位相調整器519の両方の状態を変更するように構成されている。
【0055】
コントローラ527は、入力信号RFINをモニタリングして、経時的に変化する可能性がある、入力信号のエンベロープ電圧の大きさに基づいて可変減衰器521の減衰を変更するように構成されている。他の事例において、減衰は、ピークエンベロープ電圧、平均エンベロープ電圧、ピークエンベロープ電力、平均エンベロープ電力、または、入力信号に対する何らかの他の電力もしくは電圧測定値に基づいて変更されてもよい。エンベロープ入力信号の大きさが遷移点αを下回るとき、可変減衰器521の減衰は最大値に設定される。これによって、ピーク増幅器539に対する入力に存在するRF電圧が低減し、増幅器が強制的に非伝導状態になり、入力信号が遷移点αを下回るときにピーク増幅器539が動作することが防止される。逆に、入力信号の大きさが遷移点αを超えるとき、可変減衰器521の減衰が最小値に設定されて、ピーク増幅器539が伝導して通常通り動作することが可能になる。一般的に、可変減衰器521の最大減衰値は、減衰器の構成によって規定されているような、可変減衰器501の平均減衰範囲に応じて決まる。所与の可変減衰器521の構成に対する最大減衰は、100%減衰であってもよい。逆に、最小減衰値は、減衰器の最大減衰を下回る減衰値とすることができる。
【0056】
(可変減衰器521の減衰を最大値に設定することによって)ピーク増幅器539を強制的に遷移点αを下回る非伝導状態にすること、および、(可変減衰器521の減衰を最小値に設定することによって)遷移点αを上回る伝導状態にすることによって、キャリア増幅器535は、ピーク増幅器539からの干渉なしに入力信号が増大して遷移点αに達するときにその飽和電圧に達することが可能になり、結果として、遷移点αにおいてドハティ効率がより高くなる。逆に、入力信号レベルが、キャリア増幅器535が飽和する遷移点αよりも大きく増大すると、ピーク増幅器539は動作を開始することが可能になる。遷移点αと最大値との間の入力信号の大きさにおいて、可変減衰器521は、いくつかの減衰状態を呈し得る。遷移点αの値付近において、可変減衰器521は、ピーク増幅器539における尖鋭な電圧および電流の遷移を達成するように制御される。αを大きく上回る(が、最大値よりも小さい)入力信号の大きさにおいて、可変減衰器521および位相調整器519は、増幅器のam/am応答を改善するためにさらに調整されてもよい。
【0057】
可変減衰器521の減衰を最小減衰値と最大減衰値との間で制御するとき、コントローラ527は、一実施形態において、可変減衰器521を最小減衰状態から最大減衰状態へ、およびその逆に直接遷移させない。そうではなく、コントローラ527は、可変減衰器521の減衰が、相対的に小さい範囲の入力信号電圧にわたるいくつかの中間減衰レベルを通過するようにする。この遷移プロセス(図6Aにさらに詳細に示す)は、ピーク増幅器539が円滑であるが相対的に瞬時にオンになることを可能にする。代替の実施形態において、可変減衰器521は、最小減衰状態と最大減衰状態との間で迅速に(たとえば、1つの刻み幅または非常に少数の刻み幅において)調整されてもよい。しかしながら、可変減衰器521が最小減衰状態と最大減衰状態との間で過度に迅速に(たとえば、最大減衰から最小減衰へと直接遷移することによって)変化したとすると、そのような減衰の変化は、ドハティ増幅器の信号経路に過渡信号を導入するであろう。
【0058】
図6Aは、可変減衰器521の減衰がコントローラ527によって入力信号RFINの大きさに基づいてどのように設定され得るかを示すグラフである。図6Aにおいて、垂直軸は可変減衰器521の減衰をdB単位で表し、一方で水平軸は、増幅器500に対する正規化入力電圧(Vin/Vin_max)を表す。図6Aにおける水平軸は一定の縮尺ではなく、水平軸上の点は特定の値の代表であることに留意されたい。
【0059】
遷移点αを下回る入力電圧値について、減衰は最大値602に設定される。一方、入力電圧が遷移点αを超えると、可変減衰器521の減衰は低減される。この低減は、たとえば、可変減衰器521を、最大減衰値602と最小減衰値604との間に入るいくつかの減衰状態または値を通じて遷移させることによって達成されてもよい。遷移は小さいがゼロではない範囲の入力電圧にわたって行われる。一実施態様において、遷移は、遷移点αとα+Xとの間で行われ、XはVin_maxの約1%〜約10%である。可変減衰器521の減衰を最大値と最小値との間で遷移させるとき、コントローラ527およびインターフェース525は、入力信号RFINのエンベロープ速度以上である速度において可変減衰器521の状態を変更するように構成される。
【0060】
入力電圧がα+Xを超えるとき、可変減衰器521の減衰は最小値604に設定される。ただし、いくつかの実施形態において、α+Xを超える入力信号の大きさについて、可変減衰器521の減衰は、am/am応答を改善するように変更される。
【0061】
したがって、動作中、コントローラ527は、増幅器500に対する入力信号RFINのエンベロープの大きさを絶えずモニタリングしている。入力信号のエンベロープの大きさに基づいて、コントローラ527はこのとき、可変減衰器521の適切な減衰レベルを決定する。これは、たとえば、特定の入力信号エンベロープの大きさを特定の減衰状態またはレベルにマッピングするルックアップテーブルを使用して実行されてもよい。可変減衰器521がアナログであるいくつかの事例において、可変減衰器521は、非常に多数の可能性のある減衰状態を有してもよい。その事例において、可変減衰器521をいくつかの中間減衰状態を通じて遷移させるのではなく、可変減衰器521の減衰は、一定範囲の減衰値を通じて連続的に調整されてもよい。その事例において、図6Aに示す減衰値の一連の刻み幅は、最大減衰値602と最小減衰値604との間の直線または連続的な曲線に置き換えられてもよい。
【0062】
適切な減衰レベルが特定されると、コントローラ527は、可変減衰器521をその特定の減衰レベルに設定するためにインターフェース525と通信する。可変減衰器521の減衰レベルが適時に設定されることを保証するために、コントローラ527およびインターフェース525の両方は、一実施態様においては入力信号エンベロープ速度よりも10倍速い調整速度のような、入力信号エンベロープ速度よりも概して速い速度において可変減衰器521の減衰を調整するように構成されている。
【0063】
同様に、増幅器500の性能を改善するために、可変減衰器521の減衰を変更することができるが、増幅器500の線形性を改善するために、位相調整器519の位相シフトを入力信号に基づいて変更することができる。図6Bは、位相調整器519の位相シフトが入力信号RFINのエンベロープの大きさに基づいてどのように設定され得るかを示すグラフである。図6Aにおいて、垂直軸は位相調整器519の位相シフトを表し、一方で水平軸は、増幅器500に対する正規化入力電圧(Vin/Vin_max)を表す。図6Aにおける水平軸は一定の縮尺ではなく、水平軸上の点は特定の値の代表であることに留意されたい。
【0064】
遷移点αを下回る入力電圧値について、位相調整器519の位相シフトは最小値606(たとえば、0度)に設定され得る。一方、入力電圧が遷移点αを超えると、位相シフトが、入力信号が最大値にある(すなわち、Vin/Vin_max=1)ときの最大値608に達するまで、位相調整器519の位相シフトが増大される。最大位相シフト値は、増幅器の所望の出力を提供するように選択される。いくつかの事例において、この位相シフトは約45度であってもよいが、デバイスに基づいて変化してもよく、大幅に大きくてもよい。位相シフトの増大は、たとえば、位相調整器519を、最小位相シフト値606と最大位相シフト値608との間に入るいくつかの位相シフト状態を通じて遷移させることによって達成されてもよい。位相調整器519がアナログであるいくつかの事例において、位相調整器519は、非常に多数の可能性のある位相シフト状態を有してもよい。その事例において、位相調整器519をいくつかの中間位相シフト値を通じて遷移させるのではなく、位相調整器519の位相シフトは、一定範囲の位相シフト値を通じて連続的に調整されてもよい。その事例において、図6Bに示す位相シフト値の一連の刻み幅は、直線または連続的な曲線に置き換えられてもよい。位相調整器519の位相シフトが増大する速度(それによって、ピーク増幅器539の経路に位相シフトが導入される)は、たとえば、ピーク増幅器539の出力電力が増大するときに生じる、ピーク増幅器539の位相歪み(am/pmシフト)を補償するように選択することができる。
【0065】
したがって、動作中、コントローラ527は、増幅器500に対する入力信号RFINのエンベロープの大きさを絶えずモニタリングしている。入力信号のエンベロープの大きさに基づいて、コントローラ527はこのとき、位相調整器519の適切な位相シフトを決定する。このことは、たとえば、特定の入力信号エンベロープの大きさを特定の位相シフトにマッピングするルックアップテーブルを使用して実行されてもよい。適切な位相シフトが特定されると、コントローラ527は、位相調整器519をその特定の位相シフトに設定するためにインターフェース525と通信する。位相調整器519の位相シフトが適時に設定されることを保証するために、コントローラ527およびインターフェース525の両方は、一実施態様においては入力信号エンベロープ速度よりも10倍速い調整速度のような、入力信号エンベロープ速度よりも概して速い速度において位相調整器519の位相シフトを調整するように構成されている。
【0066】
いくつかの実施態様において、ピーク増幅器539に入力されている信号の減衰および位相シフトを変更するのに加えて、コントローラ527は、インターフェース525と協働して、キャリア増幅器535に入力されている信号の減衰および位相シフトをも変更してもよい。これは、たとえば、上述の方法に従って可変減衰器521および位相調整器519が変更されるのと同様に、可変減衰器515および位相調整器513を制御することによって実行されてもよい。
【0067】
たとえば、図7Aは、可変減衰器515の減衰が入力信号RFINのエンベロープの大きさに基づいてどのように設定され得るかを示すグラフである。図7Aにおいて、垂直軸は可変減衰器515の減衰をdB単位で表し、一方で水平軸は、増幅器500に対する正規化入力電圧(Vin/Vin_max)を表す。図7Aにおける水平軸は一定の縮尺ではなく、水平軸上の点は特定の値の代表であることに留意されたい。
【0068】
図7Aに示されている減衰状態マッピングは、増幅器500の出力において一定のゲインをもたらすように選択することができる。ピーク増幅器539の出力がキャリア増幅器535の動作に影響を及ぼし得るため、ピーク増幅器539が(遷移点αにおいて)伝導し始めると、可変減衰器515の減衰は、一般的にAB級ゲイン曲線に見られるゲインエクスパンション−コンプレッション挙動を補償するために低減することができ、遷移点αを下回る信号レベルに対するキャリア経路の減衰の結果として、ゲイン応答を改善することが可能でありえる。一方で、他の実施形態において、遷移点αを下回ると最小減衰になり、遷移点αを上回る値に対して減衰が増大するように、可変減衰器515の減衰特性が逆になり得ることが可能である。一般的に、可変減衰器515は、キャリア増幅器535の特性を補償し、それによって、一定のam/am歪みを提供することに関して全体的な増幅器500の線形性を改善するために、Vin/Vin_maxの関数として調整される。また、キャリア増幅器535のam/amおよびam/pm特性は、増幅器の技術および他の設計制約に応じて広く変化する可能性があり、それゆえ、図7Aおよび図7Bに示す関数関係も、増幅器500の動作に応じて変化し得ることにも留意されたい。
【0069】
したがって、動作中、コントローラ527は、増幅器500に対する入力信号RFINのエンベロープの大きさを絶えずモニタリングしている。入力信号のエンベロープの大きさに基づいて、コントローラ527はこのとき、可変減衰器515の適切な減衰レベルを決定する。これは、たとえば、特定の入力信号エンベロープの大きさを特定の減衰レベルにマッピングするルックアップテーブルを使用して実行されてもよい。
【0070】
適切な減衰レベルが特定されると、コントローラ527は、可変減衰器515をその特定の減衰レベルに設定するためにインターフェース525と通信する。可変減衰器515の減衰レベルが適時に設定されることを保証するために、コントローラ527およびインターフェース525の両方は、入力信号エンベロープ速度以上の速度において可変減衰器515の減衰を調整するように構成されている。
【0071】
同様に、増幅器500の性能を改善するために、可変減衰器515の減衰を変更することができるが、増幅器500の線形性を改善するために、位相調整器513の位相シフトを入力信号に基づいて変更することができる。図7Bは、位相調整器513の位相シフトが入力信号RFINのエンベロープの大きさに基づいてどのように設定され得るかを示すグラフである。図7Bにおいて、垂直軸は位相調整器513の位相シフトを表し、一方で水平軸は、増幅器500に対する正規化入力電圧(Vin/Vin_max)を表す。図7Aにおける水平軸は一定の縮尺ではなく、水平軸上の点は特定の値の代表であることに留意されたい。
【0072】
遷移点αを下回る入力電圧値について、位相調整器513の位相シフトは最小値に設定される。一方、入力電圧が遷移点αを超えると、位相シフトが、入力信号が最大値にある(すなわち、Vin/Vin_max=1)ときの最大値に達するまで、位相調整器513の位相シフトが増大される。この増大は、たとえば、位相調整器513を、最小位相シフト値と最大位相シフト値との間に入るいくつかの位相シフト状態を通じて遷移させることによって達成されてもよい。位相調整器513がアナログであるいくつかの事例において、位相調整器513は、非常に多数の可能性のある位相シフト状態を有してもよい。その事例において、位相調整器513をいくつかの中間位相シフト状態を通じて遷移させるのではなく、位相調整器513の位相シフトは、一定範囲の位相シフト値を通じて連続的に調整されてもよい。その事例において、図7Bに示す位相シフト値の一連の刻み幅は、直線または連続的な曲線に置き換えられてもよい。位相調整器513の位相シフトが増大する速度(それによって、キャリア増幅器535の経路に位相シフトが導入される)は、たとえば、ピーク増幅器539の出力電力が増大するときに生じる、キャリア増幅器535の位相歪み(am/pmシフト)を補償するように選択することができる。様々な増幅器実施態様において、図7Bに示す位相シフトは、異なる形状を有してもよい。たとえば、位相シフトは代わりに、図7Bに示すものと反対であってもよく、すなわち、入力信号の大きさが増大するにつれて位相シフトが低減してもよい。
【0073】
したがって、動作中、コントローラ527は、増幅器500に対する入力信号RFINのエンベロープの大きさを絶えずモニタリングしている。入力信号のエンベロープの大きさに基づいて、コントローラ527はこのとき、位相調整器513の適切な位相シフトを決定する。これは、たとえば、特定の入力信号エンベロープの大きさを特定の位相シフトにマッピングするルックアップテーブルを使用して実行されてもよい。適切な位相シフトが特定されると、コントローラ527は、位相調整器513をその特定の位相シフトに設定するためにインターフェース525と通信する。位相調整器513の位相シフトが適時に設定されることを保証するために、コントローラ527およびインターフェース525の両方は、一実施態様においては入力信号エンベロープ速度よりも10倍速い調整速度のような、入力信号エンベロープ速度よりも概して速い速度において位相調整器513の位相シフトを調整するように構成されている。
【0074】
可変減衰器521および位相調整器519、ならびに、任意選択的に可変減衰器515および位相調整器513を上述のように制御することによって、ピーク増幅器539のターンオン特性を改善するとともに、増幅器500の全体的な線形性を改善することが可能である。例示するために、図8Aおよび図8Bは、理想化されたドハティ増幅器、従来のドハティ増幅器、ならびに、上述したようなコントローラによって制御される可変減衰器および位相調整器を含むドハティ増幅器500の動作を示すグラフである。各グラフは、ドハティ増幅器のキャリア増幅器およびピーク増幅器のデータを示している。図8Aにおいて、線200は、キャリア増幅器の電圧を示し、一方で線202はピーク増幅器の電圧を示す。図8Bにおいて、線204は、キャリア増幅器の電流を示し、一方で線206はピーク増幅器の電流を示す。両方のグラフにおいて、電圧および電流値は1.0の値付近で正規化されている。図3Aおよび図3Bにおけるもののように、破線302および304は、遷移点αの辺りで従来のドハティ増幅器の実際の電圧および電流曲線を表している。曲線802および804は、図5のドハティ増幅器の遷移点αの辺りの電圧および電流曲線を表している。
【0075】
図8Aから分かるように、本発明の増幅器において、キャリア増幅器は、従来のデバイスと比較して低減した、遷移点αを超える出力において飽和電圧に達する(線802参照)。同様に、図8Bに関連して、ピーク増幅器は、従来のデバイスと比較してより大きい入力電力レベルにおいて伝導を開始する(線804参照)。ドハティ増幅器500のこれら2つの属性は、ピーク増幅器の有効ターンオン特性を高めることによって、より理想的でより効率的なドハティ電力増幅器を実現することができる。
【0076】
本発明のシステムの一実施形態において、図5を参照して、コントローラ527は、任意選択的に、接続551によって示されるように、ピーク増幅器539上のゲートバイアス変調入力に接続されてもよい。ピーク増幅器539のゲートバイアス変調入力に特定の入力電圧を供給することによって、コントローラ527は、増幅器のゲート電圧(VG_peaking)および、それによって、増幅器の直流電流(DC)動作点を制御することができる。
【0077】
動作中、コントローラ527は、増幅器500に対する入力信号RFINのエンベロープの大きさを絶えずモニタリングしている。入力信号のエンベロープの大きさに基づいて、コントローラ527はこのとき、ピーク増幅器539の適切な動作モードを決定する。
【0078】
入力信号エンベロープレベルが遷移点αを下回ると、コントローラ527は、ピーク増幅器539がC級増幅器として動作するようになり、非伝導になるための信号をゲートバイアス変調入力に供給する。これによって、低電力入力信号に対して増幅器500の効率が改善し得る。
【0079】
一方、入力信号のエンベロープの大きさが遷移点αを超え始めると、コントローラ527は、ピーク増幅器539がAB級増幅器として動作するようになるための信号をゲートバイアス変調入力に供給する。これによって、ピーク増幅器539は伝導し始め、ピーク増幅器539がAB級デバイスとして動作することに起因して線形化可能性が改善されるというさらなる利点がもたらされ得る。概して、ピーク増幅器539の静止バイアス点(quiescent bias point)は、入力信号のエンベロープの大きさに比例することになる。遷移点αを下回る入力信号エンベロープの大きさについて、ピーク増幅器539の静止点は、深いC級動作からAB動作へと変化することになる。一般的に、ピーク増幅器539の静止点は、入力信号変調のものと同様である速度において変化する。
【0080】
ここでも、一実施形態において、コントローラ527は、ピーク増幅器539をC級デバイスとしての動作からAB級デバイスとしての動作へ、および、その逆に、瞬持には遷移させない。そうではなく、遷移は遷移点α付近の一定範囲の入力信号エンベロープの大きさにわたって漸進的であり得る。C級からAB級への(およびその逆の)ピーク増幅器のバイアスの瞬時の切り替えの結果として、グリッチの形態のピーク増幅器のゲイン(AM/AM)および位相(AM/PM)応答の瞬時の変化がもたらされ、それは増幅器全体の線形化可能性を妨げ得る。他方、C級からAB級へのピーク増幅器のバイアスの緩やかな遷移の結果として、ゲインおよび位相応答がより円滑に成り、それによって、増幅器の線形化可能性を改善することが可能になる。しかしながら、代替の実施形態において、C級からAB級へのピーク増幅器のバイアスを、線形性問題にかかわらず瞬時に行うことができる。
【0081】
図9は、ピーク増幅器539のゲートバイアス変調入力に対する入力を、増幅器に対する入力信号のエンベロープの大きさに基づいてどのように設定することができるかを示すグラフである。図9において、垂直軸はゲートバイアス変調入力の電圧(VG_peaking)を表し、一方で水平軸は、増幅器500に対する正規化入力電圧(Vin/Vin_max)を表す。図9における水平軸は一定の縮尺ではなく、水平軸上の点は特定の値の代表であることに留意されたい。
【0082】
遷移点αを下回る入力電圧値について、VG_peakingはピーク増幅器539にC級デバイスとして動作させるように設定される。一方、入力電圧が遷移点αを超えると、VG_peakingが増大し、それによって、ピーク増幅器539がAB級デバイスとしての動作に遷移し始める。この増大は、たとえば、VG_peakingを、最小VG_peaking値902と最大VG_peaking値904との間に入るいくつかの明確に異なる値を通じて遷移させることによって達成されてもよい。この遷移は、一実施態様においては遷移点αの直ぐ下から最大入力信号の大きさまでの、一定範囲の入力信号の大きさにわたって行われる。低電力動作においては、ピーク増幅器539はC級動作モードにバイアスされ、ゲート電圧はピーク増幅器539がオンになるのに必要な最小電圧を下回るため、たとえVG_peakingが遷移点αの前に増加し始め得るとしても、ピーク増幅器539は、VG_peakingがピーク増幅器の閾値電圧を超えるまではAB級動作モードに遷移しないことになる。VG_peakingの値が最小値と最大値との間で遷移するとき、コントローラ527は、VG_peakingを、入力信号RFINのエンベロープ速度以上の速度で変更するように構成されている。入力電圧が遷移点αを超えると、VG_peakingはピーク増幅器539にAB級デバイスとして動作させる最大値904に設定される。
【0083】
したがって、動作中、コントローラ527は、増幅器500に対する入力信号RFINのエンベロープの大きさを絶えずモニタリングしている。入力信号のエンベロープの大きさに基づいて、コントローラ527はこのとき、適切なVG_peaking信号を決定する。これは、たとえば、特定の入力信号エンベロープの大きさを特定の減衰状態にマッピングするルックアップテーブルを使用して実行されてもよい。ピーク増幅器539のゲートバイアス変調入力が適時に設定されることを保証するために、コントローラ527は、信号エンベロープ速度以上の速度においてVG_peakingを調整するように構成されている。
【0084】
この実施態様において、伝導しているときピーク増幅器539はAB級モードにおいて動作しているため、増幅器は線形化可能性の改善を呈することができる。結果として、上述のような位相調整器513および519を変更する技法の代わりに、上述のバイアス変調技法を使用して、ピーク増幅器539がC級デバイスとして動作することに起因して増幅器500の出力に注入されることになる非線形性をオフセットすることができる。
【0085】
たとえそうであっても、任意選択的には可変減衰器515および521の減衰を変更することによって、デバイスの効率をなお改善することができる。図10は、たとえば、図9に示すゲートバイアス変調と組み合わせて可変減衰器515および521の減衰を変更するための手法を示すグラフである。図10において、垂直軸は減衰を表し、一方で水平軸は、増幅器500に対する正規化入力電圧(Vin/Vin_max)を表す。遷移点αよりも下で、可変減衰器515の減衰(線1002によって表される)は、キャリア増幅器535が伝導することを可能にする、相対的に低い値に設定される。逆に、可変減衰器521の減衰(線1004によって表される)は相対的に高い値に設定され、ピーク増幅器539は強制的に非伝導状態にされる。遷移点αの上では、可変減衰器515および521の減衰は逆になり、ピーク増幅器539が伝導性になる。遷移点α付近では、可変減衰器515および521の両方が最大減衰値と最小減衰値との間で円滑に遷移される。遷移が発生し得る入力電圧の範囲は、一例において、Vin_maxの約1%〜約10%とすることができる。
【0086】
ピーク増幅器539を(図9が示すように)C級動作モードとB級動作モードとの間で遷移させること、および、可変減衰器515および521の減衰状態を(図10が示すように)変更することによって、いくつかの事例において、増幅器500の線形性を改善することができる。図11Aは、いくつかのam/am歪み曲線を示すグラフである。図11Aにおけるグラフの垂直軸はam/am歪みを示し、一方で水平軸は出力電力を表す。線1102は、従来の増幅器のam/am歪みを示す。線1104は、ピーク増幅器539の動作級が図9に従って変更され、可変減衰器515および521の減衰状態が図10に従って変更される、本発明の増幅器のam/am歪みを示す。同様に、図11Bは、いくつかのam/pm歪み曲線を示すグラフである。図11Bにおけるグラフの垂直軸はam/pm歪みを示し、一方で水平軸は出力電力を表す。線1106は、従来の増幅器のam/pm歪みを示す。線1108は、ピーク増幅器539の動作級が図9に従って変更され、可変減衰器515および521の減衰状態が図10に従って変更される、本発明の増幅器のam/pm歪みを示す。
【0087】
様々な方法およびシステムが、二重経路ドハティ増幅器デバイスに関連して説明された。しかし、これらの手法は、3つ以上の増幅経路を有する多経路増幅器に一般化することができる。以下、3ウェイドハティ増幅器の性能を改善し、それゆえ、N個の増幅器、および、N個の増幅器の各々が伝導を開始する、対応する数の入力信号の大きさの遷移点を有する多経路増幅器に一般化することができる、可変減衰器および位相調整器の制御を説明する。
【0088】
図12は、たとえば、1つのキャリア経路および2つのピーク経路を含む3ウェイドハティ増幅器の簡略図である。増幅器1200は入力信号を、増幅器1200内の経路の数に等しい数の出力信号に分配するように構成されている信号分配器1204に接続されている入力1202(RFIN)を含む。増幅器1200は、キャリア増幅器1212に接続されているキャリア経路1206を含む。第1のピーク経路1208は第1のピーク増幅器1214に接続されており、第2のピーク経路1210は第2のピーク増幅器1216に接続されている。キャリア増幅器1212、ピーク増幅器1214、およびピーク増幅器1216の出力は、出力ノード1222においていくつかの位相シフト要素1218および1220によって結合される。インピーダンス1224を含むインピーダンスネットワークは、キャリア増幅器1212、ピーク増幅器1214、およびピーク増幅器1216の各々に適切な負荷を提示するように機能する。
【0089】
動作中、キャリア増幅器1212は、相対的に低レベルの入力信号を増幅するように構成されている。しかしながら、入力信号の大きさが増大すると、第1のピーク増幅器1214が伝導し始める第1の点(遷移点α1)に達する。この時点において、第2のピーク増幅器1216および第3のピーク増幅器1218は非伝導性であることが望ましい。しかしながら、入力信号の大きさが増大し続けると、最終的に、第2のピーク増幅器1216が伝導し始める入力電力レベル(遷移点α2)に達する。遷移点α2は、遷移点α1よりも大きい入力信号の大きさを表す。様々な増幅器実施態様において、遷移点α1およびα2の値は、キャリアおよび2つのピーク増幅器の電力容量に関係する増幅器の所望の負荷変調によって決定することができる。一般的に、遷移点α1は1/(1+Pp1/Pc)として選択され、α2は1/(1+Pp2/(Pc+Pp1))として選択され、Ppc2、Pp1、およびPcはそれぞれ2つのピーク増幅器およびキャリア増幅器のパワー能力である。上述のように、実世界のデバイスにおいて、遷移点α1およびα2周辺のピーク増幅器1214および1216の動作の結果として、増幅器1200は非効率になり、その動作は非線形的になる。
【0090】
増幅器1200内の各経路は可変減衰器(たとえば、1226、1228、または1230)と、位相調整器(たとえば、1232、1234、または1236)とを含み、キャリア増幅器1212、ピーク増幅器1214、およびピーク増幅器1216に対する入力信号の減衰および位相シフトが調整されることを可能にする。インターフェース1238が、可変減衰器1226、1228、および1230に、その減衰状態を制御するために、ならびに、位相調整器1232、1234、および1236に、その位相シフトを制御するために接続されている。
【0091】
増幅器1200はコントローラ1240を含む。コントローラ1240は入力1202における入力信号RFINをモニタリングするように構成されている。入力信号の大きさに基づいて、コントローラ1240は、増幅器1200の各経路内の可変減衰器および位相シフトにとって適切な構成を決定することができる。図13A図14A、および図15Aは、それぞれ可変減衰器1228、1230、および1226の減衰(垂直軸)を入力信号の大きさ(水平軸)に基づいてどのように設定することができるかを示すグラフである。図13B図14B、および図15Bは、それぞれ位相調整器1234、1236、および1232の位相シフト(垂直軸)を入力信号の大きさ(水平軸)に基づいてどのように設定することができるかを示すグラフである。
【0092】
一般的に、遷移点α1を下回る入力信号レベルにおいて、キャリア増幅器1212は動作することを許可され、一方でピーク増幅器1214および1216の動作は禁止される。したがって、遷移点α1を下回る入力レベルにおいて、可変減衰器1228および1230の減衰状態は、ピーク増幅器1214および1216の両方の動作を禁止するための最大値に設定されている(図13Aおよび図14A参照)。入力信号の大きさが遷移点α1を超えているが、依然として遷移点α2よりも小さいとき、ピーク増幅器1214は動作を許可されるが、ピーク増幅器1216は依然として動作を阻害されている。したがって、遷移点α1よりも大きいが遷移点α2よりも小さい入力レベルにおいて、可変減衰器1228の減衰状態は最小値に設定されているが(図13A参照)、可変減衰器1230の減衰状態は高いままである(図14A参照)。入力信号の大きさが遷移点α1およびα2の両方を超えると、ピーク増幅器1214および1216の両方が動作することを許可され、可変減衰器1228および1230の減衰状態が最小値に設定されて、ピーク増幅器1214および1216の両方の動作が可能になる(図13Aおよび図14A参照)。
【0093】
上述の二重経路増幅器の事例のように、可変減衰器1228および1230の各々の最大減衰状態と最小減衰状態との間の遷移は、一定範囲の入力信号の大きさの値にわたって行われ得る。したがって、可変減衰器1228または1230が最大状態と最小状態とノアで遷移するとき、可変減衰器は実際には、いくつかの中間減衰値を通じて遷移する。これは、図6Aに示し上述した減衰状態変化と同様に実行されてもよく、減衰状態が過度に迅速に変化するのに起因して増幅器1200の信号経路に過渡信号が導入されるのを防止することができる。一実施態様において、減衰状態の最大値と最小値との間の遷移は、Vin_maxの約1%〜約10%に等しい範囲の入力信号の大きさの値にわたって行われ得る。
【0094】
いくつかの実施態様において、キャリア経路1206の可変減衰器1226も、増幅器1200に対する入力信号の大きさに基づいて変更されてもよい。図15Aに示すように、可変減衰器1226の減衰は、遷移点α1よりも大きい入力信号については低減され得る。
【0095】
加えて、増幅器1200の各経路の位相シフトは、増幅器1200の線形性を改善するために変更されてもよい。ここでも、この位相シフトは、二重経路増幅器について上述したものと同様に、3経路増幅器に対して実行されてもよい。図13Bに示すように、入力信号の大きさが遷移点α1を超え、ピーク増幅器1214が伝導し始めると、位相調整器1234の位相シフトを増大して、ピーク増幅器1214が伝導し始めることに起因して増幅器1200の出力に付与される非線形性を補償することができる。同様に、図14Bに示すように、入力信号の大きさが遷移点α2を超え、ピーク増幅器1216が伝導し始めると、位相調整器1236の位相シフトを増大して、ピーク増幅器1216が伝導し始めることに起因して増幅器1200からの出力に付与される非線形性を補償することができる。
【0096】
いくつかの実施態様において、キャリア経路1206の位相調整器1232も、増幅器1200に対する入力信号の大きさに基づいて変更されてもよい。図15Bに示すように、遷移点α1よりも大きい入力信号について位相調整器1232の位相シフトを調整することができる。
【0097】
デバイスの一実施形態は、第1の経路および第2の経路を有する増幅器と、第1の経路に接続されている第1の可変減衰器と、第1の可変減衰器に結合されているコントローラとを含む。コントローラは、増幅器に対する入力信号の大きさを判定し、入力信号の大きさが閾値を下回るときは、第1の可変減衰器の減衰を第1の減衰値に設定し、入力信号の大きさが閾値を上回るときは、第1の可変減衰器の減衰を第2の減衰値に設定するように構成されている。第2の減衰値は第1の減衰値よりも小さい。
【0098】
システムの一実施形態は、キャリア経路およびピーク経路を有するドハティ増幅器を含む。ドハティ増幅器は、キャリア経路から受信される信号を増幅するように構成されているキャリア増幅器と、ピーク経路から受信される信号を増幅するように構成されているピーク増幅器とを含む。システムは、キャリア経路およびピーク経路に結合されている電力分配器と、ピーク経路に接続されている第1の可変減衰器と、第1の可変減衰器に結合されているコントローラとを含む。コントローラは、ドハティ増幅器に対する入力信号の大きさを判定し、入力信号の大きさが閾値を下回るときは、第1の可変減衰器の減衰を第1の減衰値に設定し、入力信号の大きさが閾値を上回るときは、第1の可変減衰器の減衰を第2の減衰値に設定するように構成されている。第2の減衰値は第1の減衰値よりも小さい。
【0099】
方法の一実施形態は、増幅器に対する入力信号の大きさを判定する工程を含む。増幅器は、増幅器の第1の経路に接続されている第1の可変減衰器を含む。入力信号の大きさが閾値を下回るときは、方法は、第1の可変減衰器の減衰を第1の減衰値に設定する工程を含み、入力信号の大きさが閾値を上回るときは、方法は、第1の可変減衰器の減衰を第2の減衰値に設定する工程を含む。第2の減衰値は第1の減衰値よりも小さい。
【0100】
本開示は、本発明に応じた様々な実施形態を、その真の、意図される、公正な範囲および精神を限定するのではなく、作用および使用する方法を説明するように意図されている。上記の説明は、網羅的であるようにも、本発明を開示されている厳密な形態に限定するようにも意図されていない。上記の教示に照らして変更および変形が可能である。実施形態(複数の場合もあり)は、本発明の原理およびその実際の適用の最良の例示を提供し、当業者が、様々な実施形態において、および、企図する特定の用途に適するように様々な変更を加えて本発明を利用することを可能にするために選択および記載された。すべてのそのような変更および変形は、それらが公正に、合法に、かつ公平に権利付与される範囲に応じて解釈されるときに、本出願が特許を求め係属している間に補正され得る添付の特許請求の範囲、およびそのすべての均等物によって画定されるような本発明の範囲内にある。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図9
図10
図11A
図11B
図12
図13A
図13B
図14A
図14B
図15A
図15B