(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記流量調節手段は、前記窒素酸化物含有ガスが流通する第1の毛細管と、前記不活性ガスが流通する第2の毛細管を備えることを特徴とする請求項1記載の窒素酸化物濃度計測装置。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態に係る窒素酸化物濃度計測装置(以下、単に計測装置という。)について説明する。
この計測装置は、窒素酸化物含有ガスであるサンプルガス(原ガス)を所定の希釈ガスで希釈して窒素酸化物(NO
X)の濃度を計測する装置であり、
図1に示すように希釈部A1と計測部A2とを備える。また、この計測装置は、特に酸素(O
2)が大気(空気)と同程度(約21%)含まれたもの、例えば空気を窒素酸化物(NO
X)のキャリアガスとする窒素酸化物含有ガスを計測対象とするものである。
【0016】
なお、
図1では、本発明を説明する上で本質的に重要でない構成要素、例えば各種の開閉弁やフィルタ、またNO
X検出器30及びO
2検出器31の校正に関係する部品等については省略している。
【0017】
上記サンプルガス(原ガス)は、本実施形態における計測対象ガスであり、上述したように空気(大気)をキャリアガスとし、かつ比較的高濃度の窒素酸化物(NO
X)を含有する窒素酸化物含有ガスである。また、サンプルガス(原ガス)に含まれる窒素酸化物(NO
X)は、一酸化窒素(NO)及び/あるいは二酸化窒素(NO
2)である。このようなサンプルガス(原ガス)は、外部のサンプルガス供給源(図示略)から希釈部A1に供給される。
【0018】
希釈部A1は、サンプルガス(原ガス)を所定の希釈ガス窒素ガス(N
2)によって希釈する機能構成要素である。上記サンプルガス(原ガス)は、計測部A2の濃度計測レンジを越えた高濃度の窒素酸化物(NO
X)を含有する窒素酸化物含有ガスであり、よって計測部A2で窒素酸化物(NO
X)の濃度を直接計測することができない。このような事情から、本実施形態に係る計測装置は、計測部A2の前処理部として希釈部A1を備える。
【0019】
なお、上記希釈ガスについては、酸素(O
2)を含まないものであれば適用可能であるが、サンプルガス(原ガス)に対する化学的安定性の面で不活性ガスが好ましく、また不活性ガスの中で最も安価な窒素(N
2)が好適である。本実施形態においても、この窒素(N
2)を希釈ガスとして採用する。このような希釈ガス(窒素(N
2))は、外部の希釈ガス供給源(図示略)から希釈部A1に供給される。
【0020】
さて、このような希釈部A1は、
図1に示すように、プリコンバータ1、第1除湿器2、第1SPポンプ3、第1ドレンポット4、第1キャピラリ5(第1の毛細管)、第1流量計6、第2キャピラリ7、第3キャピラリ8(第2の毛細管)、第2流量計9、恒温槽10、ガス混合器11、吸引ポンプ12及び第3流量計13を備えている。
【0021】
プリコンバータ1は、サンプルガス(原ガス)中に含まれる二酸化窒素(NO
2)の殆どを一酸化窒素(NO)に還元(化学的還元)する第1還元部である。サンプルガス(原ガス)が一酸化窒素(NO)及び二酸化窒素(NO
2)を含む場合、プリコンバータ1を通過したサンプルガスは、サンプルガス(原ガス)に本来的に含む一酸化窒素(NO)とプリコンバータ1による還元処理によって二酸化窒素(NO
2)から新たに生成された一酸化窒素(NO)とを含む窒素酸化物含有ガスとなる。
【0022】
このようなプリコンバータ1は、計測部A2における窒素酸化物の検出原理上必要なもの、つまり計測部A2では一酸化窒素(NO)のみ検出可能であり、二酸化窒素(NO
2)について検出できないという事情に基づいて設けられている。したがって、例えばサンプルガス(原ガス)が一酸化窒素(NO)のみを窒素酸化物として含む場合には、プリコンバータ1を省略することができる。
【0023】
第1除湿器2は、上記プリコンバータ1で還元処理されたサンプルガスについて、含有する水分を除去する機器である。この第1除湿器2は、水分を除去したサンプルガスを第1SPポンプ3に供給する一方、サンプルガスから分離した水分を第1ドレンポット4に供給する。第1SPポンプ3は、制御演算部36による制御の下で作動するポンプであり、第1除湿器2から供給されたサンプルガスを第1キャピラリ5及び第1流量計6に向けて吐出する。第1ドレンポット4は、第1除湿器2から供給された上記水分を一定量貯えて外部に排出する容器である。
【0024】
第1キャピラリ5は、第1SPポンプ3から供給されるサンプルガスが流通する所定管径(流路径)の毛細管であり、サンプルガスの流量を所望の第1流量R1(所望流量)に調節する。第1流量計6は、第1SPポンプ3の吐出口つまり第1キャピラリ5の入口に接続されたオーバーフロー方式のフロート式ガス流量計であり、上記第1SPポンプ3の吐出口つまり第1キャピラリ5の入口の圧力を大気圧に設定する。
【0025】
第2キャピラリ7は、外部から供給される窒素(N
2)が流通する所定管径(流路径)の毛細管であり、窒素(N
2)の流量を第2流量R2に調節して第3キャピラリ8及び第2流量計9に出力する。第3キャピラリ8は、第2キャピラリ7から供給される第2流量R2の窒素(N
2)が流通する所定管径(流路径)の毛細管であり、窒素(N
2)を第3流量R3(所望流量)に調節する。すなわち、外部から供給される窒素(N2)は、第2キャピラリ7によって第2流量R2に絞られ、さらに第3キャピラリ8によって第2流量R2よりも小さな第3流量R3に絞られる。
【0026】
第2流量計9は、第2キャピラリ7の出口つまり第3キャピラリ8の入口に接続されたオーバーフロー方式のフロート式ガス流量計であり、上記第2キャピラリ7の出口及び第3キャピラリ8の入口の圧力を大気圧に設定する。
【0027】
恒温槽10は、第1キャピラリ5及び第3キャピラリ8を収容し、当該第1キャピラリ5及び第3キャピラリ8の環境温度を予め設定された設定温度に保持する温度調節装置である。ここで、上記第1キャピラリ5、第3キャピラリ8及び恒温槽10は、希釈ガスとして窒素(N
2)を取り込み、当該窒素(N
2)をの流量及び別途取り込んだサンプルガスの流量を所望流量にそれぞれ調節する流量調節手段である。
【0028】
ガス混合器11は、第1キャピラリ5で流量調節されたサンプルガスと第3キャピラリ8で流量調節された窒素(N
2)とを撹拌混合させて調整ガスを生成する。
図1では、三又状の配管によって第1キャピラリ5の出口と第3キャピラリ8の出口とが接続された後にガス混合器11の入口に接続されており、より正確には上記三又状の配管とガス混合器11とによって調整ガスが生成される。このようなガス混合器11、より正確には三又状の配管及びガス混合器11は、本実施形態におけるガス混合手段である。なお、ガス混合器11に2つの入口を設けることにより、ガス混合器11にサンプルガスと窒素(N
2)とを個別かつ直接に供給してもよい。
【0029】
ここで、このようなガス混合手段におけるサンプルガスと窒素(N
2)との混合比は、第1キャピラリ5の第1流量R1と第3キャピラリ8の第3流量R3とによって理論的に決定される。このような混合比は、窒素(N
2)によるサンプルガスの希釈倍率に対応する量である。
【0030】
吸引ポンプ12は、制御演算部36による制御の下で作動するポンプであり、ガス混合器11で生成された調整ガスを吸引する。より正確には、吸引ポンプ12が発揮する吸引力によって、サンプルガスは第1キャピラリ5からガス混合器11に吸引されると共に窒素(N
2)が第3キャピラリ8からガス混合器11に吸引され、ガス混合器11において調整ガスが生成される。この吸引ポンプ12は、ガス混合器11から吸引した調整ガスを第3流量計13及び計測部A2の入口に供給する。
【0031】
第3流量計13は、上記吸引ポンプ12の吐出口つまり計測部A2の入口に接続されたオーバーフロー方式のフロート式ガス流量計である。この第3流量計13は、上記吸引ポンプ12の吐出口及び計測部A2の入口の圧力を大気圧に設定する。
【0032】
一方、計測部A2は、希釈部A1で生成された調整ガス及び希釈部A1を介して別途供給される希釈ガス(窒素(N
2))に基づいて希釈部A1におけるサンプルガスの希釈倍率KRを演算し、この希釈倍率KRと別途検出した調整ガスの窒素酸化物濃度とに基づいてサンプルガスの窒素酸化物濃度を計測する機能構成要素である。なお、調整ガスにおける窒素酸化物(NO
X)は希釈部A1によって計測部A2の濃度計測レンジ内となるように前処理されているので、計測部A2は、調整ガスの窒素酸化物濃度を安定的かつ正確に計測することができる。
【0033】
このような計測部A2は、
図1に示すように、第2SPポンプ14、第2除湿器15、第4流量計16、第2ドレンポット17、第3ドレンポット18、第4キャピラリ19、メインコンバータ20(還元手段)、迂回経路21、第1三方弁22(第2の選択手段)、第2三方弁23、第1活性炭槽24、第5キャピラリ25、第3三方弁26(選択手段)、第5流量計27、オゾン発生器28、第6キャピラリ29、NO
X検出器30(窒素酸化物濃度検出手段)、O
2検出器31(酸素濃度検出手段)、第7キャピラリ32、オゾン分解器33、第2活性炭槽34、減圧ポンプ35、制御演算部36(演算手段)及び表示部37を備えている。
【0034】
第2SPポンプ14は、制御演算部36による制御の下で作動するポンプであり、希釈部A1の吸引ポンプ12から吐出された調整ガスを計測部A2内の取り込む。第2除湿器15は、上記第2SPポンプ14から供給された調整ガスの水分及び大気から別途取り込んだ空気の水分を除去する機器である。この第2除湿器15は、水分を除去した調整ガスを第4流量計16に供給する一方、調整ガスから分離した水分を第2ドレンポット17に供給する。また、この第2除湿器15は、水分を除去した空気(ドライエアー)をオゾン発生器28に供給する一方、空気から分離した水分を第3ドレンポット18に供給する。
【0035】
第4流量計16は、第2除湿器15から供給された調整ガスの流量を計測して第4キャピラリ19及び第1活性炭槽24に供給する。第2ドレンポット17は、第2除湿器15から供給された水分(調整ガスから分離された水分)を一定量貯えて外部に排出する容器である。第3ドレンポット18は、第2除湿器15から供給された水分(空気から分離された水分)を一定量貯えて外部に排出する容器である。
【0036】
第4キャピラリ19は、第4流量計16から供給された調整ガスが流通する所定管径(流路径)の毛細管であり、調整ガスの流量を第4流量R4に調節してメインコンバータ20及び迂回経路21に供給する。メインコンバータ20は、プリコンバータ1で還元処理されなかったサンプルガス中の二酸化窒素(NO
2)を還元処理する第2還元部である。このメインコンバータ20によって、サンプルガス中に含まれる全ての二酸化窒素(NO
2)が一酸化窒素(NO)に変換されて第1三方弁22に供給される。
【0037】
迂回経路21は、メインコンバータ20を迂回するために設けられた配管であり、メインコンバータ20を経由させることなく調整ガスを第1三方弁22に供給する。第1三方弁22は、制御演算部36による制御の下で作動する電磁弁であり、メインコンバータ20から供給された調整ガスあるいは迂回経路21から供給された調整ガスを択一的に選択して第2三方弁23に供給する。
【0038】
第2三方弁23は、制御演算部36による制御の下で作動する電磁弁であり、第1三方弁22から供給された調整ガス(計測対象ガス)をNO
X検出器30に供給する流路あるいはNO
X検出器30をバイパスする流路を順次選択する。この第2三方弁23は、所謂フローチョッピング方式で計測対象ガス中の窒素酸化物(NO
X)の濃度をNO
X検出器30に検出させるためのものであり、予め設定された第1周期T1で計測対象ガス流路とバイパス流路とを交互に選択することにより計測対象ガスをNO
X検出器30に間欠的に供給する。
【0039】
第1活性炭槽24は、第4流量計16から供給された調整ガスからO
2検出器31の外乱成分となるガス種、つまり強い正磁性を示す窒素酸化物(NO
X)やO
2検出器31にダメージを与えるミストを除去し、この外乱成分となるガス種等が除去された調整ガス(酸素(O
2)及び窒素(N
2)を主成分とするガス)を第3三方弁26に供給する。第5キャピラリ25は、外部から供給された窒素(N
2)が流通する所定管径(流路径)の毛細管であり、窒素(N
2)の流量を第5流量R5に調節して第3三方弁26に供給する。
【0040】
第3三方弁26は、制御演算部36による制御の下で作動する電磁弁であり、第1活性炭槽24から供給された調整ガス(酸素計測用ガス)あるいは第5キャピラリ25から参照用ガスとして供給された窒素(N
2)を順次選択してO
2検出器31に供給する。この第3三方弁26は、所謂フローチョッピング方式で酸素計測用ガス中及び参照用ガス中の酸素(O
2)の濃度をO
2検出器31に検出させるためのものであり、予め設定された第2周期T2で酸素計測用ガスと参照用ガスとを交互に選択することにより、酸素計測用ガスと参照用ガスとをO
2検出器31に間欠的に供給する。
【0041】
第5流量計27は、上記第5キャピラリ25出口つまり第3三方弁26の一方の入口に接続されたオーバーフロー方式のフロート式ガス流量計である。この第5流量計27は、上記第5キャピラリ25出口及び第3三方弁26の一方の入口の圧力を大気圧に設定する。オゾン発生器28は、第2除湿器15から供給されたドライエアー中の酸素(O
2)をオゾン(O
3)に変換する。第6キャピラリ29は、上記オゾン発生器28から供給されオゾン(O
3)含有のドライエアーが流通する所定管径(流路径)の毛細管であり、ドライエアーの流量を第6流量R6に調節してNO
X検出器30に供給する。
【0042】
NO
X検出器30は、化学発光法に基づいて第2三方弁23から供給される調整ガス(計測対象ガス)中の窒素酸化物濃度を第1NO
X濃度検出値(窒素酸化物濃度検出値)として検出すると共に、計測対象ガスをバイパスさせた時の窒素酸化物濃度を第2NO
X濃度検出値として検出する。すなわち、このNO
X検出器30は、計測対象ガス(調整ガス)に第6キャピラリ29から供給されたオゾン(O
3)含有のドライエアーを混合させた混合ガスを生成し、当該混合ガス中の一酸化窒素(NO)とオゾン(O
3)との化学反応によって発生する化学発光強度を第1NO
X濃度検出値として出力する。このようなNO
X検出器30は、上記第1NO
X濃度検出値及び第2NO
X濃度検出値を窒素酸化物(NO
X)に関する濃度検出値として制御演算部36に出力する。
【0043】
ここで、化学発光法は、上述したように一酸化窒素(NO)とオゾン(O
3)との化学反応を利用する濃度測定手法であり、原理的に一酸化窒素(NO)の濃度のみが検出可能であり、二酸化窒素(NO
2)の濃度を検出することができない。このような事情から、本実施形態に係る計測装置では、プリコンバータ1及びメインコンバータ20を備えることにより、サンプルガス中あるいは調整ガス中の二酸化窒素(NO
2)を一酸化窒素(NO)に還元している。
【0044】
O
2検出器31は、磁気力法に基づいて第3三方弁26から供給される調整ガス(酸素計測用ガス)あるいは参照用ガス(窒素(N
2))の濃度を検出する。すなわち、このO
2検出器31は、一定距離を隔てて垂下されると共に内部に窒素が封入された2 個のガラス球体に強い磁化率を有する酸素(O
2)が作用することにより、この球体の距離が変化する現象を利用することにより、調整ガス(酸素計測用ガス)あるいは参照用ガス(窒素(N
2))の濃度を検出する。
【0045】
このようなO
2検出器31は、調整ガス(酸素計測用ガス)における酸素(O
2)の濃度(第1酸素濃度検出値)及び参照用ガス(窒素(N
2))における酸素(O
2)の濃度(第2酸素濃度検出値)を制御演算部36に出力する。第7キャピラリ32は、上記O
2検出器31から排出された調整ガス(酸素計測用ガス)あるいは参照用ガス(窒素(N
2))が流通する所定管径(流路径)の毛細管であり、調整ガス(酸素計測用ガス)及び参照用ガスの流量を第7流量R7に調整する。
【0046】
オゾン分解器33は、上記NO
X検出器30から排出された計測対象ガスとドライエアーとの混合ガス中の残留オゾン(O
3)を分解して無害化するためのものである。このオゾン分解器33は、残留オゾン(O
3)を分解した混合ガスを第2活性炭槽34に供給する。第2活性炭槽34は、このようなオゾン分解器33から供給された混合ガスから残留一酸化窒素(NO)を除去する。減圧ポンプ35は、制御演算部36による制御の下で作動するポンプであり、第2活性炭槽34から供給された混合ガスを減圧して大気中に放出する。
【0047】
制御演算部36は、O
2検出器31から時々刻々と入力される第1酸素濃度検出値及びサンプルガス(原ガス)における既知の酸素濃度(原ガス酸素濃度)に基づいて希釈部A1におけるサンプルガスの希釈倍率KRを順次演算し、また上記NO
X検出器30から時々刻々と入力される第1NO
X濃度検出値に上記希釈倍率KRを乗算することにより、希釈部A1で希釈される前のサンプルガス中の窒素酸化物(NO
X)の濃度(計測対象濃度D)を順次演算する。また、この制御演算部36は、時系列的に順次演算した上記希釈倍率KR及び計測対象濃度Dを計測画像データに変換して表示部37に出力する。
【0048】
さらに、この制御演算部36は、計測装置の全体動作を制御するために、第1SPポンプ3、吸引ポンプ12、第2SPポンプ14、減圧ポンプ35及び第1〜第3三方弁22、23,26の動作を制御する。表示部37は、上記制御演算部36から入力された計測画像データを2次元画像として表示する。
【0049】
次に、このように構成された計測装置の動作について、
図2をも参照して詳しく説明する。
【0050】
希釈部A1では、制御演算部36による制御の下で第1SPポンプ3が作動を開始することによって、外部のサンプルガス供給源(図示略)からサンプルガスがプリコンバータ1に取り込まれ、サンプルガス中の二酸化窒素(NO
2)の殆どが一酸化窒素(NO)に還元される。そして、このような還元処理が施されたサンプルガスは、第1除湿器2で水分が除去されて第1SPポンプ3に流れ込む。
【0051】
このようにして第1SPポンプ3に流れ込むサンプルガスは、窒素酸化物(NO
X)の一種である二酸化窒素(NO
2)を含んだものであっても、その殆どが一酸化窒素(NO)に還元されるので、二酸化窒素(NO
2)の含有量がサンプルガス供給源から取り込まれたサンプルガス(原ガス)よりも大幅に低下したものである。
【0052】
また、希釈部A1では、制御演算部36による制御の下で上記第1SPポンプ3と同時に吸引ポンプ12が作動を開始する。この結果、第1SPポンプ3から吐出したサンプルガスは第1キャピラリ5内に流れ込んで第1流量R1に流量調節される。また、吸引ポンプ12が作動を開始することによって、外部の希釈ガス供給源(図示略)から窒素(N
2)が第3キャピラリ8に流れ込んで第3流量R3に流量調節される。
【0053】
そして、第1キャピラリ5で第1流量R1に流量調節されたサンプルガスは第3キャピラリ8で第3流量R3に流量調節された窒素(N
2)と混合されることによって希釈されるが、窒素(N
2)によるサンプルガスの希釈倍率は、第1キャピラリ5の第1流量R1及び第3キャピラリ8の第3流量R3に専ら依存する。
【0054】
ここで、例えばサンプルガスの希釈倍率を10倍に設定しようとする場合、第3流量R3は第1流量R1の9倍に設定される。すなわち、第3キャピラリ8として、第1キャピラリ5の9倍の流量の毛細管が選定される。しかしながら、このような第1流量R1及び第3流量R3は、第1キャピラリ5及び第3キャピラリ8の環境温度に応じて変動し得るものである。
【0055】
このような事情から本実施形態では、第1キャピラリ5及び第3キャピラリ8を恒温槽10内に収容して環境温度を一定温度に維持している。この恒温槽10は、第1キャピラリ5及び第3キャピラリ8の環境温度を例えば45°(一定)に維持することにより、第1流量R1及び第3流量R3の変動を最小限に抑え、以ってサンプルガスの希釈倍率の変動を最小限に抑える。
【0056】
また、本実施形態では、第1キャピラリ5の入口に第1流量計6が接続され、また第3キャピラリ8の入口に第2流量計9が接続されることにより、第1キャピラリ5の入口におけるサンプルガスの圧力及び第3キャピラリ8の入口における窒素(N
2)の圧力が大気圧に一定化されている。これによっても、第1流量R1及び第3流量R3の変動が最小限に抑制され、よってサンプルガスの希釈倍率の変動が最小限に抑制される。
【0057】
このようにして窒素(N
2)によって所望の希釈倍率で希釈されたサンプルガスは、ガス混合器11で撹拌されることにより、偏りなく全体的に窒素(N2)と混合されて吸引ポンプ12から計測部A2に吐出される。また、吸引ポンプ12の吐出口には第3流量計13が接続されているので、吐出圧は大気圧に一定化されている。
【0058】
以上が希釈部A1の動作であるが、上記吸引ポンプ12から吐出した調整ガスは、計測部A2の第2SPポンプ14によって計測部A2内に取り込まれる。すなわち、調整ガスは、制御演算部36による制御の下で第2SPポンプ14が作動することによって、第2除湿器15に供給されて水分が除去され、さらに第4流量計16で流量計測された後に第4キャピラリ19に供給される。
【0059】
そして、調整ガスは、第4キャピラリ19において第4流量R4に流量調節された後、メインコンバータ20の入力及び迂回経路21の一端に供給される。そして、メインコンバータ20に供給された調整ガスは、メインコンバータ20において調整ガス中の二酸化窒素(NO
2)が還元されて第1三方弁22に供給される。一方、迂回経路21の一端に供給された調整ガスは、何ら処理されることなく第1三方弁22に供給される。
【0060】
ここで、制御演算部36は、調整ガス(つまりサンプルガス)が二酸化窒素(NO
2)を含む場合、メインコンバータ20から供給される調整ガスを選択するように第1三方弁22を制御し、一方、調整ガスが二酸化窒素(NO
2)を含まない場合、つまり調整ガスが窒素酸化物(NO
X)として一酸化窒素(NO)のみを含む場合には、迂回経路21から供給される調整ガスを選択するように第1三方弁22を制御する。しかし、何れにしても、第1三方弁22から第2三方弁23に供給される調整ガスは、窒素酸化物(NO
X)として一酸化窒素(NO)のみを含むものである。このような調整ガス(計測対象ガス)は、第2三方弁23においてNO
X検出器30をバイパスした流路と第1周期T1で交互に選択されてNO
X検出器30に供給される。
【0061】
一方、計測部A2では、大気から取り込まれた空気が第2除湿器15で水分除去されることによりドライエアーが生成され、当該ドライエアーがオゾン発生器28に供給される。そして、ドライエアー中の酸素(O
2)は、オゾン発生器28においてオゾン(O
3)に変換され、さらに第6キャピラリ29において第6流量R6に流量調節されてNO
X検出器30に供給される。
【0062】
そして、NO
X検出器30では、第1周期T1で間欠的に入力される調整ガス(計測対象ガス)にオゾン(O
3)を含むドライエアーが混合されて混合ガスが生成され、調整ガス(計測対象ガス)中の窒素酸化物(NO
X)つまり一酸化窒素(NO)の濃度とオゾン(O
3)を含むドライエアーのみのガス中の窒素酸化物(NO
X)つまり一酸化窒素(NO)の濃度とが交互に検出される。そして、NO
X検出器30は、制御演算部36に対して、計測対象ガスに関する第1NO
X濃度検出値とオゾン(O
3)を含むドライエアーのみのガスに関する第2NO
X濃度検出値とを第1周期T1で交互に出力する。
【0063】
NO
X検出器30で窒素酸化物(NO
X)の濃度検出がなされた混合ガスは、オゾン分解器33で残留オゾン(O
3)が分解された後、第2活性炭槽34で窒素酸化物(NO
X)が吸着除去される。このようなオゾン分解器33及び第2活性炭槽34を通過した後の混合ガスは、大気放出のための環境基準を十分に満足するものであり、減圧ポンプ35で減圧された後に大気中に放出される。
【0064】
一方、第4流量計16から出力された調整ガスの一部は、第1活性炭槽24においてO
2検出器31の外乱成分となる窒素酸化物(NO
X)やO
2検出器31にダメージを与えるミストが除去された後に第3三方弁26に供給される。これとは別に、計測部A2には窒素(N
2)が外部の希釈ガス供給源から供給されている。この窒素(N
2)は、O
2検出器31で調整ガス(酸素計測用ガス)中の酸素(O
2)の濃度を検出する際の比較用ガス(参照用ガス)であり、第5キャピラリ25で第5流量R5に流量調節された後に第3三方弁26に供給される。
【0065】
このような第1活性炭槽24から供給される調整ガス(酸素計測用ガス)及び第5キャピラリ25から供給される窒素(N
2)(参照用ガス)は、第3三方弁26によって第2周期T2で交互に選択されてO
2検出器31に供給される。すなわち、O
2検出器31は、NO
X検出器30における第1NO
X濃度検出値及び第2NO
X濃度検出値の取得と並行して、第2周期T2で調整ガス(酸素計測用ガス)中の酸素濃度と窒素(N
2)中の酸素濃度とを交互に検出し、制御演算部36に第1酸素濃度検出値と第2酸素濃度検出値とを交互に出力する。
【0066】
ここで、希釈ガス供給源から供給される窒素(N2)は本質的に酸素(O
2)を含まない。したがって、O
2検出器31で参照用ガスである窒素(N
2)中の酸素濃度を検出した場合、その濃度検出値は「ゼロ」である。
【0067】
このようにしてO
2検出器31で酸素濃度が検出された調整ガスあるいは窒素(N
2)は、第7キャピラリ32で第7流量R7に流量調節された後に、減圧ポンプ35で減圧された後に大気中に放出される。
【0068】
一方、制御演算部36は、O
2検出器31から入力される第1酸素濃度検出値及びサンプルガス(原ガス)における既知の酸素濃度(原ガス酸素濃度)に基づいて、希釈部A1で行われた窒素(N
2)によるサンプルガスの希釈における希釈倍率KRを演算する。すなわち、大気中の空気は約21%の酸素を含んであり、このような大気における酸素濃度は変動することのない既知の一定値と考えることができる。これに対して、O
2検出器31に入力される調整ガス(酸素計測用ガス)は、希釈部A1で行われた窒素(N
2)による希釈の程度つまり希釈倍率KRに応じた酸素濃度となる。したがって、制御演算部36は、サンプルガス(原ガス)のキャリアガスである空気の酸素濃度(原ガス酸素濃度)とO
2検出器31から入力される第1酸素濃度検出値との比率として希釈倍率KRを演算する。
【0069】
ここで、
図2は、窒素(N
2)で希釈した後のサンプルガス中のO
2濃度(vol%度)と希釈倍率KRとの関係をサンプルガスに元々含まれているO
2濃度(vol%)つまり外部のサンプルガス供給源から希釈部A1に供給されるサンプルガスのO
2濃度(vol%)をパラメータとして示した特性図である。この特性図に示すように、希釈後のサンプルガス中のO
2濃度(vol%度)は、希釈倍率KRに対して反比例の関係にある。すなわち、希釈後のサンプルガス中のO
2濃度(vol%度)は、希釈倍率KRが大きくなる程に小さくなる。
【0070】
物理量を検出する際の基本的な原理として、検出量が小さい程に当該検出量に含まれる誤差の割合つまり検出精度が低下する。つまり、O
2検出器31における第1酸素濃度検出値が小さい程に、上述したように演算される希釈倍率KRの誤差(希釈倍率誤差)が大きくなるので、O
2検出器31の検出レンジと希釈倍率誤差をの兼ね合いを見て希釈部A1における目標希釈率つまり第1流量R1と第3流量R3との比率を設定する必要がある。
【0071】
なお、本実施形態のように、酸素(O
2)が大気(空気)と同程度(約21%)含まれたサンプルガス(例えば空気をキャリアガスとする窒素酸化物含有ガス)の場合、希釈部A1においてサンプルガス(原ガス)を20倍程度まで希釈しても十分な精度で希釈倍率KRを算出することが可能である。
【0072】
このようにして希釈部A1における希釈倍率KRを演算すると、制御演算部36は、この希釈倍率KRに第1NO
X濃度検出値を乗算することによってサンプルガス(原ガス)に元々含まれていた窒素酸化物(NO
X)の濃度(計測対象濃度D)を演算する。このような希釈倍率KR及び計測対象濃度Dは、制御演算部36によって時系列的に繰り返して演算されて計測画像データに取り込まれる。すなわち、表示部37には、時々刻々とリアルタイムで得られる希釈倍率KR及び計測対象濃度D、また必要に応じて生データである第1NO
X濃度検出値、第2NO
X濃度検出値、第1酸素濃度検出値及び第2酸素濃度検出値が時系列データとして表示される。
【0073】
このような本実施形態によれば、希釈ガスとして酸素を含まない窒素(N
2)を採用し、当該窒素(N
2)でサンプルガス(原ガス)を希釈して得られた調整ガス中の酸素濃度(第1酸素濃度検出値)を調整ガス中の窒素酸化物(NO
X)の濃度(計測対象濃度D)と並行して取得するので、サンプルガス(原ガス)を窒素(N
2)で希釈して計測対象濃度Dを取得するに際して希釈倍率KRを並行して取得することができる。したがって、本実施形態によれば、従来よりも精度の高い計測対象濃度Dを取得することができる。
【0074】
本実施形態によれば、流量調節手段として第1キャピラリ5及び第3キャピラリ8を採用するので、例えば2つのマスフローコントローラを採用する場合に比較してコストダウンを実現することができる。また、第1キャピラリ5及び第3キャピラリ8を恒温槽10内に収容するので、第1流量R1及び第3流量R3を安定化することができる。また、選択手段として第3三方弁26を備えるので、第2酸素濃度検出値との比較によって第1酸素濃度検出値の異常を容易に認知することができる。
【0075】
また、還元手段としてのメインコンバータ20、迂回経路21及び第2の選択手段としての第1三方弁22を備えるので、一酸化窒素(NO)のみを含むサンプルガス(原ガス)だけではなく、二酸化窒素(NO
2)を含むサンプルガス(原ガス)についても計測対象濃度Dを取得することができる。さらには、不活性ガスの中でも安価な窒素(N
2)を希釈ガスとして採用するので、ランニングコストを低減することができる。
【0076】
なお、本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のような変形例が考えられる。
(1)上述したように、酸素(O
2)が大気(空気)と同程度(約21%)含まれたサンプルガス(例えば空気を窒素酸化物(NO
X)のキャリアガスとする窒素酸化物含有ガス)の場合、サンプルガス(原ガス)を20倍程度まで希釈しても十分な精度で希釈倍率KRを算出することができる。しかしながら、窒素酸化物含有ガスに含まれる酸素(O
2)の濃度が低下すると、調整ガスに含まれる酸素(O
2)の濃度も低下するので、O
2検出器31における酸素濃度検出誤差が増大し、この結果として制御演算部36で演算される希釈倍率KRの誤差(希釈倍率誤差)が増大する。
【0077】
このような事情に対して、
図3に示すように装置構成を工夫することが考えられる。すなわち、この計測装置は、
図1に示した計測装置に対して第3活性炭槽38、第4三方弁39及び第5三方弁40を追加したものであり、希釈部A3と計測部A4とを備える。
【0078】
希釈部A3における第1流量計6は、第1SPポンプ3から供給されたサンプルガスを計測部A4に設けられた第3活性炭槽38に供給する。第3活性炭槽38は、第1流量計6から供給されたサンプルガスからO
2検出器31の外乱成分となる窒素酸化物(NO
X)やO
2検出器31にダメージを与えるミストを除去し、当該窒素酸化物(NO
X)が除去されたサンプルガス(酸素計測用ガス)を第4三方弁39に供給する。第4三方弁39は、上記第3活性炭槽38の出口に設けられ、一方、第5三方弁40は、第1活性炭槽24の出口に設けられている。
【0079】
このような第4三方弁39及び第5三方弁40は、制御演算部36によって制御されることにより、第1活性炭槽24から供給された調整ガス(酸素計測用ガス)あるいは第3活性炭槽38から供給されたサンプルガス(酸素計測用ガス)を第3周期T3で交互に第3三方弁26に出力する。第3三方弁26は、このような調整ガス(酸素計測用ガス)あるいはサンプルガス(酸素計測用ガス)と第5キャピラリ25から入力される窒素(N
2)を第2周期T2で交互に選択することにより、調整ガス(酸素計測用ガス)、サンプルガス(酸素計測用ガス)あるいは窒素(N
2)(参照用ガス)を交互にO
2検出器31に供給する。
【0080】
すなわち、
図3の計測装置では、O
2検出器31が調整ガス(酸素計測用ガス)、窒素(N2)(参照用ガス)あるいはサンプルガス(酸素計測用ガス)の各酸素濃度を所定の順番で交互に検出する。この結果、制御演算部36には、調整ガス(酸素計測用ガス)の酸素濃度を示す第1酸素濃度検出値、窒素(N
2)(参照用ガス)の酸素濃度を示す第2酸素濃度検出値に加えて、サンプルガス(酸素計測用ガス)の酸素濃度を示す第3酸素濃度検出値が入力される。そして、この計測装置では、希釈倍率KRに加えて第3酸素濃度検出値が時系列データとして表示部37に表示される。
【0081】
このような変形例に係る計測装置によれば、窒素(N
2)(希釈ガス)によって希釈される前、つまり希釈倍率KRの計算に利用される調整ガス(酸素計測用ガス)よりも酸素濃度が希釈倍率KR分だけ高いサンプルガス(酸素計測用ガス)の酸素濃度を示す第3酸素濃度検出値が時系列データとして表示部37に表示されるので、希釈倍率KRの変動監視をより良好に行うことが可能である。この計測装置によれば、例えば10(vol%)程度の酸素(O
2)を含んだサンプルガス(原ガス)であっても、希釈倍率KRの変動を精度よく監視することができる。
【0082】
(2)上記各実施形態では、還元手段としてのメインコンバータ20を設けたが、サンプルガス(原ガス)が窒素酸化物(NO
X)として一酸化窒素(NO)のみを含む場合には、メインコンバータ20(還元手段)及び第1三方弁22を省略して、迂回経路21と第2三方弁23とを直接接続してもよい。また、サンプルガス(原ガス)が二酸化窒素(NO
2)を含む場合には、迂回経路21と第1三方弁22とを省略し、メインコンバータ20(還元手段)の出口を第2三方弁23に直接接続してもよい。
【0083】
(3)上記各実施形態では、選択手段として第3三方弁26を設けることにより、調整ガス(酸素計測用ガス)の酸素濃度に加えて、窒素(N
2)の酸素濃度を参照濃度として検出したが、第3三方弁26(選択手段)を削除して調整ガス(酸素計測用ガス)の酸素濃度のみを検出してもよい。