(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6611344
(24)【登録日】2019年11月8日
(45)【発行日】2019年11月27日
(54)【発明の名称】釣糸を係止する釣糸係止具を有するスピニングリール用スプール及び当該スプールを備えたスピニングリール
(51)【国際特許分類】
A01K 89/01 20060101AFI20191118BHJP
【FI】
A01K89/01 H
【請求項の数】9
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-93715(P2016-93715)
(22)【出願日】2016年5月9日
(65)【公開番号】特開2017-201888(P2017-201888A)
(43)【公開日】2017年11月16日
【審査請求日】2018年6月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002495
【氏名又は名称】グローブライド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126572
【弁理士】
【氏名又は名称】村越 智史
(74)【代理人】
【識別番号】100140822
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 光広
(72)【発明者】
【氏名】宮本 一生
【審査官】
竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】
欧州特許出願公開第00164295(EP,A1)
【文献】
特開2003−284459(JP,A)
【文献】
実開平05−013166(JP,U)
【文献】
実開昭63−086762(JP,U)
【文献】
実開昭56−066261(JP,U)
【文献】
特開2002−281875(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 89/00 − 89/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
釣糸が巻き付けられる糸巻胴部と、前記糸巻胴部の後端部に前記糸巻胴部よりも大径に形成されたスカート部と、前記スカート部との間に前記釣糸を係止する釣糸係止具と、を備えるスピニングリール用スプールであって、
前記釣糸係止具は、
前記スカート部をその径方向に貫通し、前記スカート部の外周面よりも径方向内方で前記スプールに取り付けられる取付部と、
前記取付部の端部に設けられ、前記スカート部の外周面に沿って延伸する係止部と、
を備え、
前記係止部は、前記取付部よりも前記糸巻胴部寄りの位置に、前記スカート部の外周面に向かって突出する第1突出部を有し、
前記スカート部の周方向において、前記第1突出部は前記係止部の中心からずれている、スプール。
【請求項2】
前記釣糸は、前記周方向に沿った巻回方向に巻き付けられ、
前記第1突出部は、前記取付部に対して前記巻回方向の下流側に位置する、請求項1に記載のスプール。
【請求項3】
前記係止部は,前記取付部よりも前記糸巻胴部から離れた位置に、前記スカート部の外周面に向かって突出する第2突出部を有する、請求項1又は2に記載のスプール。
【請求項4】
前記係止部は、弾性体から形成されており、また、前記第1突出部と前記取付部との距離が前記第2突出部と前記取付部との距離よりも短くなるように形成されている、請求項3に記載のスプール。
【請求項5】
前記スカート部の外周面と前記係止部との間に配置されるシート部をさらに備える、請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のスプール。
【請求項6】
前記シート部の前記第1突出部と対向する位置に、前記第1突出部を受け入れ可能な第1凹部が形成されている、請求項5に記載のスプール。
【請求項7】
前記係止部は,前記取付部よりも前記糸巻胴部から離れた位置に、前記スカート部の外周面に向かって突出する第2突出部を有し、前記シート部の前記第2突出部と対向する位置に、前記第2突出部を受け入れ可能な第2凹部が形成されている、請求項5又は請求項6に記載のスプール。
【請求項8】
前記係止部は,前記取付部よりも前記糸巻胴部から離れた位置に、前記スカート部の外周面に向かって突出する第2突出部を有し、また、前記取付部と前記第2突出部との間に前記釣糸を受け入れ可能な係止凹部を有する、請求項3ないし請求項7のいずれか1項に記載のスプール。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載のスプールを備えるスピニングリール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、釣糸を係止する釣糸係止具を有するスピニングリール用スプール及び当該スプールを備えたスピニングリールに関する。より具体的には、本発明は、当該釣糸係止具の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
魚釣用リールとしてスピニングリールが広く用いられている。スピニングリールは、ハンドルの回転に応じて前後動するスプールを備えている。このスプールは、その外周に釣糸が巻回される糸巻胴部と、当該糸巻胴部の後端に設けられるスカート部とを備える。スカート部は、糸巻胴部よりも大径となるように形成される。
【0003】
糸巻胴部に巻回された釣糸がほどけてしまわないようにするために、スカート部の外周面に糸巻胴部に巻回された釣糸を係止する釣糸係止具を備えたスピニングリールが知られている。従来の釣糸係止具は、スカート部の外周面に沿って延伸する係止部を備えている。釣糸係止具は、この係止部とスカート部の外周面との間に釣糸の先端を挟み込むことにより釣糸を係止することができる。この係止部は、ばねや係止部自身の弾性によりスカート部に向かって付勢されている。この付勢力により、釣糸係止具から釣糸が脱落することを防止している。
【0004】
ばねによって係止部をスカート部へ付勢する釣糸係止具は、例えば、特開平10−113102号公報(特許文献1)及び特開2006−204153号公報(特許文献2)に開示されている。係止部自身の弾性を利用して係止部とスカート部との間に釣糸を係止する釣糸係止具は、例えば、特開2003−284459号公報(特許文献3)及び特開2015−023837号公報(特許文献4)に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−113102号公報
【特許文献2】特開2006−204153号公報
【特許文献3】特開2003−284459号公報
【特許文献4】特開2015−023837号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の釣糸係止具は、上記特許文献1ないし特許文献4に開示されているように、係止部のうち糸巻胴部から遠位にある部分(係止部のうち取付部に対して糸巻胴部と反対側にある部分)で釣糸を係止するように構成されている。このため、従来の釣糸係止具においては、係止部とスカート部外周面との間の係止位置まで釣糸を進入させる際に、係止部(特に取付部)の周囲を迂回させて釣糸を案内しなければならない。
【0007】
本発明の目的の一つは、より少ない動作で釣糸を係止できる釣糸係止具を備えたスピニングリール用スプール及び当該スプールを備えたスピニングリールを提供することである。本発明のこれ以外の目的は、本明細書全体を参照することにより明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態に係るスピニングリール用スプールは、釣糸が巻き付けられる糸巻胴部と、前記糸巻胴部の後端部に前記糸巻胴部よりも大径に形成されたスカート部と、前記スカート部との間に前記釣糸を係止する釣糸係止具と、を備える。この釣糸係止具は、取付部と、係止部と、を備える。当該取付部は、前記スカート部をその径方向に貫通し、前記スカート部の外周面よりも径方向内方でスプールに取り付けられる。当該係止部は、前記取付部の端部に設けられ、前記スカート部の外周面に沿って延伸する。本発明の一実施形態において、前記係止部は、前記取付部よりも前記糸巻胴部寄りの位置に、前記スカート部の外周面に向かって突出する第1突出部を有する。
【0009】
当該実施形態によれば、取付部よりも糸巻胴部寄りの位置に第1突出部が設けられているので、この第1突出部と取付部の間の係止位置に釣糸を挟み込むことができる。これにより、取付部を迂回することなく釣糸を係止位置まで案内することができる。したがって、当該釣糸係止具には従来よりも少ない動作で釣糸を係止できる。
【0010】
本発明の一実施形態に係るスプールにおいて、前記係止部は,前記取付部よりも前記糸巻胴部から離れた位置に、前記スカート部の外周面に向かって突出する第2突出部を有する。
【0011】
当該実施形態によれば、第1突出部及び第2突出部の2つの部材によって、釣糸係止具から釣糸が離脱することをより確実に防止することができる。
【0012】
本発明の一実施形態に係るスプールにおいて、前記係止部は、弾性体から形成されている。また、当該係止部は、前記第1突出部と前記取付部との距離が前記第2突出部と前記取付部との距離よりも短くなるように形成されている。
【0013】
当該実施形態によれば、係止部のうち第1突出部と取付部との間の部分は、第2突出部と取付部との間の部分よりも弾性変形による変形量が小さくなる。よって、第1突出部により、釣糸の釣糸係止具からの離脱をより確実に防止できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の様々な実施形態により、より少ない動作で釣糸係止具に釣糸の先端を係止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係るスピニングリールの側面図。
【
図2】本発明の一実施形態に係る釣糸係止具の平面図。
【
図4】
図2に示した釣糸係止具への釣糸の係止方法を模式的に示す図。
【
図5】
図2に示した釣糸係止具への釣糸の係止方法を模式的に示す図。
【
図6】
図2に示した釣糸係止具への釣糸の係止方法を模式的に示す図。
【
図7】
図2に示した釣糸係止具への釣糸の係止方法を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の様々な実施形態を適宜図面を参照して説明する。共通する構成要素には複数の図面をまたがって同一の参照符号が付されている。各図面は、便宜上、必ずしも同一の縮尺により示されているとは限らない点に留意されたい。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態に係るスピニングリール1の側面図を示す。図示のとおり、スピニングリール1は、リール本体10と、ハンドル11と、脚部12と、ロータ13と、スプール20と、を備えている。ハンドル11は、リール本体10に回転可能に支持されている。脚部12は、リール本体10から上方に延伸している。スピニングリール1は、脚部12を介して釣竿(不図示)に取り付けられる。本明細書において、「前」方向及び「後」方向に言及するときは、
図1に示した方向を基準とする。つまり、釣りを行うときに釣り糸が繰り出される方向を前(又は前方)といいその反対の方向を後(又は後方)という。本明細書において、「左」方向及び「右」方向に言及するときは、
図1の後方から前方を見たときの左方向及び右方向をそれぞれ意味する。
【0018】
リール本体10内には、公知のように、ハンドル11の回転操作に伴いハンドル軸周りに回転するドライブギア(不図示)と、前後方向に延びる中空の駆動軸筒(不図示)と、駆動軸筒に外嵌されてドライブギアに噛合するピニオンギア(不図示)と、が設けられている。リール本体10の前部には、駆動軸筒を介してリール本体10に対して回転可能にロータ13が取り付けられる。ロータ13は、ハンドル11の回転操作に応じて当該駆動軸筒とともに回転するように構成される。駆動軸筒内には、スプール軸(不図示)が挿通される。スプール20は、このスプール軸の前部に取り付けられる。また、スプール軸の後部は、駆動歯車の回転に応じてスプール軸を前後動させるオシレーティング機構に連結されている。ハンドル11の回転操作により駆動歯車が回転すると、ロータ13が回転するとともにスプール20が前後動する。これにより、ロータ13に設けた釣糸案内部(不図示)を介してスプール20に釣糸が均等に巻回される。
【0019】
スプール20は、釣糸が巻回される糸巻胴部21と、糸巻胴部21の前端から径方向外側に立ち上がる前フランジ部22aと、糸巻胴部21の後端から径方向外側に立ち上がる後フランジ部22bと、後フランジ部22bから後方に延びる略円筒状のスカート部23と、を備える。スカート部23は、糸巻胴部21よりも大径となるように形成されている。スプール20は、例えばアルミニウム合金を鍛造して形成される。スカート部23の前方端部には釣糸係止具31が装着される。
【0020】
図2及び
図3を参照して、スカート部23及び当該スカート部23に設けられる釣糸係止具31について説明する。
図2は、本発明の一実施形態に係る釣糸係止具31の平面図であり、
図3は、
図2の釣糸係止具31をA−A線で切断した断面図である。
【0021】
図示のように、スカート部23の外周面23aの前方端部には、釣糸係止具31を装着するための凹部23cが形成される。凹部23cは、図示のように、前側がスカート部23の外周面23aからほぼ方形に凹み、後側がスカート部23の外周面23aからほぼ半円形に凹むように形成される。凹部23cは、平坦な底面23dを有する。底面23dには、スカート部23の外周面23aを貫通する貫通孔23e及び貫通孔23fが形成される。
【0022】
凹部23cには、本発明の一実施形態に係る釣糸係止具31と、シート32と、が取り付けられる。本発明の一実施形態に係る釣糸係止具31は、スカート部23の外周面23a(底面23d)に沿って延伸する係止部31aと、スプール20に取り付けられる取付部31bと、を備える。本発明の一実施形態において、釣糸係止具31は、弾性変形可能となるように、合成樹脂から形成される。係止部31aと取付部31bとは、一体に形成されてもよい。取付部31bは、係止部31aとは別体に形成されてもよい。
【0023】
係止部31aは、
図2に示す平面視において、底面23dと同様に、前側がほぼ方形となり後側がほぼ半円形となるように形成される。釣糸係止具31を凹部23cに収容するために、係止部31aは、底面23dよりも一回り小さな平面視外形を有するように形成される。一実施形態において、係止部31aは、後述するように、凹部23cの表面においてスカート部23の外方に露出するように構成及び配置される。一実施形態において、係止部31aは、スカート部23の外周面23a(底面23d)との間に釣糸を挟み込むことができるように構成される。係止部31aは、自らの弾性により、自ら及び取付部31bの弾性により、または取付部31bに対するばねの付勢力により、係止部31aと底面23dとの間に釣糸を保持可能に構成される。
【0024】
本発明の一実施形態において、取付部31bは板状に形成され、係止部31aの前後方向の中央よりもやや前方寄りの位置において係止部31aと接続される。本発明の一実施形態において、取付部31bは、係止部31aとの接続位置から係止部31aに対してほぼ垂直に、すなわちスカート部23の外周面23aに対してほぼ垂直に延伸する。取付部31bは、貫通孔23fを貫通して、スカート部23の内部まで延伸する。取付部31bの端部(スカート部23の径方向内方の端部)は、後フランジ部22bまたは糸巻胴部21の後面にボルト33によって固定される。取付部31bは、公知の手法に従って、ばねにより後フランジ部22bまたは糸巻胴部21の後面に取り付けられても良い。ばねを用いて取り付けられる釣糸係止具は、例えば、特開平10−113102号公報及び特開2006−204153号公報に開示されている。取付部31bは、これらの公報に開示された機構と同様の機構により、後フランジ部22bまたは糸巻胴部21の後面に取り付けられ得る。
【0025】
釣糸係止具31の係止部31aと底面23dとの間には、シート32が配置される。一実施形態において、シート32は、スカート部23の外周面23aよりも摩擦係数が大きくなるように形成される。これにより、係止部31aとシート32との間に釣糸を挟み込んだときに、当該釣糸が係止部31aから離脱しにくくすることができる。
【0026】
図2に最もよく表されているように、係止部31aは、その前側の左端に平面視で湾曲した曲線から成る湾曲部31gを有する。これにより、釣糸を傷つけることなく係止部31aと底面23dとの間に案内することができる。また、係止部31aは、その前側の右端に平面視で湾曲した曲線から成る湾曲部31hを有する。この湾曲部31hにより、釣糸をが傷つくことをさらに抑制できる。
【0027】
本発明の一実施形態において、係止部31aは、その下面からスカート23の外周面23a(図示の実施形態においては底面23d)に向かって突出する突出部31c(第1突出部)を有する。図示のように、突出部31cは、係止部31aの下面において、係止部31aの取付部31bとの接続位置よりも糸巻胴部21寄りの位置に形成される。同様に、係止部31aは、その下面からスカート23の外周面23a(図示の実施形態においては底面23d)に向かって突出する突出部31d(第1突出部)を有する。突出部31dも、係止部31aの下面において、係止部31aの取付部31bとの接続位置よりも糸巻胴部21寄りの位置に形成される。一実施形態において、突出部31cは、係止部31aの左右方向の中心よりも左側に形成され、突出部31dは、係止部31aの左右方向の中心よりも右側に形成される。本発明の一実施形態において、突出部31cは、係止部31aにおいて突出部31cが形成される位置と取付部31bが形成される位置との間の距離L1が釣糸Lの幅よりも広くなるように形成及び配置される。同様に、本発明の一実施形態において、突出部31dは、係止部31aにおいて突出部31dが形成される位置と取付部31bが形成される位置との間の距離L2が釣糸Lの幅よりも広くなるように形成及び配置される。突出部31cと突出部31dとは、係止部31aの左右方向の中心に対して対称な位置に配置されてもよい。この場合、L1とL2とは同じ長さとなる。
【0028】
本発明の一実施形態において、係止部31aは、その下面からスカート23の外周面23a(図示の実施形態においては底面23d)に向かって突出する突出部31e(第2突出部)を有する。図示のように、突出部31eは、係止部31aの下面において、係止部31aの取付部31bとの接続位置よりも糸巻胴部21から離れた位置に形成される。よって、突出部31eは、取付部31aの下面において、取付部31bに対して突出部31c及び突出部31dと反対側に設けられる。つまり、突出部31c及び突出部31dと突出部31eとは、取付部31bを境に前後に振り分け配置されている。
【0029】
本発明の一実施形態において、係止部31aの下面には凹部31f(係止凹部)が形成される。凹部31fは、係止部31aの下面において、取付部31bとの接続位置と突出部31eとの間に形成される。本発明の一実施形態において、凹部31fは、その幅(前後方向の幅)が釣糸Lの幅よりも大きくなるように形成される。
【0030】
本発明の一実施形態において、突出部31cは、上述した距離L1が係止部31aにおいて突出部31eが形成される位置と取付部31bが形成される位置との間の距離L3よりも小さくなるように形成及び配置される。また、突出部31dは、上述した距離L2が距離L3よりも小さくなるように形成及び配置される。
【0031】
本発明の一実施形態において、シート32の上面には、突出部31cを受け入れるための凹部32c(第1凹部)が形成される。凹部32cは、突出部31cと対向する位置に、突出部31cと対応する形状を有するように形成される。同様に、シート32の上面には、突出部31dを受け入れるための第1凹部(不図示)が形成される。この突出部31dを受け入れるための凹部は、突出部31dと対向する位置に、突出部31dと対応する形状を有するように形成される。また、シート32において、突出部31eと対向する位置には、凹部32e(第2凹部)が形成される。この凹部32eは、図示のようにシート32を貫通する貫通孔であってもよいし、有底の凹部であってもよい。凹部32eは、突出部31eを受け入れることができるように形成される。
【0032】
次に、
図4ないし
図8を参照して、本発明の一実施形態に係る釣糸係止具31の使用方法について説明する。スピニングリール100を使用しないときには、釣糸Lの先端LE付近を釣糸係止具31に係止することで、釣糸Lが糸巻胴部21からばらけないようにする。まずは、
図4に示すように、釣糸Lの先端LEを糸巻胴部21から突出部31cに向かって案内する。次に、釣糸Lが突出部31cを乗り越えて
図5に示すように突出部31cと取付部31bとの間に配置されるように、釣糸Lを指で引っ張って取付部31bの方向へ移動させる。釣糸Lが突出部31cを乗り越えやすくするために、係止部31aの湾曲部31g付近を指で持ち上げてもよい。
【0033】
このようにして、突出部31cと取付部31bとの間の係止位置に釣糸Lを挟み込むことにより、係止部31aとスカート部23の外周面23aとの間に釣糸Lを係止することができる。よって、釣糸Lを糸巻胴部21の表面から突出部31cを乗り越える位置まで案内するだけで、当該釣糸Lを係止位置まで案内することができる。したがって、取付部31bを迂回することなく、少ない動作で釣糸Lを係止位置まで案内することができる。また、釣糸Lの進入経路にある湾曲部31gは、平面視で湾曲した形状に形成されているため、釣糸Lを傷付けることなく係止位置まで案内することができる。
【0034】
釣糸Lをより確実に係止するために、釣糸Lを
図5に示されている配置からさらに別の係止位置まで案内することができる。すなわち、釣糸Lを、取付部31bに反時計回りに巻き付けるように
図5の位置から指で引っ張ることにより、
図6に示すように、釣糸Lが突出部31eを乗り越えて取付部31bと突出部31eとの間に配置される。これにより、突出部31c及び突出部31eにより釣糸Lの脱落をより確実に防止することができる。
【0035】
次に、
図6の位置から釣糸Lをさらに引っ張ることにより、
図7に示すように、釣糸Lが突出部31dを乗り越えて取付部31bと突出部31dとの間に配置される。これにより、突出部31c、突出部31e、及び突出部31dにより釣糸Lの脱落をさらに確実に防止することができる。
【0036】
釣糸Lが
図7に示す位置に配置されるとき、
図8に示すように、釣糸Lの一部を係止部31aの下面の取付部31bと突出部31eとの間に形成された凹部31fに収容することができる。
図8は、
図7に示すように釣糸Lが配置されている釣糸係止具31を
図2のA−A断面と同じ断面で切断した断面図である。このように、釣糸Lの一部を凹部31fに収容することにより、釣糸Lの脱落をさらに確実に防止することができる。
【0037】
また、上述したように、突出部31cは、当該突出部31cと取付部31bとの距離L1が突出部31eと取付部31bとの間の距離L3よりも小さくなるように形成及び配置されるので、釣糸Lが小径の場合には当該釣糸Lを突出部31cと取付部31bとの間に係止する一方、釣糸Lが大径の場合には当該釣糸Lを突出部31eと取付部31bとの間に係止することができる。
【0038】
同様に、突出部31dは、当該突出部31dと取付部31bとの距離L2が上記の距離L3よりも小さくなるように形成及び配置されるので、釣糸Lが小径の場合には、当該釣糸Lを突出部31cと取付部31bとの間だけでなく、突出部31dと取付部31bとの間にも係止することができる。これにより、小径の釣糸Lをより確実に釣糸係止具31で係止することができる。
【0039】
このように、釣糸Lの径に応じて係止部31aの突出部31c及び突出部31dと突出部31eとを使い分けることで、細径の釣糸及び太径の釣糸を単一の釣糸係止具31で確実に係止することができる。すなわち、釣糸係止具31によれば、径の大小によらず、釣糸Lを確実に保持することができる。
【0040】
本明細書で説明された各構成要素の寸法、材料、及び配置は、実施形態中で明示的に説明されたものに限定されず、この各構成要素は、本発明の範囲に含まれうる任意の寸法、材料、及び配置を有するように変形することができる。また、本明細書において明示的に説明していない構成要素を、説明した実施形態に付加することもできるし、各実施形態において説明した構成要素の一部を省略することもできる。特に、突出部31d及び突出部31eの一方又は両方を省略することができる。突出部31d及び突出部31eを省略しても、
図5に示すように、釣糸Lは突出部31cと取付部31bとの間に保持可能である。
【符号の説明】
【0041】
1 スピニングリール
10 リール本体
20 スプール
21 糸巻胴部
23 スカート部
31 釣糸係止具
31a 係止部
31b 取付部
31c、31d 突出部(第1突出部)
31e 突出部(第2突出部)
31f 係止凹部
31g、31h 湾曲部
32 シート
32c 凹部(第1凹部)
32e 凹部(第2凹部)