(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような液体センサでは、チューブ内の液体の有無を安定して検出するために、チューブを液体センサの所定の保持位置に安定して保持する必要がある。
また、液体センサには保持位置に対しチューブを容易に着脱可能とするために、チューブを弾性的に嵌合して保持する保持部が設けられている。しかし、保持部による保持力を超える引っ張り力がチューブに作用すると、チューブが保持部から外れるため、チューブ内の液体の有無を検出することができなくなる。
【0006】
特許文献1には、1本のねじの締付け作業により、本体と板材との間に管を保持するようにしたパイプ液体検出センサが開示されている。しかし、センサを管に固定するためにねじの締付け作業が必要であるため、その取り付け作業が煩雑である。
【0007】
この発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、その目的はチューブを所定の保持位置に容易にかつ安定して保持し得る液体センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する液体センサは、透光性を有するチューブ内の液体の有無を検知する液体センサであって、前記チューブを、該チューブの長手方向に直交する方向に挿抜可能に保持する弾性片と、前記チューブに向かって検出光を照射する投光部と、前記チューブを透過した検出光を受光する受光部とを本体ケースに備え、前記チューブの挿抜方向を覆う保持部材を、前記本体ケースに対し前記挿抜方向に一致しない方向に限り着脱可能としたことを特徴とする。
【0009】
この構成により、チューブに引っ張り力が作用しても、チューブが本体ケースに対する挿抜方向に外れることはない。
また、上記の液体センサでは、前記弾性片は、前記チューブを該チューブの長手方向と直交する方向に弾性的に挿抜可能とし、前記本体ケースと前記弾性片との間に嵌合凹部を形成し、前記保持部材には、該保持部材を前記嵌合凹部に対し前記チューブの長手方向に沿う方向にのみ着脱可能とした嵌合片を備えることが好ましい。
【0010】
この構成により、ねじを使用することなくチューブを本体ケースに保持可能であるとともに、弾性片からのチューブの外れは、保持部材により阻止される。
また、上記の液体センサでは、前記嵌合凹部は、前記チューブの挿抜方向における奥部の幅を中間部より幅広とし、前記嵌合片の横断面形状は前記嵌合凹部の断面形状に等しい形状として、前記チューブの長手方向に沿う方向にのみ挿抜可能とすることが好ましい。
【0011】
この構成により、本体ケース側の嵌合凹部に嵌合する保持部材の嵌合片により、保持部材が弾性片へのチューブの挿抜方向へ外れることはない。
また、上記の液体センサでは、前記保持部材には、前記チューブを弾性的に保持する保持片を設けることが好ましい。
【0012】
この構成により、保持部材を本体ケースから取り外しても、保持部材がチューブに保持されている。
また、上記の液体センサでは、前記保持部材には、前記本体ケースに対し弾性的に係合して、該保持部材をチューブの長手方向に位置決めする位置決め手段を備えることが好ましい。
【0013】
この構成により、保持部材が本体ケースに対しチューブの長手方向に位置決めされる。
また、上記の液体センサでは、前記保持部材には、前記本体ケースに位置決めした状態で該本体ケースの一方に突出する指掛部を備えることが好ましい。
【0014】
この構成により、保持部材を本体ケースから外しやすい。
また、上記の液体センサでは、前記保持部材は、前記本体ケースの側面からはみ出ない横幅とすることが好ましい。
【0015】
この構成により、本体ケースに取着された保持部材が周囲の物品に引っかかり難い。
また、上記の液体センサでは、前記保持部材の表面には、該表面の摩擦係数を増大させる突条部を備えることが好ましい。
【0016】
この構成により、本体ケースに対する保持部材のスライド操作が容易となる。
上記課題を解決する液体センサのチューブ保持部材は、透光性を有するチューブ内の液体の有無を検知する液体センサのチューブ保持部材において、前記液体センサの本体ケースに対し被検知位置に挿抜可能に保持された前記チューブを保持する保持部材を備え、前記保持部材は前記本体ケースに対する前記チューブの挿抜方向に一致しない方向に限り前記本体ケースに対し着脱可能とすることを特徴とする。
【0017】
この構成により、チューブに引っ張り力が作用しても、チューブが本体ケースから外れることはない。
【発明の効果】
【0018】
本発明の液体センサによれば、チューブを所定の保持位置に容易にかつ安定して保持することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、液体センサの一実施形態を図面に従って説明する。
図1に示す液体センサは、例えば試薬等の液体が搬送されるチューブを保持し、チューブ内の液体の有無を光学的に検出する機能を有する。
【0021】
図2に示すように、本実施形態の液体センサの外装は、本体ケース10とカバー部材20とにより構成されている。
本体ケース10は、例えば硬質樹脂等からなり、平板部11と、平板部11から突出する筒部12とを有している。平板部11の端部には、その取付孔13が二箇所に形成されている。
図1に示すように、本体ケース10は取付孔13に挿通されたねじ14により、所定の取付面Sに固定される。
【0022】
カバー部材20は、本体ケース10の筒部12に嵌合されている。カバー部材20の前面は筒部12の開口端を覆う状態で液体センサの前面側に露出され、液体センサの測定対象となる透光性のチューブTを保持可能である。なお、取付面Sは通常垂直方向であり、チューブTの保持方向は、取付面Sと平行である。
【0023】
図3に示すように、本体ケース10の筒部12には、チューブT内の液体の有無を検知するセンサユニット30が収容されている。センサユニット30は、基板フレーム31と、投光フレーム32と、受光フレーム33とを有している。基板フレーム31は、一方向に細長く延びている。投光フレーム32と受光フレーム33は、基板フレーム31の長手方向の一端及び他端から、それぞれ同一方向に垂直に立設されている。
【0024】
基板フレーム31は、ボトムフレーム部31A、サイドフレーム部31B、カバーフレーム部31Cを含む。ボトムフレーム部31Aには液体センサにおける各種の動作を制御する回路素子34が実装されている。サイドフレーム部31Bは四角枠状をなし、回路素子34を囲む。
【0025】
カバーフレーム部31Cは、ボトムフレーム部31Aとサイドフレーム部31Bとにより囲まれた回路素子34の実装空間を閉塞する。なお、カバーフレーム部31Cは、一方向に細長く延びており、その長手方向の一端及び他端には第1の嵌合部35及び第2の嵌合部36がそれぞれ設けられている。第1の嵌合部35及び第2の嵌合部36には、投光フレーム32及び受光フレーム33がそれぞれ嵌合されて、基板フレーム31に投光フレーム32と受光フレーム33が固定される。
【0026】
カバー部材20は、本体ケース10の筒部12にセンサユニット30が収容された状態で、本体ケース10の筒部12の開口を閉塞するように嵌合されている。このとき、カバー部材20に形成された挿通孔40と本体ケース10に形成された挿通孔41とが重なるように配置される。これら重なり合った挿通孔40,41に対して本体ケース10の外側から位置決めピン43が挿入されている。この位置決めピン43は、センサユニット30における基板フレーム31のカバーフレーム部31Cに対して上方から接触することで、本体ケース10の筒部12内でのセンサユニット30の収容位置を位置決めする。
【0027】
次に、カバー部材20の構成について説明する。
図4に示すように、カバー部材20は、例えば黒色の軟質樹脂等により一体成形されており、略矩形状をなす天面Pの長手方向の中央位置には、天面Pの短手方向の一端から他端に亘って直線状に延びる凹溝50が形成されている。凹溝50の底面には、円弧状に湾曲して凹溝50の長手方向の全域に亘って延びる一対の弾性片51A,51Bが形成されている。
【0028】
図5に示すように、弾性片51A,51Bは、円筒の一部を長手方向に切除した残りの部分に相当し、切除範囲は円筒の中心に対し約60度の範囲である。そして、弾性片51A,51B間の開口部はチューブTの外径より小さい寸法で開口され、その開口部から弾性片51A,51B間の空間にチューブTを弾性的に挿抜可能である。
【0029】
弾性片51A,51Bの先端縁には、弾性片51A,51Bの湾曲中心から径方向に延びる直線に沿った第1のテーパ面P1が形成されている。従って、チューブTを第1のテーパ面P1で案内しながら、弾性片51A,51B間に弾性的に嵌挿可能である。
【0030】
弾性片51A,51Bの長手方向の中央部には、弾性片51A,51Bを長手方向に2分割するスリット52が形成されている。さらに、スリット52は、凹溝50の底面に形成された凹部54に連通している。
【0031】
図7に示すように、投光フレーム32及び受光フレーム33に配設される投光素子37と受光素子38は、カバー部材20が本体ケース10に嵌合された状態では、スリット52の両側で互いに対向するように位置している。また、スリット52の両側において、凹溝50の側面には通過孔55A,55Bが形成されている。
【0032】
そして、投光素子37から出力される検出光は、通過孔55Aからスリット52及び通過孔55Bを経て受光素子38に入射されるようになっている。すなわち、スリット52は、投光素子37と受光素子38との間に形成される検出光の光軸AX上に配置されている。
【0033】
図6及び
図7に示すように、通過孔55A,55Bは、カバー部材20の天面Pまで延長されて、係止溝56が形成されている。
図8(a)(b)に示すように、弾性片51A,51BにチューブTが保持された状態で投光素子37から検出光SLが照射されると、その照射された検出光SLがスリット52を介してチューブTの外表面に到達し、更にはチューブTを透過した後に受光素子38で受光される。
【0034】
このとき、検出光SLの屈折態様は、チューブTの材質の屈折率と、チューブTの内部の媒質の屈折率との差に応じて変化する。
図8(a)に示すように、チューブTの内部が液体Lで満たされているとき、液体Lの屈折率は、空気Aの屈折率よりも大きい。したがって、屈折率の差が比較的小さくなる。そのため、投光素子37から照射された検出光SLのうち、チューブTと液体Lとの界面で屈折して受光素子38に到達しない検出光SLの比率が比較的小さくなる。
【0035】
図8(b)に示すように、チューブTの内部が気泡等により空気Aで満たされているとき、空気Aの屈折率は、液体Lの屈折率よりも大きい。従って、屈折率の差が比較的大きくなる。そのため、投光素子37から照射された検出光SLのうち、チューブTと空気Aとの界面で屈折して受光素子38に到達しない検出光の比率が比較的大きくなる。
【0036】
そこで、本実施形態では、受光素子38における受光量を所定の閾値と比較し、その受光量が所定の閾値未満であるときに、チューブTの内部が空気Aで満たされていると判定することを可能とする。具体的には、受光素子38は受光量に応じたレベルの信号を出力する。
【0037】
図3に示す基板フレーム31に実装された回路素子34からなる検出回路は、受光素子38から出力される信号のレベル(たとえば電圧値)と閾値とを比較し、その比較結果に応じた検出信号を外部装置へ出力する。この検出信号により、チューブTの内部の媒体が液体Lか空気Aかを判定することが可能となる。
【0038】
図1に示すように、本体ケース10の前面には、チューブTを弾性片51A,51Bに嵌合された状態に安定して保持するための保持部材60が取着されている。保持部材60は合成樹脂で成型され、
図9に示すように、カバー部材20の前面をほぼ覆い得る大きさの四角板状の平板部60aを備えている。
【0039】
平板部60aの裏面には、チューブTを弾性的に嵌合可能とした一対の保持片61と、その保持片61の下方に二対の嵌合片62A,62Bが形成されている。保持片61は、カバー部材20に形成された弾性片51A,51Bと同様な形状であり、一対の保持片61間の開口部からチューブTを弾性的に嵌合可能である。
【0040】
嵌合片62A,62Bの対向する各対間の中心と、対向する保持片61間の中心は同一直線状に位置する。また、嵌合片62A,62B間には、カバー部材20の弾性片51A,51Bのスリット52の幅と同等もしくはそれ以上の間隙が確保されている。
【0041】
図10に示すように、嵌合片62A,62Bの横断面形状は、カバー部材20の凹溝50の側面と弾性片51A,51Bの外周面との間に形成される嵌合凹部63に等しい形状である。
【0042】
すなわち、弾性片51A,51Bの外側面が円弧状に湾曲していることから、嵌合凹部63はその深さ方向における中間部の幅が最奥部の幅より狭くなっている。従って、弾性片51A,51B間にチューブTを保持している状態では、弾性片51A,51Bの互いに近づく方向への撓みがほぼ許容されないので、各嵌合片62A,62Bは嵌合凹部63に対し例えば上方からのみ嵌挿可能である。
【0043】
また、弾性片51A,51B間にチューブTを保持した状態では、嵌合凹部63に嵌合された嵌合片62A,62Bが本体ケース10の前方、すなわちチューブTの長手方向に直交する方向には抜けないようになっている。
【0044】
平板部60aには、平板部60aの側端側から嵌合片62A,62Bの間の間隙に向かって延びる弾性片64が形成されている。弾性片64の先端には、平板部60aの裏面側、すなわちカバー部材20側に向かって突出する半球状の突部65が形成されている。
【0045】
保持部材60の嵌合片62A,62Bを嵌合凹部63に対し上方から挿入するとき、突部65がカバー部材20の凹溝50の側方において天面Pに当接して、弾性片64が撓みながらスライドする。そして、
図11に示すように、保持片61がカバー部材20の弾性片51A,51Bに当接すると、突部65が係止溝56の位置まで達して係止溝56に弾性的に係合し、保持部材60がカバー部材20に対し上下方向に位置決めされるようになっている。保持部材60がカバー部材20に位置決めされた状態では、嵌合片62A,62B間の間隙とカバー部材20の弾性片51A,51Bのスリット52が連通して、検出光SLを妨げないようになっている。
【0046】
図10に示すように、平板部60aの横幅は、本体ケース10及びカバー部材20の横幅より僅かに狭く形成されている。また、
図11に示すように、平板部60aの下縁は、本体ケース10及びカバー部材20の下縁より下方へ突出して、指掛部67が形成されている。
【0047】
平板部60aの表面には、保持部材60のスライド操作方向を表示する矢印及び案内文字を浮き彫りとした突条部66が形成されている。突条部66により平板部60aの表面の摩擦係数を増大させている。
【0048】
次に、本実施形態の液体センサの作用を説明する。
液体センサにチューブTを取り付けるための手順を
図12に示す。
図12(a)に示すように、本体ケース10にカバー部材20を取着した液体センサをまず取付面に取着する。次いで、
図12(b)に示すように、チューブTを保持部材60の保持片61に嵌合する。
【0049】
次いで、
図12(c)に示すように、チューブTに対する保持部材60の取付位置より下方位置で、チューブTをカバー部材20の弾性片51A,51Bに嵌合する。
そして、
図12(d)に示すように、保持部材60の嵌合片62A,62Bをカバー部材20の嵌合凹部63に上方から嵌挿し、弾性片64の突部65をカバー部材20の係止溝56に係合させる。すると、保持部材60がカバー部材20に対し上下方向に位置決めされる。
【0050】
この状態では、保持部材60は嵌合片62A,62Bが嵌合凹部63に嵌合して、保持部材60の本体ケース10の前方への抜けが阻止される。従って、チューブTが弾性片51A,51Bと保持片61に保持された状態でカバー部材20に安定して保持される。
【0051】
また、保持部材60をカバー部材20から取り外す場合には、指掛部67を下方から押し、あるいは指先を突条部66に押し当てて保持部材60を上方へスライドさせればよい。
【0052】
チューブTが弾性片51A,51Bに保持されていると、投光素子37から出力される検出光SLを受光素子38で受光することにより、チューブT内で液体Lが正常に流れているか否かが検出される。
【0053】
上記のような液体センサでは、次に示す効果を得ることができる。
(1)チューブTがカバー部材20の弾性片51A,51Bに保持されている状態では、チューブT内に液体Lが正常に流れているか否かを検出することができる。
(2)カバー部材20の弾性片51A,51Bと、保持部材60の保持片61で、ねじを使用することなく、チューブTを安定して保持することができる。
(3)保持部材60をカバー部材20に対し上方からのみ嵌挿可能としたので、チューブTに作用する引っ張り力による保持部材60の前方(チューブの長手方向に対し直交する方向)への外れを防止することができる。従って、チューブT内に液体Lが正常に流れているか否かを安定して検出することができる。なお、保持部材60をカバー部材20に対し斜め上方からのみ嵌挿可能としてもよい。要するに、チューブTの挿抜方向に一致しない方向であればよい。
(4)カバー部材20の弾性片51A,51Bと凹溝50の側面との間に形成される嵌合凹部63に保持部材60の嵌合片62A,62Bを上方からのみ嵌挿可能とした。そして、嵌合凹部63の横断面形状は、最奥部の幅が広くなるように形成され、嵌合片62A,62Bは嵌合凹部63に充填される形状としたので、保持部材60のカバー部材20から前方への外れを防止することができる。
(5)嵌合片62A,62Bは嵌合凹部63に充填される形状としたので、保持部材60をカバー部材20に取り付けた状態では、弾性片51A,51Bの拡径方向の弾性変形を阻止することができる。従って、弾性片51A,51BからのチューブTの外れを防止することができる。
(6)嵌合凹部63は、弾性片51A,51Bと凹溝50との間に形成される空間を利用したので、カバー部材20に嵌合片62A,62Bを嵌挿するための嵌合凹部を別途設ける必要はない。
(7)保持部材60を、ねじを使用することなく、カバー部材20に容易に取着することができる。
(8)保持部材60の突部65をカバー部材20の係止溝56に係合させると、嵌合片62A,62Bが検出光SLを遮らない位置で、保持部材60をカバー部材20に対し上下方向に容易に位置決めすることができる。
(9)指掛部67若しくは突条部66により、カバー部材20に対する保持部材60の上下方向のスライド操作を容易に行うことができる。
(10)保持部材60の幅を本体ケース10及びカバー部材20の幅より狭くして、本体ケース10及びカバー部材20の側面からはみ出ないようにしたので、本体ケース10の周囲の物品への無用な引っ掛かりを防止することができる。
(11)保持部材60を保持片61でチューブTに保持可能であるので、保持部材60をカバー部材20から取り外してもチューブTに保持されている。従って、保持部材60のチューブTからの脱落若しくは紛失を防止することができる。
【0054】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・保持部材の嵌合片をチューブの長手方向に沿って嵌挿可能とした嵌合凹部を、本体ケースの任意位置に設けてもよい。