(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6611462
(24)【登録日】2019年11月8日
(45)【発行日】2019年11月27日
(54)【発明の名称】ホームドア
(51)【国際特許分類】
B61B 1/02 20060101AFI20191118BHJP
E01F 1/00 20060101ALI20191118BHJP
E05F 15/632 20150101ALI20191118BHJP
【FI】
B61B1/02
E01F1/00
E05F15/632
【請求項の数】9
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-93618(P2015-93618)
(22)【出願日】2015年4月30日
(65)【公開番号】特開2016-210246(P2016-210246A)
(43)【公開日】2016年12月15日
【審査請求日】2018年4月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】593092482
【氏名又は名称】JR東日本メカトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100102819
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100153084
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 康史
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100171251
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 拓也
(72)【発明者】
【氏名】村木 克行
(72)【発明者】
【氏名】本橋 孝章
(72)【発明者】
【氏名】芝田 利幸
(72)【発明者】
【氏名】井上 忠
【審査官】
川村 健一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−126144(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/147225(WO,A1)
【文献】
登録実用新案第3129801(JP,U)
【文献】
特開2013−071560(JP,A)
【文献】
特開2013−006498(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61B 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラットホームの縁部に沿って配設されるホームドア装置において、
複数の脚部によって前記プラットホームの上面から上方に所定の間隔を置いて配置される基台と、
前記基台に取付けられた戸袋と、
前記戸袋に対して進退自在に設けられた枠状に形成されたスライドドアと、
上方に開口したコの字形の案内部材であって、前記スライドドアの移動経路に沿って戸先側と戸尻側に離間させて配置され、前記フレーム状のスライドドアの下縁部材を受容して該スライドドアを前記プラットホームの縁部に沿う方向にスライド自在に支持、案内する案内部材と、
前記スライドドアの下縁部材の上面に当接するフォロアとを具備するホームドア装置。
【請求項2】
前記案内部材が、前記スライドドアの移動経路に対して垂直な方向にオフセットして前記基台の上面に設置された2組の案内部材から成る請求項1に記載のホームドア装置。
【請求項3】
前記基台が、前記脚部によって前記プラットホームに固定される静止基台と、該静止基台に対して水平方向に回動自在に取付けられた可動基台とを具備し、
前記戸袋が、前記静止基台に取付けられた静止戸袋と、前記可動基台に取付けられ該可動基台と共に水平方向に回動自在に前記静止基台に連結された可動戸袋とを具備する請求項1または2に記載のホームドア装置。
【請求項4】
前記戸先側の案内部材と前記戸尻側の案内部材との間で前記基台に取り付けられ、前記スライドドアを駆動する駆動装置が配設されている請求項3に記載のホームドア装置。
【請求項5】
前記駆動装置は、駆動モータと、該駆動モータに連結された駆動プーリーと、回転自在に設けられた遊動プーリーと、両端が前記スライドドアの下縁部材に結合され、前記駆動プーリーおよび遊動プーリーを巡って張架されたベルトとを具備する請求項4に記載のホームドア装置。
【請求項6】
前記枠状に形成されたスライドドアの下縁部材は、下方に開口した溝が長手方向に延設されており、前記ベルトおよび前記遊動プーリーの一部が前記スライドドアの下縁部材の溝部内に配置されている請求項5に記載のホームドア装置。
【請求項7】
前記遊動プーリーは、前記スライドドアの移動経路に沿って前記駆動プーリーよりも戸先側に配置された戸先側遊動プーリーと、前記駆動プーリーよりも戸尻側に配置された戸尻側遊動プーリーとを含み、
前記ベルトは、戸先側の遊動プーリー、駆動プーリーおよび戸尻側の遊動プーリーを巡って張架されている請求項6に記載のホームドア装置。
【請求項8】
前記スライドドアの移動経路に対して垂直な方向に前記戸先側遊動プーリーの両側に該戸先側遊動プーリーと同軸に配置された支持ローラーを更に具備し、該支持ローラーが、前記スライドドアの下縁部材の前記溝部の両側の下面に当接する請求項7に記載のホームドア装置。
【請求項9】
前記フォロアは、スライドドアの移動経路に沿って前記戸先側の案内部材と前記戸尻側の案内部材との間に配置されている請求項1に記載のホームドア装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駅のプラットホームに設置されるホームドアに関する。
【背景技術】
【0002】
駅のプラットホームから軌道側への人の転落を防止するため、プラットホームの縁部に沿ってホームドアを設置する安全策が取られている。こうしたホームドアは、鉄道のみならず、自動運転を行う新交通システムでは必須の構成要素となっている。ホームドアの設置は今後とも拡大の傾向にあり、これまで、種々のホームドアが開発されてきた。例えば特許文献1には、戸袋に対してスライド自在に設けられたスライドドアと、スライドドアと戸袋との間をスライド連結しているスライド機構と、スライドドアのための駆動手段とを備えたホームドア装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−016280号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術のホームドアでは、スライドドアが重量物であり、そのため、スライドドアを戸袋に対してスライド自在に支持する支持構造を堅牢に構成しなければならない。また、従来技術のホームドアでは、スライドドアはプラットホームの上面の直近から上方に延在しており、また、スライドドアの下縁部において支持されているため、スライドドアの上縁部にプラットホーム側から軌道側へ作用する群衆荷重によるモーメントに対しても、スライドドアが十分な堅牢性を備えていなければならない。従って、従来技術のホームドアは更に重く大型化し、これが、製造コストを増加させる要因となっている。
【0005】
また、ホームドアをプラットホームに設置することによって、落人防止に加えて、列車の着発時の安全確認のためにプラットホームに配置されている駅務員の労力を低減可能となるが、ホームドアをプラットホームに設置したために、かえって、プラットホーム側から軌道側を見ることができなくなってしまう問題が生じる。特に、ホームドアの戸袋の背後に人が隠れていたり物が置かれていても、プラットホーム側からは死角になって見えない問題がある。
【0006】
さらに、従来技術のホームドアでは、工作機械や精密機器等で用いられることの多い直動軸受(リニアガイド)によりスライドドアを支持案内する構造が多く採用されているが、以下のような問題がある。
【0007】
・転動体(ボール接触)を用いた直動軸受は取付面に高い精度(平面度等)が求められるため、戸袋等の製作に際してホームドアの支持案内用には本来必要がない精度確保を強いられコスト増の要因となる。
【0008】
・ホームドアの設置面(ホーム床面上の設置基礎面)の平面性が不十分である場合、直動軸受の動作が阻害され開閉動作時の機械抵抗が大きくなる。
【0009】
・直動軸受の案内レールを戸袋内部に設置することになるため、戸袋部分に緊急時の脱出口を設けることが困難(または不可能)となる。案内レールをスライドドア側に設置する方式により解決することも可能であるが、その場合、案内レールには潤滑用のグリスが塗布されているため旅客の手に触れる部位には案内レールを取付けることが出来ない。従って、枠状部材のみで構成した簡易な構造のスライドドアへの案内レールの取付は困難となり、ホームドアのコストダウンを実現できない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の本発明はプラットホームの縁部に沿って配設されるホームドア装置において、
複数の脚部によって前記プラットホームの上面
から上方に所定の間隔を置いて配置される基台と、前記
基台に取付けられた戸袋と
、前記戸袋に対して進退自在に設けられた
枠状に形成されたスライドドアと
、上方に開口したコの字形の案内部材であって、前記スライドドアの移動経路に沿って戸先側と戸尻側に離間させて配置され、前記フレーム状のスライドドアの下縁部材を受容して該スライドドアを前記プラットホームの縁部に沿う方向にスライド自在に支持、案内する案内部材と、前記スライドドアの下縁部材の上面に当接するフォロアとを具備
するホームドア装置を要旨とする。
【0011】
前記基台の上面に前記スライドドアを軌道と平行な方向に案内する2組の案内部材を設置し、案内部材の表面に取付けたライナーとスライドドアを構成する枠状部材の一部(下縁部材)とが接触しながらスライドドアを案内する。すなわちスライドドアを構成する枠状部材の一部(下縁部材)を案内レールとして利用することにより、戸袋内部への案内レールの設置を不要としている。
また、前記スライドドアを押出成形された複数のセクション部材より成る枠体から形成するようにできる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、基台をプラットホームの上面から上方に配置し、該基台よりも上方にスライドドアを配置することによって、プラットホーム側から軌道側を見た時の死角が低減されると共に、スライドドアの上縁部にプラットホーム側から軌道側へ作用する群衆荷重により支持案内機構に作用するモーメントが小さくなることから支持案内機構の簡素化が可能となるため、ホームドア装置の製造コストを低減することが可能となる。
【0013】
また、工作機械や精密機械用に作られた直動軸受を使用せずにスライドドアを簡易な機構により支持案内することにより、戸袋部分の製作時の必要精度が緩和され製作コストの低減が可能となるほか、戸袋内に案内レールを設置することが不要となるため、緊急時の脱出口を戸袋部分に設置することが容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態による複数のホームドアユニットを備えたホームドアシステムの正面図であり、閉位置にあるスライドドアを示す図である。
【
図2】本発明の実施形態による複数のホームドアユニットを備えたホームドアシステムの正面図であり、開位置にあるスライドドアを示す図である。
【
図3】本発明の実施形態による複数のホームドアユニットを備えたホームドアシステムの斜視図であり、閉位置にあるスライドドアおよび開位置にある可動戸袋を示す図である。
【
図4】本発明の実施形態によるホームドアユニットの戸袋内を示す部分断面図である。
【
図5】本発明の実施形態によるホームドアユニットの戸袋内を示す部分斜視図である。
【
図6】
図5とは反対側から見たホームドアユニットの部分斜視図である。
【
図7】本発明の実施形態によるホームドアユニットをスライドドアの移動方向に垂直な平面で切断した部分断面図である。
【
図8】本発明の実施形態によるホームドアユニットで用いる駆動装置の拡大斜視図である。
【
図9】
図8の駆動装置で用いる支持ローラーの断面図である。
【
図10】本発明の実施形態によるホームドアユニットで用いるスライドドアの斜視図である。
【
図11】
図10とは反対側から見たスライドドアの斜視図である。
【
図14】スライドドアを形成するセクション部材の断面図である。
【
図15】本発明の実施形態によるホームドアユニットで用いる案内部材の斜視図である。
【
図17】
図10に示すスライドドアの他の代替実施形態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、本発明の好ましい実施形態を説明する。
実施形態では、ホームドアシステムは、複数のホームドアユニット100を具備している。ホームドアユニット100は、プラットホームPの長手の縁部に沿って所定の間隔を置いて配置され、隣接するホームドアユニット100によって両者間に例えば乗降客が行き来する開口部Sが画成される。ホームドアユニット100は、脚部126によってプラットホームPに固定される基台108、基台108に取付けられた戸袋102、戸袋102対して水平方向に進退自在に設けられ開口部Sを開閉するスライドドア16、18、該スライドドア16、18のための駆動装置140(
図8)を具備している。
【0016】
基台108は、複数の脚部126によってプラットホームPの上面から上方に離間させて配置、固定されている。このように、基台108をプラットホームPの上面から上方に離間させることによって、戸袋102の外側に人が隠れていたり、物が置かれていることをプラットホームP側から該基台108の下側を通して目視可能となる。また、戸袋102も小型化することが可能となる。また、基台108をプラットホームPの上面から上方に離間させることによって、スライドドア16、18は、その高さ方向の長さHが短くなり、群衆荷重によるモーメントが小さくなり、スライドドア16、18それ自体の剛性および後述するスライドドア16、18の支持案内手段の構造を簡素化することが可能となる。
【0017】
基台108は、脚部126によってプラットホームPに固定された一対の静止基台104と、該静止基台104に対して水平方向に回動自在に設けられた一対の可動基台106とを有している(
図5参照)。可動基台106の下側には脚部は設けられていない。戸袋102は、一対の静止基台104の各々に取付けられた一対の静止戸袋120と、該静止戸袋120の各々に対してヒンジ124を介して取付けられ、可動基台106と共に水平方向に回動自在の一対の可動戸袋130とを有している。より詳細には、可動戸袋130は、可動基台106と共に、
図1、2、4に示す閉位置と、
図3に示す開位置との間で、ヒンジ124を中心として水平方向に回動可能となっている。
【0018】
ホームドアユニット100を制御する制御盤(図示せず)を基台108の下側に外部に露出するように配設することができる。該制御盤を戸袋102の外部に配設することによって、戸袋102のカバーを取外すことなく、制御盤内にアクセス可能であり、メンテナンス作業が容易になる。
【0019】
本実施形態では、スライドドア16、18のための案内手段は、戸袋102内において、スライドドア16、18の開閉方向に対して垂直な方向に互いにオフセットされており、2つのスライドドア16、18が戸袋102内に並設、収納されるようになっている。つまり戸袋102は、2つのスライドドア16、18を引き違い式に収納するように形成されている。戸袋102は、その両端において上方部分が切り欠かれて、スライドドア16、18は、
図2に示すように、戸袋102内に収納された開位置にあっても、その戸先部分が露出するようになっている。これによって、スライドドア16、18を開位置に引き込んだときに、戸袋102とスライドドア16、18との間に指等が引き込まれる事故が防止される。また、このように戸袋102の一部を切り欠くことによって、プラットホーム側から軌道側を見た時の死角が低減される。なお、本実施形態では、戸袋102は、スライドドア16、18の下縁部材16d、18d(
図10)の戸先部分を覆うカバー120aを有している。
【0020】
図10〜
図14に示すように、スライドドア16、18は、戸先部材16a、18a、戸尻部材16b、18b、上縁部材16c、18c、下縁部材16d、18dを有して矩形状に形成した枠体より成る。この枠体は、例えば、
図14に示すような断面を有した、適当な金属材料、例えばアルミニウム製の押出成形材を適当な長さに切断した複数のセクション部材を、例えばネジやボルトを用いた締結等の適当な接合手段を用いて形成することができる。スライドドア16、18の戸先に取付けられたクッション17、19は、下縁部材16d、18dを超えて下方に延びる突出部11を有している。
【0021】
このように、スライドドア16、18を枠体から形成し、その設置高さをプラットホームPの床面から一定程度離隔をおく(高い位置に設置して下部は省略する)ことによって、スライドドア16、18が閉じる際に、フレーム状のスライドドア16、18の先端部が、ベビーカーに搭乗した乳児や立位の幼児等の頭部や顔面に衝突して受傷させる可能性がある。下縁部材16d、18dを超えて下方に延びる突出部11をクッション17、19に設けることによって、そのような事故を未然に防止可能となる。つまり、低位にある乳幼児の頭部や顔面よりも低い位置(ベビーカーのサイドフレームよりも低い位置)までクッション17、19を延伸させておくことにより、そうした頭部や顔面をドアの先端部で突き刺すような状態になることが回避される。
【0022】
案内手段としての案内部材160、162は、上方に延びる腕部材160a、162aを有した略コの字形のブロック部材より成り、静止基台104の上面に固定される。案内部材160、162の上方に延びる腕部材160a、162aの間にスライドドア16、18の下縁部材16d、18dが配置される。案内部材160、162の腕部材160a、162aにおいて、スライドドア16、18の下縁部材16d、18dと対面する内側面には、ライナー164a(
図7、27、28参照)が設けられている。更に、案内部材160、162の腕部材160a、162aの間において、スライドドア16、18の下縁部材16d、18dの底面に対面する内面にもライナー164bが設けられている。
【0023】
スライドドア16、18は、静止基台104上に取付けられた案内部材160、162によって水平方向に案内され、静止基台104に取付けられた駆動装置140によって、
図1に示すように、各々の先端または戸先において互いに当接する閉位置と、
図2に示すように、戸袋12内に収納された開位置との間で水平直線方向に駆動される。
【0024】
図8を参照すると、駆動装置140は、静止基台104に固定されるブラケット142、ブラケット142の一側面に取付けられている駆動モーター144、駆動プーリー146、遊動プーリー148、154および支持ローラー156、158を具備している。駆動プーリー146は駆動モーター144の反対側に配設されており、水平に配向され回転自在にブラケット142に支持された駆動軸146aに取付けられている。駆動軸146aは、不図示の減速機を介して駆動モーター144の出力軸(図示せず)に連結されている。なお、駆動装置140および先端側の案内部材160は、静止戸袋120において、スライドドア16、18の下縁部材16d、18d(
図11)の戸先部分を覆うカバー120a内に配設されている。
【0025】
後端側の遊動プーリー148は、止め輪またはC形クリップ152aおよびワッシャー150bによって支持軸150に回転自在に取付けられている。先端側の遊動プーリー154の両側部には支持ローラー156、158が配設されており、支持ローラー156、遊動プーリー154および支持ローラー158は、止め輪またはC形クリップ152aおよびワッシャー152bによって、支持軸152に夫々独立して回転するように取付けられている。
【0026】
図9を参照すると、先端側の支持ローラー156、158は、半径方向に最も外側の第1の環状部156a、158a、第1の環状部156a、158aの内側に設けられた第2の環状部156b、158b、第2の環状部156b、158bの内側に設けられた第3の環状部156c、158c、および、第3の環状部156c、158cの内側に設けられた金属製の中空円筒状のコア156d、158dを有している。
【0027】
第1の環状部156a、158aと第3の環状部156c、158cは、例えばウレタンゴムのような弾性材料より成り、第2の環状部156b、158bは、例えばステンレス鋼のような金属材料より成る。特に、第1の環状部156a、158aは、第3の弾性部156c、158cよりも硬質の弾性材料から形成される。また、コア156d、158dの内周面に軸受ブッシュ156e、158eを配設するようにできる。
【0028】
このように、外側の第1の環状部156a、158aよりも内側の第3の環状部156c、158cの硬度を低くすることによって、スライドドア16、18に鉛直方向下向きに大きな荷重が作用した際に、内側の第3の環状部156c、158cが変形する(潰れる)ことにより、スライドドア16、18の下縁部材16d、18dがライナー164bに接触し、スライドドア16、18に作用する荷重をライナー164bに負担させることが可能となる。これによって、支持ローラー156、158の最も外側の第1の環状部156a、158aと下縁部材16d、18dとの間の接触面圧が低減され、支持ローラー156、158または下縁部材16d、18dに永久変形が生じることが防止される。
【0029】
遊動プーリー148、154は、
図7に示すように、スライドドア16、18の下縁部材の溝部13(
図14参照)内に配置され、支持ローラー156、158は、スライドドア16、18の下縁部材の溝部13の両側の下面またはフランク13a(
図14参照)に当接する。こうして、スライドドア16、18の枠体を構成するセクション部材の一部が案内レールとして利用される。先端側の遊動プーリー154、駆動プーリー146および後端側の遊動プーリー148を巡ってベルト166が張架されており、該ベルト166の各端部が、取付金具166a、166bによって、スライドドア16、18の下縁部材16d、18dの先端(戸先)側および後端(戸尻)側に結合されている。駆動プーリー146は、外周面に沿って等間隔に配設された歯を有した歯付プーリーとすることができる。ベルト166は、駆動プーリー146の歯に適合した複数の歯を有した歯付ベルトとすることができる。こうして、駆動モーター144によって駆動プーリー146が回転駆動されると、駆動プーリー146の回転方向に応じて、スライドドア16、18が水平方向に進退動作する。
【0030】
静止戸袋120内には、更に、スライドドア16、18の進行方向に後端側に配置されたフォロア134が配設されている。フォロア134は、スライドドア16、18の下縁部材16d、18dの上面に係合し、スライドドア16、18の上方への移動を規制する。静止戸袋120の上端近傍の内側には、案内部材160、162のライナーと同様のライナーを有した振れ止め138が配設されている。振れ止め138のライナーは、スライドドア16、18の上縁部分16c、18cの側面に対面するように配置されている。また、可動戸袋130内には、スライドドア16、18の後端(戸尻)側で下縁部材16d、18dの底面を支持するフォロア132(
図4)が配設されている。
【0031】
ホームドアユニット100は、スライドドア16、18の行程を閉位置と開位置との間で限定するために、基台108に固定された閉限停止部(図示せず)および開限停止部(図示せず)、スライドドア16、18に取付けられた閉限当接部材(図示せず)および開限当接部材(図示せず)を具備している。更に、ホームドアユニット100は、スライドドア16、18が開位置、閉位置にあることを検知する閉限センサーおよび開限センサーを具備し、スライドドア16、18が開位置または閉位置に到達したときに、駆動モーター144への電力供給が自動的に遮断される。
【0032】
本実施形態では、
図3に示すように、車両ドアとホームドアユニット100の開口部Sとが対峙しない位置(両者がずれた位置)で列車が何等かの理由で停止し、その後、停電その他の理由により列車が動けない状態になってしまった場合に、
図3に示すように、可動戸袋130を手動で開き、ホームドアユニット100の一対の静止戸袋120の間を非常口ESとして、列車内の乗客をプラットホームPへ移動させることが可能となる。
【0033】
既述の実施形態では、スライドドア16、18は、戸先部材16a、18a、戸尻部材16b、18b、上縁部材16c、18cおよび下縁部材16d、18dを有して略矩形状のフレーム部材より成るように説明したが、本発明はこれに限定されず、
図17に示すように、戸先部材16a、18aおよび上縁部材16c、18cを1本の棒状部材から形成してもよい。すなわち、
図17において、スライドドア200は、スライドドア16、18の下縁部材16d、18dおよび戸尻部材16b、18bと同様に形成された下縁部材202、戸尻部材204および下縁部材202と戸尻部材204との間に延設されL字形に曲げた中空または中実の棒状部材より成る上側部材206を具備している。戸先には、下縁部材202より下側に延在するクッション208が取付けられている。本例によるスライドドアは、スライドドア16、18と比較して軽量で、かつ低コストでスライドドアを形成することが可能となる。
【符号の説明】
【0034】
13 溝部
13a 下面
16 スライドドア
16a 戸先部材
16b 戸尻部材
16c 上縁部材
16d 下縁部材
17 クッション
18 スライドドア
18a 戸先部材
18b 戸尻部材
18c 上縁部材
18d 下縁部材
19 クッション
100 ホームドアユニット
102 戸袋
104 静止基台
106 可動基台
108 基台
120 静止戸袋
120a カバー
124 ヒンジ
126 脚部
130 可動戸袋
132 フォロア
134 フォロア
138 振れ止め
140 駆動装置
142 ブラケット
144 駆動モーター
146 駆動プーリー
146a 駆動軸
148 遊動プーリー
150 支持軸
150a C形クリップ
150b ワッシャー
152 支持軸
152a C形クリップ
152b ワッシャー
154 遊動プーリー
156 支持ローラー
156a 第1の環状部材
156b 第2の環状部材
156c 第3の環状部材
156d コア
158 支持ローラー
158a 第1の環状部材
158b 第2の環状部材
158c 第3の環状部材
158d コア
160 案内部材
160a 腕部材
162 案内部材
162a 腕部材
164a ライナー
164b ライナー
166 ベルト
166a 取付金具
166b 取付金具
200 スライドドア
202 下縁部材
204 戸尻部材
206 上側部材
208 クッション