(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで鞍乗型乗物では、リザーバタンクの配置スペースが限られているため、ラジエータキャップの上方にリザーバタンクを配置して、リザーバタンクでラジエータキャップの開閉操作をしにくくした構造を有する鞍乗型乗物において、リザーバタンクの必要容量を確保することが難しい場合がある。
【0005】
そこで本発明は、ラジエータキャップの上方にリザーバタンクを配置して、リザーバタンクでラジエータキャップの開閉操作をしにくくした構造を有する鞍乗型乗物において、リザーバタンクの配置スペースの効率を向上させてリザーバタンクの必要容量を確保し易くすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る鞍乗型乗物は、走行用の内燃機関を冷却した冷却液を内部に流通させて外気と熱交換させるラジエータと、前記ラジエータに補う冷却液を蓄えるリザーバタンクと、を備え、前記ラジエータは、その上端部に設けられた開口と、前記開口に取り付けられるキャップと、を有し、前記リザーバタンクは、前記キャップを上方から覆うタンク上部と、車幅方向の一方側の前記ラジエータの側部に沿って、前記タンク上部の前記一方側から下方に延びるタンク下部と、を有する。
【0007】
上記構成によれば、タンク上部でキャップを覆うことで、リザーバタンクでキャップの開閉操作をしにくくしながら、車幅方向の一方側のラジエータの側部に沿ってタンク上部の前記一方側から下方にタンク下部を延ばすことで、ラジエータの前記一方側の側部よりも車幅方向外側に向けてリザーバタンクの寸法が大きくなるのを防止できる。これにより、リザーバタンクを配置する配置スペースの効率を向上させて、リザーバタンクの必要容量を確保し易くすることができる。
【0008】
前記リザーバタンクは、上下方向の寸法が前記車幅方向の寸法よりも大きくてもよい。
【0009】
上記構成によれば、上下方向の寸法が車幅方向の寸法よりも大きくなるようにリザーバタンクが形成されているので、リザーバタンクを配置する配置スペースの効率を向上させて、リザーバタンクの必要容量を上下方向に確保し易くしながら、リザーバタンクにより鞍乗型乗物の車幅方向の寸法が増大するのを抑制できる。
【0010】
前記タンク上部の上端部の前後方向の中央には、前記タンク上部の水平断面を上方から下方に移動させたときに前記水平断面内の前記タンク上部の前部及び後部が一つに統合されるように窪み部が形成され、前記窪み部の内部に、前記リザーバタンクに蓄えられた冷却液を排出する排出口が設けられていてもよい。
【0011】
上記構成によれば、タンク上部の水平断面を上方から下方に移動させたときに水平断面内のタンク上部の前部及び後部が一つに統合されるように形成された窪み部に排出口を設けることにより、鞍乗型乗物の加減速時等に前後方向にリザーバタンクの内部の冷却液の液面が傾斜しても、液面の位置変動の比較的少ないタンク上部の位置に排出口を位置させることができ、リザーバタンクの内部の冷却液が不用意に排出口から排出されるのを防止できる。これにより、リザーバタンクの内部の冷却液を良好に保持できる。
【0012】
前記ラジエータは、熱交換部と、前記熱交換部の前記車幅方向の両側に配置されて冷却液を貯留する一対の貯留部とを有し、前記タンク下部の前側部分が、前記熱交換部よりも前記一方側において、前記一対の貯留部のうち一方の貯留部の前部を覆い且つ前記一方の貯留部の前方に延びていてもよい。
【0013】
上記構成によれば、タンク下部の前側部分が、熱交換部よりも前記一方の貯留部の前部を覆っているので、熱交換部がタンク下部で覆われて熱交換率が低下するのを防止できると共に、リザーバタンクを配置する配置スペースの効率を向上させてタンク下部の容量を増大させ、リザーバタンクの必要容量を更に確保し易くすることができる。また、タンク下部の前側部分が、熱交換部よりも前記一方側において前記一方の貯留部の前方に延びているので、タンク下部の前側部分で走行風を熱交換部に向けて効率よく導風できる。
【0014】
前記タンク上部の後側部分が、前記一方の貯留部の後方に延びていてもよい。
【0015】
上記構成によれば、タンク上部の後側部分が前記一方の貯留部の後方に延びているので、リザーバタンクを配置する配置スペースの効率を向上させつつリザーバタンクの必要容量を更に確保し易くすることができると共に、タンク上部の後側部分で走行風をラジエータの後方に向けて整流させながら導風できる。
【0016】
前記ラジエータと前記リザーバタンクとに接続されて、前記リザーバタンクと前記ラジエータとの間で冷却液を流通させるチューブを更に備え、前記リザーバタンクは、前記チューブの一端を前記リザーバタンクの下端部に案内する少なくとも1つの案内部材を有し、前記チューブの前記一端が、前記リザーバタンクの前記下端部と接続されていてもよい。
【0017】
上記構成によれば、チューブの一端を案内部材でリザーバタンクの下端部まで良好に案内してリザーバタンクの下端部に接続できると共に、案内部材を用いてチューブをリザーバタンクで保持することにより、鞍乗型乗物の加減速時のチューブの振動を抑制できる。
【0018】
前記リザーバタンクを支持し且つ第1係合部を有する車体フレームを更に備え、前記リザーバタンクは、前記第1係合部と係合可能な第2係合部を有し、前記第2係合部が前記第1係合部と係合されることにより、前記タンク上部が前記キャップから離隔されて前記リザーバタンクが前記車体フレームの予め定められた保持位置で前記車体フレームに保持され、前記保持位置は、前記リザーバタンク及び前記ラジエータの間で冷却液が流通可能な状態で車体が垂直方向に立てられて前記保持位置で前記リザーバタンクが前記車体フレームに保持されたときの前記リザーバタンクから前記ラジエータに向かう方向への冷却液の流通が規制される位置に設定されていてもよい。
【0019】
上記構成によれば、予め定められた保持位置でリザーバタンクが車体フレームに保持されたときにリザーバタンクからラジエータに向かう方向への冷却液の流通が規制されるので、ラジエータのメンテナンス時等において、ラジエータの内部の冷却液が開口から漏れ出すのを良好に防止しながらリザーバタンクを車体フレームで保持でき、メンテナンス作業を向上できる。
【0020】
前記リザーバタンクを前記車幅方向の前記一方側から他方側に向けて覆い且つ窓部が設けられたカウルを更に備え、前記リザーバタンクは、その内部の冷却液の液面を視認可能な材料で形成され、前記窓部を通じて前記リザーバタンクの外部から前記リザーバタンクの前記内部の冷却液の液面を視認できるように、前記カウル及び前記リザーバタンクが配置されていてもよい。
【0021】
上記構成によれば、カウルの前記車幅方向の他方側にリザーバタンクを効率よく配置できると共に、カウルを取り外さなくても、窓部を通じてリザーバタンクの内部の冷却液の液量を確認できる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、ラジエータキャップの上方にリザーバタンクを配置して、リザーバタンクでラジエータキャップの開閉操作をしにくくした構造を有する鞍乗型乗物において、リザーバタンクの配置スペースの効率を向上させてリザーバタンクの必要容量を確保し易くすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施形態について、各図を参照して説明する。以下に記載する各方向は、鞍乗型乗物1の車体の搭乗者から見た各方向を基準とする。
【0025】
図1は、実施形態に係る鞍乗型乗物1の前部の右側面図である。
図1に示すように、鞍乗型乗物1は、一例として自動二輪車であって、車体フレーム2、走行用の内燃機関3、燃料タンク4、ステアリング部材5、一対のフロントフォーク6、前輪7、ハンドル8、ヘッドランプ装置9、カウル10、ラジエータ11、及びリザーバタンク12を備える。また、鞍乗型乗物1は、図示しない車体後部において、サイドスタンド、前記搭乗者が騎乗するシート、後輪、及び前記後輪を軸支するスイングアームを備える。前記サイドスタンドは、鞍乗型乗物1の車体の左側に配置されている。
【0026】
車体フレーム2は、前後方向に延び、ヘッドパイプ2a、メインフレーム部2b、補強フレーム部2c、2d、接続フレーム部2e、2f、及びプレート部材13を有する。ヘッドパイプ2aは、車体フレーム2の前部に設けられ、上下方向に延びている。メインフレーム部2bは、ヘッドパイプ2aから後方に延びている。補強フレーム部2c、2dは、メインフレーム部2bの下方でヘッドパイプ2aから左右に分かれて後方に延び、メインフレーム部2bに接続されている。接続フレーム部2e、2fは、メインフレーム部2bと補強フレーム部2c、2dとの間でメインフレーム部2bの前部から左右に分かれて後方に延び、補強フレーム部2c、2dに接続されている。プレート部材13は、接続フレーム部2eと補強フレーム部2cとの接続部分の車幅方向の外側の位置に配置され、接続フレーム部2eと補強フレーム部2cとに固定されている。
【0027】
内燃機関3は、前記後輪を回転駆動させるための駆動力を出力する。内燃機関3は、車体フレーム2の下方に配置され、車体フレーム2に支持されている。燃料タンク4は、内燃機関3に供給する燃料を貯留する。燃料タンク4は、内燃機関3の上方に配置され、車体フレーム2に支持されている。
【0028】
ステアリング部材5は、上下方向に延びるステアリング軸14を有する。ステアリング軸14は、ヘッドパイプ2aに挿通され、ヘッドパイプ2aに回転自在に支持されている。ステアリング部材5は、一対のフロントフォーク6を保持している。一対のフロントフォーク6は、その下端部で前輪7を軸支している。ハンドル8は、ステアリング部材5の上部に固定されている。ヘッドランプ装置9は、ランプ部9aの前面を前方に向けた状態で、車体フレーム2の前方に配置されている。
【0029】
カウル10は、フロントカウル部10aとサイドカウル部10bとを有する。フロントカウル部10aは、ランプ部9aの周囲と一対のフロントフォーク6の上端部とを覆っている。サイドカウル部10bは、フロントカウル部10aの後方で、車体フレーム2の左右側部、内燃機関3の上部、ラジエータ11、及びリザーバタンク12を覆っている。サイドカウル部10bの側面には、窓部10cが設けられている。サイドカウル部10bは、リザーバタンク12を車幅方向の一方側から他方側(ここでは右側から左側)に向けて覆いながら、リザーバタンク12の一部を窓部10cから露出させている(
図8参照)。側面視において、窓部10cは、リザーバタンク12の後方に位置し、リザーバタンク12は、サイドカウル部10bの車幅方向内側に隠れている。
【0030】
ラジエータ11は、内燃機関3の前方に配置されて車体フレーム2に支持されている。ラジエータ11は、内燃機関3を冷却した冷却液を内部に流通させ、外気と熱交換させた後に内燃機関3に供給する。ラジエータ11は、前後方向の寸法が車幅方向の寸法よりも小さい略直方体状に形成されている。ラジエータ11は、正面視において、上下方向と車幅方向とに延びている。
【0031】
なお、ラジエータ11の形状は、略直方体状に限定されない。ラジエータ11の形状は、例えば、上面視において、ラジエータ11の車幅方向中央がラジエータ11の車幅方向両側よりも後方に配置されるように湾曲した形状や、側面視において、ラジエータ11の上下方向中央がラジエータ11の上下方向両側よりも後方に配置されるように湾曲した形状でもよい。
【0032】
ラジエータ11は、開口11aとラジエータキャップ15とを有する。開口11aとラジエータキャップ15とは、ラジエータ11の上端部11bの車幅方向一方側(ここでは右側)に設けられている。開口11aは、貯留部11e(
図2参照)と連通している。リザーバタンク12からラジエータ11に補充される冷却液は、開口11aを通じて貯留部11eに供給される。開口11aは、ラジエータキャップ15により上方から下方に向けて覆われている。
【0033】
リザーバタンク12は、ラジエータ11に補う冷却液を蓄えると共に、ラジエータ11の車幅方向一方側(ここではラジエータ11の右側)に配置されて車体フレーム2に支持されている。リザーバタンク12は、その内部に蓄えられた冷却液の液面を視認可能な材料(一例として、透明な樹脂材料)で形成されている。リザーバタンク12は、上下方向に延びる形状に形成され、タンク上部12aとタンク下部12bとを有する。タンク上部12aは、側面視において、上端部11bから上方に延びている。タンク下部12bは、タンク上部12aから下方に延びている。なお、リザーバタンク12は、ラジエータ11の車幅方向他方側(ここではラジエータ11の左側)に配置されていてもよい。
【0034】
図2は、
図1のリザーバタンク12の右側面図である。
図3は、
図1のリザーバタンク12の正面図である。
図2に示すように、プレート部材13は、第1係合部13aと、タンク取付部13bとを有する。第1係合部13aは、プレート部材13の板面に設けられた挿通孔であり、リザーバタンク12の第2係合部12iが挿通された状態で、第2係合部12iと係合する。第1係合部13aは、鞍乗型乗物1のメンテナンス時にリザーバタンク12を車体フレーム2の予め定められた保持位置P(
図9参照)で保持するために用いられる。タンク取付部13bは、プレート部材13の後部に設けられ、プレート部材13にリザーバタンク12の第2取付部12gを連結するために用いられる。
【0035】
鞍乗型乗物1は、支持部材17、配管18、及びチューブ19を備えている。支持部材17は、内燃機関3とラジエータ11の下端部とに接続されてラジエータ11を支持している。配管18は、ラジエータ11の後部から後方に延び、内燃機関3に接続されている。ラジエータ11で冷却された冷却液は、配管18を通じてラジエータ11から内燃機関3に送られる。内燃機関3の駆動により生じた熱と熱交換された冷却液は、不図示の配管を通じて内燃機関3からラジエータ11に送られる。これにより、内燃機関3とラジエータ11との間で、冷却液が循環される。チューブ19は、ラジエータ11とリザーバタンク12とに接続されて、リザーバタンク12とラジエータ11との間で冷却液を流通させる。
【0036】
図2及び3に示すように、リザーバタンク12は、リザーバタンクキャップ20を有し、上下方向の寸法が車幅方向の寸法よりも大きい形状に形成されている。正面視において、タンク上部12aは、ラジエータ11の車幅方向一方側(ここではラジエータ11の右側)から中央側に向けて延びている。タンク上部12aは、上下方向にラジエータキャップ15と重なる位置に配置されている。これによりタンク上部12aは、ラジエータキャップ15の開閉操作がしにくくなるようにラジエータキャップ15を上方から覆っている。
【0037】
側面視において、タンク上部12aは、ラジエータ11の上端部11bから上方に延び、中央タンク部12c、第1前側タンク部12d、及び後側タンク部12eを有する。中央タンク部12cは、タンク上部12aの前後方向中央且つラジエータ11の真上に位置している。中央タンク部12cは、側面視で前後方向に末広がりとなる山状に形成されている。中央タンク部12cの前面には、第1取付部12fが設けられている。第1取付部12fは、板状部であり、その板面が前後方向に延びている。第1前側タンク部12dは、タンク上部12aの前側部分であり、中央タンク部12cから前方に突出し、上下方向に延びている。後側タンク部12eは、前後方向におけるタンク上部12aの後側部分であり、中央タンク部12cから後方に突出し、上下方向に延びている。
【0038】
後側タンク部12eの上部には、リザーバタンク12の内部空間を上方に開放する開口12tが設けられている。開口12tは、リザーバタンク12に冷却液を補充するために用いられる。開口12tは、リザーバタンクキャップ20により上方から下方に向けて覆われている。後側タンク部12eの後面の下部には、第2取付部12gが設けられている。第2取付部12gは、板状の本体部12hと、本体部の後端部から後方に向けて延びる軸状の第2係合部12iとを有する。第2係合部12iは、前後方向に延びている。
【0039】
第1取付部12fと第2取付部12gとは、リザーバタンク12を車体に取り付けるために用いられる。具体的に、第1取付部12fは、車体フレーム2の前部に固定された不図示のステー部材に締結部材を用いて脱着自在に連結されている。第2取付部12gは、プレート部材13のタンク取付部13bに締結部材を用いて脱着自在に連結されている。
【0040】
タンク上部12aの上端部12jの中央タンク部12cと後側タンク部12eとの間の位置には、下方に向けて窪んだ窪み部12kが形成されている。窪み部12kの内部には、リザーバタンク12に蓄えられた冷却液を排出する上側排出口12mが設けられている。具体的には、窪み部12kの内部に上側管部12lが設けられ、上側管部12lに上側排出口12mが設けられている。上側排出口12mには、ドレンチューブ16が接続されている。
【0041】
タンク下部12bは、ラジエータ11の車幅方向一方側(ここではラジエータ11の右側)の側部11cに沿って、タンク上部12aの当該車幅方向一方側から下方に延びている。タンク下部12bは、第2前側タンク部12nを有する。第2前側タンク部12nは、タンク下部12bの前側部分であり、側面視において、貯留部11eの前面から前方に突出している。
【0042】
リザーバタンク12は、チューブ19の一端19aをリザーバタンク12の下端部12pに案内する少なくとも1つの案内部材12oを有する。具体的には、タンク下部12bの前面に、複数の案内部材12oが間隔をおいて設けられている。タンク下部12bの下端部12pには、管状の下側管部12qが設けられ、下側管部12qには、リザーバタンク12の冷却液を排出する下側排出口12rが設けられている。下側排出口12rには、チューブ19の一端19aが接続されている。
【0043】
ラジエータ11は、熱交換部11dと一対の貯留部11eとを有する。熱交換部11dは、車体の車幅方向中央の位置に配置されている。熱交換部11dには、一例として不図示の複数のフィンが設けられている。熱交換部11dは、前記複数のフィンの表面を外気と接触させることにより、熱交換部11dの内部を流通する冷却液と外気とを効率よく熱交換させる。
【0044】
一対の貯留部11eは、熱交換部11dの車幅方向の両側の位置に配置されている。一対の貯留部11eの内部には、上下方向に延びる内部空間が形成されている。一対の貯留部11eは、熱交換部11dを流通する前後の冷却液を貯留する。ラジエータ11の開口11aの周縁が上端部11bと繋がる部分には、接続管部11fが設けられている。接続管部11fは、貯留部11eと連通し、チューブ19の他端19bと接続されている。
【0045】
図4は、
図2のリザーバタンク12のIV−IV線矢視断面図である。
図5は、
図2のリザーバタンク12のV−V線矢視断面図である。
図6は、
図1のカウル10とラジエータ11とリザーバタンク12とのVI−VI線矢視断面図である。IV−IV線、V−V線、及びVI−VI線は、水平に延びている。
図4及び5に示すように、窪み部12kは、タンク上部12aの水平断面を上方から下方に移動させたときに、水平断面内のタンク上部12aの中央タンク部12c及び後側タンク部12eが、一つに統合されるように形成されている。これにより、リザーバタンク12の内部の冷却液が前後方向に傾斜した場合でも、窪み部12kの内部に設けられた上側排出口12mの真下位置での冷却液の液面の変動が、中央タンク部12cと後側タンク部12eとの真下位置での冷却液の液面の変動に比べて小さくなるように調整されている。
【0046】
図6に示すように、第2前側タンク部12nは、熱交換部11dよりも車幅方向一方側(ここでは熱交換部11dの右側)において、一対の貯留部11eの右側の貯留部11e(以下、右側貯留部11eと称する。)の前部を覆いながら、右側貯留部11eの前方に延びている。熱交換部11dの前方の空間は、リザーバタンク12によって遮蔽されることなく、走行風が熱交換部11dに効率よく接触できるように開放されている。
【0047】
図7は、
図1のリザーバタンク12の右斜め後方から見た斜視図である。
図8は、
図1のカウル10の右斜め後方から見た部分的な側面図である。
図7に示すように、タンク上部12aとタンク下部12bとの後面には、液位表示部12sが設けられている。液位表示部12sは、リザーバタンク12に蓄えられる冷却液の許容される最低液位と最高液位とを示している。液位表示部12sには、一例として、リザーバタンク12に蓄えられる冷却液の許容される最低液位を示すライン及び「L」の文字と、最高液位を示すライン及び「F」の文字とが表示されている。
【0048】
図8に示すように、鞍乗型乗物1では、サイドカウル部10bの窓部10cを通じて、リザーバタンク12の液位表示部12sが外部に露出されるように、サイドカウル部10bとリザーバタンク12とが配置されている。一例として、液位表示部12sは、窓部10cの右斜め後方から窓部10cの内部を見ることで視認できる。
【0049】
図9は、
図1のリザーバタンク12が車体フレーム2に保持位置Pで保持されたときのリザーバタンク12の正面図である。一例として、ラジエータ11又はリザーバタンク12をメンテナンスする場合、第1取付部12fが前記ステー部材から脱離されると共に第2取付部12gがタンク取付部13bから脱離される。リザーバタンク12は、その前後方向が、鞍乗型乗物1の車体の前後方向と直交させられ、第2取付部12gの第2係合部12iが、車幅方向にプレート部材13の第1係合部13aに差し込まれる。これにより、第2係合部12iが第1係合部13aと係合させられ、リザーバタンク12がラジエータキャップ15から離隔されて車体フレーム2の予め定められた保持位置Pで車体フレーム2に保持される。
【0050】
保持位置Pは、鞍乗型乗物1の第1係合部13aが配置された位置である。保持位置Pは、リザーバタンク12及びラジエータ11の間で冷却液が流通可能な状態で鞍乗型乗物1の車体が垂直方向に立てられ、保持位置Pでリザーバタンク12が車体フレーム2に保持されたときにおいて、リザーバタンク12からラジエータ11に向かう方向への冷却液の流通が規制される位置に設定されている。このようにリザーバタンク12が保持位置Pで車体フレーム2に保持されることで、ラジエータキャップ15がリザーバタンク12に覆われなくなり、メンテナンス作業者がラジエータキャップ15を容易に操作できるようになる。
【0051】
以上に説明したように、鞍乗型乗物1では、タンク上部12aでラジエータキャップ15を覆うことにより、リザーバタンク12でラジエータキャップ15の開閉操作をしにくくしながら、ラジエータ11の右側の側部11cに沿ってタンク上部12aの右側から下方にタンク下部12bを延ばすことで、ラジエータ11の右側の側部11cよりも車幅方向外側に向けてリザーバタンク12の寸法が大きくなるのを防止できる。これにより、リザーバタンク12を配置する配置スペースの効率を向上させて、リザーバタンク12の必要容量を確保し易くすることができる。
【0052】
また、タンク下部12bが、ラジエータ11の右側の側部11cに沿ってタンク上部12aの右側から下方に延びているので、リザーバタンク12の必要容量をタンク下部12bで確保し易くすることができると共に、タンク上部12aの上端部12jの高さ位置を下げて、リザーバタンク12を前記搭乗者等から遠ざけることができる。これにより、前記搭乗者から見た鞍乗型乗物1の美観を向上できると共に、鞍乗型乗物1にカウル10が装着されている場合には、上端部12jとカウル10との間の車内スペースを広く確保してタンク上部12aの上方からリザーバタンクキャップ20を操作し易くすることができ、リザーバタンク12をメンテナンスし易くすることができる。
【0053】
また、上下方向の寸法が車幅方向の寸法よりも大きくなるようにリザーバタンク12が形成されているので、リザーバタンク12を配置する配置スペースの効率を向上させて、リザーバタンク12の必要容量を上下方向に確保し易くしながら、リザーバタンク12により鞍乗型乗物1の車幅方向の寸法が増大するのを抑制できる。
【0054】
また、リザーバタンク12において、タンク上部12aの水平断面を上方から下方に移動させたときに水平断面内のタンク上部12aの前部及び後部が一つに統合されるように形成された窪み部12kに上側排出口12mを設けることにより、リザーバタンク12の内部の冷却液が不用意に上側排出口12mから排出されるのを防止できる。これにより、リザーバタンク12の内部の冷却液を良好に保持できる。
【0055】
また、第2前側タンク部12nが、熱交換部11dよりも右側に位置する右側貯留部11eの前部を覆っているので、熱交換部11dがタンク下部12bで覆われて熱交換率が低下するのを防止できると共に、リザーバタンク12を配置する配置スペースの効率を向上させてタンク下部12bの容量を増大させ、リザーバタンク12の必要容量を更に確保し易くすることができる。また、第2前側タンク部12nが、熱交換部11dよりも右側において右側貯留部11eの前方に延びているので、第2前側タンク部12nで走行風を熱交換部11dに向けて効率よく導風できる。
【0056】
また、後側タンク部12eが、右側貯留部11eの後方に延びているので、リザーバタンク12を配置する配置スペースの効率を向上させつつリザーバタンク12の必要容量を更に確保し易くすることができると共に、後側タンク部12eで走行風をラジエータ11の後方に向けて整流させながら導風できる。
【0057】
また、リザーバタンク12では、チューブ19の一端19aを案内部材12oでリザーバタンク12の下端部12pまで良好に案内して下端部12pの下側排出口12rに接続できると共に、案内部材12oを用いてチューブ19をリザーバタンク12で保持することにより、鞍乗型乗物1の加減速時のチューブ19の振動を抑制できる。
【0058】
また、鞍乗型乗物1では、保持位置Pでリザーバタンク12が車体フレーム2に保持されたときには、リザーバタンク12からラジエータ11に向かう方向への冷却液の流通を規制できる。このため、ラジエータ11のメンテナンス時等において、ラジエータ11の内部の冷却液が開口11aから漏れ出すのを良好に防止しながらリザーバタンク12を車体フレーム2で保持でき、メンテナンス作業を向上できる。
【0059】
また、リザーバタンク12は、通常時には、その前後方向が鞍乗型乗物1の前後方向に沿った状態で、第1取付部12fと第2取付部12gとにより車体に取り付けられているので、第2係合部12iが、車体の車幅方向外側に突出するのを防止しつつ、リザーバタンク12を配置する配置スペースの効率を向上できる。
【0060】
また、リザーバタンク12は、メンテナンス時には、第1取付部12fと第2取付部12gとを車体フレーム2から取り外して、第2係合部12iを第1係合部13aに脱着可能に係合させるだけで、メンテナンスに適した方向にリザーバタンク12の前後方向を合わせながら保持位置Pにおいて車体フレーム2で容易に保持されるので、メンテナンス作業の効率を向上できる。
【0061】
また、鞍乗型乗物1では、リザーバタンク12が、内部の冷却液の液面を視認可能な材料で形成されると共に、サイドカウル部10bの窓部10cを通じてリザーバタンク12の外部からリザーバタンク12の内部の冷却液の液面を視認できるように、カウル10及びリザーバタンク12が配置されているので、カウル10の車幅方向内側にリザーバタンク12を効率よく配置できると共に、カウル10を取り外さなくても窓部10cを通じてリザーバタンク12の内部の冷却液の液量を確認できる。
【0062】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、その構成を変更、追加、又は削除できる。また、鞍乗型乗物は、当然ながら自動二輪車に限定されず、その他の各種の乗物、例えば、三輪車、小型滑走艇(PWC:Personal Water Craft)、スノーモービル、及びATV(全地形走行車)等のいずれかでもよい。