(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記最上コート層の排ガス流動方向の全体長を100として、前記最上コート層上流部の前記排ガス流動方向に沿う長さと、前記最上コート層下流部の前記排ガス流動方向に沿う長さとの比率(上流部/下流部)は20/80〜80/20である、請求項1から5までの何れか一つに記載された排ガス浄化用触媒。
前記最下コート層の排ガス流動方向の全体長を100として、前記最下コート層上流部の前記排ガス流動方向に沿う長さと、前記最下コート層下流部の前記排ガス流動方向に沿う長さとの比率(上流部/下流部)は25/75〜80/20である、請求項1から6までの何れか一つに記載された排ガス浄化用触媒。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明する。以下の図面において、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は省略または簡略化することがある。また、各図における寸法関係(長さ、幅、厚み等)は、実際の寸法関係を必ずしも反映するものではない。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術知識とに基づいて実施することができる。
【0023】
先ず、本発明の典型的な一実施形態に係る排ガス浄化用触媒7が設けられた排ガス浄化装置1について説明する。
図1は、本実施形態に係る排ガス浄化装置1を模式的に示す図である。
図1に示すように、排ガス浄化装置1は、内燃機関2の排気系に設けられている。
【0024】
本実施形態に係る内燃機関(エンジン)2には、酸素と燃料ガスとを含む混合気が供給される。内燃機関2は、この混合気を燃焼させ、燃焼エネルギーを力学的エネルギーに変換する。このときに燃焼された混合気は排ガスとなって排気系に排出される。
図1に示す構成の内燃機関2は、自動車のガソリンエンジンを主体として構成されている。ここで開示される排ガス浄化用触媒7は、特に自動車のうちアイドリングストップ機能付きの乗用車(アイドリングストップ車)やハイブリッド車のようなエコカーの内燃機関2の下流に搭載される。この種の車両は、走行中(および一時停止中)に頻繁にエンジンが停止するため、本発明の実施に好適である。
【0025】
次に、内燃機関2の排気系について説明する。内燃機関2を排気系に連通させる排気ポート(図示せず)には、エキゾーストマニホールド3が接続されている。エキゾーストマニホールド3は、排ガスが流通する排気管4に接続されている。ここでは、エキゾーストマニホールド3と排気管4とによって、本実施形態の排気通路が形成されている。なお、図中の矢印は、排ガスの流通方向を示している。
【0026】
排ガス浄化装置1は、内燃機関2から排出された排ガスに含まれる有害成分(例えば、一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)、窒素酸化物(NOx))を浄化する。ここでは、排ガス浄化装置1は、ECU5と、排ガス浄化用触媒7とを備えている。
【0027】
ECU5は、内燃機関2と排ガス浄化装置1との間の制御を行うエンジンコントロールユニットである。ECU5は、一般的な制御装置と同様にデジタルコンピュータおよびその他の電子機器を構成要素として含んでいる。ここでは、ECU5には、入力ポート(図示せず)が設けられており、内燃機関2や排ガス浄化装置1の各部位に設置されているセンサ(例えば圧力センサ8)と電気的に接続されている。このことによって、各々のセンサで検知した情報が上記入力ポートを介して電気信号としてECU5に伝達される。また、ECU5には出力ポート(図示せず)が設けられている。ECU5は、該出力ポートを介して内燃機関2および排ガス浄化装置1の各部位に接続され、制御信号を送信することによって各部位の稼働を制御している。
【0028】
次に、ここで提案される排ガス浄化用触媒7について詳しく説明する。排ガス浄化用触媒7は、内燃機関2の排気通路に配置され、内燃機関2から排出される排気ガスを浄化する。排ガス浄化用触媒7は、排気ガスが流通する排気管4に設けられている。具体的には、排ガス浄化用触媒7は、
図1に示すように、排気管4の下流側に設けられている。
図2は、排ガス浄化用触媒7の基材10を模式的に示す斜視図である。
図3は、排ガス浄化用触媒7の断面構成を拡大し、模式的に示した図である。
図2および
図3に示すように、排ガス浄化用触媒7は、基材10と、触媒コート層30とを備える。
【0029】
<基材10>
図2に示すように、基材10は、多孔質基材である。基材10としては、従来この種の用途に用いられる種々の素材および形態のものを採用することができる。基材10は、多孔質構造を有した耐熱性素材で構成されていると好ましい。かかる耐熱性素材としては、コージェライト、炭化ケイ素(シリコンカーバイト:SiC)、チタン酸アルミニウム、窒素ケイ素、ステンレス鋼等の耐熱性金属やその合金等が挙げられる。ここでは、一例として外形が円筒形状であり、規則的に配列するセル(空間部)12とセル12間を隔離するコージェライト製の隔壁16とからなるハニカム構造の基材10が例示されている。ただし、基材10全体の外形については、特に限定されず、楕円筒形状、多角筒形状等を採用してもよい。
【0030】
基材10の容量(セルの総体積、全体の嵩容積)は、通常0.1L以上(好ましくは0.5L以上)であり、例えば5L以下(好ましくは3L以下、より好ましくは2L以下、例えば1L以下)であるとよい。また、基材10の延伸方向の全長(排ガス流動方向の全長)は、通常10mm〜500mm(典型的には50mm〜300mm、例えば100mm〜200mm)程度とすることができる。
【0031】
<触媒コート層30>
触媒コート層30は、基材10上に形成される。
図3に示す例では、触媒コート層30は、隣接するセル12(
図2参照)間を仕切る隔壁16上に形成されている。触媒コート層30は、担体と該担体に担持されている貴金属触媒とを有する。内燃機関2から排出された排ガスは、触媒コート層30に接触することによって有害成分が浄化される。例えば、排ガスに含まれるCOやHCは、触媒コート層30によって酸化され、水(H
2O)や二酸化炭素(CO
2)等に変換(浄化)され得る。また、NOxは、触媒コート層30によって還元され、窒素(N
2)に変換(浄化)され得る。
【0032】
触媒コート層30は、担体として、少なくとも一部にCeO
2成分を含むOSC材(酸素吸放出材)を備えている。CeO
2成分は、酸素吸放出能をもつため、排ガスの空燃比を安定に維持することができる。なお、CeO
2成分を含むOSC材は、特に限定されない。例えばセリア単独であっても良いし、固溶体としてCeO
2成分を含むセリア−ジルコニア複合酸化物(CZ複合酸化物)であっても良い。物理的(機械的)な特性を向上する観点からは、CZ複合酸化物からなるOSC材が好ましい。また、担体の形状(外形)は特に限定されないが、比表面積が大きくなるような形状を有しているとより好ましい。例えば、上記担体の比表面積(BET法により測定される比表面積。以下同じ。)は、20m
2/g〜100m
2/gが好ましく、40m
2/g〜80m
2/gがより好ましい。このような比表面積の担体を実現するために好適な形状としては、粉末状(粒子状)が挙げられる。より好適な比表面積を有する担体を実現するためには、例えば、粉末状のCZ複合酸化物の平均粒径(例えばSEMまたはTEM観察に基づく一次粒子の平均粒径)が、5nm〜20nm、好ましくは7nm〜12nmであるとよい。上記粒子の平均粒径が大きすぎる(または比表面積が小さすぎる)場合は、担体に貴金属触媒を担持させる際に貴金属の分散性が低下する傾向があり、触媒の浄化性能が低下することがあり得る。一方、上記粒子の粒径が小さすぎる(または比表面積が大きすぎる)場合は、上記担体自体の耐熱性が低下し、触媒の耐熱特性が低下することがあり得る。
【0033】
触媒コート層30は、担体として、CeO
2成分を含むOSC材(例えばCZ複合酸化物)と併せて他の無機化合物を有していてもよい。他の無機化合物としては、比表面積が比較的大きなものであることが好ましい。好適例として、アルミナ(Al
2O
3)、ジルコニア(ZrO
2)、シリカ(SiO
2)、チタニア(TiO
2)が挙げられる。担体粒子は、耐熱性や構造安定性の観点から、比表面積が20m
2/g〜200m
2/g程度であるとよい。また、担体粒子の平均粒径(例えばSEMまたはTEM観察に基づく一次粒子の平均粒径)は、典型的には1nm〜500nm(例えば10nm〜200nm)程度であるとよい。
【0034】
また、触媒コート層30の担体には、副成分として他の材料が添加されていてもよい。上記担体に添加し得る物質としては、ランタン(La)、イットリウム(Y)等の希土類元素、カルシウム等のアルカリ土類元素、その他遷移金属元素等が挙げられる。上記の中でも、ランタン、イットリウム等の希土類元素は、触媒機能を阻害せずに高温における比表面積を向上できるため、安定化剤として好適である。
【0035】
触媒コート層30の担体に担持される貴金属触媒としては、白金(Pt)、パラジウム(Pd)およびロジウム(Rh)のうちの少なくとも一種が好ましい。例えばPdおよびRhを含む三元触媒が好ましい。なお、触媒コート層30は、かかる三元触媒を構成するPt、PdおよびRh以外の貴金属触媒を含んでいてもよい。Pt、Pd、Rh以外の貴金属としては、例えば、ルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)等が挙げられる。
【0036】
触媒コート層30は、厚み方向に2層以上の相互に構成が異なる複数のコート層によって構成されている。換言すると、触媒コート層30は、厚み方向に複数の層に分割されている。本実施形態において、触媒コート層30は、最下コート層40と最上コート層50の2層で構成されている。
【0037】
<最下コート層40>
最下コート層40は、複数のコート層のうちで最も基材10(典型的には、隔壁16)に近接する層(最下層)である。特に限定するものではないが、最下コート層40の平均厚みは、20μm〜500μm程度が適当であり、例えば50μm〜200μm程度であることが好ましい。最下コート層40は、最下コート層上流部41と、最下コート層下流部42とを有する。
【0038】
最下コート層上流部41は、最下コート層40の排ガス流動方向に沿う全体長に対して、排ガスの入口側の端部から少なくとも20%を包含する。好ましくは、最下コート層上流部41は、最下コート層40の上記流動方向に沿う全体長に対して、排ガスの入口側の端部から25%〜80%を占めており、例えば、50%±10%程度であり得る。
最下コート層上流部41は、CeO
2成分を包含するOSC材を含む。
【0039】
最下コート層下流部42は、最下コート層40の排ガス流動方向に沿う全体長に対して、排ガスの出口側の端部から少なくとも20%を包含する。好ましくは、最下コート層下流部42は、最下コート層40の上記流動方向に沿う全体長に対して、排ガスの出口側の端部から20%〜75%を占めており、例えば、50%±10%程度であり得る。
最下コート層40の排ガス流動方向の全体長を100として、最下コート層上流部41の該方向に沿う長さと最下コート層下流部42の該方向に沿う長さとの比率(上流部/下流部)は25/75〜80/20であることが好ましい。
【0040】
最下コート層下流部42はCeO
2成分が含まないことが好ましく、あるいはCeO
2成分を含む場合であってもその含有量が最下コート層上流部41に比べて顕著に少ないことが好ましい。例えば、最下コート層上流部41のCeO
2成分含有量を1としたときに、最下コート層下流部42のCeO
2成分含有量が0.5未満、典型的には0.3未満、例えば0〜0.29であるとよい。このことにより、エンジン再始動時のNOx還元(浄化)能力をより高めることができる。したがって、本発明の効果をより顕著に発揮することができる。
【0041】
最下コート層40(最下コート層上流部41および最下コート層下流部42)の担体に担持される貴金属触媒は特に限定されない。例えば、三元触媒を構成するPd、Pt、Rh等を担持することができる。ここでは、貴金属触媒として、Rhのような還元活性の高い触媒を含むことが好ましい。触媒容積1Lあたりの最下コート層40における貴金属触媒(例えばRh)の含有量は、概ね0.001g/L〜2g/L(典型的には0.01g/L〜1g/L、例えば、0.1g/L〜0.5g/L)であるとよい。
【0042】
<最上コート層50>
最上コート層50は、複数のコート層のうちの最表部に位置する最上層である。本実施形態のような2層構造の触媒コート層30の場合、最上コート層50は、隔壁16上に形成された最下コート層40上に形成される。特に限定するものではないが、最上コート層50の平均厚みは、20μm〜500μm程度が適当であり、例えば50μm〜200μm程度であることが好ましい。最上コート層50は、最上コート層上流部51と、最上コート層下流部52とを有する。
【0043】
最上コート層上流部51は、最上コート層50の排ガス流動方向に沿う全体長に対して、排ガスの入口側の端部から少なくとも20%を包含する。好ましくは、最上コート層上流部51は、最上コート層50の上記流動方向に沿う全体長に対して、排ガスの入口側の端部から20%〜80%を占めており、例えば、50%±10%であり得る。
【0044】
最上コート層上流部51はCeO
2成分を含まないことが好ましく、あるいはCeO
2成分を含む場合であってもその含有量が最上コート層下流部52に比べて顕著に少ないことが好ましい。例えば、最上コート層下流部52のCeO
2成分含有量を1としたときに、最上コート層上流部51のCeO
2成分含有量が0.5未満、典型的には0.3未満、例えば0〜0.29であるとよい。このことにより、エンジン再始動時のNOx還元(浄化)能力をより高めることができる。したがって、本発明の効果をより顕著に発揮することができる。
【0045】
最上コート層下流部52は、最上コート層50の排ガス流動方向に沿う全体長に対して、排ガスの出口側の端部から少なくとも20%を包含する。好ましくは、最上コート層下流部52は、最上コート層50の上記流動方向に沿う全体長に対して、排ガスの出口側の端部から20%〜80%を占めており、例えば、50%±10%程度であり得る。
最上コート層50の排ガス流動方向の全体長を100として、最上コート層上流部51の該方向に沿う長さと最上コート層下流部52の該方向に沿う長さとの比率(上流部/下流部)は20/80〜80/20であることが好ましい。
最上コート層下流部51は、CeO
2成分を包含するOSC材を含む。
【0046】
最上コート層50(最上コート層上流部51および最上コート層下流部52)の担体に担持される貴金属触媒としては特に限定されない。例えば、三元触媒を構成するPd、Pt、Rh等を用いることができる。ここでは、貴金属触媒として、酸化活性の高いPdと、還元活性の高いRhとを含むことが好ましい。触媒容積1Lあたりの最上コート層50における貴金属触媒(例えばPd)の含有量は、概ね0.001g/L〜10g/L(典型的には0.01g/L〜5g/L)であるとよい。このとき、触媒容積1Lあたりの最上コート層上流部51および最上コート層下流部52における貴金属触媒(例えばPd)の含有量は、それぞれ、概ね0.001g/L〜5g/L(好ましくは、0.005g/L〜2.5g/L)であるとよい。また、Pdのような酸化活性の高い触媒に加えてRh等の還元活性の高い触媒を含む場合、触媒容積1Lあたりの最上コート層50における当該還元触媒(例えばRh)の含有量は、概ね0.001g/L〜5g/L(典型的には0.01g/L〜2.5g/L)であるとよい。
【0047】
<CeO
2成分含有量>
次に、触媒コート層30におけるOSC材としてのCeO
2成分の含有量について説明する。触媒容積1Lあたりの触媒コート層30におけるCeO
2成分含有量は、好ましくは10g/L〜40g/L程度である。このことによって、触媒機能を高いレベルで発揮することができる。また、貴金属触媒のシンタリングや粒成長を抑制して、より長期間にわたって優れた触媒性能を発揮することができる。更に、コスト低減や省資源の点からも好ましい。
上述したように、本発明では最上コート層上流部51におけるCeO
2成分含有量が、最上コート層下流部52におけるCeO
2成分含有量よりも少ない。また、最下コート層下流部42におけるCeO
2成分含有量は、最下コート層上流部41におけるCeO
2成分含有量よりも少ない。一例では、最上コート層上流部51におけるCeO
2成分含有量は、最下コート層40の最下コート層上流部41におけるCeO
2成分含有量よりも少ない。他の一例では、最下コート層下流部42におけるCeO
2成分含有量は、最上コート層下流部52におけるCeO
2成分含有量よりも少ない。これらを換言すると、最上コート層下流部52および最下コート層上流部41におけるそれぞれのCeO
2成分含有量は、最上コート層上流部51および最下コート層下流部42におけるそれぞれのCeO
2成分含有量よりも多くなり得る。
【0048】
触媒容積1Lあたりの最上コート層上流部51におけるCeO
2成分含有量、および、最下コート層下流部42におけるCeO
2成分含有量は、それぞれ0g/L〜2g/L程度が好ましい。最上コート層上流部51および最下コート層下流部42におけるそれぞれのCeO
2成分含有量は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。また、触媒容積1Lあたりの最上コート層下流部52におけるCeO
2成分含有量、および、最下コート層上流部41におけるCeO
2成分含有量は、好ましくは4g/L以上である。なお、触媒容積1Lあたりの最上コート層下流部52および最下コート層上流部41における各CeO
2成分含有量の上限値は特に限定されないが、それぞれ20g/L以下(例えばそれぞれ10g/L以下)であることが好ましい。ただし、最上コート層下流部52および最下コート層上流部41におけるそれぞれのCeO
2成分含有量は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0049】
ここで開示される排ガス浄化用触媒7が搭載されたエコカーでは、エンジン再始動時に排気通路内がリーン雰囲気となる。最上コート層上流部51には、CeO
2成分が含まれていないか若しくはその含有量(ここでは、触媒容積1Lあたり0g/L〜2g/L)が最上コート層下流部52におけるCeO
2成分含有量(ここでは、触媒容積1Lあたり4g/L以上)より少ない。このことによって、エンジン再始動時において、最上コート層上流部51のCeO
2成分に吸蔵される酸素の量が少なくなる。その結果、当該触媒内を迅速にストイキ雰囲気に変えることができる。したがって、エコカーにおけるエンジン再始動時であっても、最上コート層上流部51において、NOxが外部に排出されるのを高度に抑制することができる。
【0050】
その一方において、最上コート層下流部52におけるCeO
2成分含有量は、最上コート層上流部51におけるCeO
2成分含有量よりも多く、最下コート層上流部41におけるCeO
2成分含有量は、最下コート層下流部42におけるCeO
2成分含有量よりも多い。このため、最上コート層下流部52および最下コート層上流部41に含まれるCeO
2成分の酸素放出能によって、通常走行時には、触媒内に導入される排ガスをストイキ雰囲気に維持することができる。つまり、最上コート層下流部52および最下コート層上流部41において、通常走行時のNOx還元(浄化)性能を維持することができる。
【0051】
また、最下コート層下流部42には、CeO
2成分が含まれていないか若しくはその含有量が、最下コート層上流部41におけるCeO
2成分含有量よりも少ない。このため、最下コート層下流部42において、COの吸着抑制を向上させると共に、HCに対する選択反応性を高めることができる。その結果、最下コート層下流部42において、HC浄化性能を向上させることができる。
以上のことから、ここで開示される排ガス浄化用触媒によれば、通常走行時の触媒能力を維持しつつ、エンジン再始動時のNOx還元(浄化)能力を向上することができる。
【0052】
以上、本発明の好適な一実施形態に係る排ガス浄化用触媒7について説明した。しかし、本発明に係る排ガス浄化用触媒は、上記形態に限られない。例えば、他の実施形態として、
図4に示すような排ガス浄化用触媒7Aであってもよい。
図4に示すように、本実施形態に係る排ガス浄化用触媒7Aは、3層構造(若しくはそれ以上の層)の(若しくはそれ以上の多層構造の)触媒コート層30Aを有する。
【0053】
すなわち、
図4に示すように、本実施形態に係る触媒コート層30Aは、最下コート層40と、最上コート層50と、それらの間に形成された中間コート層60とを備える。
【0054】
中間コート層60は、好ましくは少なくともCeO
2成分を有するOSC材を含む。CeO
2成分は、例えばCZ複合酸化物として存在するものが好ましい。なお、中間コート層60におけるCeO
2成分含有量は特に限定されないが、触媒容積1Lあたりの触媒コート層30AのCeO
2成分含有量、すなわち、最下コート層40と最上コート層50と中間コート層60とのCeO
2成分含有量の合計が、10g/L〜40g/L程度であることが好ましい。
【0055】
中間コート層60に担持される触媒としては特に限定されないが、例えば三元触媒を構成するPt、Pd、Rh等が挙げられる。
【0056】
次に、本発明に関する試験例について説明する。ただし、本発明にかかる排ガス浄化用触媒は、以下の試験例に示すものに限定することを意図したものではない。ここでは、試験例として、実施例1〜12および比較例1〜11に係る排ガス浄化用触媒の触媒サンプルを用意している。以下、各実施例および各比較例を説明する。
【0057】
<実施例1>
実施例1の排ガス浄化用触媒は2層構造である。
先ず、基材として、セル数900cpsi(cells per square inch)、容積(セル通路の容積も含めた全体の触媒容積をいう)1L、全長100mmの基材を準備した。
次に、担体であり、La
2O
3およびNd
2O
3と混合されたCZ複合酸化物(CeO
2:ZrO
2:La
2O
3:Nd
2O
3=28:65:2:5(wt%))を25g(CeO
2成分含有量:7g)と、アルミナを25gと、Rh含有量が0.2gであるロジウム硝酸塩水溶液とを混合し、最下コート層上流部用スラリーを調製した。
次に、担体であるアルミナを50gと、Rh含有量が0.2gであるロジウム硝酸塩水溶液とを混合し、最下コート層下流部用スラリーを調製した。
次に、担体であるアルミナを50gと、Pd含有量が1gであるパラジウム硝酸塩水溶液と、Rh含有量が0.05gであるロジウム硝酸塩水溶液とを混合し、最上コート層上流部用スラリーを調製した。
次に、担体であり、La
2O
3およびNd
2O
3と混合されたCZ複合酸化物(CeO
2:ZrO
2:La
2O
3:Nd
2O
3=28:65:2:5(wt%))を25g(CeO
2成分含有量:7g)と、アルミナを25gと、Pd含有量が1gであるパラジウム硝酸塩水溶液と、Rh含有量が0.05gであるロジウム硝酸塩水溶液とを混合し、最上コート層下流部用スラリーを調製した。
【0058】
その後、上記最下コート層上流部用スラリーを、基材の排ガス入口側端面から排ガス出口側端面に向かって50mmまでの範囲に全量塗布し、250℃の温度条件下で1時間乾燥させた後、500℃の温度条件下で1時間焼成することによって、基材に最下コート層上流部を形成した。
次に、上記最下コート層下流部用スラリーを、基材の排ガス出口側端面から排ガス入口側端面に向かって50mmまでの範囲に全量塗布し、250℃の温度条件下で1時間乾燥させた後、500℃の温度条件下で1時間焼成することによって、基材に最下コート層下流部を形成した。
次に、上記最上コート層上流部用スラリーを、基材の排ガス入口側端面から排ガス出口側端面に向かって50mmまでの範囲に全量塗布し、250℃の温度条件下で1時間乾燥させた後、500℃の温度条件下で1時間焼成することによって、基材に最上コート層上流部を形成した。
そして、上記最上コート層下流部用スラリーを、基材の排ガス出口側端面から排ガス入口側端面に向かって50mmまでの範囲に全量塗布し、250℃の温度条件下で1時間乾燥させた後、500℃の温度条件下で1時間焼成することによって、基材に最上コート層下流部を形成した。
以上のようにして得られた排ガス浄化用触媒を実施例1の触媒サンプルとした。
【0059】
<実施例2>
実施例1における排ガス浄化用触媒の作製工程において、以下のこと以外は実施例1と同様に作製した。そして、該作製により得られた排ガス浄化用触媒を実施例2の触媒サンプルとした。
・最下コート層下流部用スラリーを調製する工程において、担体であり、La
2O
3およびY
2O
3と混合されたCZ複合酸化物(CeO
2:ZrO
2:La
2O
3:Y
2O
3=4:90:3:3(wt%))を25g(CeO
2成分含有量:1g)と、アルミナを25gと、Rh含有量が0.2gであるロジウム硝酸塩水溶液とを混合したものを最下コート層下流部用スラリーとした。
・最上コート層上流部用スラリーを調製する工程において、担体であり、La
2O
3およびY
2O
3と混合されたCZ複合酸化物(CeO
2:ZrO
2:La
2O
3:Y
2O
3=4:90:3:3(wt%))を25g(CeO
2成分含有量:1g)と、アルミナを25gと、Pd含有量が1gであるパラジウム硝酸塩水溶液と、Rh含有量が0.05gであるロジウム硝酸塩水溶液とを混合したものを最上コート層上流部用スラリーとした。
【0060】
<実施例3>
実施例1における排ガス浄化用触媒の作製工程において、以下のこと以外は実施例1と同様に作製した。そして、該作製により得られた排ガス浄化用触媒を実施例3の触媒サンプルとした。
・最下コート層下流部用スラリーを調製する工程において、担体であり、La
2O
3およびY
2O
3と混合されたCZ複合酸化物(CeO
2:ZrO
2:La
2O
3:Y
2O
3=8:86:3:3(wt%))を25g(CeO
2成分含有量:2g)と、アルミナを25gと、Rh含有量が0.2gであるロジウム硝酸塩水溶液とを混合したものを最下コート層下流部用スラリーとした。
・最上コート層上流部用スラリーを調製する工程において、担体であり、La
2O
3およびY
2O
3と混合されたCZ複合酸化物(CeO
2:ZrO
2:La
2O
3:Y
2O
3=8:86:3:3(wt%))を25g(CeO
2成分含有量:2g)と、アルミナを25gと、Pd含有量が1gであるパラジウム硝酸塩水溶液と、Rh含有量が0.05gであるロジウム硝酸塩水溶液とを混合したものを最上コート層上流部用スラリーとした。
【0061】
<実施例4>
実施例2における排ガス浄化用触媒の作製工程において、以下のこと以外は実施例2と同様に作製した。そして、該作製により得られた排ガス浄化用触媒を実施例4の触媒サンプルとした。
・最下コート層上流部用スラリーを調製する工程において、担体であり、La
2O
3およびY
2O
3と混合されたCZ複合酸化物(CeO
2:ZrO
2:La
2O
3:Y
2O
3=16:78:3:3(wt%))を25g(CeO
2成分含有量:4g)と、アルミナを25gと、Rh含有量が0.2gであるロジウム硝酸塩水溶液とを混合したものを最下コート層上流部用スラリーとした。
・最上コート層下流部用スラリーを調製する工程において、担体であり、La
2O
3およびY
2O
3と混合されたCZ複合酸化物(CeO
2:ZrO
2:La
2O
3:Y
2O
3=16:78:3:3(wt%))を25g(CeO
2成分含有量:4g)と、アルミナを25gと、Pd含有量が1gであるパラジウム硝酸塩水溶液と、Rh含有量が0.05gであるロジウム硝酸塩水溶液とを混合したものを最上コート層下流部用スラリーとした。
【0062】
<実施例5>
実施例2における排ガス浄化用触媒の作製工程において、以下のこと以外は実施例2と同様に作製した。そして、該作製により得られた排ガス浄化用触媒を実施例5の触媒サンプルとした。
・最下コート層上流部用スラリーを調製する工程において、担体であり、La
2O
3およびNd
2O
3と混合されたCZ複合酸化物(CeO
2:ZrO
2:La
2O
3:Nd
2O
3=44:49:2:5(wt%))を25g(CeO
2成分含有量:11g)と、アルミナを25gと、Rh含有量が0.2gであるロジウム硝酸塩水溶液とを混合したものを最下コート層上流部用スラリーとした。
・最上コート層下流部用スラリーを調製する工程において、担体であり、La
2O
3およびNd
2O
3と混合されたCZ複合酸化物(CeO
2:ZrO
2:La
2O
3:Nd
2O
3=44:49:2:5(wt%))を25g(CeO
2成分含有量:11g)と、アルミナを25gと、Pd含有量が1gであるパラジウム硝酸塩水溶液と、Rh含有量が0.05gであるロジウム硝酸塩水溶液とを混合したものを最上コート層下流部用スラリーとした。
【0063】
<実施例6>
実施例2における排ガス浄化用触媒の作製工程において、以下のこと以外は実施例2と同様に作製した。そして、該作製により得られた排ガス浄化用触媒を実施例6の触媒サンプルとした。
・最下コート層上流部用スラリーを調製する工程において、担体であり、La
2O
3およびNd
2O
3と混合されたCZ複合酸化物(CeO
2:ZrO
2:La
2O
3:Nd
2O
3=64:29:2:5(wt%))を25g(CeO
2成分含有量:16g)と、アルミナを25gと、Rh含有量が0.2gであるロジウム硝酸塩水溶液とを混合したものを最下コート層上流部用スラリーとした。
・最上コート層下流部用スラリーを調製する工程において、担体であり、La
2O
3およびNd
2O
3と混合されたCZ複合酸化物(CeO
2:ZrO
2:La
2O
3:Nd
2O
3=64:29:2:5(wt%))を25g(CeO
2成分含有量:16g)と、アルミナを25gと、Pd含有量が1gであるパラジウム硝酸塩水溶液と、Rh含有量が0.05gであるロジウム硝酸塩水溶液とを混合したものを最上コート層下流部用スラリーとした。
【0064】
<実施例7>
実施例1における排ガス浄化用触媒の作製工程において、以下のこと以外は実施例1と同様に作製した。そして、該作製により得られた排ガス浄化用触媒を実施例7の触媒サンプルとした。
・最下コート層上流部用スラリーを調製する工程において、担体であり、La
2O
3およびNd
2O
3と混合されたCZ複合酸化物(CeO
2:ZrO
2:La
2O
3:Nd
2O
3=80:13:2:5(wt%))を25g(CeO
2成分含有量:20g)と、アルミナを25gと、Rh含有量が0.2gであるロジウム硝酸塩水溶液とを混合したものを最下コート層上流部用スラリーとした。
・最上コート層下流部用スラリーを調製する工程において、担体であり、La
2O
3およびNd
2O
3と混合されたCZ複合酸化物(CeO
2:ZrO
2:La
2O
3:Nd
2O
3=80:13:2:5(wt%))を25g(CeO
2成分含有量:20g)と、アルミナを25gと、Pd含有量が1gであるパラジウム硝酸塩水溶液と、Rh含有量が0.05gであるロジウム硝酸塩水溶液とを混合したものを最上コート層下流部用スラリーとした。
【0065】
<実施例8>
実施例2における排ガス浄化用触媒の作製工程において、以下のこと以外は実施例2と同様に作製した。そして、該作製により得られた排ガス浄化用触媒を実施例8の触媒サンプルとした。
・最下コート層上流部用スラリーを、基材の排ガス入口側端面から排ガス出口側端面に向かって80mmまでの範囲に全量塗布した。
・最下コート層下流部用スラリーを、基材の排ガス出口側端面から排ガス入口側端面に向かって20mmまでの範囲に全量塗布した。
・最上コート層上流部用スラリーを、基材の排ガス入口側端面から排ガス出口側端面に向かって20mmまでの範囲に全量塗布した。
・最上コート層下流部用スラリーを、基材の排ガス出口側端面から排ガス入口側端面に向かって80mmまでの範囲に全量塗布した。
【0066】
<実施例9>
実施例2における排ガス浄化用触媒の作製工程において、以下のこと以外は実施例2と同様に作製した。そして、該作製により得られた排ガス浄化用触媒を実施例9の触媒サンプルとした。
・最下コート層上流部用スラリーを、基材の排ガス入口側端面から排ガス出口側端面に向かって25mmまでの範囲に全量塗布した。
・最下コート層下流部用スラリーを、基材の排ガス出口側端面から排ガス入口側端面に向かって75mmまでの範囲に全量塗布した。
・最上コート層上流部用スラリーを、基材の排ガス入口側端面から排ガス出口側端面に向かって80mmまでの範囲に全量塗布した。
・最上コート層下流部用スラリーを、基材の排ガス出口側端面から排ガス入口側端面に向かって20mmまでの範囲に全量塗布した。
【0067】
<実施例10>
実施例2における排ガス浄化用触媒の作製工程において、以下のこと以外は実施例2と同様に作製した。そして、該作製により得られた排ガス浄化用触媒を実施例10の触媒サンプルとした。
・最下コート層上流部用スラリーおよび最下コート層下流部用スラリーにおいて、ロジウム硝酸塩水溶液のRh含有量を0.25gとした。
・最上コート層上流部用スラリーおよび最上コート層下流部用スラリーにおいて、ロジウム硝酸塩水溶液を混合しないようにした。
【0068】
<実施例11>
実施例2における排ガス浄化用触媒の作製工程において、以下のこと以外は実施例2と同様に作製した。そして、該作製により得られた排ガス浄化用触媒を実施例11の触媒サンプルとした。
・最下コート層上流部用スラリーおよび最下コート層下流部用スラリーにおいて、さらに、Pt含有量0.1gであるジニトロジアンミン白金水溶液を混合した。
・最上コート層上流部用スラリーおよび最上コート層下流部用スラリーにおいて、パラジウム硝酸塩水溶液のPd含有量を0.9gとした。
【0069】
<実施例12>
実施例12の排ガス浄化用触媒は、3層構造である。
先ず、基材として、実施例1と同様のコーディエライト製の基材を準備した。
次に、担体であり、La
2O
3およびNd
2O
3と混合されたCZ複合酸化物(CeO
2:ZrO
2:La
2O
3:Nd
2O
3=28:65:2:5(wt%))を25g(CeO
2成分含有量:7g)と、アルミナを25gと、Rh含有量が0.1gであるロジウム硝酸塩水溶液とを混合し、最下コート層上流部用スラリーを調製した。
次に、担体であり、La
2O
3およびY
2O
3と混合されたCZ複合酸化物(CeO
2:ZrO
2:La
2O
3:Y
2O
3=4:90:3:3(wt%))を25g(CeO
2成分含有量:1g)と、アルミナを25gと、Rh含有量が0.1gであるロジウム硝酸塩水溶液とを混合したものを最下コート層下流部用スラリーとした。
次に、担体であり、La
2O
3と混合されたCZ複合酸化物(CeO
2:ZrO
2:La
2O
3=5:90:5(wt%))を15g(CeO
2成分含有量:0.8g)と、アルミナを15gと、Rh含有量が0.1gであるロジウム硝酸塩水溶液とを混合し、中間コート層用スラリーを調製した。
次に、担体であり、La
2O
3およびY
2O
3と混合されたCZ複合酸化物(CeO
2:ZrO
2:La
2O
3:Y
2O
3=4:90:3:3(wt%))を25g(CeO
2成分含有量:1g)と、アルミナを25gと、Pd含有量が1gであるパラジウム硝酸塩水溶液と、Rh含有量が0.05gであるロジウム硝酸塩水溶液とを混合したものを最上コート層上流部用スラリーとした。
次に、担体であり、La
2O
3およびNd
2O
3と混合されたCZ複合酸化物(CeO
2:ZrO
2:La
2O
3:Nd
2O
3=28:65:2:5(wt%))を25g(CeO
2成分含有量:7g)と、アルミナを25gと、Pd含有量が1gであるパラジウム硝酸塩水溶液と、Rh含有量が0.05gであるロジウム硝酸塩水溶液とを混合し、最上コート層下流部用スラリーを調製した。
【0070】
その後、上記最下コート層上流部用スラリーを、基材の排ガス入口側端面から排ガス出口側端面に向かって50mmまでの範囲に全量塗布し、250℃の温度条件下で1時間乾燥させた後、500℃の温度条件下で1時間焼成することによって、基材に最下コート層上流部を形成した。
次に、上記最下コート層下流部用スラリーを、基材の排ガス出口側端面から排ガス入口側端面に向かって50mmまでの範囲に全量塗布し、250℃の温度条件下で1時間乾燥させた後、500℃の温度条件下で1時間焼成することによって、基材に最下コート層下流部を形成した。
次に、上記中間コート層用スラリーを、基材上に形成された最下コート層上流部および最下コート層下流部上の全体に全量塗布し、250℃の温度条件下で1時間乾燥させた後、500℃の温度条件下で1時間焼成することによって、基材に中間コート層を形成した。
次に、上記最上コート層上流部用スラリーを、基材の排ガス入口側端面から排ガス出口側端面に向かって50mmまでの範囲に全量塗布し、250℃の温度条件下で1時間乾燥させた後、500℃の温度条件下で1時間焼成することによって、基材に最上コート層上流部を形成した。
そして、上記最上コート層下流部用スラリーを、基材の排ガス出口側端面から排ガス入口側端面に向かって50mmまでの範囲に全量塗布し、250℃の温度条件下で1時間乾燥させた後、500℃の温度条件下で1時間焼成することによって、基材に最上コート層下流部を形成した。
以上のようにして得られた3層構造の排ガス浄化用触媒を実施例12の触媒サンプルとした。
【0071】
<比較例1>
実施例1における排ガス浄化用触媒の作製工程において、以下のこと以外は実施例1と同様に作製した。そして、該作製により得られた排ガス浄化用触媒を比較例1の触媒サンプルとした。
・最下コート層下流部用スラリーを調製する工程において、担体であり、La
2O
3およびY
2O
3と混合されたCZ複合酸化物(CeO
2:ZrO
2:La
2O
3:Y
2O
3=16:78:3:3(wt%))を25g(CeO
2成分含有量:4g)と、アルミナを25gと、Rh含有量が0.2gであるロジウム硝酸塩水溶液とを混合したものを最下コート層下流部用スラリーとした。
・最上コート層上流部用スラリーを調製する工程において、担体であり、La
2O
3およびY
2O
3と混合されたCZ複合酸化物(CeO
2:ZrO
2:La
2O
3:Y
2O
3=16:78:3:3(wt%))を25g(CeO
2成分含有量:4g)と、アルミナを25gと、Pd含有量が1gであるパラジウム硝酸塩水溶液と、Rh含有量が0.05gであるロジウム硝酸塩水溶液とを混合したものを最上コート層上流部用スラリーとした。
【0072】
<比較例2>
実施例2における排ガス浄化用触媒の作製工程において、以下のこと以外は実施例2と同様に作製した。そして、該作製により得られた排ガス浄化用触媒を比較例2の触媒サンプルとした。
・最下コート層上流部用スラリーを調製する工程において、実施例3における最下コート層下流部用スラリーを最下コート層上流部用スラリーとした。
・最上コート層下流部用スラリーを調製する工程において、実施例3における最上コート層上流部用スラリーを最上コート層下流部用スラリーとした。
【0073】
<比較例3>
実施例1における排ガス浄化用触媒の作製工程において、以下のこと以外は実施例1と同様に作製した。そして、該作製により得られた排ガス浄化用触媒を比較例3の触媒サンプルとした。
・最下コート層上流部用スラリーを調製する工程において、担体であり、La
2O
3およびNd
2O
3と混合されたCZ複合酸化物(CeO
2:ZrO
2:La
2O
3:Nd
2O
3=83:10:2:5(wt%))を30.1g(CeO
2成分含有量:25g)と、アルミナを19.9gと、Rh含有量が0.2gであるロジウム硝酸塩水溶液とを混合したものを最下コート層上流部用スラリーとした。
・最上コート層下流部用スラリーを調製する工程において、担体であり、La
2O
3およびNd
2O
3と混合されたCZ複合酸化物(CeO
2:ZrO
2:La
2O
3:Nd
2O
3=83:10:2:5(wt%))を30.1g(CeO
2成分含有量:25g)と、アルミナを19.9gと、Pd含有量が1gであるパラジウム硝酸塩水溶液と、Rh含有量が0.05gであるロジウム硝酸塩水溶液とを混合したものを最上コート層下流部用スラリーとした。
【0074】
<比較例4>
比較例1における排ガス浄化用触媒の作製工程において、以下のこと以外は比較例1と同様に作製した。そして、該作製により得られた排ガス浄化用触媒を比較例4の触媒サンプルとした。
・最下コート層上流部用スラリーを調製する工程において、実施例2における最下コート層下流部用スラリーを最下コート層上流部用スラリーとした。
・最上コート層下流部用スラリーを調製する工程において、実施例2における最上コート層上流部用スラリーを最上コート層下流部用スラリーとした。
【0075】
<比較例5>
実施例2における排ガス浄化用触媒の作製工程において、以下のこと以外は実施例2と同様に作製した。そして、該作製により得られた排ガス浄化用触媒を比較例5の触媒サンプルとした。
・最下コート層上流部用スラリーを、基材の排ガス入口側端面から排ガス出口側端面に向かって90mmまでの範囲に全量塗布した。
・最下コート層下流部用スラリーを、基材の排ガス出口側端面から排ガス入口側端面に向かって10mmまでの範囲に全量塗布した。
・最上コート層上流部用スラリーを、基材の排ガス入口側端面から排ガス出口側端面に向かって10mmまでの範囲に全量塗布した。
・最上コート層下流部用スラリーを、基材の排ガス出口側端面から排ガス入口側端面に向かって90mmまでの範囲に全量塗布した。
【0076】
<比較例6>
実施例2における排ガス浄化用触媒の作製工程において、以下のこと以外は実施例2と同様に作製した。そして、該作製により得られた排ガス浄化用触媒を比較例6の触媒サンプルとした。
・最下コート層上流部用スラリーを、基材の排ガス入口側端面から排ガス出口側端面に向かって15mmまでの範囲に全量塗布した。
・最下コート層下流部用スラリーを、基材の排ガス出口側端面から排ガス入口側端面に向かって85mmまでの範囲に全量塗布した。
・最上コート層上流部用スラリーを、基材の排ガス入口側端面から排ガス出口側端面に向かって90mmまでの範囲に全量塗布した。
・最上コート層下流部用スラリーを、基材の排ガス出口側端面から排ガス入口側端面に向かって10mmまでの範囲に全量塗布した。
【0077】
<比較例7>
比較例4における排ガス浄化用触媒の作製工程において、以下のこと以外は比較例4と同様に作製した。そして、該作製により得られた排ガス浄化用触媒を比較例7の触媒サンプルとした。
・最下コート層上流部用スラリーおよび最下コート層下流部用スラリーにおいて、ロジウム硝酸塩水溶液のRh含有量を0.25gとした。
・最上コート層上流部用スラリーおよび最上コート層下流部用スラリーにおいて、ロジウム硝酸塩水溶液を混合しないようにした。
【0078】
<比較例8>
比較例4における排ガス浄化用触媒の作製工程において、以下のこと以外は比較例4と同様に作製した。そして、該作製により得られた排ガス浄化用触媒を比較例8の触媒サンプルとした。
・最下コート層上流部用スラリーおよび最下コート層下流部用スラリーにおいて、さらに、Pt含有量0.1gであるジニトロジアンミン白金水溶液を混合した。
・最上コート層上流部用スラリーおよび最上コート層下流部用スラリーにおいて、パラジウム硝酸塩水溶液のPd含有量を0.9gとした。
【0079】
<比較例9>
比較例9の排ガス浄化用触媒は、3層構造である。比較例9では、実施例12における排ガス浄化用触媒の作製工程において、以下のこと以外は実施例12と同様に作製した。そして、該作製により得られた排ガス浄化用触媒を比較例9の触媒サンプルとした。
・最下コート層上流部用スラリーを調製する工程において、実施例12における最下コート層下流部用スラリーを最下コート層上流部用スラリーとした。
・最下コート層下流部用スラリーを調製する工程において、担体であり、La
2O
3およびY
2O
3と混合されたCZ複合酸化物(CeO
2:ZrO
2:La
2O
3:Y
2O
3=16:78:3:3(wt%))を25g(CeO
2成分含有量:4g)と、アルミナを25gと、Rh含有量が0.1gであるロジウム硝酸塩水溶液とを混合したものを最下コート層下流部用スラリーとした。
・最上コート層上流部用スラリーを調製する工程において、担体であり、La
2O
3およびY
2O
3と混合されたCZ複合酸化物(CeO
2:ZrO
2:La
2O
3:Y
2O
3=16:78:3:3(wt%))を25g(CeO
2成分含有量:4g)と、アルミナを25gと、Pd含有量が1gであるパラジウム硝酸塩水溶液と、Rh含有量が0.05gであるロジウム硝酸塩水溶液とを混合したものを最上コート層上流部用スラリーとした。
・最上コート層下流部用スラリーを調製する工程において、実施例12における最上コート層上流部用スラリーを最上コート層下流部用スラリーとした。
【0080】
<比較例10>
比較例10の排ガス浄化用触媒は、最上コート層上流部と最上コート層下流部でCeO
2成分含有量が同じである。比較例10では、実施例1における排ガス浄化用触媒の作製工程において、以下のこと以外は実施例1と同様に作製した。そして、該作製により得られた排ガス浄化用触媒を比較例10の触媒サンプルとした。
・最上コート層下流部用スラリーおよび最上コート層下流部用スラリーとして、担体であり、La
2O
3およびNd
2O
3と混合されたCZ複合酸化物(CeO
2:ZrO
2:La
2O
3:Nd
2O
3=14:79:2:5(wt%))を25g(CeO
2成分含有量:3.5g)と、アルミナを25gと、Pd含有量が1gであるパラジウム硝酸塩水溶液と、Rh含有量が0.05gであるロジウム硝酸塩水溶液とを混合したものを用いた。
【0081】
<比較例11>
比較例11の排ガス浄化用触媒は、最下コート層上流部と最下コート層下流部でCeO
2成分含有量が同じである。比較例11では、実施例1における排ガス浄化用触媒の作製工程において、以下のこと以外は実施例1と同様に作製した。そして、該作製により得られた排ガス浄化用触媒を比較例11の触媒サンプルとした。
・最下コート層上流部用スラリーおよび最下コート層下流部用スラリーとして、担体であり、La
2O
3およびNd
2O
3と混合されたCZ複合酸化物(CeO
2:ZrO
2:La
2O
3:Nd
2O
3=14:79:2:5(wt%))を25g(CeO
2成分含有量:3.5g)と、アルミナを25gと、Rh含有量が0.2gであるロジウム硝酸塩水溶液とを混合したものを用いた。
【0082】
実施例1〜12および比較例1〜11における排ガス浄化用触媒の触媒サンプルの概要を表1に示す。なお、表1において、CeO
2含有量は、触媒容量1LあたりのCeO
2含有量であり、単位をg/Lとしている。また、最上コート層では、下流部のCeO
2含有量に対する上流部のCeO
2含有量の比(上流部/下流部)を示している。最下コート層では、上流部のCeO
2含有量に対する下流部のCeO
2含有量の比(下流部/上流部)を示している。また、触媒コート層のCeO
2含有量とは、最下コート層上流部と、最下コート層下流部と、最上コート層上流部と、最上コート層下流部とにおけるそれぞれのCeO
2含有量の合計である。
【0084】
[評価]
実施例1〜12および比較例1〜11に係る排ガス浄化用触媒における約10万km走行の耐久後の各触媒サンプルを、排気量が1.0Lのエンジンを有するアイドリングストップ車に搭載した。そして、各触媒サンプルを搭載した車両を、JC08モードで走行させた。このときの各触媒サンプルにおけるNMHCおよびNOxの各エミッション値(g/km)を測定した。その結果を表2に示す。なお、NMHCとは、メタンが含まれていないHCのことである。
【0086】
ここでは、NMHCおよびNOxの各エミッション値が0.01g/km以下の場合、触媒の性能が良いと評価している。
先ず、最上コート層および最下コート層において、上流部と下流部の長さがそれぞれ等しい試験例について検討する。
表2に示すように、以下の(1),(2)の条件:
(1)最上コート層上流部における前記CeO
2成分の含有量が、最上コート層下流部におけるCeO
2成分の含有量よりも小さい;
(2)最下コート層下流部における前記CeO
2成分の含有量が、最下コート層上流部におけるCeO
2成分の含有量よりも小さい;
をいずれも満たす実施例1〜7,10〜12は、すべて各エミッション値が0.01g/kmを下回っている。
一方、上記(1)および/または(2)を満たさない比較例4,7〜11では、各エミッション値が0.01g/kmを上回っている。
【0087】
また、最上コート層上流部および最下コート層下流部の各CeO
2成分含有量が、触媒容積1Lあたり0g/L〜2g/Lである実施例1〜3では、各エミッション値が0.01g/kmを下回っている。
一方、最上コート層上流部および最下コート層下流部の各CeO
2成分含有量が、触媒容積1Lあたり4g/Lである比較例1および4では、各エミッション値が0.01g/kmを上回っている。これは、エンジン再始動時において、最上コート層上流部におけるNOx浄化性能が低いことと、最下コート層下流部におけるHC浄化性能が低いためであると考えられる。
よって、最上コート層上流部および最下コート層下流部の各CeO
2成分含有量を、触媒容積1Lあたり0g/L〜2g/Lとすることによって、NOx浄化性能(エンジン再始動時におけるNOx浄化性能)とHC浄化性能を高くすることができる。
【0088】
また、実施例4では、最下コート層上流部および最上コート層下流部の各CeO
2成分含有量が触媒容積1Lあたり4g/Lであり、このときの各エミッション値が0.01g/kmを下回っている。
一方、比較例2および4では、最下コート層上流部および最上コート層下流部の各CeO
2成分含有量が触媒容積1Lあたり2g/L以下であり、このときの各エミッション値が0.01g/kmを上回っている。これは、最下コート層上流部および最上コート層下流部における各CeO
2成分含有量が少ないため、通常走行時において、NOx浄化性能とHC浄化性能が低くなるためだと考えられる。
また、実施例5〜7では、触媒コート層のCeO
2成分含有量が40g/L以下であり、このときの各エミッション値は、0.01g/kmを下回っている。
しかし、比較例3では、触媒コート層のCeO
2成分含有量が50g/Lであり、このときの各エミッション値は、0.01g/kmを上回っている。
これらのことから、最下コート層上流部および最上コート層下流部の各CeO
2成分含有量は、触媒容積1Lあたり4g/L以上であることがよく、かつ、触媒コート層のCeO
2成分含有量は、40g/L以下であることがよい。
【0089】
次に、上流部と下流部の長さの比について検討する。
実施例8および9では、最上コート層上流部の排ガス流動方向の長さが、最上コート層の該方向に沿う全体長に対して、排ガスの入口側の端部から20%〜80%を占めており、かつ、最上コート層下流部の排ガス流動方向の長さが、上記全体長に対して、排ガスの出口側の端部から20%〜80%を占めている。また、実施例8および9では、最下コート層上流部の排ガス流動方向の長さが、最下コート層の該方向に沿う全体長に対して、排ガスの入口側の端部から25%〜80%を占めており、かつ、最下コート層下流部の排ガス流動方向の長さが、最下コート層の該方向に沿う全体長に対して、排ガスの出口側の端部から20%〜75%を占めている。このような範囲における実施例8および9では、各エミッション値は、0.01g/kmを下回っている。
しかし、上記範囲外である比較例5および6では、各エミッション値は、0.01g/kmを上回っている。
よって、触媒コート層の各部の長さを上記範囲とすることで、NOx浄化性能およびHC浄化性能を高くすることができる。
【0090】
なお、実施例10、11および比較例7、8に示すように、実施例2および比較例4における貴金属触媒の種類や含有量を変更した場合であっても、各上流部および下流部のCeO
2成分含有量を上述した範囲にすることで、同じような効果が得られる。
【0091】
また、実施例12および比較例9に示すように、触媒コート層を3層構造にした排ガス浄化用触媒であっても、各上流部および下流部のCeO
2成分含有量を上述した範囲にすることで、同じような効果が得られる。
【0092】
以上、本発明を詳細に説明したが、上記実施形態および試験例は例示にすぎず、ここで開示される発明には上述の具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。