【実施例】
【0035】
本発明を、実施例を用いて説明する。ただし本発明は、下記の実施例に限定されない。
【0036】
本発明の抗癌剤を、
図1に示すスキームに従って製造した。下記のステップ1からステップ6までの各工程は、
図1に示すスキームを部分的に示す。
【0037】
(ステップ1)
Compound 1 に無水酢酸と、H
2SO
4とを加え、室温で2時間撹拌した。撹拌した溶液を氷水で冷却し、加水分解をするために0.5時間撹拌した。撹拌後その溶液は赤色になった。該溶液をフィルター処理した後冷却し、Compound 2 を得た。
【0038】
(ステップ2)
得られたCompound 2 をTHF(Tetrahydrofuran) 300mlに添加した。得られたCompound 2 溶液にPd/Cを1.5g導入して、水素ガス中で水素化処理を1晩行った。その後フィルター処理し、Compound 3 を得た。
【0039】
(ステップ3)
TEAとCompound 3 とをTHFに溶解させたCompound 3 溶液と、Compound 4 をTHFに溶解させたCompound 4 溶液とを準備した。Compound 4 溶液にCompound 3 溶液を0℃で滴下、混合し、Compound 5 を生成させた。その後、この混合溶液に、TEAとCompound 6 (パゾパニブ)とをTHFに溶解させたCompound 6 溶液を室温で添加した。翌日、混合溶液をシリカカラムのフラッシュクロマトグラフィーで精製し、Compound 7 を得た。
【0040】
(ステップ4)
Compound 7 をTHFに溶解させたCompound 7 溶液に、水酸化ナトリウムを添加した。添加から8時間経過後、Compound 7 溶液を水で洗浄した。続いてシリカカラムのフラッシュクロマトグラフィーで精製し、Compound 8 を得た。
【0041】
(ステップ5)
EDAをTHFに溶解させたEDA溶液を、Compound 8 溶液へ滴下して添加した。2時間後、黄色の固体が析出した。この固体をTHFに添加した後、フィルターで精製した。得られた精製物をNMRにより分析した。分析結果を
図2に示す。NMR分析機器は、Bruker 300MHz/54mm UltraShieldを用いた。分析結果から、精製物がCompound 9 に示す構造の化合物であることを同定できた。
【0042】
(ステップ6)
窒素雰囲気で、メタノールにFeCl
3を溶解させた。この溶液にメタノールに溶解したCompound 9 を素早く加え、急激に撹拌を行った。撹拌から1時間経過後、Compound 9 を添加したメタノール溶液に、さらに水酸化カリウムを滴下して添加した。一晩経過後、減圧下でフィルターを用いて精製した。得られた固体を、複数回フィルターで精製した。
【0043】
得られた精製物をIRにより分析した。分析結果を
図3に示す。分析結果から、生成物がCompound 10 に示す構造の化合物であることを同定できた。Compound 10を、本発明の実施例1とした。
【0044】
[磁性の確認]
実施例1を、丸型シャーレ内の精製水に添加し、丸型シャーレの底部にネオジム永久磁石(表面磁束密度800mT)を近づけて精製水中の本発明の状態を観察した。
図4は、観察時に撮影したシャーレ内の実施例1の状態である。
図4(A)は、磁石を近づけていない丸型シャーレ内の状態である。
図4(B)は、磁石を近づけた丸型シャーレ内の状態である。
図4(A)では、実施例1は精製水中に分散した。一方、
図4(B)では、実施例1は磁場が及ぶ領域に集合した。上記の実験により、実施例1が磁性を備え、磁場誘導可能であることを確認できた。
【0045】
[抗癌作用確認試験]
実施例1と比較例1の抗癌作用確認試験を実施した。試験方法を以下に記載する。比較例1には、市販のパゾパニブ(商品名:ヴォトリエント)を用いた。
【0046】
1.細胞株:マウス骨肉腫の癌細胞株(POS-1)(G0/G1期が80%)
上記のPOS-1は、理化学研究所から譲渡された。
【0047】
2.試験試薬
American Type Culture Collection社(ATCC社)製の2,3,-bis(2-methoxy-4-nitro-5-sulfophenyl)-5-[(phenylamino)-carbonyl]-2H-tetrazolium inner salt (XTT)細胞増殖試験キット(XTT cell proliferation assay kit)を用いた。XTT標識混合液は、XTT reagent 5mlとactivation solution 0.1 mlとを混合して調製した。
【0048】
3.試験方法
細胞増殖試験を、ATCC社の実験プロトコールに従い行った。また当該XTTアッセイの詳細については、本発明者が発表した参考文献1を参考にした。
[参考文献1]
Sato I, Umemura M, Mitsudo K, Kioi M, Nakashima H, Iwai T, Feng X, Oda K, Miyajima A, Makino A,Iwai M, Fujita T, Yokoyama U, Okumura S, Sato M, Eguchi H, Tohnai I, Ishikawa Y., Hyperthermia generated with ferucarbotran (Resovist(R)) in an alternating magnetic field enhances cisplatin-induced apoptosis of cultured human oral cancer cells. J Physiol Sci, 64 (2014) 177-183.
【0049】
(1)細胞培養
マイクロプレート(組織培養用、96穴、平底)の各ウェル(100μl)に培地としてRPMI-1640(Wako大阪)を添加した。また10%非働化ウシ血清(GIBCO、USA)、100units/mlペニシリン・ストレプトマイシン(Wako大阪)を添加した。マウス骨肉腫の癌細胞株(POS-1)を培地に播種し37°C、5%CO
2の条件下で培養した。
【0050】
(2)XTTアッセイ
実施例1と比較例1との水溶液を、それぞれ2.5μM、5.0μM、10.0μMの濃度で調製した。マイクロプレート(組織培養用、96穴、平底)の各ウェル(100μl)にRPMI-1640と、10%非働化ウシ血清(GIBCO、USA)、100units/mlペニシリン・ストレプトマイシンを添加し、培養細胞を1×10
4株播種した。
【0051】
各ウェルの培地を交換し、XTT標識混合液を添加し、37°C、5%CO
2の条件下で、3時間培養した。培地を除去後、濃度0.1%のDMSO溶液を添加してフォルマザン色素を溶解させ、450nmの吸光度測定を行った。吸光度測定は、Model 680 microplate Reader(BIO-RAD Laboratories社製 CA, USA)を用いて行った。対照波長は665nmに設定した。細胞生存率を、XTT Cell Proliferation assay Kit (ATCC社) のthe manufacturer’s protocolに基づき算出した。上記の実験を2回行い、各実験結果に基づく細胞生存率を
図5に示した。
図5左図は1回目の実験結果から、
図5右図は2回目の実験結果からそれぞれ算出した細胞生存率である。
【0052】
[MRI造影効果]
実施例1のDMSO溶液と比較例1の水溶液とを、それぞれ0mM、1.3mM、2.5mM、5mMの濃度で調製し、放射線医学総合研究所分子イメージセンターに設置されるMRI(7.0T Burker社製)で撮影した。
図6に実施例1と比較例1とのMRI造影効果を示す。
図6(A)はT1強調(T1W)の信号変化、
図6(B)はT2強調(T2W)の信号変化、
図6(C)はT1強調画像とT2強調画像である。
図6(C)に示すように、実施例1は、T1強調では高濃度で白色、T2強調画像では逆に低濃度で白色となった。比較例1は、いずれの濃度においても白色の高シグナルであった。
図6により、実施例1のMRI造影効果を確認できた。