(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(a)分子中にビニル芳香族化合物からなる重合体ブロック(A)を有し、かつ、分子中に共役ジエン化合物からなる重合体ブロック(B)を有するブロック共重合体を水素添加して得られる水素添加ブロック共重合体から構成される熱可塑性エラストマー100重量部、
(b)軟化剤150〜200重量部、および
(c)分子量分布Mw/Mn(重量平均分子量/数平均分子量)が3.0以下であるプロピレン系樹脂25〜50重量部
を含有し、
該軟化剤(b)はパラフィン系オイルであり、該プロピレン系樹脂(c)はプロピレン/エチレンランダム共重合体である熱可塑性エラストマー組成物からなる滑り止め材。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
本発明の滑り止め材は、(a)熱可塑性エラストマー、(b)軟化剤、および(c)プロピレン系樹脂を含有する熱可塑性エラストマー組成物からなる。
上記熱可塑性エラストマー(a)は、分子中にビニル芳香族化合物からなる重合体ブロック(A)を有し、かつ、分子中に共役ジエン化合物からなる重合体ブロック(B)を有するブロック共重合体を水素添加して得られる水素添加ブロック共重合体から構成される。
【0009】
上記重合体ブロック(A)を構成する芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、2,4,6−トリメチルスチレン、モノフルオロスチレン、ジフルオロスチレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、メトキシスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセンなどが挙げられる。芳香族ビニル化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。その中でも、重合体ブロック(A)は、スチレンに由来する構造単位から構成されることが好ましい。
【0010】
上記重合体ブロック(A)は、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位と共に他の共重合性単量体に由来する構造単位を少量含有してもよい。この場合、他の共重合性単量体に由来する構造単位の割合は、重合体ブロック(A)の重量に基づいて10重量%以下であることが好ましく、5重量%以下であることがより好ましい。
【0011】
他の共重合性単量体としては、例えば、1−ブテン、ペンテン、ヘキセン、ブタジエン、イソプレン、メチルビニルエーテル等のイオン重合性単量体が挙げられる。これら他の共重合性単量体は、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。重合体ブロック(A)が芳香族ビニル化合物に由来する構造単位以外に芳香族ビニル化合物等の他の共重合性単量体に由来する構造単位を有する場合、それらの結合形態は、ランダム、テーパード状等のいずれの形態であってもよい。
【0012】
重合体ブロック(B)を構成する共役ジエン化合物としては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン等が挙げられる。これらの中でも、1,3−ブタジエン、イソプレンまたはこれらの混合物が好ましい。共役ジエン化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。熱可塑性エラストマー(a)における共役ジエンブロックのミクロ構造は特に限定されない。例えば、重合体ブロック(B)がポリブタジエンからなるブロックである場合には、その1,4結合量が40%〜80%であることが望ましい。また、重合体ブロック(B)がポリイソプレンからなるブロックである場合には、その1,4結合量が70%以上であることが望ましい。
【0013】
上記重合体ブロック(B)は、共役ジエン化合物に由来する構造単位と共に他の共重合性単量体に由来する構造単位を少量含有していてもよい。この場合、他の共重合性単量体に由来する構造単位の割合は、重合体ブロック(B)の重量に基づいて30重量%以下であることが好ましく、10重量%以下であることがより好ましい。
【0014】
他の共重合性単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、1,3−ジメチルスチレン、ジフェニルエチレン、1−ビニルナフタレン、4−プロピルスチレン、4−シクロヘキシルスチレン、4−ドデシルスチレン、2−エチル−4−ベンジルスチレン、4−(フェニルブチル)スチレン等の芳香族ビニル化合物等のアニオン重合可能な単量体が挙げられる。これら他の共重合性単量体は、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。重合体ブロック(B)が共役ジエン化合物に由来する構造単位以外に芳香族ビニル化合物等の他の共重合性単量体に由来する構造単位を有する場合、それらの結合形態はランダム、テーパード状等のいずれでもよい。
【0015】
また、共役ジエン化合物のジエン部分は、通常70%以上が水素添加され、好ましくは90%以上が水素添加される。水素添加率が70%以上の場合、機械的強度や耐候性に優れるため好ましい。したがって、本発明において好ましく用いられる水素添加ブロック共重合体としては、90%以上水素添加されて得られる、スチレン−エチレン・プロピレン−スチレン型トリブロック共重合体、スチレン−エチレン・ブチレン−スチレン型トリブロック共重合体、スチレン−エチレン・エチレン・プロピレン−スチレン型トリブロック共重合体等が挙げられ、なかでも、スチレン−エチレン・ブチレン−スチレン型トリブロック共重合体、スチレン−エチレン・エチレン・プロピレン−スチレン型トリブロック共重合体が好ましい。
【0016】
なお、重合体ブロック(B)におけるジエン部分の水素添加率は、重合体ブロック(B)における不飽和二重結合の含有量を、水素添加の前後において、ヨウ素価測定、赤外分光光度計(IR)、核磁気共鳴法(
1H−NMR)等によって測定し、その測定値から求めることができる。
【0017】
熱可塑性エラストマー(a)における重合体ブロック(A)の含有量は、熱可塑性エラストマー(a)の全重量を基準として、5〜70重量%が好ましく、15〜50重量%がより好ましい。重合体ブロック(A)の含有量がこの範囲内であると、熱可塑性エラストマー組成物に十分な引張強度を付与することができるため好ましい。
【0018】
熱可塑性エラストマー(a)における重合体ブロック(B)の含有量は、熱可塑性エラストマー(a)の全重量を基準として、30〜90重量%が好ましく、50〜80重量%がより好ましい。重合体ブロック(B)の含有量がこの範囲内であると、熱可塑性エラストマー組成物に十分なゴム弾性を付与することができるため好ましい。
【0019】
熱可塑性エラストマー(a)の重量平均分子量Mwは150000〜500000が好ましく、200000〜400000がより好ましい。熱可塑性エラストマー(a)の重量平均分子量Mwが150000以上の場合、十分な機械的強度を有し、同時に、高温環境下(40〜80℃)での応力変形が生じ難くなるなど、引張り性能および圧縮永久歪みが良好である。一方、熱可塑性エラストマー(a)の重量平均分子量Mwが500000以下である場合には、成形加工性が良好となる。
【0020】
本発明における数平均分子量Mnおよび重量平均分子量Mwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて測定し、ポリスチレン換算により算出することができる。
【0021】
上記熱可塑性エラストマー(a)の代表的市販品としては、例えばTSRC Corporation製のTAIPOL、(株)クラレ製のセプトン等が挙げられる。
【0022】
上記軟化剤(b)としては、パラフィン系、ナフテン系、アロマ系オイル等のプロセスオイル、流動パラフィン等が挙げられ、中でも、熱可塑性エラストマー(a)との相容性および黄変防止の観点から、パラフィン系、ナフテン系オイルが好ましく、パラフィン系オイルがより好ましい。これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0023】
上記軟化剤(b)の重量平均分子量Mwは700以上が好ましく、750以上がより好ましい。軟化剤(b)の重量平均分子量Mwは1500以下が好ましく、1400以下がより好ましい。軟化剤(b)の重量平均分子量Mwが700以上であれば、滑り止め材においてオイルブリードが非常に少なく、さらに良好なフォギング性を有し、重量平均分子量Mwが1500以下であれば、成形加工性が良好である。
【0024】
上記軟化剤(b)は、その製造について特に限定されず、例えば、従来公知の方法により製造できる。上記軟化剤(b)の代表的市販品としては、例えば出光興産(株)製のダイアナプロセスオイルPWシリーズ(パラフィン系オイル)、出光興産(株)製のダイアナプロセスオイルNRシリーズ(ナフテン系オイル)、NIKKO OIL PRODUCTS(株)製NOBELプロセスオイルABシリーズ(アロマ系オイル)等が挙げられる。
【0025】
成分(b)の配合量は、成分(a)100重量部に対して、150〜200重量部であり、好ましくは170〜190重量部である。成分(b)の配合量が150重量部以上の場合は柔軟性、防滑性が良好であり、200重量部以下の場合は機械的強度や耐摩耗性が良好である。
【0026】
上記プロピレン系樹脂(c)としては、ポリプロピレンまたはプロピレンから構成される共重合体が挙げられ、ホモタイプのポリプロピレン、プロピレンと他の少量のα−オレフィンとのブロックタイプ、ランダムタイプのいずれかの共重合体から選ばれる1種または2種以上が用いられる。その中でも、本発明におけるプロピレン系樹脂(c)としては、耐油性、低揮発性の観点から、プロピレンと他の少量のα−オレフィンとのランダムタイプの共重合体が好ましい。
【0027】
上記プロピレン系樹脂(c)は、プロピレン系樹脂(c)の全重量を基準として、プロピレンから得られる構造単位が通常100〜90重量%、好ましくは99〜92重量%、α−オレフィンから得られる構造単位を通常0〜10重量%、好ましくは1〜8重量%の割合で含有されていることが好ましい。
【0028】
α−オレフィンとして、エチレンおよび炭素数4〜20のα−オレフィン等が挙げられ、例えば、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン等が挙げられる。α−オレフィンは、2種以上を併用することもできる。α−オレフィンの構造単位が上記範囲内にあると、良好な剛性を保つことができる。好ましくは、良好な機械物性を付与する観点から、α−オレフィンとしてエチレンを用いる。エチレン含有量が好ましくは1〜5重量%、より好ましくは2〜4重量%であるプロピレン/エチレンランダム共重合体が望ましい。
【0029】
なお、プロピレン系樹脂(c)中のプロピレンから得られる構造単位、および、α−オレフィンから得られる構造単位は、核磁気共鳴法(
13C−NMR)を用いて測定し、その測定値から求めることができる。
【0030】
上記プロピレン系樹脂(c)のMFRは、通常3〜40g/10分、好ましくは4〜38g/10分、より好ましくは5〜35g/10分である。MFRが上記範囲以外のものを用いたときは成形性に不具合が生じてくる。
【0031】
なお、MFRは、JIS K7210(230℃、2.16kg荷重)に準拠して測定することができる。
【0032】
上記プロピレン系樹脂(c)の分子量分布Mw/Mn(重量平均分子量/数平均分子量)は、3.0以下であり、2.9以下が好ましく、2.85以下がより好ましく、また通常1以上であり、好ましくは1.01以上である。分子量分布Mw/Mnが3.0以下であると、揮発原因となる低分子量成分が少ない。分子量分布Mw/Mnは、製造時の重合条件(重合温度、重合圧力)を調節し、触媒としてメタロセン触媒を用い、その種類を変更することによって、制御することができる。
【0033】
上記プロピレン系樹脂(c)は、その製造について特に限定されず、例えば、従来公知の方法により製造できる。上記プロピレン系樹脂(c)の代表的市販品としては、例えば日本ポリプロ(株)製のウィンテックシリーズが挙げられる。
【0034】
成分(c)の配合量は、成分(a)100重量部に対して、25〜50重量部であり、好ましくは30〜45重量部である。成分(c)の配合量が25重量部以上では成形性および清掃性が良好であり、50重量部以下であると防滑性が良好である。
【0035】
本発明の滑り止め材は、必要に応じて、上記成分(a)、(b)および(c)に加えて、添加剤(d)を更に含んでよい。
【0036】
添加剤(d)として、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、無機充填剤、結晶核剤、発泡剤、着色剤、ブロッキング防止剤、滑剤、耐電防止剤等が挙げられる。
【0037】
酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジtert−ブチル−p−クレゾール、2,6−ジtert−ブチルフェノール、2,4−ジメチル−6−tert−ブチルフェノール、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジtert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、3,9−ビス{2−[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ−5,5−ウンデカン等のフェノール系酸化防止剤、ホスファイト系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤等が挙げられる。このうち、フェノール系酸化防止剤、ホスファイト系酸化防止剤が好ましい。
【0038】
酸化防止剤の配合量は、成分(a)100重量部に対して、好ましくは0.01〜1重量部であり、より好ましくは0.1〜0.5重量部である。
【0039】
さらに、用途に応じてポリエチレン、スチレン系樹脂の樹脂、または耐候性の向上や増量を目的として炭酸カルシウム、タルク、カーボンブラック、酸化チタン、シリカ、クレー、硫酸バリウム、炭酸マグネシウム等の無機充填剤を混合することができる。また、ガラス繊維、カーボン繊維のような無機または有機繊維状物の混合も可能である。
【0040】
また必要に応じて、本発明に使用する熱可塑性エラストマー組成物をパーオキシドおよび架橋助剤の存在下において架橋することができる。パーオキシドとしては、例えば、ジクミルパーオキシド、ジtert−ブチルパーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、1,3−ビス(tert−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルパーオキシ)バレレート、ベンゾイルパーオキシド、p−クロロベンゾイルパーオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキシド、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジアセチルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、tert−ブチルクミルパーオキシド、過酸化水素等が挙げられる。架橋助剤としては、例えば、ジビニルベンゼン、トリアリルシアヌレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、アリルメタクリレートのような多官能性メタクリレートモノマー、ビニルブチラートまたはビニルスチアレートのような多官能性ビニルモノマーを配合することができる。
【0041】
本発明における熱可塑性エラストマー組成物は、Aタイプデューロメータ硬さが、清掃性および防滑性の観点から、10〜80度になるように調整されることが好ましく、10〜50度になるように調整されることがより好ましく、20〜50度になるように調整されることがさらにより好ましい。なお、Aタイプデューロメータ硬さの測定方法は後述する。
【0042】
本発明における熱可塑性エラストマー組成物の製造方法としては、通常の樹脂組成物の製造またはゴム組成物の製造に際して用いられる方法を使用することができ、単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、加熱ロール、各種ニーダー等の溶融混練機を用いて各成分を均一に複合化することにより製造できる。加工機の設定温度は150℃〜300℃の中から任意に選ぶことができ、その製造方法になんら制限はない。
【0043】
本発明の滑り止め材は、上記熱可塑性エラストマー組成物を、従来公知の方法、例えば熱プレス、射出成形、押出成形、カレンダー成形することにより得られる。さらに、押出成形やカレンダー成形したシートやフィルムを圧縮成形によって細部を加工する2工程による成形方法を用いてもよい。2色成形やインサート成形等の2種材料による複合射出成形、または多層押出成形によって、本発明における熱可塑性エラストマー組成物とプロピレン系樹脂等の硬質樹脂とを一体的に成形することもできる。このようにして得られる滑り止め材の形状は任意であり、例として円形、多角形等が挙げられる。
【実施例】
【0044】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれによって何ら限定されるものではない。
【0045】
二軸押出機(口径46mm、L/D=46)を使用し、表1に示す配合に従って、各成分を混合し200℃で溶融混練し、ペレット状の熱可塑性エラストマー組成物をそれぞれ得た。この熱可塑性エラストマー組成物を用いて、射出成形機(加工温度:200℃)で射出成形シートをそれぞれ作製した。
【0046】
なお、表1の実施例1〜4および比較例1〜6においては、成分(a)、(b)、(c)および(d)として、以下のものを使用した。
成分(a)
・(a−1)TSRC Corporation製TAIPOL6151、Mw:260000
・(a−2)(株)クラレ製セプトン4055、Mw:280000
【0047】
成分(b)
・(b−1)出光興産(株)製ダイアナプロセスオイルPW−380、パラフィン系オイル、Mw:1300
・(b−2)出光興産(株)製ダイアナプロセスオイルPW−90、パラフィン系オイル、Mw:790
・(b−3)出光興産(株)製ダイアナプロセスオイルPW−32、パラフィン系オイル、Mw:510
【0048】
成分(c)
・(c−1)日本ポリプロ(株)製BC−1、MFR(230℃、2.16kg荷重):30、Mw/Mn:15.7
・(c−2)日本ポリプロ(株)製ウィンテックWFX4T、MFR(230℃、2.16kg荷重):7.0、Mw/Mn:2.8
・(c−3)(株)プライムポリマー製F327、MFR(230℃、2.16kg):30、Mw/Mn:4.6
・(c−4)日本ポリプロ(株)製ノバテックLDPE LJ8041、MFR(230℃、2.16kg荷重):23、密度:0.918g/cm
3、Mw/Mn:8.4
【0049】
成分(d)
フェノール系酸化防止剤、(株)ADEKA製アデカスタブAO−80
【0050】
【表1】
【0051】
上記のように作製した各滑り止め材について以下の試験を行った。その結果を表2に示す。
【0052】
[試験方法]
1.硬度
表1に示す配合に従って射出成形機を用いて作製した射出成形シート(厚み:6mm)を用いて、JIS K6253準拠の方法によるAタイプデューロメータ硬さ(スプリング式)を測定した。硬度計を試験片に接触させた後、3秒後の数値を読み取った。
【0053】
2.破断強度、破断伸び
表1に示す配合に従って射出成形機を用いて作製した射出成形シートの破断強度、破断伸びを測定した。測定はJIS K6251に準拠し、前述の射出成形機を用いて作製した射出成形シートからダンベル形状3号形を打ち抜き(TD方向)、試験片とした。これらの試験片について、JIS K7311に準拠し、引張試験機((株)島津製作所製オートグラフAG−500NI)を用いて引張強度試験(引張速度:500mm/分)を行い、破断時の伸び、およびその際の応力を破断強度として測定した。
【0054】
3.静摩擦係数
表1に示す配合に従って射出成形機を用いて作製した射出成形シートの静摩擦係数を測定した。測定はJIS K7125に準拠し、静摩擦係数が3以上の数値であれば、防滑性が良好である。
【0055】
4.耐油性
表1に示す配合に従って射出成形機を用いて作製した射出成形シートの耐油性試験を行った。射出成形機を用いて作製した射出成形シートから、直径120mm、2mmの円形シートを打ち抜き、試験片とした。これらの試験片の上に、内径41mmの円筒状の囲いをのせ、さらに囲いの上に150gの重りをのせた。この囲い中の試験片上に、流動パラフィン(ナカライテスク(株)製、商品コード:26132−35、比重:0.82〜0.845)1.5gを滴下した後、80℃で24時間加熱した。加熱後、試験前後の試験片の厚みの寸法変化率を測定した。
試験前後の試験片の厚みの寸法変化率が24.0%以下であれば、耐油性が良好である。
【0056】
5.オイルブリード
表1に示す配合に従って射出成形機を用いて作製した射出成形シートのオイルブリード試験を行った。射出成形機を用いて作製した射出成形シートから、50mm×100mm、厚み2mmの長方形シートを打ち抜き、試験片とした。これらの試験片を、紙(華陽紙業(株)製新サンエースR100、サイズ:70mm×120mm)で挟み、100℃に設定した恒温槽(ダバイエスペック製ギアオーブン、GPH−200)において1週間加熱した。加熱後、紙へのオイルの染み込みを確認した。
オイルブリードの評価は、オイルの染み込みが全く認められない場合およびわずかに求められるが目立たない場合を○、やや著しい場合を△、かなり著しい場合を×とした。
【0057】
6.清掃性
表1に示す配合に従って射出成形機を用いて作製した射出成形シートの清掃性評価を行った。射出成形機を用いて作製した射出成形シートから、50mm×100mm、厚み2mmの長方形シートを打ち抜き、試験片とした。これらの試験片の表面に、(株)石原製の珪砂5号を2g付着させ、藤原産業(株)製SK11竹ブラシ曲柄ナイロン毛No.17ですべて払い落とす際の回数を評価した。
ブラシで払い落とす回数が15回以下であれば、清掃性が良好である。
【0058】
7.フォギング性
熱可塑性エラストマーを自動車内装部品に使用する場合、長期間の使用によって軟化剤成分が揮発し、窓ガラスの曇りが生じるフォギング現象といった問題が生じることがある。フォギング現象に対する耐性を評価するため、表1に示す配合に従って射出成形機を用いて作製した射出成形シートのフォギング性試験を行った。試験はISO 6452、DIN 75201に準拠し、前述の射出成形機を用いて作製した射出成形シートから、直径80mm、厚み2mmの円形シートを打ち抜き、試験片とした。これらの試験片を、80℃に設定したオイルバスに入れたトールビーカー中に投入し、20℃に設定したガラス板に揮発成分を3時間付着させた。試験片を投入しない状態でのガラス板の光透過性を基準とし、揮発成分が付着したガラス板の光透過性の透過比率を測定した。なお、光沢度測定は、(株)村上色彩技術研究所製のTrue GLOSS GM−26PROを用いて行い、光学条件は、ISO 2813、ASTM D523、JIS Z8741に準じ、測定角度を60°、測定面積を14mm×22mm、測定開口を26mm×40mmとした。
【0059】
【表2】
【0060】
以上の結果より、実施例1〜4における本発明の熱可塑性エラストマー組成物からなる滑り止め材は、破断強度が高く、優れた機械的強度を有する。また、静摩擦係数が高く、十分な防滑性を有し、耐油性、オイルブリードおよび清掃性の評価においても良好な結果が示された。さらに、軟化剤(b)の重量平均分子量Mwが所定範囲内であると、フォギング性の評価においても良好な結果が得られた。これに対し、比較例1〜5においては、本発明における所定のプロピレン系樹脂(c)を所定重量部含まないため、上記評価において良好な結果を示さなかった。また、プロピレン系樹脂のみからなる比較例6においては、上記評価において良好な結果を示さず、本発明の目的を達成することはできない。