特許第6611857号(P6611857)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6611857
(24)【登録日】2019年11月8日
(45)【発行日】2019年11月27日
(54)【発明の名称】自己発動式爆発ヒューズ
(51)【国際特許分類】
   H01H 39/00 20060101AFI20191118BHJP
   H01H 37/76 20060101ALI20191118BHJP
【FI】
   H01H39/00 C
   H01H37/76 E
   H01H37/76 K
【請求項の数】8
【外国語出願】
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2018-98416(P2018-98416)
(22)【出願日】2018年5月23日
(65)【公開番号】特開2018-198205(P2018-198205A)
(43)【公開日】2018年12月13日
【審査請求日】2018年5月23日
(31)【優先権主張番号】10 2017 111 413.0
(32)【優先日】2017年5月24日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】510238096
【氏名又は名称】ドクター エンジニール ハー ツェー エフ ポルシェ アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Dr. Ing. h.c. F. Porsche Aktiengesellschaft
(74)【代理人】
【識別番号】100094525
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 健二
(74)【代理人】
【識別番号】100094514
【弁理士】
【氏名又は名称】林 恒徳
(72)【発明者】
【氏名】マルクス ツァハー
【審査官】 関 信之
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭51−066467(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 39/00
H01H 37/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒューズ素子(104)を備える保護装置(100)であって、前記ヒューズ素子(104)が、爆発によって導体区域(110)を遮断するように設計され、発動ユニット(112)が、所定値に達した発火電圧(U)によって前記爆発を発動して前記ヒューズ素子(104)が前記導体区域(110)を遮断するように設計され、保護装置(100)が熱電素子(114)を有し、前記熱電素子(114)が、前記導体区域(110)の加熱に応じて前記発火電圧(U)を発生させ、
前記熱電素子(114)が、前記導体区域の加熱に応じて第1の電圧(U)を発生し、前記保護装置(100)が増幅器回路(116)を有し、前記増幅器回路(116)が、前記発火電圧(U)を発生させるために前記第1の電圧(U)を増幅するように設計されることを特徴とする保護装置(100)。
【請求項2】
前記導体区域(110)が、前記ヒューズ素子(104)および前記発動ユニット(112)からDC分離されていることを特徴とする請求項1に記載の保護装置(100)。
【請求項3】
前記保護装置が、前記増幅器回路(116)に電圧を供給するための電圧供給源(118)を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の保護装置(100)。
【請求項4】
前記増幅器回路(116)が、前記第1の電圧(U)を増幅して第2の電圧(U)を発生させるように設計され、前記保護装置(100)が、前記発動ユニット(112)とツェナーダイオード(122)とから構成された直列回路を有し、前記ツェナーダイオードの両端間に前記第2の電圧(U)が印加され、前記ツェナーダイオード(122)が、前記第2の電圧(U)に対して逆向きに配置され、その結果、前記第2の電圧(U)が所定の電圧値を超えたときにのみ、電流が前記ツェナーダイオード(122)を通って、したがって前記発動ユニット(112)を通って流れることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の保護装置(100)。
【請求項5】
前記直列回路と並列接続で配置されたコンデンサ(120)を備えることを特徴とする請求項に記載の保護装置(100)。
【請求項6】
前記保護装置(100)が並列抵抗(302)を備え、前記並列抵抗(302)が、前記直列回路および前記コンデンサ(120)と並列接続で配置されることを特徴とする請求項に記載の保護装置(100)。
【請求項7】
前記並列抵抗(302)が可変に設定可能であることを特徴とする請求項に記載の保護装置(100)。
【請求項8】
前記発動ユニット(112)が、第1の発動接点(202A)に導通接続された第1の接点(112A)を有し、前記発動ユニット(112)が、第2の発動接点(202B)に導通接続された第2の接点(112B)を有し、前記第1の接点(112A)と前記第2の接点(112)との間に前記発火電圧(U)が印加されることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の保護装置(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自己発動式爆発ヒューズに関する。
【背景技術】
【0002】
自己発動式爆発ヒューズは、回路の短絡や過電流の発生時に回路を自動的に遮断する保護装置である。
【0003】
回路内で故障状態、すなわち短絡または過電流が検出されたときに回路を遮断する既知の爆発ヒューズは、回路が遮断されるパイロスイッチの発火を発動するために電流測定デバイスと監視電子回路を必要とする。この場合の過電流とは、予想される電流よりも高い電流が流れている回路の状態を表す。
【0004】
独国特許第1011125号明細書は、過電流時に回路を遮断するためのパイロスイッチを有するこの種の保護装置を開示している。
【0005】
英国特許第2489101号明細書、米国特許出願公開第2016155589号明細書、および米国特許出願公開第2016336131号明細書はそれぞれ、回路を遮断するためにパイロスイッチが外部から作動される保護装置に関する。
【0006】
米国特許出願公開第2016356587号明細書は、回路内の故障によって回路を遮断するためにパイロスイッチが発動される保護装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】独国特許第1011125号明細書
【特許文献2】英国特許第2489101号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2016155589号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2016336131号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2016356587号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
外部電流測定装置および監視電子回路がなくても確実に動作する自己発動式爆発ヒューズを提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
これは、独立請求項に記載の保護装置、および上記保護装置を動作させるための方法によって実現される。
【0010】
この保護装置に関して、保護装置がヒューズ素子を備え、ヒューズ素子が、爆発によって導体区域を遮断するように設計され、発動ユニットが、発火電圧が所定値を超えたときに発火電圧によって爆発を発動するように設計され、保護装置が熱電素子を有し、熱電素子が、導体区域の加熱に応じて発火電圧を発生させる。
【0011】
有利には、導体区域が、ヒューズ素子および発動ユニットからDC絶縁されている。これは、故障時にヒューズ素子自体によって回路が閉じられることを防止する。
【0012】
好ましくは、熱電素子が、導体区域の加熱に応じて第1の電圧を発生し、保護装置が増幅器回路を有し、増幅器回路が、発火電圧を発生させるために第1の電圧を増幅するように設計される。したがって、必要な発火電圧を発生させるために、自己発動式爆発ヒューズをより低い電圧変化で使用することもできる。
【0013】
好ましくは、保護装置が、増幅器回路に電圧を供給するための電圧供給源を備える。したがって、自己発動式爆発ヒューズは自立式である。
【0014】
好ましくは、増幅器回路が、第1の電圧を増幅して第2の電圧を発生させるように設計され、保護装置が、発動ユニットとツェナーダイオードとから構成された直列回路を有し、ツェナーダイオードの両端間に第2の電圧が印加され、ツェナーダイオードが、第2の電圧に対して逆向きに配置され、その結果、第2の電圧が所定の電圧値を超えたときにのみ、電流がツェナーダイオードを通って、したがって発動ユニットを通って流れる。これは、自己発動式爆発ヒューズのための特に好適な回路構成である。
【0015】
有利には、保護装置が、直列回路と並列接続で配置されたコンデンサを備える。コンデンサは、バッファコンデンサとして働く。
【0016】
有利には、保護装置が、直列回路およびコンデンサと並列接続で配置された並列抵抗を備える。並列抵抗は、自己発動が起こる電圧に関する特定の閾値を固定して定めることを可能にする。
【0017】
好ましくは、並列抵抗が可変に設定可能である。それにより、自己発動が起こる電圧に関する閾値を簡単にパラメータ化することができる。
【0018】
有利には、発動ユニットが、第1の発動接点に導通接続された第1の接点を有し、発動ユニットが、第2の発動接点に導通接続された第2の接点を有し、第1の接点と第2の接点との間に発火電圧が印加される。それにより、発火電圧は、既存のシステムと互換性を持つように外部から定めることもできる。
【0019】
保護装置を動作させるための方法に関して、爆発を発動するための発火電圧が所定の値を超えたときに爆発によって導体区域が遮断され、熱電素子が、導体区域の加熱に応じて発火電圧を発生させる。
【0020】
さらに有利な改良形態は、以下の説明および図面から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】保護装置の一部を示す概略図である。
図2】外部発動システムのための接続部を有する保護装置の一部を示す概略図である。
図3】並列抵抗を有する保護装置の一部を示す概略図である。
図4】外部発動システムのための接続部と、並列抵抗とを有する保護装置の一部を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、保護装置100の一部を概略的に示す。より具体的には、図1は、自己発動型爆発ヒューズの回路図を示す。
【0023】
保護装置100は、爆発ヒューズ102を備える。爆発ヒューズ102は、監視すべき回路に接続するための正電源接続部106および負電源接続部108を有する爆発ヒューズ素子104を備える。正電源接続部106は、爆発ヒューズ素子104によって負電源接続部108に導通接続される。爆発ヒューズ102が発動される場合、爆発ヒューズ素子104の導体区域110が小さな爆発負荷によって切断され、その結果、回路が遮断される。導体区域110は、爆発ヒューズ102内の正電源接続部106と負電源接続部108との間の遮断される回路の導通接続部の一部である。
【0024】
爆発負荷を発火させるために、発動ユニット112が爆発ヒューズ102内に配置される。発動ユニット112は、爆発負荷に動作可能に接続され、所定の大きさの発火電圧Uが発動ユニット112に印加されると爆発負荷を発火させる。
【0025】
回路内の電流がヒューズ素子104を通って流れると、ヒューズ素子104、より具体的には導体区域110が加熱される。保護装置100は熱電素子114を備え、熱電素子114は、ヒューズ素子104が加熱されるときに熱電素子114も同様に加熱されるようにヒューズ素子104に対して配置される。熱電素子114は、例えばペルチェ素子であり、ゼーベック効果による熱電素子114の加熱に応じて、熱電素子114の第1の出力114Aと第2の出力114Bとの間に第1の電圧Uを発生させることができる。第1の出力114Aは、増幅器回路116の第1の入力116Aに導通接続されている。増幅器回路116は、例えば演算増幅器である。第2の出力114Bは、増幅器回路116の第2の入力116Bに導通接続されている。第1の電圧Uは、増幅器回路116の2つの入力間にも印加され、上記増幅器回路によって増幅される。このために、増幅器回路116は、電圧源118によって、接地電位Uに対する供給電圧Uを供給されることが好ましい。増幅器回路116の出力116Cは、コンデンサ120によって接地電位Uに接続されている。第2の電圧Uがコンデンサ120の両端間に印加される。第2の電圧Uは、増幅された第1の電圧Uに対応する。コンデンサ120は、第2の電圧Uのためのバッファコンデンサとして働く。増幅器回路116の出力116Cと接地電位Uとの間には、コンデンサ120に並列に、発動ユニット112とツェナーダイオード122との直列回路が配置されている。ツェナーダイオード122は、第2の電圧Uに対して逆向きに配置され、すなわち、第2の電圧Uが所定の電圧値を超えるときにのみ、電流がツェナーダイオード122を通って、したがって発動ユニット112を通って流れる。ツェナーダイオード122の代わりに、第2の電圧Uが所定の電圧値を超えない限り発動ユニット112に電流を流さない別のデバイスを設けてもよい。ツェナーダイオード122、コンデンサ120、および/または発動ユニット112は、第2の電圧Uが所定の電圧値を超えるとき、すなわちツェナーダイオード122がそれとは逆向きに導通するときに発火電圧Uに達するように設計されることが好ましい。その結果、発動ユニットは、増幅された第2の電圧Uが所定の電圧値を超えるような値を第1の電圧Uが超えるとすぐに爆発負荷を発火させる。
【0026】
回路に故障が生じているとき、すなわち過電流または短絡時、ヒューズ素子104は、故障がない場合に比べて加熱される。熱電素子114でのさらなる熱によって発生した第1の電圧Uにより、第2の電圧Uが所定の電圧値を超えると爆発が発動され、ヒューズ素子104が作動する。この例では導体区域110が切断される。その結果、回路が遮断される。
【0027】
保護装置100は、好ましくは回路の残りの部分から電気的に絶縁された閉じたハウジングを備える。正電源接続部106と負電源接続部108には、ハウジングの外部から接触することができる。
【0028】
図2は、外部発動システム202のための接続部を有する保護装置200の一部を概略的に示す。より具体的には、図2は、外部発動システム202のための接続部を有する自己発動式爆発ヒューズの回路図を示す。第1の発動接点202Aが、発動ユニット112の第1の接点112Aに導通接続されている。第2の発動接点202Bが、発動ユニット112の第2の接点112Bに導通接続されている。発動電圧Uが、第1の接点112Aと第2の接点112Bとの間に印加される。保護装置200は、好ましくは閉じたハウジングを備える。第1の発動接点202Aおよび第2の発動接点202Bには、ハウジングの外部から接触することができる。他の要素は自己発動型爆発ヒューズに対応し、それらの要素については図1に関連して上述した。図2でのそれらの要素には、図1で使用したのと同じ参照符号が付されている。
【0029】
発動電圧Uを外部発動システム202のための接続部の2つの接点に印加することにより、発動電圧Uが発火電圧Uに達するかまたは超えたときに爆発を発動させることができる。したがって、外部からの発動がさらに可能である。これは、保護装置を他の発動ユニットと互換性のあるものにする。
【0030】
図3は、並列抵抗302を有する保護装置300の一部を概略的に示す。より具体的には、図3は、並列抵抗302を有する自己発動式爆発ヒューズの回路図を示す。他の要素は自己発動型爆発ヒューズに対応し、それらの要素については図1に関連して上述した。図3でのそれらの要素には、図1で使用したのと同じ参照符号が付されている。並列抵抗302を適切に選択することによって、回路の他の要素に適合するように第2の電圧Uを設定することができる。したがって、並列抵抗302の抵抗値に応じて、様々な用途に合わせて所定の電圧値を容易に設定することができる。並列抵抗は、可変に設定できることが好ましい。並列抵抗は、例えばポテンショメータである。それにより、発動速度を設定することができる。
【0031】
図4は、外部発動システム202のための接続部を有し、並列抵抗302も有する保護装置400の一部を概略的に示す。より具体的には、図4は、図2に関連して説明した外部発動システム202のための接続部を有し、図3に関連して説明した並列抵抗302も有する自己発動式爆発ヒューズの回路図を示す。他の要素は自己発動型爆発ヒューズに対応し、それらの要素については図1に関連して上述した。図4でのそれらの要素には、図1で使用したのと同じ参照符号が付されている。
【0032】
上記の各回路図では、回路は保護装置100からDC分離されている。したがって、爆発ヒューズが発動されたときに、保護装置100を横切る電流が予期せず回路を閉じることもない。
【0033】
保護装置100を動作させるための方法は、発火電圧Uが所定値を超えたときに導体区域110を遮断させ、その際、熱電素子114が、導体区域110の加熱に応じて発火電圧Uを発生させる。
【符号の説明】
【0034】
100 保護装置
104 ヒューズ素子
110 導体区域
112 発動ユニット
114 熱電素子
発火電圧
図1
図2
図3
図4