(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記(C)マレイミド樹脂の含有量が、前記(A)成分、(B)成分、及び(C)成分の合計100質量%に対し、30質量%以上である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の封止用エポキシ樹脂成形材料。
前記(C)マレイミド樹脂の含有量が、前記(A)成分、(B)成分、及び(C)成分の合計100質量%に対し、60質量%以上である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の封止用エポキシ樹脂成形材料。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。
(封止用エポキシ樹脂成形材料)
まず、本発明の封止用エポキシ樹脂成形材料(以下、単に「樹脂成形材料」ともいう)の各成分について述べる。
〔(A)エポキシ樹脂〕
本発明で用いる(A)成分のエポキシ樹脂は、一分子中に2個以上のエポキシ基を有し、トリフェニルメタン骨格、及び/又はナフタレン骨格を含む。具体的には、トリフェニルメタン骨格を有するエポキシ樹脂、及びナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂のうち少なくとも1種を含む硬化性エポキシ樹脂である。
上記トリフェニルメタン骨格を有するエポキシ樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えば、下記一般式(II)で表されるエポキシ樹脂が挙げられる。
【0016】
【化6】
(式中、nは0〜10である。)
【0017】
また、上記ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂としては、一分子中に少なくとも2個以上のグリシジル基を有し、少なくとも1つのナフタレン環を有するエポキシ樹脂であれば特に限定されるものではなく、例えば、下記一般式(III)、及び下記一般式(IV)で表されるエポキシ樹脂が挙げられ、これらを好ましく用いることができる。
【0018】
【化7】
(式中、mは0〜10である。)
【0019】
上記(A)成分のエポキシ樹脂は、上記一般式(II)で表されるトリフェニルメタン骨格を有するエポキシ樹脂、上記一般式(III)で表されるナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂、及び上記一般式(IV)で表されるナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂から選択される少なくとも1種を含むことが、後述する(B)成分のフェノール系硬化剤とともに、樹脂成形材料の硬化物の耐熱性や生産性を高める観点から好ましい。
なお、上記一般式(II)〜(IV)で表されるエポキシ樹脂は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0020】
上記一般式(II)で表されるエポキシ樹脂は、EPPN−502H(日本化薬(株)製)として、上記一般式(III)で表されるエポキシ樹脂は、ESN−375(新日鉄住金化学(株)製)として、上記一般式(IV)で表されるエポキシ樹脂は、HP−4710(DIC(株)製)として、それぞれ市販品として入手することができる。
【0021】
上記トリフェニルメタン骨格を有するエポキシ樹脂及びナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂の軟化点は、主として生産性の観点から、好ましくは55〜100℃、より好ましくは60〜90℃、更に好ましくは65〜85℃である。
【0022】
また、(A)成分のエポキシ樹脂全量に対する、上記トリフェニルメタン骨格を有するエポキシ樹脂及び上記ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂の配合量は、好ましくは70〜100質量%、より好ましくは80〜100質量%、更に好ましくは90〜100質量%である。上記範囲内とすることにより、樹脂成形材料の硬化物の耐熱性を向上させることができる。
なお、2種以上を併用する場合には、それらの合計量が上記範囲内となるように調製する。
【0023】
上記(A)成分のエポキシ樹脂は、上記トリフェニルメタン骨格を有するエポキシ樹脂及び上記ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂の他に、本発明の効果を損なわない範囲で半導体素子封止材料として用いられるエポキシ樹脂を併用することができる。併用可能なエポキシ樹脂としては、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、o-クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂等を挙げることができるが、これら以外のエポキシ樹脂を併用してもよい。
なお、上記樹脂を併用する場合、その配合量は(A)成分のエポキシ樹脂100質量部に対し、30質量部以下とすることが好ましく、20質量部以下とすることがより好ましく、10質量部以下とすることが更に好ましい。
【0024】
〔(B)フェノール系硬化剤〕
本発明で用いる(B)成分のフェノール系硬化剤は、一分子中に少なくとも2個の水酸基を有し、トリフェニルメタン骨格、及び/又はナフタレン骨格を含む。具体的には、トリフェニルメタン骨格を有するフェノール樹脂、及びナフタレン骨格を有するフェノール樹脂のうち少なくとも1種を含む。
上記トリフェニルメタン骨格を有するフェノール樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えば、下記一般式(V)で表されるフェノール樹脂が挙げられる。
【0025】
【化8】
(式中、xは0〜10である。)
【0026】
また、上記ナフタレン骨格を有するフェノール樹脂としては、一分子中に少なくとも2個の水酸基を有し、少なくとも1つのナフタレン環を有するフェノール樹脂であれば特に限定されるものではなく、例えば、下記一般式(VI)、及び下記一般式(VII)で表されるフェノール樹脂が挙げられ、これらを好ましく用いることができる。
【0027】
【化9】
(式中、y1は0〜10、y2は0〜10である。)
【0028】
上記(B)成分のフェノール樹脂は、上記一般式(V)で表されるトリフェニルメタン骨格を有するフェノール樹脂、上記一般式(VI)で表されるナフタレン骨格を有するフェノール樹脂、及び上記一般式(VII)で表されるナフタレン骨格を有するフェノール樹脂から選択される少なくとも1種を含むことが、上記(A)成分のエポキシ樹脂とともに、樹脂成形材料の硬化物の耐熱性や生産性を高める観点から好ましい。
なお、上記一般式(V)〜(VII)で表されるフェノール樹脂は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
上記一般式(V)で表されるフェノール樹脂は、MEH−7500(明和化成(株)製)として、上記一般式(VI)で表されるフェノール樹脂は、SN−485(新日鉄住金化学(株)製)として、上記一般式(VII)で表されるフェノール樹脂は、SN−395(新日鉄住金化学(株)製)として、それぞれ市販品として入手することができる。
【0030】
上記トリフェニルメタン骨格を有するフェノール樹脂及びナフタレン骨格を有するフェノール樹脂の軟化点は、主として生産性の観点から、好ましくは65〜130℃、より好ましくは70〜125℃、更に好ましくは75〜120℃である。
【0031】
また、(B)成分のフェノール系硬化剤全量に対する、上記トリフェニルメタン骨格を有するフェノール樹脂及び/又はナフタレン骨格を有するフェノール樹脂の配合量は、好ましくは70〜100質量%、より好ましくは80〜100質量%、更に好ましくは90〜100質量%である。上記範囲内とすることにより、樹脂成形材料の硬化物の耐熱性を向上させることができる。
なお、2種以上を併用する場合には、それらの合計量が上記範囲内となるように調製する。
【0032】
上記(B)成分のフェノール系硬化剤は、上記トリフェニルメタン骨格を有するフェノール樹脂及び上記ナフタレン骨格を有するフェノール樹脂の他に、本発明の効果を損なわない範囲で半導体素子封止材料として用いられるフェノール系樹脂を併用することができる。併用可能な樹脂としては、例えば、フェノールノボラック、o-クレゾールノボラック等を挙げることができるが、これら以外のフェノール樹脂を併用してもよい。
また、本発明の効果を損なわない範囲で、無水酸系硬化剤、アミン系硬化剤等を併用してもよい。
なお、上記樹脂を併用する場合、その配合量は(B)成分のフェノール系硬化剤100質量部に対し、30質量部以下とすることが好ましく、20質量部以下とすることがより好ましく、10質量部以下とすることが更に好ましい。
【0033】
〔(C)マレイミド樹脂〕
本発明で用いる(C)成分のマレイミド樹脂は、下記一般式(I)で表され、1分子内にマレイミド基を2つ以上含む化合物であり、加熱によりマレイミド基が反応することで3次元的網目構造を形成し、硬化する樹脂である。また、上記マレイミド樹脂は、耐熱性や耐熱分解性に優れる。
【化10】
【0034】
上記一般式(I)中、R
1はそれぞれ独立に炭素数1〜10の炭化水素基である。pは0〜4の整数、qは0〜3の整数である。
上記炭素数1〜10の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基などのアルキル基;ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基などのアルケニル基;フェニル基、トリル基、キシリル基などのアリール基;ベンジル基、フェネチル基などのアラルキル基;クロロメチル基、3−クロロプロピル基などの置換アルキル基などの1価の炭化水素基が挙げられる。
また、複数のR
1は、互いに同一でも異なっていてもよい。
zは0〜10であり、好ましくは0〜4である。
【0035】
上記一般式(I)で表されるマレイミド樹脂の具体例としては、例えば、N,N’−(4,4’−ジフェニルメタン)ビスマレイミド、ビス(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン、ポリフェニルメタンマレイミド等が挙げられる。
また、上記マレイミド樹脂は、例えば、N,N’−(4,4’−ジフェニルメタン)ビスマレイミドでz=0を主成分とするBMI、BMI−70(以上、ケイアイ化成(株)製)、BMI−1000(大和化成工業(株)製)、同じくz=0〜2を主成分とするBMI−2300(大和化成工業(株)製)等が市販品として入手することができる。
【0036】
上記(C)成分のマレイミド樹脂は、その一部若しくは全部を上記(A)成分のエポキシ樹脂の一部若しくは全部と、又は上記(B)成分のフェノール系硬化剤の一部若しくは全部と、予め予備混合を行なってから用いてもよい。予備混合の方法は特に限定されず、公知の混合方法を用いることができる。例えば、攪拌可能な装置を用い、(A)成分のエポキシ樹脂又は(B)成分のフェノール系硬化剤を50〜180℃で溶融した後、攪拌しつつ(C)成分のマレイミド樹脂を徐々に加えて混合し、その全てが溶融してから更に10〜60分程度攪拌し、予備混合樹脂とする方法等が挙げられる。
なお、予備混合において、(A)成分のエポキシ樹脂や(B)成分のフェノール系硬化剤をそれぞれ2種以上用いてもよい。
【0037】
耐熱分解性の観点から、上記(C)成分のマレイミド樹脂の含有量は、(A)成分、(B)成分、及び(C)成分の合計100質量%に対し、30質量%以上であることが好ましく、45質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上であることが更に好ましい。
また、特に成形性の観点から、上記(C)成分のマレイミド樹脂の含有量は、(A)成分、(B)成分、及び(C)成分の合計100質量%に対し、80質量%以下であることが好ましい。
【0038】
上記(C)成分のマレイミド樹脂は、本発明の効果を妨げない範囲で、上記一般式(I)で表されるマレイミド樹脂以外のマレイミド樹脂を併用してもよい。併用可能なマレイミド樹脂としては、例えば、3,3’−ジメチル−5,5’−ジエチル−4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド、m−フェニレンビスマレイミド、2,2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシン)フェニル]プロパン、1,6−ビスマレイミド−(2,2,4−トリメチル)ヘキサン等を挙げることができるが、これら以外の従来公知のマレイミド樹脂を併用してもよい。
なお、上記一般式(I)で表されるマレイミド樹脂以外のマレイミド樹脂を配合する場合、その配合量は、(C)成分のマレイミド樹脂100質量部に対し、30質量部以下とすることが好ましく、20質量部以下とすることがより好ましく、10質量部以下とすることが更に好ましい。
【0039】
〔(D)シランカップリング剤〕
本発明で用いる(D)成分のシランカップリング剤は、炭素数2〜4のアルコキシ基を有するグリシドキシプロピルトリアルコキシシランを含有し、Niメッキとの密着性を向上させる効果を有する。中でも、Niメッキとの密着性向上の観点から、アルコキシ基の炭素数が2である3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランが好ましい。
炭素数2〜4のアルコキシシラン系カップリング剤は、炭素数1のトリメトキシシラン系カップリング剤と比較してアルコキシ基の加水分解性が低く、後述する(E)成分のシリカ等の無機充填材との反応性が相対的に低いため、エポキシ樹脂成形材料と被着体との界面に上記
カップリング剤がブリードアウトしやすく、両者の密着性向上に有利に働くものと考えられる。
【0040】
3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランの市販品は、KBE−403(信越化学工業(株)製)として入手することができる。
【0041】
樹脂成形材料全量に対する上記炭素数2〜4のグリシドキシプロピルトリアルコキシシランの配合量は、好ましくは0.01〜1質量%、より好ましくは0.03〜0.5質量%、更に好ましくは0.05〜0.4質量%である。0.01質量%以上とすることで、Niメッキとの密着性を向上させることができ、1質量%以下とすることで、樹脂成形時の硬化性の低下を抑制することができる。
【0042】
上記(D)成分のシランカップリング剤は、さらにイソシアネートプロピルトリアルコキシシランを含有することが、Niメッキとの密着性をより向上させる観点から、好ましい。
上記イソシアネートプロピルトリアルコキシシランの具体例としては、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。中でも、Niメッキとの密着性向上の観点からは、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランが好ましい。これらは1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランの市販品は、KBE−9007(信越化学工業(株)製)として入手することができる。
【0044】
上記(D)成分のシランカップリング剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、さらに他のシラン系カップリング剤を併用してもよく、エポキシ樹脂成形材料の機械強度を高める観点から、トリメトキシシラン系カップリング剤を併用する等の例を挙げることができる。
上記トリメトキシシラン系カップリング剤としては、例えば、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0045】
上記(D)成分のシランカップリング剤の例として、例えば、(D)成分全量に対し、上記3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランを30〜70質量%とした上で、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランや3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを併用する等を挙げることができる。また、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを同質量%程度ずつ併用する等の例示も可能である。
【0046】
なお、上記(D)成分のシランカップリング剤は、後述する(E)成分のシリカ等の無機充填材と単純に混合して用いてもよいし、予めシリカ等の無機充填材に表面処理を施して用いてもよいが、生産性を考慮すると、単純混合でも十分に効果的である。
【0047】
〔(E)無機充填材〕
本発明の封止用エポキシ樹脂成形材料は、(E)成分の無機充填材を含有する。無機充填材を含有することで、硬化物の機械強度、線膨張係数、熱伝導性等の向上を図ることができる。
上記(E)成分の無機充填材は、一般に封止用成形材料に用いられるものを適宜選択して使用することができ、特に限定されない。例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、合成シリカ、アルミナ、ジルコン、ケイ酸カルシウム、炭酸カルシウム、チタン酸バリウム、窒化アルミ、窒化ホウ素等を挙げることができる。これらは1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0048】
上記(E)成分の無機充填材の平均粒径は、通常、0.5〜30μm程度、好ましくは5〜20μmである。なお、上記平均粒径は、レーザ回折散乱方式(たとえば、(株)島津製作所製、装置名:SALD-3100)により測定された値である。
【0049】
上記(E)成分の無機充填材は、シラザンにより表面処理されたシリカを含むことが、Niメッキとの密着性向上の観点から好ましい。シラザン処理を施されるシリカは、溶融シリカ、結晶シリカ、合成シリカのいずれであってもよい。また、シラザン処理を施された複数種のシリカを併用してもよい。
シリカ表面をシラザン処理する方法としては、例えば、ヘキサメチルジシラザンを用い、80〜100℃程度の温度下で湿式処理する方法等が挙げられる。
【0050】
なお、シラザン処理されたシリカの市販品としては、例えば、平均粒径0.5〜1.0μmの合成シリカをシラザン処理したSC−2500SQ((株)アドマテックス製)等が挙げられる。
【0051】
シラザン処理されたシリカを含む(E)成分の無機充填材として、例えば、平均粒径10〜30μmの溶融球状シリカに、シラザン処理された平均粒径0.5〜1.0μmの合成シリカを、該溶融球状シリカの1〜10質量%程度混合して(E)成分とする、等を例示することができる。
【0052】
樹脂成形材料全量に対する上記(E)成分の配合量は、流動特性や線膨張係数、熱伝導率等の観点から、好ましくは60〜95質量%、より好ましくは65〜90質量%、更に好ましくは70〜88質量%である。
【0053】
本発明の封止用エポキシ樹脂成形材料には、以上の各成分の他に、本発明の効果を阻害しない範囲で、この種の組成物に一般に配合される離型剤、硬化促進剤、シリコーン系等の低応力剤、難燃剤、カーボンブラック、有機染料、酸化チタン、ベンガラ等の着色剤等を必要に応じて配合することができる。
【0054】
上記離型剤としては、例えば、カルナバワックス等の天然ワックス、脂肪酸エステル系ワックス、脂肪酸アミド系ワックス、非酸化型ポリエチレン系離型剤、酸化型ポリエチレン系離型剤等を挙げることができる。
上記離型剤は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、数平均分子量800〜2000の酸化型ポリエチレン系離型剤を単独で用いると、Niメッキとの密着性が高くなる傾向があり、好ましく用いることができる。数平均分子量800〜2000の酸化型ポリエチレン系離型剤の市販品としては、例えば、三井化学(株)製のハイワックスHW−4051E、HW−4052E、HW−4202E、HW−4252E等が挙げられる。
【0055】
また、上記硬化促進剤としては、例えば、トリフェニルホスフィン、トリス(4−メチルフェニル)ホスフィン、テトラフェニルホスフィン・テトラフェニルボロン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール等を挙げることができる。
上記硬化促進剤は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0056】
上記難燃剤としては、例えば、ブロム化エポキシ樹脂、三酸化アンチモン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ホウ酸亜鉛、酸化亜鉛、リン酸エステル等のリン化合物、メラミン、シクロホスファゼン等を挙げることができる。
上記難燃剤は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0057】
また、本発明の封止用エポキシ樹脂成形材料には、半導体素子の耐湿性や高温放置特性向上等の観点から、陰イオン交換体等のイオントラップ剤を配合することができる。陰イオン交換体としては、例えば、ハイドロタルサイト類、マグネシウム、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、ビスマス等から選ばれる元素の含水酸化物等を挙げることができるが、これら以外の従来公知の陰イオン交換体を併用してもよい。これらは、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0058】
本発明の封止用エポキシ樹脂成形材料は、上記成分(A)〜(E)、及び前述したその他の成分を所定量配合したものを均一に分散混合することにより、調製することができる。調製方法は、特に限定されないが、一般的な方法として、例えば、上記各成分を所定量配合したものを、ミキサー等で十分に混合し、次いで、ミキシングロール、押出機等により溶融混合した後、冷却、粉砕する方法を挙げることができる。
【0059】
本発明の封止用エポキシ樹脂成形材料中に含まれる上記成分(A)〜(E)の合計含有量は、好ましくは90〜100質量%、より好ましくは95〜100質量%、更に好ましくは98〜100質量%である。
【0060】
このようにして得られた封止用エポキシ樹脂成形材料の硬化物のガラス転移温度は、好ましくは240℃以上、より好ましくは250℃以上、更に好ましくは260℃以上である。また、上記封止用エポキシ樹脂成形材料の硬化物の熱分解温度は、好ましくは350℃以上、より好ましくは370℃以上、更に好ましくは400℃以上である。
なお、上記ガラス転移温度及び熱分解温度は、実施例に記載の方法により測定できる。
また、上記封止用エポキシ樹脂成形材料の硬化物は、Niメッキとの密着性に優れ、225℃で1000時間放置後でも剥離やクラックが発生しにくい。
【0061】
(電子部品装置)
本発明の電子部品装置は、上記封止用エポキシ樹脂成形材料により封止された素子を備える。上記電子部品装置とは、リードフレーム、単結晶シリコン半導体素子又はシリコン、ガリウム等の化合物半導体素子等の支持部材、これらを電気的に接続するためのワイヤやバンプ等の部材、及びその他の構成部材一式に対し、必要部分を上記封止用エポキシ樹脂成形材料により封止された電子部品装置のことである。
また、上記リードフレームの表面にNiメッキが施されていても、上記封止用エポキシ樹脂成形材料を用いることにより、硬化物の耐熱性、Niメッキとの密着性に優れ、高温放置後でも剥離やクラックを発生しにくくすることができる。
【0062】
本発明の封止用エポキシ樹脂成形材料を用いて封止する方法としては、トランスファ成形法が最も一般的であるが、インジェクション成形法、圧縮成形法等を用いてもよい。
【実施例】
【0063】
次に実施例により、本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
【0064】
(実施例1〜10、及び比較例1〜11)
表1及び表2に記載の種類及び配合量の各成分を小型押出機で混練し、封止用エポキシ樹脂成形材料を調製した。各実施例及び比較例における混練温度は、約80℃に設定した。なお、表1及び表2中、空欄は配合なしを表す。
【0065】
封止用エポキシ樹脂成形材料の調製に使用した表1及び表2に記載の各成分の詳細は以下のとおりである。
<エポキシ樹脂>
〔(A)成分〕
・EPPN−502H:トリフェニルメタン型エポキシ樹脂(一般式(II)中のn=0〜3であるエポキシ樹脂が主成分)、日本化薬(株)製、商品名、エポキシ当量168、軟化点67℃
・ESN−375:ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂(一般式(III)中のm=0〜3であるエポキシ樹脂が主成分)、新日鉄住金化学(株)製、商品名、エポキシ当量172、軟化点75℃
・HP−4710:ジヒドロキシナフタレンノボラック型エポキシ樹脂(一般式(IV)で表されるエポキシ樹脂)、DIC(株)製、商品名、エポキシ当量161、軟化点82℃
〔その他〕
・NC−3000:ビフェニレンアラルキル型エポキシ樹脂、日本化薬(株)製、商品名、エポキシ当量270、軟化点52℃
【0066】
<フェノール系硬化剤>
〔(B)成分〕
・MEH−7500:トリフェニルメタン型フェノール樹脂(一般式(V)中のx=1〜4であるフェノール樹脂が主成分)、明和化成(株)製、商品名、水酸基当量97、軟化点110℃
・SN−485:ナフトールアラルキル樹脂(一般式(VI)中のy1=0〜3であるフェノール樹脂が主成分)、新日鉄住金化学(株)製、商品名、水酸基当量215、軟化点87℃
・SN−395:ジヒドロキシナフタレンアラルキル樹脂(一般式(VII)中のy2=0〜3であるフェノール樹脂が主成分)、新日鉄住金化学(株)製、商品名、水酸基当量109、軟化点85℃
〔その他〕
・HE−200C−10:ビフェニレンアラルキル樹脂、エア・ウォーター(株)製、商品名、水酸基当量204、軟化点70℃
【0067】
<マレイミド樹脂>
〔(C)成分〕
・BMI−1000:N,N’−(4,4’−ジフェニルメタン)ビスマレイミド(一般式(I)中のz=0を主成分とする)、大和化成工業(株)製、商品名
・BMI−2300:ポリフェニルメタンマレイミド(一般式(I)中のz=0〜2を主成分とする)、大和化成工業(株)製、商品名
なお、上記マレイミド樹脂は、その全量を(B)成分のフェノール系硬化剤の全量に加え予備混合して用いた。予備混合は、140〜150℃で(B)成分のフェノール系硬化剤の全量を溶融させた後、同温度で、マレイミド樹脂を徐々に加えて混合し、その全量が溶融した後、更に30分程攪拌した。
【0068】
<シランカップリング剤>
〔(D)成分〕
・KBE−403:3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、信越化学工業(株)製、商品名
〔その他〕
・KBM−403:3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、信越化学工業(株)製、商品名
・KBE−9007:3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、信越化学工業(株)製、商品名
・KBE−402:3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、信越化学工業(株)製、商品名
・KBE−903:3−アミノプロピルトリエトキシシラン、信越化学工業(株)製、商品名
【0069】
<無機充填材>
〔成分(E)〕
・FB−105:溶融球状シリカ、電気化学工業(株)製、商品名、平均粒径18μm、比表面積4.5m
2/g
・SC−2500SQ:合成微細球状シリカ(予めシラザン処理を施されている)、(株)アドマテックス製、商品名、平均粒径0.6μm、比表面積6m
2/g
<その他>
・カルナバワックス:離型剤、東洋アドレ(株)製、商品名
・HW−4252E:離型剤(数平均分子量1000の酸化型ポリエチレン系離型剤)、三井化学(株)製、商品名
・PP−200:硬化促進剤(トリフェニルホスフィン)、北興化学工業(株)製、商品名
・MA−600:着色剤(カーボンブラック)、三菱化学(株)製、商品名
【0070】
以下に示す測定条件により、実施例1〜10、及び比較例1〜11で調製したエポキシ樹脂成形材料の特性の測定、及び評価を行った。評価結果を表1及び表2に示した。なお、エポキシ樹脂成形材料の成形は、明記しない限りトランスファ成形機により、金型温度180℃、成形圧力10MPa、硬化時間180〜240秒の条件で行なった。また、後硬化は200℃で8時間行った。
<評価項目>
(1)ガラス転移温度(Tg)
エポキシ樹脂成形材料の硬化物の耐熱性の目安の一つとしてガラス転移温度(Tg)を測定した。まず、縦4mm×横4mm×高さ20mmの金型を用いて、エポキシ樹脂成形材料を上記条件で成形し、更に、上記条件で後硬化させ、成形品(縦4mm×横4mm×厚み20mm)を作製した。該成形品を必要な寸法に切り出したものを試験片とし、該試験片のガラス転移温度(Tg)を、熱分析装置(セイコーインスツル(株)製、SSC/5200)を用いて測定した。なお、240℃以上を合格とする。
【0071】
(2)熱分解温度
エポキシ樹脂成形材料の硬化物の耐熱性のもう一つの目安として、TG−DTAによる熱分解温度を測定した。上記(1)と同サイズの試験片を乳鉢で十分にすり潰して得られた粉末を用い、昇温速度10℃/分で室温(25℃)から600℃まで加熱した。得られた重量変化チャートから、1%の重量減少が認められた温度を熱分解温度とした。測定装置はセイコーインスツル(株)製の「EXSTAR6000」を用いた。なお、350℃以上を合格とする。
【0072】
(2)Niメッキとの密着力
無電解Niメッキ((株)三井ハイテック製、商品名「VQFP208p」)上に、エポキシ樹脂成形材料を上記条件で成形し、更に、上記条件で後硬化させた成形品をそれぞれ4個作製した。ボンドテスター(西進商事(株)製、SS−30WD)を用いて、Niメッキ上に成形したφ3.5mmのプリント状成形物を、成形品の下部より0.5mmの高さから速度0.1mm/秒でせん断方向に引き剥がし、成形物とNiメッキとの密着力を測定した。これを4回行い、平均値を求めた。なお、7MPa以上を合格とする。
【0073】
(3)高温放置後、剥離・クラック観察
無電解Niメッキ((株)三井ハイテック製、商品名「VQFP208p」)上に、エポキシ樹脂成形材料を上記条件で成形し、更に、上記条件で後硬化させた成形品をそれぞれ20個作製した。該成形品を225℃で1000時間放置した後、超音波映像装置((株)日立製作所製、FS300II)を用いて、該成形品を観察し、剥離やクラックの有無について確認した。なお、剥離又はクラック数が20個中4個以下を合格とする。
【0074】
【表1】
【0075】
【表2】
【0076】
以上説明したように、(A)成分〜(E)成分を含有する封止用エポキシ樹脂成形材料を用いた実施例1〜10では、いずれも硬化物のガラス転移温度が240℃以上、熱分解温度が350℃以上であり、Niメッキとの密着性も良好であった。また、225℃で1000時間放置後においても剥離やクラックの発生が少ない結果が得られた。特に、(C)成分のマレイミド樹脂の割合が、(A)成分〜(C)成分の合計量に対し、60質量%以上である実施例8及び9では、ガラス転移温度が270℃、熱分解温度が415℃と共に高く、耐熱性に優れる。また、(D)成分として、グリシドキシプロピルトリエトキシシランとイソシアネートプロピルトリエトキシシランとを含む実施例3は、(C)成分としてグリシドキシプロピルトリエトキシシランのみ用いた実施例2と比較して、Niメッキとの密着性がより高い結果を示している。また、(E)成分として、シラザンにより表面処理されたシリカを含む実施例4は、(D)成分としてシラザンにより表面処理されていないシリカのみを用いた実施例2と比較して、Niメッキとの密着性がより高い結果を示している。
一方、本発明の封止用エポキシ樹脂成形材料とは異なる組成の比較例1〜11では、目標とされるガラス転移温度(250℃)を達成できない(比較例1〜9)、又は、Niメッキとの密着力が弱い(比較例10及び11)等、耐熱性及びNiメッキとの密着性の両立を満足しない結果となった。