【実施例】
【0015】
図1に示すように、車両用ブレーキ液圧制御装置10は、油路(ブレーキ液路)や各種部品が設けられた液圧ユニット50と、液圧ユニット50内の各種部品を制御する制御装置30(本発明のモータ制御装置)とを主に備えている。液圧ユニット50は、液圧源であるマスタシリンダ12、22と、前輪ブレーキ14、24との間に配置される。
液圧ユニット50は、ブレーキレバー11の操作に応じて作動液を加圧し液圧を発生する第1マスタシリンダ12と、前輪ブレーキ14側から逃がされた作動液を一時的に貯留する第1リザーバ13と、第1マスタシリンダ12から前輪ブレーキ14への液圧路に設けられる常開型電磁弁である第1入口制御弁15及び常閉型電磁弁である第1出口制御弁16(本発明の制御弁手段)と、第1リザーバ13に貯留された作動液を吸入して第1マスタシリンダ12側に戻す第1ポンプ17とを備えている。
【0016】
また、液圧ユニット50は、ブレーキペダル21の操作に応じて作動液を加圧し液圧を発生する第2マスタシリンダ22と、後輪ブレーキ24側から逃がされた作動液を一時的に貯留する第2リザーバ23と、第2マスタシリンダ22から後輪ブレーキ24への液圧路に設けられる常開型電磁弁である第2入口制御弁25及び常閉型電磁弁である第2出口制御弁26(本発明の制御弁手段)と、第2リザーバ23に貯留された作動液を吸入して第2マスタシリンダ22側に戻す第2ポンプ27と、第1・第2ポンプ17、27を駆動するモータ28とを備えている。
【0017】
さらに、車両用ブレーキ液圧制御装置10は、第1・第2入口制御弁15、25と第1・第2出口制御弁16、26の開閉制御をなす駆動制御部32と、モータの端子間電圧を取得する電圧取得部33とを備えている。駆動制御部32及び電圧取得部33は、制御装置30(詳細後述)を構成する。
【0018】
上記の構成を有する液圧回路20aは、基体20に形成されている。モータ28は、基体20に取り付けられている。制御装置30によって、液圧回路20aの弁15、16、25、26が制御される。
【0019】
次に、車両用ブレーキ液圧制御装置10の作用を説明する。なお、ブレーキレバー11から前輪ブレーキ14までの第1系統と、ブレーキペダル21から後輪ブレーキ24までの第2系統とは、作用が同じであるため、第1系統のみを説明する。
【0020】
まず、通常ブレーキ時及びアンチロックブレーキシステム(以下、ABSという)制御時の基本的な動作を説明する。車両用ブレーキ液圧制御装置10は、通常ブレーキ時の通常状態と、ABS制御時の減圧状態、保持状態、増圧状態と、を切り替える機能を有する。
【0021】
通常ブレーキ時;通常状態(すなわち、第1入口制御弁15及び第1出口制御弁16に対して電流が供給されていない状態)は、マスタシリンダ12と前輪ブレーキ14を連通する(第1入口制御弁15が開)とともに、前輪ブレーキ14とリザーバ13の間を遮断する(第1出口制御弁16が閉)状態である。操作子11を操作すると、マスタシリンダ12からの作動液圧が第1入口制御弁15を経由して前輪ブレーキ14に作用し、車輪が制動される。
【0022】
ABS制御時;車輪がロックしそうになった時に、制御装置30によって、減圧状態、保持状態、増圧状態が切り替えられることにより、ABS制御が実行される。
ABS制御時の減圧状態は、第1入口制御弁15及び第2出口制御弁16に対して電流を流して、マスタシリンダ12と前輪ブレーキ14の間を遮断する(第1入口制御弁15が閉)とともに、前輪ブレーキ14とリザーバ13を連通する(第1出口制御弁16が開)状態である。前輪ブレーキ14に通じる作動液が、第1出口制御弁16を通ってリザーバ13に逃がされ、前輪ブレーキ14に作用している作動液圧が減圧される。
【0023】
ABS制御時の保持状態は、第1入口制御弁15にのみ電流を流して、マスタシリンダ12と前輪ブレーキ14の間、前輪ブレーキ14とリザーバ13の間をそれぞれ遮断する(第1入口制御弁15及び第1出口制御弁16が閉)状態である。前輪ブレーキ14、第1入口制御弁15及び第1出口制御弁16で閉じられた流路内に作動液が閉じ込められ、車輪ブレーキに作用している作動液圧が一定に保たれる。
【0024】
ABS制御時の増圧状態は、第1入口制御弁15及び第1出口制御弁16への電流供給を停止して、マスタシリンダ12と前輪ブレーキ14との間を連通しつつ(第1入口制御弁15が開)、前輪ブレーキ14とリザーバ13の間を遮断する(第1出口制御弁16が閉)状態である。
これにより、第1マスタシリンダ12からの作動液圧によって前輪ブレーキ14の液圧が増圧される。また、ABS制御時は、制御装置30がモータ28を駆動することで第1ポンプ17を作動させる。これによって、第1リザーバ13に一時的に貯留された作動液を第1マスタシリンダ12側に戻すようになっている。
【0025】
次に、制御装置30のブロック図について説明する。
制御装置30は、第1・第2入口制御弁15、25の開閉制御を行うとともにモータ28のON/OFF制御を実行する駆動制御部32と、モータ28の端子間電圧を取得する電圧取得部33とを備えている。
【0026】
次に、制御装置30のモータ駆動制御について説明する。
図2は制御装置30のモータ駆動制御の概要を示している。モータ28を給電されているON状態からOFFに切り替えると(時刻t1)、モータ28の端子間電圧VMが徐々に低下する。時刻t2で、端子間電圧VM目標電圧VTに達すると、直前のOFF時間Toff1に基づきON時間Ton1を設定するとともにモータ駆動信号をOFFからONに切り替える。例えば目標電圧VTは、目標回転数から決定される。
【0027】
その後、ON時間Ton1経過後の時刻t3で、モータ駆動信号をONからOFFに切り替えると、再びモータ28の端子間電圧VMが徐々に低下する。そして、Toff2経過後の時刻t4で、端子間電圧VMが目標電圧VTに達する。尚、外部環境の変化等に応じて、端子間電圧VMの低下速度(すなわちOFF時間)は変化し、ここでは、Toff1<Toff2であるものとする。時刻t4で、この直前のOFF時間Toff2に基づき直後のON時間Ton2を設定するとともにモータ駆動信号をOFFからONに切り替える。その後、ON時間Ton2経過後の時刻t5で、モータ駆動信号をONからOFFに切り替える。
【0028】
次に、OFF時間に基づくON時間の時間設定マップを説明する。
図3は、時間設定マップMPの一例であり、OFF時間Toffが長く(大きく)なるほど、ON時間Tonが短くなるように決められている。より詳しくは、OFF時間が0からToffAまでは、OFF時間が長く(大きく)なるほど、ON時間Tonが短くなるようになっている。また、OFF時間がToffA以上の場合には、ON時間Tonが一定値TonAとなるように決められている。
【0029】
さらに、OFF時間Toffが長くなるにつれ、OFF時間Toffと直後のON時間Tonの合計である1周期相当の時間は、OFF時間Toffが短い場合よりも長くなるように設定する。
【0030】
このような時間設定マップであれば、マスタシリンダ12が低圧であっても、最低限のON時間を確保する。例えば液圧制御中において、ポンプ吐出側の液圧が高い場合には、液圧が低い場合と比べてモータへの負荷が大きく、駆動信号をONからOFFに切り替えた後の端子間電圧の低下も早くなることから、OFF時間が短くなるが、OFF時間が短いと直後のON時間は長く設定されるので、ONに切り替えた後でモータ回転数を十分に上げることができ、液圧に応じた適切なモータ駆動を行うことができる。
【0031】
以上に述べた車両用ブレーキ液圧制御装置10の制御をフロー図に基づいて以下に説明する。例えば、液圧制御中に、モータ駆動条件を満たすと、モータ駆動を開始し、
図4に示すような処理を実行する。
図4に示すように、駆動制御部32は、モータ28のモータ駆動信号がOFFであるか否かを確認する(STEP(以下STと記す)01)。例えば、モータ駆動開始直後は、一定時間ONにした後、OFFに切り替えるようになっている。モータ駆動信号がOFFであれば(YES)、駆動制御部32は電圧取得部33によって取得された端子間電圧が低下して目標電圧に達したか否かを確認する(ST02)。モータ駆動信号がOFFでなければ(NO)、OFFであるか否かを確認し続ける。
【0032】
ST02で端子間電圧が低下し目標電圧に達すれば(YES)、モータ駆動信号をOFFにしてから目標電圧VTに達するまでの時間(直前のOFF時間Toff)を取得し、
図3に示した時間設定マップMPから直前のOFF時間Toffに基づきON時間Tonを設定し(ST03)、これとともにモータ駆動信号をOFFからONに切り替える(ST04)。さらに、モータ駆動信号をOFFからONに切り替えてからON時間経過後に、モータ駆動信号をONからOFFに切り替える(ST05)。
【0033】
上記の制御は、従来技術のようなサイクル制御(PWM制御)ではなく、モータ28の端子間電圧が低下した際の目標電圧と、駆動制御部32に格納された時間設定マップを参照しての直前のOFF時間Toffに基づくON時間Tonとによって、モータ駆動信号のON/OFF制御を行う。換言すると、端子間電圧の下限値(目標電圧)を検出し、直前のOFF時間Toffに基づくON時間Tonを設定するので、発熱を極力抑えつつ、モータの低回転数制御を行うことができる。
【0034】
加えて、上記の制御を行う制御装置30を搭載した車両用ブレーキ液圧制御装置10において、モータ28及びモータ28によって駆動されるポンプ17、27の作動音や振動を小さくし、商品性を向上することができる。さらに、例えば液圧制御中において、ポンプ吐出側の液圧が高い場合には、液圧が低い場合と比べてモータへの負荷が大きく、駆動信号をONからOFFに切り替えた後の端子間電圧の低下も早くなることから、OFF時間が短くなるが、OFF時間が短いと直後のON時間は長く設定されるので、ONに切り替えた後でモータ回転数を十分に上げることができ、液圧に応じた適切なモータ駆動を行うことができる。
【0035】
尚、実施例では、車両用ブレーキ液圧制御装置を自動二輪車に適用した例について説明したが、車両用ブレーキ液圧制御装置が搭載される車両はこれに限定されない。