特許第6611945号(P6611945)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6611945
(24)【登録日】2019年11月8日
(45)【発行日】2019年11月27日
(54)【発明の名称】車両、特に実用車用のディスクブレーキ
(51)【国際特許分類】
   F16D 55/226 20060101AFI20191118BHJP
   F16D 65/18 20060101ALI20191118BHJP
   F16D 65/56 20060101ALI20191118BHJP
   F16C 17/04 20060101ALI20191118BHJP
   F16D 121/14 20120101ALN20191118BHJP
   F16D 125/32 20120101ALN20191118BHJP
【FI】
   F16D55/226 104A
   F16D65/18
   F16D65/56 D
   F16C17/04 Z
   F16D121:14
   F16D125:32
【請求項の数】30
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2018-529742(P2018-529742)
(86)(22)【出願日】2016年9月1日
(65)【公表番号】特表2018-527535(P2018-527535A)
(43)【公表日】2018年9月20日
(86)【国際出願番号】EP2016070560
(87)【国際公開番号】WO2017037145
(87)【国際公開日】20170309
【審査請求日】2018年4月27日
(31)【優先権主張番号】102015114546.4
(32)【優先日】2015年9月1日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】597007363
【氏名又は名称】クノル−ブレムゼ ジステーメ フューア ヌッツファールツォイゲ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Knorr−Bremse Systeme fuer Nutzfahrzeuge GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ベック
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルフガング プリッツ
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル ヒドリンガー
(72)【発明者】
【氏名】マーティン ハインドル
【審査官】 羽鳥 公一
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2013/0008749(US,A1)
【文献】 独国特許出願公開第04416175(DE,A1)
【文献】 独国特許出願公開第102012008573(DE,A1)
【文献】 独国特許出願公開第102012012816(DE,A1)
【文献】 国際公開第1996/012900(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0147139(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 17/00−17/26
F16C 33/00−33/28
F16D 49/00−71/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
両用のディスクブレーキであって、
ブレーキディスク(2)を両側から挟むように構成されたブレーキキャリパ(1)を備え、該ブレーキキャリパ(1)内に、ブレーキを作動させるための作動装置(8)が配置されており、
偏心体(16)を有する一体型の旋回レバー(9)を備え、
少なくとも1つのブレーキプランジャ(6)を備え、該ブレーキプランジャ(6)が、回転軸線(D)を有するねじ山付スピンドルアッセンブリ(4)として形成されており、前記旋回レバー(9)が操作されると、前記ブレーキプランジャ(6)によって、少なくとも1つのブレーキパッド(3)が、前記ブレーキディスク(2)に押付け可能であり、
前記旋回レバー(9)が、前記ブレーキキャリパ(1)内に、前記ブレーキキャリパ(1)に対して相対的に旋回可能に配置されていて、直接に、または中間接続された1つまたは複数のエレメントを介して、前記ブレーキキャリパ(1)に少なくとも1つの所定の支持領域において支持されている、
ディスクブレーキにおいて、
前記ブレーキプランジャ(6)に対して旋回可能な前記旋回レバー(9)が、前記ブレーキキャリパ(1)に設けられた前記支持個所とは反対の側に、凸面状に一体成形された少なくとも1つの区分(21)を有し、該区分(21)が、該区分(21)に適合された凹面状の端面(23)に、前記ねじ山付スピンドルアッセンブリ(4)の前記回転軸線(D)の軸方向の延長上で接触しており
前記旋回レバー(9)の、凸面状に成形された前記区分(21)とは反対の側が、少なくとも1つの球体(34)に支持されており、該球体(34)が、前記ブレーキキャリパ(1)に保持された軸受台(33)に接触しており、前記球体(34)が、前記球体(34)の形状に適合された凹部(35)内に嵌め込まれており、前記軸受台(33)が、別個の構成部分として形成されており、
各軸受台(33)が、円筒状のスピゴット(40)を有し、該スピゴット(40)が、より大径の支持ピン(39)に続いており、前記スピゴット(40)が、前記ブレーキキャリパ(1)に設けられた孔(41)内に嵌め込まれている
ことを特徴とする、ディスクブレーキ。
【請求項2】
凸面状に成形された前記区分(21)が、球区分として形成されていることを特徴とする、請求項1記載のディスクブレーキ。
【請求項3】
凸面状に成形された前記区分(21)が、楕円形に成形された区分として形成されていることを特徴とする、請求項1記載のディスクブレーキ。
【請求項4】
凸面状に成形された前記区分(21)が、樽区分状に成形された区分として形成されていることを特徴とする、請求項1記載のディスクブレーキ。
【請求項5】
凸面状の前記区分(21)が、円筒区分として形成されており、曲面が、前記旋回レバー(9)の旋回方向に延在していることを特徴とする、請求項1記載のディスクブレーキ。
【請求項6】
前記ブレーキプランジャ(6)に、伝動装置車が、相対回動不能に配置されており、前記伝動装置車が、調整装置(5)と作用結合されており、前記凸面状の区分(21)が接触している凹面状の前記端面(23)が、前記ブレーキプランジャ(6)または前記伝動装置車に設けられていることを特徴とする、請求項1記載のディスクブレーキ。
【請求項7】
前記伝動装置車が歯車(26)であることを特徴とする、請求項6記載のディスクブレーキ。
【請求項8】
凸面状に一体成形された前記区分(21)および/または該区分(21)に接触する凹面状の前記端面(23)が、精密加工されていることを特徴とする、請求項1記載のディスクブレーキ。
【請求項9】
凸面状に一体成形された前記区分(21)および/または該区分(21)に接触する凹面状の前記端面(23)が、バレル仕上げ、ラッピング加工、研磨、ホーニング加工、エロージョン加工または圧延加工により精密加工されていることを特徴とする、請求項8記載のディスクブレーキ。
【請求項10】
凸面状に成形された前記区分(21)および/または該区分(21)に適合された、前記ブレーキプランジャ(6)の凹面状の前記端面が、軸受シェル(22)を備えていることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載のディスクブレーキ。
【請求項11】
凸面状に成形された前記区分(21)または前記旋回レバー(9)の前記軸受シェル(22)の、前記旋回レバー(9)の旋回方向における延在長さが、前記旋回レバー(9)の最大旋回ストロークに相当していることを特徴とする、請求項10記載のディスクブレーキ。
【請求項12】
凸面状に成形された前記区分(21)が、前記旋回レバー(9)の前記偏心体(16)に形成されていることを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項記載のディスクブレーキ。
【請求項13】
前記旋回レバー(9)の、凸面状に成形された前記区分(21)とは反対の側に、転動ローラ(20)、球体またはこれに類するもののような少なくとも1つの転動体が設けられていることを特徴とする、請求項12記載のディスクブレーキ。
【請求項14】
前記転動体と前記旋回レバー(9)との間および/または前記転動体と前記ブレーキキャリパ(1)との間に、少なくとも1つの軸受装置が設けられていることを特徴とする、請求項13記載のディスクブレーキ。
【請求項15】
前記少なくとも1つの軸受装置が、滑り軸受シェル(18)として形成されていることを特徴とする、請求項14記載のディスクブレーキ。
【請求項16】
前記少なくとも1つの軸受装置が、転がり軸受シェルとして形成されていることを特徴とする、請求項15記載のディスクブレーキ。
【請求項17】
前記軸受シェル(22)が、前記旋回レバー(9)の凸面状に成形された前記区分(21)に形成されている、請求項10または11記載のディスクブレーキ。
【請求項18】
前記滑り軸受シェル(18)が、転動体を収容するために、複合滑り軸受から形成されていることを特徴とする、請求項15記載のディスクブレーキ。
【請求項19】
前記ブレーキプランジャ(6)に相対回動不能に結合された前記伝動装置車と、該伝動装置車に対応する、前記調整装置(5)に設けられた伝動装置車とが、軸方向移動可能ではあるが回転不能に前記調整装置(5)に保持された連行装置(27)に配置されていることを特徴とする、請求項6または7記載のディスクブレーキ。
【請求項20】
前記連行装置(27)が、互いに平行にかつ間隔を置いて配置された2つのプレート(28)から成っていることを特徴とする、請求項19記載のディスクブレーキ。
【請求項21】
前記プレート(28)の間隔を保持するために、スペーサスリーブ(30)が設けられており、該スペーサスリーブ(30)を貫いてねじ(29)が案内されていることを特徴とする、請求項20記載のディスクブレーキ。
【請求項22】
前記プレート(28)のうちの少なくとも一方のプレート(28)にエンボス加工部が設けられており、該エンボス加工部が、互いに結合されていることを特徴とする、請求項20または21記載のディスクブレーキ。
【請求項23】
前記プレート(28)の両方に、エンボス加工部が設けられていることを特徴とする、請求項22記載のディスクブレーキ。
【請求項24】
互いに平行にかつ間隔を置いて配置されている2つの軸受台(33)のうちの少なくともいずれか一方の軸受台が、誤差を補償するように前記ブレーキキャリパ(1)に保持されていることを特徴とする、請求項1から23までのいずれか1項記載のディスクブレーキ。
【請求項25】
前記軸受台(33)が、冷間プレス加工部品として形成されていることを特徴とする、請求項1から24までのいずれか1項記載のディスクブレーキ。
【請求項26】
前記凹部(35)および/または前記旋回レバー(9)に設けられたざる底球面状の凹設部(37)が、滑り軸受(38)によってライニングされていることを特徴とする、請求項1から25までのいずれか1項記載のディスクブレーキ。
【請求項27】
前記凹部(35)および/または前記旋回レバー(9)に設けられたざる底球面状の凹設部(37)が、複合滑り軸受によってライニングされていることを特徴とする、請求項26記載のディスクブレーキ。
【請求項28】
前記支持ピン(39)と前記スピゴット(40)との間に、段付けされた載着面(42)が一体成形されており、該載着面(42)が、前記軸受台(33)の長手方向軸線に対して直交する方向で環状に延びていて、前記ブレーキキャリパ(1)に切削加工された当付け面に接触していることを特徴とする、請求項1から27までのいずれか1項記載のディスクブレーキ。
【請求項29】
前記軸受台(33)が、回転対称であることを特徴とする、請求項1から28までのいずれか1項記載のディスクブレーキ。
【請求項30】
前記両軸受台(33)のスピゴット(40)が、前記ブレーキキャリパ(1)に固く結合されていることを特徴とする、請求項1から29までのいずれか1項記載のディスクブレーキ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部に記載の、実用車用のディスクブレーキに関する。
【0002】
このようなディスクブレーキは、種々の構成が知られている。たとえば、独国実用新案第9422342号明細書(DE 9422342 U1)には、ブレーキを作動させるための作動装置(Zuspanneinrichtung)が開示されており、この作動装置は、制動時に旋回可能となる旋回レバーを備えており、この旋回レバーの一方の端部は、偏心体として形成されている。
【0003】
この場合、偏心体は、一方ではブレーキキャリパのキャリパヘッドの内壁に接触しており、他方では転動ローラを介してブリッジに接触している。このブリッジには、ねじ山付スピンドルとして形成された2つのブレーキプランジャが回転可能に支持されている。これらのブレーキプランジャは、制動時に、すなわち旋回レバーの旋回時に、対応するブレーキパッド(ブレーキディスクの両側の、好ましくは2つのブレーキパッドのうちのいずれか一方)に押圧可能となり、このブレーキパッドは次いで、車両側のブレーキディスクに押し付けられる。
【0004】
旋回レバーをキャリパヘッドに支持するためには、転がり軸受が設けられている。転がり軸受は、通常、針状ころ軸受として形成されており、この針状ころ軸受は、特殊に形成された軸受シェル内に保持されている。上記転動ローラを用いた、ブリッジにおける旋回レバーの支持は、ブリッジおよび/または旋回レバーに設けられた樋形の凹部内に嵌め込まれる軸受シェルとして、いわゆる「DU(登録商標)軸受」を使用することによって行われる。
【0005】
独国特許出願公開第102004058433号明細書(DE 10 2004 058 433 A1)に開示されているディスクブレーキは、構造の点で、前で挙げたディスクブレーキに相当している。ただし、この場合、別個の転動ローラの代わりに、旋回レバーは、一体に成形された転動ローラを有し、この転動ローラは、直接にブリッジに接触している。
【0006】
国際公開第96/12900号(WO 96/12900A1)に開示された、比較可能な別の構成では、旋回レバーが、転動ローラを介してキャリパヘッドに支持されており、それに対して、転がり軸受は、ブリッジに位置決めされている。
【0007】
独国特許出願公開第4416175号明細書(DE 44 16 175 A1)に基づき公知のディスクブレーキでは、旋回レバーの偏心区分が、ブレーキプランジャを支持しているブリッジに接触している。この場合、このブリッジは、凸面状の湾曲させられた偏心区分を収容するために、この凸面状の湾曲に適合された、凹面状に形成された樋形溝を有する。
【0008】
ディスクブレーキの別の構成が、独国特許出願公開第10139902号明細書(DE 101 39 902 A1)に開示されている。同独国特許出願公開明細書では、旋回レバーを直接にブレーキプランジャに作用させることが提案されている。このためには、旋回レバーと、ブレーキプランジャのねじ山付スピンドルとの間に球体が支持されている。旋回レバー自体は、やはり球体を介して旋回可能にキャリパヘッドに支持されている。このディスクブレーキの別の変化実施態様では、中間部材が使用されるようになっており、中間部材は、球状に成形された端部を有し、これらの端部は、旋回レバーに設けられた、前記端部に適合された凹部内に嵌め込まれており、この場合、各中間部材は、ブレーキプランジャの構成要素として、それぞれ対応するねじ山付スピンドルと機能的に結合されている。
【0009】
独国特許出願公開第102012008573号明細書(DE 10 2012 008 573 A1)および独国特許出願公開第102012012816号明細書(DE 10 2012 012 816 A1)に基づきそれぞれ公知のディスクブレーキでは、旋回レバーが、同じく球体を用いて、一方ではブレーキプランジャに、他方ではブレーキキャリパに、それぞれ支持されている。しかし、ディスクブレーキを作動させるためには、中央の1つのブレーキプランジャしか設けられていない。この中央のブレーキプランジャは、回転可能な作動スピンドルと、この作動スピンドル上を案内されるスリーブとを備えており、このスリーブは雌ねじ山を備えていて、この雌ねじ山は、作動スピンドルに設けられた雄ねじ山に螺合している。この場合、スリーブの、旋回レバーとは反対の側でかつブレーキパッドに面した側が、対応するブレーキパッドに接触している押圧部材を支持しており、この押圧部材はプレッシャプレートとして形成されている。
【0010】
球体をブレーキキャリパに、つまりキャリパ背面に、位置決めするためには、軸受け台が、ブレーキキャリパに一体成形されている。軸受け台の端面側は、球体を収容するために、この球体に適合された凹部を有する。
【0011】
この場合に問題となるのは、軸受け台の切削加工が必要となることである。このためには、相応する長さを有する、つまりは不安定となる工具が、ブレーキキャリパの組付け開口を通じて導入されなければならない。これに伴い、加工自体の点でも、加工の管理の点でも、かなりの製作手間がかかり、加工の管理には、与えられた寸法条件や表面品質が含まれる。もちろん、このことは、製作やコストにかなりの手間をかけた場合にしか可能にならない。
【0012】
ブレーキプランジャに並んで、旋回レバーを介して操作可能な調整装置が配置されている。この調整装置は、歯車を備えており、この歯車は、作動スピンドルに相対回動不能に保持された歯車と噛み合っているので、摩耗により通気クリアランスが変化した場合に通気クリアランスを調整するために、調整装置によって駆動されて作動スピンドルが回転し、スリーブが、押圧部材によって軸方向で、対応するブレーキパッドに向かって移動する。
【0013】
独国特許出願公開第102012103017号明細書(DE 10 2012 103 017 A1)にも、国際公開第2013/180557号(WO 2013/180 557 A1)にも、それぞれディスクブレーキの作動装置が開示されかつ記載されている。この作動装置では、冒頭で述べた形式のディスクブレーキとは異なり、通気クリアランス補償のための調整が、ブレーキプランジャの回転によって行われるのではなく、ブリッジに案内されたねじ山付ピンによって行われる。このねじ山付ピンの回転時に、ブリッジは相応して調節される。
【0014】
旋回レバーは、独国特許出願公開第102012103017号明細書(DE 10 2012 103 017 A1)に基づき公知の構成では、凸面状の偏心区分によって、転がり軸受を介して押圧部材に接触しており、この押圧部材はブリッジに対応している。
【0015】
上記構成とは異なり、国際公開第2013/180557号(WO 2013/180 557 A1)に記載の装置では、旋回レバーが転動ローラに接触しており、この転動ローラは、他方では、固定のブレーキプランジャに設けられた樋状の収容部内に嵌め込まれている。
【0016】
公知のディスクブレーキにおいて改善可能であるのは、作動装置の多数の構成部分点数である。これらの多数の構成部分は、相応して高い製作手間をかけないと提供され得ず、しかもかなりの組立コストを発生させる原因にもなる。なぜならば、関与する全ての構成部分が、正確に嵌合しかつ正確に機能するように取り付けられなければならないからである。さらに、特に、ねじ山付スピンドルを収容しているブリッジに作用するサイドフォースを吸収できるようにするために、特に構造的な手段が必要となる。
【0017】
上記背景に基づき、本発明の根底を成す課題は、冒頭で述べた形式のディスクブレーキを改良して、一層簡単にかつ廉価に製作・組立可能となり、作動確実性が改善されるようなディスクブレーキを提供することである。
【0018】
この課題は、請求項1に記載の特徴を有するディスクブレーキにより解決される。車両、特に実用車用のディスクブレーキであって、ブレーキディスクを両側から挟み込んで跨がるように設計されたブレーキキャリパを備え、該ブレーキキャリパ内に、ブレーキを作動させるための作動装置が配置されており、偏心体を有する旋回レバーと、少なくとも1つのブレーキプランジャとを備え、該ブレーキプランジャが、回転軸線を有するねじ山付スピンドルアッセンブリとして形成されており、前記旋回レバーが操作されると、前記ブレーキプランジャによって、少なくとも1つのブレーキパッドが、前記ブレーキディスクに押付け可能であり、前記旋回レバーが、前記ブレーキキャリパ内に、前記ブレーキキャリパに対して相対的に旋回可能に配置されていて、直接に、または中間接続された1つまたは複数のエレメントを介して、前記ブレーキキャリパに少なくとも1つの所定の支持領域において支持されており、前記ブレーキプランジャに対して旋回可能な前記旋回レバーが、前記ブレーキキャリパに設けられた前記支持個所とは反対の側に、凸面状に成形された少なくとも1つの区分を有し、該区分が、該区分に適合された凹面状の端面に、好ましくは前記ねじ山付スピンドルアッセンブリの前記回転軸線Dの軸方向の延長上で接触している、ディスクブレーキが提供される。
【0019】
一方では旋回レバー、他方ではブレーキプランジャの、このような構造的な構成により、原理的には、より高価な転がり軸受の使用を不要にすることができる。ただし、択一的な手段として転がり軸受の使用も可能ではある。その代わりに、旋回レバーの偏心体における(滑り)軸受シェルの形の1つまたは複数の滑り軸受の使用が可能であり、かつ有利である。このような滑り軸受は、一般に、比較可能な転がり軸受よりも廉価である。
【0020】
この場合、本発明における構成は、前記形式の、1つのブレーキプランジャしか有しないディスクブレーキにおいても、2つのブレーキプランジャを有するディスクブレーキにおいても、実現可能である。後者の場合、旋回レバーには、好ましくは1つまたはそれどころか2つの凸面状の個所が設けられる。
【0021】
ねじ山付スピンドルアッセンブリのねじ込まれた部分のための、いわば支持体としてブリッジが使用される場合には、旋回レバーは、もはや直接に、もしくは転動ローラを間に挟んで、ブリッジに接触するのではなく、ブレーキプランジャを形成するねじ山付スピンドルアッセンブリの端面に接触する。変化実施態様に応じて、ねじ山付スピンドルアッセンブリのねじは、調整装置と協働して、摩耗による通気クリアランスの変化、すなわち対応するブレーキパッドとブレーキディスクとの間の間隔の変化を補償するために回転可能であってよい。
【0022】
好ましくは、旋回レバーの凸面状の区分に対応して凹面状に成形された区分が、ねじ山付スピンドルアッセンブリの端面に設けられていてよい。この端面は、好ましくは簡単にかつ好都合に、球区分状の凹設部として形成されていてよく、それに対して、この凹設部に接触する、旋回レバーに設けられた対応する区分は、同じく好都合に製作可能な球区分の形のいわば対応部分として、凹設部に適合されている。
【0023】
この場合、旋回レバーの凸面状の区分と、ねじ山付スピンドルアッセンブリの凹面状の凹設部とのペアリング(対偶)は、ねじの回転時に回転軸受けを形成する。
【0024】
ねじ山付スピンドルアッセンブリのねじが回転不能に保持されていて、ブレーキプランジャの構成要素である、前記ねじに対して回転可能なねじ山付スリーブと螺合しているような変化実施態様では、旋回レバー寄りの端面側の凹面状の湾曲が、円筒区分の輪郭を有していてよい。この場合、湾曲の曲面は、旋回方向に延在している。この凹面状の湾曲に適合されるように、旋回レバーには凸面状の湾曲が設けられており、この凸面状の湾曲は、ナットもしくはねじ山付スリーブの端面に接触した区分に設けられている。この場合、この区分の湾曲面は、旋回レバーの全旋回範囲にわたって延在している。
【0025】
本発明の別の思想では、旋回レバーの成形された区分および/または対応して成形された、ブレーキプランジャの端面に、軸受シェルが、好ましくは滑り軸受シェル、特に金属/プラスチックから成る複合軸受シェルとして設けられており、これにより、旋回レバーの旋回時における摩擦が最小限に抑えられる。この場合には、凸面状に成形された区分が、間接的にねじ山付スピンドルアッセンブリもしくはブレーキプランジャに接触している。
【0026】
反対の側でキャリパヘッドに支持された、円筒状に形成されている転動ローラは、同じく軸受シェルによって所定の範囲にわたって被覆される。この軸受シェルは、ブレーキキャリパに設けられた、対応して形成された樋状の軸受溝をライニングしていて、かつ/または転動ローラが嵌め込まれている旋回レバーの樋状の軸受溝をライニングしている。
【0027】
この実施態様では、旋回レバーと転動ローラとが、別個の部分として製作されている。しかし、転動ローラと旋回レバーとを一体に形成することも考えられる。
【0028】
キャリパヘッドにおける旋回レバーの支持は、球体を介して行われることが好ましい。これらの球体は、本発明の好適な実施態様では、別個の軸受台に支持されており、この別個の軸受台は、キャリパヘッドに取り付けられている。
【0029】
2つの軸受個所が配置されている場合、つまりそれぞれ球体を収容するために、球体に適合された凹部を有する2つの軸受台が配置されている場合、両軸受台のうちの一方の軸受台は、キャリパヘッドに固く結合されているのではなく、いわば可動式に結合されているので、軸受部の製作誤差が補償される。
【0030】
製作技術的に最適化されて、軸受台は旋削加工部品として形成されている。この旋削加工部品は、それぞれ1つの支持ピンと、支持ピンに対して段付けされたスピゴットとを備えており、支持ピン内には球体が嵌め込まれており、スピゴットは、キャリパヘッドに設けられた、適合された孔内に差し込まれている。
【0031】
各軸受台の、正確に軸方向に向けられた向きを達成するためには、支持ピンとスピゴットとの間の段部面と、キャリパヘッドに設けられた当付け面とが平坦に形成されており、この当付け面に段部面が接触している。
【0032】
各軸受台の旋削加工部品としての構成は、特に製作技術的な観点では、特に有利であるとみなされる。この場合、キャリパヘッドの当付け面も、僅かな製作手間をかけるだけで製作可能となる。
【0033】
キャリパヘッドにおける一方の軸受台の剛性的な取付けは、摩擦接続式に行われ得る。この場合、キャリパヘッドに設けられた孔とスピゴットとのペアリングが、締まり嵌めとして構成されている。しかし、たとえ製作技術的には、より手間がかかるとしても、スピゴットに雄ねじ山を設け、キャリパヘッドの孔に雌ねじ山を設けることも、考えられる。
【0034】
旋削加工部品として製作する代わりに、軸受台は、冷間プレス法によっても製作されていてよいので、付加的な機械的加工、特に切削加工は必要とならない。これにより、特に廉価な製作が得られる。
【0035】
必要に応じて、一方の軸受台を可動式に支持する代わりに、両軸受台を可動式に支持することも考えられる。
【0036】
さらに、球体と旋回レバーとの間に、滑り軸受シェル、特に、金属と、これに結合されたプラスチック層とから成る複合滑り軸受の形の滑り軸受シェルを配置することも考えられる。
【0037】
基本的に、旋回レバーの凸面状に成形された区分と、この区分に適合された、ブレーキプランジャの端面とは、機械による別の加工なしに使用され得る。この場合、旋回レバーの構成、とりわけ成形された区分の構成は、変形加工により製作されており、たとえば鍛造またはタウメル式かしめにより製作されている。特別な表面要求のためには、互いに接触する表面が後加工されていてもよい。
【0038】
上の説明から判ったように、旋回レバーの凸面状に成形された区分の構成および/またはこの区分に接触する、ねじ山付スピンドルアッセンブリの凹面状の端面は、これらの当付け面が、できるだけ粗さを少なくするために、精密加工に施されていると、特に機能上の利点を提供する。精密加工としては、たとえばバレル仕上げ、ラッピング加工、研磨、ホーニング加工、エロージョン加工または圧延加工が挙げられる。この場合、前に挙げたこれらの加工方法は、例示的に挙げたものであるに過ぎない。ディスクブレーキのような大量生産品のために課せられた要求に相応して、経済的に好都合な程度で得られる、できるだけ低い粗さ値が目標とされる。
【0039】
要約すると、本発明は、製作が一層廉価となり、かつ組立手間が一層少なくなる点ですぐれている。特に、その理由は、作動装置が、全体的に少数の構成部分を用いるだけで実現され得るからである。
【0040】
ディスクブレーキの作動確実性も、本発明により、改善を受ける。なぜならば、機能時にレバー軸受部に作用するサイドフォースが十分に阻止されるからである。
【0041】
前記少なくとも1つの、凸面状に成形された区分が、楕円形、球区分状または樽区分状に形成されていると、単純でかつ廉価となる。
【0042】
従来技術として挙げた独国特許出願公開第102012008573号明細書(DE 10 2012 008 573 A1)に基づき公知であるような、中央に配置された1つのねじ山付スピンドルアッセンブリを備えたディスクブレーキにおいて本発明を実現する場合、調整器の歯車と噛み合っている、ねじに相対回動不能に接続された歯車を有するねじ山付スピンドルアッセンブリの、旋回レバー寄りの端面の凸面状の加工成形部は、旋回レバーの凸面状の区分が直接にまたは間接的に、たとえば間に挟まれた軸受シェルを介して接触するねじに直接、導入されていてよい。しかし、ねじと係合している歯車に設けられた、一体成形された付設部に、凸面状の加工成形部を設けることも考えられる。
【0043】
ねじ山付スピンドルアッセンブリを調整するための歯車駆動装置の代わりに、別の伝動装置アッセンブリ、たとえば引張手段伝動装置も考えられる。
【0044】
制動時、つまり旋回レバーが操作される場合、ねじ山付スピンドルアッセンブリは、ねじに相対回動不能に保持された歯車も一緒に、軸方向でブレーキパッドの方向に移動させられる。この歯車は、既に述べたように、調整器の歯車と噛み合っている。しかし、調整器の歯車は、軸方向でこの場合には固定に位置決めされている。すなわち、噛み合った両歯車は、軸方向において互いに対して相対運動を実施する。しかし、このことは、かなりの機械的負荷を招き、このような負荷により、ブレーキシステムの耐用年数は損なわれる。
【0045】
このことを回避するための手段を提供するために、本発明のさらに別の思想では、チェーン車または歯車のような関与している伝動装置車が軸方向において連行装置に保持されるようになっている。この連行装置は、好ましくは互いに平行にかつ間隔を置いて配置された、好ましくは金属薄板から成る2つのプレートから成っており、両プレートの間に、たとえば歯車が位置決めされている。この場合、これら両プレートは、互いに結合されていて、適当な手段、たとえばエンボス加工部、スペーサスリーブまたはこれに類するものを用いて間隔保持される。このときに、調整器の、たとえば歯車は、相対回動不能に、ただし軸方向移動可能に、調整器に保持されているので、この歯車は、制動時もしくは戻し時にも、ねじ山付スピンドルアッセンブリの歯車の軸方向運動を一緒に実施する。
【0046】
本発明のさらに別の好適な構成は、各従属形式の請求項に記載されている。
【0047】
以下に、本発明の実施形態を図面につき詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1】従来技術によるディスクブレーキを、部分的に断面して上から見た図である。
図2】本発明による作動装置の斜視図である。
図3】作動装置の1実施形態を、断面して側方から見た図である。
図4図3に示した作動装置の細部を、背後から見た斜視図である。
図5】作動装置の別の実施形態を概略的に示す斜視図である。
図6図5に示した作動装置を、断面して側方から見た概略図である。
図7】作動装置の細部を正面から見た斜視図である。
図8】作動装置の側面図である。
図9】本発明のさらに別の実施形態を、断面して斜め側方から見た図である。
図10図9の一部を同じく斜め側方から見た図である。
図11図10の一部を旋回させた状態で斜め側方から見た図である。
図12図9に示した作動装置の細部を背後から見た斜視図である。
図13図12に示した細部の部分図である。
図14図9に示した変化実施形態を断面して上から見た図である。
図15図14に示した細部を断面して上から見た図である。
図16】作動装置を、図14のXVI−XVI線に沿って断面して側方から見た図である。
【0049】
図1には、従来技術によるディスクブレーキが概略的に図示されている。このディスクブレーキは、ブレーキディスク2を両側から挟み込むように跨がった、ピンスライド型キャリパ(Schiebesattel)として形成されたブレーキキャリパ1を備えている。ブレーキキャリパ1には、2つのブレーキパッド3が配置されており、これらのブレーキパッド3は、機能状態において、つまり制動時に、ブレーキディスク2に押し付けられている。
【0050】
この場合、まず、作動側のブレーキパッド3が、作動装置8によってブレーキディスク2に押し付けられ、次いで、反動力に基づいて、移動するブレーキキャリパ1の連行によって、反動側のブレーキパッド3がブレーキディスク2に押し付けられる。
【0051】
作動装置は、中央のねじ山付スピンドルアッセンブリ4を有する。このねじ山付スピンドルアッセンブリ4は、旋回レバー9を介して軸方向にスライド式に、作動側のブレーキパッド3に押付け可能である。
【0052】
ねじ山付スピンドルアッセンブリ4は、回転可能なねじ6と、このねじ6に対して回転不能に保持されたねじ山付スリーブ7とから成り、このねじ山付スリーブ7の雌ねじ山は、ねじ6の雄ねじ山に螺合している。作動側のブレーキパッド3に面した側では、ねじ山付スリーブ7にプレート状の押圧部材10が接続されており、この押圧部材10は制動時にブレーキパッド3に接触する。
【0053】
ねじ6には、摩耗により変化する通気クリアランス、つまりブレーキパッド3とブレーキディスク2との間の間隔、を補償するために、調整器(アジャスタ)5が接続されている。
【0054】
ブレーキキャリパ1の、作動装置8と調整器5とを収容する収容室を保護するためには、ブレーキキャリパ1に設けられた組付け開口が、ブレーキディスク2に面した側で、閉鎖プレート11によって閉じられている。この閉鎖プレート11は、ねじ12によってブレーキキャリパ1に結合されている。
【0055】
ねじ山付スピンドルアッセンブリ4は、閉鎖プレート11を貫通しており、調整器5は、圧縮ばね15によって付勢されて閉鎖プレート11に支持されている。
【0056】
ねじ山付スピンドルアッセンブリ4の貫通領域は、ベローズ13によってシールされている。このベローズ13は、一方では閉鎖プレート11に、他方では押圧部材10もしくはねじ山付スピンドルアッセンブリ4に、それぞれ密に接触している。
【0057】
旋回レバー9は、中間部材である球体36を介して、ねじ山付スピンドルアッセンブリ4に旋回可能に接触していると同時に、球体34を介してブレーキキャリパ1に支持されている。このためには、ブレーキキャリパ1が、旋回レバー9の、ねじ山付スピンドルアッセンブリ4とは反対側の、キャリパヘッドを形成する側に、互いに平行にかつ間隔を置いて配置された2つの軸受台33を有しており、これらの軸受台33は、ブレーキキャリパ1に設けられた収容室内に突入するように一体成形されている。軸受台33は、球体34を収容するために、旋回レバー9に面した側に、嵌入する球体34に適合された凹部35を有する。
【0058】
図2図4には、作動装置8の一部が図示されている。この場合、一体に、好ましくは鍛造、タウメル式かしめまたは同様の変形加工法により製作された旋回レバー9は、その一方の端部が、偏心体16もしくは偏心区分として形成されており、旋回レバー9の他方の端部には、好ましくはカップリング、特に凹設部17の形のカップリングが設けられている。この凹設部17内には、ブレーキシリンダのプッシュロッドが係合しているか、もしくは係合し得る。このプッシュロッドは、たとえばニューマチック式および/または電気モータ式に操作可能である。
【0059】
特に図2および図3から判るように、旋回レバー9の偏心体16は、直接にねじ山付スピンドルアッセンブリ4(そのうちねじ6しか図示されていない)の軸方向の延長上に、特にねじ山付スリーブ7とねじ6との間のねじ運動の回転軸線に相当する回転軸線Dの延長上に位置している。
【0060】
偏心体16の反対の側では、旋回レバー9の偏心体16に樋状溝19が形成されており、この樋状溝19内には、本実施形態では、軸受装置、特に(滑り)軸受シェル18が配置されている。
【0061】
軸受装置、本実施形態では、軸受シェル18内には、円筒状の転動ローラ20が嵌め込まれている。この転動ローラ20は、ブレーキキャリパ1のキャリパヘッドに設けられた支持個所に支持されており、この支持個所は軸受個所であってよい。この場合、転動ローラ20は、好ましくは旋回レバー9のための旋回支承部を形成しており、このことは、特に図4から良く判る。
【0062】
本発明によれば、旋回レバー9の、転動ローラ20とは反対の側の、偏心体16を形成している側は、凸面状に成形された区分21を備えている。この区分21は、ねじ6の、この区分21に適合された凹面状の端面23に接触している。凸面状に成形された区分21の湾曲は、好ましくは、旋回レバー9の偏心体16の湾曲とは反対方向に向けられている。
【0063】
図2および図3に示した実施形態では、区分21が、円筒体周壁の区分として形成されており、この区分の湾曲は、旋回レバー9の旋回方向に延びている。この場合、区分21は、軸受シェル22、好ましくは複合軸受である軸受シェル22によってカバーされている。この複合軸受は、さらに、旋回レバー9の全旋回軌道にわたってこの複合軸受がねじ6の凹面状の端面23に接触するように寸法設定されている。
【0064】
別の変化実施形態では、旋回レバー9の凸面状に成形された区分21が、球区分として形成されており、その場合、ねじ6の端面23は、対応する、ざる底球面として形成されており、ざる底球面には、区分21もしくは軸受シェル22が嵌め込まれる。
【0065】
本実施形態では、1つのブレーキプランジャ、つまり1つのねじ6、しか図示されていないが、当然ながら、ブレーキプランジャが2つの場合もしくは2つのねじ山付スピンドルアッセンブリ4が互いに平行にかつ間隔を置いて配置されている場合に本発明を実現することも可能である。
【0066】
図5には、作動装置8が詳細に図示されている。作動装置8の機能的な構成については、従来技術を示す図1に相当している。すなわち、この場合、ねじ山付スピンドルアッセンブリ4の形の中央の1つのブレーキプランジャが設けられており、この中央のブレーキプランジャは、このブレーキプランジャに隣接して配置された調整器5を備えており、この調整器5によって、歯車伝動装置24の、相対回動不能に接続された歯車25が駆動可能となる。
【0067】
通気クリアランス補償の目的で回転運動を伝達するためには、歯車25が歯車26と噛み合っている。この歯車26は、ねじ6に相対回動不能に結合されているので、歯車26が回転させられ、ひいてはねじ6が回転させられると、ねじ6に沿って案内されたねじ山付スリーブ7が軸方向に移動する。
【0068】
歯車26の配置形式は、図6および図8からも判る。
【0069】
図6に示した実施形態では、旋回レバー9の凸面状の区分21が、軸受シェル22を介して、歯車26に設けられた付設部32に支持されている。このためには、歯車26が、平歯車の形で、この限りでは閉じられている底部を有し、この底部が、隆起された付設部32を備えている。このことは、特に図7から良く判る。図7には、旋回レバー9と歯車26とが一緒になって斜視図で示されている。
【0070】
この構造的な解決手段とは異なり、図8に示した変化形では、旋回レバー9の凸面状の区分21が、ねじ6の、この凸面状の区分に面した側の端面に、やはり軸受シェル22を挟んで接触している。このためには、ねじ6の端面23が、区分21の凸面状の形状に適合されている。
【0071】
図5および図6から判るように、歯車伝動装置24の両歯車25,26は、連行装置27内に位置決めされており、この連行装置27は、互いに対して平行にかつ間隔を置いて配置された2つのプレート28から形成されている。
【0072】
これらのプレート28は、ねじ29によって互いに結合されており、この場合、両プレート28の間の間隔は、ねじ29に沿って案内されたスペーサスリーブ30によって形成され、これにより、歯車伝動装置24を収容するための中間室が提供される。この中間室を形成するためには、両プレート28の少なくともいずれか一方、好ましくは両方が、中間室内に突入したエンボス加工部を備えていてよい。エンボス加工部は、たとえば互いに溶接されている。
【0073】
ブレーキを作動させるために旋回レバー9が旋回させられると、偏心体16を介してねじ山付スピンドルアッセンブリ4が、軸方向でブレーキパッド3(図1)の方向に移動させられ、このときにねじ山付スピンドルアッセンブリ4は歯車26を連行する。それと同時に、連行装置27によって、調整器5の歯車25も連行される。このためには、歯車25は、たしかに相対回動不能ではあるが、しかし軸方向に移動可能に調整器5に保持されている。歯車25,26は機能時にプレート28に対して回転するので、歯車25,26とプレート28との間の摩擦抵抗を減少させるために、滑りリング31が設けられている。
【0074】
さらに、ブレーキの解除後のねじ山付スピンドルアッセンブリ4の戻し、ひいては歯車25の戻しは、圧縮ばね14によって行われる。この圧縮ばね14は、一方では閉鎖プレート11に、他方では対応するプレート28に、それぞれ支持されていて、ねじ山付スピンドルアッセンブリ4に沿って案内されている。
【0075】
図9図16には、本発明のさらに別の変化実施形態が示されている。この変化実施形態では、互いに平行にかつ間隔を置いて配置された軸受台33が、別個の構成部分としてブレーキキャリパ1に保持されている。
【0076】
このためには、各軸受台33が、支持ピン39を有している。この支持ピン39は、本実施形態では円錐状に形成されている。支持ピン39の一方の端部には、スピゴット40が一体成形されており、このスピゴット40は、ブレーキキャリパ1に設けられた孔41内に差し込まれている。
【0077】
支持ピン39の、スピゴット40とは反対の側に位置する端面は、既に従来技術につき説明したように、凹部35として形成されており、この凹部35内には、対応する球体34が嵌め込まれている。
【0078】
この場合、旋回レバー9は、球体34を収容するために、ざる底球面状の凹設部37を有している。このざる底球面状の凹設部37は、滑り軸受シェル38によってライニングされており、この場合、この滑り軸受シェル38は、金属から成る支持層と、プラスチックから成る滑り層とを備えた複合滑り軸受として形成されていてよい。択一的または補足的に、前記凹設部も、滑り軸受シェル38によってカバーされていてよい。
【0079】
支持ピン39とスピゴット40との間に形成された、段付けされた載着面42によって、軸受台33は、ブレーキキャリパ1の、前記載着面に適合された、たとえば切削加工された面に接触している。
【0080】
上で述べたように、軸受台33とブレーキキャリパ1との間の結合は、少なくとも1つの軸受台33が、可動式の軸受部として構成されるように形成されている。これによって、作動装置8の製作誤差を補償することが可能となる。
【0081】
これによって、両軸受台33がブレーキキャリパ1に剛性的に保持されている場合に生ぜしめられるおそれのある、旋回レバー9の軸受部の過剰決定(Ueberbestimmung)が回避される。これにより、高められた摩耗や、耐用年数の減少が著しく低減される。
【0082】
図9には、本発明によるディスクブレーキの一部を断面して側方から見た図が示されている。図10および図11には、それぞれ作動装置8の旋回レバー9の配置形式と、球体34を用いた支持ピン39における旋回レバー9の支持形式とが、後方から互いに異なる方向で見た図で示されている。
【0083】
図12には、旋回レバー9と、旋回レバー9に嵌め込まれた球体34とが単独で図示されている。この場合、軸受台33の細部が判る。
【0084】
図13には、比較可能な図が示されている。この場合、一方の側では軸受台33が図示されており、他方の側では、球体34が、支持ピン39に支持されていない状態で図示されている。
【0085】
図14には、図9に示した細部を、断面して上から見た図が図示されており、図15には、図14に示した作動装置8の細部を、同じく断面して上から見た図が図示されており、ただし、図15には、歯車伝動装置24およびブレーキキャリパ1は省略されている。
【0086】
図16には、作動装置8を、図14におけるXVI−XVI断面線に沿って断面して側方から見た図が示されている。
【符号の説明】
【0087】
1 ブレーキキャリパ
2 ブレーキディスク
3 ブレーキパッド
4 ねじ山付スピンドル
5 調整器
6 ねじ
7 ねじ山付スリーブ
8 作動装置
9 旋回レバー
10 押圧部材
11 閉鎖プレート
12 ねじ
13 ベローズ
14 圧縮ばね
15 圧縮ばね
16 偏心体
17 凹設部
18 軸受シェル
19 樋状溝
20 転動ローラ
21 区分
22 軸受シェル
23 端面
24 歯車伝動装置
25 歯車
26 歯車
27 連行装置
28 プレート
29 ねじ
30 スペーサスリーブ
31 滑りリング
32 付設部
33 軸受台
34 球体
35 凹部
36 球体
37 ざる底球面状の凹設部
38 滑り軸受シェル
39 支持ピン
40 スピゴット
41 孔
42 載着面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16