特許第6612061号(P6612061)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6612061-油圧制御装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6612061
(24)【登録日】2019年11月8日
(45)【発行日】2019年11月27日
(54)【発明の名称】油圧制御装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 6/00 20060101AFI20191118BHJP
   B62D 5/065 20060101ALI20191118BHJP
   B62D 5/30 20060101ALI20191118BHJP
   B62D 5/06 20060101ALI20191118BHJP
【FI】
   B62D6/00
   B62D5/065 B
   B62D5/30
   B62D5/06 B
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-115725(P2015-115725)
(22)【出願日】2015年6月8日
(65)【公開番号】特開2017-1461(P2017-1461A)
(43)【公開日】2017年1月5日
【審査請求日】2018年6月7日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000232807
【氏名又は名称】三菱ロジスネクスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三谷 慎一
【審査官】 森本 康正
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−349893(JP,A)
【文献】 特開平11−268661(JP,A)
【文献】 特開2004−314775(JP,A)
【文献】 特開2001−001918(JP,A)
【文献】 米国特許第05862878(US,A)
【文献】 国際公開第02/012052(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 5/00−6/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステアリングシリンダに作動油を供給して車両のステアリングの操作を行う油圧制御装置であって、
ステアリングホイールの操舵により作動油を送出する操作側ポンプと、
前記操作側ポンプにより送出された作動油を一組の第1のソレノイドバルブへと供給する一組の第1供給通路と、
前記ステアリングホイールの操舵量に応じて、モータによる動力により作動油を送出する動力側ポンプと、
前記動力側ポンプにより送出された作動油を前記第1のソレノイドバルブに供給する一組の第2供給通路と、
前記第1のソレノイドバルブから前記ステアリングシリンダに作動油を供給する一組の第3供給通路と、
前記一組の第1供給通路の間に備えられ、前記一組の第1供給通路間を、連通状態とするか極小絞り弁を介して連通させるか、を切り換え可能な第2のソレノイドバルブと、
前記第1のソレノイドバルブと前記第2のソレノイドバルブとの連通状態を制御するコントローラと、
を備え、
前記コントローラは、前記モータを動作させる場合は、前記第1のソレノイドバルブを、前記第2供給通路から前記第3供給通路へと油圧が供給される状態に切り換えると共に、前記第2ソレノイドバルブを、前記一組の第1供給通路間を連通状態に切り換え、
前記油圧制御回路に電源が供給されていないとき、又は、前記コントローラによる制御が行なわれていないときに、前記第1のソレノイドバルブが、前記第1供給通路と前記第3供給通路とが連通するように切り換わると共に、前記第2のソレノイドバルブが、前記一組の第1供給通路が極小絞り弁を介して連通するように切り換わる
油圧制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の油圧制御装置であって、
前記操作側ポンプよりも前記動力側ポンプが前記ステアリングシリンダに近い側に設けられる油圧制御装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の油圧制御装置であって、
前記ステアリングシリンダが前記車両の後輪側に設けられる油圧制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
産業車両等では、ステアリング機構として主にパワーステアリングが用いられる。パワーステアリングを用いることで、産業車両のステアリングホイールを操作する作業者の負担を軽減することができる。
【0003】
特許文献1には、1個の油圧ポンプからの作動油を油圧パワーステアリング装置と荷受制御装置とに分流させて供給する油圧制御装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−68648号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
パワーステアリング機構の一つとして、例えば、ステアバイワイヤ方式がある。ステアバイワイヤ方式は、ステアリングホイールの操舵角をロータリーセンサで読み取り、読み取った操舵角に応じて油圧ポンプに接続されたモーターを回転させる。そして、ステアリングシリンダに作動油を送出することでパワーステアリング機構を実現する。
【0006】
しかしながら、例えば、電力供給が停止した場合などパワーステアリング機構に不具合が発生すると油圧ポンプを動作させることができなくなるため、ステアリングがきかなくなる。よって、パワーステアリング機構に不具合が発生したときは、その安全性のため、緊急制動せざるを得ないが、このような緊急制動は作業者に不快感や不安感を与える。よって、パワーステアリング機構に不具合が発生した場合であってもステアリング機能を維持できるようにすることが望ましい。
【0007】
本発明はこのような問題点に着目してなされたものであり、パワーステアリング機構に不具合が発生した場合であってもステアリング機能を維持することができる油圧制御装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
当該目的を達成するために、本発明の油圧制御装置は、ステアリングシリンダに作動油を供給して車両のステアリングの操作を行う油圧制御装置である。油圧制御装置は、ステアリングホイールの操舵により作動油を送出する操作側ポンプと、操作側ポンプにより送出された作動油を、一組の第1のソレノイドバルブへと供給する一組の第1供給通路と、ステアリングホイールの操舵量に応じて、モータによる動力により作動油を送出する動力側ポンプと、動力側ポンプにより送出された作動油を第1のソレノイドバルブに供給する一組の第2供給通路と、第1のソレノイドバルブからステアリングシリンダに作動油を供給する一組の第3供給通路と、一組の第1供給通路の間に備えられ、一組の第1供給通路間を、連通状態とするか極小絞り弁を介して連通させるか、を切り換え可能な第2のソレノイドバルブと、第1のソレノイドバルブと前記第2のソレノイドバルブとの連通状態を制御するコントローラと、を備え、コントローラは、モータを動作させる場合は、第1のソレノイドバルブを、第2供給通路から第3供給通路へと油圧が供給される状態に切り換えると共に、第2ソレノイドバルブを、一組の第1供給通路間を連通状態に切り換え、油圧制御回路に電源が供給されていないとき、又は、コントローラによる制御が行なわれていないときに、第1のソレノイドバルブが、第1供給通路と第3供給通路とが連通するように切り換わると共に、第2のソレノイドバルブが、一組の第1供給通路が極小絞り弁を介して連通するように切り換わる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の油圧制御装置によれば、通常時の運転においてはステアリングシリンダへの作動油の供給通路を第2供給通路にすることにより、モーターによる動力により作動油をステアリングシリンダへ送出する。そして、所謂パワーステアリング機構を用いてステアリングの操作を行うことができる。一方、仮に、パワーステアリング機構に何らかの不具合が発生した場合には、ステアリングシリンダへの作動油の供給通路を第1供給通路にすることにより、ステアリングホイールの操舵により送出された作動油をステアリングシリンダへと送出する。これにより、ステアリングホイールの操舵により直接ステアリングの操作を行うことができる。このようにすることで、パワーステアリング機構に不具合が発生した場合であってもステアリング機能を維持することができる油圧制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本実施形態における油圧制御装置の油圧回路図である。
図2図2は、本実施形態における油圧制御装置の動作を説明するフローチャートである。
図3図3は、比較例における油圧制御装置の油圧回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本実施形態における油圧制御装置の油圧回路図である。本実施形態における油圧制御装置1は、手動操作回路10とモータ駆動回路20を備える。また、油圧制御装置1は、コントローラ30とバッテリ40を備える。また、油圧制御装置1は、油圧制御対象であるステアリングシリンダ21と、ステアリングを操作するためのステアリングホイール11を備える。そして、油圧制御装置1全体でパワーステアリング機構を構成する。
【0012】
手動操作回路10は、ステアリングホイール11の操舵により作動油をステアリングシリンダ21に送出する。そして、車両のステアリング操作を手動にて行うものである。なお、車両は、例えばフォークリフトである。
【0013】
モータ駆動回路20は、ステアリングホイールの操舵量に応じてポンプモータ26を回転させ、ポンプモータ26の動力により作動油をステアリングシリンダ21に送出する。そして、モータ駆動回路20は、車両のステアリングの操作をポンプモータ26の動力を用いて行う。
【0014】
コントローラ30は、ステアリングシリンダ21に接続される油圧回路を手動操作回路10とモータ駆動回路20のいずれか一方から他方へと切り換える制御を行う。なお、コントローラ30は、油圧制御装置1のみの制御だけでなく、油圧制御装置1が搭載される車両の他の部位の制御も行うこととしてもよい。
【0015】
バッテリ40は、コントローラ30に接続し、コントローラ30に電力を供給する。本実施形態における油圧制御装置1では、コントローラ30を介して油圧制御装置1内の各部に電力の供給が行われる。
【0016】
以下、手動操作回路10の構成を説明する。
【0017】
手動操作回路10は、油圧ポンプ12(操作側ポンプに相当)と比例ソレノイドバルブ13とチェックバルブ14a,14bと油圧センサ15a,15bと作動油を貯留するリザーバタンクT1を含む。
【0018】
油圧ポンプ12は、ステアリングホイール11に機械的に接続される。油圧ポンプ12は、ステアリングホイール11の操舵によって回転させられ、ステアリングホイール11の操舵角に応じた作動油を通路51aまたは通路51bに送出する。ステアリングホイール11の回転速度が速くなれば、油圧ポンプ12の回転速度も速くなる。油圧ポンプ12としては、例えば、オービットロールポンプなどを採用することができる。
【0019】
比例ソレノイドバルブ13は、コントローラ30に電気的に接続されている。そして、比例ソレノイドバルブ13は、バルブ位置がB位置のときにおいて通路53aと通路53bとを連通させる。また、比例ソレノイドバルブ13は、バルブ位置がA位置のときにおいて通路53aと通路53bとを極小絞り弁を介して連通させる。
【0020】
比例ソレノイドバルブ13は、バルブ位置がB位置とされているときにおいて、コントローラ30からの電流制御によりバルブの開度が制御される。そして、コントローラ30がバルブの開度を制御することにより、流量を0%〜100%の範囲で制御することができる。このように、流量を0%〜100%の範囲で制限することにより、比例ソレノイドバルブ13は、作動油に対して極小絞り弁の効果を発揮する。作動油に対する極小絞り弁は、ステアリングホイール11に対して操舵反力を生じさせる。
【0021】
チェックバルブ14aの一端は、通路51a及び通路53aに接続する。一方、チェックバルブ14aの他端は、通路52aに接続する。通路52aはリザーバタンクT1内に挿通しており、通路51a側の油圧が低い場合において、チェックバルブ14aは開となり、リザーバタンクT1内の作動油を通路51a側に供給する。そして、通路51a側における作動油の不足を補う。
【0022】
同様に、チェックバルブ14bの一端は、通路51b及び通路53bに接続する。一方、チェックバルブ14bの他端は、通路52bに接続する。通路52bはリザーバタンクT1内に挿通しており、通路51b側の油圧が低い場合において、チェックバルブ14bは開となり、リザーバタンクT1内の作動油を通路51b側に供給する。そして、通路51b側における作動油の不足を補う。
【0023】
油圧センサ15aは、通路53aの油圧を検出する。油圧センサ15aは、コントローラ30に接続されている。これにより、コントローラ30は、通路53aの油圧値を読み取ることができる。同様に、油圧センサ15bは、通路53bの油圧を検出する。油圧センサ15bは、コントローラ30に接続されている。これにより、コントローラ30は、通路53bの油圧値を読み取ることができる。コントローラ30は、これら油圧センサ15a,15bによって取得された油圧に応じて比例ソレノイドバルブ13をフィードバック制御する。そして、ステアリングホイール11に対して生じさせる反力を安定化させる。
【0024】
ロータリーセンサ19は、コントローラ30に接続され、ステアリングホイール11の操舵角の情報をコントローラ30に送る。
【0025】
次に、モータ駆動回路20の構成を説明する。
【0026】
モータ駆動回路20は、ソレノイドバルブ22,23とリリーフ弁24a、24bとシャトル弁25とポンプモータ26と油圧ポンプ27(動力側ポンプ)とチェックバルブ28a、28bとリザーバタンクT2,T3を備える。
【0027】
ソレノイドバルブ22は、コントローラ30に電気的に接続されている。ソレノイドバルブ22は、無通電状態のときにおいてバルブ位置がA位置となる。ソレノイドバルブ22は、バルブ位置がA位置のときにおいて通路53aと通路56aとを連通させる。また、ソレノイドバルブ22は、バルブ位置がB位置のときにおいて通路54aと通路56aとを連通させる。
【0028】
ソレノイドバルブ23は、コントローラ30に電気的に接続されている。ソレノイドバルブ23は、無通電状態のときにおいてバルブ位置がA位置となる。ソレノイドバルブ23は、バルブ位置がA位置のときにおいて通路53bと通路56bとを連通させる。また、ソレノイドバルブ23は、バルブ位置がB位置のときにおいて通路54bと通路56bとを連通させる。
【0029】
リリーフ弁24aは、通路54aに接続する。そして、通路54aの油圧が高いときには作動油を通路57を経由させてリザーバタンクT3に逃がし、通路54aの油圧が上がりすぎないようにする。また、リリーフ弁24bは、通路54bに接続する。そして、通路54bの油圧が高いときには作動油を通路57を経由させてリザーバタンクT3に逃がし、通路54bの油圧が上がりすぎないようにする。
【0030】
シャトル弁25は、通路54aと通路54bに接続する。そして、通路54aと通路54bのうち一方の通路の油圧が高まると他方の通路のバルブを開にする。このようにすることで、低圧側の作動油が不足したときでもリザーバタンクT3の作動油を供給することができる。例えば、通路54a側の油圧が低く作動油が不足する場合には、通路54aに作動油を供給することができる。また、通路54b側の油圧が低く作動油が不足する場合には、通路54bに作動油を供給することができる。
【0031】
ポンプモータ26は、コントローラ30と電気的に接続される。また、ポンプモータ26は、油圧ポンプ27と機械的に接続されている。ポンプモータ26は、コントローラ30によりその回転速度を制御される。コントローラ30は、ロータリセンサ19によって取得されたステアリングホイールの操舵角に応じて、ポンプモータ26の回転速度を制御する。油圧ポンプ27は、ポンプモータ26によって回転させられた回転方向及び回転速度に応じて通路54aから通路54bに作動油を送出したり、通路54bから通路54aに作動油を送出したりする。
【0032】
通路54aには、チェックバルブ28aが接続されている。また、チェックバルブ28aには通路55aが接続される。通路55aの下端はリザーバタンクT2内に挿通する。通路54bには、チェックバルブ28bが接続されている。また、チェックバルブ28bには通路55bが接続される。通路55bの下端はリザーバタンクT2内に挿通する。油圧ポンプ27によって通路54bの作動油が通路54a側に送出された結果、通路54b側の作動油が不足することとなったとき、リザーバタンクT2の作動油が通路55b及び通路58を通じて吸い上げられる。また、油圧ポンプ27によって通路54aの作動油が通路54b側に送出された結果、通路54a側の作動油が不足することとなったとき、リザーバタンクT2の作動油が通路55a及び通路58を通じて吸い上げられる。
【0033】
本実施形態において、フォークリフトに電源が投入されコントローラ30によって制御が開始されると、比例ソレノイドバルブ13、ソレノイドバルブ22、及び、ソレノイドバルブ23のバルブ位置はともにB位置になるように制御される。そして、パワーステアリング機構に不具合が生じていない場合には、比例ソレノイドバルブ13、ソレノイドバルブ22、及び、ソレノイドバルブ23のバルブ位置はともにB位置に維持される。なお、比例ソレノイドバルブ13のバルブ位置がB位置にされているとき、前述のようにコントローラ30によってその開度が制御される。
【0034】
一方、フォークリフトの電源が投入されていないときなどコントローラ30によって制御が行われていないときにおいて、比例ソレノイドバルブ13、ソレノイドバルブ22、及び、ソレノイドバルブ23のそれぞれのバルブ位置はA位置となる。また、パワーステアリング機構に不具合が生じているときにおいても、比例ソレノイドバルブ13、ソレノイドバルブ22、及び、ソレノイドバルブ23のそれぞれのバルブ位置はコントローラ30の制御によりA位置とされる。
【0035】
図2は、本実施形態における油圧制御処理を説明するフローチャートである。以下、本フローチャートと、前述の図1を参照しつつ、本実施形態における油圧制御処理を説明する。
【0036】
油圧制御装置1が搭載されるフォークリフトの電源が投入されると、油圧制御装置1のコントローラ30は油圧制御処理を開始する。油圧制御処理が開始されると、コントローラ30は、パワーステアリング機構に不具合が発生しているか否かを判定する(S102)。パワーステアリング機構に不具合が発生しているとは、例えば、バッテリー40から電力の供給が困難となった場合や、油圧センサ15a,15bから油圧値が適切に出力されなくなった場合や、コントローラ30と他のデバイスとの間で断線が発生した場合などである。
【0037】
そして、パワーステアリング機構に不具合が発生していない場合には、コントローラ30は、ステアリングシリンダ21に接続される油圧回路をモータ駆動回路20へと切り換える(S104)。具体的には、コントローラ30は、比例ソレノイドバルブ13の弁位置をB位置に切り換え、ソレノイドバルブ22の弁位置をB位置に切り換え、ソレノイドバルブ23の弁位置をB位置に切り換える。なお、切り換え前においてステアリングシリンダ21に接続されている油圧回路がモータ駆動回路20である場合には、ステアリングシリンダ21に接続されている油圧回路がモータ駆動回路20のまま維持されることになる。
【0038】
そして、ソレノイドバルブ22は、通路56aと通路53a(第1供給通路)との連通を遮断し、通路56aと通路54a(第2供給通路)とを連通させる。また、ソレノイドバルブ23は、通路56bと通路53b(第1供給通路)との連通を遮断し、通路56bと通路54b(第2供給通路)とを連通させる。
【0039】
このとき、ステアリングホイール11が右回りに操舵させられ、ステアリングが右に操舵されようとしているときを考える。ここで、この油圧制御装置1が搭載されるのは後輪操舵のフォークリフトであり、ステアリングが右に操舵されるときには、通路56bの油圧を高める必要があるものとする。一方、ステアリングが左に操舵されるときには、通路56aの油圧を高める必要があるものとする。
【0040】
コントローラ30は、ロータリーセンサ19からのステアリングホイール11の操舵角を監視している。そして、ステアリングホイール11が右回りに操舵されたときには、コントローラ30は、通路54bに作動油を送るようにポンプモータ26の回転を制御する。そして、通路54bの油圧が高められると、通路56bの油圧も高められるので、ステアリングシリンダ21は車両を右回りに旋回させるようにステアリングを操作する。なお、コントローラ30は、ステアリングホイール11の操舵角が大きいほどポンプモータ26の回転速度も高くする。
【0041】
なお、チェックバルブ28bがあるため、通路55bを通じてリザーバタンクT2に作動油は戻されない。リリーフ弁24bは、通路54bの油圧が高くなりすぎないように程度に作動油をリザーバタンクT3に逃がす。
【0042】
また、シャトル弁25は、油圧が高められた通路54bとは逆側の通路54aのバルブを開にする。これにより、通路54aの作動油が不足した場合、通路54aにリザーバタンクT3から作動油を供給することができる。
【0043】
一方、ステアリングホイール11が左回りに操舵されたときには、コントローラ30は、通路54aに作動油を送るようにポンプモータ26の回転を制御する。そして、通路54aの油圧が高められると、通路56aの油圧も高められるので、ステアリングシリンダ21は車両を左回りに旋回させるようにステアリングを操作する。
【0044】
なお、チェックバルブ28aがあるため、通路55aを通じてリザーバタンクT2に作動油は戻されない。リリーフ弁24aは、通路54aの油圧が高くなりすぎないように程度に作動油をリザーバタンクT3に逃がす。また、シャトル弁25は、油圧が高められた通路54aとは逆側の通路54bのバルブを開にする。これにより、通路54bの作動油が不足した場合、通路54bにリザーバタンクT3から作動油を供給することができる。
【0045】
前述のように、ステアリングホイール11が右回りに操舵されると、油圧ポンプ12は通路51a及び通路53aの作動油を通路53bに供給する。また、ステアリングホイール11が左回りに操舵されると、油圧ポンプ12は通路51b及び通路53bの作動油を通路53aに供給する。このとき、比例ソレノイドバルブ13は、コントローラ30の電流制御により絞り量を制限する。そして、比例ソレノイドバルブ13は、通路53aと通路53bとの間での作動油の流量が低くなるように制御して、ステアリングホイール11に適度な操舵反力を生じさせることができる。
【0046】
このように、パワーステアリング機構に不具合が発生していない場合に、コントローラ30は、ステアリングシリンダ21に接続される油圧回路をモータ駆動回路20へと切り換える。よって、通常時にはモータ駆動回路20を用いてステアリングを操作するので、作業者は容易にステアリングを操作することができる。
【0047】
一方、ステップS102において、パワーステアリング機構に不具合が発生している場合には、コントローラ30は、ステアリングシリンダ21に接続される油圧回路を手動操作回路10へと切り換える(S106)。具体的には、コントローラ30は、比例ソレノイドバルブ13の弁位置をA位置に切り換え、ソレノイドバルブ22の弁位置をA位置に切り換え、ソレノイドバルブ23の弁位置をA位置に切り換える。
【0048】
そして、ソレノイドバルブ22は、通路56aと通路54a(第2供給通路)との連通を遮断し、通路56aと通路53a(第1供給通路)とを連通させる。また、ソレノイドバルブ23は、通路56bと通路54b(第2供給通路)との連通を遮断し、通路56bと通路53b(第1供給通路)とを連通させる。
【0049】
このとき、ステアリングホイール11が右回りに操舵させられ、ステアリングが右に操舵されようとしているときを考える。ここで、ステアリングが右に操舵されるときには、通路56bの油圧を高める必要があるものとする。一方、ステアリングが左に操舵されるときには通路56aの油圧を高める必要があるものとする。
【0050】
ステアリングホイールが右回りに操舵されると、油圧ポンプ12は、通路51aから通路51bを通じて通路53bへと作動油を送出する。なお、チェックバルブ14bがあるため、作動油は52bを通じてリザーバタンクT1には戻されない。
【0051】
通路53bへと作動油が送出されると、通路53b側の油圧が高まる。ソレノイドバルブ23の弁位置がA位置になっており、通路53bと通路56aとが連通しているから、通路53bの油圧は通路56bに伝達される。これにより、通路56bの油圧が高められるので、ステアリングシリンダ21は車両を右回りに旋回させるようにステアリングを操作する。
【0052】
このようにすることによって、何らかの原因によってパワーステアリング機構に不具合を生じた場合には、ステアリングホイール11の操作により直接的にステアリングシリンダ21に作動油を送出して、ステアリングを制御することができる。
【0053】
また、このとき、比例ソレノイドバルブ13の弁位置はA位置であったため、通路51aと通路51bとの間には極小絞り弁が存在している。比例ソレノイドバルブ13の極小絞り弁は、通路53aと通路53bとの間での作動油の流量を低下させてステアリングホイール11に操舵反力を生じさせる。
【0054】
パワーステアリング機構に不具合が生じているときにおいて、バッテリー40からの電力供給が困難になっている場合もある。しかしながら、このように比例ソレノイドバルブ13の弁位置がA位置のときにおいて通路51aと通路51bとの間に極小絞り弁が存在しているので、コントローラ30からの電流制御により絞り量を制御することができない場合であっても、ステアリングホイール11に操舵反力を与えることができる。
【0055】
一方、ステアリングホイール11が左回りに操舵されたときについては、ステアリングホイール11が右回りに操舵されたときと逆の動作となる。例えば、ステアリングホイール11が左回りに操舵されると、通路51bから通路51aを通じて通路53aへと作動油が送出される。これにより、通路56aの油圧が高まるので、ステアリングシリンダ21は車両を左回りに旋回させるようにステアリングを操作する。
【0056】
このように、ステップS104またはステップS106の処理が完了すると、コントローラ30は、油圧制御処理を終了する。なお、本実施形態において、図2に示されるステップS102〜S106の処理は、所定時間毎に繰り返し実行される。
【0057】
次に、比較例における油圧制御装置を説明するとともに、比較例の油圧制御装置と比較しつつ本実施形態における油圧制御装置の利点を説明する。
【0058】
図3は、比較例における油圧制御装置の油圧回路図である。比較例における油圧制御装置101は、操舵角検出部110とモータ駆動回路120とコントローラ130とバッテリ140を備える。また、比較例における油圧制御装置101は、油圧制御対象であるステアリングシリンダ21と、ステアリングを操作するためのステアリングホイール11を備える。なお、本比較例において、前述の実施形態と同様の要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0059】
操舵角検出部110は、ロータリーセンサ119を備える。ロータリーセンサ119は、ステアリングホイール11に機械的に接続されており、ステアリングホイール11の操舵角を検出する。また、ロータリーセンサ119は、コントローラ130に電気的に接続されている。そして、ロータリーセンサ119は、ステアリングホイール11の操舵角をコントローラ130に送る。
【0060】
モータ駆動回路120は、コントローラ130による制御により、ステアリングシリンダ21を油圧制御する。そして、ステアリングシリンダ21に取り付けられた車輪を操舵する。比較例の油圧制御装置101におけるモータ駆動回路120は、上述の実施例の油圧制御装置1におけるモータ駆動回路20とほぼ同様の動作をする。
【0061】
コントローラ130は、ステアリングハンドル11の操舵角をロータリーセンサ119を介して読み取る。そして、コントローラ130は、読み取った操舵角に応じてポンプモータ126を回転させる。また、ステアリングハンドル11には、電気的に操舵反力を発生させる電磁ブレーキコイル118が接続される。電磁ブレーキコイル118は、コントローラ130に接続する。コントローラ130は、ステアリングハンドル11の操舵角に応じた電流を電磁ブレーキコイル118に供給する。そして、電磁ブレーキコイル118は、ステアリングハンドルに対して電流値に応じた操舵反力を生じさせる。
【0062】
ここで、例えば、仮に、比較例の油圧制御装置101において、バッテリ40から電力が供給されなくなってしまった場合を考える。バッテリ40から電力が供給されなくなると、コントローラ130はロータリーセンサ119の操舵角を取得できなくなる。また、ポンプモータ26を回転させることができないため、通路154aまたは通路154bに作動油を送出できない。そのため、バッテリ40から電力が供給されなくなると、これ以上のステアリング操作を行うことができなくなる。
【0063】
また、さらに言えば、比較例の油圧制御装置101では、電磁ブレーキコイル118への電流の供給によりステアリングホイール11に操舵反力を生じさせていたため、電力を供給できなくなるとその操舵反力も生じさせることができなくなる。そして、ステアリングホイール11は自由に空転してしまうという問題がある。
【0064】
これに対して、本実施形態によれば、通常運転時にはモータ駆動回路20を用いて操作容易性が確保される一方、パワーステアリング機構の不具合発生時においては、必ず、手動操作回路10がステアリングシリンダ21に接続されることになる。これにより、パワーステアリング機構に不具合が発生した場合であっても、手動操作回路10から供給される油圧を用いてステアリング操作を行うことができる。そして、パワーステアリング機構不具合発生時にも安全性を確保することができる。
【0065】
また、本実施形態によれば、フォークリフトの電源をオフにしているときには、ステアリングシリンダ21には手動操作回路10が接続されていることになる。このとき、ステアリングホイール11には、手動操作回路10における油圧による操舵反力が働くため、停車中にステアリングホイール11が回転してしまうことを防止することができる。
【0066】
また、本実施形態によれば、コントローラ30によって何ら制御が行われていないときにも、ソレノイドバルブ22,23におけるバネ力により、ステアリングシリンダ21には必ず手動操作回路10が接続されることになる。そのため、所謂フェールセーフ機構が働くことになるので、安全性をより高めることができる。
【0067】
本実施形態におけるステアリング回路20は、フォークリフトの後輪側に設けられることが望ましい。つまり、油圧ポンプ27とポンプモータ26を油圧ポンプ12よりもステアリングシリンダ21に近い側に設けられる。これは、フォークリフトは後輪側にステアリングが存在するため、前述のモータ駆動回路20はフォークリフトの後輪側に設けられたほうが、油圧損失を少なくすることができるためである。
【0068】
なお、本実施形態では、ポンプ12によって発生した油圧を操舵反力としていたが、比較例のように電磁ブレーキコイルによって操舵反力を生じさせることとしてもよい。また、発生した油圧と電流制御の双方を用いて操舵反力を生じさせることとしてもよい。
【0069】
また、ステアリングシリンダ21の近傍にタイヤ角度センサを設け、取得したタイヤ角度に応じてポンプモータ26の回転速度を補正することとしてもよい。
【0070】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0071】
1 油圧制御装置
10 手動操作回路
11 ステアリングホイール
12 油圧ポンプ(操作側ポンプ)
13 比例ソレノイドバルブ(切換部)
14a チェックバルブ
14b チェックバルブ
15a 油圧センサ
15b 油圧センサ
19 ロータリーセンサ
20 モータ駆動回路
21 ステアリングシリンダ
22 ソレノイドバルブ
23 ソレノイドバルブ
24a リリーフ弁
24b リリーフ弁
25 シャトル弁
26 ポンプモータ
27 油圧ポンプ(動力側ポンプ)
28a チェックバルブ
28b チェックバルブ
30 コントローラ
40 バッテリ
53a,53b 通路(第1供給通路)
54a,54b 通路(第2供給通路)
T1 リザーバタンク
T2 リザーバタンク
T3 リザーバタンク
図1
図2
図3