(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術では図示するようにフランジ52およびセンターチューブ54間にダイアフラム53が1枚ずつ介装されている。
【0005】
したがって、カップリング51全体としての性能や耐久性がダイアフラム53の仕様如何によって制約されることになり、これに対し、カップリング51全体の性能や耐久性を前記ダイアフラム53の仕様の範囲から解放することが求められる。
【0006】
また一般に、ダイアフラムカップリングはその製品としての性質上、重要機器の破損を防止するため重要機器の代わりに破損しなければならないと云う一面をもっているが、重要機器の代わりとならないような意図せぬところで破損することは好ましくない。この点、従来技術では、振動、特にカップリングの固有振動数と同等周波数の振動が入力したときに共振現象が発生することがあり、このように共振現象が発生すると、カップリングが意図せぬところで破損することがある。
【0007】
本発明は以上の点に鑑みて、上記従来のダイアフラム1枚使いでは得られない性能や耐久性を実現することができるダイアフラムカップリングを提供することを目的とする。またこれに加えて、カップリングに共振現象が発生するのを抑制し、もってこの点からしても耐久性を向上させることができるダイアフラムカップリングを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のダイアフラムカップリングは、互いに軸方向に対向する一対のフランジ間に
一対のダイアフラムを介してセンターチューブを同軸的に連結してなるダイアフラムカップリングにおいて、前記
一対のダイアフラム
のそれぞれは、厚肉の内周取付部および外周取付部の間に薄肉の膜部を有する構成であり、複数枚のダイアフラムがそれぞれの前記膜部の間に間隙スペースを有して並列した状態で設けられ、前記並列した複数枚のダイアフラムはそれぞれその内周面をもって前記センターチューブの外周面に固定されることにより
、前記センターチューブ
の一方の端部側とこの一方の端部と反対側の端部側とにそれぞれ前記複数枚のダイアフラムを備えるフレキシブルユニットとされて
おり、前記複数枚のダイアフラム間に、径が異なる二つのゴムリングが配置されている。
【0009】
複数枚のダイアフラムが並列した状態で設けられると、この複数枚のダイアフラムが同時に回転トルクを伝達するため、伝達トルクの最大許容値を増大することが可能とされる。また、1枚のダイアフラムの厚みを増大する場合はダイアフラムが変形しにくくなるなどダイアフラムの作動性について支障を来たす可能性があるところ、所定の厚みのダイアフラムを複数枚並列する場合は各ダイアフラムがそれぞれ変形するため、ダイアフラムが変形しにくくなることがない。複数枚のダイアフラムはそれぞれその内周面をもってセンターチューブの外周面に固定されることにより、複数枚のダイアフラムおよびセンターチューブを備えるフレキシブルユニットとするのが好適であり、これによれば複数枚のダイアフラムがセンターチューブと共にユニット品として単一で扱われるため、その取り扱い作業性を向上することが可能とされる。
【0010】
また、複数枚が並列した状態とされるダイアフラム間にはダイアフラム膜部間に位置して間隙スペースが設定されるので、この間隙スペースを有効に活用すべくこのスペース内に弾性体(運動方程式における粘性項に相当する弾性体)を配置することが考えられ、この場合はこの弾性体により、カップリングの固有振動数に応じた粘性項を想定することによりカップリングに共振現象が発生するのを抑制し、よってカップリングが破損するのを防止することが可能とされる。運動方程式における粘性項に相当する弾性体としては例えばダイアフラム間にゴム状弾性体を介装したり、粘弾性物質を充填したりする。
【0011】
この粘性項の想定によるカップリング共振抑制構造について更に説明すると、以下のとおりである。
【0012】
すなわち例えば上記
図8に示した従来技術では、カップリング共振抑制構造が設けられていないため、カップリングの固有振動数と同等周波数の振動が入力したときに共振現象が発生するのを抑制することができない。
【0013】
これに対し、粘性項の想定によるカップリング共振抑制構造が設けられると、カップリングの固有振動数と同等周波数の振動が入力したときに共振現象が発生するのを抑制することができ、運動方程式における粘性項に相当する弾性体を軸方向に作用するように具備することにより、共振時における軸方向の振動を抑制することが可能となる。例えば複数枚のダイアフラム間にOリングまたは角リング等のゴム状弾性体を装着すると、ダイアフラム間に軸方向の変位差が発生した際にゴム状弾性体が圧縮されるため、ゴム状弾性体が備える粘性、および微少な径方向変位に伴う摩擦により、振動を減衰させることができる。
【0014】
また、運動方程式における粘性項に相当する弾性体を軸方向および周方向に作用するように具備することにより、共振時における軸方向または周方向の振動を抑制することが可能となる。例えば複数枚のダイアフラム間に粘弾性物質を充填してダイアフラム同士を接着すると、ダイアフラム間に軸方向または周方向の変位差が発生した際に粘弾性物質が歪むため、粘弾性物質が備える粘性により、振動を減衰させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、従来のダイアフラム1枚使いでは得られない性能や耐久性を実現することができ、さらに粘性項相当の弾性体を設置することによりカップリングに共振現象が発生するのを抑制し、カップリングが破損するのを防止し、よってカップリングの耐久性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
第1実施例に係るダイアフラムカップリングの一部切欠した正面図
【
図2】同ダイアフラムカップリングに備えられるフレキシブルユニットの半裁断面図
【
図3】同フレキシブルユニットにおけるダイアフラム枚数を変更した状態の半裁断面図
【
図4】
第2実施例に係るダイアフラムカップリングに備えられるフレキシブルユニットの半裁断面図
【
図5】同フレキシブルユニットにおけるダイアフラム枚数を変更した状態の半裁断面図
【
図6】
第3実施例に係るダイアフラムカップリングに備えられるフレキシブルユニットの半裁断面図
【
図7】同フレキシブルユニットにおけるダイアフラム枚数を変更した状態の半裁断面図
【
図8】従来例に係るダイアフラムカップリングの一部切欠した正面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
つぎ
に実施例を図面にしたがって説明する。
【0018】
第1実施例・・・・
図1は
、ダイアフラムカップリング11の一部切欠した正面を示している。このダイアフラムカップリング11は、互いに軸方向に対向する一対のフランジ13間にダイアフラム15を介してセンターチューブ16を同軸的に連結した基本構成を備え、更に、ダイアフラム15が以下のように構成されている。尚、フランジ13は、軸(図示せず)に装着されるハブ12にその一部として設けられている。
【0019】
すなわち
図2に拡大して示すように、ダイアフラム15は、2枚のダイアフラム15A,15Bが軸方向に並んで互いに並列した状態で設けられており、この2枚のダイアフラム15A,15Bがタイミングを合わせて同じように作動する。
【0020】
ダイアフラム15はそれぞれ、所定の金属材料をもって平板環状に成形され、比較的厚肉の内周取付部15aおよび外周取付部15bの間に比較的薄肉の膜部15cを一体成形したものであって、その内周面15dをもってセンターチューブ16の外周面に固定され、これにより2枚のダイアフラム15A,15Bおよびセンターチューブ16よりなるフレキシブルユニット(フレキシユニット)14が構成されている(センターチューブ16の軸方向両端部にそれぞれ2枚のダイアフラム15A,15Bが設けられる場合は、都合4枚のダイアフラム15およびセンターチューブ16によってフレキシブルユニット14が構成される)。固定は、嵌合、接着または溶接などの手段による。またこの固定状態において、2枚のダイアフラム15A,15Bは内周取付部15aの端面同士および外周取付部15bの端面同士が互いに接触する配置とされ、膜部15cは薄いので膜部15c同士の間に間隙スペース15eが形成される。
【0021】
外周取付部15bには円周上の位置を合わせて、組付ボルト(リーマボルト)18を挿通するための貫通穴15fが設けられている。したがってダイアフラム15をフランジ13に取り付けるに際しては
図1に示すように、ダイアフラム15をガード17とともにフランジ13に対し組付ボルト18で締め付ける。ダイアフラム15およびガード17はリベット19によって予め組み付けておいても良く、この場合は2枚のダイアフラム15A,15B、センターチューブ16およびガード17によってフレキシブルユニット14が構成される(センターチューブ16の軸方向両端部にそれぞれ2枚のダイアフラム15A,15Bおよび1枚のガード17が設けられる場合は、都合4枚のダイアフラム15および2枚のガード17ならびにセンターチューブ16によってフレキシブルユニット14が構成される)。
【0022】
上記構成を備えるダイアフラムカップリング11においては、2枚のダイアフラム15A,15Bが並列した状態で設けられてこの2枚のダイアフラム15A,15Bが同時に回転トルクを伝達するため、伝達トルクの最大許容値を増大することが可能とされている。また、1枚のダイアフラム15の厚みを増大する場合はダイアフラム15が変形しにくくなるなどダイアフラム15の作動性について支障を来たす可能性があるところ、所定の厚みのダイアフラム15を複数枚並列する場合は、各ダイアフラム15がそれぞれ変形するため、ダイアフラム15が変形しにくくなることがない。したがってダイアフラム1枚使いの場合には得られない性能や耐久性を発揮するダイアフラムカップリング11を提供することができる。
【0023】
尚、ダイアフラム15の並設数は、2枚に限定されず、3枚以上であっても良い。
図3では符号15A,15B,15Cにて示すように3枚のダイアフラムが並列配置されている。
【0024】
第2実施例・・・・
図4は
、フレキシブルカップリングに備えられるフレキシブルユニット14を示し、
本実施例では、このフレキシブルユニット14が以下のように構成されている。
【0025】
すなわちダイアフラム15は、2枚のダイアフラム15A,15Bが軸方向に並んで互いに並列した状態で設けられ、この2枚のダイアフラム15A,15Bがタイミングを合わせて同じように作動する。
【0026】
ダイアフラム15はそれぞれ、所定の金属材料をもって平板環状に成形され、比較的厚肉の内周取付部15aおよび外周取付部15bの間に比較的薄肉の膜部15cを一体成形したものであって、その内周面15dをもってセンターチューブ16の外周面に固定され、これにより2枚のダイアフラム15A,15Bおよびセンターチューブ16よりなるフレキシブルユニット14が構成されている(センターチューブ16の軸方向両端部にそれぞれ2枚のダイアフラム15A,15Bが設けられる場合は、都合4枚のダイアフラム15およびセンターチューブ16によってフレキシブルユニット14が構成される)。固定は、嵌合、接着または溶接などの手段による。またこの固定状態において、2枚のダイアフラム15A,15Bは内周取付部15aの端面同士および外周取付部15bの端面同士が互いに接触する配置とされ、膜部15cは薄いので膜部15c同士の間に間隙スペース15eが形成される。
【0027】
外周取付部15bには円周上の位置を合わせて、組付ボルトを挿通するための貫通穴15fが設けられている。したがってダイアフラム15をフランジに取り付けるに際しては、ダイアフラム15をガードとともにフランジに対し組付ボルトで締め付ける。ダイアフラム15およびガードはリベットによって予め組み付けておいても良く、この場合は2枚のダイアフラム15A,15B、センターチューブ16およびガードによってフレキシブルユニット14が構成される(センターチューブ16の軸方向両端部にそれぞれ2枚のダイアフラム15A,15Bおよび1枚のガードが設けられる場合は、都合4枚のダイアフラム15および2枚のガードならびにセンターチューブ16によってフレキシブルユニット14が構成される)。
【0028】
また、2枚のダイアフラム15A,15B間に、運動方程式における粘性項に相当する弾性体21が配置され、
本実施例ではこの弾性体21が、2枚のダイアフラム15A,15Bにおける膜部15c間の間隙スペース15e内に配置されたゴム状弾性体によって構成されている。
【0029】
ゴム状弾性体は環状に成形され、すなわちゴムリングとされ、比較的小径の内周側ゴムリング22Aおよび比較的大径の外周側ゴムリング22Bが径方向に所定の間隔をあけて並べられている。ダイアフラム15A,15Bの対向端面には、これらのゴムリング22A,22Bを位置決め保持するための凹部15gを設けても良い。
【0030】
上記構成のフレキシブルユニット14を備えるダイアフラムカップリング11においては、上記第1実施例と同じ作用効果を発揮するほか、2枚のダイアフラム15A,15B間に運動方程式における粘性項に相当する弾性体21としてゴムリング22A,22Bが配置されているため、カップリング11の固有振動数に応じた粘性項を想定することによりカップリング11に共振現象が発生するのを抑制し、よってカップリング11が破損するのを防止することが可能とされている。したがってカップリング11が回転トルクを伝達しミスアライメントを吸収するほか、振動減衰効果を発揮するため、カップリング11の多機能化を実現することができる。
【0031】
ダイアフラム15の並設数は、2枚に限定されず、3枚以上であっても良い。
図5では符号15A,15B,15Cにて示すように3枚のダイアフラムが並列配置され、ダイアフラム15Aとダイアフラム15Bとの間およびダイアフラム15Bとダイアフラム15Cとの間にそれぞれ、運動方程式における粘性項に相当する弾性体21(ゴムリング22A,22B)が介装されている。
【0032】
第3実施例・・・・
図6は
、フレキシブルカップリングに備えられるフレキシブルユニット14を示し、
本実施例では、フレキシブルユニット14が以下のように構成されている。
【0033】
すなわちダイアフラム15は、2枚のダイアフラム15A,15Bが軸方向に並んで互いに並列した状態で設けられ、この2枚のダイアフラム15A,15Bがタイミングを合わせて同じように作動する。
【0034】
ダイアフラム15はそれぞれ、所定の金属材料をもって平板環状に成形され、比較的厚肉の内周取付部15aおよび外周取付部15bの間に比較的薄肉の膜部15cを一体成形したものであって、その内周面15dをもってセンターチューブ16の外周面に固定され、これにより2枚のダイアフラム15A,15Bおよびセンターチューブ16よりなるフレキシブルユニット14が構成されている(センターチューブ16の軸方向両端部にそれぞれ2枚のダイアフラム15A,15Bが設けられる場合は、都合4枚のダイアフラム15およびセンターチューブ16によってフレキシブルユニット14が構成される)。固定は、嵌合、接着または溶接などの手段による。またこの固定状態において、2枚のダイアフラム15A,15Bは内周取付部15aの端面同士および外周取付部15bの端面同士が互いに接触する配置とされ、膜部15cは薄いので膜部15c同士の間に間隙スペース15eが形成される。
【0035】
外周取付部15bには円周上の位置を合わせて、組付ボルトを挿通するための貫通穴15fが設けられている。したがってダイアフラム15をフランジに取り付けるに際しては、ダイアフラム15をガードとともにフランジに対し組付ボルトで締め付ける。ダイアフラム15およびガードはリベットによって予め組み付けておいても良く、この場合は2枚のダイアフラム15A,15B、センターチューブ16およびガードによってフレキシブルユニット14が構成される(センターチューブ16の軸方向両端部にそれぞれ2枚のダイアフラム15A,15Bおよび1枚のガードが設けられる場合は、都合4枚のダイアフラム15および2枚のガードならびにセンターチューブ16によってフレキシブルユニット14が構成される)。
【0036】
また、2枚のダイアフラム15A,15B間に、運動方程式における粘性項に相当する弾性体21が配置され、
本実施例ではこの弾性体21が、2枚のダイアフラム15A,15Bにおける膜部15c間の間隙スペース15e内に充填された粘弾性物質23によって構成されている。
【0037】
上記構成のフレキシブルユニット14を備えるダイアフラムカップリング11においては、上記第1実施例と同じ作用効果を発揮するほか、2枚のダイアフラム15A,15B間に運動方程式における粘性項に相当する弾性体21として粘弾性物質23が配置されているため、カップリング11の固有振動数に応じた粘性項を想定することによりカップリング11に共振現象が発生するのを抑制し、よってカップリング11が破損するのを防止することが可能とされている。したがってカップリング11が回転トルクを伝達しミスアライメントを吸収するほか、振動減衰効果を発揮するため、カップリング11の多機能化を実現することができる。振動減衰効果については2枚のダイアフラム15A,15B間に粘弾性物質23を配置する構成であるため、軸方向の振動のみでなく、周方向(ねじれ方向)の振動を減衰させることができる。
【0038】
ダイアフラム15の並設数は、2枚に限定されず、3枚以上であっても良い。
図7では符号15A,15B,15Cにて示すように3枚のダイアフラムが並列配置され、ダイアフラム15Aとダイアフラム15Bとの間およびダイアフラム15Bとダイアフラム15Cとの間にそれぞれ、運動方程式における粘性項に相当する弾性体21(粘弾性物質23)が充填されている。