【実施例】
【0059】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。なお、製造方法は一例であり、本発明に係るベンゾオキサジン化合物は、下記製造方法により限定されるものではない。
各実施例の化合物の同定には次の装置を使用した。
・元素分析;Yanaco CHN Corder MT-5(Yanaco Group Co., Ltd.製)
・IR;Thermo Scientific NICOLET iS10 FTIR(Thermo Fisher Scientific Inc.製)
・
1HNMR、
13CNMR;JNM ECS400(JEOL RESONANCE Inc.製)
・DSC;DSC-6200(Seiko Instrument Inc.製)
・TGA;TG-DTA 6200(Seiko Instrument Inc.製)
【0060】
実施例1
<式(1)の化合物[R
1;p−(メチル)フェニル基、R
2、R
3;メチル基)[1];6,6,6',6'-tetramethyl-3,3'-di-p-tolyl-3,3',4,4',6,6',7,7'-octahydro-2H,2'H-8,8'-spirobi[indeno[5,6-e][1,3]oxazine(BPSPI-PhMe-Bz)>
1.合成
1−1.3,3,3',3'-tetramethyl-2,2',3,3'-tetrahydro-1,1'-spirobi[indene]-6,6'-diol(BPSPI-OH)の合成
BPSPI-PhMe-Bzの中間原料であるBPSPI-OHを次のようにして合成した。
ビスフェノールA 50g(219mmol)とトリフルオロメタンスルホン酸 0.05g(0.562mmol)をフラスコに入れ、145℃で4時間反応させた。反応後、室温まで冷却し、蒸留水1Lをフラスコに加えて反応物を析出させた。析出物を再度蒸留水中で12時間撹拌し、ろ過後、ろ過物を80℃で12時間減圧乾燥させた。トルエンで再結晶を二度行い、80℃で12時間減圧乾燥させることで白色の結晶を得た(収率:57%)。
【0061】
上記中間原料BPSPI-OHの合成法を下記式(5a)に示す。
【化27】
BPSPI-OHであることは、得られた白色結晶の
1HNMR及び
13CNMRを測定し、各元素の帰属により確認した。帰属結果を式(13)及び表1に示す。なお、NMRはいずれも重クロロホルムに溶解して測定した。
【化28】
【0062】
【表1】
【0063】
1−2.BPSPI-PhMe-Bzの合成
1−1.で合成したBPSPI-OH 5g(16mmol)、p−トルイジン 3.47g(32mmol)、パラホルムアルデヒド 1.94g(64mmol)、及びトルエン 50mLをフラスコに入れて混合し、48時間還流した。つづいて、室温まで冷却した後、析出した黄色の結晶をろ過により回収し、酢酸エチルで二度再結晶を行い、60℃で12時間減圧乾燥後、白色の結晶を得た(収率;49%)。
【0064】
BPSPI-PhMe-Bzの合成法を下記式(7a)に示す。
【化29】
【0065】
2.BPSPI-PhMe-Bzの同定:各種分析、測定
以上の様にして合成した化合物が、BPSPI-PhMe-Bzであることは、得られた白色結晶の元素分析、IR測定、並びに
1HNMR及び
13CNMR測定によって確認した。これらの分析及び測定は、上記の各装置を使用し、常法により測定した。さらに、上記DSC装置を用い、N
2流量;20mL/分、昇温速度;10℃/分の条件で融点を測定した。分析及び測定結果を以下、及び表2に示す。
【0066】
元素分析(C39H42N2O2として)
・測定値:C;82.17、H;7.45、N;4.96
・計算値:C;82.07、H;7.42、N;4.91
IR測定
・2947,2855cm
-1;(C−H:脂肪族)
・1212,1066cm
-1;(C−O−C)
・1188cm
-1;(C−N−C)
・948,912cm
-1;(C−H:オキサジン環に結合しているベンゼン環)
融点:209℃
【0067】
1HNMR及び13CNMR測定
NMR測定による帰属結果を式(1−1)、表2及び
図1,2に示す。なお、NMRはいずれも重クロロホルムに溶解して測定した。
【化30】
【0068】
【表2】
【0069】
3.ベンゾオキサジン樹脂A(BPSPI-PhMe-Bzの硬化物)の合成
窒素気流中、260℃で1時間15分間加熱して開環重合(ROP)させ、ベンゾオキサジン樹脂Aを得た。硬化反応を下記式(11a)に示す。
【化31】
【0070】
4.ベンゾオキサジン樹脂Aの物性
ベンゾオキサジン樹脂AのDSCでの、ガラス転移点は295℃、また、TGAでの10%重量減量温度(T
d10)は397℃であった。DSC及びTGAは上記した装置を用い、次の測定条件で測定した。
・DSC;N
2流量;20mL/分、昇温速度:10℃/分
・TGA;N
2流量;50mL/分、昇温速度;10℃/分
【0071】
実施例2
<式(1)の化合物[R
1;p−(ヒドロキシエチル)フェニル基、R
2、R
3;メチル基][2];
2,2'-((6,6,6',6'-tetramethyl-6,6',7,7'-tetrahydro-2H,2'H-8,8'-spirobi[indeno[5,6-e][1,3]oxazin]-3,3'(4H,4'H)-diyl)bis(4,1-phenylene))diethanol(BPSPI-PhEtOH-Bz)>
1.合成;BPSPI-PhEtOH-Bzの合成
BPSPI-OH 5g(16mmol)、2−(4−アミノフェニル)エタノール 4.45g(32mmol)、パラホルムアルデヒド 1.94g(64mmol)、及びトルエン 50mLをフラスコに入れて混合し、10時間還流した。つづいて、室温まで冷却した後、析出物をろ過により回収し、エタノールで洗浄した。その後、再結晶を2度行い(1回目;THF、2回目;THF/ヘキサン=7/3)、得られた結晶を加熱したメタノールで3回洗浄し、乾燥させて白色の結晶を得た。[収量;3.2g(5.07mmol)、収率;31%]
【0072】
BPSPI-PhEtOH-Bzの合成法を下記式(7b)に示す。
【化32】
【0073】
2.BPSPI-PhEtOH-Bzの同定:各種分析、測定
以上の様にして合成した化合物が、BPSPI-PhEtOH-Bzであることは、得られた白色結晶の元素分析、IR測定、並びに
1HNMR及び
13CNMR測定によって確認した。これらの分析及び測定は、上記の各装置を使用し、常法により測定した。さらに、実施例1と同様にその融点を測定した。分析及び測定結果を以下、及び表3に示す。
【0074】
元素分析(C41H46N2O4として)
・測定値:C;77.75、H;7.38、N;4.39
・計算値:C;78.06、H;7.35、N;4.44
IR測定
・3558,3468cm
-1;(O−H)
・2954,2929,2854cm
-1;(C−H:脂肪族)
・1211,1068cm
-1;(C−O−C)
・1190cm
-1;(C−N−C)
・949cm
-1;(C−H:オキサジン環に結合しているベンゼン環)
融点:249℃
【0075】
NMR測定による帰属結果を式(1−2)、表3及び
図3,4に示す。なお、NMRはいずれもDMSO−d
6に溶解して測定した。
【化33】
【0076】
【表3】
【0077】
3.ベンゾオキサジン樹脂B(BPSPI-PhEtOH-Bzの硬化物)の合成
BPSPI-PhEtOH-Bzを窒素気流中、250℃で1時間加熱して開環重合させ、ベンゾオキサジン樹脂Bを得た。硬化反応を下記式(11b)に示す。
【0078】
【化34】
【0079】
4.ベンゾオキサジン樹脂Bの物性
ベンゾオキサジン樹脂BのDSCでの、ガラス転移点は299℃、また、TGAでの10%重量減量温度(T
d10)は376℃であった。DSC及びTGAは上記した装置を用い、実施例1と同じ測定条件で測定した。
【0080】
実施例3
<式(2)の化合物(R
4;フェニル基、R
5、R
6;メチル基)[1];6,6,6',6'-tetramethyl-3,3'-diphenyl-3,3',4,4',6,6',7,7'-octahydro-2H,2'H-8,8'-spirobi[chromeno[6,7-e][1,3]oxazine](SPBC-Ph-Bz)>
1.合成
1−1.4,4,4',4'-tetramethyl-2,2'-spirobi[chroman]-7,7'-diol(SPBC-OH)の合成
SPBC-Ph-Bzの中間原料であるSPBC-OHを次のようにして合成した。
500mLの二口フラスコにレゾルシノール 27.5g(249mmol)、FeCl
3 2.7g(16mmol)、トルエン 100mLを加えて撹拌した。ここへ、メシチルオキシド 6.4g(65mmol)を滴下し、80℃で12時間反応させた。所定時間経過後、冷却せずに溶液のみをデカンテーションにより回収し、室温まで冷却した。冷却した溶液を蒸留水で3回洗浄後、硫酸ナトリウムで乾燥させた。硫酸ナトリウムをろ過後、溶液を濃縮し、得られた残渣をカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:酢酸エチル/ヘキサン=3/7)による精製、及び再結晶(溶媒:クロロホルム)を行うことで白色の結晶を得た。[収量;6.2g(18.2mmol)、収率;14.6%]
【0081】
上記中間原料SPBC-OHの合成法を下記式(9a)に示す。
【化35】
SPBC-OHであることは、得られた白色結晶の
1HNMR及び
13CNMRを測定し、各元素の帰属により確認した。帰属結果を式(14)及び表4に示す。なお、NMRはいずれも重クロロホルムに溶解して測定した。
【化36】
【0082】
【表4】
【0083】
1−2.SPBC-Ph-Bzの合成
100mLフラスコへ、1−1.で合成したSPBC-OH 2g(5.87mmol)、アニリン1.09g(11.75mmol)、パラホルムアルデヒド 0.70g(23.5mmol)、p−キシレン 30mLを加えて混合した。該混合溶液を130℃で15時間反応させた。その後、溶媒を除去し、残渣をカラムクロマトグラフィー1(展開溶媒:ジクロロメタン/ヘキサン=7/3)で精製し、つづいて、カラムクロマトグラフィー2(展開溶媒:クロロホルム/ヘキサン=7/3)でさらに精製を行い、最後に、再結晶(溶媒:ヘキサン)を行うことで白色の結晶を得た。[収量;1.26g(2.19mmol)、収率;37%]
【0084】
SPBC-Ph-Bzの合成法を下記式(10a)に示す。
【化37】
【0085】
2.SPBC-Ph-Bzの同定:各種分析、測定
以上の様にして合成した化合物が、SPBC-Ph-Bzであることは、得られた白色結晶の元素分析、IR測定、並びに
1HNMR及び
13CNMR測定によって確認した。これらの分析及び測定は、上記の各装置を使用し、常法により測定した。さらに、実施例1と同様にその融点を測定した。分析及び測定結果を以下、及び表5に示す。
【0086】
元素分析(C37H38N2O4として)
・測定値:C;77.35、H;6.59、N;4.88
・計算値:C;77.33、H;6.66、N;4.87
IR測定
・2954,2928,2859cm
-1;(C−H:脂肪族)
・1252,1037cm
-1;(C−O−C)
・1165cm
-1;(C−N−C)
・968,943,915cm
-1;(C−H:オキサジン環に結合しているベンゼン環)
融点:186℃
【0087】
1HNMR及び13CNMR測定
NMR測定による帰属結果を式(2−1)、表5及び
図5,6に示す。なお、NMRはいずれも重クロロホルムに溶解して測定した。
【化38】
【0088】
【表5】
【0089】
3.ベンゾオキサジン樹脂C(SPBC-Ph-Bzの硬化物)の合成
窒素気流中、270℃で1時間加熱して開環重合(ROP)させ、ベンゾオキサジン樹脂Cを得た。硬化反応を下記式(12a)に示す。
【化39】
【0090】
4.ベンゾオキサジン樹脂Cの物性
ベンゾオキサジン樹脂CのDSCでの、ガラス転移点は323℃、また、TGAでの10%重量減量温度(T
d10)は377℃であった。DSC及びTGAは上記した装置を用い、実施例1と同じ測定条件で測定した。
【0091】
実施例4
<式(2)の化合物[R
4;p−(メチル)フェニル基、R
5、R
6;メチル基)[2];6,6,6',6'-tetramethyl-3,3'-di-p-tolyl-3,3',4,4',6,6',7,7'-octahydro-2H,2'H-8,8'-spirobi[chromeno[6,7-e][1,3]oxazine](SPBC-PhMe-Bz)>
1.合成;SPBC-PhMe-Bzの合成
SPBC-OH 2g(5.87mmol)、p−トルイジン 1.26g(11.75mmol)、パラホルムアルデヒド 0.70g(23.5mmol)、p−キシレン 30mLをフラスコに入れて混合し、130℃で15時間反応させる。溶媒を除去後、残渣をカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:1回目ジクロロメタン/ヘキサン=4/6、2回目クロロホルム/ヘキサン=7/3)で2度精製し、次に、再結晶(溶媒:ヘキサン)を行うことで白色の結晶を得た。[収量;1.46g(2.42mmol)、収率;41%]
【0092】
SPBC-PhMe-Bzの合成法を下記式(10b)に示す。
【化40】
【0093】
2.SPBC-PhMe-Bzの同定:各種分析、測定
以上の様にして合成した化合物が、SPBC-PhMe-Bzであることは、得られた白色結晶の元素分析、IR測定、並びに
1HNMR及び
13CNMR測定によって確認した。これらの分析及び測定は、上記の各装置を使用し、常法により測定した。さらに、実施例1と同様にその融点を測定した。分析及び測定結果を以下、及び表6に示す。
【0094】
元素分析(C39H42N2O4として)
・測定値:C;77.91、H;7.14、N;4.68
・計算値:C;77.71、H;7.02、N;4.65
IR測定
・2955,2921,2891,2867cm
-1;(C−H:脂肪族)
・1241,1035cm
-1;(C−O−C)
・1165cm
-1;(C−N−C)
・934,923,912cm
-1;(C−H:オキサジン環に結合しているベンゼン環)
融点:166℃、186℃(異性体または結晶構造の相違によるものと考えられる。)
【0095】
NMR測定による帰属結果を式(2−2)、表6及び
図7,8に示す。なお、NMRはいずれも重クロロホルムに溶解して測定した。
【化41】
【0096】
【表6】
【0097】
3.ベンゾオキサジン樹脂D(SPBC-PhMe-Bzの硬化物)の合成
窒素気流中、270℃で1時間加熱して開環重合(ROP)させ、ベンゾオキサジン樹脂Dを得た。硬化反応を下記式(12b)に示す。
【化42】
【0098】
4.ベンゾオキサジン樹脂Dの物性
ベンゾオキサジン樹脂DのDSCでの、ガラス転移点は332℃、また、TGAでの10%重量減量温度(T
d10)は372℃であった。DSC及びTGAは上記した装置を用い、実施例1と同じ測定条件で測定した。
【0099】
実施例5
<式(2)の化合物[R
4;p−(ヒドロキシエチル)フェニル基、R
5、R
6;メチル基)[3];2,2'-((6,6,6',6'-tetramethyl-6,6',7,7'-tetrahydro-2H,2'H-8,8'-spirobi[chromeno[6,7-e][1,3]oxazin]-3,3'(4H,4'H)-diyl)bis(4,1-phenylene))diethanol(SPBC-PhEtOH-Bz)>
1.合成;SPBC-PhEtOH-Bzの合成
SPBC-OH 2g(5.87mmol)、2−(4−アミノフェニル)エタノール 1.61g(11.75mmol)、パラホルムアルデヒド 0.70g(23.5mmol)、トリエチルアミン 0.594g(5.87mmol)、1,4−ジオキサン 20mLをフラスコに入れて混合し、90℃で8時間反応させた。次に、室温まで冷却し、溶媒を除去した後、残渣をクロロホルムに溶解させて炭酸ナトリウム水溶液と水で洗浄した。クロロホルムを濃縮後、カラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン=3/2)で精製し、さらに、メタノールで再結晶を2度行うことで白色結晶を得た。[収量;0.42g(0.634mmol)、収率;10%)]
【0100】
SPBC-PhEtOH-Bzの合成法を下記式(10c)に示す。
【化43】
【0101】
2.SPBC-PhEtOH-Bzの同定:各種分析、測定
以上の様にして合成した化合物が、SPBC-PhEtOH-Bzであることは、得られた白色結晶の元素分析、IR測定、並びに
1HNMR及び
13CNMR測定によって確認した。これらの分析及び測定は、上記の各装置を使用し、常法により測定した。さらに、実施例1と同様にその融点を測定した。分析及び測定結果を以下、及び表2に示す。
【0102】
元素分析(C41H46N2O6として)
・測定値:C;74.14、H;7.01、N;4.22
・計算値:C;74.30、H;7.00、N;4.23
IR測定
・3562cm
-1;(O−H)
・2989,2964,2935,2864cm
-1;(C−H:脂肪族)
・1248,1032cm
-1;(C−O−C)
・1166cm
-1;(C−N−C)
・944,924,912cm
-1;(C−H:オキサジン環に結合しているベンゼン環)
融点:205℃
【0103】
NMR測定による帰属結果を式(2−3)、表7及び
図9,10に示す。なお、NMRはいずれも重クロロホルムに溶解して測定した。
【化44】
【0104】
【表7】
【0105】
3.ベンゾオキサジン樹脂E(SPBC-PhEtOH-Bzの硬化物)の合成
SPBC-PhEtOH-Bzを窒素気流中、270℃で1時間加熱して開環重合させ、ベンゾオキサジン樹脂Eを得た。硬化反応を下記式(12c)に示す。
【化45】
【0106】
4.ベンゾオキサジン樹脂Eの物性
ベンゾオキサジン樹脂EのDSCでの、ガラス転移点は305℃、また、TGAでの10%重量減量温度(T
d10)は365℃であった。DSC及びTGAは上記した装置を用い、実施例1と同じ測定条件で測定した。