特許第6612087号(P6612087)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6612087
(24)【登録日】2019年11月8日
(45)【発行日】2019年11月27日
(54)【発明の名称】シリンジポンプ
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/145 20060101AFI20191118BHJP
【FI】
   A61M5/145 508
【請求項の数】7
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2015-161073(P2015-161073)
(22)【出願日】2015年8月18日
(65)【公開番号】特開2017-38691(P2017-38691A)
(43)【公開日】2017年2月23日
【審査請求日】2018年6月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098796
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 全
(72)【発明者】
【氏名】中西 勝
(72)【発明者】
【氏名】丸山 信治
【審査官】 鈴木 洋昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−291323(JP,A)
【文献】 特開2005−52367(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/024235(WO,A1)
【文献】 特開2013−135753(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0229311(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/145
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンジを装着して前記シリンジ内の薬液を送液するシリンジポンプであって、
前記シリンジのシリンジ本体を載置可能な載置部と、
前記載置部に載置された前記シリンジのシリンジ押子を把持可能な把持機構部と、を備え、
前記把持機構部は、前記シリンジ押子に設けられた押子フランジと前記シリンジ本体との間に配置される少なくとも1つの把持部材を有し、
前記把持部材は、前記載置部から前記シリンジ本体を取り外す際に、前記押子フランジが前記把持部材から外れるよう案内する案内部を有
前記案内部は、前記押子フランジが配置される側であり、且つ前記シリンジ押子が配置されている側と反対側の外縁に形成された傾斜部であることを特徴とするシリンジポンプ。
【請求項2】
前記傾斜部は、前記シリンジ押子が配置されている側と反対側に向かって厚みが漸減する請求項に記載のシリンジポンプ。
【請求項3】
前記傾斜部は、前記把持部材が前記シリンジ押子を把持した状態において、把持した前記シリンジ押子の長手軸方向に沿って視たときに、該傾斜部の少なくとも一部が前記押子フランジの外縁より内側に位置するよう設けられていることを特徴とする請求項又はに記載のシリンジポンプ。
【請求項4】
前記傾斜部は、前記把持部材が前記シリンジ押子を把持した状態において、把持した前記シリンジ押子の長手軸方向に沿って視たときに、該傾斜部の端部が前記押子フランジの外縁より外側に位置するよう設けられている請求項に記載のシリンジポンプ。
【請求項5】
前記把持部材は、第1把持部材及び第2把持部材の2つであり、
前記把持機構部は、前記第1把持部材と前記第2把持部材との間に前記シリンジ押子を配置させて把持する請求項1〜4のいずれか1項に記載のシリンジポンプ。
【請求項6】
前記シリンジ押子を把持するために、前記把持部材を回動させる操作部を備える請求項1〜5のいずれか1項に記載のシリンジポンプ。
【請求項7】
前記把持部材は、
前記案内部を有する本体部材と、
前記本体部材を着脱可能に取り付ける支持部材と、
を有する請求項1〜6のいずれか1項に記載のシリンジポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンジを装着してこのシリンジ内の薬液を患者へ送液するためのシリンジポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
シリンジポンプは、例えば集中治療室(ICU)等で使用されて、患者に対して抗がん剤、麻酔剤、化学療法剤、輸血製剤、栄養剤等の薬液の送液処置を、高い精度で比較的長時間行うことに用いられる。シリンジポンプの薬液の流量制御は、他の輸液ポンプに比較して精密で優れている。
【0003】
シリンジポンプを使用する治療室や手術室では、異なる収容量を有する複数種類のシリンジが予め用意されている。医療従事者は、複数種類のシリンジから必要とする収容量のシリンジを選択し、選択された収容量のシリンジを上述したシリンジポンプに対して装着する。
【0004】
シリンジがシリンジポンプの凹状の載置部に装着されると、シリンジ本体の本体フランジが把持されるとともに、シリンジ押子がスライダに把持される。このスライダは、一対の把持部材と、このスライダをスライド方向に固定したりこの固定を解除する操作レバーを有する。
【0005】
この一対の把持部材は、医療従事者が操作レバーを押し込むと、シリンジの軸を基準として互いに傾くことで互いに離れる。そして、一対の把持部材は、医療従事者が操作レバーを開放すると、シリンジ押子の両脇を把持するようになっている。
シリンジポンプのモータを駆動すると、スライダが、シリンジ押子をシリンジ本体側に向けて少しずつ押すことで、シリンジ押子はシリンジ本体内の薬液を押し出して、チューブを通じて患者に送液できる(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013−135753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、医療従事者が、このシリンジをシリンジポンプから外す時に、シリンジ押子の押子フランジが、想定外の無理な負荷を、一対の把持部材に対して与えてしまうことがある。例えば、一対の把持部材が押子フランジを抱えたままの状態で、医療従事者が、シリンジを無理に回動させてしまうと、押子フランジが一対の把持部材に対して無理な負荷を掛けてしまう。このように、医療従事者が、シリンジをシリンジポンプから外す時にシリンジを無理に回動させると、一対の把持部材の内の少なくとも一方側が、破損してしまうおそれがある。
【0008】
一対の把持部材の内の少なくとも一方側が破損すると、シリンジ押子の両脇をスライダの一対の押子クランプにより把持した状態で、正常にはシリンジ押子を押せない。このため、スライダがシリンジ押子を正確に押し込むことができず、薬剤の送液を正確に行うことができない。
【0009】
このようにシリンジポンプは正常に使用できなくなるので、シリンジポンプは、破損した把持部材に代えて新しい把持部材を取り付けるために、分解して修理をする必要がある。
そこで、本発明は、シリンジをシリンジポンプから外す時に、押子フランジが把持部材に対して無理な負荷を掛けないようにして、把持部材の破損を防ぐことができるシリンジポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のシリンジポンプは、シリンジを装着して前記シリンジ内の薬液を送液するシリンジポンプであって、前記シリンジのシリンジ本体を載置可能な載置部と、前記載置部に載置された前記シリンジのシリンジ押子を把持可能な把持機構部と、を備え、前記把持機構部は、前記シリンジ押子に設けられた押子フランジと前記シリンジ本体との間に配置される少なくとも1つの把持部材を有し、前記把持部材は、前記載置部から前記シリンジ本体を取り外す際に、前記押子フランジが前記把持部材から外れるよう案内する案内部を有前記案内部は、前記押子フランジが配置される側であり、且つ前記シリンジ押子が配置されている側と反対側の外縁に形成された傾斜部であることを特徴とする。
【0011】
上記構成によれば、少なくとも1つの把持部材は、案内部を有することから、載置部からシリンジ本体を取り外す際に、押子フランジが把持部材から把持部材の案内部により外れるよう案内することができる。このため、シリンジをシリンジポンプから外す時に、押子フランジが把持部材に対して無理な負荷を掛けないようにして、把持部材の破損を防ぐことができる。従って、シリンジポンプは正常に使用できるので、シリンジポンプを分解して修理をする必要がなくなる。
【0012】
また、上記構成によれば、案内部は、押子フランジが配置される側であって、シリンジ押子が配置されている側とは反対側の外縁に形成されている。このため、傾斜部である案内部は、押子フランジをシリンジ押子が配置されている側とは反対側の外縁に導くようにして案内して、把持部材からスムーズに取り外すことができることから、把持部材の破損を防げる。

【0013】
好ましくは、前記傾斜部は、前記シリンジ押子が配置されている側と反対側に向かって厚みが漸減する。
上記構成によれば、傾斜部は、シリンジ押子が配置されている側と反対側に向かって厚みが漸減している。このため、押子フランジは、この傾斜部の厚みの漸減に沿って、把持部材からスムーズに外すことができることから、把持部材の破損を防げる。
好ましくは、前記傾斜部は、前記把持部材が前記シリンジ押子を把持した状態において、把持した前記シリンジ押子の長手軸方向に沿って視たときに、該傾斜部の少なくとも一部が前記押子フランジの外縁より内側に位置するよう設けられていることを特徴とする。
【0014】
好ましくは、前記傾斜部は、前記把持部材が前記シリンジ押子を把持した状態において、把持した前記シリンジ押子の長手軸方向に沿って視たときに、該傾斜部の端部が前記押子フランジの外縁より外側に位置するよう設けられている。
上記構成によれば、把持したシリンジ押子の長手軸方向に沿って視たときに、この傾斜部の端部が、押子フランジの外縁より外側に位置する。このため、シリンジ押子を把持部材により把持した状態では、傾斜部の端部が、押子フランジの外縁より外側にあるので、案内部における押子フランジを案内するための面積を拡大している。従って、押子フランジは、把持部材に引っ掛からないようにして、確実に傾斜部に沿って案内して取り外すことができる。
【0015】
好ましくは、前記把持部材は、第1把持部材及び第2把持部材の2つであり、前記把持機構部は、前記第1把持部材と前記第2把持部材との間に前記シリンジ押子を配置させて把持する。
上記構成によれば、シリンジ押子は、第1把持部材と第2把持部材により両側から把持するので、シリンジ押子は確実に把持することができる。
【0016】
好ましくは、前記シリンジ押子を把持するために、前記把持部材を回動させる操作部を備える。
上記構成によれば、医療従事者は、操作部を操作するだけで、把持部材を回動して、シリンジ押子を把持したり、シリンジ押子の把持を解除することを、容易に行える。
【0017】
また、本発明のシリンジポンプは、シリンジを装着して前記シリンジ内の薬液を送液するシリンジポンプであって、前記シリンジのシリンジ本体を載置可能な載置部と、前記シリンジのシリンジ押子を把持可能な把持機構部と、を備え、前記把持機構部は、前記シリンジ押子に設けられた押子フランジと前記シリンジ本体との間に配置される少なくとも1つの把持部材を有し、前記把持部材は、前記載置部から前記シリンジ本体を取り外す際に、前記押子フランジが前記把持部材から外れるよう案内する案内部を有し、前記把持部材は、前記案内部を有する本体部材と、前記本体部材を着脱可能に取り付ける支持部材と、を有する、ことを特徴とする。
【0018】
上記構成によれば、少なくとも1つの把持部材は、案内部を有することから、載置部からシリンジ本体を取り外す際に、押子フランジが把持部材から把持部材の案内部により外れるよう案内することができる。このため、シリンジをシリンジポンプから外す時に、押子フランジが把持部材に対して無理な負荷を掛けないようにして、把持部材の破損を防ぐことができる。従って、シリンジポンプは正常に使用できるので、シリンジポンプを分解して修理をする必要がなくなる。
そして、案内部の本体部材は、支持部材に着脱可能に取り付けられている。このため、万が一案内部を有する本体部材が破損したとしても、把持機構部を分解しなくても、案内部を有する本体部分は、支持部材から取り外して新しい本体部分と、容易に交換することができる。従って、シリンジポンプは正常に使用できるので、シリンジポンプを分解して修理をする必要がなくなる。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、シリンジをシリンジポンプから外す時に、押子フランジが把持部材に対して無理な負荷を掛けないようにして、把持部材の破損を防ぐことができるシリンジポンプを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明のシリンジポンプの好ましい第1実施形態を示す斜視図。
図2図1に示すシリンジポンプをW方向から見た斜視図。
図3】複数種類の大きさのシリンジの例を示す斜視図。
図4】シリンジポンプにおける電気的な構成例を示す図。
図5図2に示すシリンジ設定部とシリンジ押子駆動部の一部分を示す斜視図。
図6図5に示すシリンジ設定部とシリンジ押子駆動部の一部分を、E方向から拡大して見た斜視図。
図7】ブーツを最も伸長している状態から、押子フランジをスライダに固定しようとしている状態を示す斜視図。
図8】ブーツを収縮させた状態を示す斜視図。
図9図9(A)は、シリンジ押子押圧部材の斜視図であり、図9(B)は、別の角度から見たシリンジ押子押圧部材の斜視図。
図10】従来のシリンジポンプにおいて、シリンジをRC方向に回動させて外す様子を示す斜視図。
図11図11(A)では、比較として、従来のシリンジポンプにおいて一方の把持部材が破損し、図11(B)では、従来のシリンジポンプにおいて他方の把持部材が破損した例を示す図。
図12】把持部材の好ましい実施形態を示す斜視図。
図13】従来の把持部材を比較例として示す斜視図。
図14】50mLのシリンジの押子フランジを把持部材により把持している状態を示す図。
図15】30mLのシリンジの押子フランジを把持部材により把持している状態を示す図。
図16】本発明の第2実施形態の把持部材を示す斜視図。
図17図16に示す把持部材の分解斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明の好ましい実施形態を、図面を参照して詳しく説明する。
尚、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
<第1実施形態>
図1は、本発明のシリンジポンプの第1実施形態を示す斜視図である。図2は、図1に示すシリンジポンプをW方向から見た斜視図である。
図1図2に示すシリンジポンプ1は、例えば集中治療室等で使用され、患者に対して、例えば抗がん剤、麻酔剤、化学療法剤、輸血製剤、栄養剤等の薬液の微量注入処置を、高い精度で比較的長時間行う微量持続注入ポンプである。
【0022】
図1図2に示すように、シリンジポンプ1は、例えば薬液を充填したシリンジ200のシリンジ本体201を、クランプ5を用いて、動かないように装着して固定することができる。
図2に示すシリンジ押子駆動部7のモータ133が、送りネジ135を回転することで、シリンジ押子駆動部7のシリンジ押子押圧部材10は、シリンジ200のシリンジ押子202を、シリンジ本体201側へT方向に押圧することができる。これにより、シリンジ本体201内の薬液は、図2に示すようにチューブ203と留置針204を介して、患者Pに対して正確に送液する。
【0023】
このシリンジ押子押圧部材10は、シリンジ押子202を把持した状態で、シリンジ押子202をシリンジ本体201側に押して移動させるための移動部材の一例であり、スライダともいう。
図2に示すように、シリンジポンプ1は、筐体2を有し、この筐体2は耐薬品性を有する成型樹脂材料により一体成型されている。図1に示すように、筐体2は、フロントカバー2Fとリアカバー2Rを接合して組み立てることにより、液密性能を有する箱体として構成されている。これにより、後で説明するように、仮に薬液や水分等がかかってもシリンジポンプ1の内部に侵入するのを防ぐことができる防沫および防滴(防水)処理構造を有している。
【0024】
まず、シリンジポンプ1の筐体2に配置された各要素について説明する。
図2に示すように、シリンジポンプ1は、筐体2と取手2Tを有している。筐体2の上部分2Aには、表示部3と、操作パネル部4が配置されている。筐体2の下部分2Bには、シリンジの載置部6とシリンジ押子駆動部7が配置されている。
これにより、医療従事者は、筐体2の上部分2Aの表示部3にカラー表示される情報内容を目視で確認しながら、シリンジ200からの薬液の送液作業を行うことができる。そして、医療従事者は、筐体2の表示部3にカラー表示される情報内容を確認しながら、操作パネル部4の操作ボタンを操作することができる。
【0025】
図1図2に示す表示部3は、カラーグラフィック表示することができるカラー液晶表示装置(LCD)である。この表示部3は、筐体2の上部分2Aの左上位置であって、シリンジの載置部6とシリンジ押子駆動部7の上側に配置されている。操作パネル部4は、筐体2の上部分2Aにおいて表示部3の右側に配置され、操作パネル部4には、操作ボタンとしては、図示例では、パイロットランプ4A、早送りスイッチボタン4B、開始スイッチボタン4C、停止スイッチボタン4D、メニュー選択ボタン4E、電源スイッチ4F等が配置されている。
【0026】
図2に示す筐体2は、上部分2Aと下部分2Bを有する。図1図2に示す例では、シリンジの載置部6とシリンジ押子駆動部7は、X方向(長手軸方向ともいう)に沿って並べて配置されている。シリンジの載置部6は、複数種類の収容量の異なるシリンジの中から、例えば収容量のシリンジ200を選択して、着脱可能にはめ込んで装着することができる。
【0027】
図1図2に示すシリンジの載置部6は、シリンジ本体201を収容する収容部8と、クランプ5と、本体フランジ209を着脱可能にはめ込んで把持するための本体フランジ把持部500を有している。収容部8は、凹型のシリンジ本体保持部8Dを有している。収容部8の左側の端部の壁部分には、チューブ203を着脱可能に挟み込むためのチューブ固定部9が形成されている。このチューブ固定部9は、図2に示すようにチューブ203の一部を挟み込んで固定する溝部分である。
【0028】
図1図2において、医療従事者が、クランプ5を操作してシリンジ200をシリンジの載置部6から取り外す際には、例えばクランプ5を図示しないスプリングの力に抗してY1方向(手前方向)に引っ張って、しかもR1方向に90度回すことで、クランプ5はシリンジ本体201の外周面から離れる。これにより、シリンジ本体201は、クランプ5による固定を解除して、収容部8のシリンジ本体保持部8Dから取り出すとともに、チューブ203はチューブ固定部9内から取り外すことができる。
【0029】
また、このクランプ5を操作してシリンジ200をシリンジの載置部6の収容部8に収容して取り付ける際には、クランプ5を図示しないスプリングの力に抗してY1方向に引っ張ってR2方向に90度回して、スプリングの力によりY2方向に戻す。これにより、シリンジ本体201は、収容部8のシリンジ本体保持部8D内に収容するとともに、チューブ203をチューブ固定部9内にはめ込んだ状態で、クランプ5により固定することができる。
【0030】
図1図2に示すように、シリンジ本体201が収容部8のシリンジ本体保持部8D内に収容して装着されると、シリンジ押子202がシリンジ押子駆動部7内に配置される。このシリンジ押子駆動部7は、シリンジ押子押圧部材10を有している。制御部からの指令により図2のモータ133が駆動して送りネジ135が回転すると、このシリンジ押子押圧部材10は、シリンジ押子202の押子フランジ205を、シリンジ本体201側へT方向に沿って少しずつ押す。この送りネジ135は、シリンジ押子押圧部材10を収容部8側に少しずつ押して案内していくための案内部材である。
【0031】
これにより、シリンジ本体201内の薬液は、チューブ203と留置針204を通じて、患者Pに対して高い精度で比較的長時間かけて送液することができる。なお、図1図2におけるX方向、Y方向、Z方向は互いに直交している。X方向は、シリンジポンプ1の収容部8の長手軸方向であり、Y方向は、シリンジポンプ1の前後方向であり、そしてZ方向はシリンジポンプ1の上下方向である。
【0032】
図3は、複数種類の大きさのシリンジの例を示す斜視図である。図1図2では、一例として、最も薬液の収容量が大きいシリンジ200が固定されている。
図3(A)に示す最も薬液の収容量が大きいシリンジ200は、シリンジ本体201と、シリンジ押子202を有しており、シリンジ本体201は本体フランジ209を有し、シリンジ押子202は押子フランジ205を有している。シリンジ本体201には、薬液の目盛210が形成されている。シリンジ本体201の出口部211には、フレキシブルなチューブ203の一端部が着脱可能に接続される。
【0033】
図3(B)に示す薬液の収容量が中くらいのシリンジ300は、シリンジ本体301と、シリンジ押子302を有しており、シリンジ本体301は本体フランジ309を有し、シリンジ押子302は押子フランジ305を有している。シリンジ本体301には、薬液の目盛310が形成されている。シリンジ本体301の出口部311には、フレキシブルなチューブ203の一端部が着脱可能に接続される。
図3(A)に示すシリンジ200は、例えば薬液の収容量が50mL、押子フランジ202の直径が35mmであり、図3(B)に示すシリンジ300は、例えば薬液の収容量が30mL、押子フランジ302の直径が26mmである。
【0034】
図3に示すシリンジ200,300の各シリンジ本体201,301は、それぞれ大きさが異なる。シリンジ200,300の各シリンジ本体201,301は、図1図2に示すようにして、収容部8のシリンジ本体保持部8D内に収容して固定することができる。
【0035】
次に、図4を参照して、図1図2に示すシリンジポンプ1における電気的な構成例を説明する。
図4において、シリンジポンプ1は、全体的な動作の制御を行う制御部(コンピュータ)100を有している。この制御部100は、例えばワンチップのマイクロコンピュータであり、ROM(読み出し専用メモリ)101,RAM(ランダムアクセスメモリ)102、不揮発性メモリ103、そしてクロック104を有する。クロック104は、所定の操作により現在時刻の修正ができ、現在時刻の取得や、所定の送液作業の経過時間の計測、送液の速度制御の基準時間の計測等ができる。
【0036】
図4に示す制御部100は、電源スイッチボタン4Fと、スイッチ111が接続されている。スイッチ111は、電源コンバータ部112と例えばリチウムイオン電池のような充電池113を切り換えることで、電源コンバータ部112と充電池113のいずれかから制御部100に電源供給する。電源コンバータ部112は、コンセント114を介して商用交流電源115に接続されている。図4において、例えば収容部8内には、一対の検出スイッチ120,121が配置されている。検出スイッチ120,121は、複数種類のシリンジのシリンジ本体のいずれか、例えばシリンジ200のシリンジ本体201が、収容部8内に正しく配置されているかどうかを検知して、制御部100に通知する。
【0037】
図4に示すクランプセンサとしてのポテンションメータ122は、クランプ5に連結されている。このポテンションメータ122は、シリンジ本体201をクランプ5によりクランプした状態で、クランプ5がY2方向に関して移動する際のクランプ5の移動量を検出する。これにより、どの収容量のシリンジ本体201(301)がクランプ5によりクランプされているかどうかを、制御部100に検出信号を送って通知する。制御部100は、このポテンションメータ122からの検出信号によりクランプ5のY方向に関する移動量を得て、例えば図3に示す複数種類のシリンジ本体201,301の内のどのシリンジが装着されているかを判別することができる。
【0038】
図4に示すシリンジ押子駆動部7のモータ133は、制御部100の指令によりモータドライバ134により駆動されると、送りネジ135を回転させてシリンジ押子押圧部材10をT方向に移動させる。これにより、シリンジ押子押圧部材10は、シリンジ押子202をT方向に押圧して、図2に示すシリンジ本体201内の薬液を、チューブ203を通じて患者Pに対して留置針204を介して正確に送液する。
【0039】
図4において、表示部ドライバ130は、制御部100の指令により表示部3を駆動して、各種情報や報知内容等を表示する。スピーカ131は、制御部100の指令により各種の報知内容を告知する。制御部100は、通信ポート140を通じて、例えばデスクトップコンピュータのような外部コンピュータ141に対して双方向に通信可能である。この外部コンピュータ141は、薬液データベース(DB)150に接続されており、薬液データベース150に格納されている薬液情報MFは、外部コンピュータ141を介して、制御部100に取得して、制御部100の不揮発性メモリ103に記憶させることができる。制御部100は、記憶した薬液情報MFを基にして、表示部3には薬液情報MF等を表示することができる。
【0040】
図4において、早送りスイッチボタン4B、開始スイッチボタン4C、停止スイッチボタン4D、メニュー選択ボタン4E、電源スイッチ4Fは、制御部100に電気的に接続されている。この他に、制御部100には、本体フランジ209が、本体フランジ把持部500(図5を参照)により把持されたことを検出するための検出器としてのフォトカプラセンサ250が、電気的に接続されている。このフォトカプラセンサ250は、発光素子251と、この発光素子251からの光を受光する受光素子252を有している。
【0041】
次に、図5図6を参照して、シリンジの載置部6の詳しい構造を説明する。図5は、図2に示すシリンジの載置部6とシリンジ押子駆動部7の一部分を示す斜視図である。図6は、図5に示すシリンジの載置部6とシリンジ押子駆動部7の一部分を、E方向から拡大して見た斜視図である。
図5に示すシリンジの載置部6は、シリンジ本体201を収容する収容部8と、クランプ5と、シリンジ200の本体フランジ209(図3を参照)を押さえて把持する本体フランジ把持部500と、本体フランジ検出部600を有している。
【0042】
図1図2に示すように、一例として、シリンジ200のシリンジ本体201がシリンジの載置部6に設定され、シリンジ200のシリンジ本体201が、クランプ5を用いて固定されている。図5図6に示すように、シリンジの載置部6の収容部8は、シリンジ本体201を収容することができる凹部であり、収容部8の長手軸方向であるX方向に沿っている。シリンジ本体201の外周面の一部分が収容部8のシリンジ本体保持部8Dの内面に対して密接され、シリンジ本体201の外周面の残り部分は、外側に露出されている。本体フランジ検出部600は、図4に示すフォトカプラセンサ250を有している。
【0043】
図5図6を参照して、本体フランジ把持部500の形状を説明する。この本体フランジ把持部500の形状はあくまでも一例であり、本体フランジ把持部500はこの形状に限定されない。この本体フランジ把持部500は、Y方向とZ方向で形成される面に沿って配置されている。
図5図6に示すように、本体フランジ把持部500は、先端部501と、2つの連結部588を有している。図6に示すように、この先端部501は、好ましくは2つの導入部502,503と、これらの導入部502,503の間に形成されている凹部504を有している。これにより、医療従事者は、図1図2に示すように、シリンジ200の本体フランジ209を、2つの導入部502,503を用いて、本体フランジ把持部500の内面とシリンジ本体保持部8Dの右側側面部8Vとの間に、Y2方向(図1を参照)に沿って容易に挿入できる。
【0044】
従って、本体フランジ把持部500は、本体フランジ209を確実に把持して固定することができる。図5図6に示すように、両側の連結部588の間には、ほぼ円形の穴部599を有している。この穴部599は、図6に示すように、後で説明する覆い部材としてのブーツ800を通すために形成されている。これにより、図2に示すシリンジ押子202をシリンジ本体201側に向けて押してシリンジ本体201内の薬液を送液する時に、ブーツ800は、本体フランジ把持部500に接触することなく弾性変形して収縮できる。
【0045】
図6に戻ると、シリンジポンプ1が使用される状態では、この導入部502は、Z方向に関して上側に位置し、導入部503は下側に位置している。凹部504の中央位置には、好ましくはさらに小さい凹部505が形成されている。この小さい凹部505は、シリンジ200が装着された状態で、図2に示すシリンジ押子202の羽根部分の一部分を入れ込むための溝部分である。これにより、シリンジ押子202の羽根部分が本体フランジ把持部500の凹部504の面に乗り上げてしまうことが無い。このため、シリンジ200を所定に位置に確実に固定できる。このことは、シリンジ200だけでなく、図3に示すシリンジ300の場合も同様である。
【0046】
次に、図5図6に示す覆い部材としてのブーツ800の形状例について、簡単に説明する。
このブーツ800は、図2に示すシリンジ押子202をシリンジ本体201側に押してシリンジ本体201内の薬液を送る際に、弾性変形して収縮可能な部材である。図5に示すように、ブーツ800は、収容部8のシリンジ本体保持部8Dの右側側面部8Vと、シリンジ押子押圧部材10の把持機構部80の間に配置されている。ブーツ800は、弾性変形により伸縮可能な例えばゴムやプラスチックにより作られており、シリンジ押子押圧部材10がX1方向とX2方向に移動するのに伴って、伸張と収縮ができる。
ブーツ800は、例えば、図4に示すガイドバーやシャフト136等の機械要素を覆うために防沫構造になっている。これにより、例えばシリンジ本体201内の薬液がこぼれたり、上方に配置されている点滴液がこぼれ落ちたり、周辺で用いる消毒液や水分等が飛散しても、機械要素に対して付着するのを防ぐ。
【0047】
図7(A)は、ブーツ800を最も伸長している状態を示し、図7(B)は、押子フランジ205をシリンジ押子押圧部材10に固定しようとしている状態を示している。
図7に例示するように、ブーツ800は、例えば複数の同じ大きさの第1凸部分811,812,813,814,815,816と、複数の同じ大きさの第2凸部分821,822,823と、左右の連結部分830,831を有している。第2凸部分821,822,823の直径は、第1凸部分811,812,813,814,815,816の直径よりも小さい。
図6に示すように、左側の連結部分830は、本体フランジ把持部500の穴部599を通って、シリンジ本体保持部8Dの右側側面部8V側に固定されている。1つの第2凸部分823は右側の連結部分831を介して把持機構部80の内側面89側に接続されている。
これにより、シリンジ押子押圧部材10が左側に移動してブーツ800が弾性変形して収縮されると、第2凸部分821,822,823が、より直径の大きい第1凸部分に対して入り込むようになっている。
【0048】
次に、図7図8を参照して、図2に示すシリンジ押子駆動部7の構造例を説明する。図8は、ブーツ800を収縮させている途中の状態を示す斜視図である。
図2図7に示すように、シリンジ押子駆動部7は、本体カバー2の延長部2N内に収容して保持されている。この延長部2Nは、本体カバー2の下部分からX1方向に延長することにより形成されている。図2に示すように、延長部2Nは、上側面部701と、下側面部702と、右側面部703を有している。この延長部2Nは、上側面部701と下側面部702と右側面部703と、図7に示すすでに説明した収容部8のシリンジ本体保持部8Dの右側側面部8Vと、により囲まれた空間SPを有しており、この空間SP内にはシリンジ押子駆動部7が収容されている。
【0049】
図4に示すシリンジ押子駆動部7のモータ133は、制御部100の指令により駆動されると、送りネジ135を回転させてシリンジ押子押圧部材10をT方向に移動させる。これにより、シリンジ押子押圧部材10は、シリンジ押子202をT方向に押圧して、図2に示すシリンジ本体201内の薬剤を、チューブ203を通じて患者Pに対して留置針204を介して正確に送液することができる。
【0050】
図7に示すように、このシリンジ押子押圧部材10は、把持機構部80と、2つの把持部材81,82と、把持部材81,82の開閉用の動力を手動で入力するための操作部としての操作レバー83を有している。
この把持部材81は上側の第1把持部材であり、把持部材82は、下側の第2把持部材である。把持部材81,82はフックとも呼ぶことができる。なお、本件明細書の説明において、「上側」「下側」とは本実施形態における位置的表現にすぎないものであって、要は把持機構80を構成する一対の把持部材の「一方」と「他方」とを意味し、「上」や「下」という方向それ自体に技術的意義があるわけではない。
この把持機構部80は、延長部2Nのガイドレール84に沿ってX1方向とX2方向(T方向)に沿って移動可能である。医療従事者は、指により、この操作レバー83を、図7(A)に示す初期位置からP1方向にスプリングの付勢力に抗して押し下たり、図7(B)に示すようにPR方向にスプリングの付勢力により持ち上げて初期位置に復帰させることができる。
【0051】
図8(B)に示すように、医療従事者が操作レバー83を、初期位置からP1方向に押し下ることにより、把持部材81,82は、X2方向に移動して把持機構部80から離れて間隔BNを開け、医療従事者が操作レバー83をさらに押すと、把持部材81,82は互いに遠ざかるRQ1方向に開く。
医療従事者がシリンジ押子202の押子フランジ205を、この間隔BNにはめ込んだ後に、医療従事者が操作レバー83を放すと、操作レバー83はスプリングの力によりRQ2方向に復帰する。これにより、把持部材81,82は、図示しないスプリングの力により、X1方向に移動して押子フランジ205をこれらの把持部材81,82と把持機構部80の間に挟んで保持する。しかも、把持部材81,82をRQ2方向に閉じることで、把持部材81,82はシリンジ押子202を両側から挟んで保持できる。
【0052】
次に、図9を参照して、シリンジ押子押圧部材10の構造例を、簡単に説明する。
図9(A)は、シリンジ押子押圧部材10の斜視図であり、図9(B)は、別の角度から見たシリンジ押子押圧部材10の斜視図である。
図9を参照すると、シリンジ押子押圧部材10の把持機構部80は、第1カバー901と第2カバー902と、第1シール材903と第2シール部材914を有している。第2カバー902はこの第1カバー901に対して、第1シール材903を介して、図9(B)に示す3本のネジ904を用いて固定されている。第1シール材903は、把持機構部80を防沫構造にするために、第1カバー901の接合部分と第2カバー902の接合部分を気密に接合する。
第1カバー901と第2カバー902の内部には、上述したように操作レバー83を操作することで、把持部材81,82を開いたり、閉じたりするための把持機構部80のギヤ等の機構要素が収容されている。
【0053】
ここで、本発明の実施形態のシリンジポンプ1の使用例を、簡単に説明する。
医療従事者は、図3に示す複数種類のシリンジ200,300の中から、例えばシリンジ200を選択して、図1図2に示すように、シリンジ200をシリンジポンプ1に対して装着する。医療従事者は、シリンジ本体201は、収容部8のシリンジ本体保持部8D内に収容するとともに、チューブ203をチューブ固定部9内にはめ込んだ状態で、クランプ5により固定する。
これにより、シリンジ本体201は、収容部8のシリンジ本体保持部8D内に固定できる。しかも、本体フランジ209の一部分は、右側側面部8Vと本体フランジ把持部500の間に挟んで把持する。これにより、図1図2に示すように、シリンジ200の本体フランジ209は、確実に把持することができる。
【0054】
図7に示すように、医療従事者は、指で操作レバー83をP1方向へ押したままの状態で、シリンジ押子押圧部材10をT(X2方向)方向に押すことにより、図8(B)に示すようにして、把持機構部80を押子フランジ205に接近して、シリンジ押子押圧部材10の2つの把持部材81,82により、図8(B)に示すようにシリンジ押子202を把持させる。
【0055】
その後、図4に示すシリンジ押子駆動部7のモータ133は、制御部100の指令により駆動されると、送りネジ135の回転によりシリンジ押子押圧部材10を、T方向に移動させる。これにより、シリンジ押子押圧部材10は、シリンジ押子202をT方向に押圧して、図2に示すシリンジ本体201内の薬液を、チューブ203を通じて患者Pに対して留置針204を介して正確に送液することができる。
【0056】
ところで、従来のシリンジポンプにおいて、送液作業が終了したり、シリンジを新たなシリンジに交換する際には、医療従事者は使用済みのシリンジをシリンジポンプの載置部から外すことを行う。
図10は、従来のシリンジポンプにおいて、シリンジ200をRC方向に外す様子を示す斜視である。図11(A)では、本発明の実施形態に対する比較例として、従来のシリンジポンプにおいて上側の把持部材381が破損した例を示し、図11(B)では、従来のシリンジポンプにおいて下側の把持部材382が破損した例を示している。
【0057】
医療従事者が、このシリンジ200を従来のシリンジポンプから外す時に、押子フランジ205が、想定外の無理な負荷を、従来の把持部材381,382に対して与えてしまうことがある。
例えば、医療従事者が、このシリンジ200をシリンジポンプの載置部から外す時に、図10に示すように、一対の把持部材381,382が押子フランジを抱えたままの状態で、RC方向に沿ってシリンジを無理に回動させてしまうと、押子フランジ205が一対の把持部材381,382に対して無理な負荷を与えてしまう。
【0058】
特に、手術等の際に複数のシリンジポンプの使用が必要な場合には、複数のシリンジポンプを、設置スタンドを用いて垂直方向に並べて固定することがある。この場合に、医療従事者が、設置スタンドの上の位置に固定されているシリンジポンプからシリンジ200を取り外そうとすると、医療従事者は、シリンジ200をRC方向とは反対方向に下向きに無理に回動させてしまうことがある。この場合には、図11(A)に示すように、下側の把持部材382は残るが、上側の把持部材381が破損することがある。
また、医療従事者が、設置スタンドの下の位置に固定されているシリンジポンプからシリンジ200を取り外そうとすると、医療従事者は、シリンジ200を図10に示すRC方向に無理に回動させてしまうことがある。この場合には、図11(B)に示すように、上側の把持部材381は残るが、下側の把持部材382が破損することがある。
【0059】
このように、従来のシリンジポンプでは、医療従事者が、シリンジ200を無理に回動させてしまうと、一対の把持部材381,382の内の少なくとも一方側が破損してしまうおそれがある。
一対の把持部材381,382の内の少なくとも一方側が破損すると、押子フランジ205を正しく押すことができない。このため、スライダがシリンジ押子202を正確に押し込むことができず、薬剤の送液を正確に行うことができない。従来のシリンジポンプが使用できなくなると、従来のシリンジポンプは、新しい把持部材を取り付けるために、分解修理に出す必要がある。
【0060】
そこで、本発明の実施形態のシリンジポンプ1では、把持部材81,82が、次に説明するような構造を有することで、従来のシリンジポンプに発生した問題を解消している。
図12は、把持部材81,82の好ましい実施形態を示す斜視図である。図13は、図12の本発明の実施形態の把持部材81,82と比較するために、従来の把持部材382を比較例として示す斜視図である。
図14は、収容量が50mLのシリンジ200の押子フランジ205を、把持部材81,82により把持している状態を示す図である。図15は、収容量が30mLのシリンジ300の押子フランジ305を、把持部材81,82により把持している状態を示す図である。
【0061】
図12には、本発明の実施形態の上側の把持部材(第1把持部材)81と、下側の把持部材(第2把持部材)82を示している。
図12に示す上側の把持部材81と下側の把持部材82は、中心線RTに関して左右対称形状を有する。把持部材81,82は、じん性を有し、折れにくい材質、例えばポリブチレンテレフタレート(PBT)やポリアセタール(POM)等を用いて作ることができる。
【0062】
先に、把持部材81の構造を説明する。
図12に示すように、把持部材81は、本体部81Aと、本体部81Aと一体に形成されている根元部81Bを有する。
先に根元部81Bを説明すると、根元部81Bは、本体部81Aの内面81Dから垂直方向に沿って一体的に突出して形成されており、筒状の部材である。この根元部81B内には、軸部81Iがはめ込まれている。この軸部81Iは、ステンレス等の金属製の部材である。把持部材81は、この軸部81Iを中心として回動することで、RQ1方向に開いたり、RQ2方向に閉じるようになっている。
【0063】
把持部材81の本体部81Aは、外面81Cと内面81Dと、内側面81Eと、外縁81Fを有する。本体部81Aは、根元部81Bから先端部81Gにかけて、少しずつ先細りに形成されている。内面81Dには、押子フランジを案内するための案内部としての傾斜部81Hが形成されている。内面81Dは、押し子フランジと当接する面である。
この傾斜部81Hは、図1に示す載置部6からシリンジ本体201を取り外す際に、押子フランジ205が、把持部材81から滑ることで、スムーズに容易に外れるよう案内するために形成されている。傾斜部81Hは、内面81Dにおいて、根元部81Bから離れた位置から、ほぼ先端部81Gの手前の位置まで形成されている。
ただし、図12において、傾斜部81Hが、先端部81Gに達するまで形成されていると、先端部81G付近の強度が低下するので、好ましくない。従って、傾斜部81Hの先端側の端部81Sは、先端部81Gに達してはいない手前の位置に形成されている。
【0064】
図14に例示するように、傾斜部81Hは、シリンジ押子202が配置される側とは反対側であるF1方向に向かって、すなわち外縁81Fに向けて厚みが漸減するように形成されている。これにより、傾斜部81Hは、シリンジ押子202が配置される側と反対側に向かって厚みが漸減している。このため、押子フランジ205は、この傾斜部81Hの厚みの漸減に沿って、滑るように案内されることから、この押し子フランジ205に対する当接圧力が徐々に減少することで、把持部材81から無理なくスムーズに外すことができる。このため、押し子フランジを外す時に無理な力がかからないので、把持部材81の破損を防げる。
【0065】
また、図14に示すように、傾斜部81Hは、把持部材81がシリンジ押子202を把持した状態において、把持したシリンジ押子202の長手軸方向(X方向)に沿って視たときに、この傾斜部81Hの少なくとも一部が押子フランジ202の外縁205Aより内側に位置するよう設けられている。これにより、押子フランジ205は、把持部材81に引っ掛からないようにして、より確実に傾斜部81Hに沿って案内して取り外すことができる。
さらに、図14に示すように、傾斜部81Hは、把持部材81がシリンジ押子202を把持した状態において、把持したシリンジ押子202の長手軸方向(X方向)に沿って視たときに、この傾斜部81Hの端部81Rが押子フランジ205の外縁205Aよりも外側に位置するよう設けられている。これにより、押子フランジ205は、把持部材81に引っ掛からないようにして、確実に傾斜部81Hに沿って案内して取り外すことができる。
シリンジ押子202を把持部材81,82により把持した状態では、傾斜部81Hの端部81Rが、押子フランジ205の外縁205Aより外側にあるようにすることで、案内部としての傾斜部81Hにおける押子フランジ205を案内するための面積を拡大している。従って、押子フランジ205は、把持部材81に引っ掛からないようにして、確実に傾斜部81Hに沿って案内して取り外すことができる。
【0066】
傾斜部81Hは、傾斜部81Hの端部81Rと、先端側の端部81Sと、内端縁81Tと、外端縁81Uにより囲まれる斜線で表示する部分であるが、この斜線で表示する部分は好ましくは平面になっている。これにより、傾斜部81Hは、図1に示す載置部6からシリンジ本体201を取り外す際に、押子フランジ205が、把持部材81から滑って容易に外れるよう案内することができる。以上のことは、図15に示すシリンジ300の押子フランジ305についても同じである。
なお、シリンジ押子202と把持部材81の内側面81Eとの接点から押子フランジ205の外縁205Aまでの最短距離は、例えば6mmであり、シリンジ押子302と把持部材81の内側面81Eとの接点から押子フランジ305の外縁305Aまでの最短距離は、例えば7mmである。
【0067】
次に、把持部材82の構造を説明する。
図12に示すように、把持部材82は、本体部82Aと、本体部82Aと一体に形成されている根元部82Bを有する。
先に根元部82Bを説明すると、根元部82Bは、本体部82Aの内面82Dから垂直方向に沿って一体的に突出して形成されており、筒状の部材である。この根元部82B内には、軸部82Iがはめ込まれている。この軸部82Iは、ステンレス等の金属製の部材である。把持部材82は、この軸部82Iを中心として、RQ1方向に開いたり、RQ2方向に閉じるようになっている。
【0068】
把持部材82の本体部82Aは、外面82Cと内面82Dと、内側面82Eと、外縁82Fを有する。本体部82Aは、根元部82Bから先端部82Gにかけて、少しずつ先細りに形成されている。内面82Dには、押子フランジを案内するための案内部としての傾斜部82Hが形成されている。
この傾斜部82Hは、図1に示す載置部6からシリンジ本体201を取り外す際に、押子フランジ205が、把持部材82から滑ることで、スムーズに容易に外れるよう案内するために形成されている。傾斜部82Hは、内面82Dにおいて、根元部82Bから離れた位置から、ほぼ先端部82Gの手前の位置まで形成されている。
ただし、図12において、傾斜部82Hが、先端部82Gに達するまで形成されていると、先端部82G付近の強度が低下するので、好ましくない。従って、傾斜部82Hの先端側の端部82Sは、先端部82Gに達してはいない手前の位置に形成されている。
【0069】
傾斜部82Hは、シリンジ押子202が配置されている側とは反対側であるF1方向に向かって、すなわち外縁82Fに向けて厚みが漸減するように形成されている。これにより、傾斜部82Hは、シリンジ押子202が配置されている側と反対側に向かって厚みが漸減している。このため、押子フランジ205は、この傾斜部82Hの厚みの漸減に沿って、把持部材82からスムーズに外すことができることから、把持部材82の破損を防げる。
また、図14に示すように、傾斜部82Hは、把持部材82がシリンジ押子202を把持した状態において、把持したシリンジ押子202の長手軸方向(X方向)に沿って視たときに、この傾斜部82Hの少なくとも一部が押子フランジ202の外縁205Aより内側に位置するよう設けられている。これにより、押子フランジ205は、把持部材82に引っ掛からないようにして、より確実に傾斜部82Hに沿って案内して取り外すことができる。
【0070】
さらに、図14に示すように、傾斜部82Hは、把持部材82がシリンジ押子202を把持した状態において、把持したシリンジ押子202の長手軸方向(X方向)に沿って視たときに、この傾斜部82Hの端部82Rが押子フランジ205の外縁205Aより外側に位置するよう設けられている。これにより、押子フランジ205は、把持部材82に引っ掛からないようにして、確実に傾斜部82Hに沿って案内して取り外すことができる。
シリンジ押子202を把持部材81,82により把持した状態では、傾斜部82Hの端部82Rが、押子フランジ205の外縁205Aより外側にあるようにすることで、案内部としての傾斜部82Hにおける押子フランジ205を案内するための面積を拡大している。従って、押子フランジ205は、把持部材82に引っ掛からないようにして、確実に傾斜部82Hに沿って案内して取り外すことができる。
【0071】
傾斜部82Hは、傾斜部82Hの端部82Rと、先端側の端部82Sと、内端縁82Tと、外端縁82Uにより囲まれる斜線で表示する部分であるが、この斜線で表示する部分は好ましくは平面になっている。これにより、傾斜部82Hは、図1に示す載置部6からシリンジ本体201を取り外す際に、押子フランジ205が、把持部材82から滑って容易に外れるよう案内することができる。以上のことは、図15に示すシリンジ300の押子フランジ305についても同じである。
なお、シリンジ押子202と把持部材82の内側面82Eとの接点から押子フランジ205の外縁205Aまでの最短距離は、例えば6mmであり、シリンジ押子302と把持部材82の内側面82Eとの接点から押子フランジ305の外縁305Aまでの最短距離は、例えば7mmである。
これに対して、図13に示す比較例の把持部材382は、その内面が平坦面382Aを有しているだけである。
以上説明したように、本発明の第1実施形態のシリンジポンプ1では、シリンジ200(300)をシリンジポンプ1から外す時に、押子フランジ205(305)が把持部材81,82に対して無理な負荷を掛けないようにして、把持部材81,82の破損を防ぐことができる。このため、シリンジポンプ1は、分解修理に出す必要が無い。
【0072】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態を、図16図17を参照して説明する。
図16は、本発明の第2実施形態の把持部材を示す斜視図であり、図17は、図16に示す把持部材の分解斜視図である。
図16図17では、下側の把持部材82を代表して示しているが、上側の把持部材81は、この下側の把持部材82と左右対称形状である他は、実質的に同じであるので、上側の把持部材81の図示と説明は省略する。
【0073】
図16図17に示すように、下側の把持部材82は、案内部82Hを有する本体部材82Pと、支持部材82Mを有する。しかも、支持部材82Mは、根元部82Qと、軸部82Zを有する。すなわち、把持部材82は、本体部材82Pと、根元部82Qと、軸部82Zの合計3部材により、構成されている。
本体部材82Pと支持部材82Mの根元部82Qは、じん性を有し、折れにくい材質、例えばポリブチレンテレフタレート(PBT)やポリアセタール(POM)等を用いて作ることができる。軸部82Zは、ステンレス等の金属で作られている。
【0074】
本体部材82Pは、図12に示す本体部材82Aと実質的には同じ形状であるが、本体部材82Pは、さらに差し込み用の溝部82Nを有している。この差し込み用の溝部82Nは、内面82Dにおいて案内部としての傾斜部82Hに向かう方向に沿って形成されている。
支持部材82Mの根元部82Qは、筒状部82Vと、差し込み片部82Wを有する。差し込み片部82Wは、矢印82Xに沿って、本体部材82Pの差し込み用の溝部82N内に着脱可能に差し込まれることで、本体部材82Pと支持部材82Mは一体化される。根元部82Qの筒状部82Vには、軸部82Zが差し込まれることで一体化される。
【0075】
これにより、万が一本体部材82Pが破損したとしても、本体部材82Pは支持部材82Mの根元部82Qから取り外すことにより、本体部材82Pだけを新しい本体部材82Pに、簡単に交換することができる。このため、破損した本体部材82Pだけを、図14に示す把持機構部80を分解することなく、簡単に交換できる。
本体部材82Pと支持部材82Mを別々の部材とすることで、本体部材82Pと支持部材82Mを一体型に成形する場合に比べて、製造時には、プラスチックのインサート成形をする必要が無い。このため、本体部材82Pと支持部材82Mは、別々に連続して成形して製造が可能になり、プラスチック原料の滞留のリスクを低減できる。
図17に例示すように、好ましくは、根元部82Qの差し込み片部82Wは、厚みを大きくすることで丈夫にして、根元部82Qの差し込み片部82Wに掛かる応力集中を避けることができる。
【0076】
上述したように、本発明の実施形態のシリンジポンプ1は、シリンジ200(300)を装着してシリンジ内の薬液を送液する。シリンジポンプ1は、シリンジ200(300)のシリンジ本体201(301)を載置可能な載置部6と、載置部6に載置されたシリンジ押子202(302)を把持可能な把持機構部80と、を備える。把持機構部80は、シリンジ押子202(302)に設けられた押子フランジ205(305)とシリンジ本体201(301)との間に配置される少なくとも1つの把持部材81,82を有する。把持部材81,82は、載置部6からシリンジ本体201(301)を取り外す際に、押子フランジ205(305)が把持部材81,82から外れるよう案内する案内部としての傾斜部81H、82Hを有する。
【0077】
これにより、少なくとも1つの把持部材81,82は、案内部としての傾斜部81H、82Hを有することから、載置部6からシリンジ本体201(301)を取り外す際に、押子フランジ205(305)が把持部材81,82から把持部材81,82の案内部としての傾斜部81H、82Hにより外れるよう案内することができる。このため、シリンジ200(300)をシリンジポンプ1から外す時に、押子フランジ205(305)が把持部材81,82に対して無理な負荷を掛けないようにでき、把持部材81,82の破損を防ぐことができる。従って、シリンジポンプ1は正常に使用できるので、シリンジポンプ1を分解して修理をする必要がなくなる。
【0078】
案内部としての傾斜部81H、82Hは、押子フランジ205(305)が配置される側であり、且つシリンジ押子202(302)が配置されている側と反対側の外縁に形成された傾斜部である。
これにより、案内部としての傾斜部81H、82Hは、押子フランジ205(305)が配置される側であって、シリンジ押子202(302)が配置されている側とは反対側の外縁81F、82Fに形成されている。このため、案内部としての傾斜部81H、82Hは、押子フランジ205(305)をシリンジ押子202(302)が配置されている側とは反対側の外縁81F、82Fに導くようにして案内して、把持部材81,82からスムーズに取り外すことができることから、把持部材81,82の破損を防げる。
【0079】
傾斜部81H、82Hは、シリンジ押子202(302)が配置されている側と反対側に向かって厚みが漸減する。
これにより、傾斜部81H、82Hは、シリンジ押子202(302)が配置されている側と反対側に向かって厚みが漸減している。すなわち、傾斜部81H、82Hは、外縁81F、82Fに向かって厚みが漸減している。このため、押子フランジ205(305)は、この傾斜部81H、82Hの厚みの漸減に沿って、把持部材81,82からスムーズに外すことができることから、把持部材81,82の破損を防げる。
【0080】
傾斜部81H、82Hは、把持部材81,82がシリンジ押子202(302)を把持した状態において、把持したシリンジ押子202(302)の長手軸方向(X方向)に沿って視たときに、傾斜部81H、82Hの端部が押子フランジ205(305)の外縁205A(305A)よりも、外側に位置するよう設けられている。
【0081】
これにより、把持したシリンジ押子202(302)の長手軸方向(X方向)に沿って視たときに、この傾斜部81H、82Hの端部81R、82Rが、押子フランジ205(305)の外縁205A(305A)より外側に位置する。このため、シリンジ押子202(302)を把持部材81,82により把持した状態では、傾斜部81H、82Hの端部81R、82Rが、押子フランジ205(305)の外縁205A(305A)より外側にあるようにすることで、案内部としての傾斜部81H、82Hにおける押子フランジ205(305)を案内するための面積を拡大している。従って、押子フランジ205(305)は、把持部材81,82に引っ掛からないようにして、確実に傾斜部81H、82Hに沿って案内して取り外すことができる。
【0082】
把持部材は、第1把持部材81及び第2把持部材82の2つであり、把持機構部80は、第1把持部材と第2把持部材との間にシリンジ押子202(302)を配置させて把持する。
これにより、シリンジ押子202(302)は、第1把持部材と第2把持部材により両側から把持するので、シリンジ押子202(302)は確実に把持することができる。
【0083】
シリンジ押子202(302)を把持するために、把持部材81,82を回動させる操作部としての操作レバー83を備える。
上記構成によれば、医療従事者は、操作部としての操作レバー83を操作するだけで、把持部材81,82を回動して、シリンジ押子202(302)を把持状態にしたり、シリンジ押子202(302)の把持状態を解除することを、容易に行える。
【0084】
また、本発明の実施形態のシリンジポンプ1は、シリンジ200(300)を装着してシリンジ内の薬液を送液する。シリンジポンプ1は、シリンジ200(300)のシリンジ本体201(301)を載置可能な載置部6と、シリンジ200(300)のシリンジ押子202(302)を把持可能な把持機構部80と、を備える。把持機構部80は、シリンジ押子202(302)に設けられた押子フランジ205(305)とシリンジ本体201(301)との間に配置される少なくとも1つの把持部材81,82を有する。
【0085】
この把持部材81,82は、載置部6からシリンジ本体201(301)を取り外す際に、押子フランジ205(305)が把持部材81,82から外れるよう案内する案内部としての傾斜部81H、82Hを有する。把持部材81,82は、案内部としての傾斜部81H、82Hを有する本体部材82Pと、本体部材82Pを着脱可能に取り付ける支持部材82Mを有する。
【0086】
上記構成によれば、少なくとも1つの把持部材81,82は、案内部としての傾斜部81H、82Hを有することから、載置部6からシリンジ本体201(301)を取り外す際に、押子フランジ205(305)が把持部材81,82から把持部材81,82の案内部としての傾斜部81H、82Hにより外れるよう案内することができる。
このため、シリンジ200(300)をシリンジポンプ1から外す時に、押子フランジ205(305)が把持部材81,82に対して無理な負荷を掛けないようにして、把持部材81,82の破損を防ぐことができる。従って、シリンジポンプ1は正常に使用できるので、シリンジポンプ1を分解して修理をする必要がなくなる。
【0087】
そして、案内部を有する本体部材82Pは、支持部材82Mに着脱可能に取り付けられているので、万が一、例えば案内部を有する本体部材82Pが破損したとしても、把持機構部80を分解しなくても、案内部を有する本体部分82Pは、支持部材82Mから取り外して新しい本体部分82Pを支持部材82Mに取り付けることで、支持部材82Mは容易に交換することができる。従って、シリンジポンプ1は正常に使用できるので、シリンジポンプ1を分解して修理をする必要がなくなる。このことは、把持部材81についても同様である。
【0088】
本発明は、上記実施形態に限定されず、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で種々の変更を行うことができる。上記実施形態の各構成は、その一部を省略したり、上記とは異なるように任意に組み合わせることができる。
本発明の実施形態の把持機構部80は、2つの回動型の把持部材81,82を有する構造である。本発明は、しかしこれに限らず、2つの回動型の把持部材81,82のいずれか一方を省いて、その代わりに、シリンジ押子押圧部材10に対して、例えば凸部のような固定型の把持部材を形成するようにしても良い。
【0089】
この固定型の把持部材自体は、回動しない。この場合には、押子フランジ205(305)は、この固定型の把持部材に押し当てて固定しながら、シリンジ押子202(302)は1つの回動型の把持部材からの付勢力で、この固定型の把持部材と1つの回動型の把持部材の間に挟んで把持する。
把持部材81,82を回動してスラスト方向に移動するための操作部としては、手動操作型の動力入力部である操作レバー83を用いている。しかし、これに限らずモータ等を用いて操作する自動操作型の動力入力部を採用しても良い。
【符号の説明】
【0090】
1・・・シリンジポンプ、2・・・筐体、6・・・シリンジの載置部、7・・・シリンジ押子駆動部、10・・・シリンジ押子押圧部材、80・・・把持機構部、81・・・把持部材(第1把持部材、第1フックともいう)、82・・・把持部材(第2把持部材、第2フックともいう)、81I、82I・・・把持部材の軸部、81H、82H・・・傾斜部(案内部の例)、82P・・・案内部を有する本体部材、82M・・・支持部材、83・・・操作レバー(操作部の例)
図1
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