特許第6612144号(P6612144)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6612144再生ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6612144
(24)【登録日】2019年11月8日
(45)【発行日】2019年11月27日
(54)【発明の名称】再生ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 69/00 20060101AFI20191118BHJP
   C08K 5/49 20060101ALI20191118BHJP
   C08L 27/12 20060101ALI20191118BHJP
   C08L 55/02 20060101ALI20191118BHJP
   C08L 67/00 20060101ALI20191118BHJP
【FI】
   C08L69/00
   C08K5/49
   C08L27/12
   C08L55/02
   C08L67/00
【請求項の数】2
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2016-22630(P2016-22630)
(22)【出願日】2016年2月9日
(65)【公開番号】特開2017-141339(P2017-141339A)
(43)【公開日】2017年8月17日
【審査請求日】2018年11月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】594137579
【氏名又は名称】三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100186897
【弁理士】
【氏名又は名称】平川 さやか
(72)【発明者】
【氏名】庄司 英和
(72)【発明者】
【氏名】望田 諭嗣
【審査官】 小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−352762(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 69/00
C08K 5/49
C08L 27/12
C08L 55/02
C08L 67/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回収されたポリカーボネート樹脂(A)と未使用のポリカーボネート樹脂(B)を含有する再生ポリカーボネート樹脂組成物を製造する方法であって、
回収ポリカーボネート樹脂(A)として、飲料用容器あるいは半導体搬送用容器由来の回収ポリカーボネート樹脂であって、ポリカーボネート樹脂成分が98質量%以上で且つ粘度平均分子量(Mv)が20,500以上、アルカリ金属の含有量が2質量ppm以上10質量ppm以下であり、30分間予熱時のMVR(300℃×1.2kgで測定)が、4分間予熱時のMVR(300℃×1.2kgで測定)に対し、上昇率が3%以上45%以下である回収ポリカーボネート樹脂(A)を、(A)及び(B)の合計100質量%に対し、3〜60質量%の割合で使用し、
さらに、(A)及び(B)の合計100質量部に対し、リン系難燃剤(C)を2〜20質量部及びフルオロポリマー(D)を0.5質量部以下の割合で配合することを特徴とする再生ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法。
【請求項2】
さらに、ABS樹脂(E)又は熱可塑性ポリエステル樹脂(F)を配合する請求項1に記載の再生ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再生ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法に関し、詳しくは、ポリカーボネート樹脂成形品等から回収されたポリカーボネート樹脂を使用して熱安定性、湿熱安定性及び難燃性にも優れた再生ポリカーボネート樹脂組成物を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネート樹脂は、耐衝撃性、耐熱性、電気絶縁性、寸法安定性、自己消火性、透明性等に優れることから、射出成形、圧縮成形、押出成形、ブロー成形等の種々の成形法によって加工された後、家電部品、電気電子機器部品、OA機器部品、光記録メディア、自動車部品、建築材料、中空容器、医療用途、雑貨をはじめとする様々な用途に幅広く利用されている。
【0003】
そして、近年、環境保護意識の高まりから樹脂を再生利用することが社会的に強く要請されており、ポリカーボネート樹脂からなる上記成形品を回収し、粉砕し、これをペレット化した再生ペレットを使用することも行われている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−26719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、再生ポリカーボネート樹脂ペレットを再利用すると、機械的特性等が低下し、ポリカーボネート樹脂本来の用途には用いることができないことが多い。
そして、回収ポリカーボネート樹脂を未使用のポリカーボネート樹脂と混合して、再生ポリカーボネート樹脂組成物とする場合に、熱安定性及び湿熱安定性、特に耐熱処理後の引張破断伸びの低下率が大きくなりやすい。
本発明の目的(課題)は、熱安定性及び湿熱安定性、特に耐熱処理後の引張破断伸びの低下率が小さく、難燃性にも優れた再生ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を達成すべく、鋭意検討を重ねた結果、回収ポリカーボネート樹脂は使用時に付着した不純物、あるいは再生ポリカーボネート樹脂を回収する工程、例えば回収材をアルカリ又は酸で洗浄する、あるいは粉砕して比重分離する際に用いる塩水に由来するアルカリ金属等の薬液残や不純物等が耐熱処理後の引張破断伸びの低下に影響しているのではと推考し、回収ポリカーボネート樹脂をメルトボリュームレート(MVR)によって選択あるいは調整して使用し、未使用ポリカーボネート樹脂との配合割合を特定の割合として配合し、さらにリン系難燃剤及びフルオロポリマーを特定の量で配合することにより、得られる再生ポリカーボネート樹脂組成物が熱安定性及び湿熱安定性に優れ、かつ難燃性にも優れることを見出し、本発明に到達した。
本発明は、以下に関する。
【0007】
[1]回収されたポリカーボネート樹脂(A)と未使用のポリカーボネート樹脂(B)を含有する再生ポリカーボネート樹脂組成物を製造する方法であって、
回収ポリカーボネート樹脂(A)として、ポリカーボネート樹脂成分が98質量%以上で且つ粘度平均分子量(Mv)が20,000以上であり、30分間予熱時のMVR(300℃×1.2kgで測定)が、4分間予熱時のMVR(300℃×1.2kgで測定)に対し、上昇率が50%を超えない回収ポリカーボネート樹脂(A)を選定し、(A)及び(B)の合計100質量%に対し、3〜60質量%の割合で使用し、
さらに、(A)及び(B)の合計100質量部に対し、リン系難燃剤(C)を2〜20質量部及びフルオロポリマー(D)を0.5質量部以下の割合で配合することを特徴とする再生ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法。
[2]さらに、ABS樹脂(E)又は熱可塑性ポリエステル樹脂(F)を配合する上記[1]に記載の再生ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法。
[3]回収ポリカーボネート樹脂(A)中のアルカリ金属の含有量が10質量ppm以下である上記[1]又は[2]に記載の再生ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法。
[4]回収ポリカーボネート樹脂(A)が、主として飲料用容器あるいは半導体搬送用容器由来の回収ポリカーボネート樹脂である上記[1]〜[3]のいずれかに記載の再生ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の再生ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法によれば、熱安定性及び湿熱安定性に優れ、特に耐熱処理後の引張破断伸びの低下が著しく抑制され、難燃性にも優れたポリカーボネート樹脂組成物を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について実施形態及び例示物等を示して詳細に説明するが、本発明は、以下に示す実施形態及び例示物等に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施できる。
【0010】
本発明の再生ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法は、回収されたポリカーボネート樹脂(A)と未使用のポリカーボネート樹脂(B)を含有する再生ポリカーボネート樹脂組成物を製造する方法であって、
回収ポリカーボネート樹脂(A)として、ポリカーボネート樹脂成分が98質量%以上で且つ粘度平均分子量(Mv)が20,000以上であり、30分間予熱時のMVR(300℃×1.2kgで測定)が、4分間予熱時のMVR(300℃×1.2kgで測定)に対し、上昇率が50%を超えない回収ポリカーボネート樹脂を、(A)及び(B)の合計100質量%に対し、3〜60質量%の割合で使用し、
さらに、(A)及び(B)の合計100質量部に対し、リン系難燃剤(C)を2〜20質量部及びフルオロポリマー(D)を0.5質量部以下の割合で配合することを特徴とする。
【0011】
[ポリカーボネート樹脂]
本発明でいうポリカーボネート樹脂は、式:−[−O−X−O−C(=O)−]−で示される炭酸結合を有する基本構造の重合体である。式中、Xは一般には炭化水素であるが、種々の特性付与のためヘテロ原子、ヘテロ結合の導入されたXを用いてもよい。
【0012】
ポリカーボネート樹脂は、炭酸結合に直接結合する炭素がそれぞれ芳香族炭素である芳香族ポリカーボネート樹脂、及び脂肪族炭素である脂肪族ポリカーボネート樹脂に分類できるが、いずれを用いることもできる。なかでも、耐熱性、機械的物性、電気的特性等の観点から、芳香族ポリカーボネート樹脂が好ましい。
【0013】
ポリカーボネート樹脂の具体的な種類に制限はないが、例えば、ジヒドロキシ化合物とカーボネート前駆体とを反応させてなるポリカーボネート重合体が挙げられる。この際、ジヒドロキシ化合物及びカーボネート前駆体に加えて、ポリヒドロキシ化合物等を反応させるようにしてもよい。また、二酸化炭素をカーボネート前駆体として、環状エーテルと反応させる方法も用いてもよい。またポリカーボネート重合体は、直鎖状でもよく、分岐鎖状でもよい。さらに、ポリカーボネート重合体は1種の繰り返し単位からなる単重合体であってもよく、2種以上の繰り返し単位を有する共重合体であってもよい。このとき共重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体等、種々の共重合形態を選択することができる。なお、通常、このようなポリカーボネート重合体は、熱可塑性の樹脂となる。
【0014】
ポリカーボネート樹脂の好ましい具体例は、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、即ち、ビスフェノール−A由来の構造単位を有するポリカーボネート樹脂である。
ビスフェノール−A由来の構造単位を有するポリカーボネート樹脂は、ビスフェノール−A以外の他のジヒドロキシ化合物由来のカーボネート構造単位を有していてもよい。ビスフェノール−A以外に由来する構造単位の共重合量は、通常50モル%未満が好ましく、より好ましくは40モル%以下、さらには30モル%以下、特には20モル%以下であり、10モル%以下、なかでも5モル%以下が最も好ましい。
【0015】
他のジヒドロキシ化合物としては、例えば以下のような芳香族ジヒドロキシ化合物を挙げることができる。
ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−シクロヘキシルフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロオクタン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、4,4’−ジヒドロキシフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン等が挙げられる。
【0016】
ポリカーボネート樹脂を製造する方法は、特に限定されるものではなく、公知の任意の方法を採用できる。その例を挙げると、界面重合法、溶融エステル交換法、ピリジン法、環状カーボネート化合物の開環重合法、プレポリマーの固相エステル交換法等を挙げることができる。これらの中でも、界面重合法、溶融エステル交換法が好ましい。
【0017】
ポリカーボネート樹脂は、ポリカーボネート樹脂単独(ポリカーボネート樹脂単独とは、ポリカーボネート樹脂の1種のみを含む態様に限定されず、例えば、モノマー組成や分子量が互いに異なる複数種のポリカーボネート樹脂を含む態様を含む意味で用いる。)であってもよい。さらに、例えば、難燃性や耐衝撃性をさらに高める目的で、ポリカーボネート樹脂を、シロキサン構造を有するオリゴマーまたはポリマーとの共重合体;熱酸化安定性や難燃性をさらに向上させる目的でリン原子を有するモノマー、オリゴマーまたはポリマーとの共重合体;熱酸化安定性を向上させる目的で、ジヒドロキシアントラキノン構造を有するモノマー、オリゴマーまたはポリマーとの共重合体等の、ポリカーボネート樹脂を主体とする共重合体として構成してもよい。
【0018】
また、ポリカーボネート樹脂は、ポリカーボネートオリゴマーを含有していてもよい。このポリカーボネートオリゴマーの粘度平均分子量[Mv]は、通常1,500以上、好ましくは2,000以上であり、また、通常9,500以下、好ましくは9,000以下である。含有されるポリカーボネートリゴマーは、ポリカーボネート樹脂(ポリカーボネートオリゴマーを含む)の30質量%以下であることが好ましい。
【0019】
[回収されたポリカーボネート樹脂(A)]
本発明の方法で原料として使用される回収されたポリカーボネート樹脂(A)(以下、「回収ポリカーボネート樹脂(A)」ともいう。)は、各種の用途で使用されたポリカーボネート樹脂の成形品から回収される。成形品としては、制限されず、射出成形、圧縮成形、射出圧縮成形、押出成形、ブロー成形、溶融押出、カレンダー法などの種々の成形法によって成形された成形品、例えば、飲料水や各種飲料用の容器並びに飲料水サーバー用水ボトル等の飲料用容器、半導体搬送用容器、車両のヘッドランプやテールランプ等の各種ランプレンズ、各種の照明カバー、信号灯カバー、街灯カバー、ガラス代替としての窓、サンルーフ、アーケード、カーポート、明かり採りの屋根材、農業用ハウス向け建材、ベランダの腰板、道路や線路沿いの透光板(遮音板)、DVD、CD、CD−ROM等の光記録媒体、電気・電子・OA用途として携帯電話、パソコンハウジング、電池パックケース、液晶用各種部品、コネクタ、自動車部品としてのドアハンドル、バンパ、フェンダ、ルーフ、ルーフレール、インバネ、コンソールボックス等、また、風防等の車両透明部材、ヘルメット前面のシールド、ゴーグル、サングラスレンズ、保護眼鏡、カメラレンズ、パチンコ用玉入れケース、飲料や食品の容器等が挙げられる。また、成形品としては製品化の工程で発生した不良品、試作品等も含む。
【0020】
本発明で再利用する回収ポリカーボネート樹脂(A)としては、上記した中でも、多量のリサイクル品・廃棄品が発生する点から、飲料水等の各種飲料容器並びにウオーターサバ―と通称される飲料水サーバー用水ボトル等の飲料用容器あるいは半導体搬送用容器に由来する回収ポリカーボネート樹脂を主とするもの(例えばその50質量%以上)が好ましい。
【0021】
本発明では、回収ポリカーボネート樹脂(A)として、ポリカーボネート樹脂成分の含有量が98質量%以上、好ましくは98質量%超である回収材を使用する。
このような回収ポリカーボネート樹脂(A)は、上記したようなポリカーボネート樹脂の成形品を破砕した破砕物から、必要により異物を除去したり分離することによって、得ることができる。破砕は、例えば、カッターミル、ロールクラッシャー、ハンマークラッシャー、ディスクミル、ピンミル、ターボミル、ジェットミル等、公知の粉砕装置を使用することで製造できる。
破砕物中の、例えば、金属、金属蒸着物、他の樹脂等のポリカーボネート樹脂以外の他の成分は破砕物中で2質量%以下、好ましくは2質量%未満になるように、除去される。
【0022】
他の成分を除去する方法としては、公知の各種方法、例えば、化学処理による方法(界面活性剤、アルカリまたは酸洗浄)、水による洗浄方法、食塩で比重調整した食塩水に投入して比重分離する方法、磁石による除去、光学カメラ等による異物検知による着色異物等の除去等を挙げることができ、これらを組み合わせて適用することも可能である。
化学処理による異物除去としては、アルカリ又は酸、界面活性剤による処理が挙げられる。なかでも、水酸化ナトリウム等によりアルカリ処理が好ましい。
【0023】
そして、本発明では、回収ポリカーボネート樹脂(A)として、粘度平均分子量(Mv)が20,000以上であるものを使用する。回収ポリカーボネート樹脂(A)の粘度平均分子量(Mv)は、より好ましくは20,500以上、さらに好ましくは21,000以上であり、好ましくは35,000以下、より好ましくは30,000以下である。粘度平均分子量が20,000以上であることで、安定した強度と靱性を有する再生ポリカーボネート樹脂組成物が得られやすい。
【0024】
なお、本発明において、ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量[Mv]は、溶媒としてメチレンクロライドを使用し、ウベローデ粘度計を用いて温度20℃での極限粘度[η](単位dl/g)を求め、Schnellの粘度式:η=1.23×10−4Mv0.83から算出される値を意味する。また、極限粘度[η]とは、各溶液濃度[C](g/dl)での比粘度[ηsp]を測定し、下記式により算出した値である。
【数1】
【0025】
そして、本発明では、回収ポリカーボネート樹脂(A)として、300℃、1.2kg荷重で測定されるメルトボリュームレートMVRが、4分間予熱時のMVRと30分間予熱時のMVRを比較した時、30分間予熱時のMVRが4分間予熱時のMVRに対し、上昇率が50%を超えない回収ポリカーボネート樹脂を用いることを特徴とする。上昇率が50%以下の回収ポリカーボネート樹脂(A)を未使用のポリカーボネート樹脂(B)に配合することで、熱安定性及び湿熱安定性に優れ、特に耐熱処理後の引張破断伸びの低下を抑制することが可能となる。
MVRの上昇率は、好ましくは45%以下であり、より好ましくは40%以下、さらに好ましくは35%以下、特には30%以下であることが好ましい。また、上昇率の下限は、好ましくは5%、より好ましくは3%、さらに好ましくは0%である。
【0026】
なお、本発明において、ポリカーボネート樹脂のMVRは、ISO 1133に準拠して、測定温度300℃、測定荷重1.2kgで測定される。
【0027】
回収したポリカーボネート樹脂のMVRの上昇率が50%を超える場合に、50%以下とするには、例えば回収ポリカーボネート樹脂を水洗浄あるいは酸洗浄を強化して洗浄する等の方法によっても可能である。回収したポリカーボネート樹脂のMVR上昇率を50%以下とするには、回収ポリカーボネート樹脂中のアルカリ金属の含有量を低減させ、10質量ppm以下とすることが好ましく、より好ましくは8質量ppm以下、さらに好ましくは5質量ppm以下とすることが好ましい。ここでアルカリ金属としては、ナトリウム、カリウム、リチウム、セシウム等が好ましく挙げられる。
【0028】
[未使用のポリカーボネート樹脂(B)]
回収ポリカーボネート樹脂(A)は、未使用のポリカーボネート樹脂(B)と混合される。
ここで未使用のポリカーボネート樹脂とは、いわゆるバージン材ともいわれ、前記したポリカーボネート樹脂が製造された状態そのもの、またはパウダー、粉粒体もしくはペレット等に予備成形されたものを表す。
未使用のポリカーボネート樹脂(B)(以下、「未使用ポリカーボネート樹脂(B)」ということもある。)として使用されるポリカーボネート樹脂は、その種類等に制限はなく、前記した通りのポリカーボネート樹脂が使用できる。
【0029】
未使用ポリカーボネート樹脂(B)の粘度平均分子量(Mv)は、好ましくは10,000〜50,000であり、より好ましくは12,000以上、更に好ましくは14,000以上、特に好ましくは18,000以上であり、また、より好ましくは40,000以下であり、更に好ましくは36,000以下であり、特に好ましくは33,000以下である。粘度平均分子量が上記上限値を超えると、回収ポリカーボネート樹脂(A)との相溶性が困難になり、再生ポリカーボネート樹脂組成物の靱性の低下や未溶融の発生を引き起こす場合があり、上記下限値未満であると耐薬品性や機械的特性の低下が認められやすくなる。
なお、粘度平均分子量の異なる2種類以上の未使用ポリカーボネート樹脂(B)を混合して上記粘度平均分子量に調整してもよい。また、必要に応じ、粘度平均分子量が上記の好適範囲外である芳香族ポリカーボネート樹脂を混合して用いてもよい。
【0030】
回収ポリカーボネート樹脂(A)と未使用ポリカーボネート樹脂(B)の配合量は、回収ポリカーボネート樹脂(A)を、(A)及び(B)の合計100質量%に対し、3〜60質量%の割合で使用する。回収ポリカーボネート樹脂(A)の配合量が60質量%を超えると、再生ポリカーボネート樹脂組成物の強度や色相等の安定した品質の確保が困難となる。回収ポリカーボネート樹脂(A)の好ましい配合量は、5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上、なかでも20質量%以上、特には25質量%以上が好ましく、また、好ましくは58質量%以下である。
【0031】
[リン系難燃剤(C)]
本発明の再生ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法では、リン系難燃剤(C)を、回収ポリカーボネート樹脂(A)及び未使用ポリカーボネート樹脂(B)の合計100質量部に対して、3〜30質量部の割合で配合する。このようにリン系難燃剤を配合することで、得られる再生ポリカーボネート樹脂組成物の熱安定性及び湿熱安定性を良好に維持した上で高度の難燃性を向上させることができる。
【0032】
リン系難燃剤(C)としては、分子中にリンを含む化合物であり、低分子であっても、オリゴマーであっても、ポリマーであってもよいが、熱安定性の面から、例えば下記一般式(1)で表されるリン酸エステル化合物や下記一般式(2)および(3)で表されるホスファゼン化合物が特に好ましい。
【0033】
【化1】
【0034】
【化2】
【0035】
【化3】
【0036】
リン酸エステル化合物
上記一般式(1)で表されるリン酸エステル化合物は、kが異なる数を有する化合物の混合物であってもよく、かかるkが異なる縮合リン酸エステルの混合物の場合は、kはそれらの混合物の平均値となる。kは、通常0〜5の整数であり、異なるk数を有する化合物の混合物の場合は、平均のk数は好ましくは0.5〜2、より好ましくは0.6〜1.5、さらに好ましくは0.8〜1.2、特に好ましくは0.95〜1.15の範囲である。
【0037】
また、Xは、二価のアリーレン基を示し、例えばレゾルシノール、ハイドロキノン、ビスフェノールA、2,2’−ジヒドロキシビフェニル、2,3’−ジヒドロキシビフェニル、2,4’−ジヒドロキシビフェニル、3,3’−ジヒドロキシビフェニル、3,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、1,2−ジヒドロキシナフタレン、1,3−ジヒドロキシナフタレン、1,4−ジヒドロキシナフタレン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、1,7−ジヒドロキシナフタレン、1,8−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン等のジヒドロキシ化合物から誘導される二価の基である。これらのうち、特に、レゾルシノール、ビスフェノールA、3,3’−ジヒドロキシビフェニルから誘導される二価の基が好ましい。
【0038】
また、一般式(1)におけるp、q、rおよびsは、それぞれ0または1を表し、なかでも1であることが好ましい。
【0039】
また、R、R、RおよびRは、それぞれ、炭素数1〜6のアルキル基またはアルキル基で置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基を示す。このようなアリール基としては、フェニル基、クレジル基、キシリル基、イソプロピルフェニル基、ブチルフェニル基、tert−ブチルフェニル基、ジ−tert−ブチルフェニル基、p−クミルフェニル基等が挙げられるが、フェニル基、クレジル基、キシリル基がより好ましい。
【0040】
一般式(1)で表されるリン酸エステル化合物の具体例としては、
トリフェニルホスフェート(TPP)、トリクレジルホスフェート(TCP)、トリキシレニルホスフェート(TXP)、クレジルジフェニルホスフェート(CDP)、2−エチルヘキシルジフェニルホスフェート(EHDP)、tert−ブチルフェニルジフェニルホスフェート、ビス−(tert−ブチルフェニル)フェニルホスフェート、トリス−(tert−ブチルフェニル)ホスフェート、イソプロピルフェニルジフェニルホスフェート、ビス−(イソプロピルフェニル)ジフェニルホスフェート、トリス−(イソプロピルフェニル)ホスフェート等の芳香族リン酸エステル類;
レゾルシノールビス−ジフェニルホスフェート(RDP)、レゾルシノールビス−ジキシレニルホスフェート(RDX)、ビスフェノールA−ビス−ジフェニルホスフェート(BDP)、ビフェニルビス−ジフェニルホスフェート等の縮合リン酸エステル類;
等が挙げられる。
【0041】
一般式(1)で表されるリン酸エステル化合物の酸価は、0.2mgKOH/gが好ましく、より好ましくは0.15mgKOH/g以下であり、さらに好ましくは0.1mgKOH以下であり、特に好ましくは0.05mgKOH/g以下である。かかる酸価の下限は実質的に0とすることも可能である。
【0042】
本発明に用いるリン酸エステル化合物としては、上述のものの他に、10−(2,5−ジヒドロキシフェニル)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド、10−(2,3−ジヒドロキシフェニル)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド、10−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド、リン酸エステル部位を含有するポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂またはエポキシ樹脂も当然含まれる。
【0043】
ホスファゼン化合物
前記一般式(2)及び(3)で表されるホスファゼン化合物としては、例えば、フェノキシホスファゼン、(ポリ)トリルオキシホスファゼン(例えば、o−トリルオキシホスファゼン、m−トリルオキシホスファゼン、p−トリルオキシホスファゼン、o,m−トリルオキシホスファゼン、o,p−トリルオキシホスファゼン、m,p−トリルオキシホスファゼン、o,m,p−トリルオキシホスファゼン等)、(ポリ)キシリルオキシホスファゼン等の環状及び/又は鎖状C1−6アルキルC6−20アリールオキシホスファゼンや、(ポリ)フェノキシトリルオキシホスファゼン(例えば、フェノキシo−トリルオキシホスファゼン、フェノキシm−トリルオキシホスファゼン、フェノキシp−トリルオキシホスファゼン、フェノキシo,m−トリルオキシホスファゼン、フェノキシo,p−トリルオキシホスファゼン、フェノキシm,p−トリルオキシホスファゼン、フェノキシo,m,p−トリルオキシホスファゼン等)、(ポリ)フェノキシキシリルオキシホスファゼン、(ポリ)フェノキシトリルオキシキシリルオキシホスファゼン等の環状及び/又は鎖状C6−20アリールC1−10アルキルC6−20アリールオキシホスファゼン等が例示できる。
これらのうち、好ましくは、環状及び/又は鎖状フェノキシホスファゼン、環状及び/又は鎖状C1−3アルキルC6−20アリールオキシホスファゼン、C6−20アリールオキシC1−3アルキルC6−20アリールオキシホスファゼン(例えば、環状及び/又は鎖状トリルオキシホスファゼン、環状及び/又は鎖状フェノキシトリルフェノキシホスファゼン等)である。
【0044】
一般式(2)で表される環状ホスファゼン化合物としては、R及びRは、同一又は異なっていてもよく、アリール基又はアルキルアリール基を示す。このようなアリール基又はアルキルアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、メチルフェニル基、ベンジル基等が挙げられるが、なかでもR及びRがフェニル基である環状フェノキシホスファゼンが特に好ましい。
このような環状フェノキシホスファゼン化合物としては、例えば、塩化アンモニウムと五塩化リンとを120〜130℃の温度で反応させて得られる環状及び直鎖状のクロロホスファゼン混合物から、ヘキサクロロシクロトリホスファゼン、オクタクロロシクロテトラホスファゼン、デカクロロシクロペンタホスファゼン等の環状のクロルホスファゼンを取り出した後にフェノキシ基で置換して得られる、フェノキシシクロトリホスファゼン、オクタフェノキシシクロテトラホスファゼン、デカフェノキシシクロペンタホスファゼン等の化合物が挙げられる。
【0045】
また、一般式(2)中、tは3〜25の整数を表すが、なかでもtが3〜8の整数である化合物が好ましく、tの異なる化合物の混合物であってもよい。なかでも、t=3のものが50質量%以上、t=4のものが10〜40質量%、t=5以上のものが合わせて30質量%以下である化合物の混合物が好ましい。
【0046】
一般式(3)中、R及びRは、同一又は異なっていてもよく、アリール基又はアルキルアリール基を示す。このようなアリール基又はアルキルアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、メチルフェニル基、ベンジル基等が挙げられるが、R及びRがフェニル基である鎖状フェノキシホスファゼンが特に好ましい。
このような鎖状フェノキシホスファゼン化合物は、例えば、上記の方法で得られるヘキサクロロシクロトリホスファゼンを220〜250℃の温度で開還重合し、得られた重合度3〜10,000の直鎖状ジクロロホスファゼンをフェノキシ基で置換することにより得られる化合物が挙げられる。
【0047】
また、Rは、−N=P(OR基、−N=P(OR基、−N=P(O)OR基、−N=P(O)OR基から選ばれる少なくとも1種を示し、R10は、−P(OR基、−P(OR基、−P(O)(OR基、−P(O)(OR基から選ばれる少なくとも1種を示す。
【0048】
また、一般式(3)中、uは3〜10,000の整数を示し、好ましくは3〜1,000、より好ましくは3〜100、さらに好ましくは3〜25である。
【0049】
また、ホスファゼン化合物は、その一部が架橋された架橋ホスファゼン化合物であってもよい。このような架橋構造を有することで耐熱性が向上する傾向にある。
このような架橋ホスファゼン化合物としては、下記一般式(4)に示す架橋構造、例えば、4,4’−スルホニルジフェニレン(すなわち、ビスフェノールS残基)の架橋構造を有する化合物、2,2−(4,4’−ジフェニレン)イソプロピリデン基の架橋構造を有する化合物、4,4’−オキシジフェニレン基の架橋構造を有する化合物、4,4’−チオジフェニレン基の架橋構造を有する化合物等の、4,4’−ジフェニレン基の架橋構造を有する化合物等が挙げられる。
【0050】
【化4】
[式(4)中、Xは−C(CH−、−SO−、−S−、又は−O−であり、vは0又は1である。]
【0051】
また、架橋ホスファゼン化合物としては、一般式(2)においてR及びRがフェニル基である環状フェノキシホスファゼン化合物が上記一般式(4)で表される架橋基によって架橋されてなる架橋フェノキシホスファゼン化合物又は、前記一般式(3)においてR及びRがフェニル基である鎖状フェノキシホスファゼン化合物が上記一般式(4)で表される架橋基によって架橋されてなる架橋フェノキシホスファゼン化合物が難燃性の点から好ましく、環状フェノキシホスファゼン化合物が上記一般式(4)で表される架橋基によって架橋されてなる架橋フェノキシホスファゼン化合物がより好ましい。
【0052】
また、架橋フェノキシホスファゼン化合物中のフェニレン基の含有量は、一般式(2)で表される環状ホスファゼン化合物及び/又は一般式(3)で表される鎖状フェノキシホスファゼン化合物中の全フェニル基及びフェニレン基数を基準として、通常50〜99.9%、好ましくは70〜90%である。また、該架橋フェノキシホスファゼン化合物は、その分子内にフリーの水酸基を有しない化合物であることが特に好ましい。
【0053】
本発明においては、ホスファゼン化合物は、前記一般式(2)で表される環状フェノキシホスファゼン化合物、及び、上記一般式(3)で表される環状フェノキシホスファゼン化合物が架橋基によって架橋されてなる架橋フェノキシホスファゼン化合物よる成る群から選択される少なくとも1種であることが、難燃性及び機械的特性の点から好ましい。
【0054】
リン系難燃剤(C)の配合量は、前述したように、回収ポリカーボネート樹脂(A)及び未使用ポリカーボネート樹脂(B)の合計100質量部に対して、3〜30質量部であるが、3.5質量部以上が好ましく、より好ましくは4質量部以上であり、好ましくは25質量部以下、より好ましくは20量部以下、さらに好ましくは15質量部以下である。
【0055】
[フルオロポリマー(D)]
本発明の製造方法では、さらに滴下防止剤としてフルオロポリマー(D)を配合する。
フルオロポリマー(D)としては、例えば、フルオロオレフィン樹脂が挙げられる。フルオロオレフィン樹脂は、通常フルオロエチレン構造を含む重合体あるいは共重合体である。具体例としては、ジフルオロエチレン樹脂、テトラフルオロエチレン樹脂、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合樹脂、テトラフルオロエチレン/パーフルアルキルビニルエーテル共重合樹脂等が挙げられる。なかでも好ましくはテトラフルオロエチレン樹脂等が挙げられる。このフルオロエチレン樹脂としては、フィブリル形成能を有するフルオロエチレン樹脂が挙げられる。
【0056】
フィブリル形成能を有するフルオロエチレン樹脂としては、例えば、三井・デュポンフロロケミカル社製「テフロン(登録商標)6J」、「テフロン(登録商標)640J」、「テフロン(登録商標)6C」、ダイキン工業社製「ポリフロンF201L」、「ポリフロンF103」、「ポリフロンFA500H」などが挙げられる。さらに、フルオロエチレン樹脂の水性分散液の市販品として、例えば、三井・デュポンフロロケミカル社製「テフロン(登録商標)30J」、「テフロン(登録商標)31−JR」、ダイキン工業社製「ポリフロンD−210C」等が挙げられる。
【0057】
さらに、ビニル系単量体を重合してなる多層構造を有するフルオロエチレン重合体も使用することができ、このようなフルオロエチレン重合体としては、ポリスチレン−フルオロエチレン複合体、ポリスチレン−アクリロニトリル−フルオロエチレン複合体、ポリメタクリル酸メチル−フルオロエチレン複合体、ポリメタクリル酸ブチル−フルオロエチレン複合体等が挙げられ、具体例としては三菱レイヨン社製「メタブレンA−3800」、GEスペシャリティケミカル社製「ブレンデックス449」等が挙げられる。
なお、フルオロポリマーは、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていてもよい。
【0058】
フルオロポリマー(D)の配合量は、回収ポリカーボネート樹脂(A)及び未使用ポリカーボネート樹脂(B)の合計100質量部に対して、0.5質量部以下であって、好ましくは0.001質量部以上であり、より好ましくは0.01質量部以上、さらに好ましくは0.05質量部以上、特に好ましくは0.1質量部以上であり、また、より好ましくは0.45質量部以下であり、さらに好ましくは0.4質量部以下である。フルオロポリマー(D)の配合量が前記上限値を超える場合は、再生ポリカーボネート樹脂組成物を成形した成形品の外観不良や機械的強度の低下が生じやすい。
【0059】
[ABS樹脂(E)]
本発明の製造方法では、さらにABS樹脂(E)を配合することも好ましい。ABS樹脂は、ジエン系ゴム成分にシアン化ビニル化合物と芳香族ビニル化合物とをグラフト共重合した熱可塑性グラフト共重合体からなる樹脂をいう。
【0060】
ABS樹脂のジエン系ゴム成分としては、例えば、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン−ブタジエン共重合体等のゴム成分が用いられ、かかるジエン系ゴム成分のABS樹脂中の割合は、ABS樹脂100質量%中、好ましくは5〜80質量%の範囲であり、より好ましくは7〜50質量%の範囲であり、さらに好ましくは8〜25質量%の範囲であり、特に好ましくは9〜18質量%の範囲である。
【0061】
ABS樹脂における芳香族ビニル化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルキシレン、エチルスチレン、ジメチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、ビニルナフタレン、メトキシスチレン、モノブロムスチレン、ジブロムスチレン、フルオロスチレン、トリブロムスチレン等が挙げられ、特にスチレンが好ましい。
ABS樹脂におけるシアン化ビニル化合物としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられ、特にアクリロニトリルが好ましい。
シアン化ビニル化合物及び芳香族ビニル化合物の量は、その合計量100質量%に対して、シアン化ビニル化合物が好ましくは5〜50質量%、より好ましくは15〜35質量%、芳香族ビニル化合物が好ましくは95〜50質量%、より好ましくは65〜85質量%である。
【0062】
ABS樹脂(E)は、さらに、これらと共重合可能な他のビニルモノマーを共重合したものでも良く、この場合、共重合可能な他のビニルモノマーとしては、例えば、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド等のマレイミド系モノマー、アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド等のアクリルアミド系モノマー、無水マレイン酸、無水イタコン酸等の不飽和酸無水物、アクリル酸、メタクリル酸等の不飽和酸、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート等が挙げられる。
【0063】
ABS樹脂(E)の具体例としては、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン−α−メチルスチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン−N−フェニルマレイミド共重合体等が好ましく例示される。
ABS樹脂は、通常、塊状重合、溶液重合、懸濁重合及び乳化重合等の方法で製造され、そのいずれの方法によるものでもよい。
【0064】
ABS樹脂(E)の好ましい配合量は、回収ポリカーボネート樹脂(A)と未使用ポリカーボネート樹脂(B)の合計100質量に対して、5〜40質量部である。ABS樹脂(E)が多過ぎると、得られる樹脂組成物の機械的強度、耐熱性、難燃性等が劣りやすくなる。ABS樹脂(E)の配合量は、より好ましくは3質量部以上、より好ましくは8質量%以上、さらに好ましくは10質量部以上であり、より好ましくは35質量部以下、さらに好ましくは30質量部以下、特に好ましくは25質量部以下である。
【0065】
[熱可塑性ポリエステル樹脂(F)]
本発明の製造方法では、熱可塑性ポリエステル樹脂(F)を配合することも好ましい。熱可塑性ポリエステル樹脂(F)の好適な具体例として、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリプロピレンテレフタレート樹脂(PPT)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)、ポリへキシレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂(PEN)、ポリブチレンナフタレート樹脂(PBN)、ポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレ−ト)樹脂(PCT)、ポリシクロヘキシルシクロヘキシレート(PCC)等が挙げられる。中でもポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)が流動性、耐衝撃性の点から好ましい。
【0066】
ポリブチレンテレフタレート樹脂は、1,4−ブタンジオールとテレフタル酸又はその低級アルコールエステルとを重縮合して得られるポリマーであり、ポリブチレンテレフタレート単位を95モル%より多く含有する共重合体であってもよい。
共重合体の場合のコモノマーとしては、テレフタル酸又はその低級アルコールエステル以外の二塩基酸成分として、アジピン酸、セバシン酸、トリメリット酸、コハク酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の脂肪族、芳香族多塩基酸、又はそのエステル形成性誘導体、ヒドロキシ安息香酸、ヒドロシキナフトエ酸等の芳香族ヒドロキシカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体等が挙げられる。
また、1,4−ブタンジオール以外のグリコール成分として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール等、1,3−オクタンジオール等の低級アルキレングリコール、ビスフェノールA、4,4’−ジヒドロキシビフェニル等の芳香族アルコール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド2モル付加体、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド3モル付加体等のアルキレンオキサイド付加体アルコール、グリセリン、ペンタエリスリトール等のポリヒドロキシ化合物又はそのエステル形成性誘導体等が挙げられる。
【0067】
ポリブチレンテレフタレート樹脂は、1種を単独又は2種以上を混合して使用してもよい。ポリブチレンテレフタレート樹脂としては、ポリブチレンテレフタレートの単独重合体が好ましい。
【0068】
ポリブチレンテレフタレート樹脂の固有粘度([η])は、適宜選択して決定すればよいが、通常0.5〜2dl/gであることが好ましく、中でも樹脂組成物の成形性および機械的特性の観点から0.6〜1.5dl/gであることが好ましい。固有粘度が0.5dl/g以上のものを用いると、成形品の機械的強度が十分高くなる傾向にあり、2dl/g以下であると樹脂組成物の流動性が向上し、成形性が向上する傾向にある。
なお、本明細書中において、熱可塑性ポリエステル樹脂の固有粘度は、テトラクロロエタンとフェノールとの1:1(質量比)の混合溶媒中、30℃で測定した値である。
【0069】
ポリエチレンテレフタレート樹脂は、エチレングリコールとテレフタル酸又はその低級アルコールエステルとを重縮合して得られるポリマーであり、ポリエチレンテレフタレート単位を95モル%より多く含有する共重合体であってもよい。
共重合体の場合のコモノマーとしては、テレフタル酸又はその低級アルコールエステル以外の二塩基酸成分として、アジピン酸、セバシン酸、トリメリット酸、コハク酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の脂肪族、芳香族多塩基酸、又はそのエステル形成性誘導体、ヒドロキシ安息香酸、ヒドロシキナフトエ酸等の芳香族ヒドロキシカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体等が挙げられる。
また、エチレングリコール以外のグリコール成分として、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール等、1,3−オクタンジオール等の低級アルキレングリコール、ビスフェノールA、4,4’−ジヒドロキシビフェニル等の芳香族アルコール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド2モル付加体、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド3モル付加体等のアルキレンオキサイド付加体アルコール、グリセリン、ペンタエリスリトール等のポリヒドロキシ化合物又はそのエステル形成性誘導体等が挙げられる。
【0070】
ポリエチレンテレフタレート樹脂は、1種を単独又は2種以上を混合して使用してもよい。ポリエチレンテレフタレート樹脂としては、ポリエチレンテレフタレートの単独重合体が好ましい。
【0071】
ポリエチレンテレフタレート樹脂の固有粘度は、適宜選択して決定すればよいが、通常0.5〜2dl/g、中でも0.6〜1.5dl/g、特には0.7〜1.0dl/gであることが好ましい。固有粘度が0.5dl/g以上、特には0.7dl/g以上であることで、機械的特性や滞留熱安定性、耐湿熱性が向上する傾向にあり好ましい。逆に固有粘度が2dl/g未満、特には1.0dl/g未満であることで樹脂組成物の流動性が向上する傾向にあり好ましい。
【0072】
熱可塑性ポリエステル樹脂(F)の配合量は、回収ポリカーボネート樹脂(A)と未使用ポリカーボネート樹脂(B)の合計100質量に対して、好ましくは5〜60質量部である。ポリエステル樹脂(B)の配合量が60質量部を越えると耐熱性や耐衝撃性が低下することがある。配合量はより好ましくは10質量部以上、さらに好ましくは15質量部以上であり、より好ましくは55質量部以下、さらに好ましくは50質量部以下、特に好ましくは45質量部以下である。
【0073】
[エラストマー]
本発明の製造方法では、さらに、エラストマーを配合することも好ましい。エラストマーを配合することで、得られる樹脂組成物の耐衝撃性を改良することができる。
本発明に用いるエラストマーは、なかでもゴム質重合体にこれと共重合可能な単量体成分とをグラフト共重合したグラフト共重合体が好ましい。グラフト共重合体の製造方法としては、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合などのいずれの製造方法であってもよく、共重合の方式は一段グラフトでも多段グラフトであってもよい。
【0074】
ゴム質重合体は、ガラス転移温度が通常0℃以下、中でも−20℃以下が好ましく、更には−30℃以下が好ましい。ゴム成分の具体例としては、ポリブタジエンゴム、(部分)水添ポリブタジエンゴム、ブタジエン−スチレン共重合体、(部分)水添ポリブタジエン−スチレン共重合体、ブタジエン−スチレンブロック共重合体、(部分)水添ポリブタジエン−スチレンブロック共重合体、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、ブタジエン−イソブチルアクリレートを主成分とするアクリル系ゴム共重合体等のブタジエンとブタジエンと共重合し得る1種以上のビニル系単量体との共重合体等のブタジエン系ゴムや、ポリイソブチレン、ポリイソブチレン−スチレン共重合体、ポリイソブチレン−スチレンブロック共重合体等のイソブチレン系ゴム、ポリイソプレンゴム、ポリブチルアクリレートやポリ(2−エチルヘキシルアクリレート)、ブチルアクリレート・2−エチルヘキシルアクリレート共重合体などのポリアルキルアクリレートゴム、ポリオルガノシロキサンゴムなどのシリコーン系ゴム、ブタジエン−アクリル複合ゴム、ポリオルガノシロキサンゴムとポリアルキルアクリレートゴムとからなるIPN型複合ゴム、エチレン−プロピレンゴムやエチレン−ブテンゴム、エチレン−オクテンゴムなどのエチレン−αオレフィン系ゴム、エチレン−アクリルゴム、フッ素ゴムなど挙げることができる。これらは、単独でも2種以上を混合して使用してもよい。
これらの中でも、機械的特性や表面外観の面から、ポリブタジエンゴム、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリアルキルアクリレートゴム、ポリオルガノシロキサンゴム、ポリオルガノシロキサンゴムとポリアルキルアクリレートゴムとからなるIPN(Interpenetrating Polymer Network)型複合ゴムが好ましい。
【0075】
ゴム成分とグラフト共重合可能な単量体成分の具体例としては、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物、(メタ)アクリル酸化合物、グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル化合物;マレイミド、N−メチルマレイミド、N−フェニルマレイミド等のマレイミド化合物;マレイン酸、フタル酸、イタコン酸等のα,β−不飽和カルボン酸化合物やそれらの無水物(例えば無水マレイン酸等)などが挙げられる。これらの単量体成分は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、機械的特性や表面外観の面から、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物が好ましく、より好ましくは(メタ)アクリル酸エステル化合物である。(メタ)アクリル酸エステル化合物の具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル等を挙げることができる。
【0076】
ゴム成分を共重合したグラフト共重合体は、耐衝撃性や表面外観の点からコア/シェル型グラフト共重合体タイプのものが好ましい。なかでもポリブタジエン含有ゴム、ポリブチルアクリレート含有ゴム、ポリオルガノシロキサンゴム、ポリオルガノシロキサンゴムとポリアルキルアクリレートゴムとからなるIPN型複合ゴムから選ばれる少なくとも1種のゴム成分をコア層とし、その周囲に(メタ)アクリル酸エステルを共重合して形成されたシェル層からなる、コア/シェル型グラフト共重合体が特に好ましい。上記コア/シェル型グラフト共重合体において、ゴム成分を40質量%以上含有するものが好ましく、60質量%以上含有するものがさらに好ましい。また、(メタ)アクリル酸は、10質量%以上含有するものが好ましい。
【0077】
これらコア/シェル型グラフト共重合体の好ましい具体例としては、メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン共重合体(MBS)、メチルメタクリレート−アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(MABS)、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体(MB)、メチルメタクリレート−アクリルゴム共重合体(MA)、メチルメタクリレート−アクリルゴム−スチレン共重合体(MAS)、メチルメタクリレート−アクリル・ブタジエンゴム共重合体、メチルメタクリレート−アクリル・ブタジエンゴム−スチレン共重合体、メチルメタクリレート−(アクリル・シリコーンIPNゴム)共重合体等が挙げられる。このようなゴム性重合体は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0078】
このようなコア/シェル型グラフト共重合体としては、例えば、ローム・アンド・ハース・ジャパン社製の「パラロイド(登録商標、以下同じ)EXL2602」、「パラロイドEXL2603」、「パラロイドEXL2655」、「パラロイドEXL2311」、「パラロイドEXL2313」、「パラロイドEXL2315」、「パラロイドKM330」、「パラロイドKM336P」、「パラロイドKCZ201」、三菱レイヨン社製の「メタブレン(登録商標、以下同じ)C−223A」、「メタブレンE−901」、「メタブレンS−2001」、「メタブレンSRK−200」、カネカ社製の「カネエース(登録商標、以下同じ)M−511」、「カネエースM−711」、「カネエースM−731」「カネエースM−600」、「カネエースM−400」、「カネエースM−580」、「カネエースMR−01」等が挙げられる。
【0079】
本発明におけるエラストマーの配合量は、回収ポリカーボネート樹脂(A)と未使用ポリカーボネート樹脂(B)の合計100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上、さらに好ましくは1.5質量部以上であり、また、好ましくは10質量部以下、より好ましくは8質量部以下、さらに好ましくは6質量部以下、特に好ましくは5質量部以下である。エラストマーの配合量が前記範囲の下限値未満の場合は、エラストマーによる耐衝撃性向上効果が不十分となる可能性があり、エラストマーの配合量が前記範囲の上限値を超える場合は、難燃性や耐熱性の低下、樹脂組成物を成形した成形品の外観不良が生じる可能性がある。
【0080】
[その他の成分]
本発明の再生ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法においては、所望の諸物性を著しく損なわない限り、必要に応じて、上記以外のその他成分を配合していてもよい。その他の成分の例を挙げると、上記ポリカーボネート樹脂以外の樹脂、上記した以外の各種樹脂添加剤などが挙げられる。なお、その他の成分は、1種が配合されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で配合されていても良い。
【0081】
その他の樹脂
その他の樹脂としては、例えば、ポリスチレン樹脂、高衝撃ポリスチレン樹脂(HIPS)、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−スチレン−アクリルゴム共重合体(ASA樹脂)、アクリロニトリル−エチレンプロピレン系ゴム−スチレン共重合体(AES樹脂)などのスチレン系樹脂;ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂;ポリアミド樹脂;ポリイミド樹脂;ポリエーテルイミド樹脂;ポリフェニレンエーテル樹脂;ポリフェニレンサルファイド樹脂;ポリスルホン樹脂等が挙げられる。
【0082】
なお、その他の樹脂は、1種が配合されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で配合されていても良い。
その他の樹脂を配合する場合は、上記ポリカーボネート樹脂及びその他の樹脂の合計100質量部中の、40質量部以下であることが好ましく、30質量部以下であることがより好ましく、20質量部以下であることがさらに好ましい。
【0083】
樹脂添加剤
樹脂添加剤としては、例えば、熱安定剤、酸化防止剤、離型剤、充填材、ガラス繊維、紫外線吸収剤、染顔料(カーボンブラックを含む)、酸化チタン、帯電防止剤、防曇剤、滑剤、アンチブロッキング剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、抗菌剤などが挙げられる。なお、樹脂添加剤は1種が配合されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で配合されていても良い。
以下、本発明の再生ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法に好適な添加剤の例について具体的に説明する。
【0084】
熱安定剤
熱安定剤としては、例えばリン系化合物が挙げられ、リン酸、ホスホン酸、亜燐酸、ホスフィン酸、ポリリン酸などのリンのオキソ酸;酸性ピロリン酸ナトリウム、酸性ピロリン酸カリウム、酸性ピロリン酸カルシウムなどの酸性ピロリン酸金属塩;リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸セシウム、リン酸亜鉛など第1族または第2B族金属のリン酸塩;有機ホスファイト化合物、有機ホスホナイト化合物などが挙げられるが、有機ホスファイト化合物が特に好ましい。
【0085】
有機ホスファイト化合物としては、トリフェニルホスファイト、トリス(モノノニルフェニル)ホスファイト、トリス(モノノニル/ジノニル・フェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリステアリルホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト等が挙げられる。
なお、熱安定剤は、1種が配合されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で配合されていても良い。
【0086】
熱安定剤の配合量は、回収ポリカーボネート樹脂(A)と未使用ポリカーボネート樹脂(B)の合計100質量部に対して、通常0.001質量部以上、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.03質量部以上であり、また、通常1質量部以下、好ましくは0.7質量部以下、より好ましくは0.5質量部以下である。熱安定剤の配合量が上記範囲の下限値未満の場合は、熱安定効果が不十分となる可能性があり、熱安定剤の配合量が上記範囲の上限値を超える場合は、効果が頭打ちとなり経済的でなくなる可能性がある。
【0087】
酸化防止剤
酸化防止剤としては、例えばヒンダードフェノール系酸化防止剤が挙げられる。その具体例としては、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナミド]、2,4−ジメチル−6−(1−メチルペンタデシル)フェノール、ジエチル[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ホスフォエート、3,3’,3”,5,5’,5”−ヘキサ−tert−ブチル−a,a’,a”−(メシチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール、4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリイル)プロピオネート]、ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、2,6−ジ−tert−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェノール、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−tert−ペンチルフェニルアクリレート等が挙げられる。
【0088】
なかでも、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートが好ましい。このようなフェノール系酸化防止剤の市販品としては、例えば、BASF社製「イルガノックス1010」、「イルガノックス1076」、ADEKA社製「アデカスタブAO−60」、「アデカスタブAO−50」等が挙げられる。
なお、酸化防止剤は、1種が配合されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で配合されていても良い。
【0089】
酸化防止剤の配合量は、回収ポリカーボネート樹脂(A)と未使用ポリカーボネート樹脂(B)の合計100質量部に対して、通常0.001質量部以上、好ましくは0.01質量部以上であり、また、通常1質量部以下、好ましくは0.5質量部以下である。酸化防止剤の配合量が上記範囲の下限値未満の場合は、酸化防止剤としての効果が不十分となる可能性があり、酸化防止剤の配合量が上記範囲の上限値を超える場合は、効果が頭打ちとなり経済的でなくなる可能性がある。
【0090】
[離型剤]
離型剤としては、例えば、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステル、脂肪族炭化水素化合物、ポリシロキサン系シリコーンオイルなどが挙げられる。
【0091】
脂肪族カルボン酸としては、例えば、飽和または不飽和の脂肪族一価、二価または三価カルボン酸を挙げることができる。ここで脂肪族カルボン酸とは、脂環式のカルボン酸も包含する。これらの中で好ましい脂肪族カルボン酸は炭素数6〜36の一価または二価カルボン酸であり、炭素数6〜36の脂肪族飽和一価カルボン酸がさらに好ましい。かかる脂肪族カルボン酸の具体例としては、パルミチン酸、ステアリン酸、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、メリシン酸、テトラリアコンタン酸、モンタン酸、アジピン酸、アゼライン酸などが挙げられる。
【0092】
脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステルにおける脂肪族カルボン酸としては、例えば、前記脂肪族カルボン酸と同じものが使用できる。一方、アルコールとしては、例えば、飽和または不飽和の一価または多価アルコールが挙げられる。これらのアルコールは、フッ素原子、アリール基などの置換基を有していてもよい。これらの中では、炭素数30以下の一価または多価の飽和アルコールが好ましく、炭素数30以下の脂肪族飽和一価アルコールまたは脂肪族飽和多価アルコールがさらに好ましい。なお、ここで脂肪族とは、脂環式化合物も含有する。
【0093】
かかるアルコールの具体例としては、オクタノール、デカノール、ドデカノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、2,2−ジヒドロキシペルフルオロプロパノール、ネオペンチレングリコール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール等が挙げられる。
【0094】
なお、上記のエステルは、不純物として脂肪族カルボン酸及び/またはアルコールを含有していてもよい。また、上記のエステルは、純物質であってもよいが、複数の化合物の混合物であってもよい。さらに、結合して一つのエステルを構成する脂肪族カルボン酸及びアルコールは、それぞれ、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
【0095】
脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステルの具体例としては、蜜ロウ(ミリシルパルミテートを主成分とする混合物)、ステアリン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニル、ベヘン酸ステアリル、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリントリステアレート、ペンタエリスリトールモノパルミテート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート等が挙げられる。
【0096】
脂肪族炭化水素化合物としては、例えば、流動パラフィン、パラフィンワックス、マイクロワックス、ポリエチレンワックス、フィッシャ−トロプシュワックス、炭素数3〜12のα−オレフィンオリゴマー等が挙げられる。なお、ここで脂肪族炭化水素としては、脂環式炭化水素も含まれる。また、これらの炭化水素は部分酸化されていてもよい。また、脂肪族炭化水素化合物の数平均分子量は、好ましくは数平均分子量200〜15,000であり、より好ましくは5,000以下である。
【0097】
これらの中では、パラフィンワックス、ポリエチレンワックスまたはポリエチレンワックスの部分酸化物が好ましく、パラフィンワックス、ポリエチレンワックスがさらに好ましく、ポリエチレンワックスが特に好ましい。
【0098】
なお、離型剤は、1種でも、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で配合されていても良い。
離型剤の配合量は、回収ポリカーボネート樹脂(A)と未使用ポリカーボネート樹脂(B)の合計100質量部に対して、通常0.001質量部以上、好ましくは0.01質量部以上であり、また、通常2質量部以下、好ましくは1質量部以下である。離型剤の配合量が上記範囲の下限値未満の場合は、離型性の効果が十分でない場合があり、離型剤の配合量が上記範囲の上限値を超える場合は、耐加水分解性の低下、射出成形時の金型汚染などが生じる可能性がある。
【0099】
[再生ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法]
本発明の再生ポリカーボネート樹脂組成物の製造するには、前記した規定を満たす回収ポリカーボネート樹脂(A)を調整または選択し、未使用のポリカーボネート樹脂(B)とその他の成分と混練することにより行う。
この際の配合方法や混合、混練の方法には制限はなく、公知のポリカーボネート樹脂組成物の製造方法を広く採用でき、回収ポリカーボネート樹脂(A)、未使用ポリカーボネート樹脂(B)、リン系難燃剤(C)及びフルオロポリマー(D)、並びに、必要に応じて配合されるその他の成分を、例えばタンブラーやヘンシェルミキサーなどの各種混合機を用い予め混合した後、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダー、単軸混練押出機、二軸混練押出機、ニーダーなどの混合機で溶融混練する方法が挙げられる。
なお、溶融混練の温度は特に制限されないが、通常240〜320℃の範囲である。
【0100】
[成形品]
得られた再生ポリカーボネート樹脂組成物をペレタイズしたペレットは、各種の成形法で成形して成形品とされる。またペレットを経由せずに、押出機で溶融混練された樹脂を直接、成形して成形品にすることもできる。
成形品の形状としては、特に制限はなく、成形品の用途、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、板状、プレート状、ロッド状、シート状、フィルム状、円筒状、環状、円形状、楕円形状、多角形形状、異形品、中空品、枠状、箱状、パネル状のもの等が挙げられる。
【0101】
成形体を成形する方法としては、特に制限されず、従来公知の成形法を採用でき、例えば、射出成形法、射出圧縮成形法、押出成形法、異形押出法、トランスファー成形法、中空成形法、ガスアシスト中空成形法、ブロー成形法、押出ブロー成形、IMC(インモールドコ−ティング成形)成形法、回転成形法、多層成形法、2色成形法、インサート成形法、サンドイッチ成形法、発泡成形法、加圧成形法等が挙げられる。
【0102】
再生ポリカーボネート樹脂組成物を成形した成形品は、例えば、電気電子部品、家電部品、自動車用部品、各種建材、容器、雑貨等の各種用途に好適に使用できる。
【実施例】
【0103】
以下、実施例を示して本発明について更に具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施できる。
【0104】
回収されたポリカーボネート樹脂として、以下の表1のものを使用した。
なお、MVR上昇率は以下の計算式で求められる。
【数2】
【0105】
【表1】
上記以外の各原料成分は、以下の表2のとおりである。
【0106】
【表2】
【0107】
(実施例1〜9、比較例1〜3)
上記表1〜2に記載した各成分を、下記の表3及び表4に示す割合(全て質量部にて表示)にて配合し、タンブラーミキサーにて均一に混合した後、二軸押出機(日本製鋼所製TEX30HSST)を用いて、シリンダー温度280℃、スクリュー回転数200rpm、吐出量20kg/hrにて押出機上流部のバレルより押出機にフィードし、溶融混練させて、ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを得た。
【0108】
[引張破断伸度の評価]
上記で得られたポリカーボネート樹脂組成物ペレットを、120℃で5時間以上乾燥した後、射出成形機(ファナック製「ロボショットα2000i−150T型」)を用いて、シリンダー温度280℃、金型温度80℃、成形サイクル45秒の条件で、ISOの引張試験片を作製した。
作製した引張試験片について、温度70℃の環境下で150時間の熱処理を実施した。熱処理前後の引張破断伸度(単位:%)を、ISO527−1に準拠して23℃において測定した。
熱処理後の引張伸び保持率(単位:%)は下記式に基づいて算出した。
熱処理後引張伸び保持率(%)=
[(熱処理後の引張伸び)/(熱処理前の引張伸び)]×100(%)
以上の評価結果を、表3及び表4に示した。
【0109】
【表3】
【0110】
【表4】
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明の再生ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法によれば、回収されたポリカーボネート樹脂を用いて、熱安定性、湿熱安定性及び難燃性に優れたポリカーボネート樹脂組成物を製造でき、産業上の利用性は非常に高いものがある。