特許第6612410号(P6612410)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6612410-イオン交換膜 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6612410
(24)【登録日】2019年11月8日
(45)【発行日】2019年11月27日
(54)【発明の名称】イオン交換膜
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/22 20060101AFI20191118BHJP
   C25B 13/08 20060101ALI20191118BHJP
   C25B 9/00 20060101ALI20191118BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20191118BHJP
【FI】
   C08J5/22 102
   C08J5/22CEW
   C25B13/08 302
   C25B9/00 C
   B32B27/30 D
【請求項の数】6
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2018-176906(P2018-176906)
(22)【出願日】2018年9月21日
(62)【分割の表示】特願2017-519360(P2017-519360)の分割
【原出願日】2016年5月16日
(65)【公開番号】特開2019-7021(P2019-7021A)
(43)【公開日】2019年1月17日
【審査請求日】2018年9月21日
(31)【優先権主張番号】特願2015-101292(P2015-101292)
(32)【優先日】2015年5月18日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】中島 篤
(72)【発明者】
【氏名】坂本 直紀
(72)【発明者】
【氏名】森川 卓也
【審査官】 関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−323084(JP,A)
【文献】 特開2014−058707(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/203886(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25B 13/00−13/08
C25B 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スルホン酸基を有する含フッ素重合体を含む層Aと、
カルボン酸基を有する含フッ素重合体を含む層Bと、
を有し、
下記電解条件における電解前の前記層Bのイオンクラスター径に対する、前記電解後の前記層Bのイオンクラスター径の割合〔(前記電解後の層Bのイオンクラスター径)/(前記電解前の層Bのイオンクラスター径)〕が0.83〜0.95である、イオン交換膜であって、
前記層Aは、下記式(2)で表される化合物の加水分解由来のスルホン酸基を有する重合体を含み、
前記層Bは、下記式(3)で表される化合物の加水分解由来のカルボン酸基を有する重合体を含む、イオン交換膜
(電解条件)
3.5規定(N)の塩化ナトリウム水溶液が供給された陽極室と、10.8規定(N)の水酸化ナトリウム水溶液が供給された陰極室との間に前記イオン交換膜が配置されたゼロギャップ電解槽において、温度が85℃、電流密度が6kA/m2の条件で7日間電解を行う。
CF2=CF−(OCF2CYF)a−O−(CF2b−SO2F (2)
(式(2)中、aは0〜2の整数、bは1〜4の整数、Yは−F又は−CF3を表す。)
CF2=CF−(OCF2CYF)c−O−(CF2d−COOR (3)
(式(3)中、cは0〜2の整数、dは1〜4の整数、Yは−F又は−CF3、Rは−CH3、−C25、又は−C37を表す。)
【請求項2】
前記電解前の層Bのイオンクラスター径が2.5〜4.0nmであり、
前記電解後の層Bのイオンクラスター径が2.0〜3.3nmである、請求項1に記載のイオン交換膜。
【請求項3】
前記電解前における、前記層Aの厚みと前記層Bの厚みとの合計が55μm以上である、請求項1又は2に記載のイオン交換膜。
【請求項4】
前記電解前の層Aのイオンクラスター径が3.0〜4.5nmである、請求項1〜3のいずれか1項に記載のイオン交換膜。
【請求項5】
前記電解前の層Aの厚さが50〜180μmであり、
前記電解前の層Bの厚さが5〜20μmである、請求項1〜4のいずれか1項に記載のイオン交換膜。
【請求項6】
請求項1〜のいずれか1項に記載のイオン交換膜を備える、電解槽。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオン交換膜に関する。
【背景技術】
【0002】
含フッ素イオン交換膜は、耐熱性や耐薬品性などが優れており、塩化アルカリ電解用、オゾン発生電解用、燃料電池用、水電解用、塩酸電解用などの電解用隔膜として、種々の用途に用いられている。
【0003】
これらの中で、特に、塩素と水酸化アルカリを製造する塩化アルカリの電解では、近年、イオン交換膜法が主流となっている。塩化アルカリの電解に用いられるイオン交換膜には、様々な性能が求められている。例えば、高い電流効率及び低い電解電圧で電解を行えること、製造した水酸化アルカリ中に含まれる不純物(特に塩化アルカリ等)の濃度が低いこと等の電解性能、及び、膜強度が高く、膜の取扱い時や電解時に損傷しない等の膜強度などの性能が要求されている。そして、イオン交換膜の電解性能と膜強度とはトレードオフの関係にあるが、両者が高いイオン交換膜の開発が求められている。
【0004】
特許文献1には、スルホン酸基を有する含フッ素重合体層と、カルボン酸基を有する含フッ素重合体層の少なくとも二層から成るイオン交換膜が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−323084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のイオン交換膜は、膜強度と電解性能との両立において更なる改善の余地がある。
本発明は、上述した従来技術が有する課題に鑑みてなされたものであり、膜強度と電解性能の両方に優れるイオン交換膜を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、イオン交換膜内に存在するイオンクラスターを電解中に収縮させ、イオン交換膜の電解後のイオンクラスター径が、電解前のイオンクラスター径に対して所定の割合で小さくなるように制御することにより、電解性能が飛躍的に向上することを見出し、本発明を成すに至った。
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
[1]
スルホン酸基を有する含フッ素重合体を含む層Aと、
カルボン酸基を有する含フッ素重合体を含む層Bと、
を有し、
下記電解条件における電解前の前記層Bのイオンクラスター径に対する、前記電解後の前記層Bのイオンクラスター径の割合〔(前記電解後の層Bのイオンクラスター径)/(前記電解前の層Bのイオンクラスター径)〕が0.83〜0.95である、イオン交換膜:
(電解条件)
3.5規定(N)の塩化ナトリウム水溶液が供給された陽極室と、10.8規定(N)の水酸化ナトリウム水溶液が供給された陰極室との間に前記イオン交換膜が配置されたゼロギャップ電解槽において、温度が85℃、電流密度が6kA/m2の条件で7日間電解を行う。
[2]
前記電解前の層Bのイオンクラスター径が2.5〜4.0nmであり、
前記電解後の層Bのイオンクラスター径が2.0〜3.3nmである、[1]に記載のイオン交換膜。
[3]
前記電解前における、前記層Aの厚みと前記層Bの厚みとの合計が55μm以上である、[1]又は[2]に記載のイオン交換膜。
[4]
前記電解前の層Aのイオンクラスター径が3.0〜4.5nmである、[1]〜[3]のいずれかに記載のイオン交換膜。
[5]
前記電解前の層Aの厚さが50〜180μmであり、
前記電解前の層Bの厚さが5〜20μmである、[1]〜[4]のいずれかに記載のイオン交換膜。
[6]
前記層Aは、下記式(2)で表される化合物の重合体を含み、
前記層Bは下記式(3)で表される化合物の重合体を含む、[1]〜[5]のいずれかに記載のイオン交換膜:
CF2=CF−(OCF2CYF)a−O−(CF2b−SO2F (2)
(式(2)中、aは0〜2の整数、bは1〜4の整数、Yは−F又は−CF3を表す。)
CF2=CF−(OCF2CYF)c−O−(CF2d−COOR (3)
(式(3)中、cは0〜2の整数、dは1〜4の整数、Yは−F又は−CF3、Rは−CH3、−C25、又は−C37を表す。)
[7]
[1]〜[6]のいずれかに記載のイオン交換膜を備える、電解槽。
【発明の効果】
【0008】
本発明のイオン交換膜は、膜強度及び電解性能に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態のイオン交換膜の一例の概略断面図である。
図2】本実施形態の電解槽の一例の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の本実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0011】
本実施形態のイオン交換膜は、スルホン酸基を有する含フッ素重合体を含む層A(以下、単に「層A」と記載することもある)とカルボン酸基を有する含フッ素重合体を含む層B(以下、単に「層B」と記載することもある)を有し、下記電解条件(1)における電解前の前記層Bのイオンクラスター径に対する、前記電解後の前記層Bのイオンクラスター径の割合〔(電解後の層Bのイオンクラスター径)/(電解前の層Bのイオンクラスター径)〕が0.83〜0.95である。ここで、電解条件(1)は、3.5規定(N)の塩化ナトリウム水溶液が供給された陽極室と、10.8規定(N)の水酸化ナトリウム水溶液が供給された陰極室との間にイオン交換膜が配置されたゼロギャップ電解槽において、温度が85℃、電流密度が6kA/m2の条件で7日間電解を行うこととする。このように構成されているため、本実施形態のイオン交換膜は、膜強度及び電解性能に優れる。以下、上記の電解条件(1)による電解を単に「電解」ともいう。なお、本明細書において、「ゼロギャップ」とは、電解層中、イオン交換膜が陰極及び陽極の双方と接した状態(イオン交換膜と陽極との間の距離、及びイオン交換膜と陰極との間の距離がゼロの状態)を意味し、これらの部材は電極(陽極又は陰極)の表面全体でイオン交換膜と接している状態であってもよいし、電極表面のある点においてイオン交換膜と接している状態であってもよい。
【0012】
図1に本実施形態のイオン交換膜の構成の一例の概略断面図を示す。本実施形態のイオン交換膜は、スルホン酸基を有する含フッ素重合体を含む層A(4)と、カルボン酸基を有する含フッ素重合体を含む層B(5)とが積層され、膜内部に強化芯材3と連通孔2a及び2bを有している。通常、スルホン酸基を有する含フッ素重合体を含む層A(4)が電解層の陽極側(α)に、カルボン酸基を有する含フッ素重合体を含む層B(5)が電解層の陰極側(β)になるように設置される。また、膜表面には、コーティング層6及び7を有している。図1において、連通孔2a及び強化芯材3は、紙面に対して垂直方向に形成され、連通孔2bは、紙面の上下方向に形成されている。即ち、紙面の上下方向に形成された連通孔2bは、強化芯材3に対して略垂直方向に沿って形成されている。また、連通孔2a及び2bは、層Aの陽極側表面に面している箇所8を有していても構わない。図1に示すように、本実施形態のイオン交換膜は、層Aの表面と層Bの表面とが接するように積層されていることが好ましい。以下、層Aと層Bを合わせて膜本体と称することがある。
【0013】
〔層A〕
本実施形態のイオン交換膜に含まれる層Aは、スルホン酸基を有する含フッ素重合体A(以下、単に「重合体A」と記載することもある。)を含み、重合体Aからなることが好ましい。ここで、「スルホン酸基を有する含フッ素重合体」とは、スルホン酸基、又は、加水分解によりスルホン酸基となり得るスルホン酸基前駆体を有する含フッ素重合体のことをいう。なお、層Aには重合体Aの他に後述する重合体Bを層A100質量%に対して20質量%未満の範囲で含んでいてもよく、層A100質量%に対して重合体Aを80質量%以上含むことが好ましい。
【0014】
層Aを構成する、スルホン酸基を有する含フッ素重合体Aは、例えば、以下の第1群の単量体と第2群の単量体とを共重合する、又は第2群の単量体を単独重合することによって製造することができる。重合体Aが共重合体の場合は、ブロック重合体であってもランダム重合体であってもよい。
【0015】
第1群の単量体としては、特に限定されないが、例えば、フッ化ビニル化合物が挙げられる。
フッ化ビニル化合物としては、下記一般式(1)で表わされるものが好ましい。
CF2=CX12 (1)
(一般式(1)において、X1及びX2は、それぞれ独立に、−F、−Cl、−H、又は−CF3を表す。)
【0016】
上記一般式(1)で表わされるフッ化ビニル化合物としては、特に限定されないが、例えば、フッ化ビニル、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン等が挙げられる。
【0017】
特に、本実施形態に係るイオン交換膜をアルカリ電解用膜として用いる場合、フッ化ビニル化合物は、パーフルオロ単量体であることが好ましく、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレンからなる群より選ばれるパーフルオロ単量体がより好ましく、テトラフルオロエチレン(TFE)がさらに好ましい。
【0018】
第1群の単量体は一種を単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0019】
第2群の単量体としては、特に限定されないが、例えば、スルホン酸型イオン交換基に変換し得る官能基を有するビニル化合物が挙げられる。
【0020】
スルホン酸型イオン交換基に変換し得る官能基を有するビニル化合物としては、下記一般式(2)で表わされるものが好ましい。
CF2=CF−(OCF2CYF)a−O−(CF2b−SO2F (2)
(式(2)中、aは0〜2の整数、bは1〜4の整数、Yは−F又は−CF3を表す。)
式(2)において、aが2のとき、複数存在するYは互いに独立である。
【0021】
第2群の単量体としては、特に限定されないが、例えば、下記に表す単量体等が挙げられる:
CF2=CFOCF2CF2SO2F、
CF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2SO2F、
CF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2CF2SO2F、
CF2=CF(CF22SO2F、
CF2=CFO〔CF2CF(CF3)O〕2CF2CF2SO2F、
CF2=CFOCF2CF(CF2OCF3)OCF2CF2SO2F。
【0022】
これらの中でも、CF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2CF2SO2F、及びCF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2SO2Fが好ましい。
【0023】
第2群の単量体は一種を単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0024】
重合体Aを構成する単量体の組み合わせの種類、その比率及び重合度等は、特に限定されない。また、層A中に含まれる重合体Aは、一種単独であっても二種以上の組み合わせであってもよい。また、スルホン酸基を有する含フッ素重合体Aのイオン交換容量は、上記一般式(1)と(2)で表される単量体の比を変えることにより調整することができる。
【0025】
層Aは、構成する重合体Aの組成により、単層であってもよいし、2層以上から構成されていてもよい。
【0026】
層Aが単層である場合、その厚みは50μm以上180μm以下が好ましく、80μm以上160μm以下がより好ましい。層Aの厚みが該範囲内にあると、膜本体の強度がより高くなる傾向にある。
【0027】
本明細書において、層Aが2層構造の場合、陽極に接する側の層を層A−1とし、層Bと接する側の層を含フッ素重合体層A−2とする。ここで、層A−1を形成する含フッ素重合体(「含フッ素重合体A−1」とも称する)と、層A−2を形成する含フッ素重合体(「含フッ素重合体A−2」とも称する)とは、組成が異なるものとすることが好ましい。層A−1の厚みは10μm以上60μm以下が好ましい。層A−2の厚みは30μm以上120μm以下が好ましく、40μm以上100μm以下がより好ましい。層A−1及び層A−2の厚みが上記範囲内にあると、膜本体の強度を十分に保つことができる。また、層A−1及び層A−2の厚みの合計は、50μm以上180μm以下が好ましく、80μm以上160μm以下がより好ましい。層Aが2層以上から構成される場合は、組成の異なる重合体Aから構成される2枚以上のフィルムを積層して層Aを形成させてもよい。
【0028】
〔層B〕
本実施形態のイオン交換膜に含まれる層Bは、カルボン酸基を有する含フッ素重合体B(以下、単に「重合体B」と記載することもある。)を含む。ここで、「カルボン酸基を有する含フッ素重合体」とは、カルボン酸基、又は、加水分解によりカルボン酸基となり得るカルボン酸基前駆体を有する含フッ素重合体のことをいう。なお、層Bには重合体B以外の成分を層B100質量%に対して10質量%未満の範囲で含んでいてもよく、層B100質量%に対して重合体Bを90質量%以上含むことが好ましく、重合体Bを100質量%含むことがとりわけ好ましい。なお、層Bにおいて重合体B以外に含まれていてもよい成分としては、以下に限定されないが、例えば、塩化カリウムのような金属塩化物等が挙げられる。
【0029】
層Bを構成するカルボン酸基を有する含フッ素系重合体は、例えば、上記第1群の単量体と以下の第3群の単量体とを共重合する、又は第3群の単量体を単独重合することによって製造することができる。重合体Bが共重合体の場合、ブロック共重合体であってもランダム重合体であってもよい。
【0030】
第3群の単量体としては、特に限定されないが、例えば、カルボン酸型イオン交換基に変換し得る官能基を有するビニル化合物が挙げられる。
【0031】
カルボン酸型イオン交換基に変換し得る官能基を有するビニル化合物としては、下記一般式(3)で表されるものが好ましい。
CF2=CF−(OCF2CYF)c−O−(CF2d−COOR (3)
(一般式(3)中、cは0〜2の整数、dは1〜4の整数を表し、Yは−F又は−CF3、Rは−CH3、−C25、又は−C37を表す。)
一般式(3)において、cが2のとき、複数存在するYは互いに独立である。上記一般式(3)において、Yが−CF3であり、Rが−CH3であることが好ましい。
【0032】
特に、本実施形態のイオン交換膜をアルカリ電解用イオン交換膜として用いる場合、第3群の単量体としてパーフルオロ単量体を少なくとも用いることが好ましい。ただし、エステル基中のアルキル基(上記R参照)は加水分解される時点で重合体から失われるため、アルキル基(R)はパーフルオロアルキル基でなくてもよい。これらの中でも、第3群の単量体として、特に限定されないが、例えば、下記に表す単量体がより好ましい:
CF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2COOCH3
CF2=CFOCF2CF(CF3)O(CF22COOCH3
CF2=CF[OCF2CF(CF3)]2O(CF22COOCH3
CF2=CFOCF2CF(CF3)O(CF23COOCH3
CF2=CFO(CF22COOCH3
CF2=CFO(CF23COOCH3
【0033】
第3群の単量体は一種を単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
重合体Bを構成する単量体の組み合わせの種類、その比率及び重合度等は、特に限定されない。また、層B中に含まれる重合体Bは、一種単独であっても二種以上の組み合わせであってもよい。また、カルボン酸基を有する含フッ素重合体Bのイオン交換容量は、上記一般式(3)と(4)で表される単量体の比を変えることにより調整することができる。
【0034】
層Bの厚みとしては、5μm以上50μm以下が好ましく、より好ましくは5μm以上20μm以下である。層Bの厚みがこの範囲内にあると、イオン交換膜の電解性能がより向上する傾向にあり、結果としてより高い電流効率及び低い電圧を達成できる傾向にある。また、層Bの膜厚みが上記の範囲内にあると、電解中に層Bのクラスターが収縮しやすく、〔(電解後の層Bのイオンクラスター径)/(電解前の層Bのイオンクラスター径)〕の値が小さくなりやすい。
【0035】
本実施形態のイオン交換膜において、電解性能と強度をより向上させる観点から、層Aは、上記式(2)で表される化合物の重合体を含み、かつ、層Bは上記式(3)で表される化合物の重合体を含むことが好ましい。
【0036】
本実施形態のイオン交換膜において、電解前の、層Aの厚みと前記層Bの厚みの合計が55μm以上であることが好ましく、55μm以上210μm以下であることがより好ましく、85μm以上190μm以下であることがさらに好ましい。層Aと層Bの厚みの合計が、該範囲内にあることにより、膜本体の強度がより向上する傾向にある。同様の観点から、電解前の層Aの厚さが50〜180μmであり、かつ、電解前の層Bの厚さが5〜30μmであることが好ましい。ここで、層A及び層Bのそれぞれの厚みは、後述する加水分解工程を経た後であって、前述した電解を行う前のイオン交換膜を構成する層A及び層Bのそれぞれの厚みを意味するものとし、実施例に記載の方法で測定することができる。また、上記厚みは、例えば、後述するフィルム化工程の押し出し量、及びフィルムの引き取り速度を調節することで制御することができる。
【0037】
〔電解前後のイオンクラスター径の比〕
本実施形態のイオン交換膜は、含水状態においてイオンクラスターが存在する。イオンクラスターとは、イオンが通る空間のことであり、イオン交換基の会合によって形成される。イオンクラスター径はイオン交換基の会合度合いや膜本体の含水率によって変化し、含フッ素重合体のイオン交換容量や加水分解の条件によって制御でき、さらに、通電によりクラスター径が変化する場合がある。本実施形態のイオン交換膜は、電解前後のイオンクラスター径の比が所定の範囲内にあることにより、イオン交換膜の膜強度と電解性能の両方に優れる。
【0038】
本実施形態のイオン交換膜は、電解条件(1)で電解を行うと、〔(電解後の層Bのイオンクラスター径)/(電解前の層Bのイオンクラスター径)〕が0.83〜0.95となり、好ましくは0.83〜0.92であり、より好ましくは0.83〜0.90である。ここで、電解条件(1)は、陽極室と陰極室との間に該イオン交換膜が配置され、前記陽極室に3.5規定(N)の塩化ナトリウム水溶液が供給され、前記陰極室に10.8規定(N)の水酸化ナトリウム水溶液が供給され、電解温度が85℃、電流密度が6kA/m2の条件で7日間電解を行うことである。ここで、「電解前の層Bのイオンクラスター径」とは、後述するイオン交換膜の製造における加水分解工程後であり、かつ、電解に用いる前のイオン交換膜中の層Bのイオンクラスター径のことをいう。「電解後の層Bのイオンクラスター径」とは、上記電解条件(1)で電解を行った後のイオン交換膜中の、層Bのイオンクラスター径のことをいう。なお、本明細書中、〔(電解後の層Bのイオンクラスター径)/(電解前の層Bのイオンクラスター径)〕のことを、単に「電解前後の層Bのイオンクラスター径の比」と記載することもある。
【0039】
電解前後の層Bのイオンクラスター径の比が、0.83以上であると、電解中の電圧が高くなることを抑制し、電解性能の低下を抑制できる。この理由としては、以下に限定する趣旨ではないが、電解前の層Bのイオンクラスター径が大きくなり過ぎず、イオン交換膜の含水率増大による厚みの大幅な上昇を抑制できるからであると考えられる。電解前後の層Bのイオンクラスター径の比が、0.95以下であると、電解中のイオン選択性が良好となる。この理由としては、以下に限定する趣旨ではないが、電解中の層Bのイオンクラスター径が最適な大きさに収縮するためであると考えられる。このような観点から、電解前後の層Bのイオンクラスター径の比は0.83〜0.95である。なお、電解前後の層Bのイオンクラスター径の比は、通電前の層Bのイオンクラスター径を大きくし、通電後の層Bのイオンクラスター径を小さくして、当該比を小さくする等の要領で、上記範囲に制御することができる。具体的には、例えば、後述する塩交換処理の処理温度を高くすることや、処理時間を長くすること等により、通電前の層Bのイオンクラスター径が大きくなる傾向にある。
【0040】
〔イオンクラスター径〕
電解前において、本実施形態のイオン交換膜における層Aのイオンクラスター径は3.0〜4.5nmであることが好ましく、3.2〜4.0nmであることがより好ましく、3.4〜3.8nmであることがさらに好ましい。電解前のイオン交換膜において、層Bのイオンクラスター径は2.5〜4.0nmであることが好ましく、3.0〜3.8nmであることがより好ましく、3.2〜3.6nmであることがさらに好ましい。なお、層Aが組成の異なる2層以上で構成される場合のイオンクラスター径は、それらの平均値とする。例えば、層Aが層A−1と層A−2の2層からなる場合、層A−1と層A−2のイオンクラスター径のイオンクラスター径の平均値が3.0〜4.5nmであることが好ましい。電解前のイオン交換膜中の層A及び層Bのイオンクラスター径が上記範囲内にあると、イオン交換膜の電解性能及び強度がより向上する傾向にある。すなわち、上記の範囲の下限値よりもクラスター径が大きいと、強度がより向上する傾向にあり、上記の範囲の上限値よりもクラスター径が小さいと、電圧の上昇をより抑制できる傾向にある。なお、イオンクラスター径は、層Aと層Bを剥離し、それぞれの層のみからなる単層膜に分離した後、得られた層Aと層Bのフィルムを25℃において水に含浸させた状態で、小角X線散乱(SAXS)により測定する。なお、イオン交換膜がコーティング層を有する場合、当該コーティング層をブラシで除去した後、それぞれの層のみからなる単層膜に分離することを除き、上記と同様にしてSAXS測定に供することができる。詳細は、後述の実施例に記す。
【0041】
本実施形態のイオン交換膜は、上記電解条件(1)での電解後、層Bのイオンクラスター径が2.0〜3.3nmであることが好ましく、2.5〜3.2nmであることがより好ましい。さらに、本実施形態のイオン交換膜は、電解性能と強度をより向上させる観点から、電解前の層Bのイオンクラスター径が2.5〜4.0nmであり、かつ、電解後の層Bのイオンクラスター径が2.0〜3.3nmであることがとりわけ好ましい。
【0042】
〔イオン交換容量〕
本実施形態のイオン交換膜において、層A及び層Bを構成する含フッ素重合体のイオン交換容量は、イオンクラスター径を制御する因子の一つである。含フッ素重合体のイオン交換容量とは、乾燥樹脂1g当りの交換基の当量のことをいい、中和滴定によって測定することができる。層Aを構成する含フッ素重合体Aのイオン交換容量は、0.8〜1.2ミリ当量/gであることが好ましく、より好ましくは0.9〜1.1ミリ当量/gである。層Bを構成する含フッ素重合体Bのイオン交換容量は、0.75ミリ当量/g以上であることが好ましく、0.81〜0.98ミリ当量/gであることがより好ましい。含フッ素重合体のイオン交換容量が、上記範囲内であると、イオン交換膜の電解性能及び強度の低下がより効果的に抑制される傾向にある。また、層Bを構成する含フッ素重合体Bのイオン交換容量が0.81以上であることにより、イオン交換膜中の含水率が高くなるので、電解した際にクラスター収縮が生じやすい。なお、各層のイオン交換容量が大きくなるほど、当該層のイオンクラスター径は大きくなり、イオン交換容量が小さくなるほどイオンクラスター径は小さくなる傾向にある。また、各層のイオン交換容量は、例えば、当該層に含まれる含フッ素重合体を構成する単量体の選択及び当該単量体の含有率により制御できる。具体的には、例えば、前述した一般式(1)〜(3)の仕込み比によって制御でき、より具体的には、イオン交換基を含む一般式(2),(3)で表される単量体の含有率が大きくなるほど、イオン交換容量は大きくなる傾向にある。
【0043】
〔強化芯材〕
本実施形態のイオン交換膜は、膜内に強化芯材3を含むことが好ましい。強化芯材は、イオン交換膜の強度及び寸法安定性を強化することができ、膜本体の内部に存在することが好ましい。強化芯材とは、強化糸を織った織布などであることが好ましい。強化芯材の材料は、長期にわたる耐熱性、耐薬品性が必要であることから、フッ素系重合体から成る繊維であることが好ましい。強化芯材の材料としては、特に限定されないが、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(ETFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、トリフルオロクロルエチレン−エチレン共重合体及びフッ化ビニリデン重合体(PVDF)などが挙げられ、特にポリテトラフルオロエチレンから成る繊維を用いることが好ましい。
【0044】
強化芯材の糸径としては、好ましくは20〜300デニール、より好ましくは50〜250デニール、織り密度(単位長さあたりの打ち込み本数)としては、好ましくは5〜50本/インチである。強化芯材の形状としては、織布、不織布又は編布などが挙げられるが、織布の形態であることが好ましい。また、織布の厚みは、30〜250μmであることが好ましく、30〜150μmであることがより好ましい。
【0045】
織布または編布は、特に限定されないが、例えば、モノフィラメント、マルチフィラメントまたは、これらのヤーン、スリットヤーンなどが使用され、織り方は平織り、絡み織り、編織り、コード織り、シャーサッカなど種々の織り方が使用される。
【0046】
また、強化芯材の開口率は、特に限定されないが、好ましくは30%以上、より好ましくは50%以上90%以下である。開口率は、イオン交換膜としての電気化学的性質の観点から30%以上、また、膜の機械的強度の観点から90%以下が好ましい。開口率とは、イオン交換膜の表面積の合計(A)に対するイオン交換膜においてイオン等の物質が通過できる面積の合計(B)の割合であり、(B)/(A)で表される。(B)は、イオン交換膜において、イオンや電解液等が、イオン交換膜に含まれる強化芯材や強化糸等によって遮断されない領域の面積の合計である。開口率の測定方法は、下記のとおりである。イオン交換膜(コーティング等を塗る前の陽イオン交換膜)の表面画像を撮影し、強化芯材が存在しない部分の面積から、上記(B)が求められる。そして、イオン交換膜の表面画像の面積から上記(A)を求め、上記(B)を上記(A)で除することによって、開口率が求められる。
【0047】
これら種々の強化芯材の中でも、特に好ましい形態としては、例えば、PTFEから成る高強度多孔質シートをテープ状にスリットしたテープヤーン、又は、PTFEから成る高度に配向したモノフィラメントの50〜300デニールを使用し、織り密度が10〜50本/インチの平織り構成からなり、更にその厚みは50〜100μmの範囲でかつその開口率は60%以上であることが好ましい。
【0048】
更に、織布には膜の製造工程において、強化芯材の目ズレを防止する目的で、通常犠牲芯材と呼ばれる補助繊維を含んでもよい。この犠牲芯材を含むことで、イオン交換膜内に連通孔2a,2bを形成することができる。
【0049】
犠牲芯材は、膜の製造工程もしくは電解環境下において溶解性を有するものであり、特に限定されないが、レーヨン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、セルロース及びポリアミドなどが用いられる。この場合の混織量は、好ましくは織布または編布全体の10〜80質量%、より好ましくは30〜70質量%である。
【0050】
〔連通孔〕
本実施形態のイオン交換膜は、膜内に連通孔2a,2bを有していてもよい。本実施形態において、連通孔とは、電解の際に発生する陽イオンや電解液の流路となり得る孔をいう。連通孔を形成することで、電解の際に発生するアルカリイオンや電解液の移動性がより向上する傾向にある。連通孔の形状は特に限定されないが、後述する製法によれば、連通孔の形成に用いられる犠牲芯材の形状とすることができる。
【0051】
本実施形態において、連通孔は、強化芯材の陽極側(層A側)と陰極側(層B側)を交互に通過するように形成されることが好ましい。このような構造とすることで、強化芯材の陰極側に連通孔が形成されている部分では、連通孔に満たされている電解液を通して輸送された陽イオン(例えば、ナトリウムイオン)が、強化芯材の陰極側にも流れることができる。その結果、陽イオンの流れが遮蔽されることがないため、イオン交換膜の電気抵抗を更に低減できる傾向にある。
【0052】
〔コーティング〕
本実施形態のイオン交換膜は、必要に応じて陰極側及び陽極側にガス付着防止のためのコーティング層6,7を有していてもよい。コーティング層を構成する材料としては、特に限定されないが、ガス付着防止の観点から、無機物を含むことが好ましい。無機物としては、特に限定されないが、例えば、酸化ジルコニウム、酸化チタン等が挙げられる。コーティング層を形成する方法としては、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、無機酸化物の微細粒子をバインダーポリマー溶液に分散した液を、スプレー等により塗布する方法が挙げられる。
【0053】
〔イオン交換膜の製造方法〕
本実施形態に係るイオン交換膜は、上記電解条件(1)での電解前後の、カルボン酸基を有する含フッ素重合体を含む層Bのイオンクラスター径の比を上記範囲内になるように制御して製造するため、含フッ素重合体A及び含フッ素重合体Bのそれぞれのイオン交換容量、及び加水分解の条件等を調整する。以下、本実施形態のイオン交換膜の製造方法について詳細に説明する。
【0054】
本実施形態のイオン交換膜の製造方法は、特に限定されないが、
1)イオン交換基、又は、加水分解によりイオン交換基となり得るイオン交換基前駆体を有する含フッ素重合体を製造する工程(重合体の製造工程)と、
2)犠牲糸を織り込んだ強化芯材を得る工程(強化芯材の製造工程)と、
3)イオン交換基、又は、加水分解によりイオン交換基となり得るイオン交換基前駆体を有する含フッ素重合体をフィルム化する工程(フィルム化工程)と、
4)前記強化芯材と、前記フィルムとを埋め込んで複合膜を形成する工程(埋め込み工程)と、
5)酸又はアルカリで、複合膜を加水分解する工程(加水分解工程)と、を含む製造方法が好ましい。
ここで、「イオン交換基」とは、スルホン酸基又はカルボン酸基のことをいう。
【0055】
本実施形態のイオン交換膜は、上記の工程のうち、例えば、1)の重合体製造工程で含フッ素重合体のイオン交換容量を制御する、及び/又は、5)の加水分解工程で加水分解の条件を制御することにより、電解前後の層Bのイオンクラスター径の比を調整することができる。以下、各工程について説明する。
【0056】
1)工程(重合体の製造工程)
層Aを構成するスルホン酸基を有する含フッ素重合体Aは、上記のとおり、例えば、第1群の単量体と第2群の単量体とを共重合する、又は第2群の単量体を単独重合することによって製造することができる。層Bを構成するカルボン酸基を有する含フッ素重合体Bは、例えば、上記のとおり、例えば、第1群の単量体と第3群の単量体とを共重合する、又は第3群の単量体を単独重合することによって製造することができる。重合方法は特に限定されないが、例えば、フッ化エチレン、特にテトラフルオロエチレンの重合に一般的用いられる重合方法を用いることができる。
【0057】
含フッ素重合体は、例えば、非水性法により得ることができる。非水性法においては、例えば、パーフルオロ炭化水素、クロロフルオロカーボン等の不活性溶媒を用い、パーフルオロカーボンパーオキサイドやアゾ化合物等のラジカル重合開始剤の存在下で、温度0〜200℃、圧力0.1〜20MPaの条件下で、重合反応を行うことができる。
【0058】
含フッ素重合体の製造において、上記単量体の組み合わせの種類及びその割合は、特に限定されず、得られる含フッ素系重合体に付与したい官能基の種類及び量等によって決定してよい。
【0059】
本実施形態において、含フッ素重合体のイオン交換容量を制御するために、各層を形成する含フッ素重合体の製造において、原料の単量体の混合比を調整してもよい。
【0060】
層Aを構成するスルホン酸基を有する含フッ素重合体Aは、例えば、前記一般式(2)で表される単量体を重合して製造するか、又は、前記一般式(1)で表される単量体と、前記一般式(2)で表される単量体とを、以下のモル比で共重合して製造するのが好ましい。
前記一般式(1)で表される単量体:前記一般式(2)で表される単量体=4:1〜7:1。
【0061】
層Bを構成するカルボン酸基を有する含フッ素重合体Bは、例えば、前記一般式(3)で表される単量体を重合して製造するか、又は、前記一般式(1)で表される単量体と、前記一般式(3)で表される単量体とを、以下のモル比で共重合して製造されるのが好ましい。
前記一般式(1)で表される単量体:前記一般式(3)で表される単量体=6:1〜9:1。
【0062】
2)工程(強化芯材の製造工程)
本実施形態のイオン交換膜は、膜の強度をより向上させる観点から、強化芯材が膜内に埋め込まれていることが好ましい。連通孔を有するイオン交換膜とするときには、犠牲糸も一緒に強化芯材へ織り込む。この場合の犠牲糸の混織量は、好ましくは強化芯材全体の10〜80質量%、より好ましくは30〜70質量%である。犠牲糸としては、20〜50デニールの太さを有し、モノフィラメント又はマルチフィラメントからなるポリビニルアルコール等であることも好ましい。
【0063】
3)工程(フィルム化工程)
前記1)工程で得られた含フッ素重合体を、フィルム化する方法は、特に限定されないが、押出し機を用いるのが好ましい。フィルム化する方法としては以下の方法が挙げられる。
層Aと層Bがそれぞれ単層を構成する場合は、含フッ素重合体A、含フッ素重合体Bをそれぞれ別々にフィルム化する方法が挙げられる。
層Aが層A−1と層A−2からなる2層構造を有する場合は、含フッ素重合体A−2と含フッ素重合体Bとを共押出しにより複合フィルムとし、別途、含フッ素重合体A−1を単独でフィルム化する方法;又は含フッ素重合体A−1と含フッ素重合体A−2とを共押出しにより複合フィルムとし、別途、含フッ素重合体Bを単独でフィルム化する方法が挙げられる。これらのうち、含フッ素重合体A−2と含フッ素重合体Bとを共押出しすると、界面の接着強度を高めることに寄与するため好ましい。
【0064】
4)工程(埋め込み工程)
埋め込み工程においては、前記2)工程で得られた強化芯材、及び前記3)工程で得られたフィルムを、昇温したドラムの上で埋め込むのが好ましい。ドラム上では、透気性を有する耐熱性の離型紙を介して、各層を構成する含フッ素重合体が溶融する温度下で減圧により各層間の空気を除去しながら埋め込んで一体化することで、複合膜が得られる。ドラムとしては、特に限定されないが、例えば、加熱源及び真空源を有し、その表面に多数の細孔を有するものが挙げられる。
【0065】
強化芯材及びフィルムを積層する際の順番としては、前記3)工程に合わせて以下の方法が挙げられる。
層Aと層Bがそれぞれ単層を構成する場合は、ドラムの上に、離型紙、層Aのフィルム、強化芯材、層Bのフィルムの順に積層する方法が挙げられる。
層Aが層A−1と層A−2からなる2層構造を有する場合は、ドラムの上に、離型紙、層A−1のフィルム、強化芯材、層A−2と層Bとの複合フィルムの順に積層する方法;又はドラムの上に、離型紙、層A−1と層A−2との複合フィルム、強化芯材、層Bの順に積層する方法が挙げられる。
【0066】
また、本実施形態のイオン交換膜の膜表面に凸部を設けるには、予めエンボス加工した離型紙を用いることによって、埋め込みの際に、溶融したポリマーからなる凸部を形成させることができる。
【0067】
5)工程(加水分解工程)
前記4)工程で得られた複合膜を、酸又はアルカリによって加水分解を行う。この加水分解工程において、加水分解条件、例えば、溶液組成、加水分解温度、時間等を変えることによって、電解前後の層Bのイオンクラスター径の比を制御することができる。本実施形態に係るイオン交換膜の製造において、加水分解は、例えば、2.5〜4.0規定(N)の水酸化カリウム(KOH)と20〜40質量%のDMSO(Dimethyl sulfoxide)の水溶液中、40〜90℃で、10分〜24時間行うことが好ましい。その後、50〜95℃の条件下、0.5〜0.7規定(N)苛性ソーダ(NaOH)溶液を用いて塩交換処理を行うことが好ましい。なお、層厚の過度な増大に起因する電圧上昇をより効果的に防止する観点から、上記塩交換処理における処理温度を70℃以上とする場合は、処理時間を2時間未満とすることが好ましい。
【0068】
なお、イオンクラスター径は、加水分解工程を行う液の組成、温度、時間等を変えることにより制御できる。例えば、イオンクラスター径を大きくさせる場合、KOH濃度を低下させる、DMSO濃度を上昇させる、加水分解温度を上昇させる、又は加水分解時間を長くすることにより達成できる。各層のイオンクラスター径を制御することにより、電解前後の層Bのイオンクラスター径の比も制御することができ、電解後の層Bのクラスター径を電解前に比べて大幅に小さくすることもできる。具体的には、例えば、電解前の層Bのイオンクラスター径が大きくなるように制御すると、電解前後の層Bのイオンクラスター径の比が小さくなる。また、加水分解した膜の表面にコーティング層を設けてもよい。
【0069】
〔電解槽〕
本実施形態の電解槽は、本実施形態のイオン交換膜を備える。図2に本実施形態の電解槽の一例の模式図を示す。電解槽13は、陽極11と、陰極12と、陽極と陰極との間に配置された、本実施形態のイオン交換膜1と、を少なくとも備える。電解槽は、種々の電解に使用できるが、以下、代表例として、塩化アルカリ水溶液の電解に使用する場合について説明する。
【0070】
電解条件は、特に限定されず、公知の条件で行うことができる。例えば、陽極室に2.5〜5.5規定(N)の塩化アルカリ水溶液を供給し、陰極室は水又は希釈した水酸化アルカリ水溶液を供給し、電解温度が50〜120℃、電流密度が0.5〜10kA/m2の条件で電解することができる。
【0071】
本実施形態の電解槽の構成は、特に限定されず、例えば、単極式でも複極式でもよい。電解槽を構成する材料としては、特に限定されないが、例えば、陽極室の材料としては、塩化アルカリ及び塩素に耐性があるチタン等が好ましく、陰極室の材料としては、水酸化アルカリ及び水素に耐性があるニッケル等が好ましい。電極の配置は、イオン交換膜と陽極との間に適当な間隔を設けて配置してもよいが、陽極とイオン交換膜が接触して配置されていてもよい。また、陰極は一般的にはイオン交換膜と適当な間隔を設けて配置されているが、この間隔がない接触型の電解槽(ゼロギャップ式電解槽)であってもよい。
【実施例】
【0072】
以下、実施例により本実施形態を詳細に説明する。なお、本実施形態は以下の実施例に限定されるものではない。
【0073】
実施例及び比較例における各測定方法は以下のとおりである。
[イオンクラスター径の測定方法]
イオンクラスター径は小角X線散乱(SAXS)により測定した。SAXS測定はイオン交換膜がコーティング層を有する場合はコーティング層をブラシで除去した後、層Aと層Bを剥離し、それぞれの層のみからなる単層膜について、25℃において水に含浸させた状態で測定を行った。SAXS測定は、リガク製SAXS装置NanoViewerを用いた。小角領域は試料―検出器間距離841mmで検出器としてPILATUS100Kを用い、広角領域は試料―検出器間距離75mm、検出器にイメージングプレートを用いて測定を行い、両プロフィールを合体させることにより0.1°<散乱角(2θ)<30°の範囲の散乱角における散乱データを得た。試料は7枚重ねた状態で測定を行い、露光時間は小角領域、広角領域測定とも15分とした。二次元検出器によりデータを取得した場合には円環平均等合理的な手法によりデータを一次元化した。得られたSAXSプロフィールに対しては、検出器の暗電流補正等、検出器に由来する補正、試料以外の物質による散乱に対する補正(空セル散乱補正)を実施した。SAXSプロフィールに対するX線ビーム形状の影響(スメアの影響)が大きい場合はX線ビーム形状に対する補正(デスメア)も行った。こうして得られた一次元SAXSプロフィールに対し、橋本康博、坂本直紀、飯嶋秀樹 高分子論文集 vol.63 No.3 pp.166 2006に記載された手法に準じてイオンクラスター径を求めた。すなわち、イオンクラスター構造が粒径分布を持つコアーシェル型の剛体球で表されると仮定し、このモデルに基づく理論散乱式を用いて実測のSAXSプロフィールのイオンクラスター由来の散乱が支配的な散乱角領域のSAXSプロフィールをフィッティングすることで平均クラスター直径(イオンクラスター径)、イオンクラスター個数密度を求めた。このモデルにおいて、コアの部分がイオンクラスターに相当し、コアの直径がイオンクラスター径となるものとした。なお、シェル層は仮想的なものでシェル層の電子密度はマトリックス部分と同じとした。またここではシェル層厚みは0.25nmとした。フィッティングに用いるモデルの理論散乱式を次の式(A)に示す。また、フィッティング範囲は1.4<2θ<6.7°とした。
【0074】
【数1】
【0075】
上記において、Cは定数、Nはクラスター個数密度、ηはコア、つまりイオンクラスター部分とその周りの仮想的なシェルを剛体球と仮定した場合のその体積分率、θはブッラグ角、λは用いるX線波長、tはシェル層厚み、a0は平均イオンクラスター半径、Γ(x)はガンマ関数、σはイオンクラスター半径(コア半径)の標準偏差を示す。P(a)はコア半径aの分布関数を表し、ここではaの体積分布がSchultz−Zimm分布p(a)に従うとする。Mは分布を表すパラメータである。Ib(q)は測定時の過剰な水由来の散乱、熱散漫散乱を含むバックグラウンド散乱を表しており,ここでは定数と仮定する。フィッティングの際には上記パラメータのうち、N、η、a0、σ、Ib(q)を可変パラメータとする。なお、本明細書において、イオンクラスター径とは、イオンクラスターの平均直径(2a0)を意味する。
【0076】
[加水分解工程後の各層の厚みの測定方法]
加水分解工程後であって、電解前のイオン交換膜の、層A−1側、又は層B側から断面方向へ幅約100μmで切り落とし、含水した状態で断面を上部に向けて光学顕微鏡を用いて厚みを実測した。その際、切り落とす部分は隣り合う強化芯材の中間部分(谷部)であり、得られた断面図において測定する箇所は、図1で示すと、隣り合う強化芯材3の中間部分であり、(α)から(β)へ向かう方向を厚み方向として層Aと層Bの厚みを測定した。
【0077】
[電解性能評価]
電解槽として、図2に示す電解槽13の構成を次のように変更したゼロギャップ電解槽を用いた。すなわち、電解槽13におけるイオン交換膜1と陽極11及び陰極12との位置関係を、イオン交換膜1と陽極11とが接した状態及びイオン交換膜1と陰極12とが接した状態(いわゆる「ゼロギャップ」の状態)となるように変更した電解槽を用意した。このゼロギャップ電解槽を用いて、下記の条件で電解を行い、電解電圧、電流効率、生成する苛性ソーダ中の塩化ナトリウム量に基づいて電解性能を評価した。なお、イオン交換膜が陰極及び陽極の電極表面全体で接する場合も、電極表面のある点で接する場合も、ゼロギャップの状態であるものとした。
陽極側に塩化ナトリウムの濃度が3.5規定(N)の濃度となるように調整しつつ食塩水を供給し、陰極側の苛性ソーダ濃度を10.8規定(N)に保ちつつ水を供給した。食塩水の温度を85℃に設定して、6kA/m2の電流密度で、電解槽の陰極側の液圧が陽極側の液圧よりも5.3kPa高い条件で電解を行った。
電解7日間の苛性ソーダに含まれる塩化ナトリウムの濃度をJIS規格K1200−3−1の方法で測定した。電解生成した苛性ソーダに硝酸を加えて中和し、硫酸鉄(III)アンモニウム溶液、チオシアン酸水銀(II)を加え、溶液を呈色させた。その溶液をUV計により吸光光度分析することによって苛性ソーダ中の塩化ナトリウム濃度を測定し、7日目の測定値を苛性ソーダ中の塩化ナトリウム濃度として求めた。UV計には、JASCO製V−630spetrophotometerを用いた。
また、電流効率は、生成された苛性ソーダの質量、濃度を測定し、一定時間に生成された苛性ソーダのモル数を、その間に流れた電流の電子のモル数で除することで求めた。
【0078】
[強度試験]
強度試験としては、加水分解後(電解前)のイオン交換膜を用い、JISK6732に準じて引張強度及び引張伸度の測定を行った。
【0079】
[実施例1]
含フッ素重合体A−1として、下記一般式(1)で表わされる単量体(X1=F、X2=F)と下記一般式(2)で表わされる単量体(a=1、b=2、Y=CF3)とをモル比5:1で共重合し、イオン交換容量が1.05m当量/gのポリマーを得た。なお、イオン交換容量は中和滴定で確認した。以下の実施例及び比較例でも同様にイオン交換容量を確認した。
CF2=CX12 (1)
CF2=CF−(OCF2CYF)a−O−(CF2b−SO2F (2)
【0080】
含フッ素重合体A−2として、前記一般式(1)で表わされる単量体(X1=F、X2=F)と前記一般式(2)で表わされる単量体(a=1、b=2、Y=CF3)とをモル比5.7:1で共重合し、イオン交換容量が0.99m当量/gのポリマーを得た。
【0081】
層Bを形成する含フッ素重合体Bとして、前記一般式(1)で表わされる単量体(X1=F、X2=F)と下記一般式(3)で表わされる単量体(c=1、d=2、Y=CF3、R=CH3)とをモル比7.5:1で共重合し、イオン交換容量が0.89m当量/gのポリマーを得た。
CF2=CF−(OCF2CYF)c−O−(CF2d−COOR (3)
【0082】
なお、含フッ素重合体A(A−1、A−2)は、より詳細には、以下に示す溶液重合により作製した。
まず、ステンレス製20LオートクレーブにCF2=CFOCF2CF(CF3)O(CF22COOCH3とHFC−43−10mee溶液を仕込み、容器内を充分に窒素置換した後、さらにCF2=CF2(TFE)で置換し、容器内の温度が35℃で安定になるまで加温してTFEで加圧した。
次いで、重合開始剤として(CF3CF2CF2COO)2の5%HFC43−10mee溶液を入れて、反応を開始した。この際、連鎖移動剤としてメタノールを加えた。35℃で攪拌しながらTFEを断続的にフィードしつつ、途中でメタノールを入れ、TFE圧力を降下させて、TFEを所定量供給したところで重合を停止した。未反応TFEを系外に放出した後、得られた重合液にメタノールを加えて含フッ素系重合体を凝集、分離した。さらに、乾燥した後、重合体Aを得た。得られた含フッ素系重合体は2軸押出し機にてペレット化した。
また、含フッ素重合体Bは、CF2=CFOCF2CF(CF3)O(CF22COOCH3の代わりにCF2=CFOCF2CF(CF3)O(CF22SO2Fを仕込み、連鎖移動剤を使用せず、途中でメタノールの代わりに(CF3CF2CF2COO)2の5%HFC43−10mee溶液を加える以外は重合体Aと同様の方法で得た。以下の実施例及び比較例でも同様に含フッ素重合体A及びBのペレットを得た。
【0083】
得られたフッ素重合体A−2とフッ素重合体Bを、2台の押し出し機、2層用の共押し出し用Tダイ、及び引き取り機を備えた装置により、共押しを行い、厚み93μmの2層フィルム(a1)を得た。該フィルム(a1)の断面を光学顕微鏡で観察した結果、層A−2の厚みが80μm、層Bの厚みが13μmであった。なお、層A−2と層Bとは偏光をかけることによって区別した。また、単層Tダイにて厚み20μmの層A−1の単層フィルム(b1)を得た。
【0084】
内部に加熱源及び真空源を有し、表面に多数の微細孔を有するドラム上に、透気性のある耐熱離型紙、単層フィルム(b1)、強化芯材、2層フィルム(a1)を順番に積層し、230℃の温度及び−650mmHgの減圧下で各材料間の空気を排除しながら一体化し、複合膜を得た。
【0085】
強化芯材として、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製100デニールのテープヤーンに900回/mの撚りをかけ糸状としたものと、補助繊維(犠牲糸)の経糸として30デニール、6フィラメントのポリエチレンテレフタレート(PET)を200回/mの撚りをかけたもの、緯糸として35デニール、8フィラメントのPET製の糸に10回/mの撚りをかけたものを準備し、これらの糸をPTFE糸が24本/インチ、犠牲糸がPTFEに対して4倍の64本/インチとなるよう交互配列で平織りして厚み100μmの織布を得た。得られた織布を加熱された金属ロールで圧着し織布の厚みを70μmに調製した。このとき、PTFE糸のみの開口率は75%であった。
【0086】
この複合膜をDMSO30質量%、4.0規定(N)のKOHを含む水溶液中で80℃の温度で0.5時間加水分解し、その後、50℃の条件下、0.6規定(N)NaOH溶液を用いて1時間塩交換処理を行った。
【0087】
水とエタノールの50/50質量部の混合溶液に、イオン交換容量が1.0m当量/gのCF2=CF2とCF2=CFOCF2CF(CF3)O(CF23SO2Fの共重合体を加水分解してなるスルホン酸基を有するフッ素系重合体を20質量%溶解させた。その溶液に一次粒子径1μmの酸化ジルコニウム40質量%加え、ボールミルにて均一に分散させた懸濁液を得た。この懸濁液を前記加水分解及び塩交換処理後のイオン交換膜の両面にスプレー法により塗布し乾燥させる事により、コーティング層を形成させた。
【0088】
上記のようにして得られたイオン交換膜について、電解を行った。(電解後の層Bのイオンクラスター径)/(電解前の層Bのイオンクラスター径)の値は0.91であった。測定結果を表1に示す。
【0089】
[実施例2]
含フッ素重合体A−1として、前記一般式(1)で表わされる単量体(X1=F、X2=F)と前記一般式(2)で表わされる単量体(a=1、b=2、Y=CF3)とをモル比5:1で共重合し、イオン交換容量が1.05m当量/gのポリマーを得た。
【0090】
含フッ素重合体A−2として、前記一般式(1)で表わされる単量体と前記一般式(2)(a=1、b=2、Y=CF3)で表わされる単量体とをモル比5.7:1で共重合し、イオン交換容量が0.99m当量/gのポリマーを得た。
【0091】
層Bを形成する含フッ素重合体Bとして、前記一般式(1)で表わされる単量体(X1=F、X2=F)と前記一般式(3)で表わされる単量体(c=1、d=2、Y=CF3、R=CH3)とをモル比7.5:1で共重合し、イオン交換容量が0.89m当量/gのポリマーを得た。
【0092】
得られたフッ素重合体A−2とフッ素重合体Bを、2台の押し出し機、2層用の共押し出し用Tダイ、及び引き取り機を備えた装置により、共押しを行い、厚み93μmの2層フィルム(a2)を得た。該フィルムの断面を光学顕微鏡で観察した結果、層A−2の厚みが80μm、層Bの厚みが13μmであった。また、単層Tダイにて厚み20μmの層A−1の単層フィルム(b2)を得た。
【0093】
内部に加熱源及び真空源を有し、表面に多数の微細孔を有するドラム上に、透気性のある耐熱離型紙、単層フィルム(b2)、強化芯材、2層フィルム(a2)を順番に積層し、230℃の温度及び−650mmHgの減圧下で各材料間の空気を排除しながら一体化し、複合膜を得た。強化芯材としては、実施例1と同様のものを用いた。
【0094】
この複合膜をDMSO30質量%、4.0規定(N)のKOHを含む水溶液中で50℃の温度で24時間加水分解し、その後、90℃の条件下、0.6規定(N)NaOH溶液を用いて0.5時間塩交換処理を行った。
【0095】
水とエタノールの50/50質量部の混合溶液にイオン交換容量が1.0m当量/gのCF2=CF2とCF2=CFOCF2CF(CF3)O(CF23SO2Fの共重合体を加水分解してなるスルホン酸基を有するフッ素系重合体を20質量%溶解させた。その溶液に一次粒子径1μmの酸化ジルコニウム40質量%加え、ボールミルにて均一に分散させた懸濁液を得た。この懸濁液を前記加水分解及び塩交換処理後のイオン交換膜の両面にスプレー法により塗布し乾燥させる事により、コーティング層を形成させた。
【0096】
上記のようにして得られたイオン交換膜について、電解を行った。(電解後の層Bのイオンクラスター径)/(電解前の層Bのイオンクラスター径)の値は0.93であった。測定結果を表1に示す。
【0097】
[実施例3]
含フッ素重合体A−1として、前記一般式(1)で表わされる単量体(X1=F、X2=F)と前記一般式(2)で表わされる単量体(a=1、b=2、Y=CF3)とをモル比5:1で共重合し、イオン交換容量が1.05m当量/gのポリマーを得た。
【0098】
含フッ素重合体A−2として、前記一般式(1)で表わされる単量体(X1=F、X2=F)と前記一般式(2)で表わされる単量体(a=1、b=2、Y=CF3)とをモル比5.7:1で共重合し、イオン交換容量が0.99m当量/gのポリマーを得た。
【0099】
含フッ素重合体層Bを形成する含フッ素重合体Bとして、前記一般式(1)で表わされる単量体(X1=F、X2=F)と前記一般式(3)で表わされる単量体(c=1、d=2、Y=CF3、R=CH3)とをモル比7.3:1で共重合し、イオン交換容量が0.91m当量/gのポリマーを得た。
【0100】
フッ素重合体A−2とフッ素重合体Bを、2台の押し出し機、2層用の共押し出し用Tダイ、及び引き取り機を備えた装置により、共押しを行い、厚み93μmの2層フィルム(a3)を得た。該フィルムの断面を光学顕微鏡で観察した結果、含フッ素重合体層A−2の厚みが80μm、含フッ素重合体層Bの厚みが13μmであった。また、単層Tダイにて厚み20μmの含フッ素重合体層A−1の単層フィルム(b3)を得た。
【0101】
内部に加熱源及び真空源を有し、表面に多数の微細孔を有するドラム上に、透気性のある耐熱離型紙、単層フィルム(b3)、強化芯材、2層フィルム(a3)を順番に積層し、230℃の温度及び−650mmHgの減圧下で各材料間の空気を排除しながら一体化し、複合膜を得た。強化芯材としては、実施例1と同様のものを用いた。
【0102】
この複合膜をDMSO30質量%、4.0規定(N)のKOHを含む水溶液中で50℃の温度で24時間加水分解し、その後、95℃の条件下、0.6規定(N)NaOH溶液を用いて1時間塩交換処理を行った。
【0103】
水とエタノールの50/50質量部の混合溶液に、イオン交換容量が1.0m当量/gのCF2=CF2とCF2=CFOCF2CF(CF3)O(CF23SO2Fの共重合体を加水分解してなるスルホン酸基を有するフッ素系重合体を20質量%溶解させた。その溶液に一次粒子径1μmの酸化ジルコニウム40質量%加えボールミルにて均一に分散させた懸濁液を得た。この懸濁液を前記加水分解及び塩交換処理後のイオン交換膜の両面にスプレー法により塗布し乾燥させる事により、コーティング層を形成させた。
【0104】
上記のようにして得られたイオン交換膜について、電解を行った。(電解後の層Bのイオンクラスター径)/(電解前の層Bのイオンクラスター径)の値は0.86であった。測定結果を表1に示す。
【0105】
[実施例4]
含フッ素重合体A−1として、前記一般式(1)で表わされる単量体(X1=F、X2=F)と前記一般式(2)で表わされる単量体(a=1、b=2、Y=CF3)とをモル比5:1で共重合し、イオン交換容量が1.05m当量/gのポリマーを得た。
【0106】
含フッ素重合体A−2として、前記一般式(1)で表わされる単量体(X1=F、X2=F)と前記一般式(2)で表わされる単量体(a=1、b=2、Y=CF3)とをモル比6:1で共重合し、イオン交換容量が0.95m当量/gのポリマーを得た。
【0107】
含フッ素重合体層Bを形成する含フッ素重合体Bとして、前記一般式(1)で表わされる単量体(X1=F、X2=F)と前記一般式(3)で表わされる単量体(c=1、d=2、Y=CF3、R=CH3)とをモル比8:1で共重合し、イオン交換容量が0.85m当量/gのポリマーを得た。
【0108】
フッ素重合体A−2とフッ素重合体Bを、2台の押し出し機、2層用の共押し出し用Tダイ、及び引き取り機を備えた装置により、共押しを行い、厚み100μmの2層フィルム(a4)を得た。該フィルムの断面を光学顕微鏡で観察した結果、含フッ素重合体層A−2の厚みが85μm、含フッ素重合体層Bの厚みが15μmであった。また、単層Tダイにて厚み25μmの含フッ素重合体層A−1の単層フィルム(b4)を得た。
【0109】
内部に加熱源及び真空源を有し、表面に多数の微細孔を有するドラム上に、透気性のある耐熱離型紙、単層フィルム(b4)、強化芯材、2層フィルム(a4)を順番に積層し、230℃の温度及び−650mmHgの減圧下で各材料間の空気を排除しながら一体化し、複合膜を得た。強化芯材としては、実施例1と同様のものを用いた。
【0110】
この複合膜をDMSO30質量%、4.0規定(N)のKOHを含む水溶液中で80℃の温度で0.5時間加水分解し、その後、50℃の条件下、0.6規定(N)NaOH溶液を用いて1時間塩交換処理を行った。
【0111】
水とエタノールの50/50質量部の混合溶液に、イオン交換容量が1.0m当量/gのCF2=CF2とCF2=CFOCF2CF(CF3)O(CF23SO2Fの共重合体を加水分解してなるスルホン酸基を有するフッ素系重合体を20質量%溶解させた。その溶液に一次粒子径1μmの酸化ジルコニウム40質量%加えボールミルにて均一に分散させた懸濁液を得た。この懸濁液を前記加水分解及び塩交換処理後のイオン交換膜の両面にスプレー法により塗布し乾燥させる事により、コーティング層を形成させた。
【0112】
上記のようにして得られたイオン交換膜について、電解を行った。(電解後の層Bのイオンクラスター径)/(電解前の層Bのイオンクラスター径)の値は0.93であった。測定結果を表1に示す。
[実施例5]
含フッ素重合体A−1として、前記一般式(1)で表わされる単量体(X1=F、X2=F)と前記一般式(2)で表わされる単量体(a=1、b=2、Y=CF3)とをモル比5:1で共重合し、イオン交換容量が1.05m当量/gのポリマーを得た。
【0113】
含フッ素重合体A−2として、前記一般式(1)で表わされる単量体(X1=F、X2=F)と前記一般式(2)で表わされる単量体(a=1、b=2、Y=CF3)とをモル比5.7:1で共重合し、イオン交換容量が0.99m当量/gのポリマーを得た。
【0114】
層Bを形成する含フッ素重合体Bとして、前記一般式(1)で表わされる単量体(X1=F、X2=F)と前記一般式(3)で表わされる単量体(c=1、d=2、Y=CF3、R=CH3)とをモル比7.5:1で共重合し、イオン交換容量が0.89m当量/gのポリマーを得た。
【0115】
得られたフッ素重合体A−2とフッ素重合体Bを、2台の押し出し機、2層用の共押し出し用Tダイ、及び引き取り機を備えた装置により、共押しを行い、厚み93μmの2層フィルム(a1)を得た。該フィルム(a1)の断面を光学顕微鏡で観察した結果、層A−2の厚みが80μm、層Bの厚みが13μmであった。なお、層A−2と層Bとは偏光をかけることによって区別した。また、単層Tダイにて厚み20μmの層A−1の単層フィルム(b1)を得た。
【0116】
内部に加熱源及び真空源を有し、表面に多数の微細孔を有するドラム上に、透気性のある耐熱離型紙、単層フィルム(b1)、強化芯材、2層フィルム(a1)を順番に積層し、230℃の温度及び−650mmHgの減圧下で各材料間の空気を排除しながら一体化し、複合膜を得た。
【0117】
強化芯材として、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製100デニールのテープヤーンに900回/mの撚りをかけ糸状としたものを24本/インチとなるよう平織りして厚み100μmの織布を得た。得られた織布を加熱された金属ロールで圧着し織布の厚みを70μmに調製した。このとき、PTFE糸のみの開口率は75%であった。
【0118】
この複合膜をDMSO30質量%、4.0規定(N)のKOHを含む水溶液中で80℃の温度で0.5時間加水分解し、その後、50℃の条件下、0.6規定(N)NaOH溶液を用いて1時間塩交換処理を行った。
【0119】
水とエタノールの50/50質量部の混合溶液に、イオン交換容量が1.0m当量/gのCF2=CF2とCF2=CFOCF2CF(CF3)O(CF23SO2Fの共重合体を加水分解してなるスルホン酸基を有するフッ素系重合体を20質量%溶解させた。その溶液に一次粒子径1μmの酸化ジルコニウム40質量%加え、ボールミルにて均一に分散させた懸濁液を得た。この懸濁液を前記加水分解及び塩交換処理後のイオン交換膜の両面にスプレー法により塗布し乾燥させる事により、コーティング層を形成させた。
【0120】
上記のようにして得られたイオン交換膜について、電解を行った。(電解後の層Bのイオンクラスター径)/(電解前の層Bのイオンクラスター径)の値は0.95であった。測定結果を表1に示す。
【0121】
[比較例1]
含フッ素重合体A−1として、前記一般式(1)で表わされる単量体(X1=F、X2=F)と前記一般式(2)で表わされる単量体(a=1、b=2、Y=CF3)とをモル比5:1で共重合し、イオン交換容量が1.05m当量/gのポリマーを得た。
【0122】
含フッ素重合体A−2として、前記一般式(1)で表わされる単量体(X1=F、X2=F)と前記一般式(2)で表わされる単量体(a=1、b=2、Y=CF3)とをモル比5.7:1で共重合し、イオン交換容量が0.99m当量/gのポリマーを得た。
【0123】
含フッ素重合体層Bを形成する含フッ素重合体Bとして、前記一般式(1)で表わされる単量体(X1=F、X2=F)と前記一般式(3)で表わされる単量体(c=1、d=2、Y=CF3、R=CH3)とをモル比8.5:1で共重合し、イオン交換容量が0.80m当量/gのポリマーを得た。
【0124】
得られたフッ素重合体A−2とフッ素重合体Bを、2台の押し出し機、2層用の共押し出し用Tダイ、及び引き取り機を備えた装置により、共押しを行い、厚み93μmの2層フィルム(a5)を得た。該フィルムの断面を光学顕微鏡で観察した結果、層A−2の厚みが80μm、層Bの厚みが13μmであった。また、単層Tダイにて厚み20μmの層A−1の単層フィルム(b5)を得た。
【0125】
内部に加熱源及び真空源を有し、表面に多数の微細孔を有するドラム上に、透気性のある耐熱離型紙、単層フィルム(b5)、強化芯材、2層フィルム(a5)を順番に積層し、230℃の温度及び−650mmHgの減圧下で各材料間の空気を排除しながら一体化し、複合膜を得た。強化芯材としては、実施例1と同様のものを用いた。
【0126】
この複合膜をDMSO30質量%、4.0規定(N)のKOHを含む水溶液中で80℃の温度で0.5時間加水分解し、その後、50℃の条件下、0.6規定(N)NaOH溶液を用いて1時間塩交換処理を行った。
【0127】
水とエタノールの50/50質量部の混合溶液に、イオン交換容量が1.0m当量/gのCF2=CF2とCF2=CFOCF2CF(CF3)O(CF23SO2Fの共重合体を加水分解してなるスルホン酸基を有するフッ素系重合体を20質量%溶解させた。その溶液に一次粒子径1μmの酸化ジルコニウム40質量%加えボールミルにて均一に分散させた懸濁液を得た。この懸濁液を前記加水分解及び塩交換処理後のイオン交換膜の両面にスプレー法により塗布し乾燥させる事により、コーティング層を形成させた。
【0128】
上記のようにして得られたイオン交換膜について、電解を行った。電解は含フッ素重合体層Aが陽極側に向けて配置された前述の電解槽で、6kA/m2の電流密度で、温度を85℃に設定して7日間行った。測定した項目は、電解電圧、電流効率、生成する苛性ソーダ中の塩化ナトリウム量であり、それぞれ、電解開始後7日目の測定値で電解性能を評価した。この時、(電解後の層Bのイオンクラスター径)/(電解前の層Bのイオンクラスター径)の値は0.98であった。電流効率は実施例1と同様の方法により測定した。
【0129】
[比較例2]
含フッ素重合体A−1として、前記一般式(1)で表わされる単量体(X1=F、X2=F)と前記一般式(2)で表わされる単量体(a=1、b=2、Y=CF3)とをモル比5:1で共重合し、イオン交換容量が1.05m当量/gのポリマーを得た。
【0130】
含フッ素重合体A−2として、前記一般式(1)で表わされる単量体(X1=F、X2=F)と前記一般式(2)で表わされる単量体(a=1、b=2、Y=CF3)とをモル比5.7:1で共重合し、イオン交換容量が0.99m当量/gのポリマーを得た。
【0131】
含フッ素重合体層Bを形成する含フッ素重合体Bとして、前記一般式(1)で表わされる単量体(X1=F、X2=F)と前記一般式(3)で表わされる単量体(c=1、d=2、Y=CF3、R=CH3)とをモル比7.5:1で共重合し、イオン交換容量が0.89m当量/gのポリマーを得た。
【0132】
得られたフッ素重合体A−2とフッ素重合体Bを、2台の押し出し機、2層用の共押し出し用Tダイ、及び引き取り機を備えた装置により、共押しを行い、厚み93μmの2層フィルム(a6)を得た。該フィルムの断面を光学顕微鏡で観察した結果、層A−2の厚みが80μm、層Bの厚みが13μmであった。また、単層Tダイにて厚み20μmの層A−1の単層フィルム(b6)を得た。
【0133】
内部に加熱源及び真空源を有し、表面に多数の微細孔を有するドラム上に、透気性のある耐熱離型紙、単層フィルム(b6)、強化芯材、2層フィルム(a6)を順番に積層し、230℃の温度及び−650mmHgの減圧下で各材料間の空気を排除しながら一体化し、複合膜を得た。強化芯材としては、実施例1と同様のものを用いた。
【0134】
この複合膜をDMSO30質量%、4.0規定(N)のKOHを含む水溶液中で50℃の温度で0.5時間加水分解し、その後、95℃の条件下、0.6規定(N)NaOH溶液を用いて5時間塩交換処理を行った。
【0135】
水とエタノールの50/50質量部の混合溶液に、イオン交換容量が1.0m当量/gのCF2=CF2とCF2=CFOCF2CF(CF3)O(CF23SO2Fの共重合体を加水分解してなるスルホン酸基を有するフッ素系重合体を20質量%溶解させた。その溶液に一次粒子径1μmの酸化ジルコニウム40質量%加え、ボールミルにて均一に分散させた懸濁液を得た。この懸濁液を前記加水分解及び塩交換処理後のイオン交換膜の両面にスプレー法により塗布し乾燥させる事により、コーティング層を形成させた。
【0136】
上記のようにして得られたイオン交換膜について、電解を行った。(電解後の層Bのイオンクラスター径)/(電解前の層Bのイオンクラスター径)の値は0.77であった。測定結果を表1に示す。
【0137】
[比較例3]
含フッ素重合体A−1として、前記一般式(1)で表される単量体(X1=F、X2=F)と前記一般式(2)で表される単量体(a=1、b=2、Y=CF3)とをモル比5:1で共重合し、イオン交換容量が1.05m当量/gのポリマーを得た。
【0138】
含フッ素重合体A−2として、前記一般式(1)で表される単量体(X1=F、X2=F)と前記一般式(2)で表される単量体(a=1、b=2、Y=CF3)とをモル比5.7:1で共重合し、イオン交換容量が0.98m当量/gのポリマーを得た。
【0139】
層Bを形成する含フッ素重合体Bとして、前記一般式(1)で表わされる単量体(X1=F、X2=F)と前記一般式(3)で表わされる単量体(c=1、d=2、Y=CF3、R=CH3)とをモル比8.5:1で共重合し、イオン交換容量が0.80m当量/gのポリマーを得た。
【0140】
フッ素重合体A−2とフッ素重合体Bをし、2台の押し出し機、2層用の共押し出し用Tダイ、及び引き取り機を備えた装置により、共押しを行い、厚み93μmの2層フィルム(a5)を得た。該フィルムの断面を光学顕微鏡で観察した結果、含フッ素重合体層A−2の厚みが75μm、層Bの厚みが15μmであった。また、単層Tダイにて厚み20μmの層A−1の単層フィルム(b5)を得た。
【0141】
内部に加熱源及び真空源を有し、表面に多数の微細孔を有するドラム上に、透気性のある耐熱離型紙、単層フィルム(b5)、強化芯材、2層フィルム(a5)を順番に積層し、230℃の温度及び−650mmHgの減圧下で各材料間の空気を排除しながら一体化し、複合膜を得た。強化芯材は、実施例1と同様のものを用いた。
【0142】
この複合膜をDMSO30質量%、4.0規定(N)のKOHを含む水溶液中で75℃の温度で0.75時間加水分解し、その後、85℃の条件下、0.6規定(N)NaOH溶液を用いて塩交換処理を行った。
【0143】
水とエタノールの50/50質量部の混合溶液に、イオン交換容量が1.0m当量/gのCF2=CF2とCF2=CFOCF2CF(CF3)O(CF23SO2Fの共重合体を加水分解してなるスルホン酸基を有するフッ素系重合体を20質量%溶解させた。その溶液に平均一次粒子径1μmの酸化ジルコニウム40質量%加え、ボールミルにて均一に分散させた懸濁液を得た。この懸濁液を前記加水分解及び塩交換処理後のイオン交換膜の両面にスプレー法により塗布し乾燥させる事により、コーティング層を形成させた。
【0144】
上記のようにして得られたイオン交換膜について、電解を行った。(電解後の層Bのイオンクラスター径)/(電解前の層Bのイオンクラスター径)の値は0.98であった。測定結果を表1に示す。
【0145】
[比較例4]
含フッ素重合体A−1として、前記一般式(1)で表される単量体(X1=F、X2=F)と前記一般式(2)で表される単量体(a=1、b=2、Y=CF3)とをモル比5:1で共重合し、イオン交換容量が1.05m当量/gのポリマーを得た。
【0146】
含フッ素重合体A−2として、前記一般式(1)で表される単量体(X1=F、X2=F)と前記一般式(2)で表される単量体(a=1、b=2、Y=CF3)とをモル比5.7:1で共重合し、イオン交換容量が0.98m当量/gのポリマーを得た。
【0147】
層Bを形成する含フッ素重合体Bとして、前記一般式(1)で表わされる単量体(X1=F、X2=F)と前記一般式(3)で表わされる単量体(c=1、d=2、Y=CF3、R=CH3)とをモル比8.5:1で共重合し、イオン交換容量が0.80m当量/gのポリマーを得た。
【0148】
フッ素重合体A−2とフッ素重合体Bをし、2台の押し出し機、2層用の共押し出し用Tダイ、及び引き取り機を備えた装置により、共押しを行い、厚み93μmの2層フィルム(a5)を得た。該フィルムの断面を光学顕微鏡で観察した結果、含フッ素重合体層A−2の厚みが75μm、層Bの厚みが15μmであった。また、単層Tダイにて厚み20μmの層A−1の単層フィルム(b5)を得た。
【0149】
内部に加熱源及び真空源を有し、表面に多数の微細孔を有するドラム上に、透気性のある耐熱離型紙、単層フィルム(b5)、強化芯材、2層フィルム(a5)を順番に積層し、230℃の温度及び−650mmHgの減圧下で各材料間の空気を排除しながら一体化し、複合膜を得た。強化芯材は、実施例1と同様のものを用いた。
【0150】
この複合膜をDMSO30質量%、4.0規定(N)のKOHを含む水溶液中で90℃の温度で0.75時間加水分解し、その後、85℃の条件下、0.6規定(N)NaOH溶液を用いて塩交換処理を行った。
【0151】
水とエタノールの50/50質量部の混合溶液に、イオン交換容量が1.0m当量/gのCF2=CF2とCF2=CFOCF2CF(CF3)O(CF23SO2Fの共重合体を加水分解してなるスルホン酸基を有するフッ素系重合体を20質量%溶解させた。その溶液に平均一次粒子径1μmの酸化ジルコニウム40質量%加え、ボールミルにて均一に分散させた懸濁液を得た。この懸濁液を前記加水分解及び塩交換処理後のイオン交換膜の両面にスプレー法により塗布し乾燥させる事により、コーティング層を形成させた。
【0152】
上記のようにして得られたイオン交換膜について、電解を行った。(電解後の層Bのイオンクラスター径)/(電解前の層Bのイオンクラスター径)の値は0.97であった。測定結果を表1に示す。
【0153】
[比較例5]
含フッ素重合体A−1として、前記一般式(1)で表される単量体(X1=F、X2=F)と前記一般式(2)で表される単量体(a=1、b=2、Y=CF3)とをモル比5:1で共重合し、イオン交換容量が1.05m当量/gのポリマーを得た。
【0154】
含フッ素重合体A−2として、前記一般式(1)で表される単量体(X1=F、X2=F)と前記一般式(2)で表される単量体(a=1、b=2、Y=CF3)とをモル比5.7:1で共重合し、イオン交換容量が0.99m当量/gのポリマーを得た。
【0155】
層Bを形成する含フッ素重合体Bとして、前記一般式(1)で表わされる単量体(X1=F、X2=F)と前記一般式(3)で表わされる単量体(c=1、d=2、Y=CF3、R=CH3)とをモル比7.5:1で共重合し、イオン交換容量が0.89m当量/gのポリマーを得た。
【0156】
フッ素重合体A−2とフッ素重合体Bをし、2台の押し出し機、2層用の共押し出し用Tダイ、及び引き取り機を備えた装置により、共押しを行い、厚み105μmの2層フィルム(a5)を得た。該フィルムの断面を光学顕微鏡で観察した結果、含フッ素重合体層A−2の厚みが80μm、層Bの厚みが25μmであった。また、単層Tダイにて厚み20μmの層A−1の単層フィルム(b5)を得た。
【0157】
内部に加熱源及び真空源を有し、表面に多数の微細孔を有するドラム上に、透気性のある耐熱離型紙、単層フィルム(b5)、強化芯材、2層フィルム(a5)を順番に積層し、230℃の温度及び−650mmHgの減圧下で各材料間の空気を排除しながら一体化し、複合膜を得た。強化芯材は、実施例1と同様のものを用いた。
【0158】
この複合膜をDMSO30質量%、4.0規定(N)のKOHを含む水溶液中で80℃の温度で0.5時間加水分解し、その後、50℃の条件下、0.6規定(N)NaOH溶液を用いて塩交換処理を行った。
【0159】
水とエタノールの50/50質量部の混合溶液に、イオン交換容量が1.0m当量/gのCF2=CF2とCF2=CFOCF2CF(CF3)O(CF23SO2Fの共重合体を加水分解してなるスルホン酸基を有するフッ素系重合体を20質量%溶解させた。その溶液に平均一次粒子径1μmの酸化ジルコニウム40質量%加え、ボールミルにて均一に分散させた懸濁液を得た。この懸濁液を前記加水分解及び塩交換処理後のイオン交換膜の両面にスプレー法により塗布し乾燥させる事により、コーティング層を形成させた。
【0160】
上記のようにして得られたイオン交換膜について、電解を行った。(電解後の層Bのイオンクラスター径)/(電解前の層Bのイオンクラスター径)の値は0.97であった。測定結果を表1に示す。
【0161】
上記実施例及び比較例のイオン交換膜の組成及び特性等を表1に示す。
【0162】
【表1】
【0163】
実施例1〜4のイオン交換膜は、電解性能が良好であり、かつ引張強度及び引張伸度の強度評価の結果も電解に十分耐え得る値を示した。
一方、比較例1のイオン交換膜は、強度評価の結果は良好であったものの電解電圧が実施例1〜4に比べて高かった。
比較例2のイオン交換膜は、強度評価の結果は良好であったものの電解電圧が大きく上昇した。
比較例3〜4のイオン交換膜は、強度評価の結果は良好であったものの電解電圧が実施例1〜4に比べて高かった。
比較例5のイオン交換膜は、強度評価の結果は良好であったものの電解電圧が実施例1〜4に比べて高かった。
【0164】
本出願は、2015年5月18日出願の日本特許出願(特願2015−101292号)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
【産業上の利用可能性】
【0165】
本発明のイオン交換膜は、塩化アルカリ電気分解の分野で、好適に利用できる。
【符号の説明】
【0166】
1 イオン交換膜
2a 連通孔
2b 連通孔
3 強化芯材
4 層A
5 層B
6 コーティング層
7 コーティング層
8 層Aの陽極側表面に面している箇所
α 電解層の陽極側
β 電解層の陰極側
11 陽極
12 陰極
13 電解槽
図1
図2