(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には共通の符号を付し、適宜説明を省略する。なお、文中の数字の間にある「〜」は特に断りがなければ、以上から以下を表す。
【0015】
図1は、本実施形態の金属/樹脂複合構造体106の構造の一例を示す外観図である。
本実施形態の金属/樹脂複合構造体106は、芳香族ポリアミド樹脂(a)を主成分として含む樹脂組成物(A)、または該樹脂組成物(A)100質量部に対して無機フィラー(F)を0質量部超過100質量部以下含んでなるフィラー含有樹脂組成物(B)(以下の説明では、樹脂組成物(A)および(B)を総称して樹脂部材105、ポリアミド系樹脂組成物あるいはポリアミド系樹脂部材と呼ぶ場合がある)が、微細凹凸表面を有する金属部材(M)103の上記微細凹凸表面に固着した接合面を有する複合構造体である。そして、上記樹脂組成物(A)または(B)が特定要件を満たす。
以下、樹脂組成物(A)およびフィラー含有樹脂組成物(B)、微細凹凸表面を有する金属部材(M)、並びに金属/樹脂複合構造体の製造方法の順に説明する。
【0016】
1.樹脂組成物(A)およびフィラー含有樹脂組成物(B)
樹脂組成物(A)は芳香族ポリアミド樹脂(a)を主成分として含む。なお、本実施形態において「主成分」とは50質量%を超える構成成分として定義される。樹脂組成物(A)に占める芳香族ポリアミド樹脂(a)は好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上である。樹脂組成物(A)に占める芳香族ポリアミド樹脂(a)の上限は特に限定されないが、例えば、100質量%以下である。
また、本実施形態に係る芳香族ポリアミド樹脂(a)とは、芳香族系モノマー成分を少なくとも1成分含む芳香族ポリアミド樹脂として定義される。例えば、芳香族ジアミンと脂肪族ジカルボン酸、または脂肪族ジアミンと芳香族ジカルボン酸を原料とし、これらの重縮合によって得られる芳香族ポリアミド樹脂である。
【0017】
本実施形態に係る芳香族ポリアミド樹脂(a)としては、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド(ポリアミド6T)、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド(ポリアミド6I)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(ポリアミド66/6T)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリカプロアミドコポリマー(ポリアミド6T/6)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ポリアミド66/6I)、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド/ポリカプロアミドコポリマー(ポリアミド6I/6)、ポリドデカミド/ポリヘキサメチレンテレフタラミドコポリマー(ポリアミド12/6T)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ポリアミド66/6T/6I)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリカプロアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ポリアミド66/6/6I)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ポリアミド6T/6I)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリ(2−メチルペンタメチレンテレフタルアミド)コポリマー(ポリアミド6T/M5T)、ポリノナンメチレンテレフタルアミド(ポリアミド9T)、ポリノナンメチレンテレフタルアミド/ポリオクタンメチレンテレフタルアミドコポリマー(ポリアミド9T/8T)、ポリキシリレンアジパミド(ポリアミドMXD6)、およびこれらの混合物ないし共重合樹脂等が挙げられる。この中でもポリアミド66/6Tおよびポリアミド6T/6Iから選ばれる1種以上の芳香族ポリアミド樹脂を用いると、後述する熱特性要件(要件1および要件2)を満たことが容易となるので好ましい。なお、上記式中、Tはテレフタル酸、Iはイソフタル酸を表す。
【0018】
樹脂組成物(A)は、耐衝撃性を改良する観点から、芳香族ポリアミド樹脂(a)以外の成分として、変性ポリオレフィン樹脂(b)を含むのが好ましい。樹脂組成物(A)に占める変性ポリオレフィン樹脂(b)は好ましくは40質量%未満、より好ましくは30質量%未満である。
また、樹脂組成物(A)が、耐衝撃性を改良する観点から、樹脂組成物(A)に含まれる芳香族ポリアミド樹脂(a)と変性ポリオレフィン樹脂(b)との合計を100質量部としたとき、芳香族ポリアミド樹脂(a)を70質量部以上100質量部以下と変性ポリオレフィン樹脂(b)を0質量部以上30質量部以下含むことが好ましく、芳香族ポリアミド樹脂(a)を70質量部以上99質量部以下と変性ポリオレフィン樹脂(b)を1質量部以上30質量部以下含むことがより好ましく、芳香族ポリアミド樹脂(a)を70質量部以上97質量部以下と変性ポリオレフィン樹脂(b)を3質量部以上30質量部以下含むことがさらに好ましい。
変性ポリオレフィン樹脂(b)としては、ポリエチレン、エチレン・α−オレフィン系共重合体、エチレン・α,β−不飽和カルボン酸エステル系共重合体、エチレン・酢酸ビニル部分鹸化物系共重合体等のポリオレフィン樹脂に対して、不飽和カルボン酸またはその誘導体をグラフト重合させた重合体等を挙げることができる。
【0019】
エチレン・α−オレフィン系共重合体とは、エチレンと炭素数3以上のα−オレフィンを共重合した重合体であり、炭素数3以上のα−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−デセン、4−メチルブテン−1,4−メチルペンテン−1等が挙げられ、好ましくはプロピレン、1−ブテンが挙げられる。
【0020】
エチレン・α,β−不飽和カルボン酸エステル系共重合体とは、エチレンとα,β−不飽和カルボン酸エステル単量体を共重合した重合体であり、α,β−不飽和カルボン酸エステル単量体としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル等のアクリル酸エステル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル等のメタクリル酸エステル等が挙げられる。これらの中では、安価で入手でき、かつ熱安定性に優れている点から、エチレン・アクリル酸エチル共重合体やエチレン・メタクリル酸メチル共重合体が好ましい。
【0021】
エチレン・酢酸ビニル部分鹸化物系共重合体とは、エチレン・酢酸ビニル共重合体を部分鹸化した化合物である。エチレン・酢酸ビニル共重合体を公知の鹸化法、例えば、メタノール、エタノール等の低沸点アルコールと水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメチラート等のアルカリからなる系で処理する方法で鹸化することで、エチレン・酢酸ビニル部分鹸化物系共重合体を得ることができる。
【0022】
グラフト重合させる不飽和カルボン酸またはその誘導体としては、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、ナジック酸等の不飽和カルボン酸またはその誘導体、例えば酸ハライド、アミド、イミド、無水物、エステル等が挙げられる。誘導体の具体例としては、塩化マレニル、マレイミド、無水マレイン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジメチル等が挙げられる。これらの中では、不飽和ジカルボン酸またはその無水物が好ましく、特にマレイン酸、イタコン酸、ナジック酸またはこれらの酸無水物が好ましく、無水マレイン酸が入手容易性、経済性の視点から特に好ましく用いられる。
変性ポリオレフィン樹脂(b)の酸変性量は特に制限されないが、接着性向上の観点から、ポリオレフィン樹脂100質量部に対して0.01〜5質量部であり、より好ましくは0.1〜3質量部である。
また、変性ポリオレフィン樹脂(b)は、公知の製造方法、例えば、未変性ポリオレフィン樹脂と不飽和カルボン酸類とを溶融状態で反応させる方法、溶液状態で反応させる方法、スラリー状態で反応させる方法、気相状態で反応させる方法等により製造することができる。
【0023】
本実施形態に係るフィラー含有樹脂組成物(B)は、上記樹脂組成物(A)100質量部に対して無機フィラー(F)を0質量部超過100質量部以下含んでなり、好ましくは1質量部以上70質量部以下含んでなる。無機フィラー(F)は、金属部材(M)103と樹脂部材105の線膨張率差の調整、樹脂部材105の機械的強度、あるいは接着強度に及ぼすヒートサイクル特性の向上等を目的として添加される。無機フィラー(F)としては繊維状充填剤、粒状充填剤、板状充填剤等の充填剤を挙げることができる。該繊維状充填剤としては、例えばガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維等が挙げられる。ガラス繊維の具体的な例示としては、平均繊維径が6〜14μmのチョップドストランド等が挙げられる。また、該板状、粒状充填剤としては、例えば炭酸カルシウム、マイカ、ガラスフレーク、ガラスバルーン、炭酸マグネシウム、シリカ、タルク、粘土、ガラス繊維、炭素繊維やアラミド繊維の粉砕物等が挙げられる。
【0024】
本実施形態に係る樹脂組成物(A)またはフィラー含有樹脂組成物(B)は、次の要件1と要件2を同時に満たすことを特徴としている。
〔要件1〕後述する示差走査熱量計(DSC)を用いて観測される融点(Tm)が230℃以上、好ましくは240℃以上、より好ましくは250℃以上である。このような融点を有する樹脂組成物(A)または(B)を用いることによって高耐熱化の要求が強い分野、例えば、自動車エンジンルーム内の部品、駆動系部品、あるいは表面実装(SMT)ハンダの鉛フリー化に対応可能な高融点ハンダ周辺の部材への適用が可能となる。
〔要件2〕後述するDSCを用いて観測される融解エンタルピーΔHf(J/g)と、示差走査熱量計(DSC)において観測される結晶化温度(Tc)より15℃高い温度、すなわち、Tc+15℃での等温結晶化における半結晶化時間(τ
1/2)が、通常は下式(1)の関係を満たし、好ましくは下式(2)の関係を満たし、特に好ましくは下式(3)の関係を満たす。このような範囲にすることで、金属部材(M)103の表面と該表面上に固着したポリアミド系樹脂組成物の接合面強度が飛躍的に向上することを本発明者らは見出したのである。なお式(1)〜式(3)において、rは金属部材(M)103に固着する固着体が樹脂組成物(A)である場合は1
00であり、固着体がフィラー含有樹脂組成物(B)である場合は、該組成物(B)中に占める樹脂組成物(A)の質量%を示す。
式(1)〜式(3)において、分母である(100×ΔH/r)は、通常15J/g以上100J/g未満、好ましくは20J/g以上80J/g以下、より好ましくは25J/g以上70J/g以下である。本実施形態の金属/樹脂複合構造体106が高い接合力を示すためには、ポリアミド系樹脂組成物側の結晶化速度の尺度である半結晶化時間(τ
1/2)のみならず、融解エンタルピーも適切な値を選定する必要があることを示している。なお、上記融解エンタルピーとは、ポリアミド系樹脂組成物全体についての測定値(ΔH)を、ニート樹脂ベースに換算された値、すなわち、ポリアミド系樹脂組成物が無機フィラーを含む場合は無機フィラーを除いた純樹脂ベースの融解エンタルピーのことである(以下の説明では、「樹脂換算融解エンタルピー」と呼ぶ場合がある)。半結晶化時間(τ
1/2)を、樹脂換算融解エンタルピーで除した値は、いわば単位熱量相当の結晶化を進めるための時間の尺度を示し、この値によって接合強度が支配されるということを見出した本発明の意義は大きい。
本発明者らの考えによれば、接合強度を生み出す源泉は金属表面に形成された凹凸状の微細孔に樹脂が侵入することによって発現する強固なアンカー効果である。したがって、成形時の樹脂流動性を保つことがキーポイントになる。流動中の樹脂は、成形中、金型内において冷却され、固化する。つまり、樹脂が固化する前に圧力をかけ、金属表面の凹凸に侵入できる時間を稼ぐことが重要であり、逆に言えば固化を遅くすることで、本侵入時間を稼ぐことができ強固なアンカー効果を発現できる。
ポリアミド系樹脂等の結晶性樹脂では、金型内の冷却過程において、固化速度は樹脂の結晶化に支配される。結晶化が起こりやすい樹脂は固化も早く、結晶化を起こりにくくすることが、固化を遅らせ、金属微細孔への樹脂侵入を促進する手段である。結晶化の起こりにくさは、結晶化度と結晶化速度で表すことができ、ΔHfが結晶化度、τ
1/2が結晶化速度に対応する。結晶化を起こりにくくするためには、ΔHfを小さくし、τ
1/2を大きくすることが重要である。
本発明者らは半結晶化時間(τ
1/2)を、樹脂換算融解エンタルピーで除した値が、式(1)を満たすとき、結晶化が起こりにくく、固化が遅くなることで、樹脂が金属表面の凹凸状の微細孔に十分に侵入でき、強固な接合強度を発現することを見出した。この値が式(1)の下限値未満であると、樹脂が侵入する前に樹脂が結晶化・固化し、樹脂侵入が困難である。一方で、この値が式(1)の上限値より大きくなると、金属凹凸への樹脂侵入は可能であるが、金型内での結晶化・固化が遅く不十分となり、成形品を取り出せない場合があるので好ましくない。
【0026】
2.微細凹凸表面を有する金属部材(M)
以下、本実施形態に係る金属部材(M)103について説明する。
金属部材(M)103を構成する金属材料は特に限定されないが、例えば、鉄、高張力鋼、ステンレス、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金、銅、銅合金、チタンおよびチタン合金等を挙げることができる。これらは単独で使用してもよいし、二種以上組み合わせて使用してもよい。
これらの中でも、軽量かつ高強度の点から、アルミニウム(アルミニウム単体)およびアルミニウム合金が好ましく、アルミニウム合金がより好ましい。また、高強度の観点から、鉄および高張力鋼が好ましい。
アルミニウム合金としては、JIS H4000に規定された合金番号1050、1100、2014、2024、3003、5052、6061、6063、7075等が好ましく用いられる。
【0027】
金属部材(M)103の形状は、樹脂部材105と接合できる形状であれば特に限定されず、例えば、平板状、曲板状、棒状、筒状、塊状等とすることができる。また、これらの組み合わせからなる構造体であってもよい。
また、樹脂部材105と接合する接合部表面104の形状は、特に限定されないが、平面、曲面等が挙げられる。
【0028】
金属部材(M)103は、金属材料を切断、プレス等による塑性加工、打ち抜き加工、切削、研磨、放電加工等の除肉加工によって上述した所定の形状に加工された後に、後述する粗化処理がなされたものが好ましい。要するに、種々の加工法により、必要な形状に加工されたものを用いることが好ましい。
必要な形状に加工された金属部材(M)103は、長期間の自然放置で表面に酸化皮膜である錆の存在が明らかなものは研磨、化学処理等でこれを取り除くことが好ましい。
【0029】
本実施形態に係る金属部材(M)103は、少なくとも樹脂部材105と接する部位(接合部表面104とも呼ぶ。)に、間隔周期が5nm以上500μm以下である凸部が林立した微細凹凸表面が形成されていることが好ましい。
これにより、本実施形態に係るポリアミド系の樹脂部材105が、金属部材(M)103表面の上記微細凹凸に入り込むため、金属部材(M)103と樹脂部材105との接合強度を向上させることができる。凸部の間隔周期が上記下限値以上であると、上記微細凹凸表面の凹部に樹脂部材105が十分に進入することができ、その結果、金属部材(M)103と樹脂部材105との接合強度を向上させることができる。また、凸部の間隔周期が上記上限値以下であると、得られる金属/樹脂複合構造体106の金属―樹脂界面に隙間が生じるのを抑制できる。その結果、金属―樹脂界面の隙間から水分等の不純物が浸入することを抑制できるため、金属/樹脂複合構造体106を高温、高湿下で用いた際、強度が低下することを抑制できる。
【0030】
上記微細凹凸表面の間隔周期は凸部から隣接する凸部までの距離の平均値であり、電子顕微鏡またはレーザー顕微鏡で撮影した写真、あるいは表面粗さ測定装置から求めることができる。
具体的には、間隔周期が500nm未満の超微細な凹凸構造については電子顕微鏡により測定することが可能であり、間隔周期が500nmを超える微細凹凸構造についてはレーザー顕微鏡または表面粗さ測定装置を用いることによって求めるがこの限りではない。なお、電子顕微鏡またはレーザー顕微鏡で撮影した写真から間隔周期を求める場合は、具体的には、金属部材(M)103の表面110を撮影する。その写真から、任意の凸部を50個選択し、それらの凸部から隣接する凸部までの距離をそれぞれ測定する。凸部から隣接する凸部までの距離の全てを積算して50で除したものを間隔周期とする。
【0031】
本実施形態においては、金属部材(M)103の微細凹凸表面には、間隔周期が500nm未満の超微細凹凸構造が観測される表面処理金属部材(m1)、または金属部材(M)103の微細凹凸表面に間隔周期が500nm未満の超微細凹凸構造が観測されず、かつ、粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)が0.5μm以上500μm以下の凸部が林立した微細凹凸構造が形成されている表面処理金属部材(m2)を用いることが接合強度発現の点から好ましい。どちらを選択するかは、当業者が有する金属表面処理装置によって任意に決定されるが、接合強度の視点からは後者の表面処理金属部材(m2)が好んで用いられる。
【0032】
上記間隔周期を有する微細凹凸表面を形成する方法としては、特許第4020957号に開示されているようなレーザー加工を用いる方法、NaOH等の無機塩基水溶液および/またはHCl、HNO
3等の無機酸水溶液に金属部材を浸漬する方法、特許第4541153号に開示されているような陽極酸化法により金属部材を処理する方法、特開2001−348684号に開示されているような、無機酸、第二鉄イオン、第二銅イオンおよびマンガンイオンを含む水溶液によってエッチングする置換晶析法、国際公開第2009/31632号パンフレットに開示されているような、水和ヒドラジン、アンモニア、および水溶性アミン化合物から選ばれる1種以上の水溶液に金属部材を浸漬する方法(以下、NMT法と呼ぶ場合がある)等が挙げられる。これらの方法は、使用する金属部材(M)103の金属種類や、上記間隔周期の範囲内において形成する凹凸形状によって上記エッチング方法を任意に使い分けることが可能であるが、金属部材(M)103とポリアミド系の樹脂部材105との接合強度の視点から、本実施形態では、NMT法による表面処理金属部材(m1)または置換晶析法による表面処理金属部材(m2)が本実施形態の複合体の接合部の金属部材として好ましく、さらに置換晶析法による表面処理金属部材(m2)がより好ましい。
【0033】
以下、置換晶析法を用いた表面処理金属部材(m2)について説明する。
本実施形態に係る金属部材(M)103は、金属部材(M)103の表面110上の、平行関係にある任意の3直線部、および当該3直線部と直交する任意の3直線部からなる合計6直線部について、JIS B0601(対応国際規格:ISO4287)に準拠して測定される表面粗さが以下の要件(1)および(2)を同時に満たすことが好ましい。このような要件を満たす表面形状を有する金属部材(M)103は、上記した置換晶析法によって得られ、その詳細な方法については後述する。
(1)切断レベル20%、評価長さ4mmにおける粗さ曲線の負荷長さ率(Rmr)が30%以下である直線部を1直線部以上含む。
(2)すべての直線部の、評価長さ4mmにおける十点平均粗さ(Rz)が2μmを超える。
【0034】
図2は、金属部材(M)103の表面110上の、平行関係にある任意の3直線部、および当該3直線部と直交する任意の3直線部からなる合計6直線部を説明するための模式図である。
上記6直線部は、例えば、
図2に示すような6直線部B1〜B6を選択することができる。まず、基準線として、金属部材(M)103の接合部表面104の中心部Aを通る中心線B1を選択する。次いで、中心線B1と平行関係にある直線B2およびB3を選択する。次いで、中心線B1と直交する中心線B4を選択し、中心線B1と直交し、中心線B4と並行関係にある直線B5およびB6を選択する。ここで、各直線間の垂直距離D1〜D4は、例えば、2〜5mmである。
なお、通常、金属部材(M)103の表面110中の接合部表面104だけでなく、金属部材(M)103の表面110全体に対し、表面粗化処理が施されているため、例えば、
図3に示すように、金属部材(M)103の接合部表面104と同一面で、接合部表面104以外の箇所から6直線部を選択してもよい。
【0035】
上記要件(1)および(2)を同時に満たすと、接合強度により一層優れた金属/樹脂複合構造体106が得られる理由は必ずしも明らかではないが、金属部材(M)103の接合部表面104が、金属部材(M)103と樹脂部材105との間のアンカー効果が効果的に発現し、強く結合できる構造になっているためと考えられる。
本発明者らは、金属部材と、樹脂部材との接合強度を向上させるために、金属部材の表面の十点平均粗さ(Rz)を調整することを検討した。
しかし、金属部材の表面の十点平均粗さ(Rz)を単に調整するだけでは金属部材と樹脂部材との接合強度を十分に向上させることができないことが明らかとなった。
ここで、本発明者らは、負荷長さ率という尺度が金属部材表面の凹凸形状の鋭利性を表す指標として有効であると考えた。負荷長さ率が小さい場合は、金属部材表面の凹凸形状の鋭利性が大きいことを意味し、負荷長さ率が大きい場合は、金属部材表面の凹凸形状の鋭利性が小さいことを意味する。
そこで、本発明者らは、金属部材と、樹脂部材との接合強度を向上させるための設計指針として、金属部材表面の粗さ曲線の負荷長さ率という尺度に注目し、さらに鋭意検討を重ねた。その結果、金属部材表面の負荷長さ率を特定値以下に調整することにより、金属部材(M)103と樹脂部材105との間にアンカー効果がより効果的に発現し、その結果、接合強度により一層優れた金属/樹脂複合構造体106が実現できることを見出した。
【0036】
金属部材(M)103と樹脂部材105との接合強度をより一層向上させる観点から、金属部材(M)103の表面110上の、平行関係にある任意の3直線部、および当該3直線部と直交する任意の3直線部からなる合計6直線部について、JIS B0601(対応国際規格:ISO4287)に準拠して測定される表面粗さが以下の要件(1A)〜(1C)のうち1つ以上の要件をさらに満たすことが好ましく、要件(1C)を満たすことがとりわけ好ましい。
(1A)切断レベル20%、評価長さ4mmにおける粗さ曲線の負荷長さ率(Rmr)が30%以下である直線部を好ましくは2直線部以上、より好ましくは3直線部以上、最も好ましくは6直線部含む
(1B)切断レベル20%、評価長さ4mmにおける粗さ曲線の負荷長さ率(Rmr)が20%以下である直線部を好ましくは1直線部以上、より好ましくは2直線部以上、さらに好ましくは3直線部以上、最も好ましくは6直線部含む
(1C)切断レベル40%、評価長さ4mmにおける粗さ曲線の負荷長さ率(Rmr)が60%以下である直線部を好ましくは1直線部以上、より好ましくは2直線部以上、さらに好ましくは3直線部以上、最も好ましくは6直線部含む
【0037】
また、金属部材(M)103と樹脂部材105との接合強度をより一層向上させる観点から、金属部材(M)103の表面110上の、JIS B0601(対応国際規格:ISO4287)に準拠して測定される切断レベル20%、評価長さ4mmにおける粗さ曲線の負荷長さ率(Rmr)の平均値が好ましくは0.1%以上40%以下であり、より好ましくは0.5%以上30%以下であり、さらに好ましくは1%以上20%以下であり、最も好ましくは2%以上15%以下である。
なお、上記負荷長さ率(Rmr)の平均値は、前述の任意の6直線部の負荷長さ率(Rmr)を平均したものを採用することができる。
【0038】
本実施形態に係る金属部材(M)103の表面110の各負荷長さ率(Rmr)は、金属部材(M)103の表面に対する粗化処理の条件を適切に調節することにより制御することが可能である。
本実施形態においては、とくにエッチング剤の種類および濃度、粗化処理の温度および時間、エッチング処理のタイミング等が、上記各負荷長さ率(Rmr)を制御するための因子として挙げられる。
【0039】
金属部材(M)103と樹脂部材105との接合強度をより一層向上させる観点から、金属部材(M)103の表面110上の、平行関係にある任意の3直線部、および当該3直線部と直交する任意の3直線部からなる合計6直線部について、JIS B0601(対応国際規格:ISO4287)に準拠して測定される表面粗さが以下の要件(2A)をさらに満たすことが好ましい。
(2A)すべての直線部の、評価長さ4mmにおける十点平均粗さ(Rz)が好ましくは5μm超、より好ましくは10μm以上、さらに好ましくは15μm以上である
【0040】
金属部材(M)103と樹脂部材105との接合強度をより一層向上させる観点から、金属部材(M)103の表面110上の、十点平均粗さ(Rz)の平均値が好ましくは2μmを超えて50μm以下、より好ましくは5μmを超えて45μm以下、さらに好ましくは10μm以上40μm以下、特に好ましくは15μm以上30μm以下である。
なお、上記十点平均粗さ(Rz)の平均値は、前述の任意の6直線部の十点平均粗さ(Rz)を平均したものを採用することができる。
【0041】
金属部材(M)103と樹脂部材105との接合強度をより一層向上させる観点から、金属部材(M)103の表面110上の、平行関係にある任意の3直線部、および当該3直線部と直交する任意の3直線部からなる合計6直線部について、JIS B0601(対応国際規格:ISO4287)に準拠して測定される表面粗さが以下の要件(3)をさらに満たすことが好ましい。
(3)すべての直線部の、粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)が10μmを超え300μm未満であり、より好ましくは20μm以上200μm以下である。
【0042】
金属部材(M)103と樹脂部材105との接合強度をより一層向上させる観点から、金属部材(M)103の表面110上の、粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)の平均値が好ましくは10μmを超え300μm未満、より好ましくは20μm以上200μm以下である。
なお、上記粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)の平均値は、前述の任意の6直線部のRSmを平均したものを採用することができる。
【0043】
本実施形態に係る金属部材(M)103の表面110の十点平均粗さ(Rz)および粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)は、金属部材(M)103の表面110に対する粗化処理の条件を適切に調節することにより制御することが可能である。
本実施形態においては、とくに粗化処理の温度および時間、エッチング量等が、上記十点平均粗さ(Rz)および粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)を制御するための因子として挙げられる。
【0044】
次に、上記要件(1)〜(3)、(1A)〜(1C)、(2A)等を満たす金属部材(M)103の調製方法について説明する。
このような金属部材(M)103は、例えば、エッチング剤を用いて粗化処理することにより形成することができる。
ここで、エッチング剤を用いて金属部材の表面を粗化処理すること自体は従来技術においても行われてきた。しかし、本実施形態では、エッチング剤の種類および濃度、粗化処理の温度および時間、エッチング処理のタイミング、等の因子を高度に制御している。上記要件(1)〜(3)、(1A)〜(1C)、(2A)等を満たす金属部材(M)103を得るためには、これらの因子を高度に制御することが重要となる。
以下、上記要件(1)〜(3)、(1A)〜(1C)、(2A)等を満たす金属部材(M)103を得るための金属部材表面の粗化処理方法である置換晶析法の一例を示す。ただし、本実施形態に係る金属部材表面の粗化処理方法は、以下の例に限定されない。
【0045】
(1)前処理工程
まず、金属部材(M)103は、樹脂部材105との接合側の表面に酸化膜や水酸化物等からなる厚い被膜がないことが望ましい。このような厚い被膜を除去するため、次のエッチング剤で処理する工程の前に、サンドブラスト加工、ショットブラスト加工、研削加工、バレル加工等の機械研磨や、化学研磨により表面層を研磨してもよい。また、樹脂部材105との接合側の表面に機械油等の著しい汚染がある場合は、水酸化ナトリウム水溶液や水酸化カリウム水溶液等のアルカリ性水溶液による処理や、脱脂を行なうことが好ましい。
【0046】
(2)表面粗化処理工程
本実施形態において金属部材の表面粗化処理方法としては、後述する酸系エッチング剤による処理を特定のタイミングで行うことが好ましい。具体的には、該酸系エッチング剤による処理を表面粗化処理工程の最終段階で行うことが好ましい。
【0047】
上記酸系エッチング剤を用いて粗化処理する方法としては、浸漬、スプレー等による処理方法が挙げられる。処理温度は20〜40℃が好ましく、処理時間は5〜350秒程度が好ましく、金属部材表面をより均一に粗化できる観点から、20〜300秒がより好ましく、50〜300秒が特に好ましい。
【0048】
上記酸系エッチング剤を用いた粗化処理によって、金属部材(M)103の表面が凹凸形状に粗化される。上記酸系エッチング剤を用いた際の金属部材(M)103の深さ方向のエッチング量(溶解量)は、溶解した金属部材(M)103の質量、比重および表面積から算出した場合、0.1〜500μmであることが好ましく、5〜500μmであることがより好ましく、5〜100μmであることがさらに好ましい。エッチング量が上記下限値以上であれば、金属部材(M)103と樹脂部材105との間の接合強度をより向上させることができる。また、エッチング量が上記上限値以下であれば、処理コストの低減が可能となる。エッチング量は、処理温度や処理時間等により調整できる。
【0049】
なお、本実施形態では、上記酸系エッチング剤を用いて金属部材を粗化処理する際、金属部材表面の全面を粗化処理してもよく、樹脂部材105が接合される面だけを部分的に粗化処理してもよい。
【0050】
(3)後処理工程
本実施形態では、上記表面粗化処理工程の後、通常、水洗および乾燥を行うことが好ましい。水洗の方法については特に制限はないが浸漬または流水にて所定時間洗浄することが好ましい。
【0051】
さらに、後処理工程としては、上記酸系エッチング剤を用いた処理により生じたスマット等を除去するため、超音波洗浄を施すことが好ましい。超音波洗浄の条件は、生じたスマット等を除去することができる条件であれば特に限定されないが、用いる溶媒としては水が好ましく、また、処理時間としては、好ましくは1〜20分間である。
【0052】
(酸系エッチング剤)
本実施形態において、金属部材表面の粗化処理に用いられるエッチング剤としては、後述する特定の酸系エッチング剤が好ましい。上記特定のエッチング剤で処理することにより、金属部材の表面に、密着性向上に適した凹凸形状が形成され、そのアンカー効果により金属部材(M)103と樹脂部材105との間の接合強度がより一層向上するものと考えられる。
【0053】
以下、本実施形態で使用できる酸系エッチング剤の成分について説明する。
【0054】
上記酸系エッチング剤は、第二鉄イオンおよび第二銅イオンの少なくとも一方と、酸と、を含み、必要に応じて、マンガンイオン、各種添加剤等を含むことができる。
【0055】
・第二鉄イオン
上記第二鉄イオンは、金属部材を酸化する成分であり、第二鉄イオン源を配合することによって、酸系エッチング剤中に該第二鉄イオンを含有させることができる。上記第二鉄イオン源としては、硝酸第二鉄、硫酸第二鉄、塩化第二鉄等が挙げられる。上記第二鉄イオン源のうちでは、塩化第二鉄が溶解性に優れ、安価であるという点から好ましい。
【0056】
本実施形態において、酸系エッチング剤中の上記第二鉄イオンの含有量は、好ましくは0.01〜20質量%、より好ましくは0.1〜12質量%、さらに好ましくは0.5〜7質量%、さらにより好ましくは1〜6質量%、特に好ましくは1〜5質量%である。上記第二鉄イオンの含有量が上記下限値以上であれば、金属部材の粗化速度(溶解速度)の低下を防ぐことができる。一方、上記第二鉄イオンの含有量が上記上限値以下であれば、粗化速度を適正に維持することができるため、金属部材(M)103と樹脂部材105との間の接合強度向上により適した均一な粗化が可能になる。
【0057】
・第二銅イオン
上記第二銅イオンは金属部材を酸化する成分であり、第二銅イオン源を配合することによって、酸系エッチング剤中に該第二銅イオン含有させることができる。上記第二銅イオン源としては、硫酸第二銅、塩化第二銅、硝酸第二銅、水酸化第二銅等が挙げられる。上記第二銅イオン源のうちでは、硫酸第二銅、塩化第二銅が安価であるという点から好ましい。
【0058】
本実施形態において、酸系エッチング剤中の上記第二銅イオンの含有量は、0.001〜10質量%であることが好ましく、より好ましくは0.01〜7質量%、さらに好ましくは0.05〜1質量%、さらにより好ましくは0.1〜0.8質量%、さらにより好ましくは0.15〜0.7質量%、特に好ましくは0.15〜0.4質量%である。上記第二銅イオンの含有量が上記下限値以上であれば、金属部材の粗化速度(溶解速度)の低下を防ぐことができる。一方、上記第二銅イオンの含有量が上記上限値以下であれば、粗化速度を適正に維持することができるため、金属部材(M)103と樹脂部材105との間の接合強度向上により適した均一な粗化が可能になる。
【0059】
上記酸系エッチング剤は、第二鉄イオンおよび第二銅イオンの一方のみを含むものであってもよく、両方を含むものであってもよいが、第二鉄イオンおよび第二銅イオンの両方を含むことが好ましい。酸系エッチング剤が第二鉄イオンおよび第二銅イオンの両方を含むことで、金属部材(M)103と樹脂部材105との間の接合強度向上により適した良好な粗化形状が容易に得られる。
【0060】
上記酸系エッチング剤が、第二鉄イオンおよび第二銅イオンの両方を含む場合、第二鉄イオンおよび第二銅イオンのそれぞれの含有量が、上記範囲であることが好ましい。また、酸系エッチング剤中の第二鉄イオンと第二銅イオンの含有量の合計は、0.011〜20質量%であることが好ましく、より好ましくは0.1〜15質量%、さらに好ましくは0.5〜10質量%、特に好ましくは1〜5質量%である。
【0061】
・マンガンイオン
上記酸系エッチング剤には、金属部材表面をむらなく一様に粗化するために、マンガンイオンが含まれていてもよい。マンガンイオンは、マンガンイオン源を配合することによって、酸系エッチング剤中に該マンガンイオンを含有させることができる。上記マンガンイオン源としては、硫酸マンガン、塩化マンガン、酢酸マンガン、フッ化マンガン、硝酸マンガン等が挙げられる。上記マンガンイオン源のうちでは、硫酸マンガン、塩化マンガンが安価である等の点から好ましい。
【0062】
本実施形態において、酸系エッチング剤中の上記マンガンイオンの含有量は、0〜1質量%であることが好ましく、より好ましくは0〜0.5質量%である。
【0063】
・酸
上記酸は、第二鉄イオンおよび/または第二銅イオンにより酸化された金属を溶解させる成分である。上記酸としては、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、過塩素酸、スルファミン酸等の無機酸や、スルホン酸、カルボン酸等の有機酸が挙げられる。上記カルボン酸としては、ギ酸、酢酸、クエン酸、シュウ酸、リンゴ酸等が挙げられる。上記酸系エッチング剤には、これらの酸を一種または二種以上配合することができる。上記無機酸のうちでは、臭気がほとんどなく、安価である点から硫酸が好ましい。また、上記有機酸のうちでは、粗化形状の均一性の観点から、カルボン酸が好ましい。
【0064】
本実施形態において、酸系エッチング剤中の上記酸の含有量は、0.1〜50質量%であることが好ましく、0.5〜50質量%であることがより好ましく、1〜50質量%であることがさらに好ましく、1〜30質量%であることがさらにより好ましく、1〜25質量%であることがさらにより好ましく、2〜18質量%であることがさらにより好ましい。上記酸の含有量が上記下限値以上であれば、金属の粗化速度(溶解速度)の低下を防止できる。一方、上記酸の含有量が上記上限値以下であれば、液温が低下した際の金属塩の結晶析出を防止できるため、作業性を向上できる。
【0065】
・他の成分
本実施形態において使用できる酸系エッチング剤には、指紋等の表面汚染物による粗化のむらを防ぐために界面活性剤を添加してもよく、必要に応じて他の添加剤を添加してもよい。他の添加剤としては、深い凹凸を形成するために添加されるハロゲン化物イオン源、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム等を例示できる。あるいは、粗化処理速度を上げるために添加されるチオ硫酸イオン、チオ尿素等のチオ化合物や、より均一な粗化形状を得るために添加されるイミダゾール、トリアゾール、テトラゾール等のアゾール類や、粗化反応を制御するために添加されるpH調整剤等も例示できる。これら他の成分を添加する場合、その合計含有量は、酸系エッチング剤中に0.01〜10質量%程度であることが好ましい。
【0066】
本実施形態の酸系エッチング剤は、上記した各成分をイオン交換水等に溶解させることにより容易に調製することができる。
【0067】
3.金属/樹脂複合構造体の製造方法
つづいて、本実施形態に係る金属/樹脂複合構造体106の製造方法について説明する。
金属/樹脂複合構造体106の製造方法は、以下の(0)〜(ii)の工程を含む。
(0)金属部材(M)103の表面に間隔周期が5nm以上500μm以下である凸部を有する微細凹凸構造を形成させる工程
(i)表面の少なくとも一部に微細凹凸構造が形成された金属部材(M)103を、射出成形用の金型内にインサートするインサート工程
(ii)インサートされた金属部材(M)103の表面に、樹脂組成物(A)またはフィラー含有樹脂組成物(B)を射出し、当該射出されたポリアミド系樹脂組成物が上記微細凹凸構造の微細凹凸に侵入した後に固化することによって金属部材(M)103の表面に当該ポリアミド系樹脂組成物の成形品(ポリアミド系の樹脂部材105とも呼ぶ。)が接合される接合工程
以下、具体的に説明する。なお、(0)金属部材(M)103の表面に間隔周期が5nm以上500μm以下である凸部を有する微細凹凸構造を形成させる工程は前述したため、ここでは説明を省略する。
【0068】
まず、(i)金型を用意し、その金型を開いてそのキャビティ部(空間部)に表面の少なくとも一部に微細凹凸構造が形成された金属部材(M)103を設置する。(ii)その後、金型を閉じ、樹脂部材105の少なくとも一部に微細凹凸構造が形成された金属部材(M)103の表面と接するように、上記金型の上記キャビティ部に樹脂部材105を射出して固化し、金属部材(M)103と樹脂部材105とを接合する。その後、金型を開き離型することにより、金属/樹脂複合構造体106を得ることができる。上記金型としては、一般的に使用される射出成形用金型を用いることができ、高速ヒートサイクル成型(RHCM,ヒート&クール成形)用金型や、発泡成形用コアバック金型を用いてもよい。
【0069】
ここで、上記(ii)の工程において、樹脂部材105の射出開始から保圧完了までの間、上記金型の表面温度を、好ましくは樹脂部材105のガラス転移温度(以下、Tgとも呼ぶ。)以上、融点(Tm)未満に維持することが好ましい。
これにより、樹脂部材105が流動できる状態に保ちながら、ポリアミド系の樹脂部材105を高圧でより長い時間接触させることができる。
その結果、金属表面の凹凸に樹脂を流動・侵入させることができ、金属部材(M)103の表面と樹脂部材105との間の接着性を向上でき、その結果、接合強度により一層優れた金属/樹脂複合構造体106をより安定的に得ることができる。
【0070】
上記(ii)の工程において、上記射出開始から上記保圧完了までの時間は、好ましくは1秒以上60秒以下であり、より好ましくは10秒以上50秒以下である。
上記時間が上記下限値以上であると樹脂部材105を溶融させた状態に保ちながら、金属部材(M)103の上記微細凹凸表面に樹脂部材105を高圧でより長い時間接触させることができる。これにより、接合強度により一層優れた金属/樹脂複合構造体106をより安定的に得ることができる。
また、上記時間が上記上限値以下であると、金属/樹脂複合構造体106の成形サイクルを短縮できるため、金属/樹脂複合構造体106をより効率よく得ることができる。
【0071】
また、本実施形態に係る金属/樹脂複合構造体106の製造方法が適用される成形方法としては、射出成形法、トランスファー成形法、圧縮成形法、反応射出成形法、ブロー成形法、熱成形法、プレス成形法等が挙げられる。これらの中でも射出成形法が好ましい。
【0072】
射出成形法は他の成形法と組み合わせて用いてもよく、具体的には発泡成形(Mucell発泡成形、化学発泡成形)、コアバック成形、発泡コアバック成形、や高速ヒートサイクル成形(RHCM成形、ヒート&クール成形)と組み合わせることができる。
【0073】
本実施形態に係る金属/樹脂複合構造体106は、生産性が高く、形状制御の自由度も高いので、様々な用途に展開することが可能である。
さらに、本実施形態に係る金属/樹脂複合構造体106は、高い耐熱性、機械特性、耐摩擦性、摺動性、気密性、水密性が発現するので、これらの特性に応じた用途に好適に用いられる。
【0074】
例えば、車両用構造部品、車両搭載用品、電子機器の筐体、家電機器の筐体、構造用部品、機械部品、種々の自動車用部品、電子機器用部品、家具、台所用品等の家財向け用途、医療機器、建築資材の部品、その他の構造用部品や外装用部品等が挙げられる。
【0075】
より具体的には、樹脂だけでは強度が足りない部分を金属がサポートする様にデザインされた次のような部品である。車両関係では、インスツルメントパネル、コンソールボックス、ドアノブ、ドアトリム、シフトレバー、ペダル類、グローブボックス、バンパー、ボンネット、フェンダー、トランク、ドア、ルーフ、ピラー、座席シート、ステアリングホイール、ECUボックス、電装部品、エンジン周辺部品、駆動系・ギア周辺部品、吸気・排気系部品、冷却系部品等が挙げられる。また、建材や家具類として、ガラス窓枠、手すり、カーテンレール、たんす、引き出し、クローゼット、書棚、机、椅子等が挙げられる。また、精密電子部品類として、コネクタ、リレー、ギヤ等が挙げられる。また、輸送容器として、輸送コンテナ、スーツケース、トランク等が挙げられる。
【0076】
また、金属部材(M)103の高い熱伝導率と、樹脂部材105の断熱的性質とを組み合わせ、ヒートマネージメントを最適に設計する機器に使用される部品用途、例えば、各種家電にも用いることができる。具体的には、冷蔵庫、洗濯機、掃除機、電子レンジ、エアコン、照明機器、電気湯沸かし器、テレビ、時計、換気扇、プロジェクター、スピーカー等の家電製品類、パソコン、携帯電話、スマートフォン、デジタルカメラ、タブレット型PC、携帯音楽プレーヤー、携帯ゲーム機、充電器、電池等電子情報機器等が挙げられる。
【0077】
その他の用途として、玩具、スポーツ用具、靴、サンダル、鞄、フォークやナイフ、スプーン、皿等の食器類、ボールペンやシャープペン、ファイル、バインダー等の文具類、フライパンや鍋、やかん、フライ返し、おたま、穴杓子、泡だて器、トング等の調理器具、リチウムイオン2次電池用部品、ロボット等が挙げられる。
【0078】
また、本実施形態に係る金属/樹脂複合構造体106は、樹脂部材105にポリアミドを用いているため、機械特性および耐摩耗性に優れている。そのため、ギア、ブッシュ、およびドアチェッカー用アーム等の動的用途を目的とする摺動部品として非常に有用である。
【0079】
以上、本実施形態に係る金属/樹脂複合構造体106の用途について述べたが、これらは用途の例示であり、上記以外の様々な用途に用いることもできる。
【0080】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
以下、参考形態の例を付記する。
1.
芳香族ポリアミド樹脂(a)を主成分として含む樹脂組成物(A)、または該樹脂組成物(A)100質量部に対して無機フィラー(F)を0質量部超過100質量部以下含んでなるフィラー含有樹脂組成物(B)が、微細凹凸表面を有する金属部材(M)の前記微細凹凸表面に固着した接合面を有する複合構造体であって、
前記樹脂組成物(A)または(B)が以下の要件1と要件2を同時に満たすことを特徴とする金属/樹脂複合構造体。
〔要件1〕示差走査熱量計(DSC)を用いて観測される融点(Tm)が230℃以上である。
〔要件2〕DSCを用いて観測される融解エンタルピーΔHf(J/g)と、DSCにおいて観測される結晶化温度(Tc)より15℃高い温度(Tc+15℃)での等温結晶化における半結晶化時間(τ1/2(秒))が下記式(1)の関係を満たす。なお下記式(1)中、rは前記金属部材(M)に固着する固着体が前記樹脂組成物(A)である場合は100であり、前記固着体が前記フィラー含有樹脂組成物(B)である場合は、該フィラー含有樹脂組成物(B)中に占める前記樹脂組成物(A)の質量%を示す。
【数1】
2.
1.に記載の金属/樹脂複合構造体において、
前記式(1)の分母である、(100×ΔHf/r)の値が、15J/g以上100J/g未満であることを特徴とする金属/樹脂複合構造体。
3.
1.または2.に記載の金属/樹脂複合構造体において、
前記樹脂組成物(A)が、前記樹脂組成物(A)に含まれる前記芳香族ポリアミド樹脂(a)と変性ポリオレフィン樹脂(b)との合計を100質量部としたとき、前記芳香族ポリアミド樹脂(a)を70質量部以上100質量部以下と、前記変性ポリオレフィン樹脂(b)を0質量部以上30質量部以下含むことを特徴とする金属/樹脂複合構造体。
4.
1.乃至3.いずれか一つに記載の金属/樹脂複合構造体において、
前記金属部材(M)が、鉄、高張力鋼、ステンレス、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金、銅、銅合金、チタンおよびチタン合金から選択される一種または二種以上を含むことを特徴とする金属/樹脂複合構造体。
5.
1.乃至4.いずれか一つに記載の金属/樹脂複合構造体において、
前記金属部材(M)の前記微細凹凸表面には、間隔周期が5nm以上500μm以下である凸部が林立していることを特徴とする金属/樹脂複合構造体。
6.
5.に記載の金属/樹脂複合構造体において、
前記金属部材(M)の前記微細凹凸表面には、間隔周期が500nm未満の超微細凹凸構造が観測されることを特徴とする金属/樹脂複合構造体。
7.
5.に記載の金属/樹脂複合構造体において、
前記金属部材(M)の前記微細凹凸表面には、間隔周期が500nm未満の超微細凹凸構造が観測されず、かつ、粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)が0.5μm以上500μm以下の凸部が林立した微細凹凸構造が形成されていることを特徴とする金属/樹脂複合構造体。
8.
7.に記載の金属/樹脂複合構造体において、
前記金属部材(M)の前記微細凹凸表面上の、平行関係にある任意の3直線部、および当該3直線部と直交する任意の3直線部からなる合計6直線部について、JIS B0601(対応国際規格:ISO4287)に準拠して測定される表面粗さが以下の要件(1)および(2)を同時に満たす金属/樹脂複合構造体。
(1)切断レベル20%、評価長さ4mmにおける粗さ曲線の負荷長さ率(Rmr)が30%以下である直線部を1直線部以上含む。
(2)すべての直線部の、評価長さ4mmにおける十点平均粗さ(Rz)が2μmを超える。
9.
1.乃至8.いずれか一つに記載の金属/樹脂複合構造体を製造するための製造方法であって、
金属部材(M)の表面に間隔周期が5nm以上500μm以下である凸部を有する微細凹凸構造を形成させる工程と、
前記微細凹凸構造が形成された前記金属部材(M)を射出成形金型にインサートするインサート工程と、
インサートされた前記金属部材(M)の表面に、芳香族ポリアミド樹脂(a)を主成分として含む樹脂組成物(A)、または該樹脂組成物(A)100質量部に対して無機フィラー(F)を0質量部超過100質量部以下含んでなるフィラー含有樹脂組成物(B)を射出し、当該射出されたポリアミド系樹脂組成物が前記微細凹凸構造の微細凹凸に侵入した後に固化することによって前記金属部材(M)の表面に当該ポリアミド系樹脂組成物の成形品が接合される接合工程と、
を含むことを特徴とする金属/樹脂複合構造体の製造方法。
【実施例】
【0081】
以下、本実施形態を、実施例・比較例を参照して詳細に説明する。なお、本実施形態は、これらの実施例の記載に何ら限定されるものではない。
まず、実施例および比較例で用いた原材料を示す。
【0082】
<芳香族ポリミド(a)の調製>
〔芳香族ポリアミド樹脂(a−1)の調製〕
テレフタル酸1787g(10.8モル)、1,6−ヘキサンジアミン2893g(24.9モル)、アジピン酸1921g(13.1モル)、安息香酸36.6g(0.30モル)、次亜リン酸ナトリウム1水和物5.7gおよび蒸留水554gを内容量13.6Lのオートクレーブに入れ、窒素置換した。190℃から攪拌を開始し、3時間かけて内部温度を250℃まで昇温させた。このとき、オートクレーブの内圧を3.01MPaまで昇圧させた。このまま1時間反応を続けた後、オートクレーブ下部に設置したスプレーノズルから大気放出して低縮合物を抜き出した。
その後、低縮合物を室温まで冷却し、粉砕機で1.5mm以下の粒径まで粉砕し、110℃で24時間乾燥させた。次に、この低縮合物を棚段式固相重合装置にいれ、窒素置換後、約1時間30分かけて220℃まで昇温させた。その後、1時間反応させて、室温まで降温させた。その後、スクリュー径30mm、L/D=36の二軸押出機にて、バレル設定温度330℃、スクリュー回転数200rpm、6kg/hの樹脂供給速度で溶融重合して、芳香族ポリアミド樹脂(a−1)を調製した。得られた芳香族ポリアミド樹脂(a−1)の融点Tmは295℃であった。以下の説明では、芳香族ポリアミド樹脂(a−1)を66/6T(1)と呼ぶ場合がある。
【0083】
〔芳香族ポリアミド樹脂(a−2)の調製〕
テレフタル酸2176g(13.1モル)、1,6−ヘキサンジアミン2800g(24.1モル)、アジピン酸1578g(10.8モル)、安息香酸36.6g(0.30モル)、次亜リン酸ナトリウム1水和物5.7g、および蒸留水554gを内容量13.6Lのオートクレーブに入れ、窒素置換した。190℃から攪拌を開始し、3時間かけて内部温度を250℃まで昇温させた。このとき、オートクレーブの内圧を3.01MPaまで昇圧させた。このまま1時間反応を続けた後、オートクレーブ下部に設置したスプレーノズルから大気放出して低縮合物を抜き出した。
その後、低縮合物を室温まで冷却し、粉砕機で1.5mm以下の粒径まで粉砕し、110℃で24時間乾燥させた。次に、この低縮合物を棚段式固相重合装置にいれ、窒素置換後、約1時間30分かけて220℃まで昇温させた。その後、1時間反応させて、室温まで降温させた。その後、スクリュー径30mm、L/D=36の二軸押出機にて、バレル設定温度330℃、スクリュー回転数200rpm、6kg/hの樹脂供給速度で溶融重合して、芳香族ポリアミド樹脂(a−2)を調製した。芳香族ポリアミド樹脂(a−2)を調製した。得られた芳香族ポリアミド樹脂(a−2)の融点Tm'は310℃であった。以下の説明では、芳香族ポリアミド樹脂(a−2)を66/6T(2)と呼ぶ場合がある。
【0084】
〔芳香族ポリアミド樹脂(a−3)の調製〕
1,6−ジアミノヘキサン2800g(24.1モル)、テレフタル酸2774g(16.7モル)、イソフタル酸1196g(7.2モル)、安息香酸36.6g(0.30モル)、次亜リン酸ナトリウム1水和物5.7gおよび蒸留水545gを内容量13.6Lのオートクレーブに入れ、窒素置換した。190℃から攪拌を開始し、3時間かけて内部温度を250℃まで昇温させた。このとき、オートクレーブの内圧を3.03MPaまで昇圧させた。このまま1時間反応を続けた後、オートクレーブ下部に設置したスプレーノズルから大気放出して低縮合物を抜き出した。
その後、室温まで冷却後、低縮合物を粉砕機で1.5mm以下の粒径まで粉砕し、110℃で24時間乾燥させた。次に、この低縮合物を棚段式固相重合装置にいれ、窒素置換後、約1時間30分かけて180℃まで昇温させた。その後、1時間30分反応し、室温まで降温させた。その後、スクリュー径30mm、L/D=36の二軸押出機にて、バレル設定温度を330℃、スクリュー回転数200rpm、6Kg/hの樹脂供給速度で溶融重合して、芳香族ポリアミド樹脂(a−3)を調製した。得られた芳香族ポリアミド樹脂(a−3)の融点Tmは330℃であった。以下の説明では、芳香族ポリアミド樹脂(a−3)を6T/6Iと呼ぶ場合がある。
【0085】
<変性ポリオレフィン樹脂(b)の調製>
〔変性ポリオレフィン樹脂(b−1)の調製〕
十分に窒素置換したガラス製フラスコに、ビス(1,3−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリドを0.63mg入れ、さらにメチルアミノキサンのトルエン溶液(Al;0.13ミリモル/リットル)1.57ml、およびトルエン2.43mlを添加することにより、触媒溶液を得た。次に、十分に窒素置換した内容積2リットルのステンレス製オートクレーブに、ヘキサン912ml、および1−ブテン320mlを導入し、系内の温度を80℃に昇温した。引き続き、トリイソブチルアルミニウム0.9ミリモルおよび上記で調製した触媒溶液2.0ml(Zrとして0.0005ミリモル)をエチレンで系内に圧入し、重合反応を開始させた。エチレンを連続的に供給することにより全圧を8.0kg/cm
2−Gに保ち、80℃で30分間重合を行った。少量のエタノールを系中に導入して重合を停止させた後、未反応のエチレンをパージした。得られた溶液を大過剰のメタノール中に投下することにより白色固体を析出させた。この白色固体をろ過により回収し、減圧下で一晩乾燥し、白色固体(エチレン・1−ブテン共重合体)を得た。
得られたエチレン・1−ブテン共重合体100質量部に、無水マレイン酸0.5質量部と過酸化物(パーヘキシン25B,日本油脂社製、商標)0.04質量部とを混合した。得られた混合物を230℃に設定した1軸押出機で溶融グラフト変性することによって、変性ポリオレフィン樹脂(b-1)を得た。
【0086】
〔変性ポリオレフィン樹脂(b−2)の調製〕
高密度ポリエチレン(密度:0.95、MFR=5g/10min)100質量部、無水マレイン酸0.8質量部、および有機過酸化物(日本油脂社製、パーヘキシン−25B)0.07質量部、をヘンシェルミキサーで混合し、得られた混合物を230℃に設定した65mmφの一軸押出機で溶融グラフト変性することによって、変性ポリオレフィン樹脂(b−2)を調製した。
【0087】
<樹脂組成物(A)またはフィラー含有樹脂組成物(B)の調製>
表1に示される組成比で、芳香族ポリアミド樹脂(a)、変性ポリオレフィン樹脂(b)、無機フィラー(F)としてのガラス繊維(オーウェンスコーニング社製、FT756D)とをタンブラーブレンダーにて混合し、さらに二軸押出機(日本製鋼所社製TEX30α)にて、シリンダー温度(芳香族ポリアミド樹脂(a)の融点(Tm)+15℃)で混合物を溶融混錬した。その後、混練物をストランド状に押出し、水槽で冷却させた。その後、ペレタイザーでストランドを引き取り、カットすることでペレット状の樹脂組成物(A−1)およびフィラー含有樹脂組成物(B−1)〜(B−4)を得た。
【0088】
【表1】
【0089】
上記の樹脂組成物の熱特性分析は次の方法で行った。
〔芳香族ポリアミド樹脂(a)の融点測定〕
芳香族ポリアミド樹脂(a)の融点(Tm)は、測定装置として示差走査熱量計(DSC220C型、セイコーインスツル社製)を用いて測定した。室温から10℃/minで330℃まで加熱し330℃で5分間保持し、次いで、10℃/minで30℃まで冷却した。30℃で5分間置いた後、10℃/minで350℃まで2度目の加熱を行なった。この2度目の加熱でのピーク温度(℃)を芳香族ポリアミド樹脂(a)の融点(Tm)とした。
【0090】
〔樹脂組成物(A)または(B)のDSC測定〕
上記の方法で得られた樹脂組成物ペレットを真空オーブンにて110℃、12時間真空乾燥後、示差走査熱量計(SII社製 X−DSC7000)を用いて、融点(Tm)、結晶化温度(Tc)、融解エンタルピー(ΔHf)を算出した。30℃から昇温速度10℃/minにて350℃まで昇温(第一昇温)後、降温速度10℃/minにて30℃まで冷却し、再び10℃/minにて350℃まで昇温(第2昇温)した時の、降温過程における結晶化ピークをTcとし、第2昇温時の融解ピークを融点Tmとして測定した。TcまたはTm測定時に、ピークが2つ以上存在する場合は、高温側のピークを各々Tc、Tmとして決定した。また、第2昇温過程における融解ピーク面積からΔHfを算出した。ピークが二つ以上存在する場合は、芳香族ポリアミド樹脂(a)由来のピークすべての合計面積をΔHfとして算出した。得られたTc、Tm、ΔHfを下記表2に示した。
【0091】
〔樹脂組成物(A)または(B)の半結晶化時間τ
1/2の測定〕
得られた樹脂組成物(A)または(B)ペレットを真空オーブンにて110℃、12時間真空乾燥後、示差走査熱量計(パーキンエルマー社製 Diamond DSC)を用いて、半結晶化時間τ
1/2を測定した。30℃から500℃/minの設定速度で350℃まで昇温し、5分間保持した後、先にDSCにて測定したTcより15℃高い温度まで降温速度500℃/minの設定速度で一気に降温し、等温下での結晶化ピークを測定した。測定した結晶化ピークから、結晶化が始まった時点から、結晶化が半分促進する時点(全体の結晶化ピーク面積に対して、面積が1/2になる時点)での時間をτ
1/2として測定した。得られたτ
1/2を下記表2に示した。
【0092】
〔金属部材表面の微細凹凸構造の測定方法〕
次に、微細凹凸構造が形成された金属部材(M)103の表面上の間隔周期の測定方法について述べる。既に述べたように、間隔周期が500nm未満の超微細な凹凸構造については電子顕微鏡により測定する。本実施形態ではレーザー顕微鏡(KEYENCE社製VK−X100)または走査型電子顕微鏡(JEOL社製JSM−6701F)を用いて測定した。なお、電子顕微鏡またはレーザー顕微鏡で撮影した写真から間隔周期を求める場合は、具体的には、金属部材(M)103の表面110を撮影する。その写真から、任意の凸部を50個選択し、それらの凸部から隣接する凸部までの距離をそれぞれ測定する。凸部から隣接する凸部までの距離の全てを積算して50で除したものを間隔周期とした。
一方で、間隔周期が500nmを超える微細凹凸面についてはまたはレーザー顕微鏡または表面粗さ測定装置を用いる。表面粗さ測定装置を用いる方法では具体的には次の方法によって凹凸に係る各種パラメーターを求めた。
【0093】
(金属部材表面の、粗さ曲線の負荷長さ率(Rmr)、十点平均粗さ(Rz)および粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)の測定)
表面粗さ測定装置「サーフコム1400D(東京精密社製)」を使用し、JIS B0601(対応ISO 4287)に準拠して測定される表面粗さのうち、粗さ曲線の負荷長さ率(Rmr)、十点平均粗さ(Rz)および粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)を測定した。なお、測定条件は以下のとおりである。
・触針先端半径:5μm
・基準長さ:0.8mm
・評価長さ:4mm
・測定速度:0.06mm/sec
測定は、金属部材の表面上の、平行関係にある任意の3直線部、および当該直線部と直交する任意の3直線部からなる合計6直線部についておこなった(
図3参照)。なお、本実施例・比較例では、金属部材(M)103の全面について粗化処理をおこなっているため、金属/樹脂複合構造体106の接合部表面104について粗さ曲線の負荷長さ率(Rmr)、十点平均粗さ(Rz)および粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)の測定をおこなっても、
図3に示す測定箇所と同様の評価結果が得られることが理解される。
【0094】
〔接合強度の評価方法および合否判定〕
引張試験機「モデル1323(アイコーエンジニヤリング社製)」を使用し、引張試験機に専用の治具を取り付け、室温(23℃)にて、チャック間距離60mm、引張速度10mm/minの条件にて測定をおこなった。破断荷重(N)を金属/樹脂接合部分の面積で除することにより接合強度(MPa)を得た。
【0095】
〔実施例で用いた、表面租化された金属部材〕
(置換晶析法による金属部材1の調製)
JIS H4000に規定された合金番号5052のアルミニウム板(厚み:2.0mm)を、長さ45mm、幅18mmに切断した。このアルミニウム板を酸系エッチング剤(硫酸:8.2質量%、塩化第二鉄:7.8質量%(Fe
3+:2.7質量%)、塩化第二銅:0.4質量%(Cu
2+:0.2質量%)イオン交換水:残部)(30℃)中に80秒間浸漬し、揺動させることによってエッチングした。次いで、流水で超音波洗浄(水中、1分)を行い、乾燥させることにより表面処理済みの金属部材1を得た。
【0096】
得られた金属部材1の間隔周期は、レーザー顕微鏡(KEYENCE社製VK−X100)にて測定した。
また、得られた金属部材1の表面粗さを、表面粗さ測定装置「サーフコム1400D(東京精密社製)」を使用して測定し、6直線部について、切断レベル10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%および80%における負荷長さ率(Rmr)、十点平均粗さ(Rz)および粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)を求めた。このうち、切断レベル20%におけるRmr(20%)値、上記Rmr(20%)値が30%以下となる直線部の本数、切断レベル40%におけるRmr(40%)値、上記Rmr(40%)値が60%以下となる直線部の本数、6直線部のRz値、粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)、エッチング処理前後の金属部材の質量比から求めたエッチング率を算出した。得られた結果を以下に示す。
【0097】
間隔周期[μm]:92
切断レベル20%におけるRmr(20%)値:17.5、10.3、13.4、10.6、3.8、7.4
Rmr(20%)値が30%以下となる直線部の本数:6
切断レベル40%におけるRmr(40%)値:43.6、26.1、48.0、46.7、33.5、34.2
Rmr(40%)値が60%以下となる直線部の本数:6
6直線部のRz値[μm]:17.8、18.1、19.6、17.8、17.2、18.0
6直線部のRSm値[μm]:104.0、83.0、85.6、98.7、106.6、103.1
エッチング率[質量%]:2.6
【0098】
(NMT法による金属部材2の調製)
JIS H4000に規定された合金番号5052のアルミニウム板(厚み:2.0mm)を、長さ45mm、幅18mmに切断した。このアルミニウム板を特開2005−119005号公報の実施例1に記載の処理をおこなった。具体的には、市販のアルミニウム脱脂剤「NE−6(メルテックス社製)」を15%濃度で水に溶かし75℃とした。この水溶液が入ったアルミニウム脱脂槽に上記アルミニウム板を5分間浸漬し水洗し、40℃の1%塩酸水溶液が入った槽に1分浸漬し水洗した。つづいて、40℃の1%水酸化ナトリウム水溶液が入った槽に1分浸漬し水洗した。次いで40℃の1%塩酸水溶液を入れた槽に1分浸漬し水洗し、60℃の2.5%濃度の1水和ヒドラジン水溶液を入れた第1ヒドラジン処理槽に1分浸漬し、40℃の0.5%濃度の1水和ヒドラジン水溶液を入れた第2ヒドラジン処理槽に0.5分浸漬し水洗した。これを40℃で15分間、60℃で5分程度温風乾燥させることにより、表面処理済みの金属部材2を得た。
【0099】
得られた金属部材2の間隔周期は、走査型電子顕微鏡(JEOL社製JSM−6701F)にて測定した。
また、エッチング処理前後の金属部材の質量比から求めたエッチング率を算出した。得られた結果を以下に示す。
【0100】
間隔周期[nm]:45
エッチング率[質量%]:0.3
【0101】
〔実施例1〕
日本製鋼所社製の射出成形機J85ADに小型ダンベル金属インサート金型102を装着し、120℃に加熱した金型102内(
図4)に金属部材2を設置した。
次いで、その金型102内に、樹脂組成物(B−1)を、シリンダー温度315℃、射出速度25mm/sec、保圧80MPa、保圧時間5秒の条件にて射出成形を行い、金属/樹脂複合構造体106を得た。得られた金属/樹脂複合構造体106を用いて、引張試験を実施し、接合強度を測定した。得られた接合強度を表2に示す。
【0102】
〔実施例2〕
日本製鋼所社製の射出成形機J85ADに小型ダンベル金属インサート金型102を装着し、170℃に加熱した金型102内に金属部材2を設置した。
次いで、その金型102内に、樹脂組成物(B−2)を、シリンダー温度340℃、射出速度25mm/sec、保圧80MPa、保圧時間5秒の条件にて射出成形を行い、金属/樹脂複合構造体106を得た。得られた金属/樹脂複合構造体106を用いて、引張試験を実施し、接合強度を測定した。得られた接合強度を表2に示す。
【0103】
〔実施例3〕
金属部材1を用いた以外は実施例1と同様の条件で実施した。得られた接合強度を表2に示す。
【0104】
〔実施例4〕
金属部材1を用いた以外は実施例2と同様の条件で実施した。得られた接合強度を表2に示す。
【0105】
〔実施例5〕
樹脂組成物(B−3)を用いた以外は実施例4と同様の条件で実施した。得られた接合強度を表2に示す。
【0106】
〔実施例6〕
樹脂組成物(A−1)を用いた以外は実施例4と同様の条件で実施した。得られた接合強度を表2に示す。
【0107】
〔比較例1〕
日本製鋼所社製の射出成形機J85ADに小型ダンベル金属インサート金型102を装着し、150℃に加熱した金型102内に金属部材2を設置した。
次いで、その金型102内に、樹脂組成物(B−4)を、シリンダー温度325℃、射出速度25mm/sec、保圧80MPa、保圧時間5秒の条件にて射出成形を行い、金属/樹脂複合構造体106を得た。得られた金属/樹脂複合構造体106を用いて、引張試験を実施し、接合強度を測定した。得られた接合強度を表2に示す。
【0108】
〔比較例2〕
金属部材1を用いた以外は比較例1と同様の条件で実施した。得られた接合強度を表2に示す。
【0109】
【表2】