特許第6612534号(P6612534)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6612534
(24)【登録日】2019年11月8日
(45)【発行日】2019年11月27日
(54)【発明の名称】電子レンジ加熱用食品容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 81/34 20060101AFI20191118BHJP
【FI】
   B65D81/34 U
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-125215(P2015-125215)
(22)【出願日】2015年6月23日
(65)【公開番号】特開2017-7707(P2017-7707A)
(43)【公開日】2017年1月12日
【審査請求日】2018年3月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】591250248
【氏名又は名称】株式会社ギンポーパック
(74)【代理人】
【識別番号】110000512
【氏名又は名称】特許業務法人山田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】塙 卓也
(72)【発明者】
【氏名】福井 道人
【審査官】 家城 雅美
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−191054(JP,A)
【文献】 特開2001−031148(JP,A)
【文献】 特開2014−043276(JP,A)
【文献】 実開平04−029977(JP,U)
【文献】 特開2007−301000(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D81/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体と、該容器本体を上部から覆う樹脂製の蓋体とを備えた電子レンジ加熱用食品容器であって、
前記蓋体に、一方向に張り出した曲線形状を有する切れ込みである脱気孔を備え、
前記蓋体における仮想円の円周に沿って、複数の前記脱気孔がそれぞれ円弧をなすように配置され、
該脱気孔のなす曲線においては、両端を結ぶ線分と、前記曲線のうち前記線分から最も離れた点との距離が、前記線分の長さに対してゼロより大きく3分の1以下であり、
加熱時には、前記蓋体の前記仮想円を設けた部分における変形に伴い、前記仮想円の内側の素材が復元力により外側の素材に対して浮き上がることで前記脱気孔が開口するように構成されていること
を特徴とする電子レンジ加熱用食品容器。
【請求項2】
前記脱気孔は、前記蓋体の中央部に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の電子レンジ加熱用食品容器。
【請求項3】
前記脱気孔は、前記蓋体の周辺部に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の電子レンジ加熱用食品容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に収容した食品を電子レンジで加熱するための樹脂製の容器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高齢化や核家族化といった社会的要因を背景に、コンビニエンスストアやスーパーマーケット等において、電子レンジ調理食品の販売が増加傾向にある。電子レンジ調理食品は、惣菜や弁当、食材を樹脂製の容器に封入し、容器ごと電子レンジで加熱調理する型式のもので、手間をかけずに安全かつ簡単に調理することができて便利である。最近の消費者間における健康志向の高まりも相俟って、電子レンジ調理食品の形態で発売される食品の種類も増えており、調理済みの状態で容器に封入され、加熱さえすれば食べられるようになっているものから、未調理又は半調理状態で封入され、電子レンジによる加熱を含む調理手順を経て出来上がるようになっているものまで、多種多様なものが出回っている。
【0003】
一般に、食品に用いられる容器には、外部から異物が入り込まないための密閉性、運搬に伴う振動や衝撃に耐え得る強度、喫食時における開閉操作等の簡便性、店舗において見栄え良く展示され得る外観など、多くの機能や性質が求められる。電子レンジ調理食品に用いられる容器(以下、「電子レンジ加熱用食品容器」と称する)の場合には、電子レンジでの加熱を前提とするため、上に挙げた機能や性質の他、調理の熱に耐え得る耐熱性や、短時間かつ省エネルギーで内容物全体に満遍なく熱を行き渡らせる熱効率、加熱に伴って内部に発生した水蒸気を適切に脱気する機能などが要求される。
【0004】
電子レンジ加熱用食品容器は、食品を収容するものである以上、密閉性が特に求められることは勿論であるが、この密閉性は、多くの場合、熱効率とも密接に関係している。すなわち、電子レンジ加熱用食品容器に収容した食品を電子レンジによって加熱調理する際、電子レンジ加熱用食品容器の内部では食品から水蒸気が発生するが、この水蒸気が高温高圧となって充満し、内部空間の隅々まで行き渡ることによって、食品の加熱が効率良く進むことになる。電子レンジ加熱用食品容器の密閉性が、調理における熱効率に寄与するわけである。
【0005】
その一方で、電子レンジ加熱用食品容器には、一定の条件下で密閉状態を解除することも必要とされる。すなわち、加熱調理にあたり、水蒸気が電子レンジ加熱用食品容器の内側に充満するに任せておくと、上昇しすぎた圧力によって蓋体が吹き飛んだり(蓋飛び)、容器本体や蓋体が破損してしまう。これは水蒸気を介したその後の加熱が効率よく行えなくなったり、収容された食品が四方に飛び散るなど、好ましくない事態である。そこで、電子レンジ加熱用食品容器には、内部の圧力がある程度高まったところで水蒸気を逃がす脱気の機構が必要となる。
【0006】
このような脱気の機構を備えた電子レンジ加熱用食品容器として、これまで様々なものが提案されている。例えば、(1)容器本体と蓋体との間に上下二段の嵌合構造を備えて該二段の嵌合構造の間を蓋体が移動できるようにし、電子レンジでの加熱に伴い水蒸気が発生して内圧が上昇すると、蓋体が前記嵌合構造の下段から上段へと移動し、それによって容器本体と蓋体との間から水蒸気が逃げるようにしたものや、(2)蓋体に開口した穴に対し、容器本体に設けた突起を下から嵌合しておき、内圧の上昇に伴って水蒸気が前記突起部分に侵入して外帯の穴から抜け出るようにしたもの、(3)蓋体に脱気孔を備えると共に該脱気孔を覆うキャップ部を備え、内圧が上昇すると前記キャップ部が浮き上がって前記脱気孔が開くようにしたもの、(4)蓋体に脱気孔を備えると共に該脱気孔をフィルムでシールし、加熱時に高温の水蒸気が前記フィルムと接することによりフィルムが収縮して前記脱気孔が開くようにしたもの、(5)容器本体上部をトップフィルムで覆い、容器本体におけるトップフィルムとの接点部分に脱気孔を備え、内圧の上昇に伴って前記接点部分におけるトップフィルムのシールが剥離するようにしたものなど、種々の型式のものがある。
【0007】
上記のような各種の電子レンジ加熱用食品容器は、いずれも加熱調理の際、内部の圧力がある程度の大きさに達したところで電子レンジ加熱用食品容器の内部空間が外部と連通し、水蒸気が外へ逃げるように工夫されている。これにより、内圧が大きくなりすぎることを防止し、蓋体が吹き飛んだり、容器本体や蓋体が破損するといった事態が生じないようになっている一方、電子レンジ加熱用食品容器内部の圧力がある程度の大きさに保たれて効率の良い加熱調理を可能とするという、密閉性と脱気の機能を両立した構造になっている。
【0008】
尚、上述のような電子レンジ加熱用食品容器に関連する一般的技術水準を示す文献としては、例えば、下記特許文献1、2がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−301000号公報
【特許文献2】特開2009−78865号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上述の如き電子レンジ加熱用食品容器では、ものによっては脱気の機構に複雑な構造や特殊な材料が必要となったり、あるいは蓋体とは別の部材を追加する必要があったりして、製造にかかる工程や設備投資が増加してコストが大きくなってしまう場合がある。
【0011】
また、一般に流通している電子レンジ加熱用食品容器の中には、加熱の際、脱気孔の開口面積が大きくなるものもある。そういった電子レンジ加熱用食品容器では、脱気孔から異物が侵入する可能性があることに加え、内部の圧力が下がり過ぎて熱効率が阻害されてしまう虞がある。すなわち、加熱調理を効率よく行うためには、容器本体の破損や蓋体の蓋飛びが発生しない限界まで内部の圧力を高めることが効果的であるが、これには内部に充満した水蒸気を逃がし過ぎないようにしなくてはならない。このため、脱気の機構において、開口する面積は大き過ぎないようにする必要がある。
【0012】
さらに、容器としてのデザインの面でも、脱気の機構を備えるために自由度が制限されることがあり、脱気孔周辺の構造は見た目にもなるべくシンプルにすることが求められていた。
【0013】
本発明は、斯かる実情に鑑み、簡単な構造でコストを抑えつつ、脱気孔を通した内部への異物の侵入を防止しながら内部の食品を効率よく加熱し得る電子レンジ加熱用食品容器を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、容器本体と、該容器本体を上部から覆う樹脂製の蓋体とを備えた電子レンジ加熱用食品容器であって、前記蓋体に、一方向に張り出した曲線形状を有する切れ込みである脱気孔を備え、前記蓋体における仮想円の円周に沿って、複数の前記脱気孔がそれぞれ円弧をなすように配置され、該脱気孔のなす曲線においては、両端を結ぶ線分と、前記曲線のうち前記線分から最も離れた点との距離が、前記線分の長さに対してゼロより大きく3分の1以下であり、加熱時には、前記蓋体の前記仮想円を設けた部分における変形に伴い、前記仮想円の内側の素材が復元力により外側の素材に対して浮き上がることで前記脱気孔が開口するように構成されていることを特徴とする電子レンジ加熱用食品容器にかかるものである。
【0015】
而して、このようにすれば、電子レンジによる加熱調理において、内部に充満する水蒸気を簡単な構成で好適に逃がしつつ、脱気孔を通した異物の侵入や、圧力の過剰な低下を防ぐことができる。また、加熱調理の過程における脱気孔の開口を確実にすることができる。
【0017】
本発明の電子レンジ加熱用食品容器において、前記脱気孔は、前記蓋体の中央部に配置することができ、このようにすれば、変形しやすい部位に前記脱気孔が配置されることになり、加熱調理の過程における脱気孔の開口を確実にすることができる。また、調理者の手等に高温の水蒸気が吹き付ける虞も少ない。
【0018】
本発明の電子レンジ加熱用食品容器において、前記脱気孔は、前記蓋体の周辺部に配置することができ、このようにすれば、前記蓋体において変形が集中する部位が中央部でない場合、変形が集中する部位に合わせて前記脱気孔を設けることができる。また、電子レンジ加熱用食品容器内の食品に保護フィルム等が備えられている場合であっても前記脱気孔に保護フィルム等が貼り付いて塞がれることを防止し、脱気孔の開口を確実にすることができる。また、ラベル等の存在により蓋体の中央部に脱気孔を配置できない場合でも、蓋体に脱気孔を備えることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の電子レンジ加熱用食品容器によれば、簡単な構造でコストを抑えつつ、脱気孔を通した内部への異物の侵入を防止しながら内部の食品を効率よく加熱し得るという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の電子レンジ加熱用食品容器の形態の一例(第一実施例)を示す分解斜視図である。
図2】本発明の要部の形態を示す図であり、(a)は要部の全体構成を示す平面図、(b)は(a)の一部を拡大して示す概念図である。
図3】本発明の要部である脱気孔の別の形態を示す図であり、(a)〜(d)はそれぞれ脱気孔の別の配置を示し、(e)は脱気孔の別の形状を示す。
図4】本発明の電子レンジ加熱用食品容器の作動を示す断面図(図2(a)のIV−IV方向矢視図)であり、(a)は加熱前、(b)〜(d)は加熱中の状態を示す。
図5】本発明の電子レンジ加熱用食品容器の形態の別の一例(第二実施例)を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0022】
図1図2は本発明の実施による電子レンジ加熱用食品容器の形態の一例(第一実施例)を示すものである。本第一実施例の電子レンジ加熱用食品容器1は、食品2の収容される丼型の容器本体3と、該容器本体3の開口を上部から覆う樹脂製の蓋体4とを備えてなる。尚、ここでは丼型の丸形状の電子レンジ加熱用食品容器1を図示しているが、電子レンジ加熱用食品容器1の形状はこれに限定されない。例えば角型のものであっても良いし、円筒形であっても良い。その他、収容される食品2の種類や容器の機能面、デザイン面その他の事情により、種々の形状を取り得る。
【0023】
蓋体4は、その中央部に、図2(a)に示す如く、仮想円の円周に沿った複数の切れ込みとしての脱気孔5を備えている。ここに示した例では、仮想円の円周を略六等分するよう、各々が前記仮想円の円弧をなす六つの脱気孔5を配置し、該六つの脱気孔5が全体として円形のミシン目をなすように形成されている。
【0024】
すなわち、脱気孔5は、そのひとつひとつが図2(b)に示す如く、一方向に凸な形状を有する曲線形状の切れ込みとなっており、前記曲線の両端を結ぶ線分Lの一方(図2(b)中では右側)に、脱気孔5を構成する前記曲線の全体が張り出した形となっている。そして、前記曲線のうち線分Lから最も離れた点Pと線分Lとの距離Dが、線分Lの長さに対して十分に小さくなるよう構成されている。ここに示した例の場合、脱気孔5は仮想円の円周を略六等分した弧であるので、線分Lと距離Dとの比は、ほぼ
[数1]
L:D≒1:(1−√3/2)≒1:0.13
である。
【0025】
このように、本発明においては、蓋体4に備えた脱気孔5が、直線(つまり、上記距離Dがゼロ)ではなく線分Lの一方向に張り出した曲線状であり、且つその張り出しの度合いが十分に小さいことが重要である。張り出しの度合いは、距離Dが線分Lの概ね1/3以下となる程度であることが望ましく、つまり、線分Lと距離Dの長さの関係は、
[数2]
0<D/L≦1/3
と表すことができる。
【0026】
尚、脱気孔5の形状や配置は、必ずしも図2(a)に示した例と同じである必要はない。例えば図3(a)に示す如く、仮想円の円周を略三等分した弧となっていても良いし(因みにこの場合、上記線分Lと距離D(図2(a)参照)の比はほぼ1:√3/6(約0.29)である)、図3(b)、(c)に示す如く、円以外の形状をなすよう配置されていても良い。また、図3(d)に示す如く、対称な配置である必要もない。さらに、図3(e)に示す如く、脱気孔5のなす曲線は円弧でなくても良い。各脱気孔5の形状が、[数2]で示される関係を満足していれば良い。また、脱気孔5は必ずしも複数個形成されていなくても良く、[数2]の式を満足する形状の脱気孔5が一個だけ形成されていても良い。
【0027】
尚、実際の電子レンジ加熱用食品容器1においては、ここで説明した以外に、電子レンジ加熱用食品容器1の各部の強度を高めるためのリブや、蓋体4と容器本体3との間で密閉を保つための溝、電子レンジ加熱用食品容器1同士を重ねやすくするための凹凸など、様々な構造が容器本体3や蓋体4に備えられるが、そういった本発明の趣旨と直接関係のない仕様については、ここでは図示を省略している。
【0028】
次に、上記した本第一実施例の作動を説明する。
【0029】
電子レンジでの加熱調理を開始する前は、図4(a)に示す如く、蓋体4は平らな形状をなしており、蓋体4に備えられた切れ込みである脱気孔5は閉じている。
【0030】
電子レンジによる加熱を実行すると、容器本体3(図1参照)に収容した食品2から水蒸気が発生し、電子レンジ加熱用食品容器1内に充満し始める。加熱が進むと、食品2から発生する水蒸気の量が増加するとともに温度が上昇し、これに伴って圧力が上昇して蓋体4を電子レンジ加熱用食品容器1の内側から押し上げ、蓋体4を変形させる。このとき、変形は蓋体4の中央部に最も集中し、蓋体4は中央部が盛り上がるように変形する。
【0031】
脱気孔5は、上記したように円弧状の曲線を有する切れ込みであり、仮想円に沿って複数備えられている(図2参照)。蓋体4の中央部が盛り上がると、脱気孔5のなす仮想円の中央が図4(b)のように盛り上がることになる。すなわち、仮想円の内側を構成する蓋体4の素材が、上に凸な形状に変形する。
【0032】
変形した仮想円の内側の素材は、図4(a)に示したような平らな形状に復元しようとする。その結果、図4(c)に示す如く、蓋体4の切れ込みである脱気孔5を境に、仮想円の内側の素材が外側の素材から破断するように離れ、該外側の素材に対して浮き上がった状態になる。こうして、蓋体4の中央部に備えられた脱気孔5が、蓋体4の変形によって開口する。
【0033】
このとき、脱気孔5は、上記したように全体として仮想円の周に沿った円形のミシン目状になっており、仮想円の内側にあたる蓋体4の素材と、外側にあたる素材とは、脱気孔5同士の間に位置する素材を介してごく細く繋がっている。言い換えると、前記仮想円の内側にあたる蓋体4の素材は、外側の素材からほぼ円盤状に切り抜かれた形になっている。このため、前記仮想円の内側の素材は、外側の素材の変形にあまり引っぱられず、外側の素材に対し独立して動作しやすい。すなわち、本第一実施例の場合、各脱気孔5を仮想円の周に沿った円弧として配置することによって、脱気孔5がより開口しやすくなっている。
【0034】
脱気孔5が開口すると、該脱気孔5を通って高温の水蒸気Sが逃げようとする。この水蒸気Sの熱により、脱気孔5のなす仮想円の内側の素材が上に向かって反り返り、脱気孔5による開口はさらに拡げられる。すなわち、脱気孔5のなす曲線によって切り取られた蓋体4の素材のうち、凸形状になった部分(仮想円の内側にあたる部分)が反り返りやすくなっており、距離D(図2(b)参照)の分だけ上に向かって反り返って脱気弁の役割を果たすのである。
【0035】
このようにして、本第一実施例の電子レンジ加熱用食品容器1においては、電子レンジでの加熱調理に伴って上昇する内部の圧力がある程度の大きさに達したところで脱気孔5が開口し、内部に充満した水蒸気Sを適切に逃すことができる。
【0036】
ここで、上記したように、一方向に張り出した曲線状の切れ込みである脱気孔5は、その張り出しの度合いが十分に小さく構成されている。このため、加熱調理の過程で図4(d)に示す如く脱気孔5が開口したとしても、その開口面積はさほど大きくなることはない(尚、図4(c)、(d)では説明の都合上、蓋体4の変形や脱気孔5の開口を大きく強調して図示しているが、実際の変形や開口はこれよりも小さい)。したがって、脱気孔5から異物が侵入する可能性が低い。
【0037】
さらに、開口面積が小さいため、脱気孔5から逃げる水蒸気Sの量が過剰に多くなることはなく、電子レンジ加熱用食品容器1内部の圧力を高く保つことができ、短時間で効率よく電子レンジでの加熱を実行することができる。勿論、脱気孔5から水蒸気Sを逃す機能は十分であるので、容器本体3の破損や蓋体4の蓋飛びも防止される。
【0038】
しかも、本第一実施例の電子レンジ加熱用食品容器1では、脱気の機構を形成するにあたっては蓋体4に切れ込み(脱気孔5)を備えるだけでよく、複雑な構造や特殊な材料、あるいは蓋体とは別の部材等を必要としないので、製造にかかる手間やコストを低減することができる。また、脱気孔5の見た目も電子レンジ加熱用食品容器1全体としてのデザインを邪魔しないシンプルなものであり、デザイン面の自由度も向上させることができる。
【0039】
また、本第一実施例では、脱気孔5は蓋体4の中央部に配置されているが、この部分に脱気孔5を配置することには、上記したように変形の大きい部分に配置して開口しやすくするほかに、調理者に高温の水蒸気Sが吹き付けることを防ぐ効果もある。すなわち、調理者は、加熱調理後の電子レンジ加熱用食品容器1を保持する際、端部を手で掴むことが多いが、このとき、蓋体と容器本体の隙間から水蒸気を逃がすタイプの電子レンジ加熱用食品容器では、脱気孔から吹き出す水蒸気が調理者の手に吹き付ける場合がある。しかし、本第一実施例の如く脱気孔5が蓋体4の中央に位置していれば、そのような虞はない。
【0040】
以上のように、上記本第一実施例は、容器本体3と、該容器本体3を上部から覆う樹脂製の蓋体4とを備えた電子レンジ加熱用食品容器1に関し、蓋体4に、一方向に張り出した曲線形状を有する切れ込みである脱気孔5を備え、該脱気孔5のなす曲線においては、両端を結ぶ線分Lと、前記曲線のうち線分Lから最も離れた点Pとの距離Dが、線分Lの長さに対してゼロより大きく3分の1以下であるので、電子レンジによる加熱調理において、内部に充満する水蒸気Sを簡単な構成で好適に逃がしつつ、脱気孔5を通した異物の侵入や、圧力の過剰な低下を防ぐことができる。
【0041】
また、本第一実施例においては、蓋体4における仮想円の円周に沿って、複数の脱気孔5がそれぞれ円弧をなすように配置されているので、加熱調理の過程における脱気孔5の開口をより確実にすることができる。
【0042】
また、本第一実施例において、脱気孔5は、蓋体4の中央部に配置されているので、変形しやすい部位に脱気孔5が配置されることになり、加熱調理の過程における脱気孔5の開口を確実にすることができる。また、調理者の手等に高温の水蒸気Sが吹き付ける虞も少ない。
【0043】
したがって、上記本第一実施例によれば、簡単な構造でコストを抑えつつ、脱気孔を通した内部への異物の侵入を防止しながら内部の食品を効率よく加熱し得る。
【0044】
図5は本発明の実施による電子レンジ加熱用食品容器の形態の別の一例(第二実施例)を示すものである。本第二実施例の電子レンジ加熱用食品容器6は、食品7の収容される容器本体8と、該容器本体8の開口を上部から覆う樹脂製の蓋体9とを備えてなり、蓋体9に脱気孔10を備えている点は図1で説明した上記第一実施例と同様である。上記第一実施例と異なる点は、脱気孔10を蓋体9の中央部ではなく、周辺部に備えていることである。
【0045】
以下、上記本第二実施例の作動を説明する。尚、本第二実施例の脱気孔10の構成や作動については、図2図4で説明した上記第一実施例の脱気孔5と略同様であるため説明を省略し、上記第一実施例との相違点について主に説明する。
【0046】
一般的に言って、電子レンジによる加熱調理の際、内部に発生した水蒸気による変形が蓋体の中央部に集中しやすいことは、上記第一実施例において説明した通りである。しかしながら、電子レンジ加熱用食品容器の構成や、内部に収容される食品の質や配置如何によっては、脱気孔を蓋体の中央部に備えることが必ずしも適切ではない場合がある。
【0047】
例えば、図5に示す如く、容器本体8に収容した食品7の表面が透明の保護フィルム11で被覆されている場合がある。この保護フィルム11は、輸送等の際、食品7が衝撃や振動等の影響で電子レンジ加熱用食品容器6内で飛び散ったり、配置がずれたりして電子レンジ加熱用食品容器6あるいは食品7としての外観を損ねることを防止するものである。このほか、電子レンジ加熱用食品容器6内には、食品7を収容するにあたり、異なる種類の食品7を区画して分ける仕切りとしてのフィルムなど、種々の部材が一緒に封入されることがある。こういった保護フィルム11のような部材が封入された状態で電子レンジによる加熱調理を行うと、発生する水蒸気によって保護フィルム11が浮き上がって蓋体9の内側に貼り付く場合がある。ここで、上記第一実施例(図1の蓋体4及び脱気孔5を参照)の如く蓋体9の中央部に脱気孔10が配置されていた場合、保護フィルム11によって脱気孔10が内側から塞がれてしまい、水蒸気を上手く逃すことができなくなる虞があるが、本第二実施例の如く脱気孔10を蓋体9の周辺部に備えていれば、脱気孔10に保護フィルム11が貼り付いて塞がれることを防止し、脱気孔10の開口を確実にすることができる。
【0048】
また、蓋体において、加熱調理に伴う変形が集中する部位が中央部でないこともある。一般に、食品を電子レンジによって加熱調理する際、加熱のされやすさは食品の種類によって異なり、水分含有量の多いものほど加熱されやすい。そして、複数の種類の食品を封入した弁当等の場合、加熱のされやすさには場所によって偏りが生じる。そして、例えば図5に示した電子レンジ加熱用食品容器6において、容器本体8に収容した食品7の質が均一でなく、図中の食品7の右上付近に特に水分含有量の多い食材が配置され、その他の部分に比較的水分含有量の少ない食材が配置されているとする。この場合、電子レンジによる加熱調理を行うと、右上付近の食品7からより多くの高温高圧の水蒸気が発生するので、蓋体9は、図中右上付近がより大きく変形することになる。こういった場合には、脱気孔10は蓋体9の中央部ではなく、図5に示す如く、周辺部である図中右上付近の領域に配置されていた方が好ましい。このように、脱気孔10は、変形が集中する部位が蓋体9の中央部でない場合、変形が集中する部位に合わせて設けることができる。
【0049】
さらに、販売時の形態等によって、蓋体の中央部に脱気孔を備えることができない場合もある。例えば、図5に示す如く、店舗での販売時、蓋体9の上面にラベル12が貼り付けられる場合がある。このラベル12は、例えば食品7に関する説明を記載したり、店舗のロゴマーク等を表示するために貼り付けられるものであるが、ここに示したように蓋体9の中央部にかかるように貼り付けられていると、該中央部に脱気孔10を備えても、ラベル12に妨げられて加熱調理時に上手く機能しないことが考えられる。このように、ラベル12等の存在によって蓋体9の中央部に脱気孔10を配置できない場合でも、周辺部に脱気孔10を備えることができる。
【0050】
よって、上記本第二実施例は、容器本体8と、該容器本体8を上部から覆う樹脂製の蓋体9とを備えた電子レンジ加熱用食品容器6に関し、蓋体9に、一方向に張り出した曲線形状を有する切れ込みである脱気孔10を備え、該脱気孔10のなす曲線においては、両端を結ぶ線分と、前記曲線のうち前記線分から最も離れた点との距離が、前記線分の長さに対してゼロより大きく3分の1以下であるので、電子レンジによる加熱調理において、内部に充満する水蒸気を簡単な構成で好適に逃がしつつ、脱気孔10を通した異物の侵入や、圧力の過剰な低下を防ぐことができる。
【0051】
また、本第二実施例においては、蓋体9における仮想円の円周に沿って、複数の脱気孔10がそれぞれ円弧をなすように配置されているので、加熱調理の過程における脱気孔10の開口をより確実にすることができる。
【0052】
また、本第二実施例において、脱気孔10は、蓋体9の周辺部に配置しているので、蓋体9において変形が集中する部位が中央部でない場合、変形が集中する部位に合わせて脱気孔10を設けることができる。また、電子レンジ加熱用食品容器6内の食品7に保護フィルム11等が備えられている場合であっても脱気孔10に保護フィルム11が貼り付いて塞がれることを防止し、脱気孔10の開口を確実にすることができる。また、ラベル12等の存在により蓋体9の中央部に脱気孔10を配置できない場合でも、蓋体9に脱気孔10を備えることができる。
【0053】
したがって、上記本第二実施例によっても、簡単な構造でコストを抑えつつ、脱気孔を通した内部への異物の侵入を防止しながら内部の食品を効率よく加熱し得る。
【0054】
尚、本発明の電子レンジ加熱用食品容器は、上述の実施例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0055】
1 電子レンジ加熱用食品容器
3 容器本体
4 蓋体
5 脱気孔
6 電子レンジ加熱用食品容器
8 容器本体
9 蓋体
10 脱気孔
D 距離
L 線分
P 点
図1
図2
図3
図4
図5