(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
周壁(3A)の内側に養液(20)を充填してなる上方開口の養液室(30)を有するトレイ(3)と、前記トレイ(3)の養液室(30)に配置してなる水平台(31)と、この水平台(31)の上に積層されて前記トレイ(3)内の養液(20)を吸水する吸水シート(36)と、この吸水シート(36)の上に積層されて植物(S)の根の通過を阻止して水を透過させる防根シート(37)と、この防根シート(37)を透過する養液(20)を吸収する拡散給水シート(38)と、この拡散給水シート(38)の上に載せられて植物(S)が植え付けられる培地(39)と、前記トレイ(3)に充填している養液(20)の液面レベルと前記水平台(31)との相対位置をコントロールして、前記吸水シート(36)を前記トレイ(3)に充填してなる養液(20)に接触させて、前記トレイ(3)の養液(20)を前記吸水シート(36)に移行させる相対位置に調整する調整機構(4)と、前記トレイ(3)に養液(20)を供給する養液供給器(1)を備え、
前記養液供給器(1)が、前記トレイ(3)の上方に配置してなる注液管(24)を有し、前記注液管(24)から前記培地(39)に養液(20)を供給して、前記培地(39)に供給される養液(20)が、前記拡散給水シート(38)と前記防根シート(37)と前記吸水シート(36)とを通過してトレイ(3)に供給され、
前記拡散給水シート(38)は、繊維を方向性なく立体的に集合している不織布で、
前記培地(39)が前記拡散給水シート(38)の上であって植物Sを植え付けする部分に載せられて、
前記拡散給水シート(38)は前記培地(39)が載せられない領域を露出部としており、
前記調整機構(4)でもって、前記トレイ(3)の液面レベルと前記水平台(31)との相対位置が調整されて、前記養液(20)が吸水シート(36)に供給され、前記吸水シート(36)が前記防根シート(37)を通過して養液(20)を前記拡散給水シート(38)に供給し、前記拡散給水シート(38)が前記培地(39)に養液(20)を供給して、前記培地(39)に植え付けされた植物(S)に養液(20)を供給するようにしてなることを特徴とする植物の養液栽培装置。
【背景技術】
【0002】
植物を養液栽培する装置は開発されている。(特許文献1参照)
この公報に記載される栽培装置を
図8に示す。この装置は、養液80を充填しているトレイ81に所定の厚さのロックウール82を敷き、ロックウール82の上に防根シート83を積層して、防根シート83の上に培地84を積層する。トレイ81の養液80は、ロックウール82の下部を浸漬して、防根シート83を浸漬しないレベルにコントロールされる。
【0003】
この公報に記載される栽培装置は、トレイ内にロックウールを敷いて、養液をロックウールに浸透させるので、トレイに充填している全ての養液を植物の栽培に最適な状態に保持するのが難しい。このため、培地に植え付けしている全ての植物を理想的な環境で生育できない欠点がある。それは、トレイ内で養液を自由に流動できないからである。
【0004】
また、以上の養液栽培装置は、ロックウールから培地に養液を供給するので、培地に均一に水分を補給するために多量のロックウールや椰子柄などの培地を使用する必要がある。ロックウールは、一定の期間経過すると交換する必要があるが、交換のために廃棄されたロックウールは田畑に廃棄される。無機繊維のロックウールは有機物のように腐蝕によって消失されず、飛散して公害の原因となっている。椰子柄は、ロックウールよりも頻繁に交換する必要があるので、培地のランニングコストが高くなると共に、多量の椰子柄が培地の廃棄物として田畑に捨てられている。
【0005】
本発明者は、ロックウールを使用しない養液栽培装置として、
図9に示す養液栽培装置を開発して実用化している。(特許文献2参照)
この図の養液栽培装置は、植物を生育させる培地94と、この培地94の下にあって、培地94に植え付けされる植物の根が通過するのを阻止して水を通過させる防根シート93と、この防根シート93の下に積層されて、培地94に水を供給する吸水シート95と、この吸水シート95の下に積層している下地フィルム92と、さらに下地フィルム92の下に積層されて、培地94を載せる基礎プレート91とを備える。基礎プレート91は、プラスチックを発泡成形したものであって、両側縁に沿って上方に突出する一対の側壁96を一体的に成形して設けている。さらに、基礎プレート91は、一対の側壁96から内側に離れた位置に、側壁96に沿って一対の側溝97を設けており、さらに側壁96と側溝97との間の上面を、側溝97に向かって下り勾配に傾斜させてなる傾斜面98としている。この養液栽培装置は、培地94に供給されて培地94を透過する廃液を、側溝97に向かって流し、側溝97から基礎プレート91の外部に排水する。
【0006】
図9の栽培装置は、ロックウールを使用しないので、ロックウールが田畑に廃棄される弊害は解消できるが、培地を少なくできない。散水して養液を均一には培地に供給できず、培地全体を理想的な水分環境にできず、植え付けられた全ての植物を好ましい状態で生育できなくなるからである。このため、培地の使用量が多くなってランニングコストを低減できない欠点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、以上の欠点を解消することを目的に開発されたもので、多量のロックウールを使用することなく、さらに少量の培地でもって植物を理想的な環境で生育できる養液栽培による植物の栽培装置を提供することにある。
【0009】
本発明の植物の養液栽培装置は、周壁3Aの内側に養液20を充填してなる上方開口の養液室30を有するトレイ3と、トレイ3の養液室30に配置してなる水平台31と、この水平台31の上に積層されてトレイ3内の養液20を吸水する吸水シート36と、この吸水シート36の上に積層されて植物Sの根の通過を阻止して水を透過させる防根シート37と、この防根シート37を透過する養液20を吸水する拡散給水シート38と、この拡散給水シート38の上に載せられて植物Sが植え付けられる培地39と、トレイ3に充填している養液20の液面レベルと水平台31との相対位置をコントロールして、吸水シート36をトレイ3に充填してなる養液20に接触させて、トレイ3の養液20を吸水シート36に移行させる相対位置に調整する調整機構4と、
トレイ3に養液20を供給する養液供給器1を備える。
養液供給器1は、トレイ3の上方に配置してなる注液管24を有し、注液管24から培地39に養液20を供給して、培地39に供給する養液20を、拡散給水シート38と防根シート37と吸水シート36とに通過させてトレイ3に供給し、拡散給水シート38は、繊維を方向性なく立体的に集合している不織布であって、培地39は拡散給水シート38の上であって植物Sを植え付けする部分に載せられて、拡散給水シート38は培地39が載せられない領域を露出部としている。養液栽培装置は、調整機構4でもって、トレイ3の液面レベルと水平台31との相対位置が調整されて、養液20が吸水シート36に供給され、吸水シート36が防根シート37を通過して養液20を拡散給水シート38に供給し、拡散給水シート38が培地39に養液20を供給して、培地39に植え付けされた植物Sに養液20を供給する。
【0010】
以上の養液栽培装置は、多量のロックウールを使用することなく、さらに少量の培地に均一に養液を供給して全ての植物を理想的な環境で生育できる特徴がある。それは、以上の養液栽培装置が、養液を充填しているトレイに水平台を配設し、この水平台の上に、吸水シートと防根シートと拡散給水シートとを積層している積層シートを載せて、調整機構でもって、トレイに充填している養液の液面レベルと水平台との相対位置をコントロールして、養液を吸水シートに移行し、吸水シートから防根シートを透過して拡散給水シートに供給して、拡散給水シートが培地に養液を供給するからである。この構造の養液栽培装置は、トレイに多量の養液を充填して、調整機構で水平台と液面レベルとの相対位置を調整して、養液を吸水シートに均一に供給でき、さらに、吸水シートの養液を防根シートを介して拡散給水シートに均一に供給できる。拡散給水シートに均一に新鮮な養液を供給できるので、拡散給水シートの上に載せた培地には理想的な状態で養液が供給される。培地に均一に新鮮な養液が供給されるので、培地を少なくしてここに植え付けしている植物を理想的な環境で生育できる。
【0011】
本発明の植物の養液栽培装置は、調整機構4が、トレイ3に充填される養液20を所定の液面レベルに調整して、吸水シート36に養液20を供給できる位置に配置することができる。
以上の養液栽培装置は、植物が生育して重量が変化しても、養液の液面レベルと水平台との相対位置を理想的な位置に配置できる。このため、トレイの養液を常に好ましい状態で吸水シートに供給し、吸水シートから拡散給水シートを介して培地に供給できる。このため、培地には常に理想的な状態で養液を供給して植物を生育できる。
【0012】
本発明の植物の養液栽培装置は、調整機構4を、水平台31を養液20に浮かせるフロート41として、フロート41が水平台31を養液20に浮かせて、上に載せてなる吸水シート36に養液20を供給できる位置に配置することができる。
以上の養液栽培装置は、水平台をフロートで養液に浮かせて、養液の液面レベルと水平台との相対位置を調整するので、極めて簡単な機構で養液の液面レベルと水平台との相対位置を調整して、養液を吸水シートに供給できる。
【0013】
本発明の植物の養液栽培装置は、拡散給水シート38の上に、所定の間隔で点在して培地39を供給して、各培地39に植物Sを植え付けすることができる。
以上の養液栽培装置は、培地の使用量を特に少なくして、植物を栽培できる。それは、植物を植え付けする部分に限って局部的に培地を配置して植物を生育させるからである。
【0014】
本発明の植物の養液栽培装置は、水平台31が上面を凹凸面として、凹凸面に吸水シート36を載せることができる。
以上の養液栽培装置は、吸水シートの下で養液をスムーズに循環させて、養液を均一に吸水シートに供給できる特徴がある。それは、水平台の上面に設けている凹凸面によって、吸水シートと水平台との間に養液を通過できる隙間ができるからである。
【0015】
本発明の植物の養液栽培装置は、水平台31を発泡スチロール製とすることができる。
以上の養液栽培装置は、水平台を安価に多量生産できる特徴がある。
【0016】
本発明の植物の養液栽培装置は、拡散給水シート38と吸水シート36を、親水性の繊維を立体的に集合してなる不織布とすることができる。
【0017】
本発明の植物の養液栽培装置は、トレイ3に養液20を供給する養液供給器1を備え、この養液供給器1が、トレイ3の上方に配置してなる注液管24を有し、注液管24から培地39に養液20を供給して、培地39に供給される養液20を、拡散給水シート38と防根シート37と吸水シート36とに通過させてトレイ3に
供給する。
【0018】
本発明の植物の養液栽培装置は、トレイ3から排出される排出液21から固形物と細菌とをろ過する濾過膜50と、この濾過膜50に排出液21を供給する循環ポンプ7とを備える濾過器5を有し、この濾過器5で固形物と細菌の除去された濾過養液22をトレイ3に循環させることができる。
以上の養液栽培装置は、トレイの養液を清澄で細菌の少ない状態に保持できるので、培地には清澄で細菌の少ない養液を供給できる。このため、植物を細菌による弊害を防止してより好ましい環境で生育できる特徴がある。
【0019】
本発明の植物の養液栽培装置は、濾過器5が、排出液21から固形物と細菌とを除去して肥料成分を除去しないろ過膜50を備え、このろ過膜50で濾過された濾過養液22に肥料成分を添加する肥料添加装置16を有することができる。
以上の養液栽培装置は、循環する養液に肥料成分を添加するので、トレイ内の養液の肥料濃度を均一に保持し、トレイの養液を培地に供給することで、培地に植え付けしている植物には、常に理想的な濃度で肥料を供給して生育できる特徴がある。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施例は、本発明の技術思想を具体化するための植物の養液栽培装置を例示するものであって、本発明は植物の養液栽培装置を以下のものに特定しない。さらに、この明細書は、特許請求の範囲を理解しやすいように、実施例に示される部材に対応する番号を、「特許請求の範囲」および「課題を解決するための手段の欄」に示される部材に付記している。ただ、特許請求の範囲に示される部材を、実施例の部材に特定するものでは決してない。
【0022】
図1と
図2に示す植物の養液栽培装置は、周壁3Aの内側に養液20を充填する上方開口の養液室30を有するトレイ3と、トレイ3の養液室30に配置している水平台31と、この水平台31の上に積層されてトレイ3内の養液20を吸水する吸水シート36と、この吸水シート36の上に積層されて植物Sの根の通過を阻止して水を透過させる防根シート37と、この防根シート37を透過する養液20を吸水する拡散給水シート38と、この拡散給水シート38の上に載せられて植物Sが植え付けられる培地39と、トレイ3に充填している養液20の液面レベルと水平台31との相対位置をコントロールして、吸水シート36をトレイ3に充填している養液20に接触させて、トレイ3の養液20を吸水シート36に移行させる相対位置に調整する調整機構4を備える。
【0023】
以上の養液栽培装置は、調整機構4でトレイ3の液面レベルと水平台31との相対位置を調整する。調整機構4は、吸水シート36の下部を養液20に接触させるように、液面レベルを調整し、あるいは水平台31の上下位置を調整する。下部が養液20に接触する吸水シート36は、トレイ3の養液20を吸水する。養液20を給水した吸水シート36は、養液20を防根シート37に通過させて拡散給水シート38に移行させる。養液20の移行された拡散給水シート38は、上に載せている培地39に養液20を供給して、培地39で植物Sを生育させる。
【0024】
図1と
図2に示すトレイ3は、両端を閉塞している溝形で周囲に周壁3Aを設けて、周壁3Aの内側に養液室30を設けている。溝形のトレイ3は、横幅を30cm〜50cm、周壁3Aの高さである深さを5cm〜20cmとして、養液20の液面レベルを底面から5cm〜10cmとして充填している。
【0025】
トレイ3は、プラスチック製あるいは金属板とすることができる。プラスチック製のトレイ3は、発泡スチロールを成型して製作することができる。発泡スチロールなどの硬質の発泡プラスチック製のトレイ3は、内面に非透水シート(図示せず)を敷いて水漏れしないようにできる。非透水シートは、水を透過させないプラスチックフィルムである。プラスチックフィルムの非透水シートは、ポリエチレンフィルムが適している。ただ、この非透水シートには、塩化ビニルフィルムも使用できる。内面を非透水シートでコートするトレイ3は、金属やプラスチックで枠組して、防水構造とする必要がなく、安価に製造できる。
【0026】
水平台31は、上下面を水平面内に配置して、上面に吸水シート36と防根シート37と拡散給水シート38とを積層して載せている。
図2の水平台31は、上面に所定のピッチで凸部32を設けて凹凸面としている。凸部32は、上面を同一平面に配置して、吸水シート36と防根シート37と拡散給水シート38とを積層してなる積層シート35を上面に載せて水平姿勢に支持している。凸部32は、高さとピッチを数cmとして、凸部32の間に養液20を流入させる。凸部32の間に流入する養液20は吸水シート36の下面に接触する。この構造の水平台31は、凸部32の間に流入する養液20を効果的に吸水シート36に移行できる。図示しないが、水平台は、下面を凹凸面として、下面とトレイの底面との間に養液を通過できる隙間を設けることもできる。水平台は、上面を平面状として、凹凸のない上面に積層シートを積層して、吸水シートに養液を移行させることもできる。さらに水平台は、上面と下面を平面状とすることもできる。
【0027】
水平台31は、発泡スチロール等、硬質の発泡プラスチックで製作される。硬質の発泡プラスチックで製作された水平台31は、例えば、厚さを1cm以上として上に載せる積層シート35と培地39に植え付けられる植物Sの荷重に耐える強度とする。水平台31は、拡散給水シート38に載せている培地39に植物Sを植え付けし、この植物Sを生育させる状態で、積層シート35を水平姿勢に保持して、吸水シート36に均一に養液20を供給する。植物Sは、拡散給水シート38の上に載せている培地39に植え付けられて生育するが、生育すると重くなる。積層シート35の上面に点在して植え付けられる多数の植物Sは、全ての植物Sが同じように生育することはなく、生育するに従って重量がアンバランスになる。硬質の発泡プラスチックの水平台31は、軽くて充分な曲げ強度を実現するので、植物Sが生育して重量がアンバランスになっても、積層シート35を水平姿勢に保持できる特徴がある。ただ、水平台は、必ずしも硬質の発泡プラスチックとする必要はなく、たとえば、木製や金属製とすることもできる。
【0028】
吸水シート36は、水平台31の上面に載せられて、養液20を吸収する。吸水シート36は、トレイ3の養液20を吸収し、防根シート37を透過させて拡散給水シート38に供給する。吸水シート36は、厚さを1mm〜1.5mmとする親水性の不織布が適している。養液栽培装置は、調整機構4でもって、トレイ3の液面レベルと水平台31との相対位置を調整して、吸水シート36を養液20に接触させるので、吸水シート36には薄いシートが使用できる。ただし、吸水シート36には、親水性の繊維を方向性なく立体的に集合している保水マット、繊維を方向性なく集合して繊維を交点で結合している不織布、所定の厚さのロックウール、織布、耐水性のある紙等も使用できる。吸水シート36は、トレイ3の養液20を吸収し、吸収する養液20を防根シート37に透過させて、拡散給水シート38から培地39に供給して、培地39の過乾燥を防止しながら植物Sを培地39で生育させる。
【0029】
防根シート37は、すでに市販されているものを使用する。防根シート37は、細繊維を立体的に集合した不織布が使用できる。また、微細な貫通孔を無数に設けているプラスチックフィルムも防根シート37として使用できる。さらに、防根シート37は、水を透過させて植物Sの根が成長して通過するのを阻止できる全てのシートを使用することができる。
【0030】
防根シート37は、拡散給水シート38の下に積層されて、拡散給水シート38に載せている培地39に植え付けしている植物Sの根が通過するのを阻止する。図の防根シート37は、拡散給水シート38と吸水シート36との間に配設されており、培地39に植え付けしている植物Sの根が伸びて、吸水シート36や水平台31の溝に侵入するのを阻止する。植物Sの根が吸水シート36や水平台31の溝に侵入すると、植物Sを植え替えするときに、吸水シート36を交換する必要があるが、根が吸水シート36に侵入しないと、吸水シート36を交換することなく、拡散給水シート38と培地39とを交換できる。また、根が養液20に接触して病気になるのを防止できる効果もある。防根シート37は、吸水シート36と拡散給水シート38との全面に積層される。ただ、拡散給水シート38の一部に培地39を載せて植物Sを生育させる場合、必ずしも拡散給水シート38の下面全体に防根シート37を積層する必要はない。
【0031】
拡散給水シート38は、吸水シート36から防根シート37を透過する養液20を吸水し、また、上から供給される養液20を吸水し、上に載せられる培地39に拡散して均一に供給する。拡散給水シート38は、吸水シート36から、あるいは上から養液20が供給されるので吸水シート36と同じように、親水性の繊維を方向性なく立体的に集合している不織布が使用される。拡散給水シート38は、たとえば厚さを、1mm以上であって3mm以下とする不織布が使用される。
【0032】
培地39は、供給される水分を保水する保水性と、過剰な水分を排水する排水性とが要求される。
図1と
図2の培地39は、拡散給水シート38の上であって植物Sを植え付けする部分に、局部的に点在するように載せている。培地39は、拡散給水シート38の上面において、植物Sを植え付けする部分に厚く、他の部分に薄く載せて植物Sを生育することもできる。また、拡散給水シートの上に所定の幅で畝状に培地を載せて、所定の間隔で植物Sを植え付けすることもできる。培地39は椰子柄やバーク等が適している。これ等の培地39は低コストで保水性と通水性に優れるので、ミョウガ、トマト、イチゴ、キュウリなど種々の植物Sの生育に最適である。また、これ等の培地39は、
図1に示すように、拡散給水シート38の上に局部的に点在して載せることができ、また、部分的に厚く、あるいは薄く載せることもでき、さらに畝状に載せることもできるので、植物Sの生育に最適な形状で拡散給水シート38の上に載せることができる。椰子柄又はバークを培地39に使用する養液栽培装置は、たとえば、頂上部分の高さを3cm〜8cm、裾部の直径を20cm〜30cmとする山形に培地39を載せて、ミョウガを植え付けして生育できる。
【0033】
ただし、本発明の培地39の材質を椰子柄やバークに特定するものではない。したがって、培地39には、現在使用され、あるいはこれから開発される他の培地、たとえば、有機物や無機物を単独であるいは混合して保水性と通水性を実現する他の全ての培地を使用できる。
【0034】
以上の養液栽培装置は、トレイ3内の液面レベルと水平台31との相対位置をコントロールして、トレイ3内の養液20を吸水シート36に供給し、吸水シート36から拡散給水シート38を介して培地39に供給する。このことを実現するために、トレイ3に充填している養液20の液面レベルと水平台31との相対位置をコントロールして、吸水シート36をトレイ3の養液20に接触させて、養液20をトレイ3から吸水シート36に移行させる相対位置に調整する調整機構4を備えている。
【0035】
図2と
図3に示す養液栽培装置の調整機構4は、上下に移動しないように水平台31をトレイ3の一定の位置に配置し、トレイ3に充填している養液20の液面レベルを一定にコントロールして、養液20の液面レベルと水平台31との相対位置を調整する。調整機構4は、液面レベルをコントロールして、吸水シート36を養液20に接触する位置に配置する。液面レベルと水平台31との相対位置をこの位置に調整して、水平台31に載せている吸水シート36を養液20に接触させて、養液20を吸水シート36に供給する。水平台31は、トレイ3の底に載せられて、上面を水平面内に配置する。
図2の水平台31は、下面に複数の脚部33を設けており、脚部33をトレイ3の底板3Bの上に載せて、上面を水平面内に配置する。
【0036】
調整機構4は、トレイ3の液面レベルを一定に保持する排出パイプ40を備える。排出パイプ40は、底板3Bを貫通して上下方向に延びる姿勢に固定されて、上端の開口部を養液20の液面レベルに配置している。排出パイプ40は、上端の開口部から養液20を排水して、液面レベルを一定に保持する。この調整機構4は簡単な構造で液面レベルと水平台31との相対位置を調整できる。また、培地39で植物Sが生育して重くなっても、水平台31を一定の上下位置に配置できるので、植物Sが生育する状態においても、液面レベルと水平台31との相対位置、すなわた、吸水シート36と液面レベルとの相対位置を一定に保持して、養液20を吸水シート36に供給できる特徴がある。
【0037】
図4と
図5に示す養液栽培装置の調整機構4は、水平台31を養液20に浮かせるフロート41とし、フロート41の水平台31を養液20に浮かせて、液面レベルと水平台31との相対位置を調整して、水平台31の上に載せている吸水シート36を養液20に接触させて養液20が供給される位置に配置する。この調整機構4は、水平台31を養液20に浮かせて、養液20の液面レベルと水平台31との相対位置を調整するので、養液20の液面レベルをコントロールすることなく、養液20の液面レベルと水平台31との相対位置を調整できる。また、水平台31をフロート41で養液20に浮かせて相対位置をコントロールするので、水平台31を常に水平姿勢に保持して、液面レベルとの相対位置を調整できる特徴がある。
【0038】
図4に示す養液栽培装置は、水平台31を発泡プラスチック等の密度が1よりも小さい部材で形成して、水平台31全体をフロート41としている。このフロートは、水平台31全体に作用する荷重と水平台31に作用する浮力とをバランスして、液面レベルに対する水平台31の相対位置を調整している。ただ、水平台は、別部材からなるフロートを内部や周囲に備えることもできる。この構造は、水平台の内部や周囲に配置されるフロートの容積や位置、個数等を調整して、液面レベルに対する水平台の相対位置を調整することができる。
【0039】
図6と
図7に示す調整機構4は、トレイ3に充填している養液20の液面レベルを変動して、吸水シート36を養液20に接触させて、養液20を吸水シート36に供給する給水タイミングと、吸水シート36を養液20から離して養液20を吸水シート36に供給しない非給水タイミングとして、吸水シート36に供給する養液量をコントロールする。この養液栽培装置は、調整機構4で液面レベルと水平台31との相対位置を調整して、トレイ3内の養液20を吸水シート36に供給するが、常に連続して養液20を吸水シート36に供給する必要はなく、養液20を吸水シート36に供給するタイミングと、供給しないタイミングを設けて、養液20を吸水シート36に供給することもできるからである。この調整機構4は、給水タイミングと非給水タイミングとの時間比率をコントロールして、吸水シート36から拡散給水シート38に供給する養液量をコントロールできる。
【0040】
この調整機構4は、トレイ3の液面レベルを検出するレベルセンサ42と、トレイ3の排出口43に連結している排出パイプ40に連結している開閉弁44と、開閉弁44を開閉する制御回路45とを備える。制御回路45は開閉弁44と給水機構8を制御して、給水タイミングにおいては養液20を吸水シート36に供給し、非給水タイミングでは養液20を吸水シート36に供給しない。制御回路45は、給水タイミングにおいては、開閉弁44を閉じ、給水機構8の給水ポンプ14と原水ポンプ15Aを運転して、トレイ3内の液面レベルを吸水シート36を養液20に接触させる位置にコントロールする。制御回路45はレベルセンサ42でトレイ3内の液面レベルを検出して、給水ポンプ14と原水ポンプ15Aの運転を制御し、養液20の液面レベルが吸水シート36に接触する位置まで上昇したことをレベルセンサ42が検出する、給水ポンプ14と原水ポンプ15Aの運転を停止する。また、非給水タイミングにおいては、給水ポンプ14と原水ポンプ15Aの運転を停止して、開閉弁44を開いてトレイ3内の養液20を排水する。このタイミングにおいても、養液20が吸水シート36に接触しない位置に低下したことをレベルセンサ42で検出すると、開閉弁44を閉じて液面レベルを所定の位置に停止する。
【0041】
図3、
図5、及び
図7の養液栽培装置は、トレイ3に養液20を供給する養液供給器1を備える。養液供給器1は、トレイ3から排水される排出液21を蓄える排液タンク6と、この排液タンク6の排出液21を濾過する濾過器5と、排液タンク6の排出液21を濾過器5に供給する循環ポンプ7と、濾過器5で濾過された濾過養液22に原水と肥料とを添加して調整養液23とする添加器2と、調整養液23をトレイ3に供給する給水機構8と、この給水機構8で移送される調整養液23をトレイ3に供給する注液管24とを備える。濾過器5は、排出液21を濾過膜50に透過させて、有機浮遊物と細菌とを分離して、肥料成分を分離しない濾過養液22とする。
【0042】
トレイ3から排出される排出液21は、培地39を透過して有機浮遊物と細菌と肥料成分とを含んでいる。この排出液21は、排液タンク6に一時的に蓄えられる。ここに蓄えられる排出液21は、循環ポンプ7で濾過器5に供給される。循環ポンプ7は、排出液21を0.1〜0.5kg/cm
2の圧力に加圧して濾過器5に供給して、濾過膜50に透過させる。濾過膜50は空隙が小さいと圧力損失が大きくなる。したがって、循環ポンプ7は、濾過膜50の空隙によって最適な圧力で排出液21を濾過器5に供給する。
【0043】
濾過器5は、排出液21を透過させる濾過膜50を備える。濾過膜50は、有機浮遊物と細菌とを透過させずに、肥料成分を透過させる微細な空隙を有する。この濾過膜50は、排出液21を透過させて、有機浮遊物と細菌を除去して、肥料成分を除去しない濾過養液22とする。有機浮遊物は1μmよりも大きく、細菌は0.1μmよりも大きく、溶解した肥料成分は0.001μmよりも小さい。したがって、濾過膜50は、空隙を0.001μm〜0.1μmとして、有機浮遊物と細菌とを透過させずに除去して、溶解している肥料成分を透過させる。ちなみに、有機浮遊物は1μmよりも大きく、大腸菌やO157菌は約5μmよりも大きく、緑膿菌は約0.5μmよりも大きいので、有機浮遊物と細菌は、空隙を0.001μm〜0.1μmとする濾過膜50で除去される。水に溶解している肥料成分は、0.0005μm〜0.0008μmの範囲にあるので、0.001μm〜0.1μmの濾過膜50を透過する。濾過膜50は、有機浮遊物と細菌を除去して、肥料成分を透過させる範囲において、空隙を小さくして除去物の大きさをコントロールできる。空隙を0.1μmとする濾過膜50は、有機浮遊物に加えて、インフルエンザウイルス、緑膿菌、一般細菌、コレラチフス菌、大腸菌、O157菌等の細菌を除去できる。空隙を0.001μmとする濾過膜50は、以上の細菌に加えて、0.01μmよりも大きいエイズウイルスや、発ガン物質であるトリハロメタン、ダイオキシン、ヒ素、トリクロロエチレンなども除去できる。
【0044】
ところで、濾過膜50は、空隙を完全に一定な大きさにコントロールするのが極めて難しい。したがって、平均的な空隙の大きさを、たとえば0.001μmとする濾過膜50は、0.001μmよりも大きく、また小さい空隙も分布する。このため、この濾過膜50を使用して得られる濾過養液22は、有機浮遊物をほぼ100%分離するものであっても、細菌の一部が透過して完全に無菌な濾過養液22にはならない。ただ、トレイ3に循環させる養液20は完全な無菌状態とする必要はなく、植物Sの栽培に病害を与えない程度に細菌を除去して使用できる。濾過養液22に含まれる細菌数は、濾過膜50の空隙が大きくなるにしたがって多くなる。このため、濾過膜50は要求される細菌濃度と、ろ過効率とを考慮して最適な空隙に設定される。とくに、後述するように、濾過養液22を処理タンク10に蓄えて金属イオンで殺菌する装置にあっては、濾過膜50の空隙を大きくして、濾過養液22の細菌濃度を高くしても使用できる。
【0045】
濾過器5は、排出液21を濾過膜50に透過させて、有機浮遊物と細菌を分離して肥料成分を分離しない濾過養液22と、有機浮遊物と細菌を含む排出液21とに分離する。濾過膜50を透過する濾過養液20は、再びトレイ3に循環される。濾過膜50を透過した濾過養液22は、処理タンク10に一時蓄えられる。濾過膜50を透過しない排出液21は、廃液として直ちに外部に廃棄することもできるが、好ましくは、再び排出液21として排液タンク6に循環させる。このように、濾過膜50を透過しない排出液21が繰り返し排液タンク6に供給されると、排液タンク6に蓄えられた排出液21中の有機浮遊物や細菌の濃度が高くなる。このため、排液タンク6内の排出液21に含まれる有機浮遊物や細菌の濃度がある程度高くなると、濾過膜50を透過しない排出液21を廃液として外部に廃棄する。これにより、排出液21中に含まれる有機浮遊物や細菌等の不要物をより濃縮させた状態として、外部に廃棄される廃液の量を低減しながら、効率よく廃棄できる。
【0046】
図の養液供給器1は、処理タンク10に金属イオン発生装置11を連結している。金属イオン発生装置11は、処理タンク10の濾過養液22に金属イオンを添加する。金属イオンは、処理タンク10に蓄えられる濾過養液22を殺菌して、細菌の繁殖を防止する金属イオンであって、銅イオンや銀イオンである。金属イオン発生装置11は、銅イオンと銀イオンのいずれかを濾過養液22に添加する。ただ、銅イオンと銀イオンの両方を添加することもできる。金属イオンの添加量は、処理タンク10の濾過養液22の金属イオン濃度を、たとえば、0.000001ppm〜0.5ppm、好ましくは0.001ppm〜0.1ppmとする。
【0047】
金属イオン発生装置11は、
図3、
図5、及び
図7に示すように、原水の通路に一対の電極12を対向して配置し、プラス側の電極12に銅や銀の金属電極12Aを使用して、一対の電極12に直流電源13を接続している。この金属イオン発生装置11は、金属電極12Aの銅や銀をイオン化して原水に供給する。原水の金属イオンは処理タンク10に供給される。金属イオン発生装置11は、電極12に通電する電流で金属イオンの発生量をコントロールする。一対の電極12に流れる電流に比例して、原水中にイオン化して放出される金属イオン量が増加するからである。図の金属イオン発生装置11は、原水中に金属イオンを放出して、処理タンク10に供給するが、金属イオン発生装置は、一対の電極を処理タンクに配置して、処理タンクに直接に金属イオンを放出することもできる。処理タンクの濾過養液を金属イオンで殺菌する装置は、濾過養液をより効果的に殺菌できる。
【0048】
図3、
図5、及び
図7の装置は、濾過器5でろ過して得られる濾過養液22を処理タンク10に蓄える。この装置は、排液タンク6の排出液21を連続的にろ過して処理タンク10に蓄えて、必要なタイミングで処理タンク10からトレイ3に供給するので、濾過器5の単位時間当たりの処理量を少なくできる。時間をかけて排出液21をろ過して処理タンク10に蓄えて、一時にトレイ3に供給できるからである。ただ、本発明の装置は、必ずしも処理タンクを設けることなく、濾過器の単位時間の処理能力を大きくし、濾過器で得られる濾過養液を処理タンクに蓄えることなく、これに肥料を添加してトレイに供給することもできる。
【0049】
処理タンク10の濾過養液22は給水ポンプ14で注液管24に供給される。給水ポンプ14で注液管24に供給される濾過養液22には、肥料濃度を調整する肥料の添加器2でもって、原水と肥料と微量成分が添加され、調整養液23となってトレイ3に供給される。肥料の添加器2は、濾過養液22に原水を供給する原水混合装置15と、原水混合装置15で原水の添加された混合水に肥料を添加する肥料添加装置16と、さらに混合水に肥料の微量成分を添加する微量成分添加装置17とを備える。
【0050】
図1の原水混合装置15は、地下水を吸い上げてトレイ3に供給する原水ポンプ15Aを備える。この原水ポンプ15Aは、原水である地下水を所定の流量でトレイ3に供給する。ただし、原水混合装置は、図示しないが、所定量の原水を蓄える原水タンクと、この原水タンクの原水を吸入して、培地に供給する原水ポンプとで構成することもできる。この原水タンクは、一度にトレイに供給する水量の原水を蓄える。
【0051】
肥料添加装置16は、原水混合装置15から供給される原水と、給水ポンプ14から供給される濾過養液22を混合している混合水に、所定の肥料を添加して調整養液23とする。この肥料添加装置16は、混合水に液肥26を添加する。肥料添加装置16は、肥料の水溶液である液肥26を蓄える液肥タンク16Aと、この液肥タンク16Aから液肥26を吸入して混合水に添加する添加ポンプ16Bとを備える。肥料添加装置16は、混合水の肥料濃度が設定値となるように液肥26を添加する。肥料添加装置16は、混合水に添加する液肥量をコントロールして混合水の肥料濃度を調整する。
図3、
図5、及び
図7の肥料添加装置16は、液肥26の添加された養液20の肥料濃度を濃度センサ18で検出しながら肥料の添加量を制御する。この肥料添加装置16は、濃度センサ18に養液20の電気伝導度を検出するセンサを使用する。濃度センサ18は、養液20の肥料濃度を検出し、検出された肥料濃度で添加ポンプ16Bの流量を制御して、養液20の肥料濃度を所定の範囲にコントロールする。
【0052】
微量成分添加装置17は、肥料を添加した養液20に、さらに、植物Sの栽培に必要な種々の微量成分、たとえば金属元素等を添加して調整養液23とする。この微量成分添加装置17は、微量成分を含有する微量成分含有溶液27を蓄える溶液タンク17Aと、この溶液タンク17Aに蓄えられる微量成分含有溶液27を養液20に添加する添加ポンプ17Bとを備える。
【0053】
調整養液23は、給水機構8でトレイ3に供給される。
図3、
図5、及び
図7の養液栽培装置は、給水ポンプ14と原水ポンプ15Aを運転して調整養液23をトレイ3に供給する。したがって、この図の養液栽培装置は、給水ポンプ14と原水ポンプ15Aを給水機構8として調整養液23をトレイ3に供給する。
【0054】
以上の養液栽培装置は、以下のようにして植物Sを生育させる。
[培地39への養液供給]
調整機構4がトレイ3の液面レベルをコントロールし、あるいは水平台31を養液20に浮かせて水平台31の位置をコントロールして、液面レベルと水平台31との相対位置をコントロールして、水平台31に載せている吸水シート36を養液20に接触させる。この状態で、トレイ3の養液20は吸水シート36に供給され、吸水シート36の養液20は防根シート37を介して拡散給水シート38に供給され、拡散給水シート38の養液20は培地39に供給されて、培地39の植物Sを生育させる。
図3の養液栽培装置は、注液管24から養液20が供給されるが、注液管24から散水される養液20は、培地39と拡散給水シート38に供給され、拡散給水シート38を透過し、さらに防根シート37と吸水シート36を通過してトレイ3に供給される。注液管24が養液20の散水を停止する状態で、トレイ3の養液20は、吸水シート36、防根シート37、拡散給水シート38を通過して培地39に供給されて植物Sを生育させる。トレイ3に養液20が供給されると、調整機構4は液面レベルと水平台31との相対位置をコントロールする。調整機構4にコントロールされて、吸水シート36は常に養液20に接触して、トレイ3内の養液20を吸水し、吸水した養液20を防根シート37を介して拡散給水シート38に供給する。
【0055】
[トレイ3内の養液20の排出]
トレイ3内の養液20は排液タンク6に排出される。調整機構4が養液20の液面レベルを一定の保持する装置においては、トレイ3に養液20が供給されると養液20を排出して液面レベルを一定に保持する。水平台31を養液20に浮かせる調整機構4の装置は、養液20の液面レベルを一定に保持することなく、所定の範囲で上下に移動させるように養液20を排液タンクに排出させる。
【0056】
排液タンク6の排出液21は、循環ポンプ7で濾過器5に供給される。濾過器5は、濾過膜50に排出液21を透過させて有機浮遊物と細菌を除去して肥料成分を分離しない濾過養液22とする。
図3、
図5、及び
図7の養液栽培装置は、この工程において、トレイ3から排水される排出液21を、一時的に排液タンク6に蓄える。排液タンク6に蓄えられた排出液21は、循環ポンプ7で濾過器5に供給され、濾過膜50を透過して肥料成分を含み、有機浮遊物と細菌の分離された濾過養液22となる。濾過養液22は処理タンク10に蓄えられる。
【0057】
[排出された養液20の殺菌]
処理タンク10の濾過養液22に、金属イオンが添加される。金属イオンは、銀イオン又は銅イオン、あるいは金属イオンと銅イオンの両方である。処理タンク10の濾過養液22は、銀イオンにあってはイオン濃度を、たとえば0.05ppmとし、銅イオンにあってはイオン濃度をたとえば0.08ppmとして、処理タンク10の濾過養液22を殺菌状態として細菌の繁殖を防止できる。
【0058】
[肥料濃度の調整]
処理タンク10の濾過養液22に原水を添加する。循環される養液20は、一部が植物Sに供給され、一部が気化して失われ、さらに一部が濾過器5で濾過して除去されて減少するので、減少した水量を原水として添加する。濾過養液22に減衰を添加された混合水に、肥料添加装置16でもって所定量の液肥26が添加される。液肥26は、濃度センサ18で養液20の肥料濃度を検出しながら、設定された濃度となるように添加される。さらに、図の装置は、微量成分添加装置17でもって、微量成分も添加する。
【0059】
[養液20のトレイ3への供給]
肥料成分の添加された調整養液23は給水ポンプ14と原水ポンプ15Aを介して注液管24に供給されて、トレイ3に散水して供給される。