(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ターゲットDNA分子の増幅に必要な試薬成分は、前記ターゲットDNA分子に結合する複数のプライマー分子である、請求項1または2に記載の遺伝子検査用検体処理装置。
前記制御部は、前記マイクロプレートのウェルに前記破壊試薬を分注してから、前記ウェル内の液体の状態が安定するために要する所定時間経過後、前記ウェルから液体を吸引および排液するように、前記分注部および前記移送部を制御する、請求項1〜3の何れか一項に記載の遺伝子検査用検体処理装置。
前記制御部は、前記破壊試薬の分注、前記ウェルからの液体の吸引および排液を順次行う破壊処理を複数回繰り返し、初回の前記破壊処理では、前記破壊試薬を分注してから前記所定時間経過後、前記吸引の工程へと移行し、2回目以降の前記破壊処理では、前記破壊試薬を分注してから前記所定時間経過前に、前記吸引の工程へと移行する、請求項4に記載の遺伝子検査用検体処理装置。
前記制御部は、前記エマルジョン破壊モードが設定された場合、前記開始指示部に対する操作に応じて、前記マイクロプレート配置部に設置された前記マイクロプレートのウェルに対して、前記破壊試薬の分注後、増幅されたターゲットDNA分子にハイブリダイズ可能な標識プローブを含む試薬を分注するように、前記分注部および前記移送部を制御する、請求項1〜5の何れか一項に記載の遺伝子検査用検体処理装置。
前記制御部は、前記破壊試薬の分注後、前記ウェルから液体を吸引および排液して前記ウェルに前記ビーズを残存させ、その後、前記分注部が新たな前記分注チップを再装着することなく前記排液に用いた前記分注チップのまま、前記標識プローブを含む試薬を吸引し、前記ビーズを残存させた前記ウェルに前記標識プローブを含む試薬を分注するように、前記分注部および前記移送部を制御する、請求項6に記載の遺伝子検査用検体処理装置。
前記モード設定部は、前記マイクロプレート配置部に設置された前記マイクロプレートのウェル内において、BF分離を行って未反応の標識プローブを分離する洗浄モードを設定可能に構成されており、
前記制御部は、前記洗浄モードが設定された場合、洗浄処理に必要な試薬容器および分注チップ容器の設置を促す表示を行うように表示部を制御し、前記開始指示部の操作に応じて、前記マイクロプレートのウェル内において、BF分離を行って未反応の標識プローブを前記ビーズから吸引分離し、洗浄試薬を分注するように、前記分注部および前記移送部を制御する、請求項6〜8の何れか一項に記載の遺伝子検査用検体処理装置。
前記制御部は、前記洗浄モードが設定された場合、前記マイクロプレートの第1ウェル内において未反応の標識プローブを前記ビーズから吸引分離した後、前記マイクロプレートの前記第1ウェルとは異なる第2ウェルにおいて未反応の標識プローブを前記ビーズから吸引分離する前に、前記第1ウェルに対して前記洗浄試薬を分注するように、前記分注部および前記移送部を制御する、請求項9に記載の遺伝子検査用検体処理装置。
前記分注チップ容器配置部および前記試薬容器配置部がそれぞれ複数設けられており、前記表示部は、前記複数の分注チップ容器配置部および前記複数の試薬容器配置部のそれぞれに対応して設置されている、請求項1〜13の何れか一項に記載の遺伝子検査用検体処理装置。
前記表示部は、前記複数の分注チップ容器配置部および前記複数の試薬容器配置部にそれぞれ設けられた複数の発光部を備え、前記分注チップ容器配置部に前記分注チップ容器が設置されると当該分注チップ容器配置部に設けられた前記発光部が前記分注チップ容器によって隠され、前記試薬容器配置部に前記試薬容器が設置されると当該試薬容器配置部に設けられた前記発光部が前記試薬容器によって隠されるように、それぞれの前記発光部が配置されている、請求項14に記載の遺伝子検査用検体処理装置。
前記制御部は、前記マイクロプレートのウェル内に試薬を吐出した後、前記ウェル内の前記液体に対して吸引と吐出を行って前記ウェル内の液体を攪拌する工程を複数回繰り返し、最後の前記攪拌工程において前記液体の吐出が行われた後で、前記分注チップを上昇させ、前記分注チップ内に残った前記液体が前記分注チップの先端へと集まるのに要する所定時間経過後、前記分注チップ内に残った液体を吐出し、前記分注チップを上昇させるよう、前記分注部を制御する、請求項1〜17の何れか一項に記載の遺伝子検査用検体処理装置。
前記ノズルの前記端部には、前記分注チップの被嵌合部分の内側面と略同径の側面部分が周方向に複数残されており、前記側面部分の間に、前記ノズルの先端に向かうに従って前記ノズルの中心に近づく傾斜面が形成され、前記ノズルの前記端部が前記分注チップに嵌め込まれると、前記複数の側面部分が前記分注チップの内側面に当接して前記分注チップが前記端部に支持される、請求項21に記載の遺伝子検査用検体処理装置。
前記分注部は、前記複数のノズルがそれぞれ挿入される複数の孔を有するリムーバーを昇降させる第2駆動機構を備え、前記第2駆動機構によって前記リムーバーを下降させることにより全ての前記ノズルに装着された前記分注チップを前記ノズルから同時に脱落させる、請求項24に記載の遺伝子検査用検体処理装置。
前記エマルジョン作製モードで作製されたW/O型エマルジョンの各液滴内で前記ターゲットDNA分子を増幅するPCR処理を実行可能に構成されたサーマルサイクラーをさらに備える、請求項1〜25の何れか一項に記載の遺伝子検査用検体処理装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<実施形態1>
実施形態1は、エマルジョンを用いた遺伝子検査のための検体前処理を行うための装置、特に、BEAMing(Bead, Emulsion, Amplification, and Magnetics)法に基づいて遺伝子を検出する際に、遺伝子検査用の検体に対して前処理を行うための装置に本発明を適用したものである。BEAMing法は、デジタルPCR技術とフローサイトメトリー技術を融合させた遺伝子解析手法である。デジタルPCRとは、限界希釈(各微小区画にターゲットDNAが1または0となるような希釈)したサンプルDNAを微小区画内に分散させてPCR増幅を行い、増幅シグナルがポジティブの微小区画の数を直接カウントすることでサンプル中のターゲット遺伝子濃度を絶対的に測定する測定手法のことである。ターゲット遺伝子を含む微小区画では増幅シグナルがポジティブとなり、ターゲット遺伝子を含まないもしくはサンプルDNA自体を含まない微小区画では増幅シグナルがネガティブとなる。
【0014】
BEAMing法は、たとえば、DNA抽出処理、希釈処理、エマルジョン作製処理、PCR処理、エマルジョン破壊処理、ハイブリダイゼーション処理、洗浄処理、フローサイトメータによる測定処理、等からなる。実施形態1の装置は、このうち、エマルジョン作製処理と、エマルジョン破壊処理と、洗浄処理を行う。
【0015】
図1(a)に示すように、遺伝子検査用検体処理装置10は、筐体11と、カバー12と、分注チップ廃棄部13と、操作部14と、を備える。
図1(a)において、XYZ軸は、互いに直交しており、操作部14が設けられた装置正面から見て、X軸正方向は左方向を示し、Y軸正方向は後方を示し、Z軸正方向は鉛直下方向を示している。以下の図面においても、XYZ軸は、
図1(a)に示すXYZ軸と同じである。
【0016】
オペレータは、破線で示すカバー12を破線矢印の方向に動かすことにより、筐体11の内部を開放して筐体11の内部にアクセスできる。分注チップ廃棄部13には、廃棄袋13aがセットされる。廃棄袋13aには、後述するように、使用済みの分注チップ51が廃棄される。分注チップ廃棄部13は、Y軸正側の部分が、カバー12よりも筐体11の内部に位置付けられている。分注チップ廃棄部13の筐体11の内部に位置付けられた部分を介して、使用済みの分注チップ51が廃棄袋13aに廃棄される。
【0017】
図1(b)に示すように、操作部14は、モード設定部14aと、モード表示部14bと、対象ウェル設定部14cと、対象ウェル表示部14dと、装置状態表示部14eと、開始指示部14fと、停止指示部14gと、を備える。
【0018】
モード設定部14aは、遺伝子検査用検体処理装置10の動作モードを設定するためのボタンである。オペレータは、モード設定部14aを1回押すごとに、エマルジョン作製モードと、エマルジョン破壊モードと、洗浄モードの順序で、サイクリックに動作モードを切り替えることができる。モード表示部14bは、3つの動作モードにそれぞれ対応する3つの発光部を備える。これら発光部は、LEDにより構成される。モード設定部14aにより動作モードが設定されると、設定された動作モードに対応するモード表示部14bの発光部が点灯する。
【0019】
対象ウェル設定部14cは、後述するマイクロプレート61に設けられた複数のウェル61aのうち、処理対象とするウェル61aの列数を設定するためのボタンである。オペレータは、対象ウェル設定部14cを1回押すごとに、1列〜12列の順序で、処理列数を切り替えることができる。対象ウェル表示部14dは、処理列数を示す12個の発光部を備える。これら発光部は、LEDにより構成される。対象ウェル設定部14cにより処理列数が設定されると、設定された処理列数に対応する発光部が点灯する。たとえば、処理列数が7列に設定されると、1列〜7列に対応する対象ウェル表示部14dの発光部が点灯する。
【0020】
装置状態表示部14eは、遺伝子検査用検体処理装置10の状態を示す発光部である。この発光部は、LEDにより構成される。遺伝子検査用検体処理装置10がスタンバイ状態のとき、装置状態表示部14eは緑色に点灯する。スタンバイ状態とは、後述するエマルジョン作製処理と、エマルジョン破壊処理と、洗浄処理とが行われておらず、これらの処理を開始可能な状態のことである。遺伝子検査用検体処理装置10が初期化処理中または動作中のとき、装置状態表示部14eは緑色に点滅する。遺伝子検査用検体処理装置10でエラーが発生しているとき、装置状態表示部14eは赤色に点灯する。遺伝子検査用検体処理装置10が電源OFF状態のとき、または遺伝子検査用検体処理装置10の電源が投入されてから約1分経過するまでの間、装置状態表示部14eは消灯している。電源が投入されてから約1分が経過したとき、ならびに、エマルジョン作製処理、エマルジョン破壊処理および洗浄処理の何れかが終了したとき、遺伝子検査用検体処理装置10がスタンバイ状態となる。
【0021】
開始指示部14fは、遺伝子検査用検体処理装置10による処理を開始するためのボタンである。オペレータは、スタンバイ状態において開始指示部14fを押すことにより、モード設定部14aにより設定された動作モードによる処理を、遺伝子検査用検体処理装置10に開始させることができる。停止指示部14gは、遺伝子検査用検体処理装置10の処理を停止させるためのボタンである。
【0022】
図2に示すように、遺伝子検査用検体処理装置10は、筐体11の内部に、底面20と、移送部30と、分注部40と、分注チップ容器配置部111〜117と、マイクロプレート配置部121と、試薬容器配置部131〜133、141と、を備える。
【0023】
移送部30は、分注部40を、分注チップ容器配置部111〜117、マイクロプレート配置部121、試薬容器配置部131〜133、141に移動させる。移送部30は、2本のレール31と、前後移動部材32と、レール33と、を備える。2本のレール31は、前後方向に延びている。前後移動部材32とレール33は、左右方向に延びている。前後移動部材32は、2本のレール31に沿って前後方向に移動可能となるよう構成されている。レール33は、前後移動部材32に設置されている。移送部30は、さらに、図示しない前後駆動部と左右駆動部を備えている。移送部30は、前後駆動部により、前後移動部材32を2本のレール31に沿って前後方向に移動させる。移送部30は、左右駆動部により、分注部40をレール33に沿って左右方向に移動させる。
【0024】
分注部40は、後述する分注チップ51を装着して、液体の吸引および吐出を行う。分注部40は、第1駆動機構41と、第2駆動機構42と、吸引吐出部43と、を備える。分注部40は、レール33に沿って左右方向に移動可能となるよう構成されている。第1駆動機構41は、鉛直方向に延びる図示しないレールに沿って、第2駆動機構42と吸引吐出部43を鉛直方向に移動させる。第2駆動機構42は、後述するシリンダ212を鉛直方向に移動させる。シリンダ212が昇降することにより、吸引吐出部43の8つのノズル220に装着された分注チップ51を介して、吸引および吐出が行われる。8つのノズル220は、横方向に所定の間隔で並んでいる。第2駆動機構42と吸引吐出部43の構成については、追って
図7〜
図11(b)を参照して説明する。
【0025】
図3(a)に示すように、分注チップ容器配置部111〜117には、分注チップ容器50が配置される。1つの分注チップ容器50には、96個の分注チップ51が載置されている。96個の分注チップ51は、前後方向に12個、左右方向に8個並んでいる。分注チップ容器50において左右方向に載置されている8個の分注チップ51は、8つのノズル220と同じ間隔で並んでいる。
図3(b)に示すように、分注チップ51は、開口51aと下端51bが形成されている。開口51aには、ノズル220が嵌め込まれる。下端51bには、吸引および吐出を行うための孔が設けられている。
【0026】
図2と
図3(a)に示すように、分注チップ容器配置部111〜117は、底面20に設置された枠部材118の7つの開口118aと、底面20とにより構成される。7つの開口118aは、分注チップ容器50が嵌り込む輪郭を有する。
【0027】
分注チップ容器配置部111〜117内の底面20には、それぞれ、発光部111a〜117aが設けられている。発光部111a〜117aはLEDにより構成される。発光部111a〜117aは、それぞれ、分注チップ容器配置部111〜117に分注チップ容器50をセットする必要がある場合に点灯する。たとえば、分注チップ容器配置部111〜115に分注チップ容器50をセットする必要がある場合、発光部111a〜115aが点灯し、発光部116a、117aは消灯する。なお、分注チップ容器配置部111〜117にセットされる分注チップ容器50には、常に96個の分注チップ51が載置されていることが想定されている。
【0028】
ラベル111b〜117bは、それぞれ、発光部111a〜117aに隣り合う底面20の位置に貼付されている。
図2に示すように、ラベル111b〜117bには、それぞれ、分注チップ容器配置部111〜117に配置されるべき容器の種類が分注チップ容器50であることを示す「RACK」が記載されている。
図3(a)では、ラベル111b〜117b内の文字は、便宜上、図示省略されている。
【0029】
ラベル111b〜117bに代えて、液晶表示部が設置されても良い。液晶表示部には、設置されるべき容器の種類を示す「RACK」が表示される。この場合、発光部111a〜117aが省略されて、液晶表示部のバックライトが発光部として機能しても良い。たとえば、分注チップ容器50をセットする必要がある分注チップ容器配置部111〜117の液晶表示部のみ動作して当該液晶表示部のバックライトが点灯する。
【0030】
後述するラベル121b、131b、132d〜132f、133b、141bについても、液晶表示部に置き換えられても良い。これら液晶表示部にも、設置されるべき容器の種類が表示される。このように、ラベルに代えて液晶表示部が設置されると、設置すべき容器の種類が変更された場合でも、液晶表示部の表示内容を変更するだけで設置すべき容器の種類を示すことができる。
【0031】
図3(a)に示すように、オペレータは、白抜き矢印に示すように、分注チップ容器配置部111〜117に対して分注チップ容器50をセットする。発光部が点灯している分注チップ容器配置部に分注チップ容器50がセットされると、点灯している発光部は、セットされた分注チップ容器50によって隠される。これにより、オペレータは、必要な分注チップ容器50のセットが完了したことを確認できる。
【0032】
ここで、分注チップ容器50は緑色であり、枠部材118は分注チップ容器50の色に合わせて緑色となっている。これにより、オペレータは、分注チップ容器50の設置場所が、枠部材118により構成される分注チップ容器配置部111〜117であることを直感的に理解できる。なお、実施形態1では、容器と配置部の色が統一されているのは、分注チップ容器50と分注チップ容器配置部111〜117だけであるが、他の容器と他の配置部についても、色を統一することにより直感的に設置場所がわかるようにしても良い。
【0033】
図4(a)に示すように、マイクロプレート配置部121には、マイクロプレート61が配置される。マイクロプレート61は、複数の凹状のウェル61aを有する。ウェル61aは、マイクロプレート61の上面に、複数行および複数列に間隔を介して複数設けられている。具体的には、マイクロプレート61の上面に、前後方向に12個、左右方向に8個並ぶようにして、合計96個のウェル61aが設けられている。左右方向の8個のウェル61aは、8つのノズル220と同じ間隔で並んでいる。ウェル61aは、ターゲットDNA分子等を収容する。マイクロプレート61は、X軸負側かつY軸負側の端部に切欠き61bを有する輪郭となっている。マイクロプレート61は、外周全領域に、下方に延びる鍔部が形成され、この鍔部によって外周側面が形成されている。鍔部は、マイクロプレート61の外周全領域において同じ幅および同じ厚みとなっている。
【0034】
図2と
図4(a)に示すように、マイクロプレート配置部121は、底面20に形成された凹部122により構成される。凹部122は、マイクロプレート61が嵌り込む輪郭を有する。
【0035】
凹部122は、底面122aと、開口122bと、突出部122cと、を有する。底面122aは、底面20よりも一段低い位置にある。底面122aは、マイクロプレート配置部121にセットされたマイクロプレート61の外周の鍔部を支持する。開口122bは、底面122aの中央に設けられている。開口122bの輪郭は、マイクロプレート配置部121にマイクロプレート61がセットされたときの、96個のウェル61aの外側の輪郭よりも大きく設定されている。開口122bを介して、後述する磁石部材80による磁力がウェル61aに対して印加される。磁石部材80については、追って
図6(a)、(b)を参照して説明する。
【0036】
突出部122cは、マイクロプレート配置部121にマイクロプレート61が正しくセットされたときの、切欠き61bに対応する位置に設けられている。言い換えれば、マイクロプレート配置部121は、マイクロプレート61の切欠き61bが嵌り込む輪郭を有する。これにより、マイクロプレート61が誤った向きでマイクロプレート配置部121にセットされることを防ぐことができる。マイクロプレート61に突出部が設けられ、凹部122に切欠きが設けられても良い。この場合も、マイクロプレート61が誤った向きでマイクロプレート配置部121にセットされることを防ぐことができる。
【0037】
マイクロプレート配置部121の前方側の底面20には、発光部121aとラベル121bが設けられている。発光部121aは、LEDにより構成される。発光部121aは、マイクロプレート61をマイクロプレート配置部121にセットする必要がある場合に点灯する。ラベル121bは、発光部121aに隣り合う底面20の位置に貼付されている。ラベル121bには、マイクロプレート配置部121に設置されるべき容器の種類がマイクロプレート61であることを示す「PLT」が記載されている。
図4(a)では、ラベル121b内の文字は、便宜上、図示省略されている。
【0038】
図4(a)に示すように、オペレータは、白抜き矢印に示すように、マイクロプレート配置部121に対してマイクロプレート61をセットする。なお、開口122bの下方に、発光部121aとラベル121bを設けても良い。こうすると、他の配置部の発光部と同様、マイクロプレート61をマイクロプレート配置部121にセットした際に、マイクロプレート61によって発光部121aが隠れることになる。
【0039】
続いて、
図4(a)に示すように、試薬容器配置部141には、試薬容器62が配置される。試薬容器62は、マイクロプレート61と同様の構成を有する。すなわち、試薬容器62は、複数の凹状の試薬収容部62aを有する。試薬容器62の上面に、前後方向に12個、左右方向に8個並ぶようにして、合計96個の試薬収容部62aが設けられている。左右方向の8個の試薬収容部62aは、8つのノズル220と同じ間隔で並んでいる。試薬収容部62aは、増幅されたターゲットDNA分子にハイブリダイズ可能な標識プローブを含む試薬を収容している。試薬容器62は、X軸負側かつY軸負側の端部に切欠き62bを有する輪郭となっている。
【0040】
図2と
図4(a)に示すように、試薬容器配置部141は、底面20に設置された枠部材142により構成される。枠部材142は、矩形状の開口142aを有する。この開口142aにアダプタ63が設置される。アダプタ63の下部は、枠部材142の開口142aに嵌り込む輪郭を有する。アダプタ63は、開口142aに対して着脱可能である。通常の使用形態において、アダプタ63は、予め開口142aに設置される。
【0041】
アダプタ63は、上下に貫通する開口63a有する。アダプタ63の上部は、試薬容器62の外周側面の内側に嵌り込む輪郭を有する。アダプタ63の上部は、切欠き63bを有する。切欠き63bは、アダプタ63に試薬容器62が正しくセットされたときの、切欠き62bに対応する位置に設けられている。ここで、アダプタ63は、切欠き63bが前方右側に位置付けられた状態で、枠部材142の開口142aに設置されている。これにより、試薬容器62が誤った向きで試薬容器配置部141にセットされることを防ぐことができる。試薬容器62とアダプタ63に突出部が設けられ、アダプタ63に試薬容器62が嵌り込むようにしても良い。
【0042】
試薬容器配置部141の底面20には、発光部141aとラベル141bが設けられている。発光部141aはLEDにより構成される。発光部141aは、試薬容器配置部141に試薬容器62をセットする必要がある場合に点灯する。ラベル141bは、発光部141aに隣り合う底面20の位置に貼付されている。ラベル141bには、試薬容器配置部141に設置されるべき容器の種類が試薬容器62であることを示す「PRB」が記載されている。
図4(a)では、ラベル141b内の文字は、便宜上、図示省略されている。
【0043】
図4(a)に示すように、オペレータは、白抜き矢印に示すように、開口142aに対してアダプタ63を設置した状態で、試薬容器62をアダプタ63にセットする。これにより、試薬容器62が試薬容器配置部141にセットされる。発光部141aが点灯している場合に試薬容器配置部141に試薬容器62がセットされると、点灯している発光部141aは、セットされた試薬容器62によって隠される。これにより、オペレータは、試薬容器62のセットが完了したことを確認できる。
【0044】
図4(b)に示すように、試薬容器配置部131〜133には、試薬容器71が設置される。試薬容器71は、平面視において略矩形の輪郭を有し、側面視において略台形の輪郭を有する。試薬容器配置部131には、排液を貯留させるための空の試薬容器71が配置される。試薬容器配置部132には、エマルジョン試薬、第1破壊試薬、またはリン酸緩衝生理食塩水を収容する試薬容器71が配置される。以下、リン酸緩衝生理食塩水(Phosphate Buffered Saline)を、「PBS」と称する。試薬容器配置部133には、第2破壊試薬を収容する試薬容器71が配置される。試薬容器71には、液体を収容するための凹部71aが形成されている。凹部71aの横方向の長さは、8つのノズル220の横方向の長さより大きい。
【0045】
エマルジョン試薬は、ターゲットDNA分子を増幅するための複数のプライマー分子が結合した磁性ビーズを含む水相に油相を形成するための試薬である。エマルジョン試薬は、シリコーン乳化剤やオイル等を含む。第1および第2破壊試薬は、PCRが行われた油中水型(W/O型)エマルジョンを破壊するための破壊試薬である。第1および第2破壊試薬は、アルコールや界面活性剤等を含む。第1破壊試薬に含まれるアルコール量は、液滴を壊すことを目的に、第2破壊試薬に比べて多くなっている。第2破壊試薬に含まれるアルコール量は、ターゲットDNA分子の状態を調整するため、第1破壊試薬に比べて少なくなっている。PBSは、後述する洗浄処理において用いられる試薬である。
【0046】
図4(b)に示すように、試薬容器配置部131〜133は、底面20とバー134により構成される。バー134は、底面20に設置されている。バー134には、3つの凹部134aが形成されている。アダプタ72は、係合部72aと凹部72bを備える。係合部72aは、凹部134aに係合する。凹部72bは、試薬容器71の底部が嵌り込む略矩形の輪郭を有する。係合部72aがバー134の凹部134aに係合されると、底面20上におけるアダプタ72を設置するための位置が決定される。試薬容器71は、位置決めされたアダプタ72の凹部72bに配置される。
【0047】
試薬容器配置部131の底面20には、発光部131aとラベル131bが設けられている。試薬容器配置部132の底面20には、発光部132a〜132cとラベル132d〜132fが設けられている。試薬容器配置部133の底面20には、発光部133aとラベル133bが設けられている。発光部131a、132a〜132c、133aは、LEDにより構成される。
【0048】
発光部131aは、試薬容器配置部131に空の試薬容器71をセットする必要がある場合に点灯する。発光部132aは、試薬容器配置部132にエマルジョン試薬を収容する試薬容器71をセットする必要がある場合に点灯する。発光部132bは、試薬容器配置部132に第1破壊試薬を収容する試薬容器71をセットする必要がある場合に点灯する。発光部132cは、試薬容器配置部132にPBSを収容する試薬容器71をセットする必要がある場合に点灯する。発光部133aは、試薬容器配置部133に第2破壊試薬を収容する試薬容器71をセットする必要がある場合に点灯する。
【0049】
ラベル131b、132d〜132f、133bは、それぞれ、発光部131a、132a〜132c、133aに隣り合う底面20の位置に貼付されている。
図4(b)では、ラベル131b、132d〜132f、133b内の文字は、便宜上、図示省略されている。
【0050】
ラベル131bには、試薬容器配置部131に配置されるべき容器の種類が排液を貯留させるための空の試薬容器71であることを示す「WASTE」が記載されている。ラベル132dには、発光部132aが点灯した場合に、試薬容器配置部132に配置されるべき容器の種類がエマルジョン試薬を収容する試薬容器71であることを示す「EMF」が記載されている。ラベル132eには、発光部132bが点灯した場合に、試薬容器配置部132に配置されるべき容器の種類が第1破壊試薬を収容する試薬容器71であることを示す「BB1」が記載されている。ラベル132fには、発光部132cが点灯した場合に、試薬容器配置部132に配置されるべき容器の種類がPBSを収容する試薬容器71であることを示す「PBS」が記載されている。ラベル133bには、試薬容器配置部133に配置されるべき容器の種類が第2破破壊試薬を収容する試薬容器71であることを示す「BB2」が記載されている。
【0051】
図4(b)に示すように、オペレータは、白抜き矢印に示すように、係合部72aが凹部134aに係合するようにアダプタ72を設置し、試薬容器配置部131〜133に対して試薬容器71をセットする。発光部が点灯している試薬容器配置部に試薬容器71がセットされると、点灯している発光部は、試薬容器71およびアダプタ72によって隠される。これにより、オペレータは、必要な試薬容器71のセットが完了したことを確認できる。
【0052】
次に、エマルジョン作製処理を開始するときのマイクロプレート61の収容レイアウト、および、エマルジョン破壊処理を開始するときの試薬容器62の収容レイアウトについて説明する。
【0053】
図5に示すように、マイクロプレート61と試薬容器62の上面に記載されている1〜12の数字は、列番号を表している。マイクロプレート61と試薬容器62の上面に記載されているA〜Hの文字は、行番号を表している。1つの行は、前後方向に並ぶ12個のウェル61aおよび試薬収容部62aを示し、1つの列は、左右方向に並ぶ8個のウェル61aおよび試薬収容部62aを示す。したがって、マイクロプレート61と試薬容器62には、前後方向に12列、左右方向に8行の、ウェル61aと試薬収容部62aが並んでいる。
【0054】
マイクロプレート61のウェル61aは、ターゲットDNA分子と、ターゲットDNA分子を増幅するための複数のプライマー分子が結合した磁性ビーズとを収容している。たとえば、1つの行のウェル61aは、同一の被検者に基づくターゲットDNA分子を収容している。たとえば、1つの列のウェル61aは、同一のプライマー分子が結合した磁性ビーズを収容している。この場合、1つのマイクロプレート61によって、12人の被検者に対し、8種類の異なるプライマー分子による検査を行い得る。
【0055】
1つのウェル61aに収容される磁性ビーズは、変異したターゲットDNA分子を増幅するための複数のプライマー分子が結合した磁性ビーズと、正常なターゲットDNA分子を増幅するための複数のプライマー分子が結合した磁性ビーズからなる。以下、変異したターゲットDNA分子を「変異型DNA分子」と称し、正常なターゲットDNA分子を「ワイルド型DNA分子」と称する。
【0056】
試薬容器62の試薬収容部62aは、標識プローブを含む試薬を収容している。1つの列の試薬収容部62aは、同一の標識プローブを含む試薬を収容している。1つの試薬収容部62aに収容される標識プローブは、変異型DNA分子と特異的に結合する標識プローブと、ワイルド型DNA分子と特異的に結合する標識プローブからなる。1つの試薬容器62は、8つの異なる組合せの標識プローブを含む試薬を収納している。試薬収容部62aは、マイクロプレート61のウェル61aにそれぞれ対応付けられている。すなわち、各列の試薬収容部62aに収容される標識プローブは、それぞれ、同じ列のウェル61a内のターゲットDNA分子を標識する。したがって、移送部30と分注部40は、試薬収容部62aと当該試薬収容部62aに対応するウェル61aとを一対一に対応付けて、標識プローブを含む試薬の分注を行う。すなわち、試薬収容部62a内の試薬は、当該試薬収容部62aと、前後方向における位置と左右方向における位置が同じであるウェル61aに分注される。
【0057】
マイクロプレート61の収容レイアウトと試薬容器62の収容レイアウトは、
図5に示すものに限られず、行方向と列方向の同じ位置において、ウェル61aと試薬収容部62aが互いに対応付けられれば良い。
【0058】
次に、集磁処理の際に用いられる磁石部材80について説明する。
【0059】
遺伝子検査用検体処理装置10は、筐体11内の底面20の下側に、
図6(a)に示す13個の磁石部材80を備える。磁石部材80は、永久磁石である。磁石部材80は、X軸方向に移動可能な支持台80aに支持されている。13個の磁石部材80は、互いに同じ形状、寸法および磁力を有する。支持台80aは、レールやシャフト等の支持部によってX軸方向に移動可能に支持されており、ステッピングモータやギア、ベルト等の駆動部によって駆動される。これにより、磁石部材80は、
図6(a)に示すように、マイクロプレート配置部121の下側に位置する挿入位置81と、試薬容器配置部141の下側に位置する退避位置82との間で移動する。マイクロプレート配置部121と試薬容器配置部141は、互いに隣接している。
【0060】
図6(a)、(b)に示すように、磁石部材80は、集磁処理が行われる場合、挿入位置81に位置付けられる。具体的には、
図6(b)に示すように、磁石部材80が、マイクロプレート配置部121に配置されたマイクロプレート61の下側のウェル61aとウェル61aの間に挿入される。これにより、磁石部材80の磁力が、ウェル61aに対して側面方向から印加され、ウェル61aの底部側面に磁性ビーズが吸着される。各磁石部材80は、ウェル61aの底部側面に磁性ビーズを効果的に吸着可能となるように磁極が調整されている。磁石部材80は、集磁処理が行われない場合、マイクロプレート61のウェル61a間から退避した退避位置82に位置付けられる。
【0061】
磁石部材80をY軸方向に移動させることにより、磁石部材80を退避させても良い。この場合、Y軸方向に平行な9個の磁石部材80が支持台80aに設けられる。また、磁石部材80をZ軸正方向に移動させることにより、磁石部材80を退避させても良い。ただし、Z軸正方向に磁石部材80を退避させる場合、水平方向に磁石部材80を退避させる場合に比べて、Z軸方向に装置が大型化してしまう。このため、磁石部材80の退避は、水平方向に行われることが望ましい。
【0062】
磁石部材80は、各ウェル61aの直下位置に配置されても良い。この場合、磁石部材80は、磁力の発生をオンオフ可能な電磁石により構成されても良い。磁石部材80が電磁石によって構成される場合、磁石部材80を移動させるための構成が省略可能となる。この場合、磁力はウェル61aの真下から印加される。このように、ウェル61aの真下から磁力が印加されると、集磁処理によって引き寄せられた磁性ビーズがウェル61aの底面に堆積し、攪拌の際に混ざりにくくなることが起こり得る。これを回避するには、
図8(a)、(b)に示すように、磁石部材80をウェル61aの間に位置付けるのが望ましい。
【0063】
次に、第2駆動機構42と吸引吐出部43の構成について説明する。
【0064】
図7に示すように、第2駆動機構42は、ベース部材201と、ステッピングモータ202と、ベルト203と、軸204と、レール205と、摺動部206と、昇降バー207と、を備える。吸引吐出部43は、ホルダ211と、8つのシリンダ212と、リムーバー213と、2つの軸214と、2つのバネ215と、8つのノズル220と、を備える。
【0065】
ベース部材201は、
図2に示す分注部40の第1駆動機構41によって、鉛直方向に移動される。ステッピングモータ202は、ベース部材201に設置されている。ベルト203は、ステッピングモータ202により生じた回転駆動力を、軸204に伝達する。軸204は、ベース部材201により回転可能に支持されている。レール205は、鉛直方向に延びており、ベース部材201に設置されている。
【0066】
摺動部206は、上下方向に移動可能にレール205に支持されている。軸204の外周面にはネジ溝が形成されている。軸204は、摺動部206に連結されたボールベアリングによって軸受されている。軸204が回転すると、ボールベアリングを介して駆動力が摺動部206に伝達される。これにより、摺動部206がレール205に沿って移動する。昇降バー207は、摺動部206に設置されている。こうして、ステッピングモータ202が駆動されることにより、昇降バー207が鉛直方向に移動する。
【0067】
図7と
図8(a)に示すように、ホルダ211は、ベース部材201に設置されている。ホルダ211には、8つの孔211aが形成され、これら8つの孔211aを挟むように2つの孔211bが形成されている。孔211a、211bは、ホルダ211を鉛直方向に貫通している。8つのシリンダ212は、それぞれ8つの孔211aに上側から挿入されている。8つのノズル220は、それぞれ8つの孔211aの下端に設置されている。ノズル220には、鉛直方向に貫通する孔221が形成されている。ノズル220の下端近傍の端部222は、円柱状の形状を有する。
【0068】
リムーバー213には、8つの孔213aが形成されている。孔213aは、リムーバー213を鉛直方向に貫通している。8つのノズル220は、それぞれリムーバー213の8つの孔213aに挿入されている。2つの軸214は、それぞれホルダ211の2つの孔211bに挿入されている。2つの軸214の下端は、リムーバー213の上面に固定されている。バネ215は、軸214の上端とホルダ211の上面とに接続されており、
図8(a)に示す状態で軸214に対して上方向に力を与えている。バネ215の付勢により、リムーバー213の上面がホルダ211の下面に押し付けられている。
【0069】
次に、吸引吐出部43の動作について説明する。
【0070】
装置がスタンバイ状態のとき、昇降バー207は、ホルダ211に対して
図8(a)に示すように位置付けられる。このとき、バネ215によって軸214が上方向に引っ張られるため、リムーバー213はホルダ211の下面に接触した状態となる。ノズル220の下側の端部222は、リムーバー213の下面から所定長さだけ下方向に突出している。
【0071】
図8(a)に示す状態で、分注部40が、移送部30により、分注チップ容器配置部111〜117に位置付けられる。具体的には、8つのノズル220が、分注チップ容器50に載置されている横方向に並ぶ8つの分注チップ51の真上に位置付けられる。続いて、第2駆動機構42と吸引吐出部43が、第1駆動機構41によりZ軸正方向に移動される。これにより、全てのノズル220が同時に下降し、ノズル220の端部222が分注チップ51の開口51aに差し込まれる。こうして、
図8(b)に示すように、ノズル220の端部222に分注チップ51が装着される。このように、8つのノズル220に対して、8つの分注チップ51が同時に装着されるため、1つずつ分注チップ51が装着される場合に比べて装着時間を短縮できる。
【0072】
液体を吸引する際には、分注チップ51が装着された状態で、分注部40が、移送部30により、マイクロプレート配置部121、試薬容器配置部131〜133、および試薬容器配置部141に移送される。第2駆動機構42と吸引吐出部43が、第1駆動機構41により下方向に移動される。これにより、分注チップ51の下端51bが、マイクロプレート61および試薬容器62、71に収容された液体の液面の下に移動される。この状態で、
図9(a)に示すように、昇降バー207が、第2駆動機構42により上方向に移動される。これにより、ホルダ211の孔211a内の圧力が下がり、分注チップ51の下端51bから液体が吸引される。
【0073】
吸引動作は、8つの分注チップ51によって同時に行われる。すなわち、1回の吸引動作により、横方向に並ぶ8つのウェル61a内の液体が、それぞれ8つの分注チップ51内へと吸引される。1回の吸引動作により、横方向に並ぶ8つの試薬収容部62a内の液体が、それぞれ8つの分注チップ51内へと吸引される。1回の吸引動作により、試薬容器配置部132、133に配置された試薬容器71内の液体が、8つの分注チップ51内へと吸引される。
【0074】
吸引した液体を吐出する際には、昇降バー207が、第2駆動機構42により下方向に移動され、
図8(b)に示すように、元の位置に戻される。これにより、吸引された液体が分注チップ51の下端51bから吐出される。
【0075】
吐出動作は、8つの分注チップ51によって同時に行われる。すなわち、1回の吐出動作により、8つの分注チップ51内の液体が、それぞれ、横方向に並ぶ8つのウェル61a内に吐出される。1回の吐出動作により、8つの分注チップ51内の液体が、それぞれ、横方向に並ぶ8つの試薬収容部62a内に吐出される。1回の吐出動作により、8つの分注チップ51内の液体が、試薬容器配置部131に配置された試薬容器71内へと吐出される。
【0076】
液体の吸引と吐出が完了すると、分注部40が、移送部30により分注チップ廃棄部13の真上に位置付けられる。続いて、
図8(b)に示す状態から、昇降バー207が、第2駆動機構42により、さらに下方向に移動される。これにより、
図9(b)に示すように、昇降バー207が、バネ215の力に対抗して軸214を下方向に押し下げ、リムーバー213が下方向に移動する。リムーバー213が下方向に移動することにより、ノズル220の端部222に装着されている分注チップ51が、リムーバー213の下面によって下方向に押される。これにより、8つの分注チップ51がノズル220から同時に脱落し、廃棄袋13aに収容される。その後、昇降バー207は、第2駆動機構42により上方向に移動され、
図8(a)に示すように元の位置に戻される。
【0077】
次に、ノズル220の端部222の形状について説明する。
【0078】
図10(a)に示すように、分注チップ51の上端付近の内側面51cは、下に進むにつれて径が徐々に小さくなる形状となっている。内側面51cの水平断面は略円形である。そこで、
図10(a)に示す比較例1のノズル220が考えられる。比較例1において、ノズル220の端部222は、略円柱形状であるが、厳密には、分注チップ51の内側面51cと同じく、下に進むにつれて径が徐々に小さくなる形状となっている。ノズル220の端部222の水平断面は略円形である。比較例1の端部222は、分注チップ51の内側面51cに密着して嵌り込む。
【0079】
比較例1の場合、
図10(a)に示すように適正に分注チップ51が装着されれば、装着後に分注チップ51が傾くことがない。しかしながら、分注チップ51は、正規の位置から水平方向にややずれた状態で分注チップ容器50に収容されることが起こり得る。この場合、比較例1の構成では、
図10(b)に示すように、分注チップ51が鉛直方向に分注チップ容器50に載置されていたとしても、ノズル220の下降時にノズル220の先端が分注チップ51の上端に当接して、適正に分注チップ51をノズル220に装着できないことが起こり得る。
【0080】
そこで、
図10(c)に示す比較例2のノズル220が考えられる。比較例2のノズル220は、比較例1におけるノズル220の端部222の側面が、全周にわたって切欠かれた構成となっている。これにより、端部222の側面が、ノズル220の先端に向かうに従って、さらにノズル220の中心に近付く。比較例2の場合、下降時にノズル220の先端が分注チップ51の上端に当接しにくくなるため、分注チップ51が水平方向に多少位置ずれした状態で分注チップ容器50に収容されていても、
図10(c)に示すように、適正に分注チップ51をノズル220の端部222に装着できる。
【0081】
しかしながら、比較例2の場合、分注チップ51の装着時に、ノズル220が下降して、ノズル220によって分注チップ容器50に載置されている分注チップ51が下方向に押されると、
図10(d)に示すように、ノズル220からの荷重により分注チップ51を載置する載置面50aが撓んで、分注チップ51が傾くことがある。この場合、比較例2では、ノズル220の先端が全周にわたって切欠かれていることにより、ノズル220の先端の径が分注チップ51の径より小さいため、
図10(e)に示すように、分注チップ51が、鉛直方向から僅かに傾いた状態で端部222に装着される。このように傾いた状態で分注チップ51が装着されると、マイクロプレート61のウェル61aと試薬容器62の試薬収容部62aに対して、適正に吸引と吐出を行うことができなくなる。
【0082】
そこで、実施形態1では、
図11(a)、(b)に示すように、ノズル220の端部222の側面が、ノズル220の先端に向かうに従ってノズル220の中心に近付くように、部分的に切欠かれている。すなわち、実施形態1のノズル220は、比較例1におけるノズル220の端部222の側面が、比較例2のように全周にわたって切欠かれるのではなく、部分的に切欠かれた構成となっている。
【0083】
具体的には、ノズル220の端部222には、分注チップ51の被嵌合部分の内側面51cと略同径の側面部分223が、周方向に4箇所残されている。側面部分223の間に、ノズル220の先端に向かうに従ってノズル220の中心に近付く傾斜面224が形成されている。4つの傾斜面224は、端部222の前後左右方向に形成されている。
【0084】
実施形態1のノズル220に分注チップ51が装着されたときに、
図11(b)に示す断面225a−225bを側面方向から見ると、断面は
図10(a)と同様になる。また、
図11(b)に示す断面226a−226bを側面方向から見ると、断面は
図10(c)と同様になる。したがって、ノズル220の端部222が分注チップ51に嵌め込まれると、
図10(a)に示す場合と同様に、4つの側面部分223が分注チップ51の内側面51cに当接して、分注チップ51が傾くことなく端部222に支持される。また、
図10(c)に示す場合と同様に、4つの傾斜面224が分注チップ51の内側面51cに当接しないため、分注チップ51に多少の位置ずれがあっても、端部222が分注チップ51内に挿入される。
【0085】
図11(c)、(d)に示すように、端部222に、傾斜面224が1つだけ形成され、1つの側面部分223が形成されても良い。この場合も、側面部分223により、分注チップ51が傾くことなく端部222に支持され、傾斜面224により、分注チップ51に多少の位置ずれがあっても、端部222が分注チップ51内に挿入される。この他、側面部分223は、端部222に2箇所、3箇所、または5箇所以上残されても良く、側面部分223は、前後左右の位置から周方向にずれた位置にあっても良い。側面部分223は、分注チップ51の内側面51cに当接して分注チップ51を適正な姿勢で支えることができれば良い。側面部分223は、必ずしも
図11(a)、(b)に示すように円周方向に円弧状に残されていなくても良く、円周方向に点状に残されていても良い。
【0086】
図12に示すように、遺伝子検査用検体処理装置10は、モード設定部14aと、対象ウェル設定部14cと、開始指示部14fと、停止指示部14gと、移送部30と、分注部40と、制御部310と、表示部320と、磁石部材移動部330と、記憶部340と、を備える。制御部310は、CPUにより構成される。制御部310は、遺伝子検査用検体処理装置10の各部から信号を受信し、各部を制御する。記憶部340は、RAM、ROM、ハードディスク等によって構成される。
【0087】
表示部320は、発光部111a〜117a、121a、131a、132a〜132c、133a、141aを含む。表示部320は、これら発光部を含むことに代えて、ディスプレイにより構成されても良い。この場合、たとえば、ディスプレイに
図2に示すような筐体11の内部のレイアウトが表示され、発光部が点灯することに代えて、レイアウト上の対応する位置が赤色で示される。磁石部材移動部330は、
図6(a)、(b)に示す支持台80aをX軸方向に移動可能に支持する支持部や、支持台80aを駆動するための駆動部を備える。
【0088】
次に、
図13を参照して、遺伝子検査用検体処理装置10を使用したBEAMing法による遺伝子検査の流れについて説明する。実施形態1では、遺伝子検査用検体処理装置10とは別に、サーマルサイクラーとフローサイトメータが用いられる。
【0089】
オペレータは、まず用手法による準備処理を行う。具体的には、オペレータは、被検者の血液検体からDNAを抽出してPCR増幅を行い、増幅されたDNAを含む検体をエマルジョン作製処理が可能となる程度に希釈する。そして、オペレータは、マイクロプレート61のウェル61aに、
図14(a)に示すように、増幅されたDNAを含む検体と、複数のプライマー分子が結合した磁性ビーズとを収容させる。
【0090】
ステップS11において、オペレータは、準備を行ったマイクロプレート61を遺伝子検査用検体処理装置10にセットして、後述するエマルジョン作製処理を行う。エマルジョン作製処理では、ウェル61aにエマルジョン試薬が分注される。これにより、ウェル61a内において、ターゲットDNA分子を増幅するための複数のプライマー分子が結合した磁性ビーズを含む水相に油相が形成され、PCRに供するための油中水型(W/O型)エマルジョンが作製される。
図14(b)に示すように、ウェル61a内の液体には、内部に磁性ビーズとターゲットDNA分子がそれぞれ1個程度含まれる液滴が多数作製される。
【0091】
ステップS21において、オペレータは、エマルジョン作製処理が行われたマイクロプレート61をサーマルサイクラーにセットして、PCR処理を行う。サーマルサイクラーは、マイクロプレート61に対して、複数の異なる温度に変化させる1つのサイクルを複数回繰り返す処理を行う。これにより、エマルジョン作製処理で作製されたW/O型エマルジョンの各液滴内で、ターゲットDNA分子が増幅される。
図14(c)に示すように、液滴内部でターゲットDNA分子が増幅する。
【0092】
ステップS12において、オペレータは、PCR処理を行ったマイクロプレート61を再び遺伝子検査用検体処理装置10にセットして、後述するエマルジョン破壊処理を行う。エマルジョン破壊処理では、ウェル61aに第1破壊試薬と第2破壊試薬が分注される。これにより、PCRが行われたW/O型エマルジョンが、ウェル61a内において破壊され、液滴から磁性ビーズが回収される。また、エマルジョン破壊処理では、第1破壊試薬と第2破壊試薬の分注後、ウェル61aに標識プローブを含む試薬が分注される。これにより、増幅されたターゲットDNA分子に標識プローブがハイブリダイズ可能になる。
【0093】
ステップS22において、オペレータは、エマルジョン破壊処理が行われたマイクロプレート61を再びサーマルサイクラーにセットして、ハイブリダイゼーション処理を行う。サーマルサイクラーは、マイクロプレート61に対して、複数の異なる温度に変化させる処理を行う。これにより、
図14(d)に示すように、ウェル61a内の変異型DNA分子とワイルド型DNA分子が、それぞれ対応する標識プローブと結合し、変異型DNA分子とワイルド型DNA分子が蛍光標識される。
【0094】
ステップS13において、オペレータは、ハイブリダイゼーション処理が行われたマイクロプレート61を再び遺伝子検査用検体処理装置10にセットして、後述する洗浄処理を行う。洗浄処理では、ウェル61aに洗浄試薬であるPBSが分注される。洗浄処理により、ウェル61a内において、BF分離が行われ、未反応の標識プローブが磁性ビーズから吸引分離される。言い換えれば、ターゲットDNA分子と標識プローブが結合した磁性ビーズを残して、磁性ビーズに結合していない標識プローブが取り除かれる。また、PBSにより溶媒の交換も行われる。
【0095】
ステップS31において、オペレータは、洗浄処理が行われたマイクロプレート61をフローサイトメータにセットして、測定処理を行う。これにより、洗浄処理で洗浄された磁性ビーズがフローサイトメータで測定され、標識プローブが結合した磁性ビーズの数がカウントされる。
【0096】
具体的には、フローサイトメータは、ウェル61aごとに、ウェル61a内の測定試料を吸引してフローセルに流し、フローセルを流れる測定試料にレーザ光源からレーザ光を照射する。このとき、変異型DNA分子に結合している標識プローブと、ワイルド型DNA分子に結合している標識プローブから蛍光が生じる。フローサイトメータは、標識プローブにより生じた波長の異なる2種類の蛍光をダイクロイックミラーで分離し、これら2種類の蛍光を異なる検出器で検出する。フローサイトメータは、各検出器からの出力信号に基づき、変異型DNA分子が結合している磁性ビーズの数と、測定試料に含まれるワイルド型DNA分子が結合している磁性ビーズの数とをそれぞれカウントする。なお、フローサイトメータは、測定試料中の磁性ビーズから生じた前方散乱光を検出するために、さらに別の検出器を備えても良い。
【0097】
オペレータは、ウェル61aごとに、変異型DNA分子が結合している磁性ビーズの数とワイルド型DNA分子が結合している磁性ビーズの数との合計数に対する、変異型DNA分子が結合した磁性ビーズの数の割合を取得する。こうして、オペレータは、ターゲットDNA分子を取得した被検者について、ターゲットDNA分子の変異状態を知ることができる。なお、ワイルド型DNA分子が結合している磁性ビーズの数に対する、変異型DNA分子が結合した磁性ビーズの数の割合を取得してもよい。
【0098】
次に、遺伝子検査用検体処理装置10による詳細な処理について、フローチャートを参照して説明する。
【0099】
図15(a)に示すように、ステップS101において、制御部310は、オペレータによりモード設定部14aを介して動作モードが設定されたか否かを判定する。動作モードが設定されると、ステップS102において、制御部310は、設定された動作モードと、処理対象となるウェル61aの列数とに応じて、分注チップ容器配置部111〜117の発光部を点灯させる。なお、遺伝子検査用検体処理装置10の電源が投入された直後は、初期設定として、動作モードはエマルジョン作製モードに設定され、処理対象の列数は12列に設定されており、初期設定に応じてステップS102の処理が行われる。
図15(a)に示す処理は、スタンバイ状態において繰り返し行われる。
【0100】
ステップS102で点灯される発光部は、
図16に示すとおりである。
図16において、縦方向には14個の発光部が示されており、横方向には動作モードおよび処理対象の列数が示されている。丸印は、発光部が点灯することを示している。動作モードがエマルジョン作製モードのとき、処理対象の列数にかかわらず、発光部111a、121a、131a、132aのみが点灯される。動作モードがエマルジョン破壊モードのとき、処理対象の列数に応じて発光部111a〜117aが点灯される。この他、動作モードがエマルジョン破壊モードのとき、処理対象の列数にかかわらず、発光部121a、131a、132b、133a、141aが点灯される。動作モードが洗浄モードのとき、処理対象の列数に応じて発光部111a〜117aが点灯される。この他、動作モードが洗浄モードのとき、発光部121a、131a、132cが点灯される。
【0101】
図12に示す記憶部340は、予め
図16に示すテーブルを保持している。制御部310は、このテーブルに基づいて、発光部111a〜141aを制御する。
【0102】
このように、動作モードが設定されたときに、容器の配置が必要となる配置部の発光部が点灯することにより、容器の配置が促される。これにより、オペレータは、発光部を確認して過不足なく容器を配置できる。また、使用する分注チップ51の数は、動作モードと処理対象の列数とに応じて変わり、使用する分注チップ51の数に伴って、配置が必要となる分注チップ容器50の数も変わる。しかしながら、配置が必要となる分注チップ容器50の数に応じて、分注チップ容器配置部111〜117の発光部が点灯されるため、オペレータは、過不足なく分注チップ容器50を配置できる。また、発光部を確認して容器を配置する際には、配置部に設置されるべき容器の種類を示すラベルが、発光部に隣り合う位置に設けられている。これにより、オペレータは、配置すべき容器の種類を把握できる。
【0103】
図15(b)に示すように、ステップS111において、制御部310は、オペレータにより対象ウェル設定部14cを介して処理対象となるウェル61aの列数が設定されたか否かを判定する。処理対象の列数が設定されると、ステップS112において、制御部310は、動作モードと、設定された処理対象の列数とに応じて、分注チップ容器配置部111〜117の発光部の点灯状態を変更する。この場合も、
図16に示すように、発光部111a〜117aの点灯が行われる。
図15(b)に示す処理は、スタンバイ状態において繰り返し行われる。
【0104】
このように、処理対象となるウェル61aの数が設定されると、分注チップ容器50の設置が必要となる分注チップ容器配置部の数が変化し、発光部の点灯状態が変更される。これにより、オペレータは、発光部を確認して過不足なく分注チップ容器50を配置できる。
【0105】
オペレータは、動作モードと処理対象の列数を設定した上で、発光部を確認しながら配置が必要な容器等をセットする。そして、開始指示部14fを押して対象となる処理を実行させる。
【0106】
図17に示すように、ステップS121において、制御部310は、オペレータにより開始指示部14fを介して開始指示が行われたか否かを判定する。開始指示が行われると、制御部310は、設定されている動作モードを判定し、動作モードに応じて処理を開始する。
【0107】
動作モードがエマルジョン作製モードのとき、制御部310は、ステップS123においてエマルジョン作製処理を行う。動作モードがエマルジョン破壊モードのとき、制御部310は、ステップS125において第1エマルジョン破壊処理を行い、ステップS126において第2エマルジョン破壊処理を行う。なお、エマルジョン破壊処理は、第1エマルジョン破壊処理と第2エマルジョン破壊処理により構成される。動作モードが洗浄モードのとき、制御部310は、ステップS127において洗浄処理を行う。ステップS123、S126、S127の処理が終了すると、遺伝子検査用検体処理装置10はスタンバイ状態となり、処理がステップS121に戻される。
【0108】
このように、オペレータは、エマルジョン作製処理と、エマルジョン破壊処理と、洗浄処理を行う際に、モード設定部14aと対象ウェル設定部14cによる設定を行った上で、必要な容器等をセットし、開始指示部14fを押すだけで良い。これにより、上記処理を簡便な操作により自動で行うことができるため、検査技師の負担を軽減し、エマルジョンを用いた遺伝子検査のための検体前処理を効率化することができる。
【0109】
次に、エマルジョン作製処理と、第1および第2エマルジョン破壊処理と、洗浄処理とについて、順にフローチャートを参照して説明する。
【0110】
以下の処理において、分注チップ51の装着および脱落と、分注チップ51による吸引および吐出と、ノズル220の水平方向および鉛直方向の移動は、制御部310が移送部30と分注部40を駆動させることにより行われる。分注チップ51の装着は、分注チップ容器配置部111〜117に配置されている分注チップ容器50に対して順に行われ、1つの分注チップ容器50においては後方の列から前方の列に向けて順に行われる。磁石部材80は、特に明記しない限り、退避位置82にあるものとする。
【0111】
図18を参照して、エマルジョン作製処理について説明する。
【0112】
ステップS201において、制御部310は、処理列を1に設定することにより、処理列をマイクロプレート61の最後列に設定する。処理列は、後述するステップS208において1インクリメントされることにより、順に前方へ1列ずつずらされる。処理列の値は、記憶部340に記憶される。ステップS202において、制御部310は、
図8(a)を参照して説明したように、8つのノズル220にそれぞれ分注チップ51を装着する。ステップS203において、制御部310は、試薬容器配置部131に配置された試薬容器71内のエマルジョン試薬を吸引する。ステップS204において、制御部310は、マイクロプレート61の処理列にエマルジョン試薬を吐出する。ステップS205において、制御部310は、ウェル61a内の液体を吸排攪拌する。
【0113】
ここで、
図19(a)〜(h)を参照して吸排攪拌について説明する。
図19(a)〜(h)は、分注ピペットとウェル61aをX軸正方向に見た図である。Y軸正方向が後方に相当し、Y軸負方向が前方に相当する。
【0114】
図19(a)に示すように、まず、分注チップ51がウェル61aの真上に位置付けられ、分注チップ51の中心軸が、ウェル61aの中心軸に合わされる。
図19(b)に示すように、分注チップ51が下降され、
図19(c)に示すように、ウェル61a内の液体が吸引される。続いて、分注チップ51の下端51bが液面の上に出ないように分注チップ51が上昇された後、
図19(d)に示すように、分注チップ51の中心軸がウェル61aの中心軸に対して僅かに前方に位置するよう、分注チップ51が前方に移動される。そして、
図19(e)に示すように、液体が吐出される。
【0115】
続いて、分注チップ51の中心軸がウェル61aの中心軸に合わされるよう、分注チップ51が後方に移動された後、
図19(b)に示すように、分注チップ51が下降され、
図19(c)に示すように、ウェル61a内の液体が吸引される。続いて、分注チップ51の下端51bが液面の上に出ないように分注チップ51が上昇された後、
図19(f)に示すように、分注チップ51の中心軸がウェル61aの中心軸に対して僅かに後方に位置するよう、分注チップ51が後方に移動される。そして、
図19(g)に示すように、液体が吐出される。
【0116】
続いて、分注チップ51の中心軸がウェル61aの中心軸に合わされるよう、分注チップ51が前方に移動された後、
図19(b)に示すように、分注チップ51が下降される。吸排攪拌では、
図19(b)〜(g)に示すような攪拌工程が複数回繰り返される。吸排攪拌が終了すると、
図19(h)に示すように、最後に吐出を行った位置から、分注チップ51が上昇される。
【0117】
このように、吸引と吐出を行ってウェル61a内の液体を攪拌する工程が行われる際に、工程毎に、ウェル61aの側面付近の異なる位置で吐出が行われる。具体的には、ウェル61aの中心を挟む前後の2つの位置で、繰り返し吐出が実行される。ここで、分注チップ51が、ノズル220に対して許容範囲内で僅かにずれていることがある。このような場合に、1つの位置においてのみ吐出が行われるようにすると、分注チップ51の位置ずれによっては、効果的な攪拌を実現できないことがある。しかしながら、実施形態1では、前後のいずれかの位置における吐出が効果的な攪拌を実現できないような場合であっても、前方での吐出と後方での吐出が交互に繰り返し行われるため、効果的な攪拌を十分に実現できる。
【0118】
後述する集磁処理の後で行われる吸排攪拌においては、特に、上記のようにウェル61aの中心を挟む前後の2つの位置で繰り返し吐出が実行されるのが望ましい。すなわち、集磁処理が行われると、ウェル61aの側面に磁性ビーズが張り付くことになるが、上記ように吐出が行われれば、ウェル61aの側面に張り付いた磁性ビーズを側面から効果的に剥がすことができる。よって、前後の位置で繰り返し吐出が実行されると、集磁処理の後で行われる吸排攪拌においては、特に効果的にウェル61a内の液体を攪拌できる。
【0119】
また、分注チップ51の中心軸がウェル61aの中心軸と合わせられた状態で吸引が行われるため、たとえば、分注チップ51の下端51bをウェル61aの最下部に位置付けることができる。これにより、最下部に成分が沈殿しているような場合でも、ウェル61a内の液体を効果的に攪拌できる。吸排攪拌において、分注チップ51の中心軸がウェル61aの中心軸に対して前後方向にずれた位置で、液体の吸引が行われても良い。ただし、この場合、下端51bを最下部に位置付けることができないため、上記のように、分注チップ51の中心軸がウェル61aの中心軸と合わせられた状態で、液体の吸引が行われるのが望ましい。
【0120】
なお、ステップS204における吸排攪拌は、上述したように、分注チップ51の下端51bが液面の下にある状態で行われる。これにより、吸排攪拌の際に液体に空気が混ざらなくなるため、エマルジョンの作製を適正に行うことができる。
【0121】
図18に戻り、吸排攪拌が終了すると、ステップS206において、制御部310は、
図9(b)を参照して説明したように、8つのノズル220に装着された分注チップ51を脱落させて、廃棄袋13aに廃棄する。ステップS207において、制御部310は、処理対象の全ての列について、ステップS202〜S206の処理が終了したか否かを判定する。たとえば、対象ウェル設定部14cにより処理対象の列数がN列に設定されている場合、制御部310は、最も後方の列から開始して、最も後方の列から数えてN列目にあたる列まで、ステップS202〜S206の処理が終了したか否かを判定する。
【0122】
処理対象の全ての列について処理が終了していない場合、ステップS208において、制御部310は、処理列を1インクリメントし、処理をステップS202に戻す。処理対象の全ての列について処理が終了すると、エマルジョン作製処理が終了する。
【0123】
次に、
図20〜22を参照して、第1エマルジョン破壊処理について説明する。
【0124】
図20に示すように、ステップS301において、制御部310は、処理列を1に設定する。ステップS302において、制御部310は、ノズル220に分注チップ51を装着する。ステップS303において、制御部310は、試薬容器配置部132に配置された試薬容器71内の第1破壊試薬を吸引する。ステップS304において、制御部310は、マイクロプレート61の処理列に第1破壊試薬を吐出する。
【0125】
ステップS305において、制御部310は、ウェル61a内の液体を吸排攪拌する。ここで、ステップS305が最初に実行されるとき、吸排攪拌は、
図18のステップS205と同様、分注チップ51の下端51bが液面の下にある状態で行われる。これにより、空気が混ざって液体が白濁してしまうことによりエマルジョンが破壊されにくくなるような事態を回避できる。
【0126】
また、ステップS305が同じ列に対して2回目に実行されるとき、吸排攪拌は、分注チップ51の下端51bが液面の上に出るようにして行われる。具体的には、
図19(d)、(f)において、下端51bが液面の上に出た状態で吐出が行われる。これにより、液中で吐出が行われる場合に比べて、効果的に攪拌を行うことができる。なお、ステップS305が2回目に実行されるときには、液中に油相が少なくなっており、また液中のアルコールにより液中から空気が抜けやすくなっている。このため、ステップS305が2回目に実行されるときには、液面の上から吐出を行っても液体に空気が混じりにくい。
【0127】
吸排攪拌の終了時に、ステップS306において、制御部310は、吐出処理を行う。具体的には、制御部310は、吸排攪拌の最後の攪拌工程において、
図19(g)に示すように液体の吐出が行われた後、分注チップ51を上昇させて、分注チップ51の下端51bをウェル61a内の液面から離間させ、
図19(h)に示す状態で、所定時間待機する。この場合の所定時間は、分注チップ51内に残った液体が分注チップ51の下端51bへと集まるのに要する時間であり、たとえば5秒に設定される。その後、制御部310は、分注チップ51内に残った液体を吐出し、分注チップ51を上昇させる。
【0128】
吐出処理によれば、分注チップ51内の略全ての液体をウェル61aに吐出できるため、吸引攪拌の後に分注チップ51を水平面内で移動しても、分注チップ51内に残った液体が意図せず装置内部に落ちることを防ぐことができる。所定時間待機後の吐出は、複数回、繰り返されても良い。すなわち、所定時間待機後に吐出が行われた後、再度、分注チップ51内に少量の空気を吸引した後、この空気を分注チップ51から吐出する処理が行われても良い。これにより、分注チップ51内に残る液体をより完全にウェル61aに吐出できる。
【0129】
吐出処理は上記手順に限られず、たとえば以下のように行われても良い。制御部310は、吸排攪拌の最後の攪拌工程において、分注チップ51内に液体が少量残る状態まで分注チップ51内の液体を吐出し、かつ、分注チップ51の下端51bのみがウェル61a内の液体に浸かる位置に分注チップ51を位置付け、所定時間待機する。その後、制御部310は、分注チップ51内に残った液体を吐出しつつ分注チップ51を上昇させ、分注チップ51の下端51bをウェル61aの液面から離間させる。この場合も、分注チップ51内のほぼ全ての液体をウェル61aに吐出できる。この手順によれば、液体の粘度が高い場合に、分注チップ51内に残った液体がウェル61a内の液体に引っ張られて抜き取られるとの効果が奏され得る。
【0130】
ステップS307において、制御部310は、ノズル220に装着された分注チップ51を廃棄する。ステップS308において、制御部310は、処理対象の全ての列について、ステップS302〜S307の処理が終了したか否かを判定する。処理対象の全ての列について処理が終了していない場合、ステップS309において、制御部310は、処理列を1インクリメントし、処理をステップS302に戻す。処理対象の全ての列について処理が終了すると、処理が
図21のステップS310に進められる。
【0131】
図21に示すように、ステップS310において、制御部310は、破壊処理が1回目であるか否かを判定する。ステップS310における破壊処理とは、
図20のステップS301から
図22のステップS323までの処理のことであり、後述するように、破壊処理は第1エマルジョン破壊処理において2回繰り返される。
【0132】
破壊処理が1回目であると、ステップS311において、制御部310は所定時間待機する。この場合の所定時間は、ウェル61a内の液体の状態が安定するために要する時間であり、たとえば600秒に設定される。これにより、ウェル61a内のエマルジョンが破壊され、ウェル61a内において水相と油相が分離する。また、ステップS311における待機により、エマルジョンの破壊と液体の分離の進み具合について、各列間のばらつきが抑制される。
【0133】
ステップS311の待機時間が経過すると、ステップS312において、制御部310は、挿入位置81に磁石部材80を移動させる。これにより、磁石部材80による集磁処理が開始される。集磁処理が開始されると、ウェル61a内の磁性ビーズがウェル61aの側面に引き寄せられる。ステップS313において、制御部310は60秒待機する。集磁処理が開始された直後にどの程度の待ち時間を設けるかは、ウェル61a内の液体の状態等によって決められる。集磁処理が開始された直後に待機時間が設けられると、ウェル61a内における磁性ビーズの集磁を安定させることができる。
【0134】
他方、破壊処理が2回目であると、ステップS314において、制御部310は、挿入位置81に磁石部材80を移動させる。破壊処理が2回目の場合、破壊処理が1回目の場合と異なり、既にエマルジョンの破壊が進んでいることから、すぐに処理を集磁処理へと進めることが可能である。したがって、破壊処理が2回目の場合、第1破壊試薬を分注した後、所定時間待機することなく、処理が集磁処理へと移行される。これにより、エマルジョン作製処理にかかる時間を短縮できる。ステップS315において、制御部310は150秒待機する。ステップS313、S315における待機時間が経過すると、処理が
図22のステップS316に進められる。
【0135】
ステップS315の待機時間がステップS313の待機時間よりも長いのは、次の理由による。1回目の破壊処理では、ステップS311において600秒が経過する間に、ウェル61a内において油相と水相が上下に分離する。このとき、磁性ビーズは、大半が下側の水相中に含まれるため、ステップS312の集磁処理の際に、磁石部材80に近い位置にあると考えられる。このため、ステップS313において60秒程度待機すれば、磁性ビーズがウェル61aの側面に吸引され得る。これに対し、2回目の破壊処理では、1回目の破壊処理により油相が略取り除かれているため、磁性ビーズがウェル61aに収容された液体の全体に分散していると考えられる。したがって、液面付近の磁性ビーズを集磁処理によりウェル61a下方の側面に吸引するには時間が掛かる。このため、2回目の破壊処理では、ステップS315において、ステップS313よりも長い待機時間が設定されている。これにより、2回目の破壊処理において、より確実に、磁性ビーズがウェル61a下部の側面に集磁され得る。
【0136】
図22に示すように、ステップS316において、制御部310は、処理列を1に設定する。ステップS317において、制御部310は、ノズル220に分注チップ51を装着する。ステップS318において、制御部310は、マイクロプレート61の処理列においてウェル61a内の液体の上部を吸引する。ステップS318の処理により、ウェル61a内に磁性ビーズが残存した状態で、ウェル61a内から水相を除く上部油相が除去される。ステップS319において、制御部310は、分注チップ51を試薬容器配置部131に配置された排液用の試薬容器71まで移動させ、吸引した液体を試薬容器71に吐出して廃棄する。ステップS320において、制御部310は、ノズル220に装着された分注チップ51を廃棄する。
【0137】
なお、1回目の破壊処理では、上記のように、
図21のステップS311において600秒の経過を待つことにより、ウェル61a内の液体が油相と水相に上下に分離する。このため、1回目の破壊処理では、大半の油相が、ステップS318において吸引され、ステップS319において廃棄される。
【0138】
ステップS321において、制御部310は、処理対象の全ての列について、ステップS317〜S320の処理が終了したか否かを判定する。処理対象の全ての列について処理が終了していない場合、ステップS322において、制御部310は、処理列を1インクリメントし、処理をステップS317に戻す。処理対象の全ての列について処理が終了すると、ステップS323において、制御部310は、退避位置82に磁石部材80を移動させる。これにより、磁石部材80による集磁処理が終了する。
【0139】
ステップS324において、制御部310は、2回目の破壊処理が終了したか否か、すなわち、
図20のステップS301から
図22のステップS323までの処理が2回繰り返されたか否かを判定する。2回目の破壊処理が終了していない場合、処理が
図20のステップS301に戻され、2回目の破壊処理が開始される。2回目の破壊処理が終了すると、第1エマルジョン破壊処理が終了する。なお、破壊処理は、2回に限られず、3回以上行われても良い。
【0140】
次に、
図23〜25を参照して、第2エマルジョン破壊処理について説明する。
【0141】
図23に示すように、ステップS401において、制御部310は、処理列を1に設定する。ステップS402において、制御部310は、ノズル220に分注チップ51を装着する。ステップS403において、制御部310は、試薬容器配置部133に配置された試薬容器71内の第2破壊試薬を吸引する。ステップS404において、制御部310は、マイクロプレート61の処理列に第2破壊試薬を吐出する。ステップS405において、制御部310は、ウェル61a内の液体を吸排攪拌する。
【0142】
ステップS405の吸排攪拌は、
図20のステップS305が2回目に実行されるときと同様、分注チップ51の下端51bが液面の上に出るようにして行われる。この場合も、ステップS305が2回目に実行されるときと同様の理由で、液面の上から吐出を行うことが可能となる。また、ステップS405の攪拌処理において液体に空気が混じっても、その後に行われるハイブリダイゼーション処理において、サーマルサイクラーにより液体が加温される。これにより、液体に混じった空気は除去されるため、ハイブリダイゼーション処理を適正に行うことができる。
【0143】
吸排攪拌の終了時に、ステップS406において、制御部310は、上述した吐出処理を行う。ステップS407において、制御部310は、ノズル220に装着された分注チップ51を廃棄する。ステップS408において、制御部310は、処理対象の全ての列について、ステップS402〜S407の処理が終了したか否かを判定する。処理対象の全ての列について処理が終了していない場合、ステップS409において、制御部310は、処理列を1インクリメントし、処理をステップS402に戻す。処理対象の全ての列について処理が終了すると、処理が
図24のステップS410に進められる。
【0144】
図24に示すように、ステップS410において、制御部310は所定時間待機する。この場合の所定時間は、ウェル61a内の液体の状態が安定するために要する時間であり、たとえば120秒に設定される。これにより、ウェル61a内のターゲットDNA分子の状態が安定する。ステップS410の所定時間が経過すると、制御部310は、ステップS411において挿入位置81に磁石部材80を移動させ、ステップS412において60秒待機する。
【0145】
ステップS413において、制御部310は、処理列を1に設定する。ステップS414において、制御部310は、ノズル220に分注チップ51を装着する。ステップS415において、制御部310は、マイクロプレート61の処理列においてウェル61a内の液体の上部を吸引する。この場合も、ウェル61a内に磁性ビーズが残存した状態で、ウェル61a内から水相を除く上部油相が除去される。ステップS416において、制御部310は、吸引した液体を試薬容器配置部131に配置された試薬容器71に吐出して廃棄する。
【0146】
続いて、ステップS417において、制御部310は、試薬容器配置部141に配置された試薬容器62における試薬収容部62aの列のうち、マイクロプレート61の処理列と同列の試薬収容部62aから標識プローブを含む試薬を吸引する。ステップS418において、制御部310は、マイクロプレート61の処理列に標識プローブを含む試薬を吐出する。ステップS419において、制御部310は、ノズル220に装着された分注チップ51を廃棄する。
【0147】
このように、ステップS415、S416における不要な液体の吸引および排液後に、新たな分注チップ51が再装着されることなく排液に用いた分注チップ51のまま標識プローブを含む試薬が吸引される。そして、磁性ビーズを残存させたウェル61aに、吸引した標識プローブを含む試薬が吐出される。
【0148】
ここで、試薬の吸引時におけるコンタミネーションを防ぐという観点から、試薬容器62の試薬を吸引する際には、新たな分注チップ51が再装着されることが想定され得る。しかしながら、実施形態1では、一度吸引が行われた試薬容器62の試薬収容部62a内の試薬は、その後に吸引されることはない。つまり、試薬容器62の各試薬収容部62aは、1回分の処理に要する容量の試薬のみを収容可能に構成されている。したがって、実施形態1では、排液に用いた分注チップ51のまま標識プローブを含む試薬を吸引できる。これにより、新たな分注チップ51が再装着される場合に比べて、分注チップ51の消費量を抑制でき、環境への負荷を低減できる。また、ステップS415でウェル61a内の液体が吸引された後、ウェル61a内の側面に吸着されている磁性ビーズが空気に触れている場合であっても、すぐに標識プローブを含む試薬がウェル61a内に吐出されるので、ウェル61aの側面に吸着された磁性ビーズが乾燥して凝集してしまうことを抑制できる。
【0149】
ステップS420において、制御部310は、処理対象の全ての列について、ステップS414〜S419の処理が終了したか否かを判定する。処理対象の全ての列について処理が終了していない場合、ステップS421において、制御部310は、処理列を1インクリメントし、処理をステップS414に戻す。処理対象の全ての列について処理が終了すると、処理が
図25のステップS422に進められる。
【0150】
図25に示すように、ステップS422において、制御部310は、退避位置82に磁石部材80を移動させる。ステップS423において、制御部310は、処理列を1に設定する。
【0151】
ステップS424において、制御部310は、ノズル220に分注チップ51を装着する。ステップS425において、制御部310は、マイクロプレート61の処理列において、ウェル61a内の液体を上述したように吸排攪拌する。ステップS425の吸排攪拌は、
図23のステップS405と同様、分注チップ51の下端51bが液面の上に出るようにして行われる。この場合も、ステップS405と同様の理由で、液面の上から吐出を行うことが可能となる。
【0152】
ステップS425の処理により、ウェル61a内の状態が、ハイブリダイゼーション処理が効率良く行われるための状態になる。ステップS426において、制御部310は、ノズル220に装着された分注チップ51を廃棄する。ステップS427において、制御部310は、処理対象の全ての列について、ステップS424〜S426の処理が終了したか否かを判定する。処理対象の全ての列について処理が終了していない場合、ステップS428において、制御部310は、処理列を1インクリメントし、処理をステップS424に戻す。処理対象の全ての列について処理が終了すると、第2エマルジョン破壊処理が終了する。
【0153】
次に、
図26、27を参照して、洗浄処理について説明する。
【0154】
図26に示すように、制御部310は、ステップS501において挿入位置81に磁石部材80を移動させ、ステップS502において60秒待機する。これにより、磁性ビーズが集磁される。ステップS503において、制御部310は、処理列を1に設定する。ステップS504において、制御部310は、ノズル220に分注チップ51を装着する。ステップS505において、制御部310は、処理列が1であるか否か、すなわち最後列であるか否かを判定する。
【0155】
処理列は、ステップS503からステップS504に処理が進められたときに、マイクロプレート61の最後列に設定されているため、ステップS505において、処理列は最後列であると判定される。この場合、ステップS508において、制御部310は、マイクロプレート61の処理列においてウェル61a内の液体の上部を吸引する。このとき、ターゲットDNA分子を介して磁性ビーズに結合した標識プローブは、磁石部材80によって集磁されている。したがって、未反応の標識プローブ、すなわちターゲットDNA分子を介して磁性ビーズに結合していない標識プローブが、ウェル61aから除去されることになる。ステップS509において、制御部310は、吸引した液体を試薬容器配置部131に配置された試薬容器71に吐出して廃棄する。ステップS510において、制御部310は、ノズル220に装着された分注チップ51を廃棄する。
【0156】
ステップS511において、制御部310は、処理対象の全ての列について、ステップS504〜S510の処理が終了したか否かを判定する。処理対象の全ての列について処理が終了していないため、ステップS512において、制御部310は、処理列を1インクリメントし、処理をステップS504に戻す。
【0157】
ステップS504に戻って、制御部310は、ノズル220に分注チップ51を装着し、ステップS505において、処理列が最後列であるか否かを判定する。現在の処理列は最後列の1つ前方であるため、制御部310は、処理列が最後列以外であると判定し、ステップS506において、試薬容器配置部132に配置された試薬容器71内のPBSを吸引する。ステップS507において、制御部310は、マイクロプレート61の現在の処理列の1つ後方列、すなわち最後列にPBSを吐出する。これにより、最後列のウェル61aから液体が廃棄された後すぐにPBSが供給されるため、ウェル61a内の乾燥が進むことを防ぎ、ウェル61a内の磁性ビーズが凝集してしまうことを抑制することができる。磁性ビーズが凝集してしまうと、その後にPBSを供給したとしても、磁性ビーズの凝集の中までPBSが浸透しにくくなり、磁性ビーズを分散しにくくなる。このため、フローサイトメータによる測定を正確に行うことができなくなる。ステップS507の処理により、液体が廃棄された後のウェル61a内の乾燥を防ぎ、PBSを供給した際に磁性ビーズを適正に分散できるため、フローサイトメータによる測定を正確に行うことが可能となる。
【0158】
制御部310は、続いて、新しい分注チップ51に交換することなく、PBSの吸引に用いた分注チップ51を用いて、ステップS508において、処理列のウェル61a内の液体の上部を吸引する。これにより、1つの分注チップ51をPBSの吸引およびウェル61a内の液体の吸引に共用でき、分注チップ51の消費量を低減することができる。その後、制御部310は、ステップS509以降の処理を継続し、ステップS511において、処理対象の全ての列について、ステップS504〜S510の処理が終了したか否かを判定する。処理対象の全ての列について処理が終了すると、処理が
図27のステップS513に進められる。
【0159】
ここで、処理対象となっている列のうち、最前列のウェル61aにはまだPBSが供給されておらず、最前列を除く列については、ステップS508において液体の上部が廃棄された後、他の列において液体の上部が廃棄される前にステップS507においてPBSが供給されている。最前列については、後述する
図27のステップS518においてPBSが供給される。
【0160】
図27に示すように、ステップS513において、制御部310は、退避位置82に磁石部材80を移動させる。ステップS514において、制御部310は、処理列を1に設定する。
【0161】
ステップS515において、制御部310は、ノズル220に分注チップ51を装着する。ステップS516において、制御部310は、処理列が1であるか否か、すなわち処理列が最後列であるか否かを判定する。処理列が最後列であると、ステップS517において、制御部310は、試薬容器配置部132に配置された試薬容器71内のPBSを吸引する。ステップS518において、制御部310は、マイクロプレート61の処理対象となっている列のうち、最も前方の列にPBSを吐出する。他方、処理列が最後列以外であると、ステップS517、S518の処理はスキップされる。
【0162】
ステップS519において、制御部310は、マイクロプレート61の処理列において、ウェル61a内の液体を上述したように吸排攪拌する。ステップS519の吸排攪拌は、
図18のステップS205と同様、分注チップ51の下端51bが液面の下にある状態で行われる。これにより、液体に空気が混ざることにより測定処理において標識プローブから生じた蛍光を適正に検出できなくなるような事態を回避できる。ステップS520において、制御部310は、ノズル220に装着された分注チップ51を廃棄する。
【0163】
ステップS521において、制御部310は、処理対象の全ての列について、ステップS515〜S520の処理が終了したか否かを判定する。処理対象の全ての列について処理が終了していない場合、ステップS521において、制御部310は、処理列を1インクリメントし、処理をステップS515に戻す。処理対象の全ての列について処理が終了すると、処理がステップS523に進められる。
【0164】
ステップS523において、制御部310は、
図26のステップS501〜
図27のステップS522の処理が3回行われたか否かを判定する。この処理が3回行われていない場合、処理が
図26のステップS501に戻される。この処理が3回行われた場合、洗浄処理が終了する。
【0165】
<実施形態2>
実施形態2では、実施形態1において外部の装置で行われていた、液滴内のPCR処理と、ハイブリダイゼーション処理と、測定処理を、遺伝子検査用検体処理装置10が行う。実施形態2の遺伝子検査用検体処理装置10は、動作モードとして、さらに、PCRモードと、ハイブリダイゼーションモードと、測定モードが選択可能に構成される。なお、エマルジョン作製処理とPCR処理は、1つの動作モードで連続的に行われても良く、エマルジョン破壊処理とハイブリダイゼーション処理は、1つの動作モードで連続的に行われても良く、洗浄処理と測定処理は、1つの動作モードで連続的に行われても良い。
【0166】
図28(a)に示すように、遺伝子検査用検体処理装置10は、実施形態1の構成に加えて、サーマルサイクラー350と、8つのフローサイトメータ360と、出力部370と、を備える。サーマルサイクラー350と、フローサイトメータ360と、出力部370は、制御部310により制御される。
【0167】
サーマルサイクラー350は、ヒーターとペルチェ素子を含む。ヒーターとペルチェ素子は、マイクロプレート配置部121の真上に移動可能に構成される。なお、マイクロプレート配置部121に配置されたマイクロプレート61が、ハンドにより把持されて、筐体11内に固定されたヒーターとペルチェ素子の位置まで移送されても良い。フローサイトメータ360は、
図28(b)に示すように、フローセル361と、レーザ光源362と、ダイクロイックミラー363と、光検出器364、365と、を備える。光検出器364、365は、アバランシェフォトダイオードである。出力部370は、ディスプレイまたは通信装置によって構成される。
【0168】
液滴内のPCR処理が開始されると、制御部310は、サーマルサイクラー350を駆動し、マイクロプレート61に対して、複数の異なる温度に変化させる1つのサイクルを複数回繰り返す処理を行う。これにより、エマルジョン作製処理で作製されたW/O型エマルジョンの各液滴内で、ターゲットDNA分子が増幅される。ハイブリダイゼーション処理が開始されると、制御部310は、サーマルサイクラー350を駆動し、マイクロプレート61に対して、複数の異なる温度に変化させる処理を行う。これにより、ターゲットDNA分子に標識プローブが結合される。
【0169】
測定処理が開始されると、制御部310は、フローサイトメータ360を駆動して、洗浄処理で洗浄された磁性ビーズを測定し、測定結果に基づいて標識プローブが結合した磁性ビーズをカウントする。
【0170】
具体的には、制御部310は、ノズル220に新しい分注チップ51を装着し、横方向に並ぶ8つのウェル61a内の液体を吸引する。制御部310は、8つのウェル61aから吸引した液体を、それぞれ8つの貯留部に吐出する。制御部310は、8つの貯留部に吐出した液体を、各貯留部に接続された8つのフローサイトメータ360に送る。なお、洗浄処理と測定処理が連続的に行われる場合、ウェル61aから貯留部に液体を移動させるために、必要となる分注チップ容器50が、単独で洗浄処理が行われる場合に比べて1つ多くなる。
【0171】
遺伝子検査用検体処理装置10は、1つのフローサイトメータ360のみを備えても良い。この場合、マイクロプレート61の1つのウェル61aから液体を吸引するための吸引部が別途設けられ、この吸引部により、1つのウェル61a内の液体が1つのフローサイトメータ360に送られる。
【0172】
フローサイトメータ360に送られた液体、すなわち測定試料は、フローセル361に流される。制御部310は、フローセル361を流れる測定試料にレーザ光源362からレーザ光を照射する。これにより生じた波長の異なる2種類の蛍光のうち、一方の蛍光は、ダイクロイックミラー363を透過して光検出器364に照射され、他方の蛍光は、ダイクロイックミラー363によって反射されて光検出器365に照射される。
【0173】
制御部310は、光検出器364、365からの出力信号に基づいて、変異型DNA分子が結合している磁性ビーズの数と、測定試料に含まれるワイルド型DNA分子が結合している磁性ビーズの数とをそれぞれカウントする。制御部310は、変異型DNA分子が結合している磁性ビーズの数とワイルド型DNA分子が結合している磁性ビーズの数との合計数に対する、変異型DNA分子が結合した磁性ビーズの数の割合を取得する。こうして、制御部310は、各ウェル61aについてカウント数および割合を取得し、取得したカウント数および割合を出力部370に出力する。出力部370がディスプレイによって構成される場合、取得したカウント数および割合が出力部370に表示される。出力部370が通信機器によって構成される場合、取得したカウント数および割合が、出力部370に出力されることにより、他の装置に対して送信される。
【0174】
実施形態2では、オペレータは、動作モードをPCRモードと、ハイブリダイゼーションモードと、測定モードのいずれかに設定した後、開始指示部14fを押すことにより、それぞれ液滴内のPCR処理と、ハイブリダイゼーション処理と、測定モードを開始できる。したがって、
図13に示した全ての処理が、装置に対する簡便な操作により自動で行われるため、検査技師の負担を軽減し、エマルジョンを用いた遺伝子検査を効率化することができる。
【0175】
なお、上記実施形態では、BEAMing法を用いた遺伝子検査用の検体前処理を例として記載したが、本発明はこれに限られない。エマルジョンを用いた遺伝子検査の検体前処理であれば本発明を適用することができる。たとえば、血液と、血中のターゲットの核酸分子を増幅させる試薬成分が結合したラテックスビーズとを含む複数の液滴が分散されたエマルジョンを作製し、各液滴の中でターゲットの核酸分子を増幅させ、エマルジョンを破壊して、増幅されたターゲットの核酸分子を回収する場合に、本発明を適用してもよい。ラテックスビーズとしてはポリスチレンビーズを用いてもよい。
【0176】
また、液滴から回収したビーズの測定法については、フローサイトメータを用いた方法の代わりに、たとえば、液滴から回収したビーズを含む液体をスライドガラスに吐出し、スライドガラス上のビーズを撮像し、画像解析により標識プローブが結合したビーズをカウントする方法を採用してもよい。