【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成27年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業総合開発機構、「バイオマスエネルギー技術研究開発/バイオ燃料製造の有用要素技術開発事業」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【文献】
WILLGER, SD., et al.,PLoS Pathog.,2008年,vol.4, issue 11,e1000200
【文献】
BIEN, CM., et al.,Eukaryotic Cell,2010年,vol.9, no.3,p.352-359
【文献】
LE CROM, S., et al.,Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.,2009年,vol.106, no.38,p.16151-16156
【文献】
Database GenBank [online], Accessin No. EGR47355, <https://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/340517109?sat=37&satkey=263957827>, 14-Mar-2015 uploaded, MARTINEZ, D., et al., Definition: predicted protein [Trichoderma reesei QM6a],2015年
【文献】
REILLY, MC., et al.,Biotechnol. Biofuels,2015年 8月,vol.8,121
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
バイオマスは、化石資源を除いた再生可能な生物由来の有機性資源である。その中でもセルロース系バイオマスが注目を浴びている。セルロースを分解することで糖を製造し、得られた糖から化学変換や微生物を用いた発酵技術により石油資源の代替物やバイオ燃料などの有用資源を製造する技術の開発が、世界中で行われている。
【0003】
セルロース系バイオマスは、セルロース、ヘミセルロース、リグニンを主成分として構成される。このようなバイオマスは、セルロースを分解するセルラーゼ、ヘミセルロースを分解するヘミセルラーゼなどが相乗的に作用することにより、複雑な形式で分解されることが知られている。セルロース系バイオマスの有効活用にあたっては、セルロースやヘミセルロースを高効率に分解可能な糖化酵素の開発が必要となる。
【0004】
セルロースをグルコースにまで効率的に分解するには、上記の各種セルラーゼが総合的に機能することが必要であり、またキシランはセルロースについで植物に多く含まれる多糖類であるため、多種のセルラーゼ及びキシラナーゼを生産するトリコデルマ(Trichoderma)等の糸状菌は植物性多糖の分解菌として注目されてきた(非特許文献1)。
【0005】
特に、トリコデルマは、セルラーゼおよびキシラナーゼを同時に生産することが可能であり、しかもその複合酵素を大量に生産することから、セルラーゼ生産の宿主として検討がされてきた(非特許文献2)。
しかしながら、これら糸状菌を用いて工業的にセルラーゼ及びキシラナーゼを生産するためには、安価大量生産のための技術開発、更なる高生産な菌株の作製が必要である。
【0006】
一般的に微結晶性セルロースであるアビセルなどがセルラーゼ生産に用いられるが、高価であり工業用途への使用はコスト的に困難である。また、セルロース基質は不溶性のものが多く、工業プロセス上の負荷からも安価・可溶性の炭素源であるグルコースなどを用いることが望ましい。しかしながら、グルコースを用いた培養においては、カタボライト抑制と呼ばれる制御機構により、生産性の低下、または飽和が起こることが知られている。カタボライト抑制には、アスペルギルス(Aspergillus)属糸状菌などにおいては、広域制御型転写因子CreAや、CreB、CreC、CreD等が関与していることが知られており(特許文献1、2)、これらの因子を制御することによりカタボライト抑制を調節できると考えられているが、いまだグルコース阻害の回避は不充分であると考えられている。トリコデルマ属においても、機構解析が進められている(特許文献3、非特許文献3)が、機能的に不明な点がまだ多く、こちらもグルコース阻害回避には至っていない。
【0007】
一方、糸状菌(カビ)におけるタンパク質の分泌も、ほかの真核細胞同様、小胞体からゴルジ体を経由して分泌小胞により細胞膜まで輸送され、菌体外へ輸送されると考えられている。分泌酵素などの菌体外へ分泌されるタンパク質は、まず、小胞体膜上で合成されながら小胞体膜を通過し、小胞体内で適切なフォールディングや糖鎖修飾を受ける。その後、ゴルジ体へと移行し更なる糖鎖修飾を受けた後、分泌小胞に集められて細胞骨格依存的に細胞膜へと輸送される。分泌小胞が細胞膜と融合することで輸送されたタンパク質は細胞外へと移行する(非特許文献4)。目的のタンパク質が正しく輸送されるためには、輸送中のいずれの過程も重要であり、いずれの輸送過程においても、各機構の欠如はタンパク輸送の障害となりうる。
【0008】
タンパク質輸送経路を用いた遺伝子発現制御機構の一つとして、転写因子SREBP(sterol regulatory element binding protein)の存在が知られている。コレステロール合成酵素群の遺伝子発現を調整するSREBP経路において、SREBP1(もしくはSre1,SreAとも呼ばれる)は、SREBP cleavage−acivating proiteinと複合体を形成し、小胞体からゴルジ体へと輸送される。輸送先のゴルジ体上でSREBPがスプライシングを受け、活性化したSREBPが核内へ再移行することで、ステロール合成経路や脂肪酸・中性脂肪合成経路に関わる遺伝子群の発現を制御することが知られている(非特許文献5)。
菌類において、SREBP経路は病原性や低酸素応答に関与することが報告されている(非特許文献6)が、詳細は知られていない。最近、トリコデルマにおいて、SREBP経路の破壊により、セルラーゼの生産性が向上するとの報告があるが(非特許文献7)、SREBP経路とセルラーゼ生産性向上の関係について詳細は明らかではない。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書において、アミノ酸配列及びヌクレオチド配列の同一性はLipman−Pearson法(Lipman,DJ.,Pearson.WR.:Science,1985,227:1435−1441)によって計算される。具体的には、遺伝情報処理ソフトウェアGenetyx−Win(ソフトウェア開発)のホモロジー解析(Search homology)プログラムを用いて、Unit size to compare(ktup)を2として解析を行うことにより算出される。
【0017】
本明細書において、別途定義されない限り、アミノ酸配列又は塩基配列におけるアミノ酸又は塩基の欠失、置換、付加又は挿入に関して使用される「1又は数個」とは、例えば、1〜12個、好ましくは1〜8個、より好ましくは1〜4個であり得る。また本明細書において、アミノ酸又は塩基の「付加」には、配列の一末端及び両末端への1又は数個のアミノ酸又は塩基の付加が含まれる。
【0018】
本明細書において、別途定義されない限り、ハイブリダイゼーションに関する「ストリンジェントな条件」とは、配列同一性が約80%以上若しくは約90%以上のヌクレオチド配列を有する遺伝子の確認を可能にする条件である。「ストリンジェントな条件」としては、Molecular Cloning−A LABORATORY MANUAL THIRD EDITION(Joseph Sambrook,David W.Russell,Cold Spring Harbor Laboratory Press,2001)記載の条件が挙げられる。ハイブリダイゼーションの当業者は、プローブのヌクレオチド配列や濃度、長さ等に応じて、ハイブリダイゼーション溶液の塩濃度、温度等を調節することにより、ストリンジェントな条件を適切に作り出すことができる。一例を示せば、上記「ストリンジェントな条件」とは、ハイブリダイゼーション条件としては、5×SSC、70℃以上が好ましく、5×SSC、85℃以上がより好ましく、洗浄条件としては、1×SSC、60℃以上が好ましく、1×SSC、73℃以上がより好ましい。上記SSC及び温度条件の組み合わせは例示であり、当業者であれば、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーを決定する上記若しくは他の要素を適宜組み合わせることにより、適切なストリンジェンシーを実現することが可能である。
【0019】
本明細書において、遺伝子の上流及び下流とは、それぞれ、対象として捉えている遺伝子又は領域の5’側及び3’側に続く領域を示す。別途定義されない限り、遺伝子の上流及び下流とは、遺伝子の翻訳開始点からの上流領域及び下流領域には限定されない。
【0020】
<糸状菌変異株の構築>
本発明の糸状菌変異株は、Sre1の発現が親株に比べて低下又は喪失した糸状菌株である。
「Sre1」は、配列番号1で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質であり、コレステロール合成酵素群遺伝子の転写因子である。当該タンパク質は、HLH SuperfamilyおよびDUF2014 Superfamilyのドメインを持つことから、NCBIデータベースにて Sterol regulatory element-binding protein 1と登録されているSre1に相当する。当該タンパク質と他のSre1とのアミノ酸配列の同一性は、Fusarium oxysporum f. sp. cubense race 1由来のSre1とは58%、Acremonium chrysogenum ATCC 11550由来のSre1とは55%である。
【0021】
本発明におけるSre1としては、具体的には以下が挙げられる。
(a)配列番号2に示すアミノ酸配列からなるタンパク質、
(b)配列番号2に示すアミノ酸配列において、1又は数個のアミノ酸が欠失、置換、付加又は挿入されたアミノ酸配列からなり、且つコレステロール合成酵素群遺伝子の転写因子としての活性を有するタンパク質、
(c)配列番号2に示すアミノ酸配列と80%以上の同一性を有し、且つコレステロール合成酵素群遺伝子の転写因子としての活性を有するアミノ酸配列からなるタンパク質。
【0022】
配列番号2に示すアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列としては、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは97%、より好ましくは98%又はより好ましくは99%以上の同一性を有するアミノ酸配列が挙げられる。
【0023】
本発明において、Sre1の「発現」とは、当該タンパク質をコードする遺伝子(sre1遺伝子)から、翻訳産物(即ち、Sre1タンパク質(「Sre1」と表記する))が産生され、且つ機能的な状態でその作用部位に局在することをいう。Sre1の発現が低下したとは、結果として、糸状菌変異株の菌体内に存在するSre1タンパク質の量が、親株におけるそれに比べて有意に低下している状態を意味する。したがって、本発明の糸状菌変異株におけるSre1の発現を低下又は喪失させる手段には、遺伝子レベル、転写レベル、転写後調節レベル、翻訳レベル、翻訳後修飾レベルでの改変が包含される。
【0024】
「Sre1の発現が親株に比べて低下した」とは、糸状菌が有するSre1の発現量が親株に比べて低下していること、より具体的には親株と比較して、菌体内のSre1の発現量が、通常50%以下、好ましくは20%以下、より好ましくは10%以下に低下し、それによりその活性もまた同様に低下していることを意味する。最も好ましくは、Sre1の発現量が0%、すなわちSre1の発現喪失である。
尚、Sre1の発現量の比較は、Sre1のタンパク質の発現量に基づき実施される。
Sre1の発現量は、ウェスタンブロッティングや免疫組織染色等の周知の免疫学的手法により測定することが出来る。
【0025】
Sre1の発現が親株に比べて低下又は喪失した糸状菌変異株は、好適には、親株の糸状菌の染色体DNA上のsre1遺伝子を欠失又は不活性化することにより取得することができる。ここで、sre1遺伝子とは、ORFを含む転写領域及び当該遺伝子のプロモーター等の転写調節領域からなるDNAを意味する。
本発明において、sre1遺伝子としては、具体的には以下が挙げられる:
(d)配列番号1に示すヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチド;
(e)配列番号1に示すヌクレオチド配列と80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは96%以上、より好ましくは97%以上、より好ましくは98%以上、より好ましくは99%以上の同一性を有するヌクレオチド配列からなり、且つコレステロール合成酵素群遺伝子の転写因子としての活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(f)配列番号1に示すヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドの相補鎖に対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つコレステロール合成酵素群遺伝子の転写因子としての活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(g)配列番号2に示すアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(h)配列番号2に示すアミノ酸配列において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換、付加又は挿入されたアミノ酸配列からなり、且つコレステロール合成酵素群遺伝子の転写因子としての活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(i)配列番号2に示すアミノ酸配列と80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは96%以上、より好ましくは97%以上、より好ましくは98%以上、より好ましくは99%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、且つコレステロール合成酵素群遺伝子の転写因子としての活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
【0026】
sre1遺伝子の欠失又は不活性化は、当該遺伝子の塩基配列上の1つ以上の塩基に対する変異の導入、すなわち当該遺伝子の塩基配列の一部若しくは全部の欠失、当該塩基配列に対する別の塩基配列の置換若しくは挿入(この場合、Sre1のアミノ酸配列は、親株と同一であってもよいし、異なっていてもよい)等が挙げられる。
【0027】
塩基に対する変異を導入する領域としては、例えば、sre1遺伝子の転写領域、及び当該遺伝子のプロモーターやエンハンサー(転写活性化領域)などの転写調節領域を挙げることができ、好ましくは転写領域を挙げることができる。
【0028】
sre1遺伝子の転写調節領域としては、例えば、染色体DNA上におけるSre1遺伝子の転写領域の5’末端より上流側30塩基までの領域を挙げることができる。sre1遺伝子の転写活性化領域としては、上流側−500塩基から−1000塩基に相当する領域を挙げることができる。
【0029】
転写領域への塩基の変異の導入は、Sre1の発現を低下又は喪失させる塩基の変異であれば、塩基の種類及び数に制限はないが、塩基の欠失としては、好ましくは10塩基以上、より好ましくは20塩基以上、さらに好ましくは100塩基以上、特に好ましくは200塩基以上の転写領域の一部、最も好ましくは転写領域全部の欠失を挙げることができる。塩基の置換としては、転写領域の5’末端から150番目以内の塩基、好ましくは100番目以内の塩基、より好ましくは50番目以内の塩基、特に好ましくは30番目以内の塩基、最も好ましくは20番目以内の塩基を置換してナンセンスコドンを導入する置換を挙げることができる。塩基の挿入としては、転写領域の5’末端から150番目以内の塩基、好ましくは100番目以内の塩基、より好ましくは50番目以内の塩基、特に好ましくは30番目以内の塩基、最も好ましくは20番目以内の塩基の直後に、50塩基以上、好ましくは100塩基以上、より好ましくは200塩基以上、さらに好ましくは500塩基以上、特に好ましくは1kb以上のDNA断片を付加することを挙げることができる。塩基の付加の好ましい態様としては、ハイグロマイシン耐性遺伝子、オーレオバシジン耐性遺伝子等の薬剤耐性遺伝子、又は当該糸状菌が有さないアセトアミダーゼ遺伝子等の栄養要求性遺伝子の導入を挙げることができる。
【0030】
糸状菌の染色体DNA上のsre1遺伝子に塩基の変異を導入する方法としては、例えば、相同組換えを利用した方法を挙げることができる。一般的な相同組換えを利用した方法としては、塩基が欠失、置換又は挿入された変異遺伝子を、sre1遺伝子の上流領域及び下流領域の間に挿入することにより、薬剤耐性遺伝子又は栄養要求性遺伝子を有したDNA断片を作成し、当該DNA断片を利用して、塩基の欠失等を導入したい宿主細胞内のsre1遺伝子の遺伝子配座にて相同組換えを起こす方法を挙げることができる。
【0031】
相同組換えを利用した具体的な方法としては、i)当該相同組換え用DNA断片を常法により親株の糸状菌に導入した後、薬剤耐性又は栄養要求性を指標にして相同組換えによって染色体DNA上に当該相同組換え用プラスミドが組込まれた形質転換株を選択し、ii)得られた形質転換株の染色体DNAを鋳型としてPCRを行う。この際のプライマーは当該遺伝子の塩基が欠失、置換又は挿入された場所が増幅されるように設計されている。当該遺伝子の本来の長さが増幅されず、塩基の欠失、置換又は挿入を反映した長さが増幅された株を選択し、iii)最終的にサザン解析にて染色体DNAの当該遺伝子座にのみ変異型遺伝子が導入されており、それ以外の場所には導入されていない株を取得することができる。
【0032】
親株の染色体DNA上のsre1遺伝子に塩基の変異を導入する方法としては、他にもバクテリオファージや接合を利用する方法を挙げられる。
【0033】
また、本発明の糸状菌変異株は、親株の糸状菌を突然変異処理法に付した後、Sre1の発現が親株と比較して低下又は喪失した菌株を選択することによっても得ることが出来る。突然変異処理法としては、具体的には、N-メチル−N’-ニトロ-N-ニトロソグアニジン(NTG)、エチルニトロソウレア、紫外線による処理(新版 微生物実験法、1999年、126-134頁、講談社サイエンティフィック)、放射線の照射等が挙げられる。また、種々のアルキル化剤や発癌物質も変異原として用いることができる。
【0034】
また、sre1遺伝子に変異を導入せずにSre1の発現を低下させることもできる。このような方法としては、例えば、タンパク質をコードする遺伝子の転写産物を分解する活性を有する核酸、或いは当該転写産物からタンパク質への翻訳を抑制する核酸の導入が挙げられる。このような核酸としては、当該タンパク質をコードするmRNAの塩基配列と相補的又は実質的に相補的な塩基配列或いはその一部を含む核酸が挙げられる。
【0035】
Sre1をコードするmRNAの塩基配列と実質的に相補的な塩基配列とは、対象糸状菌体内の生理的条件下において、当該mRNAの標的配列に結合してその翻訳を阻害し得る程度の相補性を有する塩基配列を意味し、具体的には、例えば、当該mRNAの塩基配列と完全相補的な塩基配列(すなわち、mRNAの相補鎖の塩基配列)と、オーバーラップする領域に関して、約80%以上、好ましくは約90%以上、より好ましくは約95%以上、最も好ましくは約97%以上の同一性を有する塩基配列である。
【0036】
より具体的には、Sre1をコードするmRNAの塩基配列と相補的又は実質的に相補的な塩基配列としては、上述の(d)〜(i)で示したポリヌクレオチドが挙げられる。
【0037】
好適なSre1をコードするmRNAとしては、例えば、配列番号1に示される塩基配列を含むトリコデルマ・リーセイのSre1をコードするmRNAを挙げることが出来る。
【0038】
「Sre1をコードするmRNAの塩基配列と相補的又は実質的に相補的な塩基配列の一部」とは、Sre1のmRNAに特異的に結合することができ、且つ当該mRNAからのタンパク質の翻訳を阻害し得るものであれば、その長さや位置に特に制限はないが、配列特異性の面から、標的配列に相補的又は実質的に相補的な部分を少なくとも10塩基以上、好ましくは約15塩基以上、より好ましくは約20塩基以上含むものである。
【0039】
具体的には、Sre1をコードするmRNAの塩基配列と相補的又は実質的に相補的な塩基配列又はその一部を含む核酸として、以下の(j)〜(l)のいずれかのものが好ましく例示される。
(j)Sre1をコードするmRNAに対するアンチセンスRNA
(k)Sre1をコードするmRNAに対するsiRNA(small interfering RNA)
(l)Sre1をコードするmRNAに対するリボザイム
【0040】
本発明における親株としては、Sre1を発現し、且つセルラーゼ活性及び/又はキシラナーゼ活性を有する糸状菌であれば、限定されず、真菌門(Eumycota)及び卵菌門(Oomycota)に属する糸状菌が挙げられる。具体的には、上記糸状菌としては、トリコデルマ属、アルペルギルス(Aspergillus)属、ペニシリウム(Penicillium)属、ニューロスポラ(Neurospora)属、フサリウム(Fusarium)属、クリソスポリウム(Chrysosporium)属、フミコーラ(Humicola)属、エメリセラ(Emericella)属、及びハイポクレア(Hypocrea)属の糸状菌が挙げられるが、好ましくはトリコデルマ属の糸状菌である。
【0041】
前記トリコデルマ属の糸状菌としては、トリコデルマ・リーセイ、トリコデルマ・ロンジブラキアタム(Trichoderma longibrachiatum)トリコデルマ・ハリジアウム(Trichoderma harzianum)、トリコデルマ・コニンギ(Trichoderma koningii)及びトリコデルマ・ヴィリデ(Trichoderma viride)等が挙げられるが、好ましくはトリコデルマ・リーセイであり、より好ましくはトリコデルマ・リーセイPCD−10株(FERM P−8172)である。
【0042】
親株である糸状菌は、野生型株であってもよく、当該野生型株から人工的に育種された株でもよく、そのゲノム中の塩基配列が置換、付加、欠失又は修飾された変異型株(変異体)又は突然変異体であってもよい。
【0043】
本発明の糸状菌変異株の好適な例としては、トリコデルマ・リーセイ PCD−10株(FERM P−8172)のsre1遺伝子を相同的組換えにより欠失させ、Sre1の発現を喪失させることにより得られる糸状菌が挙げられ、具体的には、後述する実施例に開示したトリコデルマ・リーセイΔSre1を挙げることができる。
【0044】
斯くして構築された本発明の糸状菌変異株は、菌体内のSre1の発現が親株と比べて低下又は喪失していることに起因して、セルラーゼ又はキシラナーゼの生産において親株よりもグルコースによる阻害が抑えられる。
したがって、本発明の糸状菌変異株を用いれば、グルコースが培地中に高濃度で存在している場合においても、セルラーゼ又はキシラナーゼの生産性低下が抑えられる。
【0045】
<セルラーゼ及び/又はキシラナーゼの製造>
本発明の糸状菌変異株をセルラーゼ誘導物質の存在下で培養し、培養物中にセルラーゼ及び/又はキシラナーゼを生成、蓄積させ、当該培養物からセルラーゼ及び/又はキシラナーゼを採取することにより、セルラーゼ及び/又はキシラナーゼを製造することができる。
【0046】
ここで、「セルラーゼ誘導物質」としては、セルラーゼ生産性糸状菌のセルラーゼ生産を誘導する物質であれば制限はないが、例えばセルロース;ソホロース;並びにセロビオース、セロトリオース、セロテトラオース、セロペンタオース及びセロヘキサオース等のセロオリゴ糖から選ばれる化合物を挙げることができる。
【0047】
ここで、セルロースには、グルコースがβ-1,4-グルコシド結合により重合した重合体及びその誘導体が包含される。グルコースの重合度は特に限定されない。また、誘導体としては、カルボキシメチル化、アルデヒド化、又はエステル化等の誘導体が挙げられる。さらに、セルロースは、配糖体であるβグルコシド、リグニン及び/又はヘミセルロースとの複合体であるリグノセルロース、さらにペクチン等との複合体であってもよい。セルロースは、結晶性セルロースであってもよいし、非結晶性セルロースであってもよい。
【0048】
セルラーゼ誘導物質は、一括添加(バッチ法)、分割添加(フェドバッチ法)あるいは連続添加(フィード法)等の任意の方法で添加することができる。培地中に添加するセルラーゼ誘導物質の量は、本発明の糸状菌がセルラーゼ及び/又はキシラナーゼ産生を誘導できる量であればよく、添加法によっても異なるが、培地に対して、総量で、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上であり、かつ好ましくは40質量%以下、より好ましくは35質量%以下、より好ましくは30質量%以下である。また、好ましくは0.1〜40質量%、より好ましくは0.5〜35質量%、より好ましくは1〜30質量%である。
このうち、一括添加する場合の添加量は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上であり、かつ好ましくは16質量%以下、より好ましくは14質量%以下、より好ましくは12質量%以下である。また、好ましくは0.1〜16質量%、より好ましくは0.5〜14質量%、より好ましくは1〜12質量%である。
【0049】
本発明の方法で用いられる培地は、炭素源、窒素源、無機塩、ビタミンなど、本発明の糸状菌の増殖並びにセルラーゼ及び/又はキシラナーゼの生産に必要な栄養素を含む限り、合成培地、天然培地のいずれでもよい。
【0050】
炭素源としては、本発明の糸状菌変異株が資化できる炭素源であればいずれでもよく、具体的には、上記したセルラーゼ誘導物質の他、グルコース、フラクトースのような糖質、エタノール、グリセロールのようなアルコール類、酢酸のような有機酸類などを挙げることができる。これらは単独で、又は複数を組み合わせて使用することができる。
本発明の糸状菌変異株は、培養開始時にグルコースが培地中に存在している場合においても、セルラーゼ又はキシラナーゼの生産性が抑制されない。この場合、グルコースの添加量は、培地に対して、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは2.5質量%以上であり、かつ好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。また、好ましくは0.1〜15質量%、より好ましくは0.5〜10質量%、より好ましくは2.5〜5質量%である。また、培地中のセルラーゼ誘導物質とグルコースの量は、質量比で10:1〜1:1であるのが好ましく、4:1〜2:1であるのがより好ましい。
【0051】
窒素源としては、アンモニア、硫酸アンモニウム等のアンモニウム塩、アミン等の窒素化合物、ペプトン、大豆加水分解物のような天然窒素源などを挙げることができる。
【0052】
無機塩としては、リン酸カリウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸第一鉄、炭酸カリウムなどを挙げることができる。
【0053】
ビタミンとしては、ビオチンやチアミンなどをあげることができる。さらに必要に応じて本発明の糸状菌が生育に要求する物質を添加することができる。
【0054】
培養は、好ましくは振とう培養や通気攪拌培養のような好気的条件で行う。培養温度は好ましくは10℃以上、より好ましくは20℃以上、より好ましくは25℃以上であり、且つ好ましくは50℃以下、より好ましくは42℃以下、より好ましくは35℃以下である。また、好ましくは10〜50℃、より好ましくは20〜42℃、より好ましくは25〜35℃である。
培養時のpHは3〜9、好ましくは4〜5である。培養時間は、10時間〜10日間、好ましくは2〜7日間である。
【0055】
培養終了後、培養物を回収し、必要に応じて超音波や加圧等による菌体破砕処理を行い、ろ過や遠心分離等によって固液分離した後、限外ろ過、塩析、透析、クロマトグラフィー等を適宜組み合わせることによりセルラーゼ及び/又はキシラナーゼを取得できる。なお、分離精製の程度は特に限定されない。培養上清やその粗分離精製物自体をセルラーゼ及びキシラナーゼとして利用することもできる。
【0056】
尚、本発明において、「セルラーゼ」とは、セルロースを分解する酵素の総称であり、セルロースの分子内部から切断するエンドグルカナーゼ(EC 3.2.1.4);セルロースの還元末端又は非還元末端から分解し、セロビオースを遊離するエキソグルカナーゼ(セロビオヒドロラーゼ、EC 3.2.1.91)及びβ−グルコシダーゼ(EC 3.2.1.21)を包含する。
「キシラナーゼ」とは、キシランのβ1−4結合を加水分解し、キシロースを生成する酵素(EC 3.2.1.8)である。
【0057】
本発明の糸状菌変異株を用いたセルロース又はキシランの分解又は糖化、及び単糖の製造は、公知の方法を用いて行うことができる。
すなわち、上述した、本発明の糸状菌変異株をセルラーゼ誘導物質の存在下で培養して得られる培養物をバイオマス糖化剤とし、これとセルロース又はキシラン含有物質(バイオマス)を水性媒体中に共存させ、撹拌または振とうしながら加温することにより、バイオマスを分解または糖化し、単糖を製造することができる。
セルロース又はキシラン含有物質としては、上記培地に含めるセルラーゼ誘導物質として挙げたものを利用することができる。
バイオマスの分解又は糖化において、反応液のpHおよび温度は、セルラーゼ又はキシラナーゼが失活しない範囲内であればよく、一般的に、常圧で反応を行う場合、温度は5〜95℃、pHは1〜11の範囲で行われる。
バイオマスの分解又は糖化の工程は、バッチ式で行っても、連続式で行ってもよい。
【0058】
上述した実施形態に関し、本発明においては更に以下の態様が開示される。
<1>Sre1の発現が親株に比べて低下又は喪失した糸状菌変異株。
<2>Sre1の発現が喪失している、<1>の糸状菌変異株。
<3>Sre1が、以下の(a)〜(c)より選ばれるタンパク質である、<1>の糸状菌変異株:
(a)配列番号2に示すアミノ酸配列からなるタンパク質、
(b)配列番号2に示すアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、且つコレステロール合成酵素群遺伝子の転写因子としての活性を有するタンパク質、
(c)配列番号2に示すアミノ酸配列において、1又は数個のアミノ酸が欠失、置換、付加又は挿入されたアミノ酸配列からなり、且つコレステロール合成酵素群遺伝子の転写因子としての活性を有するタンパク質。
<4>sre1遺伝子が欠失又は不活性化された<1>〜<3>のいずれかに記載の糸状菌変異株。
<5>sre1遺伝子が、以下の(d)〜(i)のいずれかで示される<4>の糸状菌変異株:
(d)配列番号1に示す塩基配列からなるポリヌクレオチド、
(e)配列番号1に示す塩基配列と80%以上の同一性を有する塩基配列からなり、且つコレステロール合成酵素群遺伝子の転写因子としての活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド、
(f)配列番号1に示す塩基配列からなるポリヌクレオチドの相補鎖に対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つコレステロール合成酵素群遺伝子の転写因子としての活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド、
(g)配列番号2に示すアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチド、
(h)配列番号2に示すアミノ酸配列において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換、付加又は挿入されたアミノ酸配列からなり、且つコレステロール合成酵素群遺伝子の転写因子としての活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド、
(i)配列番号2に示すアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、且つコレステロール合成酵素群遺伝子の転写因子としての活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
<6>糸状菌がトリコデルマ属に属する、<1>〜<5>のいずれか1項に記載の糸状菌変異株。
<7>糸状菌がトリコデルマ・リーセイである、<1>〜<5>のいずれかの糸状菌変異株。
<8><1>〜<7>のいずれか1項に記載の糸状菌変異株をセルラーゼ誘導物質の存在下で培養し、培養物中にセルラーゼ及び/又はキシラナーゼを生成、蓄積させる工程、及び当該培養物からセルラーゼ及び/又はキシラナーゼを採取する工程を含むセルラーゼ及び/又はキシラナーゼの製造方法。
<9><1>〜<7>のいずれかに記載の糸状菌変異株をセルラーゼ誘導物質及びグルコースの存在下で培養し、培養物中にセルラーゼ及び/又はキシラナーゼを生成、蓄積させる工程、及び当該培養物からセルラーゼ及び/又はキシラナーゼを採取する工程を含むセルラーゼ及び/又はキシラナーゼの製造方法。
<10>培地中に、セルラーゼ誘導物質を総量で0.1〜40質量%、好ましくは0.5〜35質量%、より好ましくは1〜30質量%含有し、グルコースを0.1〜15質量%、好ましくは0.5〜10質量%、より好ましくは2.5〜5質量%含有する、<9>のセルラーゼ及び/又はキシラナーゼの製造方法。
<11>セルラーゼ誘導物質とグルコースが、質量比で10:1〜1:1、好ましくは4:1〜2:1である<10>のセルラーゼ及び/又はキシラナーゼの製造方法。
<12><1>〜<7>のいずれかに記載の糸状菌変異株をセルラーゼ誘導物質の存在下で培養して得られる培養物をバイオマス糖化剤として用いる、バイオマスからの糖の製造方法。
<13><1>〜<7>のいずれか記載の糸状菌変異株をセルラーゼ誘導物質の存在下で培養して得られる培養物をバイオマス糖化剤として用いる、バイオマスの糖化方法。
【実施例】
【0059】
以下、実施例を示し、本発明をより具体的に説明する。
【0060】
<実施例1>遺伝子変異点解析
Trichoderma reesei PCD-10株を親株として突然変異処理を施し、グルコース存在下でのセルラーゼ生産が親株と比較して向上している菌株を選抜した。この変異株のゲノムDNAをISOPLANT II DNA精製キット(ニッポンジーン)により抽出し、Trichoderma reesei PCD-10株との比較ゲノム解析を行った。その結果、sre1遺伝子のORF内に変異が導入されており、その結果、フレームシフトによる遺伝子破壊がなされていることを確認した。
【0061】
<実施例2>遺伝子破壊菌株の作製
(1) 遺伝子破壊用プラスミドDNAの構築
pUC118(タカラバイオ)のHincII制限酵素切断点にTrichoderma reesei由来のsre1遺伝子の一部(配列番号3)を挿入したプラスミドpUC−Sre1を鋳型とし、表1に示したフォワードプライマー1(配列番号4)とリバースプライマー1(配列番号5)にてPCRすることで約5.2kbp断片(A)を増幅した。またAspergillus nidurans由来のアセトアミダーゼamdSの(配列番号6)を鋳型として表1に示したフォワードプライマー2(配列番号7)とリバースプライマー2(配列番号8)を用いてPCRすることで約3.1kbp断片(B)を増幅した。得られたDNA断片(A)及び(B)はIn−Fusion HD Cloning Kit(タカラバイオ)のプロトコルに従って処理し、sre1の遺伝子中にamdS遺伝子が挿入されたプラスミドを構築した。このプラスミドをコンピテントセルE. coli DH5α Competent Cells(タカラバイオ)へと形質転換し、アンピシリン耐性株として得られた形質転換体の中から、コロニーPCRにより目的の遺伝子が挿入されたプラスミドを保持する菌株を選別した。選別した形質転換体はアンピシリン添加LB培地を用いて培養後(37℃、1日間)、得られた菌体からプラスミドをHigh Pure Plasmid Isolation kit(ロシュ)を用いて回収、精製した。ここで得られたベクターをpUC−Sre1−amdSと名付けた。
【0062】
(2)形質転換体の作製
Trichoderma reesei PCD−10株に対して上記(1)で構築したベクターの形質転換を行った。導入はプロトプラストPEG法(Biotechnol Bioeng. 2012 Jan;109(1):92-99.)で行った。形質転換体はアセトアミドを単一窒素源とした選択培地(2% グルコース、1.1M ソルビトール、2% アガー、0.2% KH
2PO
4(pH5.5)、0.06% CaCl
2・2H
2O、0.06% CsCl
2、0.06% MgSO
4・7H
2O、0.06% アセトアミド、0.1%Trace element1;%はいずれもw/v%)にて選抜した。Trace element1の組成は以下のとおりである:0.5g FeSO
4・7H
2O、0.2g CoCl
2、0.16g MnSO
4・H
2O、0.14g ZnSO
4・7H
2Oを蒸留水にて100mLにメスアップした。得られた形質転換体の中から、相同組換えによりsre1の遺伝子位置にamdSが挿入され遺伝子破壊が起きているものを、表1に示したフォワードプライマー3(配列番号9)とリバースプライマー3(配列番号10)、及びフォワードプライマー4(配列番号11)とリバースプライマー4(配列番号12)のプライマーを用いコロニーPCRにより選別した。正しいDNA増幅を示した株を形質転換体とし、ここで得られた菌株をPCD−10ΔSre1と名付けた。
【0063】
【表1】
【0064】
<実施例3>形質転換体の培養
形質転換体の酵素生産性は、以下に示す培養により評価した。前培養として500mLフラスコに培地を50mL仕込み、1x10
5個/mLとなるようTrichoderma reesei PCD−10株(WT)と実施例1で作製した、PCD−10ΔSre1のそれぞれの胞子を植菌し、28℃、220rpmにて振とう培養した(プリス社製PRXYg-98R)。培地組成は以下の通りである。1% グルコース、0.14% (NH
4)
2SO
4、0.2% KH
2PO
4、0.03% CaCl
2・2H
2O、0.03% MgSO
4・7H
2O、0.1% ハイポリペプトンN、0.05% Bacto Yeast extract、0.1% Tween 80、0.1% Trace element2、50mM 酒石酸バッファー(pH4.0)。Trace element2の組成は以下の通りである。6mg H
3BO
3、26mg (NH
4)
6Mo
7O
24・4H
2O、100mg FeCl
3・6H
2O、40mg、CuSO
4・5H
2O、8mg MnCl
2・4H
2O、200mg ZnCl
2を蒸留水にて100mLにメスアップする。
2日間の前培養後、ジャーファーメンター(バイオット社製BTR-25NA1S-8M)を用いて本培養を行った。上記前培養液を10%(v/v%)植菌し、5日間培養を行った。炭素源として10%アビセルまたは10%アビセル+5%グルコースとし、その他の培地成分は以下の通りである。0.42% (NH
4)
2SO
4、0.2%KH
2PO
4、0.03% CaCl
2・2H
2O、0.03% MgSO
4・7H
2O、0.1% ハイポリペプトンN、0.05% Bacto Yeast extract、0.1% Tween 80、0.1% Trace element2、0.2% Antifoam PE−L。ジャーファーメンターの設定は以下の通りである。温度:28℃、、通気量:0.5 vvm、pH:4.5 (5% アンモニア水で調整)、撹拌数はDO=3.0 ppmを一定に保つよう変動。本培養は5日間行った。
【0065】
<実施例3> タンパク質濃度測定
タンパク質の濃度はbradford法にて測定した。bradford法では、Quick Startプロテインアッセイ(BioRad)を使用し、ウシγグロブリンを標準タンパク質とした検量線をもとにタンパク質量を計算した。
これにより、作製された形質転換体は親株と比較して、高濃度にグルコースが存在した場合においても酵素生産の低下が抑えられていることが示された。