特許第6612567号(P6612567)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6612567
(24)【登録日】2019年11月8日
(45)【発行日】2019年11月27日
(54)【発明の名称】印刷装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/175 20060101AFI20191118BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20191118BHJP
【FI】
   B41J2/175 175
   B41J2/175 119
   B41J2/01 451
   B41J2/01 401
【請求項の数】2
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-182818(P2015-182818)
(22)【出願日】2015年9月16日
(65)【公開番号】特開2017-56619(P2017-56619A)
(43)【公開日】2017年3月23日
【審査請求日】2018年7月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000250502
【氏名又は名称】理想科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(72)【発明者】
【氏名】伏見 隆弘
【審査官】 村田 顕一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−094715(JP,A)
【文献】 特開2002−264435(JP,A)
【文献】 特開平11−231734(JP,A)
【文献】 特開平11−198408(JP,A)
【文献】 特開2006−168039(JP,A)
【文献】 特開2001−138547(JP,A)
【文献】 特開平04−035955(JP,A)
【文献】 特開2001−199057(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01−2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともインクカートリッジが初めて本体装置に装着された初回装着情報とインクカートリッジのボトルに関するリサイクル可能条件とインクが使用されず放置されても使用可能な期間である放置可能期間とを記憶する記憶手段と、
前記初回装着情報に基づいて前記インクカートリッジがリサイクルカートリッジであるか否かを判定する第1判定手段と、
前記第1判定手段により前記インクカートリッジがリサイクルカートリッジであると判定された場合に、前記ボトルに関するリサイクル可能条件と前記放置可能期間とに基づいて、インクを最後に使用された時点から現時点までの経過時間が前記放置可能期間内でない場合、当該リサイクルカートリッジが使用可能でないと判定する第2判定手段と、
を備えたことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
インクカートリッジの環境温度を測定する環境温度測定手段を、さらに備え、
前記記憶手段は、さらに、インクカートリッジの使用が可能な温度の範囲である使用可能温度範囲を記憶し、
前記第2判定手段は、
前記第1判定手段により前記インクカートリッジがリサイクルカートリッジであると判定された場合に、前記ボトルに関するリサイクル可能条件と前記放置可能期間と前記環境温度測定手段により測定された環境温度とに基づいて、インクを最後に使用された時点から現時点までの経過時間が前記放置可能期間内でなく、かつ、前記環境温度測定手段により測定された前記環境温度が前記使用可能温度範囲内にない場合、当該リサイクルカートリッジが使用可能でないと判定する
ことを特徴とする請求項1記載の印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクカートリッジがリサイクルカートリッジ(インクが再充填されたインクカートリッジの他、装置本体に再度装填されたインクカートリッジも含む。)である場合でも、印刷装置の故障等を招くことなく使用できる印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、リサイクルなど環境配慮が進むにつれて、インクが消耗してもインクカートリッジのボトルやケースはそのまま再利用し、インクの詰め替え(リフィル)を行ったリサイクルカートリッジが再販売することが行われている。
【0003】
しかし、インクの詰め替えを行うインクカートリッジは、どのような環境下で使用されたものかが不明であるため、詰め替えた際にインクが漏れたり、インクカートリッジが膨張して印刷装置に装着できない、など様々な問題を発生させる可能性があった。そのため、ユーザ保護やプリンタ自体を損傷させる可能性があることより、印刷装置の製造・販売メーカーとしては、インクカートリッジのリサイクル詰め替えでの動作を勧め難かった。
【0004】
そこで、このようなリサイクル時の問題点を解決するため、例えば、過去に行ったカートリッジ(筺体)のリサイクル回数をカウントするリサイクルカウンタと、カートリッジ(筺体)の実行可能なリサイクル回数の上限値およびそのカートリッジの使用可能期限を不揮発性メモリに記憶させておき、リサイクル時には、カートリッジの使用可能期限およびカウントしているリサイクル回数を基にして、カートリッジのリサイクル処理を行うか、あるいは廃棄処理するかを判断するようにした印刷装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−64451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の特許文献1に記載の印刷装置では、カートリッジのリサイクル時には、カートリッジ(筺体)の使用可能期限およびカウントされているカートリッジのリサイクル回数に基づいてカートリッジの寿命を判断しており、リサイクル回数以外のカートリッジの使用環境によるカートリッジの変形などについては何ら考慮されていない。
【0007】
そのため、リサイクルカートリッジを使用する際、リサイクルカートリッジが変形している場合には、印刷装置を故障させるおそれがあった。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、リサイクルカートリッジを使用する場合に、印刷装置の故障等を確実に防止できる印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係る印刷装置の第1の特徴は、少なくともインクカートリッジが初めて本体装置に装着された初回装着情報とインクカートリッジのボトルに関するリサイクル可能条件とインクに関するインク情報とを記憶する記憶手段と、前記初回装着情報に基づいて前記インクカートリッジがリサイクルカートリッジであるか否かを判定する第1判定手段と、前記第1判定手段により前記インクカートリッジがリサイクルカートリッジであると判定された場合に、前記ボトルに関するリサイクル可能条件と前記インクに関するインク情報とに基づいて当該リサイクルカートリッジが使用可能であるか否かを判定する第2判定手段と、を備えたことにある。
【0010】
また、本発明に係る印刷装置の第2の特徴は、前記記憶手段は、前記インク情報として、インクが使用されず放置されても使用可能な期間である放置可能期間が記憶されており、前記第2判定手段は、インクを最後に使用された時点から現時点までの経過時間が前記放置可能期間内でない場合、当該リサイクルカートリッジが使用可能でないと判定することにある。
【0011】
また、本発明に係る印刷装置の第3の特徴は、少なくともインクカートリッジが初めて本体装置に装着された初回装着情報とインクカートリッジのボトルに関するリサイクル可能条件とインクカートリッジの使用が可能な温度の範囲である使用可能温度範囲とを記憶する記憶手段と、インクカートリッジの環境温度を測定する環境温度測定手段と、前記初回装着情報に基づいて前記インクカートリッジがリサイクルカートリッジであるか否かを判定する第1判定手段と、前記第1判定手段により前記インクカートリッジがリサイクルカートリッジであると判定された場合に、前記ボトルに関するリサイクル可能条件と前記環境温度測定手段により測定された環境温度とに基づいて当該リサイクルカートリッジが使用可能であるか否かを判定する第2判定手段と、を備え、前記第2判定手段は、前記環境温度測定手段により測定された前記環境温度が前記使用可能温度範囲内にない場合、当該リサイクルカートリッジが使用可能でないと判定することにある。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る印刷装置の第1の特徴によれば、第1判定手段がインクカートリッジの初回装着情報に基づいてインクカートリッジがリサイクルカートリッジであるか否かを判定し、リサイクルカートリッジと判定された場合には、さらに第2判定手段がボトルに関するリサイクル可能条件と、インクに関するインク情報とに基づいてリサイクルインクカートリッジが使用可能であるか否かを判定する。
【0013】
尚、本発明におけるリサイクルカートリッジには、インクボトル内のインクが消費され、インクが再充填されたインクカートリッジの他、新品のインクカートリッジが印刷装置の装置本体からいったん外され、その印刷装置または他の印刷装置の装置本体に再度装填されたインクカートリッジも含むものとする。
【0014】
そのため、インクカートリッジがリサイクルカートリッジである場合、ボトルに関するリサイクル可能条件だけでなく、インクに関するインク情報に基づいてもリサイクルカートリッジが使用可能であるか否かが判定されるので、インクの劣化により使用できなくなったリサイクルカートリッジを使用することを未然に防止でき、印刷装置の故障等を確実に防止できる。
【0015】
また、本発明に係る印刷装置の第2の特徴によれば、記憶手段にはインクが使用されず放置されても使用可能な期間を放置可能期間として記憶されており、放置可能期間を経過している場合にはたリサイクルカートリッジを使用できないと判定する。
【0016】
そのため、インクの劣化により使用できなくなったリサイクルカートリッジの使用による印刷装置の故障等をさらに確実に防止できる。
【0017】
また、本発明に係る印刷装置の第3の特徴によれば、記憶手段には測定されたカートリッジの使用可能温度範囲が記憶されており、測定された環境温度が使用可能温度範囲内にない場合には、インクカートリッジが膨潤や破損を起こし変形している可能性があるとしてリサイクルカートリッジを使用できないと判定する。
【0018】
そのため、高温や低温環境にさらされ使用できなくなったリサイクルカートリッジの使用による印刷装置の故障等をさらに確実に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態1に係る印刷装置の構成を説明した図である。
図2】本発明の実施形態1に係る印刷装置の機能を説明した説明図である。
図3】本発明の実施形態1に係る印刷装置のインクカートリッジに搭載されたICチップメモリに記憶されたメモリ情報の一例を示す図である。
図4】本発明の実施形態1に係る印刷装置の動作を示すフローチャートである。
図5】本発明の実施形態2に係る印刷装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0021】
本発明の実施形態では、本体装置と、本体装置に対して着脱可能に取り付けられた色毎のインクカートリッジとを備え、インクカートリッジから本体装置が備えるインクジェットヘッドにインクが供給され、吐出されることで印刷する印刷装置を例に挙げて説明する。
また、下記に説明する本発明の実施形態では、リサイクルカートリッジには、インクボトル内のインクが消費され、インクが再充填されたインクカートリッジの他、新品のインクカートリッジが印刷装置の装置本体からいったん外され、その印刷装置または他の印刷装置の装置本体に再度装填されたインクカートリッジも含むものとして説明する。
【0022】
<本発明に係る実施形態1の印刷装置1の構成>
図1は、本発明の実施形態に係る印刷装置1の構成を説明した図である。
【0023】
本発明の実施形態に係る印刷装置1は、インクカートリッジを装着して印刷を実行する本体装置を備えるもので、図1では、本体装置にインクカートリッジが装着された状態の印刷装置1を例に挙げて説明する。
【0024】
図1に示すように、印刷装置1は、例えば、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(ブラック)のインクに対応するインクジェットヘッド110C,110M,110Y,110Kが装着され、印刷用紙は、インクジェットヘッド110C,110M,110Y,110Kの対向面に設けられた環状の搬送ベルト(図示しない)によって印刷条件により定められる速度で搬送されながら、インクジェットヘッド110C,110M,110Y,110Kから吐出されたインクによりライン単位で印刷される。
【0025】
各インクは、インクカートリッジから供給されるようになっており、C(シアン)のインクを供給するインクボトル151C、M(マゼンタ)のインクを供給するインクボトル151M、Y(イエロー)のインクを供給するインクボトル151Y、K(ブラック)のインクを供給するインクボトル151Kが備えられている。なお、以下においてインク色にこだわらない場合には、インクジェットヘッド110、インクカートリッジ150、インクボトル151等の符号で代表して説明する。他の機能部についても同様である。
【0026】
インクボトル151から供給されたインクは、樹脂、金属等のパイプにより形成されたインク循環経路を通って、インクジェットヘッド110の下流側に設けられた下流タンクに一旦溜められる。このため、印刷装置1には、C(シアン)のインクを溜める下流タンク120C、M(マゼンタ)のインクを溜める下流タンク120M、Y(イエロー)のインクを溜める下流タンク120Y、K(ブラック)のインクを溜める下流タンク120Kが備えられている。
【0027】
印刷装置1には、ポンプ170C、ポンプ170M、ポンプ170Y、ポンプ170Kおよび上流タンク130C、上流タンク130M、上流タンク130Y、上流タンク130Kが備えられている。下流タンク120に溜められたインクは、ポンプによりインクジェットヘッド110の上流側に設けられた上流タンクに送られる。上流タンク130に送られたインクは、インクを吐出する多数のノズルが設けられているインクジェットヘッド110に送液される。
【0028】
上流タンク130は共通空気室172と接続されている。共通空気室172には、ポンプ173および図示しない大気開放弁が備えられており、大気開放弁を全閉してポンプ173により上流タンク130に空気を送り込んだり、大気開放弁を全開して大気圧にしたりすることにより、上流タンク130内の空気の圧力を調整する。
【0029】
インクジェットヘッド110で吐出されなかったインクは、下流タンク120に戻される。上流タンク130からインクジェットヘッド110を経由して下流タンク120へのインク帰還は、上流タンク130と下流タンク120との水頭差を利用している。
【0030】
インクは印刷品質が保証される温度範囲が定められており、環境温度が低く、環境温度が印刷可能である下限温度を下回っているとインクを加熱する必要がある。一方、インクジェットヘッド110内に設けられたドライバやピエゾ素子は動作することにより発熱し、これらの発熱やインク振動のジュール熱により、高温時における環境温度上昇の影響等を抑制する必要がある。
【0031】
そこで、印刷装置1は、環境温度を測定する環境温度センサ11を備えると共に、インク循環経路上に温度調節部161が設けられており、温度調節部161により、インクが加温又は冷却される。
【0032】
ただし、本発明の実施形態1に係る印刷装置1では、インクカートリッジ150として新品の物だけでなく、インクを詰め替えた若しくは再度印刷装置1に装填されたリサイクルカートリッジの使用も許容するため、後述するように装着されたインクカートリッジ150がリサイクルカートリッジであり、環境温度の最小値と最大値が予め定めておいたリサイクル可能温度の下限値と上限値とを超えた場合には、印刷を終了する。
【0033】
また、印刷装置1は、本体装置全体を制御する制御部10を備えており、制御部10の構成や機能については、図2にて説明する。
【0034】
図2は、本発明の実施形態1に係る印刷装置1の機能を説明した説明図である。
【0035】
インクカートリッジ150は、それぞれ各色のインクを収容したインクボトル151と、非接触IC等のICチップメモリ152とを備えている。
【0036】
ICチップメモリ152は、本体装置の制御部10との間で無線によるデータ通信可能で、後述する図3に示すような各種のデータが記憶される。
【0037】
制御部10は、本体装置に装着されたインクカートリッジ150のICチップメモリ152(図2参照。)との間で無線通信によりデータ転送して後述する各種データを読み書きする機能を有すると共に、第1判定手段101、第2判定手段102およびインク放置期間算出手段103としての機能を有する。
【0038】
つまり、制御部10は、第1判定手段101として後述するように初回装着情報である初回装着年月日に基づいてインクカートリッジ150がリサイクルカートリッジであるか否かを判定し、第2判定手段102としてインクカートリッジ150がリサイクルカートリッジである場合に、後述するようにボトルに関するリサイクル可能条件と、インクに関するインク情報と、インクカートリッジ150の使用が可能な温度の範囲である使用可能温度範囲とに基づいてインクカートリッジ150が使用可能であるか否かを判定する。
【0039】
また、制御部10は、インク放置期間算出手段103として機能して、後述するように前回の印刷修了年月日から再印刷開始月日までの経過期間等をインク放置期間として算出し、ICチップメモリ152に記憶する。
【0040】
図3は、本発明の実施形態1に係る印刷装置1における各インクカートリッジ150に設けられたICチップメモリ152の記憶内容の一例を示す図である。
【0041】
図3に示すように、各インクカートリッジ150に設けられたICチップメモリ152には、例えば、記憶されるデータ項目として、製造年月日、使用期限、初回装着年月日、印刷修了年月日、再印刷開始月日、インク放置期間、環境温度(最小値)、環境温度(最大値)、リサイクル可能温度(下限値)、リサイクル可能温度(上限値)、カートリッジ使用回数等のデータが記憶される。
【0042】
製造年月日は、インクカートリッジ150のボトルに関するリサイクル可能条件として記憶される情報であり、“××××年××月××日”というようにそのインクカートリッジ150の製造年月日が、インクカートリッジ150の製造時に印刷装置1とは別のデータ書込み装置(図示せず。)等によって記憶手段であるICチップメモリ152に記憶される。尚、製造年月日は、インクカートリッジ150のインクが詰め替えられてリサイクルされても、更新されない。
【0043】
使用期限は、インクカートリッジ150のボトルに関するリサイクル可能条件として記憶される情報であり、“××ヶ月”というようにそのインクカートリッジ150のボトル又はケースであるインクボトル151の使用期限が、インクカートリッジ150の製造時に印刷装置1とは別のデータ書込み装置(図示せず。)等によって記憶手段であるICチップメモリ152に記憶される。使用期限は、製造年月日と同様に、インクカートリッジ150のインクが詰め替えられてリサイクルされても、更新されない。
【0044】
初回装着年月日は、初回装着情報として記憶される情報であり、“××××年××月××日”というように本体装置に対するそのインクカートリッジ150の初回の装着年月日が装着された印刷装置1の制御部10によって記憶手段であるICチップメモリ152記憶される。そのため、ICチップメモリ152に初回装着年月日が記憶されていれば、装着済みということになるので、リサイクルされたインクカートリッジであると判定でき、初回装着年月日が記憶されていなければ、新品のインクカートリッジであると判定できる。
【0045】
印刷修了年月日と再印刷開始月日は、“××××年××月××日”というように毎回、印刷動作終了時と印刷動作開始時にそれぞれ印刷装置1の制御部10によって記憶される。
【0046】
インク放置期間は、インクに関するインク情報として記憶される情報であり、“××ヶ月”というようにそのインクカートリッジ150内に収容されたインクの放置期間、例えば、最後にインクが使用された時点(前回の印刷終了時)から現時点(今回の印刷開始時)までの経過期間が、今回の印刷時に印刷装置1の制御部10によって算出して記憶される。
【0047】
放置可能期間は、インクに関するインク情報として記憶される情報であり、“××ヶ月”というようにそのインクカートリッジ150のインクが使用されず放置されても使用可能な期間で、インクカートリッジ150の製造時またはリサイクル時にデータ書込み装置(図示せず。)等によって記憶手段であるICチップメモリ152に書込まれ記憶される。
【0048】
環境温度(最小値)と環境温度(最大値)は、“××℃”というようにそのインクカートリッジ150使用時の環境温度の最小値と最大値が更新されていれば、それぞれ印刷装置1の制御部10によって更新して記憶される。なお、実施形態1では、環境温度は、印刷装置1の制御部10が環境温度センサ11によって測定した環境温度が用いられる。
【0049】
リサイクル可能温度(下限値)とリサイクル可能温度(上限値)は、それぞれ、インクカートリッジ150の使用が可能な温度範囲である使用可能温度範囲として記憶される情報であり、“××℃”というようにそのインクカートリッジ150に収容されたインクが使用可能な温度の下限値と上限値とを示しており、インクカートリッジ150の製造時またはリサイクル時にデータ書込み装置(図示せず。)等によって記憶手段であるICチップメモリ152に書込まれ記憶される。
【0050】
<本発明に係る実施形態1の印刷装置1の動作>
次に、以上のように構成された本発明に係る実施形態1の印刷装置1の動作について説明する。
【0051】
図4は、本発明に係る実施形態1の印刷装置1の動作を示すフローチャートである。尚、以下に説明する動作の前提として、印刷装置1にはインクカートリッジ150が装着されていないものとする。
【0052】
図4に示すように、実施形態1の印刷装置1では、インクカートリッジ150が装着されていないため、電源がオンされ動作を開始すると、制御部10は、常にインクカートリッジ150が装着されるか否かを検出する(ステップS101)。
【0053】
インクカートリッジ150が装着された場合(ステップS101;YES)、制御部10は、まず第1判定手段101として機能し、そのインクカートリッジ150に搭載されたICチップメモリ152に初回装着年月日が記憶されているか否かに基づいて、装着されたインクカートリッジ150がリサイクルカートリッジであるか否かを判定する(ステップS103)。
【0054】
インクカートリッジ150に搭載されたICチップメモリ152に初回装着年月日が記憶されている場合は、そのインクカートリッジ150は一度、印刷装置1に装着済みであるということなので、リサイクルカートリッジであると判定でき、初回装着年月日が記憶されていない場合は、一度も印刷装置1に装着されたことがない新品のインクカートリッジであると判定できる。
【0055】
<新品のインクカートリッジの場合>
ICチップメモリ152に初回装着年月日が記憶されていない場合(ステップS103;NO)、装着されたインクカートリッジ150が新品のインクカートリッジであるため、制御部10は、そのインクカートリッジ150を新品のインクカートリッジとしてそのICチップメモリ152に初回装着年月日と、現在の環境温度の値を環境温度(最小値)と環境温度(最大値)として記憶する(ステップS105)。
【0056】
そして印刷装置1の制御部10は、図示しないパソコン等から送信されてくる印刷ジョブの有無を判定し(ステップS107)、印刷ジョブが送信されてきた場合には(ステップS107;YES)、まず、印刷開始月日である再印刷開始月日をICチップメモリ152に更新すると共に(ステップS109)、インク放置期間を更新して(ステップS111)、その印刷ジョブに従って印刷を実行する(ステップS113)。
【0057】
ここで、インク放置期間は、例えば、放置可能期間が前回の印刷修了年月日を基準に“××ヶ月”と決められている場合には、ICチップメモリ152に記憶されている再印刷開始月日から前回の印刷修了年月日を減算した期間をインク放置期間とする。
【0058】
また、放置可能期間が、例えば、インクカートリッジ150にインクが収容された月日や印刷装置1にインクカートリッジ150が装着された月日を基準に“××ヶ月”と決められている場合には、インク放置期間は、印刷開始月日である再印刷開始月日からインクカートリッジ150にインクが収容された月日または印刷装置1に装着された月日を減算した期間をインク放置期間とする。そのため、後者をインク放置期間とする場合には、インクカートリッジのICチップメモリ152にインクカートリッジ150にインクが収容された月日や、印刷装置1に装着された月日も記憶しておく必要がある。
【0059】
そして、印刷装置1の制御部10は、ステップS113による印刷の実行中は、環境温度センサ11の検出値(出力値)を常時または定期的に監視し、ICチップメモリ152に記憶されている環境温度の最小値および最大値が更新された場合、それらの値をそれぞれ更新する(ステップS115)。
【0060】
また、印刷装置1の制御部10は、ステップS113の処理により印刷を実行している際、インクカートリッジ150がインク切れを生じるか否かも判定しており(ステップS117)、インク切れが発生せず(ステップS117;NO)、印刷ジョブの印刷が終了するまで(ステップS119;NO)、印刷を実行すると共に(ステップS113)、環境温度センサ11のセンサ値を常時監視して、環境温度の最小値および最大値の更新を実行する(ステップS115)。
【0061】
そして、インクカートリッジ150のインク切れが発生した場合(ステップS117;YES)、およびインク切れが発生しなくても印刷ジョブの印刷が終了した場合(ステップS119;YES)、印刷装置1の制御部10は、印刷修了年月日をインクカートリッジ150のICチップメモリ152に記憶または更新して(ステップS121)、印刷動作を終了する。
【0062】
以上の処理が、印刷装置1に装着されたインクカートリッジ150が新品のインクカートリッジの場合の処理である。
【0063】
<リサイクルカートリッジの場合>
これに対し、ステップS103の判定処理でICチップメモリ152に初回装着年月日が記憶されている場合(ステップS103;YES)、装着されたインクカートリッジ150はリサイクルカートリッジであるため、制御部10は、続いて第2判定手段102として機能する。
【0064】
つまり、制御部10は、インクカートリッジ150のICチップメモリ152に記憶された初回装着情報である初回装着年月日や、インクボトル151に関するリサイクル可能条件である製造年月日および使用期限と、インクに関するインク情報である放置可能期間と、インクカートリッジ150の使用可能な温度範囲を示すリサイクル可能温度の下限値および上限値等を読み出し、装着されたインクカートリッジ150が使用可能であるか否かを判定する(ステップS123〜ステップS127)。
【0065】
具体的には、制御部10は、まず、装着されたインクカートリッジ150のICチップメモリ152から読み出した印刷修了年月日や初回装着年月日、使用期限に基づいて、装着されたインクカートリッジ150がインクボトル151の使用期限内であるか否かを判定する(ステップS123)。
【0066】
つまり、制御部10は、インクカートリッジ150を使用した前回の印刷の終了年月日である印刷修了年月日と、初回装着年月日に使用期限とを加算した月日との大小を比較して、前回の印刷修了年月日がインクボトル151の使用期限内であるか否かを判定する。
【0067】
但し、年賀状印刷のみ行うユーザ等、インクカートリッジ150の使用頻度が少ない、あるいは特定の時期のみ印刷を行うユーザの場合、ICチップメモリ152に記憶された前回の印刷修了年月日の情報を使用するより、現在の年月日情報を使用した方がより正確に装着されたインクカートリッジ150がインクボトル151の使用期限内であるか否かを判定できるので、ユーザによっては前回の印刷修了年月日の情報の代わりに現在の年月日情報を使用する。
【0068】
ここで、装着されたインクカートリッジ150がインクボトル151の使用期限内でない、すなわちインクボトル151の使用期限を超過している場合(ステップS123;NO)、インクボトル151の経年劣化や変形等により印字品質が低下すると共に、印刷装置1が故障する可能性が高い。そのため、制御部10は、以上の動作を終了する。
【0069】
一方、装着されたインクカートリッジ150がインクボトル151の使用期限内である場合(ステップS123;YES)、制御部10は、さらに、インクカートリッジ150のICチップメモリ152に記憶されたインク放置期間とインクの放置可能期間とを比較して、インク放置期間が放置可能期間内であるか否かを判定する(ステップS125)。
【0070】
装着されたインクカートリッジ150のインク放置期間が放置可能期間内でない、すなわちそのインク放置期間が放置可能期間を経過している場合(ステップS125;NO)、インクカートリッジ150内のインクの劣化が進んでおり、印刷装置1のインクジェットヘッドでインク詰まりが発生したり、擦れなどの印刷品質の劣化、さらには印刷装置1が故障する可能性が高い。そのため、制御部10は、インクボトル151の使用期限を超過している場合(ステップS123;NO)と同様に、以上の動作を終了する。
【0071】
これにより、本実施形態の印刷装置1によれば、インクカートリッジ150のインクボトル151だけでなく、インクカートリッジ150に充填されたインクの劣化も考慮して、リサイクルされたインクカートリッジ150の使用可否を判定できる。
【0072】
これに対し、装着されたインクカートリッジ150のインク放置期間が放置可能期間内であった場合(ステップS125;YES)、制御部10は、さらに、インクカートリッジ150のICチップメモリ152に記憶された環境温度の最小値と最大値と、リサイクル可能温度の下限値と上限値とそれぞれ比較して、環境温度がリサイクル可能温度の下限値と上限値の間に収まっているか否かを判定する(ステップS127)。
【0073】
そして、環境温度がリサイクル可能温度の下限値と上限値の間に収まっていない場合(ステップS127;NO)、リサイクル可能温度の下限値または上限値を超える環境温度によってインクの軟化や硬化による劣化等が発生したり、インクカートリッジ150が膨潤や破損を起こし変形している可能性があるとして、印刷装置1が故障する可能性が高く、インクカートリッジ150を使用できないと判定する。
【0074】
そのため、制御部10は、ステップS127でNOの場合、インクボトル151の使用期限を超過している場合(ステップS123;NO)や、インク放置期間が放置可能期間を経過している場合(ステップS125;NO)と同様に、以上の動作を終了する。
【0075】
これにより、本実施形態の印刷装置1によれば、インクカートリッジ150のボトルおよびインクの経年変化による劣化だけでなく、環境温度にも基づいてもリサイクルされたインクカートリッジ150の使用可否を判定することが可能となる。
【0076】
これに対し、環境温度がリサイクル可能温度の下限値と上限値の間に収まっている場合(ステップS127;YES)、すなわち装着されたインクカートリッジ150がステップS123〜ステップS127までの3つの条件全てを満足している場合(ステップS123〜ステップS127の全てでYES)、制御部10は、上述したステップS107の処理移行の処理に進み、装着されたインクカートリッジ150を使用して印刷を実行することになる。
【0077】
従って、本発明に係る実施形態1の印刷装置1によれば、現在の年月日と、装着されたインクカートリッジ150のICチップメモリ152に記憶された初回装着情報である初回装着年月日とに基づいて、そのインクカートリッジ150がリサイクルカートリッジであるか否かを判定し、リサイクルカートリッジである場合には、インクボトル151が使用期限内であるか否かというボトルに関するリサイクル可能条件と、インク放置期間が放置可能期間内であるか否かというインク情報とに基づいてインクカートリッジ150が使用可能であるか否かを判定する。
【0078】
そのため、装着されたインクカートリッジ150がリサイクルカートリッジである場合には、インクの放置期間も判定基準となるので、リサイクルカートリッジを使用して印刷した場合でも、劣化したインクを使用することを未然に防止でき、インクの劣化による印字品質の低下や印刷装置1の故障等を確実に防止できる。
【0079】
また、本発明に係る実施形態1の印刷装置1では、インクカートリッジ150のICチップメモリ152にさらにインクが使用可能な温度範囲の下限値および上限値をリサイクル可能温度として記憶しておき、インクカートリッジ150の環境温度の最大値および最小値がリサイクル可能温度の下限値および上限値内にない場合、環境温度によってインクが劣化したり、インクカートリッジ150が膨潤や破損を起こし変形している可能性があるとして、インクカートリッジ150を使用できないと判定する。
【0080】
そのため、本発明に係る実施形態1の印刷装置1によれば、装着されたインクカートリッジ150がリサイクルカートリッジである場合には、インクの放置期間だけでなく、インクカートリッジ150の環境温度もリサイクルカートリッジの使用可能条件となるので、環境温度の点でリサイクルカートリッジの使用が厳しい場合には、リサイクルカートリッジの使用を中止することが可能となり、印刷装置1の故障等をさらに確実に防止できる。
【0081】
尚、上記の説明では、インクカートリッジ150がリサイクルカートリッジである場合、まず、装着されたインクカートリッジ150がインクボトル151の使用期限内であるか否かを判定し(ステップS123)、次にインクカートリッジ150のインクが放置可能期間内であるか否かを判定し(ステップS125)、最後に環境温度がリサイクル可能温度の下限値と上限値の間に納まっているか否かを判定(ステップS127)して説明したが、本発明では、これらの3つの判定はこの順に限らず、順番を入れ替えても勿論良い。
【0082】
また、本発明では、インクカートリッジ150がリサイクルカートリッジである場合、インクカートリッジ150がインクボトル151の使用期限内であるか否かの判定(ステップS123)とインクカートリッジ150のインクが放置可能期間内であるか否かを判定(ステップS125)との2つの判定処理で装着されたインクカートリッジ150が使用可能か否かを判定するようにしても良いし、さらにはインクカートリッジ150がインクボトル151の使用期限内であるか否かの判定(ステップS123)と環境温度がリサイクル可能温度の下限値と上限値の間に納まっているか否かの判定(ステップS127)との2つの判定処理で装着されたインクカートリッジ150が使用可能か否かを判定するようにしても良い
(実施形態2)
次に、本発明に係る実施形態2の印刷装置1について説明する。本発明に係る実施形態2の印刷装置1では、実施形態1の印刷装置1のように印刷実行時の環境温度だけでなく、印刷装置1に装着される前の製造時から配送時(物流時)、販売時等における環境温度もインクカートリッジ150のICチップメモリ152に記憶して、そのインクカートリッジが使用可能であるか否か判定するものである。
【0083】
そのため、本発明に係る実施形態2の印刷装置1は、上述した実施形態1の印刷装置1と同じ構成であり、動作も同じ処理があるので、図1および図2に示す実施形態1の印刷装置1の構成を参照して、実施形態2の印刷装置1特有の動作について説明する。
【0084】
図5は、本発明に係る実施形態2の印刷装置1の動作を示すフローチャートである。なお、図4に示す実施形態1の印刷装置1の動作と同じ処理には、同一のステップ番号を付して説明は省略する。
【0085】
図5に示すように、実施形態2の印刷装置1では、温度センサ付きハンディーターミナル等を使用して、まずは例えば工場出荷時の環境温度を測定して、測定した工場出荷時の温度をインクカートリッジ150のICチップメモリ152に環境温度の最小値および最大値として記憶する(ステップS201)。尚、工場出荷時に複数回、環境温度を測定した場合、環境温度の最小値および最大値が変更した場合は、ICチップメモリ152に更新する。
【0086】
次いで、同様に温度センサ付きハンディーターミナル等を使用して配送時の環境温度も測定し、測定した配送時の測定した環境温度の最小値または最大値がインクカートリッジ150のICチップメモリ152に環境温度の最小値または最大値を超える場合には更新する(ステップS201)。尚、配送時に複数回、環境温度を測定し、ICチップメモリ152に記憶された環境温度の最小値および最大値を超えた場合も更新する。
【0087】
さらに、同様に温度センサ付きハンディーターミナル等を使用して倉庫や販売店等における環境温度も測定し、測定した倉庫や販売店等における環境温度の最小値または最大値が、インクカートリッジ150のICチップメモリ152に環境温度の最小値または最大値を超える場合には更新する(ステップS201)。尚、倉庫や販売店等において複数回、環境温度を測定し、ICチップメモリ152に記憶された環境温度の最小値および最大値を超えた場合は更新する。
【0088】
その後は、上述した実施形態1の印刷装置1と同様にインクカートリッジ150が装着されたか否かを検出して(ステップS101)、図4と同じ動作を実行する。
【0089】
従って、本発明に係る実施形態2の印刷装置1によれば、上述した実施形態1の印刷装置1の場合と同様に、装着されたインクカートリッジ150がリサイクルカートリッジである場合には、インクボトル151の使用期限だけでなく、インクに関するインク情報である放置可能期間、さらにはインクカートリッジ150の使用可能温度範囲を示すリサイクル可能温度に基づいて使用可能であるか否かを判定するので、リサイクルカートリッジを使用して印刷した場合でも、印刷装置1の故障等を確実に防止できる。
【0090】
特に、本発明に係る実施形態2の印刷装置1では、温度センサ付きハンディーターミナル等を使用して、工場出荷時や配送時、倉庫や販売店等における環境温度を測定し、環境温度の最小値または最大値に変更があればICチップメモリ152で更新して、環境温度の最大値および最小値がリサイクル可能温度の下限値および上限値内にあるか否かを判定する。
【0091】
そのため、本発明に係る実施形態2の印刷装置1によれば、装着されたインクカートリッジ150がリサイクルカートリッジである場合には、印刷装置1に装着された後の環境温度だけでなく、工場出荷時から販売店までの環境温度も参照してリサイクルカートリッジのインクが使用可能か否かを判定するので、工場出荷時から使用時までの環境温度を参照してリサイクルカートリッジの使用の可否を判定することが可能となり、印刷装置の故障等をさらに確実に防止できる。
【符号の説明】
【0092】
1…印刷装置
10…制御部
11…環境温度センサ(環境温度測定手段)
101…第1判定手段
102…第2判定報知手段
103…リサイクル放置期間算出手段
110K,110C,110M,110Y…インクジェットヘッド
150K,150C,150M,150Y…インクカートリッジ
151C,151K,151M,151Y…インクボトル
152C,152K,152M,152Y…ICチップメモリ(記憶手段)
図1
図2
図3
図4
図5