特許第6612654号(P6612654)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6612654
(24)【登録日】2019年11月8日
(45)【発行日】2019年11月27日
(54)【発明の名称】廃水処理システムおよび廃水処理方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 3/12 20060101AFI20191118BHJP
   C02F 1/78 20060101ALI20191118BHJP
   C02F 1/44 20060101ALI20191118BHJP
   C02F 1/72 20060101ALI20191118BHJP
   C02F 3/34 20060101ALI20191118BHJP
   C12N 1/00 20060101ALI20191118BHJP
【FI】
   C02F3/12 V
   C02F3/12 D
   C02F1/78
   C02F1/44 F
   C02F3/12 S
   C02F3/12 H
   C02F1/72 Z
   C02F1/72 101
   C02F3/34 Z
   C12N1/00 S
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-41092(P2016-41092)
(22)【出願日】2016年3月3日
(65)【公開番号】特開2017-154107(P2017-154107A)
(43)【公開日】2017年9月7日
【審査請求日】2019年1月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183369
【氏名又は名称】住友精密工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】松田 学
(72)【発明者】
【氏名】勝倉 昇
【審査官】 富永 正史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−097472(JP,A)
【文献】 特開2003−103296(JP,A)
【文献】 特開2009−183825(JP,A)
【文献】 特開2004−298116(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0367333(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 3/00−3/34
C02F 1/44
C02F 1/70−1/78
C12N 1/00−7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1,4−ジオキサンを含む廃水に対して、1,4−ジオキサン分解菌を含む活性汚泥により生物処理を行う生物処理槽を備え、
1,4−ジオキサンを含む廃水に対して、硝化抑制剤が添加されるように構成されている、廃水処理システム。
【請求項2】
1,4−ジオキサンを含む廃水に対して、廃水処理の定常状態において窒素化合物およびリン化合物のうち少なくとも1つを含む栄養剤が添加されるように構成されている、請求項1に記載の廃水処理システム。
【請求項3】
前記生物処理槽に設けられ、活性汚泥と処理水とを分離する膜と、
硝化抑制剤が添加された1,4−ジオキサンを含む廃水に空気を送る曝気装置とをさらに備え、
前記生物処理槽は、15℃以上40℃以下になるように温度管理されている、請求項1または2に記載の廃水処理システム。
【請求項4】
前記生物処理槽は、1,4−ジオキサンを含む廃水の平均滞留時間が1日以上になるような容量を有するように構成されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の廃水処理システム。
【請求項5】
前記生物処理槽の下流に配置されたオゾン処理槽または促進酸化処理槽をさらに備える、請求項1〜4のいずれか1項に記載の廃水処理システム。
【請求項6】
1,4−ジオキサンを含む廃水に、硝化抑制剤を添加する工程と、
生物処理槽において、硝化抑制剤が添加された1,4−ジオキサンを含む廃水に対して、1,4−ジオキサン分解菌を含む活性汚泥により生物処理を行う工程とを備える、廃水処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、廃水処理システムおよび廃水処理方法に関し、特に、1,4−ジオキサンを含む廃水を処理する廃水処理システムおよび廃水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、1,4−ジオキサンを含む廃水を処理する廃水処理方法が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、1,4−ジオキサンを含む廃水に対して、1,4−ジオキサン分解菌が担持された微生物担体を接触させて1,4−ジオキサンを分解する生物的分解処理工程と、オゾン、紫外線および過酸化水素のうちいずれか2つ以上を用いて1,4−ジオキサンを分解するAOP分解処理工程とを備える廃水処理方法が開示されている。また、上記特許文献1の廃水処理方法は、硝化脱窒素法により、有機物の分解や窒素の除去を行うように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−097472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の廃水処理方法では、硝化脱窒素法により、有機物の分解や窒素の除去を行うように構成されているため、硝化により処理中の廃水の液性が酸性になると考えられる。このため、酸性になった廃水を中和処理するために大量の水酸化ナトリウムなどのアルカリを添加する必要があると考えられる。また、廃水が酸性の場合、1,4−ジオキサン分解菌が活性を失うため、1,4−ジオキサンを効率よく分解することができなくなるという不都合がある。このような場合、廃水の中和処理のために添加するアルカリの量が多くなるとともに、1,4−ジオキサンを効率よく分解することが困難であるという問題点がある。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、廃水の中和処理のために添加するアルカリの量を低減(削減)するとともに、1,4−ジオキサンを効率よく分解することが可能な廃水処理システムおよび廃水処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本願発明者が鋭意検討した結果、1,4−ジオキサンを含む廃水に対して、1,4−ジオキサン分解菌を含む活性汚泥により生物処理を行う生物処理槽を設け、1,4−ジオキサンを含む廃水に対して硝化抑制剤が添加されるように構成することによって、廃水のpHが小さくなる(酸性になる)のを抑制するとともに、1,4−ジオキサンを分解する生物処理の効率を上げることができるという知見を得た。つまり、硝化抑制剤を添加した場合でも、1,4−ジオキサン分解菌は、活性を失うことなく、1,4−ジオキサンを効率よく分解することが可能であるという知見を得た。これにより、廃水の中和処理のために添加するアルカリの量を低減(削減)するとともに、1,4−ジオキサンを効率よく分解することが可能である。すなわち、この発明の第1の局面による廃水処理システムは、1,4−ジオキサンを含む廃水に対して、1,4−ジオキサン分解菌を含む活性汚泥により生物処理を行う生物処理槽を備え、1,4−ジオキサンを含む廃水に対して、硝化抑制剤が添加されるように構成されている。
【0008】
この発明の第1の局面による廃水処理システムでは、上記のように、1,4−ジオキサンを含む廃水に対して、硝化抑制剤が添加されるように構成することによって、硝化菌が増殖するのを抑制することができるので、廃水のpHが小さくなるのを抑制することができる。また、硝化抑制剤により1,4−ジオキサン分解菌の活性が失われることが無いので、1,4−ジオキサンを効率よく分解することができる。これにより、廃水の中和処理のために添加するアルカリの量を低減(削減)するとともに、1,4−ジオキサンを効率よく分解することができる。
【0009】
上記第1の局面による廃水処理システムにおいて、好ましくは、1,4−ジオキサンを含む廃水に対して、廃水処理の定常状態において窒素化合物およびリン化合物のうち少なくとも1つを含む栄養剤が添加されるように構成されている。このように構成すれば、窒素化合物およびリン化合物のうち少なくとも1つを含む栄養剤の添加により、1,4−ジオキサン分解菌の増殖が助けられるので、増殖した1,4−ジオキサン分解菌により、1,4−ジオキサンをより効率よく分解することができる。
【0010】
上記第1の局面による廃水処理システムにおいて、好ましくは、生物処理槽に設けられ、活性汚泥と処理水とを分離する膜と、硝化抑制剤が添加された1,4−ジオキサンを含む廃水に空気を送る曝気装置とをさらに備え、生物処理槽は、15℃以上40℃以下になるように温度管理されている。このように、生物処理槽を曝気し、15℃以上40℃以下になるように温度管理することにより、1,4−ジオキサン分解菌の活性を上げることができるので、1,4−ジオキサンをより効率よく分解することができる。また、生物処理槽に設けられた膜により、1,4−ジオキサン分解菌を含む活性汚泥と処理水とが分離されるので、生物処理槽における1,4−ジオキサン分解菌を含む活性汚泥の濃度を高めることができる。これによっても、1,4−ジオキサンをより効率よく分解することができる。
【0011】
上記第1の局面による廃水処理システムにおいて、好ましくは、生物処理槽は、1,4−ジオキサンを含む廃水の平均滞留時間が1日以上になるような容量を有するように構成されている。このように、廃水の生物処理槽における平均滞留時間が1日以上になるようにすることにより、1,4−ジオキサンを生物処理槽で確実に分解することができる。
【0012】
上記第1の局面による廃水処理システムにおいて、好ましくは、生物処理槽の下流に配置されたオゾン処理槽または促進酸化処理槽をさらに備える。このように構成すれば、生物処理槽において1,4−ジオキサンが生物処理により低減された後、オゾン処理槽または促進酸化処理槽によりさらに1,4−ジオキサンを低減させることができる。
【0013】
本願発明者による上記第1の局面による廃水処理システムと同様の知見により、この発明の第2の局面による廃水処理方法は、1,4−ジオキサンを含む廃水に、硝化抑制剤を添加する工程と、生物処理槽において、硝化抑制剤が添加された1,4−ジオキサンを含む廃水に対して、1,4−ジオキサン分解菌を含む活性汚泥により生物処理を行う工程とを備える。
【0014】
この発明の第2の局面による廃水処理方法では、上記のように、1,4−ジオキサンを含む廃水に、硝化抑制剤を添加する工程を設けることによって、硝化菌が増殖するのを抑制することができるので、廃水のpHが小さくなるのを抑制することができる。また、硝化抑制剤により1,4−ジオキサン分解菌の活性が失われることが無いので、1,4−ジオキサンを効率よく分解することができる。これにより、廃水の中和処理のために添加するアルカリの量を低減(削減)するとともに、1,4−ジオキサンを効率よく分解することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、上記のように、廃水の中和処理のために添加するアルカリの量を低減(削減)するとともに、1,4−ジオキサンを効率よく分解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態による廃水処理システムを示した概略図である。
図2】実施例および比較例による廃水処理結果を示した表である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0018】
図1を参照して、本発明の一実施形態による廃水処理システム100の構成について説明する。
【0019】
本発明の一実施形態による廃水処理システム100は、廃水(原水)に含まれる1,4−ジオキサンを所定の濃度以下(たとえば、0.5mg/L以下)になるように処理するように構成されている。また、廃水処理システム100は、廃水中のBOD(生物化学的酸素要求量)およびCOD(化学的酸素要求量)を所定の値以下になるように処理するように構成されている。図1に示すように、廃水処理システム100は、貯留槽1と、第1生物処理槽2と、第2生物処理槽3と、AOP(促進酸化処理)槽4とを備えている。なお、第1生物処理槽2および第2生物処理槽3は、特許請求の範囲の「生物処理槽」の一例である。
【0020】
貯留槽1には、配管11と、ポンプ11aとが設けられている。第1生物処理槽2には、エアレータ21と、温度調整部22と、配管23と、ポンプ23aと、配管24と、弁24aとが設けられている。第2生物処理槽3には、エアレータ31および32と、膜33と、温度調整部34と、配管35と、ポンプ35aと、配管36と、弁36aおよび36bと、配管37と、弁37aと、配管38と、ポンプ38aとが設けられている。AOP槽4には、オゾン発生装置41が設けられている。なお、エアレータ21、31および32は、特許請求の範囲の「曝気装置」の一例である。
【0021】
また、廃水処理システム100の概略的な水処理プロセスとしては、廃水(原水)が貯留槽1に貯められる。貯められた廃水は、第1生物処理槽2に移送されて、硝化抑制剤が添加されて1,4−ジオキサン分解菌を含む活性汚泥により1段目の生物処理(曝気処理)が行われる。第1生物処理槽2により処理された一次処理水は、1,4−ジオキサン分解菌を含む活性汚泥とともに第2生物処理槽3に移送されて、硝化抑制剤が添加されて2段目の生物処理(MBR曝気処理)が行われる。その後、AOP槽4において、過酸化水素およびオゾンにより促進酸化処理が行われる。このようにして、廃水(原水)が処理される。
【0022】
貯留槽1は、1,4−ジオキサンを含む原水(廃水)が送り込まれて貯留されるように構成されている。また、貯留槽1に送り込まれる原水(廃水)は、1,4−ジオキサン以外のBOD源およびCOD源をさらに含む。また、貯留槽1は、後段の生物処理槽(第1生物処理槽2および第2生物処理槽3)に移送される廃水の流量および水質を均一化するために設けられている。また、貯留槽1では、廃水のpHが調整される(たとえば、pHが6以上9以下に調整される)ように構成されている。貯留槽1は、後段の第1生物処理槽2と配管11により接続されている。配管11の途中には、ポンプ11aが設けられ、廃水が貯留槽1から第1生物処理槽2に移送されるように構成されている。
【0023】
第1生物処理槽2は、廃水(原水)に対して活性汚泥を用いて生物処理を行い、廃水中のBODおよびCODを主に低減させるように構成されている。また、第1生物処理槽2では、活性汚泥中の1,4−ジオキサン分解菌が馴養されるように構成されている。エアレータ21は、第1生物処理槽2の1,4−ジオキサンを含む廃水にエアを供給するように構成されている。これにより、第1生物処理槽2の活性汚泥に酸素が供給されるとともに、廃水および活性汚泥が混合される。
【0024】
ここで、本実施形態では、第1生物処理槽2は、硝化抑制剤が添加されるように構成されている。たとえば、第1生物処理槽2の廃水にチオ尿素を主成分とする硝化抑制剤が添加されるように構成されている。また、第1生物処理槽2は、廃水処理の初期および定常状態において、窒素化合物およびリン化合物のうち少なくとも1つを含む栄養剤が添加されるように構成されている。具体的には、第1生物処理槽2の廃水には、廃水中のN(窒素)、P(リン)およびBOD5の量が、重量比において、N:P:BOD5=5:1:100となるように栄養剤が添加される。つまり、廃水のBOD5の値、含有する窒素の量、含有するリンの量に基づいて、栄養剤が調整されて添加される。なお、窒素化合物として、たとえば、塩化アンモニウムや硫酸アンモニウムなどのアンモニア態の窒素化合物が用いられる。また、リン化合物として、たとえば、リン酸水素ナトリウムなどが用いられる。
【0025】
温度調整部22は、第1生物処理槽2の水温を維持するように設けられている。たとえば、第1生物処理槽2は、15℃以上40℃以下になるように温度管理されている。具体的には、温度調整部22には、水蒸気が流されて、第1生物処理槽2の水温を上げるように構成されている。これにより、第1生物処理槽2内の水温が活性汚泥の活性化する温度に保たれるとともに、1,4−ジオキサン分解菌の馴養に適した温度に保たれる。
【0026】
配管23は、第1生物処理槽2と、後段の第2生物処理槽3とを接続している。また、配管23の途中には、ポンプ23aが設けられ、第1生物処理槽2により処理された一次処理水および1,4−ジオキサン分解菌が第1生物処理槽2から第2生物処理槽3に移送されるように構成されている。
【0027】
配管24は、第1生物処理槽2の活性汚泥を排出するために設けられている。具体的には、弁24aを開にすることにより、活性汚泥が第1生物処理槽2から排出される。排出された活性汚泥は、脱水などの処理が行われて処分される。
【0028】
第2生物処理槽3は、一次処理水に対して1,4−ジオキサン分解菌を含む活性汚泥を用いて生物処理を行い、廃水中の1,4−ジオキサンを主に低減させるように構成されている。つまり、第2生物処理槽3では、第1生物処理槽2において馴養された1,4−ジオキサン分解菌により1次処理水中の1,4−ジオキサンが主に分解される。また、生物処理槽2および生物処理槽3は、硝化抑制剤が添加された1,4−ジオキサンを含む廃水の平均滞留時間が1日以上になるような容量を有するように構成されている。つまり、貯留槽1から第1生物処理槽2に廃水が供給されてから、第2生物処理槽3から排出されるまで、廃水は平均で1日以上滞留するように構成されている。具体的には、(生物処理槽2および生物処理槽3の合計の容量)/(1日当たりの廃水の平均処理量(流入量))≧1日となるように、生物処理槽2および生物処理槽3の合計の容量が設定されている。
【0029】
エアレータ31および32は、第2生物処理槽3の1,4−ジオキサンを含む廃水(一次処理水)にエアを供給するように構成されている。これにより、第2生物処理槽3の活性汚泥に酸素が供給されるとともに、廃水および活性汚泥が混合される。膜33は、複数の中空糸膜により構成されている。また、膜33は、活性汚泥と処理水とを分離するように構成されている。つまり、膜33は、処理水を通過させて、中空状の内部を通すとともに、活性汚泥を通過させずに第2生物処理槽3に残留させるように構成されている。また、膜33は、エアレータ32の上方に設けられている。これにより、エアレータ32からのエアレーションにより、中空糸状の膜33の外側に活性汚泥が堆積されるのが抑制される。また、膜33は、定期的に逆洗が行われる。この際、たとえば、次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)を含む薬液により洗浄が行われる。
【0030】
ここで、本実施形態では、第2生物処理槽3は、硝化抑制剤が添加されるように構成されている。たとえば、第2生物処理槽3の廃水にチオ尿素を主成分とする硝化抑制剤が添加されるように構成されている。たとえば、硝化抑制剤は、第1生物処理槽2および第2生物処理槽3を合わせた廃水に1Lに対して1日に5mg添加される。また、第2生物処理槽3は、廃水処理の初期および定常状態において、窒素化合物およびリン化合物のうち少なくとも1つを含む栄養剤が添加されるように構成されている。具体的には、第2生物処理槽3の廃水には、廃水中のN(窒素)、P(リン)およびBOD5の量が、重量比において、N:P:BOD5=5:1:100となるように栄養剤が添加される。つまり、廃水のBOD5の値、含有する窒素の量、含有するリンの量に基づいて、栄養剤が調整されて添加される。
【0031】
温度調整部34は、第2生物処理槽3の水温を維持するように設けられている。たとえば、第2生物処理槽3は、15℃以上40℃以下になるように温度管理されている。具体的には、温度調整部34には、水蒸気が流されて、第2生物処理槽3の水温を上げるように構成されている。これにより、第2生物処理槽3内の水温が1,4−ジオキサン分解菌の活性化する温度に保たれる。
【0032】
配管35は、第2生物処理槽3と、後段のAOP槽4とを接続している。また、配管35の途中には、ポンプ35aが設けられ、第2生物処理槽3により処理された二次処理水が第2生物処理槽3からAOP槽4に移送されるように構成されている。つまり、第2次生物処理槽3により生物処理されるとともに、膜33によりろ過された二次処理水が第2生物処理槽3からAOP槽4に移送される。
【0033】
配管36は、活性汚泥を返送するために設けられている。具体的には、配管36は、第2生物処理槽3の下流側から第1生物処理槽2に活性汚泥を返送させるように構成されている。また、配管36は、第2生物処理槽3の下流側から上流側に活性汚泥を返送させるように構成されている。配管36の途中には、弁36aおよび36bが設けられている。弁36aを開にすることにより、活性汚泥が第1生物処理槽2に返送されるように構成されている。また、弁36bを開にすることにより、活性汚泥が第2生物処理槽3の上流側に返送されるように構成されている。
【0034】
配管37は、第2生物処理槽3の活性汚泥を排出するために設けられている。具体的には、弁37aを開にすることにより、活性汚泥が第2生物処理槽3から排出される。排出された活性汚泥は、脱水などの処理が行われて処分される。つまり、第1生物処理槽2から第2生物処理槽3に移送される活性汚泥と、第2生物処理槽3の生物処理により増減する活性汚泥と、第2生物処理槽3から第1生物処理槽2に返送される活性汚泥と、第2生物処理槽3から排泥される活性汚泥とを合わせた活性汚泥の量を調整することにより、第2生物処理槽3内の活性汚泥の量が所定の範囲内に調整される。
【0035】
配管37は、第2生物処理槽3から活性汚泥を抜き出すために設けられている。配管37は、第2生物処理槽3と、配管36および37とを、それぞれ、接続している。また、配管37の途中には、ポンプ38aが設けられている。ポンプ38aは、第2生物処理槽3の活性汚泥を送って、配管36を介して返送させる、または、配管37を介して排泥させるように構成されている。
【0036】
たとえば、第2生物処理槽3は、活性汚泥浮遊物質(MLSS)が5000mg/L以上13000mg/L以下になるように管理されている。つまり、第2生物処理槽3から第1生物処理槽2に返送される活性汚泥の量、および、第2生物処理槽3から排出される活性汚泥の量が調整されて、第2生物処理槽3内のMLSSが管理される。
【0037】
AOP(促進酸化処理)槽4は、第2生物処理槽3により生物処理された二次処理水に残存するBOD源、COD源および1,4−ジオキサンを酸化して、二次処理水中のBOD、CODおよび1,4−ジオキサンの濃度を低減させるように構成されている。具体的には、AOP槽4は、二次処理水に対して過酸化水素(H22)を流入させるとともに、オゾン(O3)を反応させて、ヒドロキシルラジカル(・OH)を生成して、二次処理水中のBOD源、COD源および1,4−ジオキサンを酸化させるように構成されている。
【0038】
(実施形態の効果)
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0039】
本実施形態では、上記のように、1,4−ジオキサンを含む廃水に対して、硝化抑制剤が添加されるように構成することによって、硝化菌が増殖するのを抑制することができるので、廃水のpHが小さくなるのを抑制することができる。また、硝化抑制剤により1,4−ジオキサン分解菌の活性が失われることが無いので、1,4−ジオキサンを効率よく分解することができる。これにより、廃水の中和処理のために添加するアルカリの量を低減(削減)するとともに、1,4−ジオキサンを効率よく分解することができる。
【0040】
また、本実施形態では、上記のように、1,4−ジオキサンを含む廃水に対して、廃水処理の定常状態において窒素化合物およびリン化合物のうち少なくとも1つを含む栄養剤が添加されるように構成する。これにより、窒素化合物およびリン化合物のうち少なくとも1つを含む栄養剤の添加により、1,4−ジオキサン分解菌の増殖が助けられるので、増殖した1,4−ジオキサン分解菌により、1,4−ジオキサンをより効率よく分解することができる。
【0041】
また、本実施形態では、上記のように、第2生物処理槽3に配置され、活性汚泥と処理水とを分離する膜33と、硝化抑制剤が添加された1,4−ジオキサンを含む廃水に空気を送るエアレータ21、31および32とを設け、第1生物処理槽2および第2生物処理槽3を、15℃以上40℃以下になるように温度管理する。このように、第1生物処理槽2および第2生物処理槽3を曝気し、15℃以上40℃以下になるように温度管理することにより、1,4−ジオキサン分解菌の活性を上げることができるので、1,4−ジオキサンをより効率よく分解することができる。また、第2生物処理槽3に設けられた膜により、1,4−ジオキサン分解菌を含む活性汚泥と処理水とが分離されるので、第2生物処理槽3における1,4−ジオキサン分解菌を含む活性汚泥の濃度を高めることができる。これによっても、1,4−ジオキサンをより効率よく分解することができる。
【0042】
また、本実施形態では、上記のように、生物処理槽2および3を、1,4−ジオキサンを含む廃水の平均滞留時間が1日以上になるような容量を有するように構成する。このように、廃水の第1生物処理槽2および第2生物処理槽3における平均滞留時間が1日以上になるようにすることにより、1,4−ジオキサンを第1生物処理槽2および第2生物処理槽3で確実に分解することができる。
【0043】
また、本実施形態では、上記のように、第2生物処理槽3の下流に配置されたAOP(促進酸化処理)槽4を設ける。これにより、第1生物処理槽2および第2生物処理槽3において1,4−ジオキサンが生物処理により低減された後、AOP槽4によりさらに1,4−ジオキサンを低減させることができる。
【0044】
また、本実施形態では、上記のように、第2生物処理槽3において1,4−ジオキサンを分解する生物処理の効率を上げることができる。その結果、後段のAOP槽4が大型になるのを抑制することができるので、廃水処理システム100全体が大型化するのを抑制することができる。また、第2生物処理槽3の前段に1,4−ジオキサン分解菌を含む活性汚泥により生物処理を行う第1生物処理槽2を設けることによって、1,4−ジオキサン分解菌を第1生物処理槽2において馴養することができるので、第2生物処理槽3における1,4−ジオキサンの分解をより効果的に行うことができる。これらにより、廃水処理システム100の小型化を図るとともに、1,4−ジオキサンを分解する処理時間を短縮することができる。
【0045】
また、本実施形態では、上記のように、第2生物処理槽3から第1生物処理槽2に1,4−ジオキサン分解菌を含む活性汚泥を返送する返送ライン36を設ける。これにより、第2生物処理槽3において1,4−ジオキサンを分解することにより活性が下がった1,4−ジオキサン分解菌を第1生物処理槽2に返送することができるので、第1生物処理槽2により1,4−ジオキサン分解菌を再度馴養して再利用することができる。
【0046】
次に、図2を参照して、図1に示した実施形態による廃水処理システム100の一部を用いて実際に廃水に対して水処理を行った実験結果(本発明の一実施例によるBOD、CODおよび1,4−ジオキサンの減少結果)について説明する。
【0047】
実施例1、比較例1、2および3では、図1の廃水処理システム100のうち、第2生物処理槽3を用いて実験を行った。つまり、廃水(原水)を第2生物処理槽3に供給して生物処理を行った。
【0048】
実施例1では、原水は、pHが6〜7、1,4−ジオキサン濃度が60mg/L、CODMn濃度が890mg/L、BOD5濃度が1000mg/Lであった。また、実施例1では、硝化抑制剤を添加し、水理学的滞留時間(HRT)を1.5日として実験を行った。また、硝化抑制剤として、N2セイバー(環境工研株式会社製)を用い、廃水1Lに対して1日5mg添加した。なお、硝化抑制剤は、pHが6.5以下の場合に使用した。
【0049】
実施例1では、生物処理後の処理水は、pHが7.2、1,4−ジオキサン濃度が0.12mg/L、CODMn濃度が75mg/L、BOD5濃度が1mg/L以下となった。つまり、実施例1では、1,4−ジオキサンは、99.8%処理された。また、CODMnは、91.6%処理された。また、BOD5は、99.9%以上処理された。
【0050】
比較例1では、原水は、pHが6.04、1,4−ジオキサン濃度が120mg/L、CODMn濃度が1780mg/L、BOD5濃度が2000mg/Lであった。また、比較例1では、硝化抑制剤を添加せずに、水理学的滞留時間(HRT)を3日として実験を行った。
【0051】
比較例1では、生物処理後の処理水は、pHが5.5、1,4−ジオキサン濃度が6mg/L、CODMn濃度が80mg/L、BOD5濃度が1mg/L以下となった。つまり、比較例1では、1,4−ジオキサンは、95%処理された。また、CODMnは、95.5%処理された。また、BOD5は、99.9%以上処理された。また、比較例1では、生物処理時に廃水が常に酸性となっていた。
【0052】
比較例2および3では、原水は、pHが4.8、1,4−ジオキサン濃度が500mg/L、CODMn濃度が3720mg/L、BOD5濃度が4100mg/Lであった。また、比較例2および3では、注入初期にpH変動が発生するため、pH調整を行った。また、比較例2では、その後、pH調整を行わずに実験を行った。また、比較例3では、その後もpH調整を行って実験を行った。また、比較例2および3は、水理学的滞留時間(HRT)を3日として実験を行った。なお、pH調整は、水酸化ナトリウム(アルカリ)を添加して行った。
【0053】
比較例2では、生物処理後の処理水は、pHが7.37、1,4−ジオキサン濃度が126mg/L、CODMn濃度が546mg/L、BOD5濃度が610mg/Lとなった。つまり、比較例2では、1,4−ジオキサンは、74.8%処理された。また、CODMnは、85.3%処理された。また、BOD5は、85.1%処理された。
【0054】
比較例3では、生物処理後の処理水は、pHが7.88、1,4−ジオキサン濃度が9mg/L、CODMn濃度が166mg/L、BOD5濃度が120mg/Lとなった。つまり、比較例2では、1,4−ジオキサンは、98.2%処理された。また、CODMnは、95.5%処理された。また、BOD5は、97.1%処理された。
【0055】
上記のように、実施例1では、1,4−ジオキサンの濃度が0.5mg/L未満に処理することが可能であることが分かった。つまり、1,4−ジオキサンを含む廃水に対して、硝化抑制剤を添加して、1,4−ジオキサン分解菌を含む活性汚泥により生物処理を行うことにより、1,4−ジオキサンを効率よく分解することが可能であることが分かった。また、実施例1では、比較例1〜3に比べて、汚泥の沈降性が向上していた。これにより、膜を用いずに汚泥を分離する場合でも、汚泥が沈降する時間が短縮されるので、汚泥を効率よく分離することが可能である。
【0056】
なお、今回開示された実施形態および実施例は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態および実施例の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0057】
たとえば、上記実施形態では、廃水処理システムに2つの生物処理槽を設ける構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、廃水処理システムに1つまたは3つ以上の生物処理槽を設けてもよい。
【0058】
また、上記実施形態では、生物処理槽に硝化抑制剤および栄養剤を添加する構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、貯留槽の廃水や、配管により移送中の廃水に硝化抑制剤および栄養剤を添加してもよい。
【0059】
また、上記実施形態では、生物処理槽の下流にAOP槽(促進酸化処理槽)を設ける構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、生物処理槽の下流にAOP槽の代わりにオゾン処理槽を設けてもよい。また、生物処理槽の下流にAOP槽を設けなくてもよい。
【0060】
また、上記実施形態では、第2生物処理槽に、活性汚泥と処理水とを分離する膜を設ける構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、生物処理槽に膜を設けなくてもよい。また、第2生物処理槽に加えて、第1生物処理槽に膜を設けてもよい。
【0061】
また、上記実施形態では、第1生物処理槽および第2生物処理槽の両方に、硝化抑制剤および栄養剤を添加する構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、第1生物処理槽または第2生物処理槽の一方に、硝化抑制剤を添加してもよい。また、第1生物処理槽または第2生物処理槽の一方に、栄養剤を添加してもよい。
【0062】
また、上記実施形態では、AOP槽(促進酸化処理槽)において、オゾンおよび過酸化水素を用いて促進酸化させる構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、たとえば、促進酸化処理槽において、オゾンおよび紫外線を用いて促進酸化させてもよいし、紫外線および過酸化水素を用いて促進酸化させてもよい。また、促進酸化処理槽において、オゾン、過酸化水素および紫外線を用いて促進酸化させてもよい。
【0063】
また、上記実施形態では、廃水処理システムに1つのAOP槽(促進酸化処理槽)を設ける構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、廃水処理システムに2つ以上の促進酸化処理槽またはオゾン処理槽を設けてもよい。
【0064】
また、上記実施形態では、生物処理槽において曝気を行う構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、曝気を行わずに、嫌気または無酸素により生物処理を行う生物処理槽を設けてもよい。
【符号の説明】
【0065】
2 第1生物処理槽(生物処理槽)
3 第2生物処理槽(生物処理槽)
4 AOP槽(促進酸化処理槽)
21、31、32 エアレータ(曝気装置)
33 膜
100 廃水処理システム
図1
図2