(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
反応ガス又は冷却媒体を電極面に沿う方向に流通させるための流体流路が形成された金属セパレータと、前記金属セパレータに一体に設けられた弾性材料からなるシール部材とを備えた燃料電池用セパレータであって、
前記シール部材は、前記金属セパレータの表面に設けられたベース部と、前記ベース部からセパレータ厚さ方向に突出したシール凸部とを有し、
複数の燃料電池用セパレータが積層された状態で、前記シール凸部は積層方向に一直線上に並んで配置され、
前記シール凸部の断面形状は、複数の燃料電池用セパレータが積層される前の状態で、平坦な頂部と、前記金属セパレータの厚さ方向に沿って互いに平行な両側部と、を有する矩形形状であり、
前記シール凸部には、前記頂部の両側に隣接して、前記頂部と前記両側部とを繋ぐ湾曲形状の角部が設けられ、
前記角部の曲率半径は、0.1mm以上である、
ことを特徴とする燃料電池用セパレータ。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る燃料電池用セパレータ及び発電セルについて好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照しながら説明する。
【0016】
図1及び
図2に示す本発明の実施形態に係る発電セル12は、第1樹脂枠付きMEA16a、第2樹脂枠付きMEA16b、第1セパレータ部14A(燃料電池用セパレータ)、第2セパレータ部14B(燃料電池用セパレータ)及び第3セパレータ部14C(燃料電池用セパレータ)を備え、樹脂枠付きMEAとセパレータ部とが交互に厚さ方向に積層されている。複数の発電セル12が、例えば、矢印A方向(水平方向)又は矢印C方向(重力方向)に積層されるとともに、積層方向の締付荷重(圧縮荷重)が付与されて、燃料電池スタック10が構成される。燃料電池スタック10は、例えば、車載用燃料電池スタックとして燃料電池電気自動車(図示せず)に搭載される。
【0017】
図2に示すように、第1樹脂枠付きMEA16a及び第2樹脂枠付きMEA16bは、それぞれ電解質膜・電極構造体51を備える。電解質膜・電極構造体51は、電解質膜52と、電解質膜を挟持するアノード電極54及びカソード電極56とを有する。電解質膜52は、例えば、固体高分子電解質膜(陽イオン交換膜)である。固体高分子電解質膜は、例えば、水分を含んだパーフルオロスルホン酸の薄膜である。電解質膜52は、アノード電極54及びカソード電極56に挟持される。電解質膜52は、フッ素系電解質の他、HC(炭化水素)系電解質を使用することができる。
【0018】
第1樹脂枠付きMEA16a及び第2樹脂枠付きMEA16bは、カソード電極56が、電解質膜52及びアノード電極54よりも小さな平面寸法を有する段差MEAである。なお、アノード電極54、カソード電極56及び電解質膜52は、同一の平面寸法に設定してもよい。また、アノード電極54は、カソード電極56及び電解質膜52の平面寸法よりも小さな平面寸法を有していてもよい。
【0019】
アノード電極54及びカソード電極56は、カーボンペーパ等からなるガス拡散層(図示せず)と、白金合金が表面に担持された多孔質カーボン粒子がガス拡散層の表面に一様に塗布されて形成される電極触媒層(図示せず)とを有する。電極触媒層は、電解質膜の両面に形成される。
【0020】
第1樹脂枠付きMEA16aは、一方の電解質膜52の外周を周回するとともに、アノード電極54及びカソード電極56に接合される第1樹脂枠部材58を備える。第2樹脂枠付きMEA16bは、他方の電解質膜52の外周を周回するとともに、アノード電極54及びカソード電極56に接合される第2樹脂枠部材60を備える。
【0021】
第1樹脂枠部材58及び第2樹脂枠部材60は、例えば、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PPA(ポリフタルアミド)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PES(ポリエーテルサルフォン)、LCP(リキッドクリスタルポリマー)、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、シリコーンゴム、フッ素ゴム又はEPDM(エチレンプロピレンゴム)等で構成される。
【0022】
図1に示すように、第1樹脂枠部材58のカソード電極56側の面(矢印A1方向側の面)には、第1酸化剤ガス流路26の流入側に隣接して入口バッファ部62aが設けられるとともに、第1酸化剤ガス流路26の流出側に隣接して出口バッファ部62bが設けられる。第1樹脂枠部材58のアノード電極54側の面(矢印A2方向側の面)には、第1燃料ガス流路34の流入側に隣接して入口バッファ部64aが設けられるとともに、第1燃料ガス流路34の流出側に隣接して出口バッファ部64bが設けられる。
【0023】
第2樹脂枠部材60のカソード電極56側の面(矢印A1方向側の面)には、第2酸化剤ガス流路38の流入側に隣接して入口バッファ部66aが設けられるとともに、第2酸化剤ガス流路38の流出側に隣接して出口バッファ部66bが設けられる。第2樹脂枠部材60のアノード電極54側の面(矢印A2方向側の面)には、第2燃料ガス流路42の流入側に隣接して入口バッファ部68aが設けられるとともに、第2燃料ガス流路42の流出側に隣接して出口バッファ部68bが設けられる。
【0024】
発電セル12の長辺方向の一端縁部(矢印B1方向側の端縁部)には、矢印A方向(積層方向)に互いに連通して、酸化剤ガス入口連通孔22a及び燃料ガス出口連通孔24bが設けられる。具体的には、酸化剤ガス入口連通孔22a及び燃料ガス出口連通孔24bは、第1金属セパレータ15a、第2金属セパレータ15b及び第3金属セパレータ15cの長辺方向の一端縁部に設けられる。酸化剤ガス入口連通孔22aは、酸化剤ガス、例えば、酸素含有ガスを供給する一方、燃料ガス出口連通孔24bは、燃料ガス、例えば、水素含有ガスを排出する。
【0025】
発電セル12の長辺方向の他端縁部(矢印B2方向側の端縁部)には、矢印A方向に互いに連通して、燃料ガスを供給するための燃料ガス入口連通孔24a、及び酸化剤ガスを排出するための酸化剤ガス出口連通孔22bが設けられる。
【0026】
発電セル12の短辺方向(矢印C方向)の両端縁部には、酸化剤ガス入口連通孔22a側に、矢印A方向に互いに連通して冷却媒体を供給するための一対の冷却媒体入口連通孔25aが設けられる。発電セル12の短辺方向の両端縁部には、燃料ガス入口連通孔24a側に、冷却媒体を排出するための一対の冷却媒体出口連通孔25bが設けられる。
【0027】
第1セパレータ部14Aは、第1金属セパレータ15aと、第1金属セパレータ15aの外周部を周回する弾性材料からなる第1シール部材17aとを有する。第2セパレータ部14Bは、第2金属セパレータ15bと、第2金属セパレータ15bの外周部を周回する弾性材料からなる第2シール部材17bとを有する。第3セパレータ部14Cは、第3金属セパレータ15cと、第3金属セパレータ15cの外周部を周回する弾性材料からなる第3シール部材17cとを有する。
【0028】
第1金属セパレータ15a、第2金属セパレータ15b及び第3金属セパレータ15cは、例えば、鋼板、ステンレス鋼板、アルミニウム板、めっき処理鋼板等により構成される。第1金属セパレータ15a、第2金属セパレータ15b及び第3金属セパレータ15cは、平面が矩形状を有するとともに、金属製薄板を波形状にプレス加工することにより、断面凹凸形状に成形される。
【0029】
図4に示すように、第1金属セパレータ15aの第1樹脂枠付きMEA16aに向かう面15a1(矢印A2方向側の面)には、酸化剤ガス入口連通孔22aと酸化剤ガス出口連通孔22bとに連通する第1酸化剤ガス流路26が形成される。第1酸化剤ガス流路26は、矢印B方向に延在する複数の波状流路溝部(直線状流路溝部でもよい)26aを有する。第1酸化剤ガス流路26の入口側と酸化剤ガス入口連通孔22aとの間には、複数本の入口連結溝30aが形成される。第1酸化剤ガス流路26の出口側と酸化剤ガス出口連通孔22bとの間には、複数本の出口連結溝30bが形成される。
【0030】
図1に示すように、第1金属セパレータ15aの面15a2(矢印A1方向側の面)には、一対の冷却媒体入口連通孔25aと一対の冷却媒体出口連通孔25bとに連通する冷却媒体流路32の一部が形成される。
【0031】
第2金属セパレータ15bの第1樹脂枠付きMEA16aに向かう面15b1(矢印A1方向側の面)には、燃料ガス入口連通孔24aと燃料ガス出口連通孔24bとに連通する第1燃料ガス流路34が形成される。第1燃料ガス流路34は、矢印B方向に延在する複数の波状流路溝部(直線状流路溝部でもよい)34aを有する。
【0032】
燃料ガス入口連通孔24aの近傍には、燃料ガス入口連通孔24aと第1燃料ガス流路34とを連通する複数の供給流路溝部36aが形成される。複数の供給流路溝部36aは、蓋体37aにより覆われる。燃料ガス出口連通孔24bの近傍には、燃料ガス出口連通孔24bと第1燃料ガス流路34とを連通する複数の排出流路溝部36bが形成される。複数の排出流路溝部36bは、蓋体37bにより覆われる。
【0033】
図5に示すように、第2金属セパレータ15bの第2樹脂枠付きMEA16bに向かう面15b2(
図1で矢印A2方向側の面)には、酸化剤ガス入口連通孔22aと酸化剤ガス出口連通孔22bとに連通する第2酸化剤ガス流路38が形成される。第2酸化剤ガス流路38は、矢印B方向に延在する複数の波状流路溝部(直線状流路溝部でもよい)38aを有する。
【0034】
第2酸化剤ガス流路38の入口側と酸化剤ガス入口連通孔22aとの間には、複数本の入口連結溝40aが形成される。第2酸化剤ガス流路38の出口側と酸化剤ガス出口連通孔22bとの間には、複数本の出口連結溝40bが形成される。
【0035】
図1に示すように、第3金属セパレータ15cの第2樹脂枠付きMEA16bに向かう面15c1(矢印A1方向側の面)には、燃料ガス入口連通孔24aと燃料ガス出口連通孔24bとに連通する第2燃料ガス流路42が形成される。第2燃料ガス流路42は、矢印B方向に延在する複数の波状流路溝部(直線状流路溝部でもよい)42aを有する。
【0036】
燃料ガス入口連通孔24aの近傍には、燃料ガス入口連通孔24aと第2燃料ガス流路42とを連通する複数の供給流路溝部44aが形成される。複数の供給流路溝部44aは、蓋体45aにより覆われる。燃料ガス出口連通孔24bの近傍には、燃料ガス出口連通孔24bと第2燃料ガス流路42とを連通する複数の排出流路溝部44bが形成される。複数の排出流路溝部44bは、蓋体45bにより覆われる。
【0037】
複数の発電セル12が積層された状態で、互いに隣接する一方の発電セル12の第3金属セパレータ15cの面15c2(矢印A2方向側の面)と、他方の発電セル12の第1金属セパレータ15aの面15a2(矢印A1方向側の面)との間に、冷却媒体を流通させる冷却媒体流路32が形成される。
【0038】
図3に示すように、第1シール部材17aは、第1金属セパレータ15aの外周部の両面に設けられたベース部43a、43bと、ベース部43a、43bからセパレータ厚さ方向(矢印A方向)にそれぞれ突出した第1シール凸部46a、46bとを有する。第1シール部材17aに設けられた一方のベース部43a及び他方のベース部43bは、それぞれ均一な厚さを有し、第1金属セパレータ15aの面方向に沿って延在する。
【0039】
一方の第1シール凸部46aは、他方の第1シール凸部46bよりも外方(第1金属セパレータ15aの外端側)に配置されている。以下、一方の第1シール凸部46aを「第1外側シール凸部46a」と呼び、他方の第1シール凸部46bを「第1内側シール凸部46b」と呼ぶ。第1外側シール凸部46aと第1内側シール凸部46bとは、互いに反対方向に突出している。第1外側シール凸部46aの幅と第1内側シール凸部46bの幅は、等しく設定するのが好ましい(
図3では、第1外側シール凸部46aの幅が、第1内側シール凸部46bの幅よりも大きい)。
【0040】
第2シール部材17bは、第2金属セパレータ15bの外周部の両面に設けられたベース部47a、47bと、ベース部47a、47bからセパレータ厚さ方向(矢印A方向)にそれぞれ突出した第2シール凸部48a、48bとを有する。第2シール部材17bに設けられた一方のベース部47aと、他方のベース部47bは、それぞれ均一な厚さを有し、第2金属セパレータ15bの面方向に沿って延在する。
【0041】
第2シール部材17bに設けられた一方の第2シール凸部48aは、他方の第2シール凸部48bよりも外方(第2金属セパレータ15bの外端側)に配置されている。以下、一方の第2シール凸部48aを「第2外側シール凸部48a」と呼び、他方の第2シール凸部48bを「第2内側シール凸部48b」と呼ぶ。第2外側シール凸部48aと第2内側シール凸部48bとは、互いに反対方向に突出している。第2外側シール凸部48aの幅と第2内側シール凸部48bの幅は、等しく設定するのが好ましい(
図3では、第2外側シール凸部48aの幅が、第2内側シール凸部48bの幅よりも大きい)。
【0042】
第3シール部材17cは、第3金属セパレータ15cの外周部の両面に設けられたベース部49a、49bと、ベース部49a、49bからセパレータ厚さ方向(矢印A方向)にそれぞれ突出した第3シール凸部50a、50bとを有する。第3シール部材17cに設けられた一方のベース部49aと、他方のベース部49bは、それぞれ均一な厚さを有し、第3金属セパレータ15cの面方向に沿って延在する。
【0043】
第3シール部材17cに設けられた一方の第3シール凸部50aは、他方の第3シール凸部50bよりも外方(第3金属セパレータ15cの外端側)に配置されている。以下、一方のシール凸部50aを「第3外側シール凸部50a」と呼び、他方の第3シール凸部50bを「第3内側シール凸部50b」と呼ぶ。第3外側シール凸部50aと第3内側シール凸部50bとは、互いに反対方向に突出している。第3外側シール凸部50aの幅と第3内側シール凸部50bの幅は、等しく設定するのが好ましい(
図3では、第3外側シール凸部50aの幅が、第3内側シール凸部50bの幅よりも大きい)。
【0044】
図4に示すように、第1外側シール凸部46aは、燃料ガス入口連通孔24a、燃料ガス出口連通孔24b、冷却媒体入口連通孔25a及び冷却媒体出口連通孔25b(以下、流体連通孔ともいう)を囲繞する。第1外側シール凸部46aは、酸化剤ガス入口連通孔22a及び酸化剤ガス出口連通孔22b(以下、流体連通孔ともいう)と第1酸化剤ガス流路26とを周回し、これらを互いに連通させる。第1外側シール凸部46aは、第2シール部材17bの一方のベース部47aに当接(密着)する(
図3)。
【0045】
図1に示すように、第1内側シール凸部46bは、冷却媒体入口連通孔25a、冷却媒体出口連通孔25b及び冷却媒体流路32を周回する。複数の発電セル12が積層された状態で、隣接する一方の発電セル12の第1内側シール凸部46bは、隣接する他方の発電セル12の第3セパレータ部14Cの第3シール部材17c(ベース部49b)に当接(密着)する。
【0046】
また、第1金属セパレータ15aの面15a2(矢印A1方向側の面)には、酸化剤ガス入口連通孔22a、酸化剤ガス出口連通孔22b、燃料ガス入口連通孔24a及び燃料ガス出口連通孔24bを囲繞する連通孔シール凸部46cが設けられる。連通孔シール凸部46cは、冷却面において、第1シール部材17aのベース部43aから厚さ方向に一体に膨出形成される。
【0047】
図5に示すように、第2シール部材17bに設けられた第2外側シール凸部48aは、燃料ガス入口連通孔24a、燃料ガス出口連通孔24b、冷却媒体入口連通孔25a及び冷却媒体出口連通孔25bを囲繞する。第2外側シール凸部48aは、酸化剤ガス入口連通孔22a及び酸化剤ガス出口連通孔22bと第2酸化剤ガス流路38とを周回し、これらを互いに連通させる。第2外側シール凸部48aは、第3シール部材17cの一方のベース部49aに当接(密着)する(
図3)。
【0048】
図1に示すように、第2シール部材17bに設けられた第2内側シール凸部48bは、酸化剤ガス入口連通孔22a、酸化剤ガス出口連通孔22b、燃料ガス入口連通孔24a、燃料ガス出口連通孔24b、冷却媒体入口連通孔25a、冷却媒体出口連通孔25b及び第1燃料ガス流路34を周回する。第2内側シール凸部48bは、第1樹脂枠部材58の外周部に当接(密着)する(
図3)。
【0049】
詳細は図示しないが、第3シール部材17cに設けられた第3外側シール凸部50aは、酸化剤ガス入口連通孔22a、酸化剤ガス出口連通孔22b、燃料ガス入口連通孔24a及び燃料ガス出口連通孔24bを囲繞する。第3外側シール凸部50aは、冷却媒体入口連通孔25a及び冷却媒体出口連通孔25bと冷却媒体流路32とを周回し、これらを互いに連通させる。複数の発電セル12が積層された状態で、隣接する一方の発電セル12の第3外側シール凸部50aは、隣接する他方の発電セル12の第1シール部材17aの一方のベース部43aに当接(密着)する。
【0050】
図1に示すように、第3シール部材17cに設けられた第3内側シール凸部50bは、酸化剤ガス入口連通孔22a、酸化剤ガス出口連通孔22b、燃料ガス入口連通孔24a、燃料ガス出口連通孔24b、冷却媒体入口連通孔25a、冷却媒体出口連通孔25b及び第2燃料ガス流路42を周回する。第3内側シール凸部50bは、第2樹脂枠部材60の外周部に当接(密着)する。
【0051】
第1シール部材17a、第2シール部材17b及び第3シール部材17cとしては、例えば、EPDM、NBR、フッ素ゴム、シリコーンゴム、フロロシリコーンゴム、ブチルゴム、天然ゴム、スチレンゴム、クロロプレーン又はアクリルゴム等のシール材、クッション材、あるいはパッキン材等の弾性を有するシール材が用いられる。第1シール部材17a、第2シール部材17b及び第3シール部材17cの硬度は、例えば、JISK6301で、20〜70である。
【0052】
図3に示すように、セパレータ部14A〜14Cが積層された状態で、外側シール凸部46a、48a、50aは、積層方向に一直線上に並んで配置される(当該シール凸部の幅寸法が同じでシール凸部同士が幅寸法の範囲内で積層方向に互いに重なる)とともに、内側シール凸部46b、48b、50bは、積層方向に一直線上に並んで配置される(当該シール凸部の幅寸法が同じでシール凸部同士が幅寸法の範囲内で積層方向に互いに重なる)。
【0053】
以下、外側シール凸部46a、48a、50a及び内側シール凸部46b、48b、50bに関し、便宜的にこれらを「シール凸部53」と総称する場合がある。同様に、ベース部43a、43b、47a、47b、49a、49bに関し、便宜的にこれらを「ベース部55」と総称する場合がある。金属セパレータ15a、15b、15cに関し、便宜的にこれらを「金属セパレータ15」と総称する場合がある。
【0054】
シール凸部53の断面形状は、複数のセパレータ部14A〜14Cが積層されて積層方向に締付荷重(圧縮荷重)が付与された状態で、シール幅方向の両側部53b、53cがシール幅方向外方に膨出する形状である。すなわち、締付荷重によって積層方向に圧縮された状態でのシール凸部53の断面形状は、突出方向中間部の幅が、頂部53a及び根元部の幅よりも大きい。
【0055】
図6に示すように、シール凸部53の断面形状は、複数のセパレータ部14A、14B、14Cが積層される前(積層方向の圧縮荷重が付与される前)の状態(以下、「非変形状態」という。)で、積層方向に垂直な方向に平坦な頂部53aを有する矩形形状である。頂部53aは、セパレータ厚さ方向(矢印A方向)に対して垂直な方向(セパレータ面方向)に沿って平坦である。シール凸部53の非変形状態で、シール凸部53のシール幅方向の両側部53b、53cは、セパレータ厚さ方向に沿って互いに平行(セパレータ面方向に対して垂直)であり、成形時の抜き勾配がない形状である。
【0056】
シール凸部53の非変形状態で、シール凸部53のベース部55からの突出高さHと、シール凸部53の幅Wとは、H≦Wの関係を有することが好ましい。本実施形態では、シール凸部53の幅Wは、シール凸部53の突出高さHよりも大きく、従って、シール凸部53は、金属セパレータ15に平行な長軸を有する長方形状に形成されている。シール凸部53の突出高さHと幅Wとは、H<Wの関係を有してもよい。なおシール凸部53の幅Wは、シール凸部53の互いに平行な両側部53b、53c(立ち上がり部53f、53gを含まない)間の距離である。
【0057】
シール凸部53には、頂部53aに隣接する湾曲形状の角部53d、53eが設けられる。頂部53aのシール幅方向一方側に角部53dが設けられ、頂部53aのシール幅方向他方側に角部53eが設けられる。角部53dは、頂部53aと一方の側部53bとを繋ぐ湾曲面である。角部53eは、頂部53aと他方の側部53cとを繋ぐ湾曲面である。本実施形態において、角部53d、53eの曲率半径は、0.1mm以上、0.3mm以下である。角部53dと角部53eとは、同一の曲率半径を有するのがよい。
【0058】
シール凸部53のベース部55からの立ち上がり部53f、53gは、湾曲形状である。本実施形態において、立ち上がり部53f、53gの曲率半径は、0.1mm以上、0.3mm以下である。立ち上がり部53fと立ち上がり部53gとは、同一の曲率半径を有するのがよい。外側シール凸部46a、48a、50aは、非変形状態の幅が同じであり、積層方向に垂直な面内での位置が同じである。内側シール凸部46b、48b、50bは、非変形状態の幅が同じであり、積層方向に垂直な面内での位置が同じである。
【0059】
このように構成される発電セル12は、以下のように動作する。
【0060】
まず、
図1に示すように、酸化剤ガス入口連通孔22aに酸素含有ガス等の酸化剤ガスが供給されるとともに、燃料ガス入口連通孔24aに水素含有ガス等の燃料ガスが供給される。さらに、一対の冷却媒体入口連通孔25aに純水やエチレングリコール、オイル等の冷却媒体が供給される。
【0061】
このため、酸化剤ガスは、一部が酸化剤ガス入口連通孔22aから入口バッファ部62aを通って第1金属セパレータ15aの第1酸化剤ガス流路26に供給される。酸化剤ガスは、他の一部が酸化剤ガス入口連通孔22aから入口バッファ部66aを通って第2金属セパレータ15bの第2酸化剤ガス流路38に導入される。
【0062】
酸化剤ガスは、
図1、
図4及び
図5に示すように、第1酸化剤ガス流路26に沿って矢印B方向(水平方向)に移動し、第1樹脂枠付きMEA16aのカソード電極56に供給される。また、酸化剤ガスは、第2酸化剤ガス流路38に沿って矢印B方向に移動し、第2樹脂枠付きMEA16bのカソード電極56に供給される。
【0063】
一方、燃料ガスは、
図1に示すように、燃料ガス入口連通孔24aから供給流路溝部36a、44aに導入される。供給流路溝部36aでは、燃料ガスが、入口バッファ部64aを通って第2金属セパレータ15bの第1燃料ガス流路34に供給される。供給流路溝部44aでは、燃料ガスが、入口バッファ部68aを通って第3金属セパレータ15cの第2燃料ガス流路42に供給される。
【0064】
燃料ガスは、第1燃料ガス流路34に沿って矢印B方向に移動し、第1樹脂枠付きMEA16aのアノード電極54に供給される。また、燃料ガスは、第2燃料ガス流路42に沿って矢印B方向に移動し、第2樹脂枠付きMEA16bのアノード電極54に供給される。
【0065】
従って、第1樹脂枠付きMEA16a及び第2樹脂枠付きMEA16bでは、各カソード電極56に供給される酸化剤ガスと、各アノード電極54に供給される燃料ガスとが、電極触媒層内で電気化学反応により消費されて発電が行われる。
【0066】
次いで、第1樹脂枠付きMEA16a及び第2樹脂枠付きMEA16bの各カソード電極56に供給されて消費された酸化剤ガスは、出口バッファ部62b、66bを通って酸化剤ガス出口連通孔22bに排出される。第1樹脂枠付きMEA16a及び第2樹脂枠付きMEA16bのアノード電極54に供給されて消費された燃料ガスは、出口バッファ部64b、68bを通って燃料ガス出口連通孔24bに排出される。
【0067】
一方、左右一対の冷却媒体入口連通孔25aに供給された冷却媒体は冷却媒体流路32に導入される。冷却媒体は、各冷却媒体入口連通孔25aから冷却媒体流路32に供給され、一旦矢印C方向内方に沿って流動した後、矢印B方向に移動して第1樹脂枠付きMEA16a及び第2樹脂枠付きMEA16bを冷却する。この冷却媒体は、矢印C方向外方に移動した後、一対の冷却媒体出口連通孔25bに排出される。
【0068】
この場合、本実施形態に係る発電セル12は、以下の効果を奏する。
【0069】
図6に示すように、シール凸部53の断面形状は、セパレータ部14A〜14C(
図1)が積層される前の状態で、平坦な頂部53aを有する矩形形状である。このため、積層方向と直交する面方向の位置ずれによるシール面圧の変動を抑制することが可能であるとともに、シール幅を小さく設定することが可能である。従って、発電セル12の小型化が図られる。
【0070】
図7に、非圧縮状態で断面形状が矩形形状のシール凸部53(本発明)と、非圧縮状態で断面形状が非矩形形状(頂部53rtが湾曲し且つ頂部53rtから立ち上がり部53rsに向かってなだらかに傾斜する形状)のシール凸部53ref(比較例)とについて、圧縮状態での形状及び応力分布をシミュレーションした結果を示す。比較例のシール凸部53refについて、非圧縮状態での形状は、仮想線で示している。非圧縮状態でのシール凸部53の幅は、非圧縮状態でのシール凸部53refの幅よりも小さい。形状以外の条件は、シール凸部53とシール凸部53refとで同じである。
【0071】
図7に示すように、シール凸部53及びシール凸部53refに、同一の圧縮荷重を付与した場合、シール凸部53refでは、応力が過大になる領域Sを有することが認められた。一方、シール凸部53ではそのような応力過大領域は認められなかった。従って、本発明によれば、圧縮応力の均一化が図られ、シール凸部53の破損を抑制することができる。
【0072】
また、
図7に示すように、同じ材料で形成されたシール凸部53及びシール凸部53refに、同一の圧縮荷重を付与した場合、シール凸部53の方が、シール凸部53refよりも変形量が少なかった。すなわち、シール凸部53の圧縮率の方が、シール凸部53refの圧縮率よりも小さかった。このことは、シール凸部53は、シール凸部53refと比較して、幅を小さくしても変形しにくいことを示している。従って、
図8に示すように、シール凸部53は、シール凸部53refと比較して、より小さい圧縮率で所望のシール荷重(シール面圧)を得ることができる。
【0073】
上述したようにシール凸部53は、シール凸部53refと比較して圧縮率が小さい。このため、
図9に示すように、シール凸部53は、シール凸部53refと比較して、時間経過に伴うシール荷重の変化(減少)が小さい。従って、本発明によれば、長期にわたってシール荷重を均一に維持することが可能である。
【0074】
図3に示すように、シール凸部53の断面形状は、セパレータ部14A〜14Cが複数積層されて積層方向に締付荷重が付与された状態で、シール幅方向の両側部53b、53cがシール幅方向外方に膨出する形状である。この構成により、荷重付与状態でシール凸部53に作用する圧縮応力の均一化が図られ、シール凸部53の破損が抑制される。
【0075】
図6に示すように、シール凸部53のベース部55からの突出高さHと、シール凸部53の幅Wとは、H≦Wの関係を有する。この構成により、荷重付与時のシール凸部53の倒れを抑制することができる。
【0076】
シール凸部53には、頂部53aに隣接する湾曲形状の角部53d、53eが設けられ、角部53d、53eの曲率半径は、0.1mm以上である。
図10に示すように、角部53d、53eの曲率半径が0.1mm未満では、応力集中係数が、0.1mm以上の場合と比較して格段に大きい。そこで、本実施形態では、角部53d、53eの曲率半径を0.1mm以上に設定することで、荷重付与時にシール凸部53の角部53d、53eでの応力集中が回避されるため、角部53d、53eを起点とするシール凸部53の破損を抑制することができる。
【0077】
シール凸部53のベース部55からの立ち上がり部53f、53gは、湾曲形状であり、立ち上がり部53f、53gの曲率半径は、0.1mm以上である。この構成により、荷重付与時に立ち上がり部53f、53gでの応力集中が回避されるため、立ち上がり部53f、53gを起点とするシール凸部53の破損を抑制することができる。
【0078】
なお、本実施形態では、発電セル12は、3枚のセパレータと2枚の樹脂枠付きMEAとを有し、各発電セル12間に冷却媒体流路32が形成されている(所謂、間引き冷却)。本発明は、これに限定されるものではなく、例えば、2枚のセパレータ間に1枚の樹脂枠付きMEAが挟持される発電ユニット(所謂、各セル冷却)にも、適用することができる。
【0079】
また、本実施形態では、第1樹脂枠付きMEA16a及び第2樹脂枠付きMEA16bを用いているが、これに限定されるものではない。第1樹脂枠部材58及び第2樹脂枠部材60を不要にした電解質膜・電極構造体51からなる、所謂、段差MEAを採用してもよい。
【0080】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改変が可能である。