特許第6612904号(P6612904)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6612904シャーベット氷の製氷システム、及びシャーベット氷の製氷方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6612904
(24)【登録日】2019年11月8日
(45)【発行日】2019年11月27日
(54)【発明の名称】シャーベット氷の製氷システム、及びシャーベット氷の製氷方法
(51)【国際特許分類】
   F25C 1/00 20060101AFI20191118BHJP
   F25C 5/18 20180101ALI20191118BHJP
【FI】
   F25C1/00 A
   F25C1/00 301Z
   F25C5/18
【請求項の数】8
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2018-4176(P2018-4176)
(22)【出願日】2018年1月15日
(62)【分割の表示】特願2014-156858(P2014-156858)の分割
【原出願日】2014年7月31日
(65)【公開番号】特開2018-54289(P2018-54289A)
(43)【公開日】2018年4月5日
【審査請求日】2018年2月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000169499
【氏名又は名称】高砂熱学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100549
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 嘉之
(74)【代理人】
【識別番号】100123098
【弁理士】
【氏名又は名称】今堀 克彦
(72)【発明者】
【氏名】佐部利 俊和
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 基
(72)【発明者】
【氏名】松平 章宏
(72)【発明者】
【氏名】万尾 達徳
(72)【発明者】
【氏名】三上 貴彦
【審査官】 石黒 雄一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−010129(JP,A)
【文献】 特開平06−265183(JP,A)
【文献】 特開平08−313018(JP,A)
【文献】 特開平05−340569(JP,A)
【文献】 特開2006−242487(JP,A)
【文献】 特開2004−229568(JP,A)
【文献】 特開平08−219609(JP,A)
【文献】 特開2015−152248(JP,A)
【文献】 特開2015−152249(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25C 1/00
F25C 5/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩水を過冷却状態にし、過冷却状態を解除してシャーベット氷を製氷する製氷装置と、
前記製氷装置で製氷されたシャーベット氷を攪拌しながら貯氷し、当該シャーベット氷を供給する供給装置と、
前記供給装置が貯氷するシャーベット氷の氷充填率を算出し、算出された氷充填率に基づいて、前記シャーベット氷を撹拌する際の撹拌のレベルを調整する制御装置と、を備え、
前記製氷装置は、前記塩水を過冷却状態にする熱交換器と、前記熱交換器へ供給するブラインを冷却する冷凍機と、を有し、
前記制御装置は、前記供給装置が貯氷するシャーベット氷の氷充填率を、前記ブラインの温度と流量を用いて算出される前記冷凍機の生産熱量から演算する、
シャーベット氷の製氷システム。
【請求項2】
前記制御装置は、氷充填率に応じて予め定められた動力の大きさとなるように攪拌のレベルを調整する、
請求項1に記載のシャーベット氷の製氷システム。
【請求項3】
前記制御装置は、前記攪拌のレベルを増減する、
請求項1または2に記載のシャーベット氷の製氷システム。
【請求項4】
前記制御装置は、氷充填率が高くなるにしたがって攪拌のレベルを高くする、
請求項1から3の何れか一項に記載のシャーベット氷の製氷システム。
【請求項5】
前記制御装置は、前記製氷装置と前記供給装置に備わるセンサから取得されるプロセス値を用いて算出される前記製氷装置の積算生産熱量と前記供給装置の水量とを用いて前記氷充填率を算出し、算出された氷充填率に基づいて、前記シャーベット氷を撹拌する際の撹拌のレベルを調整する、
請求項1から4の何れか一項に記載のシャーベット氷の製氷システム。
【請求項6】
前記製氷装置は、前記供給装置に出入する循環経路の途中に設けられた熱交換器で塩水を過冷却状態にし、前記循環経路の途中に設けられた過冷却解除器で塩水の過冷却状態を
解除する、
請求項1から5の何れか一項に記載のシャーベット氷の製氷システム。
【請求項7】
前記撹拌のレベルとは、攪拌に要する動力の大きさである、
請求項1から6の何れか一項に記載のシャーベット氷の製氷システム。
【請求項8】
塩水を過冷却状態にし、過冷却状態を解除してシャーベット氷を製氷する製氷工程と、
前記製氷工程で製氷されたシャーベット氷を攪拌しながら貯氷し、当該シャーベット氷を供給する供給工程と、を備え、
前記供給工程では、貯氷するシャーベット氷の氷充填率を算出し、算出された氷充填率に基づいて、前記シャーベット氷を撹拌する際の撹拌のレベルを調整し、
前記製氷工程では、前記塩水を過冷却状態にする熱交換器と、前記熱交換器へ供給するブラインを冷却する冷凍機と、を有する製氷装置で製氷し、
前記供給工程では、貯氷するシャーベット氷の氷充填率を、前記ブラインの温度と流量を用いて算出される前記冷凍機の生産熱量から演算する、
シャーベット氷の製氷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャーベット氷の製氷システム、及びシャーベット氷の製氷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シャーベット氷を製氷する技術がある。例えば、特許文献1には、製氷用流体として塩化ナトリウム水溶液を使用し、製氷熱交換器に導入される塩化ナトリウム水溶液の温度が蓄熱槽内の水溶液の氷液共存温度より所定温度だけ高温となるように、また、製氷熱交換器に導かれるブラインの温度が氷液共存温度より所定温度だけ低温になるように、それぞれ制御し製氷熱交換器に導入することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−112652号公報
【特許文献2】特開2014−20596号公報
【特許文献3】特開2007−40548号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
塩化ナトリウム水溶液を含め、塩水を利用してシャーベット氷を製氷する場合、塩水は濃度によって凍結温度が変わるため、製氷を安定して行えないことが懸念される。
【0005】
本発明は、上記の問題に鑑み、塩水を利用したシャーベット氷を安定して製氷する技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述した課題を解決するため、本出願人が空調用氷蓄熱で長年培った過冷却式製氷技術を応用して塩水のシャーベット氷を製氷するとともに、塩水の濃度に応じて過冷却媒体の温度と、塩水が過冷却媒体と熱交換する前に予熱される際の予熱温度とのうち少なくとも何れか一方を調整することとした。
【0007】
詳細には、本発明は、塩水を過冷却状態にし、過冷却状態の塩水を解除してシャーベット氷を製氷する製氷装置と、前記製氷装置で製氷されたシャーベット氷を貯氷し、当該シャーベット氷を供給する供給装置と、前記塩水と熱交換する過冷却媒体を供給する過冷却装置と、前記製氷装置と、前記供給装置と、前記過冷却装置とのうち、少なくとも何れか一つを制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記塩水の濃度に応じて前記過冷却媒体の温度を変更する過冷却媒体の制御処理と、前記塩水の濃度に応じて、前記塩水が過冷却媒体と熱交換する前に予熱される際の予熱温度を調整する予熱制御処理とのうち、少なくとも何れか一方の処理を行う、シャーベット氷の製氷システムである。
【0008】
本発明に係るシャーベット氷の製氷システムによれば、塩水を過冷却し、解除することで、水を原料とする場合と比較して、氷結晶粒の直径が小さいシャーベット氷を製氷することができる。氷結晶粒の直径とは、氷結晶粒が球形以外の場合は、最大径を意味する。また、塩水を過冷却する場合、濃度によって、凍結温度が変わってくるため、安定的に製氷できないことが懸念されるが、本発明に係るシャーベット氷の製氷システムによれば、塩水の濃度に応じて、過冷却媒体の温度と海水の予熱温度とのうち、少なくとも何れか一方の温度調整を行うことで、安定した製氷を実現することができる。
【0009】
また、本発明に係るシャーベット氷の製氷システムで製氷されたシャーベット氷は、氷結晶粒の表面が曲面状で、粒が揃っており、氷結晶粒同士が凝結し難いため、肥大化しにくい。その結果、シャーベット氷の流動性が従来よりも優れている。そのため、配管等の詰まりも発生しにくく、また、従来よりも小さい動力でシャーベット氷を供給することができる。したがって、熱媒としてのシャーベット氷を生成地点から消費地点まで車両で搬送するなどの使用方法も考えられる。また、シャーベット氷は、塩水での鮮度保持が必要とされる水産物などの生鮮品の保存等にも好適に用いることができる。
【0010】
ここで、前記製氷装置は、海水を過冷却状態にし、過冷却状態の海水を解除するようにしてもよい。本発明によれば、海水を活用して、海水のシャーベット氷を製氷することができる。海水は、殺菌された海水であることが好ましい。また、海水は、塩分調整された殺菌海水であることがより好ましい。塩分調整は、海水に真水を混合することで調整することができる。塩分調整された殺菌海水の濃度は、水産物に応じて調整することができる。塩分調整された殺菌海水の濃度は、海水濃度(例えば、3.5%)よりも低い、例えば3%以下とすることができる。
【0011】
また、過冷却媒体の温度や予熱温度の制御(調整)に際しては、予め被処理塩水(例えば、海水)の濃度と凍結温度との関係を求めておき、運転中の過冷却装置に入る塩水(例えば、海水)の濃度を計測することで適切な運転が実施できる。
【0012】
また、前記制御装置は、前記冷却媒体の制御処理において、前記塩水の濃度から当該塩水の凍結温度を算出し、前記塩水の温度と前記凍結温度との比較結果に基づいて、前記過冷却媒体の温度を調整し、前記予熱制御処理において、前記塩水の濃度から当該塩水の凍結温度を算出し、前記塩水の温度と前記凍結温度との比較結果に基づいて、前記予熱温度を調整することができる。塩水の濃度から塩水の凍結温度を算出し、実測による塩水の温度と比較し、比較結果に基づいて冷却媒体の温度と、予熱温度とのうち少なくとも何れか一方の温度を調整することで、濃度の違いによる製氷の低下を抑制することができる。
【0013】
ここで、貯氷タンク内のシャーベット氷の流動性を確保するためには、貯氷されるシャーベット氷を常に撹拌していることが望ましい。しかしながら、貯氷されるシャーベット氷が多い状態の撹拌レベルに合わせて同じレベルで運転し続けると、動力の無駄が生じることも考えられる。
【0014】
そこで、本発明に係るシャーベット氷の製氷システムでは、氷充填率(IPF:Ice
Packing Factor)に基づいて、撹拌のレベルを調整してもよい。具体的には、前記供給装置は、前記シャーベット氷を撹拌しながら貯氷し、前記制御装置は、前記供給装置が貯氷するシャーベット氷の氷充填率を算出し、算出された氷充填率に基づいて、前記シャーベット氷を撹拌する際の撹拌のレベルを調整するようにしてもよい。これにより、撹拌に要する動力を低減することができ、省力化を実現することができる。撹拌のレベルとは、撹拌に要する動力の違いを表現できるものであればよく、電力量、動力源の回転数、動力源の出力などが含まれる。
【0015】
また、前記製氷装置は、塩水が流れる往き配管と、前記往き配管と接続され、塩水を過冷却状態にする熱交換器と、前記過冷却状態の塩水が流れる還り配管と、前記還り配管と接続され、前記過冷却状態の塩水を解除する解除器と、を有し、前記供給装置は、前記製氷装置で製氷されたシャーベット氷を貯氷する貯氷タンクと、貯氷されたシャーベット氷を圧送するポンプと、前記貯氷タンク及び前記ポンプと接続され、前記シャーベット氷が流れる供給配管と、を有する構成とすることができる。
【0016】
往き配管は、一端を貯氷タンクに接続し、他端を熱交換器に接続することができる。往
き配管には、貯氷タンクからの塩水を流すことができる。貯氷タンクからの塩水は、原水が貯氷タンクによって温度低下したものである。往き配管には、貯氷タンク内の塩水を汲み上げ、熱交換器へ圧送する製氷装置のポンプ、貯氷タンクからの塩水に含まれる微細な氷を融解する予熱器、各種弁、温度センサ、流量計等のうち少なくとも何れか一つを更に設けるようにしてもよい。過冷却水のポンプは、熱交換器へ供給する流量を一定化するため、インバータ制御するようにしてもよい。
【0017】
熱交換器は、冷凍機から供給される過冷却媒体(水やブラインなど)と塩水とを熱交換し、塩水を過冷却状態とする。熱交換器には、プレート式、シェル・アンド・チューブ式を含む各種熱交換器を用いることができる。解除器は、例えば、超音波により過冷却状態を解除する。解除器は、過冷却状態を解除できるものであれば、上記に限定されない。還り配管は、一端を熱交換器に接続し、他端を解除器に接続することができる。還り配管には、各種弁、温度センサ、流量計等のうち少なくとも何れか一つを更に設けるようにしてもよい。
【0018】
貯氷タンクは、製氷されたシャーベット氷を貯氷するもので、撹拌部を有する構成とすることができる。撹拌部を有することで、貯氷タンクは、シャーベット氷に含まれる氷の凝結を抑制して、シャーベット氷の流動性を維持することができる。本発明に係るシャーベット氷の製氷システムでは、貯氷タンクのIPFは50〜60%とすることができる。撹拌部は、軸と、軸に接続された羽と、軸を回転させるモータとを含む構成とすることができる。貯氷タンクには、塩水(原水)を受け入れる原水受入口、原水を送り出す原水送出口、シャーベット氷を受け入れる氷受入口、シャーベット氷を送り出す氷送出口、残ったシャーベット氷を排出する氷排出口を含む構成とすることができる。また、貯氷タンクは、タンク内のシャーベット氷を氷送出口側の領域に収容するとともに塩水が通過自在な仕切り部(例えば、複数の孔が形成された板状の物、網状の物、これらの組合せなど)を含む構成とすることができる。仕切り部を有することで、貯氷タンクは、過冷却装置に送られる塩水に氷が混入されるのを抑制することができる。
【0019】
ポンプは、貯氷されたシャーベット氷を圧送する。本発明に係るシャーベット氷の製氷システムで製氷されたシャーベット氷は流動性に優れているため、本発明に係るポンプは、従来よりも小さい動力でシャーベット氷を供給することができる。また、本発明に係るポンプは、スラリー状の液体を圧送する専用のポンプである必要は無く、水を圧送する汎用のポンプを用いることができる。供給配管は、一端を解除器に接続し、他端を供給先に接続し、配管途中に貯氷タンクやポンプを設けることができる。供給配管は、一端を解除器に接続し、他端を貯氷タンクに接続する第一供給配管と、一端を貯水タンクに接続し、他端を供給先に接続する第二供給配管とを含む構成でもよい。供給配管には、各種弁、温度センサ、流量計等のうち少なくとも何れか一つを更に設けるようにしてもよい。
【0020】
なお、本発明は、上述した製氷装置として特定することもできる。また、本発明は、上述した供給装置や過冷却装置として特定することもできる。
【0021】
ここで、本発明は、シャーベット氷の製氷方法として特定することもできる。例えば、本発明は、塩水を過冷却状態にし、過冷却状態の塩水を解除してシャーベット氷を製氷する製氷工程と、前記製氷装置で製氷されたシャーベット氷を貯氷し、当該シャーベット氷を供給する供給工程と、前記塩水と熱交換する過冷却媒体を供給する過冷却供給工程と、前記製氷工程と、前記供給工程と、前記過冷却供給工程とのうち、少なくとも何れか一つを制御する制御工程と、を備え、前記制御工程では、前記塩水の濃度に応じて前記過冷却媒体の温度を調整する過冷却媒体の制御処理と、前記塩水の濃度に応じて、前記塩水が過冷却媒体と熱交換する前に予熱される際の予熱温度を調整する予熱制御処理とのうち、少なくとも何れか一方の処理を行う、シャーベット氷の製氷方法である。
【0022】
本発明に係るシャーベット氷の製氷方法によれば、塩水を過冷却し、解除することで、水を原料とする場合と比較して、氷結晶粒の直径が小さいシャーベット氷を製氷することができる。氷結晶粒の直径とは、氷結晶粒が球形以外の場合は、最大径を意味する。また、塩水を過冷却する場合、濃度によって、凍結温度が変わってくるため、安定的に製氷できないことが懸念されるが、本発明に係るシャーベット氷の製氷システムによれば、塩水の濃度に応じて、過冷却媒体の温度と海水の予熱温度とのうち、少なくとも何れか一方の温度調整を行うことで、安定した製氷を実現することができる。
【0023】
前記制御工程では、前記冷却媒体の制御処理において、前記塩水の濃度から当該塩水の凍結温度を算出し、前記塩水の温度と前記凍結温度との比較結果に基づいて、前記過冷却媒体の温度を調整し、前記予熱制御処理において、前記塩水の濃度から当該塩水の凍結温度を算出し、前記塩水の温度と前記凍結温度との比較結果に基づいて、前記予熱温度を調整してもよい。また、前記供給工程では、前記シャーベット氷を撹拌しながら貯氷し、前記制御工程では、前記供給工程で貯氷するシャーベット氷の氷充填率を算出し、算出された氷充填率に基づいて、前記シャーベット氷を撹拌する際の撹拌のレベルを調整してもよい。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、塩水を利用したシャーベット氷を安定して製氷する技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、実施形態に係るシャーベット氷の製氷システムのブロック図を示す。
図2図2は、実施形態に係る貯氷タンクの拡大断面図を示す。
図3図3は、実施形態に係るシャーベット氷の製氷システムの動作フローを示す。
図4図4は、海水の流量制御の処理フローを示す。
図5図5は、海水の予熱制御の処理フローを示す。
図6図6は、塩分濃度と凍結温度との関係のマップを示す。
図7図7は、ブラインの温度制御の処理フローを示す。
図8図8は、IPF、取水塩分濃度、取水温度の関係のマップを示す。
図9図9は、撹拌制御の処理フローを示す。
図10図10は、撹拌制御テーブルの一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に、本発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。以下の説明では、海水を原料としてシャーベット氷を製氷する場合を例に説明する。また、以下に説明する実施形態は例示にすぎず、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0027】
<シャーベット氷の製氷システム>
実施形態に係るシャーベット氷の製氷システム1は、海水を過冷却状態にし、過冷却状態の海水を解除し、氷結晶粒の直径が0.01〜0.1mm(本実施形態では、0.05mm程の氷結晶粒が多く含まれている)のシャーベット氷を製氷する製氷装置2と、製氷装置2で製氷されたシャーベット氷を貯氷し、氷結晶粒の直径が0.01〜0.1mm(本実施形態では、0.05mm程の氷結晶粒が多く含まれている)のシャーベット氷を供給する供給装置3と、冷凍機4と、これらを制御する制御装置5と、を備える。なお、氷結晶粒の直径とは、氷結晶粒が球形以外の場合(例えば、楕円体)は、最大径を意味する。
【0028】
製氷装置2は、往き配管21、還り配管22、製氷装置のポンプ23、予熱器24、製氷装置のフィルタ25、熱交換器26、解除器27を主な構成とする。供給装置3は、給水配管31、供給配管32(第一供給配管321、第二供給配管322)、貯氷タンク33、供給装置のポンプ34、予熱温度調整器521、電力調整器522、流量調整器523を主な構成とする。以下、海水の給水、過冷却、解除、シャーベット氷の供給の流れに沿って、上記各構成について説明する。
【0029】
<<給水配管>>
給水配管31は、一端が海水処理装置6に接続され、他端が貯氷タンク33の上部に接続され、海水が流れる。海水処理装置6は、殺菌された海水と真水を混合し、0〜3%の塩分濃度の殺菌海水を生成する。海水処理装置6は、漁港等に設置されている既存の設備を用いることができる。海水処理装置6は、一例として、塩分濃度調整タンク、塩分濃度設定器、真水量調整バルブ、海水供給用のポンプ、固液分離フィルタを含む構成とすることができる。塩分濃度調整タンクに殺菌された海水が充填され、塩分濃度設定器によって設定された塩分濃度(0〜3%)に基づいて真水調整バルブが開放され、所定量の真水が導入される。これにより、海水濃度(例えば、3.5%)よりも低い、塩分濃度3%以下の殺菌海水が生成される。
【0030】
また、給水配管31には、海水の流れにおいて、上流側から順に、海水供給装置の自動弁35、海水供給装置のフィルタ36が設けられている。海水供給装置の自動弁35は、制御装置5の制御装置Cによって制御され、貯氷タンク33に海水を充填する際、貯氷タンク33の水位が低下すると、開状態となり、水位が上昇すると閉状態となる。貯氷タンク33の水位は、後述する貯氷タンク33に設けられた水位計341によって取得することができる。海水供給装置のフィルタ36は、例えば、濾過径20μmのフィルタによって構成され、海水に含まれる不純物を捕捉する。不純物とは、製氷において有害となり得る固形物で、換言すると、過冷却状態にある海水を解除するトリガとなり得るものである。不純物には、海藻の小片、砂が例示される。
【0031】
<<貯氷タンク>>
貯氷タンク33は、海水を受け入れるとともに、製氷されたシャーベット氷を貯氷する。ここで、図2は、実施形態に係る貯氷タンクの拡大断面図を示す。貯氷タンク33は、筐体331、軸332、羽333、モータ334、パンチング板335、海水受入口336、海水送出口337、氷受入口338、氷送出口339、排出口340、水位計341を含む。軸332、羽333、モータ334は、本発明の撹拌部を構成する。筐体331は、円筒形の側壁342、円形の蓋部343及び底部344を有し、内部に海水とともにシャーベット氷を貯氷する。軸332は、蓋部343から鉛直下向きにパンチング板335に接触しない高さまで延びている。軸332は、撹拌性能を向上するため、筐体331の中心から偏芯した位置に設けられている。羽333は、シャーベット氷を撹拌する。羽333は、軸332を中心に左右一対の羽からなり、上下に2か所設けられている。下段の羽333は、パンチング板335の近傍に設けられている。ここで、貯氷タンク33内の海水は、製氷装置のポンプ23によって汲み上げられ、パンチング板335付近では、鉛直下向きの吸引力が作用している。そのため、パンチング板335の近傍にはシャーベット氷が堆積しやすく、下段の羽333の下端とパンチング板335との間隔が大きいと、十分に撹拌できないことが懸念される。本実施形態では、下段の羽333をパンチング板335の近傍に設けることで、シャーベット氷を十分に撹拌することができる。上段の羽333は、下段の羽333と蓋部343の中間付近に設けられている。なお、羽333の形状、大きさ、設置個数等は、上記に限定されるものではない。モータ334は、蓋部343に設けられ、軸332を回転させる。モータ334は、制御装置5によって、ON/OFF、回転数が制御される。
【0032】
パンチング板335は、本発明の仕切り部に相当し、貯氷タンク33のシャーベット氷を氷送出口339側の領域に収容するとともに、パンチング板335に形成された複数の孔により海水が通過自在である。パンチング板335は、筐体331の内径とほぼ同じ大きさの円形であり、孔の径が0.8mm、開口率が24%である。なお、上記孔の径や開口率は、一例であり、例えば、孔の径は、0.3〜2.0mm、開口率は20〜30%とすることができる。パンチング板335は、底部344近傍に設けられた海水送出口337の上側近傍に設けられている。パンチング板335の位置は、上記に限定されないが、貯氷タンク33内で、IPF50〜60%を確保するためには、貯氷タンク33の上下方向における中心よりも下方であることが好ましく、また、底部344近傍に設けられた海水送出口337よりも上側であることが好ましい。パンチング板335に代えて、網状構造体(例えば、メッシュ)を用いてもよい。網状構造体は、平面状のもの、立体的なもの、何れでもよい。立体的なものには、三次元網目構造体(例えば、焼結金属フィルターなど)が例示される。また、パンチング板335、網状構造体を適宜組み合わせて配置するようにしてもよい。
【0033】
海水受入口336は、蓋部343に設けられ、給水配管31と接続されて、海水を受け入れる。海水受入口336は、貯氷タンク33の側壁342に設けてもよい。海水受入口336は、貯水タンク33が満水時の水面よりも上側に設けられていればよく、設置位置は上記に限定されない。海水送出口337は、側壁342における底部344近傍に設けられ、往き配管21と接続されて、海水を送り出す。氷受入口338は、側壁342における蓋部343近傍に設けられ、還り配管22と接続されて、シャーベット氷を受け入れる。氷受入口338は、例えば、蓋部343に設けることもできる。氷送出口339は、パンチング板335の近傍上側に設けられ、供給配管32(第二供給管322)と接続されて、氷結晶粒の直径が0.01〜0.1mmのシャーベット氷を送り出す。氷送出口339は、少なくともパンチング板335の近傍上側に設けられていればよく、複数設けられていてもよい。排出口340は、底部344に設けられ、排出配管37と接続されて、貯氷タンク33内の水やシャーベット氷を排出する。排出配管37には、排出用の自動弁38が設けられている。排出用の自動弁38は、制御装置5によって制御され、海水受入前において開状態となり、貯氷タンク33内の水やシャーベット氷を排出し、貯氷タンク33内の水やシャーベット氷が全て排出されると閉状態となる。水位計341は、貯氷タンク33内に設けられ、貯氷タンク33内の海水の水位を検知する。水位計341には、水位センサなど、既存のセンサを適宜用いることができる。
【0034】
<<往き配管>>
往き配管21は、一端が貯氷タンク33の海水送出口337に接続され、他端が熱交換器26に接続され、貯氷タンク33で冷却された海水が流れる。往き配管21には、海水の流れにおいて、上流側から順に、温度センサT4、塩分濃度計524、製氷装置のポンプ23、流量計M1、予熱器24、製氷装置のフィルタ25、温度センサT3が設けられている。温度センサT4は、貯氷タンク33で冷却された海水の温度(取水温度ともいう)を検知する。温度センサT4で取得された取水温度は、制御装置5の演算装置Bに入力される。塩分濃度計524は、往き配管21を流れる冷却された海水の濃度を検知する。塩分濃度計524で検知された海水の濃度は、制御装置5の演算装置Bに入力される。製氷装置のポンプ23は、貯氷タンク33から海水を汲み上げ熱交換器26へ圧送する。製氷装置のポンプ23近傍にはゲート弁が設けられており、ゲート弁の開度を調整することで、熱交換器26へ供給する海水の流量を一定化することができる。流量計M1は、往き配管21を流れる冷却された海水の流量を検知する。流量計M1で検知された海水の流量は、流量調整器523に入力される。流量調整器523は、制御装置5の演算装置Bによって制御され、流量計M1から送られる海水の流量情報に基づいて、製氷装置のポンプ23の回転数を制御する。つまり、制御装置5により、熱交換器26と製氷装置のポンプ2
3との間に設けられた流量計M1から取得される海水の流量情報に基づいて、熱交換器26へ供給される海水の流量が一定化するよう、ゲート弁の開度やポンプの圧力が調整される。
【0035】
予熱器24は、貯氷タンク33からの海水に含まれる微細な氷を融解する。予熱器24は、ヒータで構成することができ、ON/OFF及び加熱温度が制御装置5の演算装置Bによって制御される。温度センサT3は、往き配管21の下流側(熱交換器26側)に設けられ、貯氷タンク33で冷却された海水のうち、熱交換器26近傍の海水の温度を検知する。温度センサT3で検知された海水の温度は、予熱温度調整器521に入力される。予熱温度調整器521は、制御装置5の演算装置Bからの予熱温度目標値に基づいて、電力調整器522に対して、予熱器24の出力値の指令を出す。電力調整器522は、予熱温度調整器521からの予熱器24の出力値に基づいて、予熱器24を制御する。例えば、温度センサT3から取得される海水の温度情報に基づいて、熱交換器26へ供給する海水の温度が既定温度(例えば、0度)に維持されるよう予熱器24を制御する。具体的には、例えば、制御装置5は、海水の温度が既定温度より低い場合、予熱器24の加熱温度を上げる。また、例えば、制御装置5は、海水の温度が既定温度より高い場合、予熱器24の加熱温度を下げる。既定温度は、海水の濃度等に応じて、実験などにより予め定めることができる。製氷装置のフィルタ25は、凝結した氷や海水に含まれる不純物を補足する。不純物には、海藻の小片、砂、微細な氷粒子が例示される。
【0036】
熱交換器26は、貯氷タンク33と接続される往き配管21及び解除器27と接続される還り配管22、更に、冷凍機4と接続されるブライン往き配管42及びブライン還り配管43と接続され、冷凍機4から供給される過冷却媒体としてのブラインと海水とを熱交換し、海水を過冷却状態とする。熱交換器26は、プレート式の熱交換器によって構成されている。熱交換器26は、シェル・アンド・チューブ式の熱交換器など、既存の各種熱交換器を用いることができる。
【0037】
<<冷凍機>>
冷凍機4は、ブラインを冷却する。ブラインの温度は、例えば、熱交換前が−6℃、熱交換後が−3℃である。冷凍機4は、制御装置5のブライン温度調整器511によって制御される。ブラインの往き配管42は、一端が冷凍機4に接続され、他端が熱交換器26に接続され、冷凍機4で冷却され、かつ、熱交換前のブラインが流れる。ブラインの往き配管42には、ブラインの流れにおいて上流側から順に、ブラインのポンプ41、温度センサT1が設けられている。ブラインのポンプ41は、冷凍機4で冷却されたブラインを熱交換器26へ圧送する。ブラインのポンプ41近傍にはゲート弁が設けられており、ゲート弁の開度を調整することで、ブラインの流量が制御されている。温度センサT1は、ブラインの往き配管42を流れるブラインの温度を検知する。温度センサT1で検知されたブラインの温度は、制御装置5の演算装置Aに入力される。
【0038】
ブラインの還り配管43は、一端が熱交換器26に接続され、他端が冷凍機4に接続され、熱交換後のブラインが流れる。ブラインの還り配管43には、ブラインの流れにおいて上流側から順に、温度センサT2、流量計M2、凍結解除ヒータ512が設けられている。温度センサT2は、ブラインの還り配管43を流れるブラインの温度を検知する。温度センサT2で検知されたブラインの温度は、制御装置5の演算装置Aに入力される。流量計M2は、ブラインの往き配管42を流れるブラインの流量を検知する。流量計M2で検知されたブラインの流量は、制御装置5の演算装置Aに入力される。凍結解除ヒータ512は、制御装置5の演算装置Aによって制御され、ブラインの還り配管43の凍結を抑制する。なお、制御装置5は、予熱器24のように、温度調整器や電力調整器を介して、凍結解除ヒータ512を制御してもよい。流量計M1、温度センサT1,T2で検知されたブラインの流量、ブラインの温度に基づいて、IPFが算出される。
【0039】
<<解除器>>
還り配管22は、一端が熱交換器26に接続され、他端が解除器27に接続され、過冷却状態の海水が流れる。解除器27は、超音波により過冷却状態を解除する。解除器27は、過冷却状態を解除できるものであれば、上記に限定されない。
【0040】
<<供給配管>>
供給配管32は、第一供給配管321、及び第二供給配管322によって構成されている。第一供給配管321は、一端が解除器27に接続され、他端が貯氷タンク33の氷受入口338に接続され、解除器27で解除されたシャーベット氷が流れる。第二供給配管322は、一端が貯氷タンク33の氷送出口339に接続され、他端が供給先に接続され、貯氷タンク33に貯氷されたIPF50〜60%のシャーベット氷が流れる。本実施形態の供給先は、水産物を鮮度保持するための船舶に設けられた水槽である。供給先は、水産物を鮮度保持するのに必要とされる箇所であればよく、上記に限定されない。第二供給配管322は、シャーベット氷の流れにおいて、上流側から順に、氷供給装置のポンプ34、氷供給装置の自動弁39が設けられている。なお、水産物には、魚(サンマ、マグロ、アジ、サバなど)、甲殻類(カニ、エビなど)が例示される。これらは、一例であり、水産物は、これらに限定されない。
【0041】
氷供給装置のポンプ34は、貯氷タンク33からシャーベット氷を汲み上げ供給先へ圧送する。氷供給装置のポンプ34近傍にはゲート弁が設けられている。氷供給装置のポンプ34及びゲート弁は、制御装置5の演算装置Cによって制御されている。制御装置5は、ゲート弁の開度やポンプの圧力を調整する。氷供給装置の自動弁39は、制御装置5によって制御され、貯氷タンク33にシャーベット氷が充填された状態で供給開始の指示(スイッチON)になると、開状態となり、シャーベット氷が無くなるか、供給停止の指示(スイッチOFF)になると閉状態となる。
【0042】
制御装置5は、演算装置A、B、Cを含み、シャーベット氷の製氷システムの各種装置、機器類を制御する。制御装置5は、CPU(中央処理演算装置)、メモリ、操作部、表示部等を備え、CPUがメモリに格納された制御プログラムを実行することで、各種装置、機器類を制御する。制御装置5は、一例として、PLC(programmable logic controller)によって構成することができる。なお、本実施形態では、制御装置5は、演算装置A、B、Cを含み、演算装置Aが主に冷凍機4を制御し、演算装置Bが主に製氷装置2を制御し、演算装置Cが主に供給装置3を制御する。但し、制御装置5の構成は、一例であり、例えば、各演算装置を個別の制御装置によって構成してもよい。
【0043】
<動作>
次に、実施形態に係るシャーベット氷の製氷システム1の動作について、制御装置5による制御処理も交えて説明する。図3は、実施形態に係るシャーベット氷の製氷システムの動作フローを示す。
【0044】
<<海水の充填>>
ステップS01では、貯氷タンク33に海水が充填される。制御装置5(演算装置C)は、排出用の自動弁38を開状態とし、貯氷タンク33の残海水を排出させる。これにより、繰り返し製氷を行うことで懸念される、海水の塩分濃度上昇を抑制することができる。制御装置5(演算装置C)は、貯氷タンク33の水位計341から水位情報を取得し、貯氷タンク33内の海水の水位が所定水位以下(空状態)まで低下すると、排出用の自動弁38を閉状態とする。次に、制御装置5(演算装置C)は、海水供給装置の自動弁35を開状態とする。貯氷タンク33への海水は、海水処理装置6側に設けられた海水処理装
置のポンプによって圧送することができる。これにより、0〜3%の塩分濃度の殺菌海水(例えば、20℃)が圧送される。上記海水は、海水供給装置のフィルタ36を通過することで、海水に含まれる不純物(例えば、海藻の小片や砂)が捕捉される。制御装置5(演算装置C)は、貯氷タンク33の水位計341から水位情報を取得し、貯氷タンク33内の海水の水位が所定水位以上まで上昇すると、排出用の自動弁38を閉状態とする。なお、貯氷タンク33内の塩分濃度を取得してもよく、この場合には、制御装置5は、モータ334をONにして羽333を回転させ、海水を撹拌するようにしてもよい。
【0045】
<<製氷>>
ステップS02では、シャーベット氷が製氷される。制御装置5(演算装置B)は、製氷装置のポンプ23をONにし、貯氷タンク33内の海水を汲み上げ、熱交換器26へ圧送する。
【0046】
<<海水の流量制御>>
制御装置5(演算装置B)は、熱交換器26へ供給する海水の流量を一定化するため、流量計M1から取得される海水の流量情報に基づいて、熱交換器26へ供給する海水の流量を一定化するよう、製氷装置のポンプ23をインバータ制御する(海水の流量制御)。図4は、海水の流量制御の処理フローを示す。ステップS11では、流量計M1によって、往き配管21を流れる海水の流量が検知される。流量計M1で検知された海水の流量に関する流量情報は、流量調整器523に入力される。ステップS12では、流量調整器523によって、製氷装置のポンプ23がインバータ制御される。すなわち、制御装置5の演算装置Bの制御の下、流量調整器523は、流量計M1から送られる海水の流量情報に基づいて、製氷装置のポンプ23の回転数、ゲート弁の開度を調整する。
【0047】
<<海水の予熱制御>>
また、制御装置5(演算装置B)は、熱交換器26へ供給する海水の温度が既定温度に維持されるよう予熱器24を制御する(海水の予熱制御)。図5は、海水の予熱制御の処理フローを示す。ステップS21では、海水の凍結温度が算出される。具体的には、まず、塩分濃度計524により、往き配管21を流れる冷却された海水の濃度が検知される。制御装置5(演算装置B)は、検知された海水の濃度と、以下の式1(近似曲線式)から、海水の凍結温度を算出する。
凍結温度[℃]=−0.0131×(塩分濃度[%])2−0.5418×塩分濃度[%]・・・式1(近似曲線式)
【0048】
ここで、図6は、塩分濃度と凍結温度との関係のマップを示す。制御装置5(演算装置B)は、メモリに図6に示すようなマップを格納しておき、マップにアクセスして、取得した塩分濃度から凍結温度を算出してもよい。
【0049】
なお、凍結温度の算出は、撹拌部(軸332、羽333、モータ334)、及び製氷装置のポンプ23が動作した状態で行われる。これにより、往き配管21、及び還り配管22内の残海水と、貯氷タンク33内の海水が混合され、海水の正確な濃度を検知することが可能となる。その結果、凍結温度も正確に算出することができる。海水の凍結温度が取得されると、ステップS22へ進む。
【0050】
ステップS22では、予熱器24が制御される。具体的には、まず、温度センサT3、T4によって、海水の温度が検知される。次に、制御装置5(演算装置B)は、温度センサT3で検知された海水の温度(貯氷タンク33からの取水温度)と算出した凍結温度を比較する。次に、制御装置5(演算装置B)は、温度センサT3で検知された海水の温度が凍結温度と同じか高い場合(予冷中)、熱交換器26近傍の海水の温度、つまり温度センサT3で検知される海水の温度が、海水の凍結温度よりも所定値(例えば、0.5℃)
高くなるように、予熱器24の出力を制御する。また、制御装置5(演算装置B)は、温度センサT3で検知された海水の温度が凍結温度よりも低い場合(予冷終了後)、熱交換器26近傍の海水の温度、つまり温度センサT3で検知される海水の温度が、海水の凍結温度よりも所定値(例えば、0.5℃)高くなるように、予熱器24の出力を制御する。なお、制御装置5(演算装置B)は、温度センサT3で検知された海水の温度が凍結温度と同じか高い場合(予冷中)、予熱器24による予熱は行わず、温度センサT3で検知された海水の温度が凍結温度よりも低い場合(予冷終了後)、熱交換器26近傍の海水の温度、つまり温度センサT3で検知される海水の温度が、海水の凍結温度よりも所定値(例えば、0.5℃)高くなるように、予熱器24の出力を制御するようにしてもよい。以上により、海水の予熱制御が完了する。
【0051】
海水は、製氷装置のフィルタ25を通過することで、凝結した氷や海水に含まれる不純物が補足される。不純物には、海藻の小片、砂、微細な氷粒子が例示される。製氷装置のフィルタ25を通過した海水は、熱交換器26によって、冷凍機4から供給されるブラインと熱交換され、過冷度約2degの過冷却状態まで冷却される。例えば、海水は、熱交換器26によって、−2.5℃から−5℃に冷却される。過冷却状態の海水は、解除器27の超音波により過冷却状態が解除される。なお、制御装置5は、冷凍機4及び解除器27のON/OFFも行うことができる。
【0052】
<<ブラインの温度制御>>
図7は、ブラインの温度制御の処理フローを示す。ステップS31では、海水の凍結温度が算出される。海水の凍結温度は、ステップS21と同様に算出することができる。よって、説明は、割愛する。海水の凍結温度が算出されると、ステップS32へ進む。
【0053】
ステップS32では、冷凍機が制御される。具体的には、まず、温度センサT3、T4によって海水の温度が検知され、温度センサT2によって、ブラインの温度が検知される。次に、制御装置5(演算装置A)は、温度センサT4で検知された海水の温度(貯氷タンク33からの取水温度)と算出した凍結温度を比較する。次に、制御装置5(演算装置A)は、温度センサT3で検知された海水の温度が凍結温度と同じか高い場合(予冷中)、熱交換前のブラインの温度、つまり温度センサT1で検知されるブラインの温度が、海水の凍結温度よりも所定値(例えば、3℃)低くなるように、冷凍機4を制御する。また、制御装置5(演算装置A)は、温度センサT3で検知された海水の温度が凍結温度よりも低い場合、熱交換前のブラインの温度、つまり温度センサT1で検知されるブラインの温度が、海水の凍結温度よりも所定値(例えば、3℃)低くなるように、冷凍機4を制御する。
【0054】
過冷却状態が解除されることで製氷されたシャーベット氷は、第一供給配管321を流れ、貯氷タンク33に圧送される。制御装置5(演算装置A)は、冷凍機4の生産熱量から貯氷タンク33内のIPFを演算し、IPFに応じてモータ334をONにして羽333を回転させる。
【0055】
<<IPFの算出>>
IPFは、以下の式2,3,4,5によって算出することができる。IPFの算出は、例えば、貯氷タンク33から送り出される海水の温度が所定温度(0℃)になると開始される。式2において、演算積算生産熱量は、式3によって算出することができる。タンク水量は、水位計341によって取得することができる。原水密度は、海水の密度であり、海水の物性値として取得することができる。凝固潜熱は、貯氷タンク33の水が全て氷になる上で必要となる熱量である。式3において、瞬時演算生産熱量は、式4によって算出することができる。式4において、ブライン流量は、流量計M2によって取得することができる。ブライン密度、およびブライン比熱は、ブラインの物性値として取得することが
できる。ブラインの過冷却器出口温度は、温度センサ2で取得することができる。ブラインの過冷却器入口温度は、温度センサT1で取得することができる。予熱量は、式5によって算出することができる。演算周期は、適宜設定することができる。式5において、循環水流量は、流量計M1によって取得することができる。原水密度、及び原水比熱は、海水の物性値として取得することができる。過冷却器入口の循環水温度は、温度センサT3によって取得することができる。タンク取水温度は、温度センサT4によって取得することができる。
【0056】
IPF[%]=演算積算生産熱量[kJ]÷{タンク水量[m3]×原水密度[kg/m3]×凝固潜熱[kJ/kg]}×100・・・式2
演算積算生産熱量[kJ]=瞬時演算生産熱量[kJ]+前回演算積算熱量[kJ]・・・式3
瞬時演算生産熱量[kJ]={ブライン流量[L/min]×ブライン密度[kg/L]×ブライン比熱[kJ/kgK]×(ブラインの過冷却器入口温度[℃]−ブラインの過冷却器出口温度[℃])−予熱量[kJ/min]}×演算周期[min]・・・式4
予熱量[kJ/min]=循環水流量[L/min]×原水密度[kg/L]×原水比熱[kJ/kgK]×(過冷却器入口の循環水温度[℃]−タンク取水温度[℃])・・・式
【0057】
以上により、IPFが算出される。制御装置5(演算装置A)は、算出したIPFが所定値(例えば、50%)になると、製氷を終了する。具体的には、制御装置5(演算装置A)は、製氷装置のポンプ23、冷凍機4、解除器27をOFFとし、製氷を終了する。
【0058】
なお、IPFは、式6,7,8によって算出してもよい。式6において、演算積算生産熱量は、式7によって算出することができる。タンク水量は、水位計341によって取得することができる。原水密度は、海水の密度であり、海水の物性値として取得することができる。式7において、瞬時演算生産熱量は、式8によって算出することができる。式8において、循環水流量は、流量計M1によって取得することができる。原水密度は、海水の物性値として取得することができる。過冷却器入口の循環水温度は、温度センサT3によって取得することができる。過冷却器出口の過冷却水温度は、還り配管22の熱交換器26近傍に温度センサを設け、この温度センサによって取得することができる。過冷却水比熱は、過冷却水の物性値として取得することができる。凝固潜熱は、貯氷タンク33の水が全て氷になる上で必要となる熱量である。演算周期は、適宜設定することができる。
【0059】
IPF[%]=演算積算製氷量[kg]÷タンク水量[m3]×原水密度[kg/m3]×100・・・式6
演算積算製氷量[kg]=瞬時演算製氷量[kg]+前回演算製氷量[kg]・・・式7
瞬時演算製氷量[kg]=循環水流量[L/min]×原水密度[kg/L]×(過冷却器入口の循環水温度[℃]−過冷却器出口の過冷却水温度[℃])×過冷却水比熱[kJ/kgK]÷凝固潜熱[kJ/kg]×演算周期[min]・・・式8
【0060】
ここで、図8は、IPF、取水塩分濃度、取水温度の関係のマップを示す。図8は、塩分濃度が3%の場合のマップであるが、製氷が進み貯氷タンク33内の氷量が増えるほど、取水の塩分濃度が高くなり、取水温度が低下する傾向がある。そこで、制御装置5(演算装置A)は、メモリに図8に示すようなマップを塩分濃度毎に格納しておき、マップにアクセスして、後述するIPF取得した塩分濃度からブラインの供給温度の目標値を設置してもよい。例えば、IPFが20%のブラインの供給温度の目標値は、取水温度が−2.0℃、海水の凍結温度よりも低く設定する所定値が3℃とすると、取水温度(−2.0℃)から所定値(3℃)を減算して、−5.0℃となる。また、IPFが40%のブライ
ンの供給温度の目標値は、取水温度(−3.0℃)から所定値(3℃)を減算して、−6.0℃となる。
【0061】
<<供給>>
ステップS03では、シャーベット氷が供給される。制御装置5(演算装置C)は、貯氷タンク33にシャーベット氷が充填された状態で供給開始の指示(例えば、制御装置5の操作部に設けられたスイッチON)を受けると、氷供給装置の自動弁39を開状態とする。その結果、IPF50〜60%であり、氷結晶粒の直径が0.01〜0.1mmのシャーベット氷が第二供給配管322を流れて、供給先に圧送される。また、制御装置5(演算装置C)は、水位計341から水位情報を取得し、貯氷タンク33内の海水の水位が所定水位以下(空状態)になるか、供給停止の指示(例えば、制御装置の操作部に設けられたスイッチOFF)を受けると、氷供給装置の自動弁39を閉状態とする。これにより、氷結晶粒の直径が0.01〜0.1mmのシャーベット氷の供給が完了する。ステップS03の工程が完了すると、再度ステップS01の工程が開始される。
【0062】
<<撹拌制御>>
図9は、撹拌制御の処理フローを示す。本実施形態では、貯氷タンク33内のシャーベット氷の流動性を確保するため、貯氷タンク33内の撹拌が行われる。また、本実施形態では、撹拌の動力を削減するため、IPFに応じて、撹拌する際の回転数が制御される。
【0063】
ステップS41では、IPFが算出される。IPFは、上述したように、式2,3,4,5、若しくは式6,7,8に基づいて算出することができる。IPFが算出されると、ステップS42へ進む。
【0064】
ステップS42では、モータ334の回転数が制御される。ここで、図10は、撹拌制御テーブルの一例を示す。このテーブルでは、製氷時において、IPFが10%以内では、撹拌なし、IPFが11〜20%では、回転数35(rpm)で撹拌あり、IPFが21〜30%では、回転数52(rpm)で撹拌あり、IPFが41〜50%では、回転数90(rpm)で撹拌あり、供給時では、回転数の最大値が103(rpm)に設定されている。制御装置5(演算装置A)は、メモリに格納された上記テーブルにアクセスし、算出されたIPFに応じた制御を実行する。なお、回転数に代えて、最大回転数に対する割合でテーブルを構成してもよい。この場合、例えばIPFが11〜20%では、回転数は最大回転数の30%とすることができる。以上により、撹拌制御が完了する。
【0065】
<効果>
以上説明した実施形態に係るシャーベット氷の製氷システム1によれば、海水を過冷却し、解除することで、氷結晶粒の直径が、0.01〜0.1mmのシャーベット氷を製氷することができる。また、海水を過冷却する場合、濃度によって、凍結温度が変わってくるため、安定的に製氷できないことが懸念されていたが、実施形態に係るシャーベット氷の製氷システム1によれば、海水の濃度に応じて、海水の予熱制御、及びブラインの温度制御を行うことで、安定した製氷を実現することができる。特に、本実施形態に係るシャーベット氷の製氷システム1では、海水濃度から海水の凍結温度を算出し、海水の温度(取水温度)と凍結温度とを比較して、海水の予熱制御、及びブラインの温度制御を行うことで、安定した製氷を実現することができる。
【0066】
また、例えば、特許文献1に記載の技術は、氷液共存温度Tk℃を基準として水溶液制御部Cwと水溶液制御部CwがブラインBの温度と水溶液Wの温度を制御しており、タンク内に氷が溜まっていることを前提とした技術である。換言すると、特許文献1に記載の技術は、タンク内に氷が溜まっていない状態では、実施することができない。これに対し、実施形態に係るシャーベット氷の製氷システム1は、給水される海水濃度から初期凍結
温度を演算して、その値よりも低いか否かで予冷中か製氷中かを判断し、判断結果に応じて予熱温度とブライン温度の制御目標値を決定する。そのため、予冷中に予熱温度の制御目標値を正しく設定できる。また、予冷中は取水温度に関係なくブライン温度を凍結温度−(マイナス)所定値とできるため、予冷中のブライン温度を低く設定でき、予冷時間を短くすることができる。
【0067】
また、実施形態に係るシャーベット氷の製氷システム1で製氷されたシャーベット氷は、氷結晶粒の表面が曲面状で、粒が揃っており、氷結晶粒同士が凝結し難いため、肥大化しにくい。その結果、シャーベット氷の流動性が従来よりも優れている。そのため、配管等の詰まりも発生しにくく、また、従来よりも小さい動力でシャーベット氷を供給することができる。そして、実施形態に係るシャーベット氷の製氷システム1では、撹拌制御を行い、IPFに応じてモータ334の回転数を制御することで、撹拌に要する動力を低減することができる。
【0068】
例えば、貯氷タンク33の容量を3mとし、給水する海水の温度を20℃とし、IPF=50%まで23時間で製氷し、その後1時間でシャーベット氷の供給を完了することを想定する。
【0069】
この場合、常に撹拌した場合の撹拌部(軸332、羽333、モータ334)の電力量は、以下のようになる。
2.7kW×24h=64.8kWh
【0070】
一方で、IPF=10%までは撹拌無し、IPF=10以上20%未満までは撹拌機回転数を最大回転数の40%、IPF=20以上30%未満までは最大回転数の70%、IPF=30以上50%未満までは最大回転数の90%、IPF=50%では最大回転数(100%)とした場合の撹拌部(軸332、羽333、モータ334)の電力量は、以下のようになる。
0kW×10h+1.08kW×3h+1.89kW×3h+2.43×6h+2.7kW×2h=29.9kW
【0071】
したがって、実施形態に係るシャーベット氷の製氷システム1では、撹拌制御を行うことで、常に撹拌した場合と比較して、電力量を約46%削減することができる。
【0072】
<変形例>
なお、例えば、シャーベット氷の製氷量が不足した場合、以下の手順によれば、更にシャーベット氷を製氷することができる。まず、貯氷タンク33に氷が残っている状態で海水を更に供給する。次に、海水を供給後、製氷開始前の貯氷タンク33内のIPFを算出する。その後、製氷を開始する。
【0073】
この場合のIPFは、式9によって算出することができる。Vは、給水直前の貯氷タンク33内の水量である。IPFは、給水前のIPFである。融解潜熱Lは、貯氷タンク33の氷が全て水になる上で必要となる熱量である。Tmは、給水される海水の温度であり、T0は、給水前の貯氷タンク33内の温度である。Mは、給水量である。給水の比熱は、給水される海水の物性値として取得することができる。
給水後のIPF={V[kg]×IPF/100×融解潜熱L[kJ/kg]−(Tm−T0)[℃]×M[kg]×給水の比熱[kJ/kgK]} ÷{(V+M)[kg]×L[kJ/kg]}×100・・・式9
【0074】
なお、式9は、式10の関係において、成立し、式11の関係では、給水後のIPFは0となる。
{V[kg]×IPF/100×融解潜熱L[kJ/kg]−(Tm−T0)×M[kg]×給水の比熱[kJ/kg]}>0・・・式10
{V[kg]×IPF/100×融解潜熱L[kJ/kg]−(Tm−T0)×M[kg]×給水の比熱[kJ/kg]}<0・・・式11
【0075】
以上によれば、シャーベット氷の製氷量が不足した場合に、更にシャーベット氷を製氷することができる。また、給水後のIPFに応じてモータ334の回転数を制御することで、撹拌に要する動力を低減することができる。
【0076】
なお、上記した種々の内容は、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲に於いて可能な限り組合せることができる。例えば、上記実施形態では、製氷工程終了後に供給工程を行う例について説明したが、製氷工程を行いながら供給工程を行うようにしてもよい。運転のバリエーションが増え、利便性が向上する。また、例えば、上記実施形態では、海水からシャーベット氷を製氷し、水産物などの鮮度保持に用いる場合を例に説明したが、真水からシャーベット氷を製氷し、野菜などの鮮度保持に用いるようにしてもよい。
【0077】
また、過冷却媒体の温度や予熱温度の制御(調整)に際しては、例えば、図6に示すように予め被処理海水の塩分濃度と凍結温度との関係を求めておき、熱交換器26へ供給される海水の濃度を濃度計524で計測するとよい。これにより、予熱器24や冷凍機4を予熱温度調整器521やブライン温度調整器511により適切に運転することができる。
【符号の説明】
【0078】
1・・・ 製氷システム
2・・・製氷装置
26・・・熱交換器
27・・・解除器
3・・・供給装置
33・・・貯氷タンク
335・・・パンチング板
4・・・冷凍機
5・・・制御装置
6・・・海水処理装置
図1
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図10