(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
本開示では、本発明の実施形態の十分な理解を提供するために、装置、構造、材料及び方法の例など、多数の具体的な詳細を提供している。しかしながら、当業者であれば、本発明はこれらの具体的な詳細のうちの1又は複数を欠いても実施できることは理解されよう。その他の場合では、本発明の態様を不明瞭にすることを避けるため、周知の詳細については図示又は説明していない。
【0016】
本開示は、金属箔を使用して薄いシリコン太陽電池を形成するための技法を提供する。有利なことに、金属箔は、それなしでは脆弱なシリコン薄膜を処理するための組込みキャリアとして、この薄膜の表側の処理中に使用されてもよい。引き続いて、金属箔は、薄膜の裏側にあるP型エミッタ及びN型エミッタに対する複数の金属指部及び複数の接点を形成するために再利用されてもよい。
【0017】
図1〜
図6は、本発明の実施形態による薄いシリコン太陽電池の製造を概略的に図示する断面図である。
図1に示されているのは、その上にP型ドープ(P+)領域104及びN型ドープ(N+)領域106が形成されたシリコン基板102であり、これらの領域は基板102の裏側に形成されている。P+及びN+ドープ領域は、製造される太陽電池との関連においては、P型エミッタ及びN型エミッタと称されてもよい。
図1に示された裏面電極型太陽電池では、複数のエミッタ及び対応する複数の接点が太陽電池の裏側に設けられる。ドープ領域は、例えば、ドーパントをドーパント源から拡散することによって形成されてもよい。
【0018】
薄い誘電体層108は、電気的絶縁、不動態化及び/又は他の目的のために、裏側のP+及びN+領域上に形成されてもよい。誘電体層108は、例えば、シリコン酸化物及び/又はシリコン窒化物を含んでもよい。代替的に、誘電体層108を形成する以外の手段、例えば、化学的不動態化などによって、エミッタの表面が不動態化されてもよい。
【0019】
図1の太陽電池の構造は、「イオン注入器」とも称されるイオン注入工具内に配置されてもよい。イオン注入器は、
図2に示されるように、予め定められたの注入深度202においてイオンを注入するために使用されてもよい。イオンは水素イオン(すなわち陽子)であってもよい。代替実施形態では、他のイオンが注入されるか又は水素と共に注入されてもよい。例えば、ヘリウムイオンが水素イオンの代わりに注入されるか又は水素イオンと共に注入されてもよい。注入量は注入深度において欠陥を生じさせるため、注入深度の上にあるシリコンの平面薄膜は、注入深度の下にある残りのシリコン基板から分離又は剥離されてもよい。注入エネルギーは注入深度を制御し、剥離後の薄いシリコン基板の厚みを制御する。例えば、薄い薄膜を10マイクロメートル〜100マイクロメートルの範囲内の厚みで劈開するために、注入エネルギーが較正されてもよい。剥離は、基板を高温で加熱することによって実現されてもよい。
【0020】
図3に示されるように、金属箔306は、シリコン薄膜302の裏側における誘電体層108に接着されてもよい。金属箔306は、アルミ箔であってもよい。その箔を薄膜のキャリアとして使用することを容易にするために、シリコン薄膜302の外辺部を越えて金属箔306の拡張領域(処理領域)を延ばしてもよい。例示的実装では、金属箔306の組成物がAl−1%Si(99%のアルミニウム及び1%のシリコン)又はより一般的にはAl−x%Siであってもよく、x%は0%〜3%である。アルミ箔の他の組成物が使用されてもよい。例えば銀箔など、アルミニウム以外の金属箔を使用することもできる。
【0021】
一実施形態では、金属箔306をシリコン薄膜302の裏側に接着するために、接着層304が使用されてもよい。接着層304は、エポキシ、シリコン、エチレン酢酸ビニル(EVA)又は基板の裏側に塗布される他の封入材料の薄い層であってもよい。一実装では、接着層が、接着前に金属箔に予め塗布されたコーティングであってもよい。
【0022】
代替実施形態では、金属箔306が、金属箔306と基板の裏側との間の接触点のアレイを使用して、基板の裏側に接着されてもよい。接触点は、例えばパルスレーザを使用した金属箔の点融解によって形成されてもよい。この実施形態では、接着層304は不要である。接触点間の箔の下のエアギャップは、箔を平坦化することによって除去されてもよい。
【0023】
図4に示されるように、薄膜を支持するための組込み又は一体型キャリアとして箔を使用した場合、薄膜302の表側の表面402がテクスチャ加工及び不動態化されてもよい。表面のテクスチャ加工はシリコンの表面が光を吸収する能力を増大させるために機能し、表面の不動態化は表面における電荷の再結合を低減するために機能する。表面のテクスチャ加工は、例えば、湿式表面エッチングプロセスを使用して実現されてもよい。表面の不動態化は、化学的不動態化又は他の手段によって実現されてもよい。
【0024】
その後、ガラス封入プロセスがシリコン薄膜302の表側で実施されてもよい。
図5は、封入材料503を使用して表側に取り付けられた、結果として得られたガラス層502を示す。
【0025】
図6に示されるように、その後更なる工程が、シリコン薄膜302の裏側で実施されてもよい。これらの工程は、対応するP+領域104及びN+領域106にそれぞれ電気で連結するために、コンタクトホール内に金属接点604及び606を形成する工程を含む。金属接点604の第1のセットは金属箔304からP+領域104までであってもよく、金属接点606の第2のセットは金属箔304からN+領域106まで形成されてもよい。一実施形態では、金属接点604及び606が、レーザベースの接点形成プロセスを使用して形成されてもよい。このようなプロセスでは、製造される太陽電池の裏側全体にわたって、レーザスキャナがパルスレーザビームを制御可能に走査してもよい。パルスレーザビームは接着層304及び誘電体層108を貫通する複数の接触開口部を形成してもよく、複数の接触開口部は箔306から融解した金属によって充填されてもよい。
【0026】
更に、金属接点604の第1のセットを金属接点606の第2のセットから電気的に分離するために、指部分離608のパターンが箔エリア上に形成されてもよい。指部分離608は、複数の接点に至る箔の指部が互いに嵌合するように構成されてもよい。
【0027】
図7は、本発明の実施形態による薄いシリコン太陽電池を製造する例示的方法700のフロー図である。
図7の例示的方法700では、最初にブロック702で複数のエミッタ領域がシリコンウェハ上に形成されてもよい。シリコンウェハは数百マイクロメートルより大きいか等しい厚みであってもよく、厚いハンドルウェハと称されてもよい。複数のエミッタ領域は、Pドープ領域及びNドープ領域の両方を含み、
図1に示されるようにウェハの裏側に形成されてもよい。
【0028】
ブロック704では、薄いシリコン薄膜がシリコンウェハから劈開されてもよい。例えば、シリコン薄膜は10マイクロメートル〜100マイクロメートルの厚みであってもよい。一実装では、
図2に関連して前述したように、イオン注入及び剥離を使用した劈開が実施されてもよい。代替的に、ウェハの表側から犠牲層を剥離又はエッチングすることによって劈開が実施されてもよい。
【0029】
ブロック706では、
図3に関連して上述したように、金属箔がシリコン薄膜に接着されてもよい。具体的には、金属箔がシリコン薄膜の裏側表面に接着されてもよい。金属箔は、薄いシリコン薄膜に対する機械的な支持を提供するために、50マイクロメートル〜1ミリメートルの厚みであってもよい。箔を薄膜のキャリアとして使用することを容易にするために、シリコン薄膜の外辺部を越えて金属箔の拡張領域(処理領域)を延ばしてもよい。一実装では、金属箔とシリコン薄膜との間の複数の接点を加熱するためにレーザを使用することによって、接着が実現されてもよい。別の実装では、金属箔にコーティングされた薄い接着層を使用して、接着が実現されてもよい。
【0030】
シリコン薄膜の表側表面を処理することができるように、ブロック708で、金属箔がシリコン薄膜を処理するための一体型キャリアとして使用されてもよい。表側表面の処理は、
図4に関連して上述したように、テクスチャ加工及び不動態化を含んでもよい。表面のテクスチャ加工及び不動態化は、例えば、表側表面をエッチング及び不動態化するために薄膜を薬液に浸漬することによって実現されてもよい。引き続いて、金属箔援用シリコン薄膜の表側が、
図5に関連して上述したように、ガラスラミネーション法を使用して処理されてもよい。表側の処理に引き続いて、金属箔の拡張領域(処理領域)がトリミングされてもよい。
【0031】
ブロック710では、複数の接点が金属箔から複数のエミッタ領域まで形成されてもよい。
図6に関連して上述したように、形成された複数の接点は、複数のPドープエミッタ領域104に対する接点604の第1のセットと、複数のNドープエミッタ領域106に対する接点606の第2のセットを含んでもよい。更に、接点の第1のセット及び第2のセットを電気で分離するために、指部分離608のパターンが箔上に形成されてもよい。
【0032】
代替実施形態では、連続した金属箔層を裏側に接着する工程と、それに引き続いて、箔が裏側に取り付けられる間に指部分離パターンを作製する工程と、に代わって、金属箔がシリコン薄膜の裏側に塗布される前に、指部分離パターンが金属箔内に予め形成されてもよい。
図8は、本発明の実施形態による、そのように予めパターン成形された金属箔を使用する薄いシリコン太陽電池を製造する代替方法800のフロー図である。
【0033】
図8に示されるように、ブロック704で薄いシリコン薄膜がウェハから劈開された後、806では、予めパターン成形された金属箔がシリコン薄膜の裏側と副基板との間に挟まれてもよい。金属箔のパターン成形は、P型接点とN型接点との間の指部分離を実現する。副基板は、レーザ光線がそれを通って伝送され得るように、透明であってもよい。副基板は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)層又はフルオロポリマ層などの剛性ポリマ層であってもよい。その後、ブロック807では、複数の接点が金属箔と複数のエミッタ領域との間に形成されてもよい。複数の接点の形成は、例えば、複数の接触開口部を作製し、複数の接点箔から融解した金属をそれらの複数の開口部内に流し込むために、副基板を通って伝送されるパルスレーザを使用して実現されてもよい。その後、ブロック708では、
図7に関連して上述したように、表側表面が処理されてもよい。表側の処理に引き続いて、金属箔の拡張領域(処理領域)がトリミングされてもよい。
【0034】
図9は、
図8の方法800によって製造された、製造済みの薄いシリコン太陽電池の断面図である。
図9に示されるように、予めパターン成形された指部分離908が設けられた金属箔306は、副基板902とシリコン薄膜302の裏側との間に挟まれる。更に、P型接点904及びN型接点906が示されている。上述したように、これらの接点は、透過的な副基板902を通ってパルスレーザを伝送することによって形成されてもよい。
【0035】
図10は、本発明の実施形態による、シリコン薄膜の裏側を覆う金属箔の平面図である。
図10の図は、薄膜の裏側を覆う箔の部分1004と、薄膜の外辺部1002を越えて延びる箔の拡張領域1006と、を示す。拡張領域1006は、外辺部の1又は複数の辺を越えて延びていてもよく、外辺部の全ての辺を越えて延びている必要はないことに留意されたい。
【0036】
図11は、本発明の別の実施形態による、薄いシリコン太陽電池を製造する方法1100のフロー図である。
図11の例示的方法1100では、ブロック1102で、犠牲層がシリコン基板上に形成されてもよい。
【0037】
犠牲層は、バイアスがかかったHF溶液内で形成されるものなどの多孔質シリコンから構成されてもよい。代替的に、犠牲層は、例えばゲルマニウムドーピング及び/又は炭素ドーピングを有するシリコンであってもよく、これらのいずれもエピタキシャル成長又は化学気相成長(CVD)プロセスによって形成され得る。犠牲層は、約700マイクロメートルのオーダーの薄いものであってもよいが、本明細書に記載する機能を実施するために特定の実施形態に所望されるように、僅かに又は有意により厚い又は薄いものであってもよい。例えば、ある実施形態では、犠牲層は、10マイクロメートルの薄いものであってもよい。ある場合には、より薄い厚みも使用されてもよい。
【0038】
その後、ブロック1104では、シリコンのエピタキシャル層が犠牲層上に成長してもよい。ブロック1106では複数のエミッタ領域がエピタキシャル層内に形成されてもよく、ブロック1108では誘電体層が複数のエミッタ領域上に形成されてもよい。
【0039】
その後、ブロック1110では、金属箔が複数のエミッタ領域上に接着されてもよい。引き続いて、ブロック1112では、エピタキシャルリフトオフが選択湿式エッチング又はさもなければ犠牲層の除去によって実施されてもよい。リフトオフの後、エピタキシャル層は太陽電池のシリコン薄膜となる。プロセスのこの時点における構造体の断面図は、
図3に示された図に対応している。本明細書で開示されているように、金属箔は、構造的支持及び一体型キャリア機能をシリコン薄膜に提供する。
【0040】
引き続いて、ブロック708では、表側表面が処理されてもよい。その後、ブロック710では、金属箔と複数のエミッタ領域との間に複数の接点が形成されてもよい。すなわち、ブロック1110でのエピタキシャルリフトオフの後、
図4〜
図6に関連して上述したように、処理が続けられてもよい。
【0041】
ここまで、金属箔を使用して薄いシリコン太陽電池を形成するための技法を開示した。有利なことに、金属箔は、それなしでは脆弱なシリコン薄膜を処理するための組込みキャリアとして、この薄膜の表側の処理中に使用されてもよい。引き続いて、金属箔は、P型エミッタの接点及びN型エミッタの接点及び金属指部を薄膜の裏側に形成するために再利用されてもよい。
【0042】
本発明の具体的な実施形態を提供したが、これらの実施形態は説明を目的としたものであり、限定的なものでないことは理解されよう。多くの更なる実施形態が、本開示を読む当業者には明らかとなろう。
[項目1]
太陽電池を製造する方法であって、
シリコン薄膜の裏側がP型ドープ領域及びN型ドープ領域を含む、前記シリコン薄膜をシリコン基板から劈開する工程と、
前記シリコン薄膜の前記裏側に金属箔を取り付ける工程と
を備える、方法。
[項目2]
前記金属箔の拡張領域が前記シリコン薄膜の外辺部を越えて延び、
前記金属箔を、前記シリコン薄膜を処理するための一体型キャリアとして使用する工程を更に備える、項目1に記載の方法。
[項目3]
前記金属箔と前記P型ドープ領域との間に接点の第1のセットを形成する工程と、
前記金属箔と前記N型ドープ領域との間に接点の第2のセットを形成する工程と、
を更に備える、項目1に記載の方法。
[項目4]
複数の前記接点がパルスレーザビームを使用して形成される、項目3に記載の方法。
[項目5]
前記金属箔内に指部分離パターンを形成する工程を更に備える、項目1に記載の方法。
[項目6]
前記裏側への取り付けの前に、前記指部分離パターンが前記金属箔内に予め形成される、項目5に記載の方法。
[項目7]
前記裏側への取り付けの前に前記金属箔を副基板に取り付ける工程を更に備え、
前記副基板は、レーザ光線に対して透過的である、項目6に記載の方法。
[項目8]
前記金属箔が接着層を使用して前記裏側に取り付けられる、項目1に記載の方法。
[項目9]
前記金属箔と前記シリコン基板の前記裏側との間の接触点のアレイにおいて前記金属箔が前記裏側に取り付けられる、項目1に記載の方法。
[項目9]
前記接触点が前記金属箔の点融解によって形成される、項目8に記載の方法。
[項目10]
前記金属箔がアルミニウムを含む、項目1に記載の方法。
[項目11]
前記金属箔を、前記シリコン薄膜を処理するためのキャリアとして使用しながら、前記シリコン薄膜の表側をテクスチャ加工及び不動態化する工程と、
前記シリコン薄膜の前記表側を封入する工程と、
を更に備える、項目1に記載の方法。
[項目12]
シリコン薄膜と、
前記シリコン薄膜の裏側のP型ドープ領域及びN型ドープ領域と、
前記シリコン薄膜の前記裏側に接着された金属箔と、
前記金属箔と前記P型ドープ領域との間の接点の第1のセットと、
前記金属箔と前記N型ドープ領域との間の接点の第2のセットと、
を備える、太陽電池。
[項目13]
前記シリコン薄膜が10〜100マイクロメートルの範囲内の厚みを有する、項目12に記載の太陽電池。
[項目14]
前記シリコン薄膜の前記裏側の前記金属箔と前記P型ドープ領域及び前記N型ドープ領域との間の接着層を更に備え、複数の前記接点が前記接着層内の複数の開口部を通過する、項目12に記載の太陽電池。
[項目15]
前記シリコン薄膜の前記裏側の前記金属箔と前記P型ドープ領域及び前記N型ドープ領域との間の複数の接触点を更に備える、項目12に記載の太陽電池。
[項目16]
前記シリコン薄膜の表側における、テクスチャ加工及び不動態化された表面と、
前記シリコン薄膜の前記表側を覆うガラス層と、
前記シリコン薄膜の前記表側と前記ガラス層との間の封入材料と、
を更に備える、項目12に記載の太陽電池。
[項目17]
前記金属箔がアルミニウムを含む、項目12に記載の太陽電池。
[項目18]
前記金属箔がAl−x%Siを含み、x%は0パーセント〜3パーセントの範囲内である、項目17に記載の太陽電池。
[項目19]
シリコン基板の裏側がP型ドープ領域及びN型ドープ領域を含む、金属箔を前記シリコン基板の前記裏側に接着する工程と、
シリコン薄膜を前記シリコン基板の前記裏側から分離する工程と、
前記シリコン薄膜の表側の処理中に前記シリコン薄膜を処理するための組込みキャリアとして前記金属箔を使用する工程と、
を備える、太陽電池の製造方法。
[項目20]
前記シリコン薄膜を分離する工程がエピタキシャルリフトオフによって実施される、項目19に記載の方法。
[項目21]
前記金属箔と前記P型ドープ領域との間に接点の第1のセットを形成する工程と、
前記金属箔と前記N型ドープ領域との間に接点の第2のセットを形成する工程と、
金属接点の前記第1のセットと金属接点の前記第2のセットとの間に複数の分離を形成する工程と、
を更に備える、項目19に記載の方法。