(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6612909
(24)【登録日】2019年11月8日
(45)【発行日】2019年11月27日
(54)【発明の名称】組織を骨に対して取付ける多重縫合糸式無結節アンカ及び関連方法
(51)【国際特許分類】
A61B 17/68 20060101AFI20191118BHJP
A61B 17/82 20060101ALI20191118BHJP
A61B 17/88 20060101ALI20191118BHJP
A61B 17/04 20060101ALI20191118BHJP
【FI】
A61B17/68
A61B17/82
A61B17/88
A61B17/04
【請求項の数】14
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2018-18345(P2018-18345)
(22)【出願日】2018年2月5日
(62)【分割の表示】特願2015-504617(P2015-504617)の分割
【原出願日】2013年3月25日
(65)【公開番号】特開2018-65020(P2018-65020A)
(43)【公開日】2018年4月26日
【審査請求日】2018年3月7日
(31)【優先権主張番号】13/441,055
(32)【優先日】2012年4月6日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505446116
【氏名又は名称】アースロケア コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】フランシス ビジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ジョージ ダブリュ.ホワイト
【審査官】
中村 一雄
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−177286(JP,A)
【文献】
特表2005−504555(JP,A)
【文献】
特表2001−514545(JP,A)
【文献】
特表平10−509612(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0248068(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0051836(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/68
A61B 17/82
A61B 17/88
A61B 17/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟組織を骨に対して少なくとも一本の縫合糸により無結節で固着する縫合糸用アンカであって、
当該縫合糸用アンカは、前記縫合糸の自由肢部に対して張力を付与することにより前記軟組織は当該縫合糸用アンカに向けて引き寄せられ得るという第1未展開形態、及び、当該縫合糸用アンカは前記骨内に固定され且つ前記縫合糸は当該縫合糸用アンカに繋止されることにより前記軟組織を前記骨に対して固着するという第2展開形態を備え、
当該縫合糸用アンカは、
アンカ本体であって、
末端先端であって、該末端先端を通して配置された縫合糸用孔を有する末端先端と、
挿入デバイスのシャフト末端に選択的に結合されるように構成された接続部分と、
前記末端先端から基端方向に延在する複数の撓曲区画とを有し、
前記撓曲区画の内側面がキャビティを画成し、該キャビティは、前記縫合糸用孔の全体から基端方向に配置された末端であって、中実断面を有する中間部分により前記縫合糸用孔から基端方向に離間される末端を有し、該キャビティは、前記撓曲区画が未拡開である前記第1未展開形態及び前記撓曲区画が外方に拡開された前記第2展開形態の両方のときに前記末端で終端する、
というアンカ本体と、
骨を係合するために前記撓曲区画を撓曲し、骨壁部と撓曲区画の外側面との間で縫合糸を圧縮することで前記縫合糸を前記縫合糸用アンカに繋止するように、前記アンカ本体と協働するように構成されたスリーブ部材と、
を備える、縫合糸用アンカ。
【請求項2】
前記複数の撓曲区画は、複数の異なるサイズに拡開可能である、請求項1に記載の縫合糸用アンカ。
【請求項3】
前記複数の撓曲区画は、前記スリーブ部材が前記キャビティ内へと付勢されたときに前記アンカ本体から外方に撓曲する、請求項1に記載の縫合糸用アンカ。
【請求項4】
前記複数の撓曲区画は少なくとも3つの個別的な翼部を備える、請求項1に記載の縫合糸用アンカ。
【請求項5】
前記末端先端は、テーパ付けされた先端を有する、請求項1に記載の縫合糸用アンカ。
【請求項6】
前記アンカ本体は生体適合性ポリマである、請求項1に記載の縫合糸用アンカ。
【請求項7】
前記スリーブ部材及び前記複数の撓曲区画の少なくとも一つは、外側隆起部を有する、請求項1に記載の縫合糸用アンカ。
【請求項8】
前記キャビティは環状空間である、請求項1に記載の縫合糸用アンカ。
【請求項9】
所定長さの縫合糸を骨に関して投錨する、無結節で縫合糸を投錨するシステムであって、
取手と、該取手から末端方向に延在する長寸の堅固なシャフトとを備えるアンカ挿入器具であって、前記シャフトは、螺条付き部分を画成する末端区画を備えるというアンカ挿入器具と、
前記長寸の堅固なシャフトの前記末端区画に取り外し可能に接続されたアンカ本体であって、器具螺条付き部分と選択的に協働する内部螺条付き部分と、末端先端であって該末端先端の厚みを通す開孔を有する末端先端とを有し、さらに、キャビティを画成する内側面を有する撓曲可能な骨投錨構造を有し、該キャビティは、前記開孔の全体から基端方向に配置された末端であって、中実断面を有する中間部分により前記開孔から基端方向に離間される末端を有する、アンカ本体と、
前記アンカ本体の基端方向にて前記アンカ挿入器具の前記シャフトの末端区画上に摺動可能に配設され、前記骨投錨構造を径方向に撓曲するに十分なサイズ及び形状の外径を有するスリーブ部材であって、骨を係合するために前記骨投錨構造を撓曲し、骨壁部と骨投錨構造の外側面との間で縫合糸を圧縮することで前記縫合糸を前記アンカ本体に繋止するように、前記アンカ本体と協働するように構成されたスリーブ部材と、
を備える、無結節で縫合糸を投錨するシステム。
【請求項10】
スネアの末端部分が前記所定長さの縫合糸に対して固着されたときに、該スネアを引き戻しは、前記アンカ本体の開孔と前記アンカ挿入器具の末端部分とを通して前記所定長さの縫合糸を引き寄せる如く、前記アンカ挿入器具の少なくとも一部分と前記アンカ本体の前記開孔とを通して延在するスネアを更に備える、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記末端先端は、テーパ付けされた先端を有する、請求項9に記載のシステム。
【請求項12】
前記キャビティは環状空間である、請求項9に記載のシステム。
【請求項13】
前記アンカ本体の接続部分は、アンカ挿入器具に接続するための内部螺条付き部分をさらに有し、該内部螺条付き部分は、協働する挿入器具螺条付き部分と前記内部螺条付き部分との間における十分な応力の付与時に、前記螺条付き部分の一方あるいは両方を取り除き、また、所定張力で前記内部螺条付き部分の犠牲区画を破断するように、前記アンカ本体から分離されるように適合される、請求項1に記載の縫合糸用アンカ。
【請求項14】
前記螺条付き部分の少なくとも一つは、前記アンカ挿入器具から前記アンカ本体を選択的に分離するように十分な応力の付与時に、取り除かれるように適合される、請求項9に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概略的には、軟組織を骨に対して取付ける方法及び装置に関し、更に詳細には、靱帯または腱などの結合組織を骨に対して固着するアンカ及び方法に関する。本発明は、最小侵襲処置において軟組織を再取付けするための関節鏡手術の技術に対して特定の実用性を有する。
【背景技術】
【0002】
観血手術による修復の欠点に対処すべく、低侵襲性の関節鏡技術が開発され続けている。小寸のトロカールの入口を通して作業すると、医師により引き起こされる外傷は、観血処置よりも少なくされ得る。しかし、低侵襲性の技術は独特の難題を呈する、と言うのも、医師がツール及びインプラントを操作するためのスペースは少ないからである。
【0003】
残念乍ら、関節鏡による組織修復を完全に容易化するために必要とされる技術レベルは、非常に高い。体内縫合は、扱いにくく、時間が掛かると共に、最も単純な縫い付けパターンのみが利用され得る。体外での結節作成は幾分かは困難さが少ないが、各結節の緊密さは判断が困難であり、且つ、張力は後時には調節され得ない。同様に、骨における縫合糸固定点を提供するために骨アンカを使用することから、該アンカに対して軟組織を固着する各結節は、必然的に、軟組織の頂部上に結節束を残置する。一定の処置の場合、上記組織に残置された結節束は、患者が関節を動かすときに術後的に該患者により感知され得る。多くの場合、関節鏡的に作成される結節(knot)は、達成することが困難であり、調節ができず、且つ、肩関節の最適では無い領域に配置される。また、結節が一旦固定されたなら、縫合糸張力は測定して調節することも不可能である。
【0004】
現在の関節鏡的な修復技術に伴う別の相当な困難性は、現在において入手可能な縫合糸アンカに関する欠点である。今日にて入手可能な骨アンカにおける縫合糸用鳩目であって、針の目の様に細線もしくは縫合糸が挿通されるという縫合糸用鳩目は、半径が小さく、且つ、アンカが高張力荷重下に置かれたとき、該鳩目において縫合糸が破損することがある。
【0005】
軟組織を骨に対して取付けるために整形外科医により使用されるべく利用可能な種々の骨アンカ設計態様が在る。各設計態様における基本的な共通性は、それらは骨において縫合糸に対する取付け箇所を作成し、該縫合糸はその後、軟組織を貫通通過され且つ結着されることで該軟組織を固定化し得る、ということである。この取付け箇所は、種々の手段により達成され得る。斯かる取付け箇所を作成するためにネジが知られているが、経時的に緩むことから、それらを後時に除去する第2の処置を必要とするというネジの傾向、及び、比較的に平坦な取付け幾何学形状を要するというネジの要件などの、多数の不都合が問題である。
【0006】
別の手法は、皮質骨(骨の強靱で稠密な外側層)及び海綿状骨(稠密さが少なく、幾分か血管的である骨内部)における密度の差を利用することである。皮質骨は、稠密さが少ない海綿状骨上の一種の硬質外殻を呈する。上記アンカの縦横比は、該アンカが典型的に長軸及び短軸を有すると共に、縫合糸が事前挿通される如きである。これらの設計態様は、アンカが貫通挿入される皮質骨内の孔を使用する。該孔は、アンカの短軸が該孔の直径を貫通して嵌合し、該アンカの長軸は、当該穿孔された孔の軸心と平行である如く、穿孔される。海綿状骨内への布置の後、上記アンカは、上記長軸が上記孔の軸心に対して直交して整列される様に、90°回転される。上記縫合糸は引き寄せられると共に、上記アンカは、骨の皮質層の内側面に当接して着座される。上記アンカの長軸の寸法及び上記孔直径の寸法の不整合の故に、上記アンカは上記孔から基端方向には引き戻され得ないことから、引き抜きに対する耐性が提供される。しかし依然として、これらのアンカは、縫合糸を抑圧する鳩目の設計態様に関する上述の問題が在る。
【0007】
更なる他の先行技術の手法は、“ポップ・リベット(pop rivet)”の手法を使用することを試みている。この形式の設計態様は、皮質骨における孔であって、分割シャフトが挿入されるという孔を必要とする。上記分割シャフトは中空であり、且つ、該シャフトは、その内側管孔内へと到達するテーパ付きプラグを有する。該テーパ付きプラグは上記シャフトの頂部を貫通して外方に延出し、且つ、上記プラグが上記内側管孔内へと引き戻されたとき、該テーパ付き部分は上記分割シャフトを外方に拡開させ、上記デバイスを骨内に繋止する。
【0008】
先行技術においては、軟組織を骨に対して固着する他の方法が知られているが、肩関節の嚢領域に縫合糸以外のものを残置することを医師は嫌うので、該方法は、現在においては、肩関節の修復処置に対して有用とな思われない。その理由は、運動の間にステープル、鋲などは、可能的に外方落下して損傷を引き起こすからである。この制約の結果として、上記取付け箇所は多くの場合、理想的ではない位置に配置されねばならない。同様に、鋲またはステープルは、軟組織における相当の孔を必要とし、医師は骨に対して軟組織を正確に配置することが困難とされる。
【0009】
先に論じられた如く、上述の縫合糸に対するアンカ箇所のいずれも、所定長の縫合糸が、鳩目の様式でアンカを貫通通過してから、軟組織を貫通してループ形成され、且つ、結着されることで、固着を完成することを必要とする。しかし、内視鏡による視覚化でトロカールを通して作業しながら、軟組織内に縫合糸を載置すること、及び、結節を作成することは、いずれも相当の技術が必要とされる。
【0010】
現在のアンカ設計態様に存在する問題の幾つかを解決する試みは在る。斯かる手法のひとつは、ピアスに対して発行された米国特許第5,324,308号に開示されている。この特許においては、傾斜された夫々の協働面を有する基端及び末端の楔構成要素を取入れた縫合糸アンカが開示されている。上記末端楔構成要素は、その基部にて、所定長の縫合糸が挿通され得る2つの挿通孔を有している。上記アセンブリは、骨に穿孔された孔内に載置され得ると共に、縫合糸に対して張力が付与されたとき、末端楔ブロックは基端楔ブロックに当接して乗り上げ、上記穿孔された孔内における投影面積を拡大すると共に、上記アンカを骨内に繋止する。この手法は、縫合糸に対するアンカ箇所を生成する有用な方法であるが、いずれにしても、縫合糸に結節を作成して軟組織を骨に対して固定する問題に対処していない。
【0011】
内視鏡の環境において縫合糸を軟組織内に載置して結節を作成することの問題は公知であり、該問題に対処し且つ縫合糸固定のプロセスを簡素化する試みは在る。斯かる手法のひとつは、ゴールズ等に対して発行された米国特許第5,383,905号に開示されている。該特許は、身体組織の回りに縫合糸ループを固着するデバイスであって、長手ボアを有するビーズ部材と、該ビーズ部材の上記ボア内に摺動可能に挿入されるべく適合化されたアンカ部材とを含むというデバイスを記述している。上記アンカ部材は、軸心方向に圧縮可能な少なくとも2つの区画であって、縫合糸ループの2つの端部を受容する通路を画成するという区画を含む。上記ビーズ部材のボア内への上記アンカ部材の挿入時に、上記軸心方向区画は径方向内側に畳み込まれ、上記通路内に受容された縫合糸の各端部を確実に楔止めする。
【0012】
ゴールズ等の特許の手法は、縫合糸を所定位置に繋止するために楔形状部材を利用するが、縫合糸の各脚部は上記ビーズのボアを、基端から末端への方向において、一度のみ貫通通過すると共に、該脚部は、上記アンカ部材の長手ボア上に干渉作用を生成する上記楔の畳み込みにより繋止される。また、この設計態様においては、縫合糸を骨に対して取付ける措置は何ら行われていない。上記設計態様は基本的に、軟組織の結紮もしくは接近に対して使用される如く、縫合糸ループの繋止に適している。
【0013】
骨に対する取付けを取入れた手法は、グリーンフィールドに対する米国特許第5,584,835号に記述されている。この特許においては、軟組織を骨に対して取付ける二部材式デバイスが示される。骨における孔内へと、骨アンカ部分が螺入され、且つ、該部分は、縫合糸を受容すべく適合化されたプラグを受け入れるべく配設される。一実施形態において、上記縫合糸用プラグは、該プラグが上記骨アンカ部分における該プラグの受容器内へと付勢されたときに、該プラグにおける鳩目を貫通通過された縫合糸が、上記アンカ部分の壁部と該プラグ部分の本体との間に摩擦により捕捉される様に、構成される。
【0014】
この手法は、骨に対する縫合糸の取付けにおいて結節に対する必要性を排除する上では一定の利点が在るが、縫合糸の張力を適切に設定し得ることによる問題が存在する。ユーザは、適切な張力が達成されるまで縫合糸を引き寄せ、次に、上記プラグ部分を上記骨アンカ部分内に設定する必要がある。この動作は上記縫合糸における張力を増大し、且つ、軟組織を絞めるか、当該材料の引張強度を超えて縫合糸の張力を増大させて該縫合糸を破断することがある。これに加え、縫合糸を所定位置に挟持または繋止するためにこのアンカ設計態様により提供される最小限の表面積は、負荷に抗する縫合糸の能力が阻害される如く、縫合糸を摩耗もしくは破損する。
【0015】
ゴーブル等に対して発行された米国特許第5,702,397号においては、骨に対する取付けを取入れ且つ結節の作成を排除した開示内容が示される。特に、該特許の
図23には一実施形態が示されると共に、該実施形態は、内側キャビティを備えた螺条付き本体を有する骨アンカを含んでいる。上記キャビティは、上記螺条付き本体の一端へと開口し、且つ、該キャビティは、上記螺条付き本体の他端まで延在する2本の内孔を結合している。上記キャビティ内には、回転軸上に回転支承されたギヤが配設される。所定長の縫合糸が、一方の内孔を通り、上記ギヤの回りを通り、且つ、他方の内孔を通り抜けるべく、挿通される。上記キャビティ内にはボールが配設され、テーパ付けされたレースに当接して乗り上げて、上記縫合糸を所定位置に繋止する。該特許の開示内容から明確でないのは、縫合糸における張力として示された力Dが、上記ボールを上記レースへと如何にして繋止するかである。この実施形態は、縫合糸を骨に固定するために盲孔において使用されるべく適合化された自己繋止的なアンカであることを企図しているが、示された構成は、複雑であり、且つ、縫合糸を確実に定着させるに適している様には見えない。
【0016】
マクデビット等による国際特許出願公開公報第WO01/10312号もまた、軟組織を骨に対して取付ける自己繋止的な縫合糸アンカを記述している。このデバイスにおいて、組織用アンカは、スレッショルド力よりも大きな付与力は当該フィラメントを長手方向に移動させる一方、スレッショルド力よりも小さな付与力は当該フィラメントを移動させない様に、該アンカ内にフィラメントを保持している。
【0017】
フォレスター等による米国特許出願公開公報第2008/0051836号は、外側の堅固な投錨構造(anchoring structure)と内側の管孔とを有する無結節式の骨アンカ本体を記述している。上記管孔は、繋止プラグを受容すべく、且つ、自身内に載置された縫合糸を繋止すべく、寸法設定される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
上述された多数の縫合糸アンカは、静的もしくは固定的に有棘状とされたアンカ設計態様を有している。すなわち、投錨構造の外径は、骨質に関わらず、不変(すなわち一定)である。このことは、骨が比較的に軟質であるときには不都合である。上記アンカはまた、抜け出す傾向を有し得る。
【0019】
上記に関わらず、軟組織を骨に対して修復もしくは固定する新たな手法が望まれる。特に、縫合糸アンカを皮質骨表面下に埋設し、多重縫合糸を利用し、且つ、無結節である、という新たな手法が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0020】
軟組織を骨に対して少なくとも一本の縫合糸により固着する縫合糸用アンカは、上記縫合糸の自由肢部に対して張力を付与することにより上記組織は当該縫合糸用アンカに向けて引き寄せられ得るという第1の未展開形態、及び、当該縫合糸用アンカは上記骨内に固定され且つ上記縫合糸は当該縫合糸用アンカ内に繋止されることにより上記組織を上記骨に対して固着するという第2の展開形態を備える。上記縫合糸用アンカは、基端区画と、長寸中間区画と、末端区画とを有するアンカ本体と;少なくとも部分的に上記長寸中間区画の回りに配設された骨繋止部材であって、当該骨繋止部材の内側面と上記長寸中間区画の外側面との間にキャビティを形成するという骨繋止部材と;を含む。上記縫合糸用アンカはまた、上記アンカ本体及び上記骨繋止部材と移動可能に協働して上記長寸中間区画に沿い上記キャビティ内へと摺動するスリーブ部材であって、これにより、上記骨繋止部材を拡開させ、且つ、上記少なくとも一本の縫合糸を上記長寸中間区画の上記外側面と当該スリーブ部材の内側面との間に圧縮するというスリーブ部材も含む。上記キャビティの形状は変化し得る。一実施形態において、上記キャビティは環状形状を有する。
【0021】
別実施形態において、上記骨繋止部材は、上記スリーブ部材が上記キャビティ内へと付勢されたときに上記アンカ本体から外方に撓曲する複数の撓曲区画を備える。上記複数の撓曲区画は、複数の翼部を備え得る。一実施形態において、上記複数の翼部は少なくとも3つの個別的な翼部を備える。
【0022】
別実施形態において、上記縫合糸用アンカは骨穿刺先端を備える。上記骨穿刺先端は基端基部から末端までテーパ付けされ得る。上記基部は少なくとも4mmの外径を有し得る。
【0023】
別実施形態において、上記縫合糸アンカ本体は、該アンカ本体の一側から該アンカ本体の他側まで上記縫合糸を案内する縫合糸案内部を備える。上記縫合糸案内部は、上記アンカ本体の上記末端区画を貫通して延在する開孔であり得る。
【0024】
別実施形態において、上記縫合糸用アンカは、上記骨に係合して該アンカを上記骨内に保持する隆起部を備える。各隆起部は、上記骨繋止部材及び/または上記スリーブ上に載置され得る。付加的に、上記アンカ本体の末端区画は、隆起部を備え得る。
【0025】
上記縫合糸アンカは、種々の材料で形成され得る。一実施形態において、上記縫合糸用アンカは生体適合性ポリマで形成される。
【0026】
別実施形態において、所定長さの縫合糸を骨に関して投錨する、無結節で縫合糸を投錨するシステムは:取手と、該取手から末端方向に延在する長寸の堅固なシャフトとを備えるアンカ挿入器具と;上記器具の長寸の堅固なシャフトに対して取り外し可能に接続されたアンカ本体と;を備える。上記アンカ本体は、該アンカ本体の第1側面から該アンカ本体の反対側まで上記縫合糸が通過することを許容する縫合糸担持部分を備える。上記投錨システムは、上記アンカ本体上に配設された骨繋止部材を更に備える。各実施形態において、上記骨繋止部材は、上記アンカ本体の外側面と当該骨投錨構造の内側面との間にキャビティが画成される如く、基部から延在し且つ上記アンカ本体の上記中間区画からは径方向に離間された骨投錨構造を備える。上記キャビティは、上記所定長の縫合糸が該キャビティを通して上記縫合糸担持部分まで引き寄せられることを許容するに十分なサイズである。上記投錨システムはまた、上記アンカ本体の基端方向にて上記器具の上記シャフト末端区画上に摺動可能に配設されたスリーブ部材も含んでいる。該スリーブ部材は、上記シャフト末端区画に沿い且つ上記キャビティ内へと押し進められたときに上記投錨構造を径方向に拡開するに十分なサイズ及び形状の外径を有し、且つ、該スリーブ部材は、所定長の縫合糸を上記アンカ本体と該スリーブの内側面との間に圧縮するに十分なサイズ及び形状の内径を有する。
【0027】
別実施形態において上記システムは、当該スネアの末端部分が上記縫合糸に対して固着されたときに、該スネアを引き戻すと、上記縫合糸は、上記アンカ本体の上記縫合糸担持部分と上記挿入器具の上記末端部分とを貫通して引き寄せられる如く、上記挿入器具の少なくとも一部分と上記アンカ本体の上記縫合糸担持部分とを貫通して延在するスネアを備える。
【0028】
別実施形態において、上記アンカの上記末端区画は、尖鋭状の先端を備える。
【0029】
別実施形態において、上記システムは、上記器具シャフトに沿った張力脆弱区画または加工ノッチであって、該シャフトに対する基端方向の所定張力の付与時に該シャフトが上記アンカ本体の基端から分離することを許容するという張力脆弱区画または加工ノッチを含む。
【0030】
別実施形態において、軟組織を骨に対して無結節で固着する方法は、組織に対して少なくとも一本の縫合糸を縫い付ける段階と、上記少なくとも一本の縫合糸を、挿入器具の端部に対して取り外し可能に接続されているアンカ・アセンブリに装填する段階と、上記アンカ・アセンブリを上記骨内へと操作する段階と、上記縫合糸の自由端部を張設して上記組織を上記アンカ・アセンブリに接近させる段階と、上記アンカ・アセンブリ内へとスリーブ部材を移動し、上記アンカ・アセンブリの骨繋止構造を展開させ且つ上記縫合糸を圧縮する段階と、上記挿入器具を引き戻し、上記骨内に埋設された上記アンカ・アセンブリと、上記骨に対して固着された上記組織とを残置する段階と、を備える。
【0031】
別実施形態において、上記少なくとも一本の縫合糸を上記アンカ・アセンブリに装填する段階は、上記アンカ・アセンブリに複数本の縫合糸を装填する段階を備える。
【0032】
別実施形態において、上記アンカ・アセンブリに装填する段階は、上記各縫合糸を捕捉することにより実施される。上記捕捉段階は、上記シャフトの上記末端区画に取り外し可能に固着されたスネア・デバイスのワイヤ・ループ内に上記所定長さの縫合糸を挿入し、且つ、スネア取手をたぐり寄せて各縫合糸を上記アンカ・アセンブリ及び上記器具を通して引き寄せることにより実施され得る。
【0033】
別実施形態において、上記アンカ及び縫合糸を骨内へと操作する段階は、上記挿入器具の上記基端を打突する段階を備える。同様に、各実施形態において、上記張設段階は、上記操作段階に先立ち実施される。上記張設段階は半自動的に実施され得る。
【0034】
別実施形態において、上記組織は回旋筋腱板腱であり且つ上記骨は上腕骨骨頭である。
【0035】
別実施形態において、上記移動段階は、縫合糸の第1区画を上記アンカ本体と上記スリーブ部材との間に、且つ、上記縫合糸の第2区画を骨表面と上記骨繋止構造の外側部との間に圧縮する段階を含む。上記移動段階は、上記アンカ本体上の停止部が更なる移動を阻止するまで、上記スリーブを上記キャビティ内に押し進める段階を含み得る。
【0036】
別実施形態において、上記方法は、上記アンカ・アセンブリを所定傾斜角度まで傾倒させる段階を備える。上記傾倒段階は、上記縫合糸の組織側に対して張力を付与することにより実施され得る。
【0037】
本発明は、その付加的な特徴及び利点と共に、添付の例証的な図面と併せて以下の説明を参照することにより最適に理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1A】未展開形態における縫合糸アンカの斜視図である。
【
図1B】展開形態における
図1Aに示された縫合糸アンカの斜視図である。
【
図3A】縫合糸アンカの本体構成要素の基端側の端面図である。
【
図3B】
図3Aの3B−3B線に沿い破断された本体構成要素の断面図である。
【
図4A】縫合糸アンカのスリーブ構成要素の側面図である。
【
図4B】
図4Aの4B−4B線に沿い破断されたスリーブ構成要素の断面図である。
【
図4C】夫々、
図4Aに示されたスリーブ構成要素の基端側の端面図及び末端側の端面図である。
【
図4D】夫々、
図4Aに示されたスリーブ構成要素の基端側の端面図及び末端側の端面図である。
【
図5A】縫合糸アンカの骨繋止要素の斜視図である。
【
図5C】
図5Bの5C−5C線に沿い破断された骨繋止要素の断面図である。
【
図6】縫合糸アンカと、それに対して接続された多重縫合糸とを含む縫合糸アンカ・システムの概略図である。
【
図7】夫々、骨内に挿入されて未展開形態及び展開形態とされた縫合糸アンカの部分的断面図である。
【
図8】夫々、骨内に挿入されて未展開形態及び展開形態とされた縫合糸アンカの部分的断面図である。
【
図9】展開形態で骨内に挿入されると共に、挿入器具は引き戻されたという縫合糸アンカの部分的断面図である。
【
図10A】縫合糸アンカ・アセンブリの別のプラグ構成要素の種々の概略図である。
【
図10B】縫合糸アンカ・アセンブリの別のプラグ構成要素の種々の概略図である。
【
図10C】縫合糸アンカ・アセンブリの別のプラグ構成要素の種々の概略図である。
【
図10D】縫合糸アンカ・アセンブリの別のプラグ構成要素の種々の概略図である。
【
図11A】夫々、第1の未展開形態から、中間形態、及び、展開もしくは繋止形態へと移行する別の縫合糸アンカの斜視図である。
【
図11B】夫々、第1の未展開形態から、中間形態、及び、展開もしくは繋止形態へと移行する別の縫合糸アンカの斜視図である。
【
図11C】夫々、第1の未展開形態から、中間形態、及び、展開もしくは繋止形態へと移行する別の縫合糸アンカの斜視図である。
【
図12】縫合糸アンカを展開する各ステップのフローチャートである。
【
図13A】夫々、骨内での整列位置及びオフセット位置における縫合糸アンカの概略図である。
【
図13B】夫々、骨内での整列位置及びオフセット位置における縫合糸アンカの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明が詳細に記述される前に、本発明は本明細書中に示された特定の変更例に制限されないことは理解されるべきである、と言うのも、本発明の精神及び有効範囲から逸脱せずに、本発明に対しては種々の変更もしくは改変が為され得ると共に、均等物が代用され得るからである。本開示内容の読破時に当業者であれば明らかである様に、本明細書中に記述かつ図示された個々の実施形態の各々は、本発明の有効範囲もしくは精神から逸脱せずに、他の幾つかの実施形態の内の任意の実施形態の特徴から容易に分離され又は該特徴と組み合わされ得る個別的な構成要素及び特徴を有している。これに加え、本発明の単一もしくは複数の目的、精神、または、有効範囲に対し、特定の状況、材料、物質の組成、プロセス、単一もしくは複数のプロセス作用もしくは段階を適合化させるべく、多くの改変が為され得る。斯かる改変の全ては、本明細書中で構成された各請求項の有効範囲内であることが意図される。
【0040】
本明細書中に記述された方法は、記述された各事象の論理的に可能な任意の順序、並びに、各事象の記述順序で実施され得る。更に、値の範囲が提供されたとき、その範囲の上限値及び下限値の間の全ての介在値、及び、その述べられた範囲における他の一切の述べられたもしくは介在する値は、本発明に包含されることは理解される。同様に、記述された本発明の変更例の一切の選択的特徴は、個別的に、または、本明細書中に記述された各特徴の任意のひとつ以上の特徴と組み合わせて、示され且つ権利請求され得ることが企図される。
【0041】
(例えば、公報、特許、特許出願、及び、対応機器などの)本明細書中で言及された全ての既存主題は、当該主題が本発明の主題と矛盾し得る場合を除き(その場合には、本明細書中に存在する主題が優先するものとする)、該既存主題は全体的に、参照したことにより本明細書中に援用される。
【0042】
単数の対象物に対する参照は、同一の複数の対象物が存在する可能性を包含する。更に詳細には、本明細書中及び添付の各請求項において用いられる如く、“ひとつの(a)”、“ひとつの(an)”、“前記(said)”、及び、“上記(the)”という単数形は、前後関係が明確に別様に示唆するのでなければ、複数形の参照を包含する。更に、各請求項は任意の選択的な要素を排除すべく作成され得ることを銘記されたい。故に、この説明は、請求項の要素の記述、または、“否定的”限定の使用に関し、“単独で”、“のみ”などの如き排他的な用語の使用に対する事前の基準の役割を果たすことが意図される。また、別様に定義されるのでなければ、本明細書中で使用される全ての技術的及び科学的な用語は、本発明に対する当業者により通常的に理解されるのと同一の意味を有することも理解されるべきである。
【0043】
本発明は、組織の無結節縫合に対して改良された方法及びデバイスを提供する。本明細書中で論じられる変更例は、縫合糸の使用を論じているが、“縫合糸(suture)”という語句は、当該材料が、本明細書中に記述されるアンカの他の部分と共に使用され得る限りにおいて、創傷を閉じるべくまたは組織を接続すべく使用される(例えば、腸線、糸材、ワイヤなどの)任意の材料片を包含し得る。従って、本明細書中に記述される縫合糸は、ポリマ製、金属製、または、他の種類の縫合糸を包含し得る。
【0044】
例示目的で、本明細書中で論じられる各例は、軟組織を、骨構造、すなわち上腕骨骨頭に対して縫合する投錨システムの用法を示している。本発明は特に、上腕骨骨頭の外側部に対して回旋筋腱板腱を再取付けすることにより、回旋筋腱板の損傷を修復するために良く適している。本発明の各実施形態によれば、斯かる損傷に対する最小侵襲的な手術が許容されると共に、上腕骨骨頭に対する回旋筋腱板腱の迅速かつ確実な固定が相当に容易化される。但し、本明細書中に記述されたのと同一の原理は、軟組織が骨構造または他の組織領域に対して再取付けされるべきであるという他の損傷の修復に対して応用されることを理解すべきである。例えば、各実施形態においては、軟質の唇板(labrum)が関節窩に対して取付けられ得る。他の実施形態においては、他の軟質のまたは結合的な組織が、場合に応じ、骨本体または他の組織に対して取付けられる。
【0045】
アンカ構造の概要
図1A及び
図1Bは、夫々、一本以上の縫合糸により軟組織を骨に対して固着するアンカ・アセンブリ10を未展開形態及び展開形態で示している。
図2A及び
図2Bは、夫々、
図1A及び
図1Bに示されたアンカの断面図を示している。アンカ・アセンブリ10は、複数の構成要素(すなわち、スリーブ12、各翼部14、及び、本体16)を備えて示される。上記アンカの各構成要素は、相互に移動可能に協働することで、(a)縫合糸の各自由端部または各肢部に対して張力を付与することにより組織がアンカに向けて引き寄せられ得るという第1の未展開形態;及び、(b)アンカが骨内に固定され、且つ、縫合糸は該アンカ内に繋止されることにより上記組織を上記骨に対して固着するという第2の展開形態;を含む2つの形態を提供する。
【0046】
図1A及び
図2Aは、未展開形態に在るアンカ・アセンブリ10を示している。特に、スリーブ部材12は、各翼部14及びアンカ本体16の基端方向に位置して示される。各翼部14は、未変形であり、本体16に対して実質的に平行であり、且つ、未拡開である。この未展開状態において、各縫合糸は、該縫合糸の組織側20または自由側22に対する張力の付与時に、上記アンカを貫通して自由に摺動及び移動することが理解され得る。特に、縫合糸自由脚部22は、結着脚部20に対して取付けられた軟組織を上記縫合糸アンカに更に接近させて引き寄せるべく、引き戻され得る。
【0047】
縫合糸案内部材50は、鳩目、溝、または、スリット形状を有し得る。好適には、上記案内部材は、使用の間における容易な縫合糸摺動を許容する円滑な表面を有している。付加的に、内側本体16は、縫合糸の一切の横方向運動に対して一定の制限を提供する(すなわち、縫合糸がシャフトから滑り落ちることを防止する)(不図示の)長寸の嵌合部もしくは溝を有し得る。上記縫合糸自体もまた、全体的に低摩擦環境を生成すべく、ポリエステル縫合糸の如き低摩擦材料を備え得る。縫合糸の例としては、限定的なものとしてで無く、低摩擦のUHMWPE縫合糸及びポリエステル縫合糸が挙げられる。
【0048】
鳩目50を通して、少なくともひとつの結着脚部20を含む少なくとも一本の縫合糸が挿通して示されると共に、該縫合糸は、器具30の内孔51を通して基端方向に戻し方向変換されて、自由脚部22に帰着している。結着側または脚部20は結着されていると考えられる、と言うのも、実際問題として、各縫合糸を、当業界で公知である習用の縫合技術を用いて、骨の如き目標組織に取付けられるべき軟組織もしくは結合組織を貫通通過させることにより、縫合糸のこの脚部または肢部は、上記軟組織もしくは結合組織に対して“結着”されるからである。この自由側または脚部22は“自由”と考えられる、と言うのも、実際問題として、医師または施術者は、自身の手または適切な器具により縫合糸のこの肢部または脚部に対して制御を行うからである。
【0049】
図1B及び
図2Bは、アンカ・アセンブリ10を展開形態で示している。特に、スリーブ12は、(不図示の)器具駆動器表面により末端方向に付勢され(例えば、押し進められ)ている。上記スリーブはアンカ本体16上へと末端方向に付勢されることから、スリーブ12の外側面は、各翼部14を変位させ、特に、各翼部を径方向に拡開させて、上記アンカ・アセンブリを骨内に埋設、固着、または、繋止する。
【0050】
スリーブ12はまた、縫合糸を繋止もしくは保持する役割も果たす。スリーブ12はアンカ本体16上へと末端方向に付勢されることから、該スリーブの内側面は、上記アンカ・アセンブリのアンカ本体(またはプラグ部分)16の外側面に当接させて、縫合糸を圧縮する。
【0051】
図2Bに示された実施形態は、軸心外とされた、すなわち、縫合糸アンカ本体16の長手軸心に対して平行ではないという第2繋止表面54も含んでいる。上記縫合糸を圧縮する各接触表面の組み合わせは、該縫合糸を繋止して滑動を阻止することを支援する。相互に対して所定角度とされた各接触表面の組み合わせは、蛇行した経路を生成し、上記アンカ・アセンブリが展開形態に在るときに縫合糸に対する摩擦力を増大する。
【0052】
付加的に、各実施形態において、上記アンカ・アセンブリは、アンカ本体16もスリーブ12も圧縮もしくは変形させず、且つ、アンカ本体16の外径とスリーブ12の内径との間には間隙(G)が存在する。この間隙によれば、多重縫合糸は、上記アンカ・アセンブリを貫通して捕捉もしくは挿通されると共に、組織に対して取付けられ得る。この間隙によれば、縫合糸繋止部及び骨繋止部の各々は、縫合糸の本数に関わらず、独立的に効果的に機能することが確実とされる。これは、本発明の利点である。
【0053】
アンカ本体
図3A及び
図3Bは、明瞭化のためにアンカ・アセンブリの他の構成要素が取り外されたアンカ本体すなわちプラグ構成要素16を示している。アンカ本体16は、基端区画42、長寸中間区画44、及び、組織貫通末端区画46を有して示される。上記プラグ構成要素の代表的な全長(L1)は、13.97〜19.05mm (0.55〜0.75インチ)の範囲であり、更に好適には約16.002mm(0.63インチ)である。
【0054】
末端区画46は好適には、骨を穿刺すべく適合化される。該穿刺先端は、木槌またはハンマ状の器具によりアンカが骨内へと打ち込まれもしくは駆動されることを促進し得る。上記先端の形状は、広範に変更され得る。それは、中実とされると共に、鋭利尖端を備え得る。
図3Bには、ダーツ形状が示される。上記先端は、中心線から約20〜27°の範囲、好適には約23°である所定角度(α)にて、末端尖端から、直径が増大する。末端先端46は、該端部区画46の基端における最大直径(D1)が達成されるまで、末端から基端まで直径が増大する。好適には、D1は、3.81〜6.35mm(0.15〜0.25インチ)の範囲であり、更に好適には約4.572mm(0.18インチ)である。但し、本発明は、添付の各請求項に記述された如く限定されることのみが意図される。
【0055】
末端区画46はまた、例えば
図1から
図2に示された如く、縫合糸アンカの一側から他側まで一本以上の縫合糸を導向する縫合糸ホルダもしくは案内部50も示している。縫合糸案内部50は、示された如く、開孔もしくは開口の形態とされ得る。上記開孔は好適には、1.524〜2.032mm(0.060〜0.080インチ)の範囲の直径を有する。付加的に、上記縫合糸案内部は、上記アンカ・アセンブリの内外へと縫合糸を案内する役割を果たす溝または他の形状を備え得る。上記縫合糸案内部は好適には、以下で更に詳細に論じられる如く、縫合糸が負荷されつつあり又は組織が接近しつつあるときに、縫合糸を破損しない様に、且つ、摩擦を付与しない様に、円滑である。
【0056】
末端先端46は、骨貫通を促進する被覆または材料も備え得る。例えば、上記先端は、316Lステンレス鋼もしくはチタンの如き金属、または、PEEKの如きポリマで形成され得る。上記先端を含む上記アンカ本体は、一種類の材料、または、複数種類の材料の組み合わせで形成され得る。一実施形態において、上記アンカ本体は、PEEKの如き、射出成形された生体適合性ポリマである。別実施形態において、それは機械加工される。代替実施形態は、調製された骨通路内へと挿入される鈍的先端、または、螺条形成されたもしくは組織切断的な先端を含み得る。
【0057】
図1及び
図2に示された如く、中間長寸区画44は、上記スリーブ内を該スリーブに対して摺動すべく適合化される。長寸区画44は、上記スリーブ部材に嵌装される(または差込まれる)。上記中間区画のサイズは、変更され得る。上記中間区画の例示的な直径(D2)は、2.286〜2.5908mm(0.090〜0.102インチ)の範囲であり、更に好適には、約2.54mm(0.100インチ)である。上記中間区画の例示的な長さ(L2)は、約9.652〜10.668mm(0.380〜0.420インチ)であり、更に好適には、約10.16mm(0.400インチ)である。
【0058】
中間区画44は、停止表面48にて終端して示される。該停止部48は、上述の穿刺先端46の幾何学形状から立ち上がり、且つ、本体16に対する各翼部14及びスリーブの末端方向移動を制限する様にも作用する。付加的に、本明細書中に記述された如く、各縫合糸の丈は、停止表面48に当接して圧縮されることで、縫合糸の繋止及び保持が増進される。
【0059】
基端区画42は、犠牲領域と、
図1から
図2に示された挿入器具30の如き挿入工具に対して接続する手段とを備えて示される。特に、
図3Bに示されたアンカ本体16は、挿入工具の螺条形成端部を受容する複数の螺条52を含む。螺条52の末端方向には、減少された直径もしくは厚みを有する脆弱化区画55が在る。以下において更に論じられる如く、アンカが骨内で展開されて固着された後、上記挿入工具は引き戻される。上記シャフトは、犠牲領域54にて剪断もしくは破断される。上記犠牲領域は、約36.3〜45.4kg(80〜100ポンド)の張力にて破断すべく適合化されるが、上記スリーブを上記アンカ本体の中間区画上で摺動させるために必要な力は、6.8〜27.2kg(15〜60ポンド)である。故に、予測的に破断して、骨に適切に埋設されたアンカ・アセンブリを残置するのは犠牲区画である。但し、上記アンカから挿入器具を取り外すべく、多様な取り外し手段が採用され得ることも理解すべきである。取り外し手段の非限定的な例は、上記シャフト内の内部螺条付き部分である。協働する螺条付き部分同士の間における十分な応力の付与時に、各螺条付き部分の一方もしくは両方は、噛合解除されて、上記アンカをシステムから解放する。付加的な例としては、限定的なものとしてで無く、摩擦的な圧力嵌め、または、有棘継手が採用され得る。上記アンカを展開システムから分離するために必要な力の量は、十分に高くされることで、偶発的な展開を最小限度に抑えるだけでなく、医師がアンカを所望に応じて展開し得ることも確実とする。
【0060】
スリーブ
図4Aから
図4Dは、アンカ・アセンブリのスリーブ構成要素12を示している。スリーブ12は、概略的に管状の形状と、該スリーブの基端64から末端66まで延在する内孔62とを有して示される。上記内孔は、一定の直径(D3)を有して示される。スリーブ12に対する例示的な直径(D3)は、2.667〜3.048mm(0.105〜0.120インチ)の範囲であり、更に好適には、約2.7432mm(0.108インチ)である。上記スリーブの例示的な長さ(L3)は、4.064〜8.89mm(0.160〜0.350インチ)の範囲であり、更に好適には、約6.35mm(0.250インチ)である。
【0061】
本明細書中に記述された如く、上記スリーブの機能のひとつは、縫合糸を繋止することである。特に、上記スリーブは、アンカ本体16の中間区画44の一部を同軸的に囲繞し、且つ、それらの間に配設された縫合糸を圧縮する。
【0062】
上記スリーブの別の機能は、骨繋止を起動し、または、上記アンカを骨内に固定することである。上記スリーブの幾何学形状は、骨繋止を可能とする。特に上記スリーブは好適には、テーパ付けされた外側部を有する。スリーブ12の外径部は、末端66から基端64まで直径が増大する。上記末端における直径(D4)は3.302〜3.81mm(0.130〜0.150インチ)の範囲であり得ると共に、上記基端における直径(D5)は3.81〜4.318mm(0.150〜0.170インチ)の範囲であり得る。更に小さな直径から更に大きな直径への遷移は、円滑または直線的であるか、または、半径(R1)を有し得る。以下において更に論じられる如く、スリーブを骨固着構造内へと付勢すると、(例えば、撓曲する各翼部などの)固着構造は、骨に対して係合される。
【0063】
撓曲可能な翼部材
図5Aから
図5Dは、骨を繋止または固着する構造14を示している。骨繋止構成要素14は、外方に撓曲可能な3つのアームもしくは翼部72を有して示される。各アームは、末端区画または基礎部75から延在する。各翼部は、スロット74により夫々分離される。所定用途において、各翼部72は、撓曲することで骨に係合し、該骨内に上記アンカを固着する。
【0064】
骨繋止構造14は、僅かな内方テーパを備えた概略的に管形状を有して示される。各実施形態において、未展開であるとき、上記基端の外径(D7)は、3.81〜6.35mm(0.150〜0.250インチ)の範囲であり得る。各実施形態において、上記末端の外径(D8)は、3.81〜5.08mm(0.150〜0.200インチ)の範囲であり得る。上記基端と異なり、上記末端の外径は、比較的に一定のままであり、拡開しない。各実施形態において、壁厚(T)は0.254〜1.016mm(0.010〜0.040インチ)の範囲であり得る。付加的に、上記骨繋止構造に対する例示的な全長(L5)は、4.064〜10.16mm(0.160〜0.400インチ)の範囲であり、更に好適には、約8.382mm(0.330インチ)である。各翼部の例示的な長さ(L4)は、2.54〜8.89mm(0.100〜0.350インチ)の範囲であり、更に好適には、約6.858mm(0.270インチ)である。
【0065】
各実施形態において、各翼部72は、集合的に内側キャビティ73を画成する。変形可能なキャビティ73は、内側スリーブ12を受容すべく寸法設定及び形状化される。スリーブ12がキャビティ73内へと押し進められるにつれ、各翼部材72は、撓曲して外方に拡開すべく付勢される。各翼部材72は、展開して骨内へと把持される。
【0066】
撓曲の量は、とりわけ、各状態、すなわち、未展開の第1状態と展開された第2状態との間における骨繋止構造の外径(D7)の差により特性記述され得る。未展開のときの上記基端の例示的な外径(D7)は、4.064〜4.572mm(0.160〜0.180インチ)の範囲であり、更に好適には約4.064mm(0.160インチ)である。展開されたとき、外径D7は6.096〜6.604mm(0.240〜0.260インチ)以上に拡開し得る。従って、面積(A)における百分率での拡開は、100%〜165%の範囲である。
【0067】
付加的に、上述された如く、上記拡開の程度は、骨質により影響される。各翼部は、更に軟質の骨においては、更に大きな程度まで拡開する傾向がある。このことは、投錨構造の直径が骨質に関わらずに不変/一定であるという静的または固定的に有棘状とされたアンカ設計態様と比較しての利点である。
【0068】
上記骨アンカ構造は、基礎部/末端開孔75を有する様にも示される。末端開孔75は、プラグ構成要素16と協働すべく寸法設定される。特に、末端開孔75は、プラグ部材16の中間区画44を受容するサイズ及び形状を有する。末端開孔75は、上記スリーブがキャビティ73内へと付勢されたときに各翼部の更なる軸心方向移動が阻止される様に、プラグ構成要素16の停止表面48に当接して固定して保持される。
【0069】
末端開口75は、一定のままである。例示的な末端の内径(D9)は、2.794〜3.048mm(0.110〜0.120インチ)の範囲である。
【0070】
骨繋止構成要素14はまた、各縫合糸に対するスペースもしくは余裕空間の提供を支援するひとつ以上の開口もしくは窓76も備え得る。例えば、窓76は、多重縫合糸を上記アンカ本体に沿い上記末端に向けて担持もしくは案内すべく寸法設定される。
【0071】
各撓曲部材72上には、逆棘もしくは隆起部80が示される。各隆起部は、骨組織を把持する役割を果たす。各逆棘または隆起部の高さ(または段部)の変化は、0.762〜1.27mm(0.030〜0.050インチ)の範囲である。
【0072】
各隆起部の図示内容は、例示的であることのみが意図される。本発明の縫合糸アンカは、骨繋止を達成するために、例えば、拡開リブ、モリブデン製のボルト、リベット、翼部、及び、他の機構の如き種々の投錨手段を用いて、更に大きな輪郭形状を取るなどの、多数の特徴または構造を取入れている。変更例は、本明細書中に記述されたデバイス及び方法の有効範囲内である。付加的に、変更例としては、アンカ本体を完全には囲繞しない投錨構造、すなわち、部分的なまたは不連続的な隆起部、リブ及び他の構造が挙げられる。同様に、上述のサイズ範囲及び形状は、例示的であることのみが意図されると共に、本発明は、添付の各請求項に記述された以外、その様に限定されることは意図されない。
【0073】
器具を使用したアンカの植設
図6から
図9は、植設されつつある縫合糸アンカを示している。示された如く、縫合糸28、29は予め、腱150を貫通して縫い付けられ、接続され、または、ループ形成されると共に、(例えば、スネアを用いてアンカを貫通して経路選定されて)アンカ132及び器具128内に装填され得る。器具128はまた、該器具の末端部分であるがアンカ翼部164の基端側であるという側部開孔もしくは開口140であって、該器具から上記アンカへの縫合糸28、29の通過を許容すべく作用し得るという側部開孔もしくは開口140も有し得る。縫合糸28、29は、アンカ132内で、開孔140から末端方向に、鳩目を貫通して組織150に至り、且つ、同一経路に沿い基端方向に戻り、且つ、該縫合糸は、(例えばアーム172などの)器具取手の一部に接続されることで、挿入及び張設の間において縫合糸28、29の取扱いを支援し得る。
【0074】
上記縫い付けプロセスは、任意の公知の手段により達成され得ると共に、任意の公知の縫合糸の縫い付け方が採用され得る。縫い付け部は望ましくは、修復処置の完了後に縫合糸が腱から偶発的に分離されて手術部位に対する再進入が必要とされない様に、固締される。好適な手法において、上記縫合糸は、術後的に不調となることが少ない特に確実な縫い止め方であると当業界で知られた“すくい綴じ(mattress stitch)”を用いて、軟組織に対して取付けられる。
【0075】
次に、アンカ132は、下側に位置する骨100に対する接触へともたらされ得る。骨組織100は、肩関節であって、硬質である外側の皮質骨層167と、比較的に軟質である内側の海綿状骨169とを備えるという肩関節のそれであり得る。回旋筋腱板の損傷に対して典型的である様に、この場合に棘上筋腱150は、上腕骨骨頭から分離されている。腱150を上腕骨骨頭に対して再取付けすることが望ましい。代替的な回旋筋腱板の修復処置は、“無結節で縫合糸を投錨するデバイスを用いて結合組織を骨に対して取付ける方法及び装置”と称された米国特許第6,524,317号においても論じられており、該特許は言及したことによりその全体が本明細書中に援用される。
【0076】
次に
図7を参照すると、器具128の基端または取手130は、例えば木槌を用いて軽打されることにより、縫合糸アンカ132を、例えば約6mmなどの所定深度にて骨内へと打ち込み得る。関節鏡を通して視認されたなら、主要アンカ132は、(例えば、着色された標識またはグラデーションなどの)アンカ深度インディケータ112が骨100の直上にてまたは該骨にて視認されるまで、下側に位置する骨100内へと打ち込まれ得る。深度インディケータ112は、アンカ挿入に対する適切な深度が実現されたというユーザに対する視覚的インディケータである。これは、アンカ翼部164が正しい深度に挿入されたことを示し得る。投錨構造164'が骨上で良好な把持を獲得することを確実とするためには、皮質層167に対する挿入が重要である。
【0077】
次に、腱150が、
図8に示された如く上記アンカに向けて引き寄せられると共に、解剖学的に適切な修復のために位置決めされ、さもなければ、それに関して緊密に載置されるまで、自由脚部28に対しては張力が付与される。組織150と、上記アンカの基端との間のスレッショルド距離の非限定的な例は、2〜8mmの範囲であり、更に好適には3〜6mmである。上記縫合糸は、手により、もしくは、器具により、または、それらの組み合わせにより引き寄せられ得る。
【0078】
縫合糸アンカ132が適切な深度であり、且つ、上記組織は所望位置とされ乍ら、各アンカ翼部164は骨100内で展開され、アンカ132の位置を固定すると共に、該アンカ132が骨100から引き抜かれることを阻止し得る。上記器具の(不図示の)ダイスもしくはドライバ部材がスリーブ174を末端方向に且つ上記投錨構造のキャビティ内へと押圧することで、各翼部164"は径方向外方に骨内へと撓曲し得る。
【0079】
斯かる動作は、多数の様式で実施され得る。例えば、
図6に示されて、旋回されたときにドライバ部材が上記シャフトに対して前進することを許容するというノブ168は、ドライバまたはダイス部材に対して連結され得る。上記ドライバ部材を前進させると、スリーブが前進する。上記ドライバ部材は、例えば、それを押圧することにより、前進され得る。代替的に、ノブは、末端方向にラチェット噛合されてスリーブ174を段増的に移動させるドライバ表面に対して連結され得る。アンカを展開する種々の起動機構を有する取手は、例えば、米国特許出願公開公報第2008/0051836号、米国特許出願公開公報第2009/0069823号、及び、米国特許出願公開公報第2010/0191283号において記述され、その各々は、言及したことにより全体的に本明細書中に援用される。
【0080】
アンカ132は次に器具128から解放され得るが、これは、上述された如く種々の機械的手段により達成され得る。例えば、各構成要素は、力またはトルクの付与時に破断もしくは分断される脆弱または破壊箇所を有すべく作用可能とされ得る。この解放のための幾つかの方法は米国特許第6,585,730号に記述されており、該特許は言及したことによりその全体が本明細書中に援用される。付加的に、上記アンカは、他の手法で、且つ、上述された如き洗練された器具なしで、植設され得る。
【0081】
図9は、投錨システムからの解放後に骨100内に載置された展開済みアンカ100を示している。縫合糸の第1区画182はアンカ内に固着される一方、第2区画184は、キャビティ壁部と、各アンカ翼部164"の外側部との間に楔止めされる。この変更例において、上記縫合糸は、アンカの第1側面から、繋止プラグの先端部分に配置された縫合糸用開口を介して、第2側面まで取り回される。上記縫合糸は幾つかの場所で繋止され、すなわち;(a)該縫合糸は、上記アンカ本体とスリーブ部材との間で圧縮され;(b)該縫合糸は、上記本体の直角な停止表面と、上記スリーブの末端縁部との間で圧縮され;且つ、(c)該縫合糸は、骨壁部と、各翼部材の外側面との間で圧縮される。この所謂る三重繋止は、障害に対する安全装置を提供する。
【0082】
代替実施形態
図10Aから
図10Dは、縫合糸アンカ構成要素の代替実施形態、特に、繋止プラグの代替実施形態210を示している。
図10Aから
図10Dに示された繋止プラグ210は、先端212が隆起部214を含むことを除き、上記に示されたものと同様である。各隆起部の寸法は、0.127〜0.381mm(0.005〜0.015インチ)の範囲である隆起部高さh
r、及び、0.762〜1.27mm(0.030〜0.050インチ)の範囲である隆起部長さl
rにより特性記述される。各隆起部214は、上記繋止プラグが骨内へと挿入され(または打ち込まれ)たときに骨の把持を支援する。
【0083】
図11Aから
図11Cは、縫合糸用アンカ・アセンブリの代替実施形態300を示している。アンカ300は、スリーブ302が隆起状区画304を含むことを除き、上述されたアンカと同様である。
図11Bを参照すると、スリーブ302は、ドライバ部材306によりアンカのプラグ部材316に沿い末端方向に押し進められる。特に、ドライバ306は、スリーブ302の基端に接触して該スリーブを末端方向に付勢する押圧表面322を含んでいる。
図11Cは、翼部312及び314の間の窓308に整列されたスリーブの隆起状区画を示している。スリーブの各隆起部304は、骨繋止を補完することで、上記アンカを骨内に固着する。
【0084】
組織を固着する方法
図12は、結合組織を骨に対して固着する医学的処置の各ステップを示すフローチャートである。この処置は、(例えば上腕骨骨頭などの)骨の一部に対して取付けられるべき(例えば回旋筋腱板腱などの)結合組織の一部に対し、臨床医に適すると思われる任意の方法を用い、所定長さの一本以上の縫合糸の結着肢部を固着するステップを含む(ステップ410)。
【0085】
ステップ420は、所定長さの縫合糸を、縫合糸アンカ・デバイスを通して装填することを表している。上記縫合糸アンカ・デバイスは、上記所定長さの縫合糸が本明細書中に記述された如く該縫合糸アンカ・デバイスにアクセスするための通路を提供する開口を有する挿入器具のシャフトの末端に対し、一時的に取付けられ得る。上記シャフト末端は、上記投錨デバイスの基端に配設された投錨要素を展開させるドライバも備え得る。
【0086】
次に、上記縫合糸アンカは、該アンカ・デバイスの基端が海綿状骨領域内となる様に十分に深く、骨の一部内へと挿入される。上記シャフトの末端には、適切なアンカ載置を支援するマーカまたはインディケータが存在し得る。このステップ(430)は、木槌により上記アンカを打突しまたは打ち込むことにより実施され得る。
【0087】
ステップ440は、所定長さの縫合糸の結着肢部を上記縫合糸アンカ・デバイスに向けて引き寄せることにより、結合組織を上記アンカに対して更に接近させて引き寄せるために、所定長さの縫合糸の自由端部に張力を付与することを表している。上記縫合糸の自由端部は、結合組織の一部が骨の一部に緊密に固着されるまで、引き寄せられる。
【0088】
自由な縫合糸端部は次に、上記取手の一部に対して結着され(または、別様に取扱われ)ることで、次のステップに対する張力が維持され得る。
【0089】
ステップ450は、骨繋止構造を展開することを表している。このことは、アンカのプラグ構成要素と骨投錨構造との間の環状の空間もしくはキャビティ内へと上記スリーブを付勢すべく、上記挿入器具のドライバによりスリーブ構成要素を押し進めることにより、好適に実施される。上記骨投錨構造の各翼部は、組織内へと、外径方向に撓曲され(外方に拡開され)る。
【0090】
各実施形態においてステップ450は、同時的に、上記縫合糸を繋止し、且つ、挿入器をアンカ本体から分離する。特に、上記スリーブは縫合糸をプラグ部材に対して圧縮することにより、上記縫合糸を繋止する。上記スリーブの末端はアンカ本体16の停止表面48に当接して押圧することで、上記アンカ本体は、加工ノッチ55の如き所定領域に沿い分離される。各実施形態において、上記アンカ本体と、挿入器具のシャフトの端部との間の加工ノッチは、上記スリーブを展開させるために必要な力よりも大きい所定力にて、破断または剪断する。
【0091】
ステップ460は、上記挿入デバイスを引き戻すことを表している。このことは、手動的に、または、半自動的に実施され得る。第1に、縫合糸の自由端部が、上記取手から接続解除される。次に、上記取手が引き戻される。
【0092】
各実施形態において、上記アンカ・プラグと、上記挿入器具のシャフトの端部との間の犠牲領域は、埋設されたアンカを引き抜くために必要な力よりも小さい所定力にて、破断もしくは剪断する。
【0093】
次に、縫合糸の端部は、埋設されたアンカの基端の近傍で切り詰められ得る。
【0094】
図13A及び
図13Bは、骨内で展開された別のアンカ510を示している。該アンカは、オフセットまたは傾斜角度(β)を有して示される。縫合糸512の組織側は、アンカ510に対し、末端区画、すなわち、末端先端鳩目514にて係合する。上記縫合糸の組織側または結着側に付与された張力は、(アンカを軸心方向に引き抜くのではなく)アンカに対するシフトもしくは軸心外の力を誘起する。傾倒の角度または程度(β)は望ましくは、0〜15°の範囲であり、更に好適には、5〜10°である。縫合糸の結着肢部に対する張力は、医師により手動的に付与され得るか、または、術後における腱の運動及び使用から帰着し得る。
【0095】
理論に縛られることなく、第1位置520から第2位置522への傾倒または傾斜は、各縫合糸がアンカの中央を貫通して下方に延在するという縫合糸を有する他の殆どのアンカと異なっている。各縫合糸がアンカの中央を下方に延在する場合、組織からの張力(または組織の反復使用)は、アンカを引き抜くべく作用する。
図13A及び
図13Bに示された本実施形態において、アンカに対する張力もしくは応力は、該アンカを傾倒もしくは傾斜させ、該アンカを骨内に更に埋設すべく作用する。
【0096】
本発明の好適実施形態が示され且つ記述されたが、本明細書中で使用された全ての用語は限定的ではなく記述的であること、及び、当業者によれば、本発明の精神及び有効範囲から逸脱せずに多くの変更、改変及び置換が為され得ることは理解されるべきである。特に、回旋筋腱板の関節鏡修復に向けられてはいるが、各処置は、特に関節鏡処置を用いて軟組織を骨に対して取付けまたは再取付けすることが所望される任意の身体箇所の修復に適用可能であることを銘記されたい。