特許第6612962号(P6612962)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6612962電子データ判定システム、電子データ判定装置、電子データ判定方法、電子データ判定プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6612962
(24)【登録日】2019年11月8日
(45)【発行日】2019年11月27日
(54)【発明の名称】電子データ判定システム、電子データ判定装置、電子データ判定方法、電子データ判定プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/10 20120101AFI20191118BHJP
【FI】
   G06Q10/10
【請求項の数】12
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-243755(P2018-243755)
(22)【出願日】2018年12月26日
【審査請求日】2018年12月27日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516380407
【氏名又は名称】ファーストアカウンティング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100187322
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 直輝
(72)【発明者】
【氏名】森 啓太郎
(72)【発明者】
【氏名】小嶋 勇志
【審査官】 青柳 光代
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−087021(JP,A)
【文献】 特開2008−099140(JP,A)
【文献】 特開2008−004041(JP,A)
【文献】 特開2015−056079(JP,A)
【文献】 特開2009−069995(JP,A)
【文献】 特開2003−316774(JP,A)
【文献】 特開2014−075842(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 − 99/00
G16H 10/00 − 80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
書類の画像データから、判断要素を抽出する判断要素抽出部と、
前記判断要素抽出部により抽出された判断要素を用いて、前記画像データを含む電子データを保存するために要求される保存要件を具備するか否かを判定する要件判定部と、
前記要件判定部の判定結果に応じたメッセージを生成するメッセージ生成部と、
を備え、
前記要件判定部は、前記判断要素が、前記保存要件のうち前記書類の撮影状態に依存しない要件からなる第1の要件を具備しているか否かを判定し、
前記メッセージ生成部は、前記要件判定部が前記判断要素が前記第1の要件を具備していないと判定した場合には、前記第1の要件を具備していないことに応じたメッセージとして、前記書類を保管する表示を前記書類に付している保管表示画像を要求する保管表示要求メッセージを生成する、
電子データ判定システム。
【請求項2】
前記メッセージ生成部は、前記保管表示要求メッセージの生成後に、前記保管表示画像を取得した際には当該保管表示要求メッセージを消去する処理を行う請求項に記載の電子データ判定システム。
【請求項3】
前記第1の要件を具備していないことに応じたメッセージは、前記書類の画像データを読み取った者と異なる者に前記書類の画像データを読み取らせることを促すメッセージを含む請求項1に記載の電子データ判定システム。
【請求項4】
前記要件判定部は、前記判断要素が、前記保存要件のうち前記書類の撮影状態に依存する要件からなる第2の要件を具備しているか否かを判定し、
前記メッセージ生成部は、前記要件判定部が前記第2の要件を具備していないと判定した場合には、前記書類を再撮影した画像データを要求する再撮影要求メッセージを生成する請求項1からのいずれか一項に記載の電子データ判定システム。
【請求項5】
さらに、前記要件判定部により前記保存要件を具備すると判定された前記書類の画像データを含む電子データに対してタイムスタンプを付与する処理を行うタイムスタンプ付与部を備える請求項1からのいずれか一項に記載の電子データ判定システム。
【請求項6】
前記メッセージ生成部は、前記要件判定部により前記保存要件を具備すると判定された場合に、当該書類を廃棄してもよい旨のメッセージを生成する請求項1からのいずれか一項に記載の電子データ判定システム。
【請求項7】
前記要件判定部は、前記判断要素が前記保存要件を具備しなかったエラー回数をカウントし保存する請求項1からのいずれか一項に記載の電子データ判定システム。
【請求項8】
前記第1の要件は、前記書類の日付に関する要件を含む請求項1からのいずれか一項に記載の電子データ判定システム。
【請求項9】
前記第2の要件は、前記画像データに関する要件を含む請求項に記載の電子データ判定システム。
【請求項10】
書類の画像データから判断要素を抽出する判断要素抽出部と、
前記判断要素抽出部により抽出された判断要素を用いて前記画像データを含む電子データを保存するために要求される保存要件を具備するか否かを判定する要件判定部と、
前記要件判定部の判定結果に応じたメッセージを生成するメッセージ生成部と、
を備え、
前記要件判定部は、前記判断要素が、前記保存要件のうち前記書類の撮影状態に依存しない要件からなる第1の要件を具備しているか否かを判定し、
前記メッセージ生成部は、前記要件判定部が前記判断要素が前記第1の要件を具備していないと判定した場合には、前記第1の要件を具備していないことに応じたメッセージとして、前記書類を保管する表示を前記書類に付している保管表示画像を要求する保管表示要求メッセージを生成する、
電子データ判定装置。
【請求項11】
コンピュータにより、
書類の画像データから判断要素を抽出する判断要素抽出ステップと、
前記判断要素抽出ステップにより抽出された判断要素を用いて前記画像データを含む電子データを保存するために要求される保存要件を具備するか否かを判定する要件判定ステップと、
前記要件判定ステップの判定結果に応じたメッセージを生成するメッセージ生成ステップと、
を備え、
前記要件判定ステップでは、前記判断要素が、前記保存要件のうち前記書類の撮影状態に依存しない要件からなる第1の要件を具備しているか否かを判定し、
前記メッセージ生成ステップでは、前記要件判定ステップにて前記判断要素が前記第1の要件を具備していないと判定した場合には、前記第1の要件を具備していないことに応じたメッセージとして、前記書類を保管する表示を前記書類に付している保管表示画像を要求する保管表示要求メッセージを生成する、
電子データ判定方法。
【請求項12】
書類の画像データから判断要素を抽出する判断要素抽出ステップと、
前記判断要素抽出ステップにより抽出された判断要素を用いて前記画像データを含む電子データを保存するために要求される保存要件を具備するか否かを判定する要件判定ステップと、
前記要件判定ステップの判定結果に応じたメッセージを生成するメッセージ生成ステップと、
を備え、
前記要件判定ステップでは、前記判断要素が、前記保存要件のうち前記書類の撮影状態に依存しない要件からなる第1の要件を具備しているか否かを判定し、
前記メッセージ生成ステップでは、前記要件判定ステップにて前記判断要素が前記第1の要件を具備していないと判定した場合には、前記第1の要件を具備していないことに応じたメッセージとして、前記書類を保管する表示を前記書類に付している保管表示画像を要求する保管表示要求メッセージを生成する、
ことをコンピュータに実行させる電子データ判定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は証憑等の書類に係る電子データを保存するため、当該電子データの判定を行う電子データ判定システム、電子データ判定サーバ、電子データ判定方法、電子データ判定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、紙の書類を電子化し、紙資源の節約、印刷コストの削減、業務の効率化を図るペーパーレス化が進んでいるが、重要な書類の電子化には一定の要件が必要となる場合がある。
【0003】
例えば、レシートや領収書等の証憑を含む国税関係帳簿書類については、その全部又は一部について電子データによる保存を認める電子帳簿保存法が制定されている。当該電子帳簿保存法では、記録の真実性及び可視性等の確保に必要となる所定の要件(以下、電子帳簿保存要件という)を具備することで、スキャナやスマートフォンで読み取った書類の電子データとしての保存が許されている。
【0004】
当該電子帳簿保存要件としては、真実性の確保のために書類の電子データにタイムスタンプを付与することが規定されている。そこで、携帯端末を用いて作成した電子データに対して容易にタイムスタンプを発行し、これを管理可能な技術も開発されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017−175377号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1で示す技術等により、タイムスタンプを容易に付与することはできるが、その他の要件も具備していなければ電子データによる保存は許されない。一般にタイムスタンプの付与には費用がかかるため、タイムスタンプを付与した上で他の要件を具備しなかった場合は、無駄な費用がかかるという問題がある。
【0007】
また、書類の電子データが電子帳簿保存要件を具備しているかをチェックするには手間がかかり、人手によるチェックは精度のばらつきが生じるおそれもあるという問題がある。
【0008】
また、電子帳簿保存要件を具備して電子データとして保存した書類については紙の書類を廃棄してもよいが、電子帳簿保存要件を具備しなかった書類については一定期間紙の書類を保存しておく必要がある。従って、廃棄してよい書類と保存しなければならない書類とを区別して管理する必要があるが、これについても手間がかかる上、保存しなければならない書類を誤って廃棄してしまうと大きな損害を生じるおそれもある。
【0009】
本発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、書類の電子データの保存に際して、無駄なコストが発生することを抑制しつつ、書類の電子化の正確性及び作業効率を向上させることのできる電子データ判定システム、電子データ判定装置、電子データ判定方法、電子データ判定プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した目的を達成するために、本発明に係る電子データ判定システムは、書類の画像データから、判断要素を抽出する判断要素抽出部と、前記判断要素抽出部により抽出された判断要素を用いて前記画像データを含む電子データを保存するために要求される保存要件を具備するか否かを判定する要件判定部と、前記要件判定部の判定結果に応じたメッセージを生成するメッセージ生成部と、を備え、前記要件判定部は、前記判断要素が、前記保存要件のうち前記書類の撮影状態に依存しない要件からなる第1の要件を具備しているか否かを判定し、前記メッセージ生成部は、前記要件判定部が前記判断要素が前記第1の要件を具備していないと判定した場合には、前記第1の要件を具備していないことに応じたメッセージを生成する。
【0011】
上述の電子データ判定システムにおいて、前記第1の要件を具備していないことに応じたメッセージは、前記書類を保管する表示を前記書類に付している保管表示画像を要求する保管表示要求メッセージであってもよい。
【0012】
上述の電子データ判定システムにおいて、前記メッセージ生成部は、前記保管表示要求メッセージの生成後に、前記保管表示画像を取得した際には当該保管表示要求メッセージを消去する処理を行ってもよい。
【0013】
上述の電子データ判定システムにおいて、前記第1の要件を具備していないことに応じたメッセージは、前記書類の画像データを読み取った者と異なる者に前記書類の画像データを読み取らせることを促すメッセージであってもよい。
【0014】
また、上述の電子データ判定システムにおいて、前記要件判定部は、前記判断要素が、前記保存要件のうち前記書類の撮影状態に依存する要件からなる第2の要件を具備しているか否かを判定し、前記メッセージ生成部は、前記要件判定部が前記第2の要件を具備していないと判定した場合には、前記書類を再撮影した画像データを要求する再撮影要求メッセージを生成してもよい。
【0015】
また、上述の電子データ判定システムにおいて、さらに、前記要件判定部により前記保存要件を具備すると判定された前記書類の画像データを含む電子データに対してタイムスタンプを付与する処理を行うタイムスタンプ付与部を備えてもよい。
【0016】
また、上述の電子データ判定システムにおいて、前記メッセージ生成部は、前記要件判定部により前記保存要件を具備すると判定された場合に、当該書類を廃棄してもよい旨のメッセージを生成してもよい。
【0017】
また、上述の電子データ判定システムにおいて、前記要件判定部は、前記判断要素が前記保存要件を具備しなかったエラー回数をカウントし保存してもよい。
【0018】
また、上述の電子データ判定システムにおいて、前記第1の要件は、前記書類の日付に関する要件を含んでもよい。
【0019】
また、上述の電子データ判定システムにおいて、前記第2の要件は、前記画像データに関する要件を含んでもよい。
【0020】
上記した目的を達成するために、本発明に係る電子データ判定装置は、書類の画像データから判断要素を抽出する判断要素抽出部と、前記判断要素抽出部により抽出された判断要素を用いて前記画像データを含む電子データを保存するために要求される保存要件を具備するか否かを判定する要件判定部と、前記要件判定部の判定結果に応じたメッセージを生成するメッセージ生成部と、を備え、前記要件判定部は、前記判断要素が、前記保存要件のうち前記書類の撮影状態に依存しない要件からなる第1の要件を具備しているか否かを判定し、前記メッセージ生成部は、前記要件判定部が前記判断要素が前記第1の要件を具備していないと判定した場合には、前記第1の要件を具備していないことに応じたメッセージを生成する。
【0021】
上記した目的を達成するために、本発明に係る電子データ判定方法は、コンピュータにより、書類の画像データから判断要素を抽出する判断要素抽出ステップと、前記判断要素抽出ステップにより抽出された判断要素を用いて前記画像データを含む電子データを保存するために要求される保存要件を具備するか否かを判定する要件判定ステップと、前記要件判定ステップの判定結果に応じたメッセージを生成するメッセージ生成ステップと、を備え、前記要件判定ステップでは、前記判断要素が、前記保存要件のうち前記書類の撮影状態に依存しない要件からなる第1の要件を具備しているか否かを判定し、前記メッセージ生成ステップでは、前記要件判定ステップにて前記判断要素が前記第1の要件を具備していないと判定した場合には、前記第1の要件を具備していないことに応じたメッセージを生成する、を生成する。
【0022】
上記した目的を達成するために、本発明に係る電子データ判定プログラムは、書類の画像データから判断要素を抽出する要素抽出ステップと、前記判断要素抽出ステップにより抽出された判断要素を用いて前記画像データを含む電子データを保存するために要求される保存要件を具備するか否かを判定する要件判定ステップと、前記要件判定ステップの判定結果に応じたメッセージを生成するメッセージ生成ステップと、を備え、前記要件判定ステップでは、前記判断要素が、前記保存要件のうち前記書類の撮影状態に依存しない要件からなる第1の要件を具備しているか否かを判定し、前記メッセージ生成ステップでは、前記要件判定ステップにて前記判断要素が前記第1の要件を具備していないと判定した場合には、前記第1の要件を具備していないことに応じたメッセージを生成する、ことを前記コンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0023】
上記手段を用いる本発明によれば、書類の電子データの保存に際して、無駄なコストが発生することを抑制しつつ、書類の電子化の正確性及び作業効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一実施形態に係る電子データ判定システムを示したシステム構成図である。
図2】管理サーバにより実行される書類の電子データ判定処理の流れを示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づき説明する。
【0026】
図1は本発明の一実施形態に係る電子データ判定システムを示したシステム構成図であり、同図に基づき本実施形態の構成について説明する。
【0027】
図1に示すように、本実施形態に係る電子データ判定システム1は、情報端末2と管理サーバ3(電子データ判定装置)とが有線又は無線の通信手段を介して接続されて構成されている。なお、情報端末2と管理サーバ3とは、VPN(Virtual Private Network)、イントラネット、又はインターネット等の通信網を介して接続されていてもよい。また、説明の簡略化のため図1では管理サーバ3は一つの情報端末2と接続されているが、管理サーバ3は複数の情報端末2と接続可能である。
【0028】
情報端末2を使用する者は、例えば企業の経理担当者、税理士及び会計士等の専門家であったり、直接会計処理を行う法人や個人等である。なお、電子帳簿保存法では、国税関係書類の作成又は受領をする者(以下、受領者等という)が国税関係書類を読み取る場合と、受領者等以外の者が国税関係書類を読み取る場合とで、タイムスタンプを付する要件が異なる。受領者等以外の者が国税関係書類を読み取る場合は、書類を作成又は受領後(例えば取引日から)、7日以内、又は通常の業務処理期間(最大1ヵ月)と7日以内にタイムスタンプを付する必要がある。本実施形態の電子データ判定システム1は、受領者等以外の者(例えば企業の経理担当者)が使用するシステムとして説明する。
【0029】
情報端末2は、例えばスマートフォン、タブレットPC、及び携帯電話のような携帯端末や、パーソナルコンピュータ(以下、PCという)であり、読取部10と表示部11とを有している。なお、情報端末2は、スキャナであってもよい。
【0030】
読取部10は、例えばカメラ等の光学機器であり、書類を画像データとして取り込み可能な部分である。なお、本実施形態及び特許請求の範囲における「書類」は、例えば、電子帳簿保存法に定められる国税関係帳簿書類である。具体的には、書類には、総勘定元帳、仕訳帳、現金出納帳、売掛金・買掛金元帳固定資産台帳、売上・仕入帳等の帳簿や、棚卸表、貸借対照表、損益計算書、その他決算に関して作成した書類等の決算関係書類や、領収書やレシート、その他の受領書、請求書、納品書、金融機関の通帳、会計上金銭授受の証明となる書類、電子マネー等のICカードによる取引情報を含む証憑類が含まれる。
【0031】
表示部11は、例えばディスプレイであり、管理サーバ3からのメッセージ等の情報を視認可能に表示するものである。
【0032】
情報端末2は、管理サーバ3に読取部10にて読み取った書類の画像データを送信可能である。また当該画像データには送信元の情報、つまり情報端末2の情報、当該情報端末2を使用している経理担当者の情報や国税関係書類の受領者等の情報(例えば個人ID)も紐づけされており、誰がどのような書類の画像データを送ってきたか認識可能となっている。
【0033】
一方、管理サーバ3は、プログラムに基づき書類の電子データの保存処理を実行する1又は複数のサーバ(コンピュータ)から構成されている。機能的には主に、書類の画像データから、判断要素を抽出する要素抽出部20と、抽出した判断要素を用いて、画像データを含む電子データを保存するために要求される保存要件を具備しているか否かを判定する要件判定部21と、要件判定部21の判定結果に応じたメッセージを情報端末に送るメッセージ生成部22と、保存要件を具備した書類の電子データにタイムスタンプを付与するタイムスタンプ付与部23を有している。また管理サーバ3は、判断要素抽出AIを生成する学習システム24と、保存要件が記憶されている要件データベース、書類の電子データが記憶される書類データベース、人事情報が記憶されている人事データベース等の各種データベース(以下、データベースを「DB」と表記する)を有している。
【0034】
詳しくは、要素抽出部20は、情報端末2の読取部10にて読み取った書類の画像データを受信し、当該画像データから判断要素を抽出する機能を有している。判断要素は、後述する保存要件の項目に対応した要素であり、例えば、当該書類が作成された日時、画像データの撮影日時、画像データの送信日時、画像データの解像度やデータ形式や色の階調、書類内に記載されている文字情報や数字情報の少なくとも1つが含まれる。なお、1つの画像データに複数の書類が写り込んでいる場合は、それぞれの書類を認識し、各書類毎に判断要素を抽出してもよい。
【0035】
具体的には、要素抽出部20は、書類の画像データから判断要素を抽出するための判断要素抽出AIを有し、当該判断要素抽出AIにより書類の画像データから判断要素を抽出可能である。なお、画像データの撮影日時、画像データの送信日時、画像データの解像度やデータ形式や色の階調等の画像データ自体(メタデータ)に係る判断要素については、判断要素抽出AIを用いずに画像データを解析することで抽出してもよい。
【0036】
判断要素抽出AIは、書類内の判断要素については、画像データ内から判断要素に対応する部分(位置)を特定し、特定された部分の内容に対応する判断要素をテキストとして抽出する。つまり、判断要素抽出AIは、学習システム24において、機械学習により画像データ内から判断要素に対応する部分を含む領域を指定し、当該指定された部分の内容に対応する判断要素をテキストとして出力することを学習したAIである。例えば、判断要素抽出AIは、書類の画像データ内において、書類の形状、大きさ、色等の外観、書類名部分、日付部分、金額部分、取引先部分、摘要部分を指定し、日付部分や金額部分においては数字を認識して年月日や金額のテキストを出力し、書類名や取引先に対応する部分や摘要に対応する部分においては文字を認識して書類名、取引先、摘要のテキストを出力する。
【0037】
要素抽出部20は、判断要素抽出AIを用いて、例えば日付については、「日付」「年」「月」「日」等の文字や「/」等の記号の前後や上下の数字部分を特定する。金額については「¥」等の記号や商品名、「金額」「預り金」「小計」「合計」「税」「お釣り」「割引」「円」「支払い」「預り」「残高」等の金額に関係する文字の前後や上下の数字部分を特定する。なお、要素抽出部20は、抽出された文字の意味についても認識可能であり、例えば「小計」は商品の価格を合算した金額である等の会計上の関係性まで特定可能である。
【0038】
また、取引先については、「株式会社」「(株)」「(カ)」等の文字の前後の文字部分や、ロゴマーク、電話番号、証憑の外観を特定して、これらの情報に基づく会社名や個人名に対応する部分を特定する。摘要については、「但」等の文字に続く文字部分を特定する。取引元については、「様」等の文字の前にある文字の部分を特定する。
【0039】
なお、判断要素はこれに限られるものではなく、また判断要素の抽出に用いる数字、文字、図形もこれに限られるものではない。例えば、証憑に、購入品の数量が記載されている場合には数量を判断要素として含めてもよいし、受領者等の本人の署名や、同席者の名前や人数等の情報が記載されている場合には、受領者等の本人の署名や同席者及び人数を判断要素として含めてもよい。また、各企業を特定するために設定された番号(法人番号、事業所番号)を抽出してもよい。
【0040】
なお、判断要素抽出AIは、証憑の画像データ内から判断要素に対応する部分(位置)を特定する画像認識AIと、特定された部分の内容に対応する判断要素をテキストとして抽出する文字認識AIの2つのAIで構成してもよい。
【0041】
要素抽出部20は、書類の画像データと、当該画像データから抽出した判断要素に関する情報を含めたデータを書類の電子データとして、要件判定部21に出力する。
【0042】
要件判定部21は、要素抽出部20により抽出された判断要素が、要件DB25に記憶されている保存要件を具備するか否かの判定を行う部分である。この保存要件とは、法律や社内規定等の一定のルールにより、書類の画像データを含む電子データを保存するのに要求される要件である。例えば、本実施形態の保存要件は、電子帳簿保存法の適用を受けるための要件であり、画像データの解像度や色の階調に関する要件、書類の大きさの要件、文字の大きさの要件、取引の年月日等の日付に関する要件、取引金額や摘要に関する要件等がある。
【0043】
要件判定部21は、保存要件のうち、判断要素が書類の撮影状態に依存しない要件からなる第1の要件と、判断要素が撮影状態に依存する第2の要件の2つの要件に区分して判定を行う。第1の要件は、例えば書類の作成又は受領した日に対応する取引の年月日等に日付に関する要件や、取引金額や摘要に関する要件等、書類の内容自体に関する要件が主である。第2の要件は、画像データの解像度や色の階調に関する要件、書類の大きさの要件、文字の大きさの要件等、画像データに関する要件が主であり、撮影し直すことで保存要件を満たす可能性がある要件である。
【0044】
要件判定部21は、判定結果をメッセージ生成部22に出力する。また、要件判定部21は、判断要素が保存要件を具備していた場合には、その判定結果をタイムスタンプ付与部23に出力する。また、要件判定部21は判断要素が要件を具備していなかった場合には、当該書類の電子データについて、要件を具備しなかった回数、即ちエラー回数のカウントを行う。カウントしたエラー回数は人事DB27に出力され、人事DB27に記憶されている該当者IDの情報に反映される。
【0045】
メッセージ生成部22は、要件判定部21による判定結果に応じたメッセージを生成して、画像データを送信してきた情報端末2に当該メッセージを出力し、表示部11に表示させる。
【0046】
具体的には、メッセージ生成部22は、判定結果が第1の要件を具備していないものである場合には、第1の要件を具備していないことに応じたメッセージを生成する。より具体的には、この要件を具備しなかった書類に保管スタンプを押印し、この保管スタンプが押印された書類を再度読み取った画像データ(以下、保管スタンプ押印画像(保管表示画像)という)を送信することを要求する保管スタンプ押印画像要求メッセージを生成する。その後、管理サーバ3に保管スタンプ押印画像が送信され、要件判定部が保管スタンプ押印画像の取得を確認した際には、メッセージ生成部22は保管スタンプ押印画像要求メッセージを消去する。
【0047】
また、メッセージ生成部22は、判定結果が第2の要件を具備していないものである場合には、この要件を具備しなかった書類を再撮影した画像データを要求する再撮影要求メッセージを生成する。
【0048】
さらに、メッセージ生成部22は、判定結果が保存要件を具備しているものである場合には、この書類を廃棄してもよい旨のメッセージ(以下、廃棄可能メッセージという)を生成する。
【0049】
タイムスタンプ付与部23は、要件判定部21により保存要件を具備すると判定された書類の電子データに対してタイムスタンプを付与する処理を行う。具体的には、タイムスタンプ付与部23は、図示しない外部のタイムスタンプサーバと通信を行い、電子データにタイムスタンプを付与する。
【0050】
そして、タイムスタンプ付与部23は、タイムスタンプを付与した書類の電子データを書類DB26に出力し、当該書類DB26に保存する。
【0051】
ここで図2を参照すると、管理サーバ3により実行される書類の電子データ判定方法の流れを示したフローチャートが示されており、以下同フローチャートに沿って、電子データ判定方法について詳しく説明する。なお、当該電子データ判定方法は、情報端末2からの書類の画像データを受信することでスタートする。
【0052】
まず、ステップS1として、管理サーバ3の要素抽出部20は、判断要素抽出AIにより、書類の画像データ内から保存要件を判断するための判断要素を抽出する(判断要素抽出ステップ)。
【0053】
ステップS2において、要件判定部21は、抽出された判断要素が書類の撮影状態に依存しない要件からなる第1の要件を具備するか否かを判定する(要件判定ステップ)。当該判定結果が真(Yes)である場合、即ち判断要素が第1の要件について具備している場合は、次のステップS3に進む。
【0054】
ステップS3において、要件判定部21は、抽出された判断要素が書類の撮影状態に依存する要件からなる第2の要件を具備するか否かを判定する(要件判定ステップ)。当該判定結果が真(Yes)である場合、即ち第2の要件についても具備している場合は、次のステップS4に進む。
【0055】
ステップS4において、タイムスタンプ付与部23は、保存要件を具備した書類の画像データを含む書類の電子データに、タイムスタンプを付与する(タイムスタンプ付与ステップ)。
【0056】
続くステップS5において、タイムスタンプ付与部23は、タイムスタンプが付与された書類の電子データを書類DB26に保存する。
【0057】
そして、ステップS6において、メッセージ生成部22は、廃棄可能メッセージを生成し(メッセージ生成ステップ)、今回の画像データの送信元である情報端末2に当該メッセージを送信して、当該ルーチンを終了する。
【0058】
一方、上記ステップS2の判定結果が偽(No)であった場合、例えば抽出した取引の年月日がタイムスタンプを付与する期限を徒過している場合や、取引金額や摘要が記載されていない場合等、判断要素が撮影状態に依存しない第1の要件を具備していない場合は、ステップS7に進む。
【0059】
ステップS7において、要件判定部21は、エラー回数のカウントを行う。つまり、第1の要件のエラー回数を1回加算して、人事DB27の該当者IDの情報に反映させる。
【0060】
続くステップS8において、メッセージ生成部22は、保管スタンプ押印画像要求メッセージを生成し、今回の画像データの送信元である情報端末2に当該メッセージを送信して、情報端末2の表示部11に表示させる。
【0061】
ステップS9において、メッセージ生成部22は、要件判定部21において保管スタンプ押印画像を取得したか否かを判定する。当該判定結果が偽(No)である場合、即ち保管スタンプ押印画像が管理サーバ3に未だ送信されてきていない場合は、ステップS8に戻り、保管スタンプ押印画像要求メッセージの表示を維持する。当該判定結果が真(Yes)となると、ステップS10に進む。
【0062】
ステップS10において、メッセージ生成部22は、保管スタンプ押印画像要求メッセージを表示部11から消去して、当該ルーチンを終了する。
【0063】
また、上記ステップS3の判別結果が偽(No)であった場合、例えば画像データの解像度が規定値以下の場合や色の階調が所定値以下の場合、書類の大きさや文字の大きさが規定値以下の場合等、判断要素が撮影状態に依存する第2の要件を具備していない場合は、ステップS11に進む。
【0064】
ステップS11において、要件判定部21は、エラー回数のカウントを行う。つまり、第2の要件のエラー回数を1回加算して、人事DB27の該当者IDの情報に反映させる。
【0065】
続くステップS12において、メッセージ生成部22は、再撮影要求メッセージを生成し、今回の画像データの送信元である情報端末2に当該メッセージを送信して、情報端末2の表示部11に表示させて、当該ルーチンを終了する。再撮影した画像データについては、再びステップS1以降の処理が実行される。
【0066】
以上のように、本実施形態における電子データ判定システム1では、書類の画像データから判断要素を抽出し、当該判断要素が保存要件を具備しているか否かを判定することで、人手によるチェックの手間とミスを削減し、正確性と作業効率を向上させることができる。またタイムスタンプを付与する前に保存要件の判定を行うことで、無駄にタイムスタンプを付与することを抑制し、その分コストを削減することができる。そして、撮影状態に依存しない要件からなる第1の要件を具備していない場合には、保管スタンプ押印画像要求メッセージを生成し、表示させることで画像データの送信元に当該書類を紙で保管することを促すことができる。
【0067】
さらに、この保管スタンプ押印画像要求メッセージは、保管スタンプ押印画像が取得されてから消去することで、当該書類への保管スタンプの押印の実行性を向上させることができる。
【0068】
また、判断要素が、撮影状態に依存する第2の要件を具備しない場合には、再撮影要求メッセージを生成し表示させることで、電子データとして保存可能な書類についてより正確に保存できるようになる。
【0069】
そして、判断要素が保存要件を具備している場合には、タイムスタンプ付与部23にてタイムスタンプを自動的に付与して書類DB26に保存し、廃棄可能メッセージを生成して表示させることで、さらに作業の効率化を図ることができる。
【0070】
また、保存要件を具備しなかった場合には、エラー回数をカウントして人事DBに反映することで、例えば人事評価に活用し、正確な書類作成を促すことができ、より一層作業効率を向上させることができる。
【0071】
以上のことから、本実施形態に係る電子データ判定システム1は、書類の電子データの保存に際して、無駄なコストが発生することを抑制しつつ、書類の電子化の正確性及び作業効率を向上させることができる。
【0072】
以上で本発明の実施形態の説明を終えるが、本発明の態様はこの実施形態に限定されるものではない。
【0073】
例えば、上記実施形態の電子データ判定システム1は情報端末2と管理サーバ3の2つのコンピュータにより構成されているが、例えば、1つのコンピュータ(例えばPC)のみで構成してもよいし、3つ以上のコンピュータで機能を分割して構成してもよい。
【0074】
また上記実施形態の電子データ判定システム1は、受領者等以外の者(例えば企業の経理担当者)が使用するシステムとして説明したが、受領者等が使用するシステムにも適用可能である。受領者等が国税関係書類を読み取る場合は、読み取る際又は受領等後に署名の上読み取りを行い、3日以内にタイムスタンプを付する必要がある。従って、上記実施形態の変形例として、第1の要件として取引日から3日以内であるかという要件と、第2の要件として書類に本人の署名が記されているかという要件を含めてもよい。
【0075】
さらに当該変形例では、取引日から3日を過ぎている場合でも、受領者等以外の者であればタイムスタンプを付する要件を満たす場合がある。そこで、当該変形例における電子データ判定システムでは、第1の要件を具備しなかった場合にメッセージ生成部が、第1の要件を具備していないことに応じたメッセージとして、書類の画像データを読み取った者(受領者等)と異なる者(例えば経理部)に当該書類の画像データを読み取らせることを促すメッセージを生成してもよい。これにより、第1の要件を具備しなかった場合に、より適切な処理を促すことができることになる。なお、このメッセージは、保管表示要求メッセージとともに生成してもよいし、保管表示要求メッセージに代えて生成してもよい。
【0076】
また、上記実施形態では、電子データとして保存する書類を、電子帳簿保存法に定められる国税関係帳簿書類としているが、保存要件が定められている書類であればその他の書類にも本発明を適用可能である。
【0077】
また、上記実施形態では、判断要素が第1の要件を具備しなかった場合に、当該書類に保管スタンプを押印させているが、書類を保管する表示はこれに限られず、例えば手書きで保管の文字及び日付を記載してもよい。
【符号の説明】
【0078】
1 電子データ判定システム
2 情報端末
3 管理サーバ
10 読取部
11 表示部
20 要素抽出部(判断要素抽出部)
21 要件判定部
22 メッセージ生成部
23 タイムスタンプ付与部
24 学習システム
25 要件DB
26 書類DB
27 人事DB
【要約】      (修正有)
【課題】書類の電子データの保存に際して、無駄なコストの発生を抑制しつつ、書類の電子化の正確性及び作業効率を向上させる電子データ判定システム等を提供する。
【解決手段】電子データ判定システム1は、書類の画像データから判断要素を抽出可能な要素抽出部20と、抽出された判断要素を用いて画像データを含む電子データを保存するために要求される保存要件を具備するか否かを判定する要件判定部21と、その判定結果に応じたメッセージを生成するメッセージ生成部22と、を有する管理サーバ3を備える。要件判定部は、判断要素が、保存要件のうち書類の撮影状態に依存しない要件からなる第1の要件を具備しているか否かを判定する。メッセージ生成部は、要件判定部が第1の要件を具備していないと判定した場合に、それに応じたメッセージとして、書類を保管する表示を書類に付している保管表示画像を要求する保管表示要求メッセージを生成する。
【選択図】図1
図1
図2