【文献】
J. Immunother., 2006, Vol.29, No.4, p.398-406
【文献】
J. Immunol., 2008. Vol.180, No.9, p.6116-6131
【文献】
Int. J. Cancer, 2009, Vol.125, p.649-655
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
癌が発症または再発していると診断された、その疑いがある、またはそのリスクがある個体を予防及び/又は治療するための組成物であって、前記癌は、NY-ESO-1抗原を発現する癌細胞を有し、当該組成物は、T細胞レセプタ−(TCR)をコードする組換えポリヌクレオチドを含む改変ヒト造血幹細胞を含み、前記組換えポリヌクレオチドは、配列番号3の配列を有するTCRα鎖及び配列番号4の配列を有するTCRβ鎖をコードしているか、または配列番号11の配列を有するTCRα鎖及び配列番号12の配列を有するTCRβ鎖をコードしている、組成物。
前記癌細胞が、膀胱癌細胞、脳癌細胞、乳癌細胞、胃癌細胞、食道癌細胞、頭頸部癌細胞、肝胆道癌細胞、腎臓癌細胞、卵巣癌細胞、非小細胞肺癌細胞、骨髄腫 、前立腺癌細胞、肉腫細胞、精巣癌細胞、メラノーマ細胞、またはそれらの組み合わせから選択される、請求項3に記載の組成物。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】(A)は、JM CD4
+T細胞クローンによる癌細胞の直接認識を示す。NY-ESO-1
157-170ペプチド-特異的腫瘍認識CD4
+T細胞クローン(Clone:JM)(TR-CD4)及び非腫瘍認識CD4
+T細胞クローン(NTR-CD4)のインターフェロン(IFN)-γ及びCD107発現は、NY-ESO-1-発現SK-MEL-37(SK37)と、同族NY-ESO-1
157-170(ESO
157-170)ペプチドをパルシングした又はしなかったNY-ESO-1-ネガティブSK-MEL-29(SK29)と共培養後、細胞内サイトカイン染色によって調べられた。(B)は、NY-ESO-1-特異的CD4
+及びCD8
+T細胞クローンによる細胞内及び細胞外NY-ESO-1認識の差を示す。NY-ESO-1-ネガティブSK-MEL-29は、パルスされないか(図中では非パルス)または、NY-ESO-1
157-170ペプチド(図中ではペプチド)もしくは組換えNY-ESO-1タンパク質(図中ではタンパク質)でパルスされるか、細胞内NY-ESO-1発現を誘発するアデノウイルスベクターに感染されられた。TR-CD4、NTR-CD4及びNY-ESO-1-特異的CD8
+T細胞クローンによる認識は、IFN-γELISPOTアッセイで評価された。
【0011】
【
図2】(A)TR-CD4(Clone:JM)は、SK-MEL-37と共培養された。培養上清は、培養の1〜4日後に収集された。表示された上清中のサイトカイン及び溶解性分子のレベルは、ELISAによって測定された。(B)TR-CD4及びNTR-CD4は、SK-MEL-37と共培養され、SK-MEL-37(SK37)における初期アポトーシスマーカー、アネキシンVの発現はフローサイトメトリーで測定された。
【0012】
【
図3】表示された比率のTR-CD4(Clone:JM)の存在下または不存在下で、NY-ESO-1-特異的CD8
+T細胞クローン(ESO-CD8)は、SK-MEL-37と1:2の比率で共培養された。SK-MEL-37におけるESO-CD8による細胞傷害活性は、CFSEによる細胞毒性試験によって評価された。
【0013】
【
図4】(A)NY-ESO-1-特異的CD8
+T細胞クローン(ESO-CD8)は、TR-CD4(Clone:JM)の存在下または不存在下で、SK-MEL-37(SK37)によってまたはそれ無しで刺激された。4日後、CD8
+T細胞の数は、フローサイトメトリーによるCD8染色と組み合わされたトリパンブルー排除分析によって数えられた。(B)ESO-CD8は、TR-CD4の存在下または不存在化で、SK37で刺激された。刺激前(0日)及び刺激後(1日及び2日)、ESO-CD8における活性マーカー(CD25、CD69及びCD122)またはセントラルT細胞分化マーカー(CD62L、CCR7及びCD127)の発現は、フローサイトメトリーによって測定された。
【0014】
【
図5】(A)SK-MEL-37は、腫瘍認識CD4
+T細胞クローン(JM:TR-CD4)、非腫瘍認識CD4
+T細胞クローン(NTR-CD4)、及び/又はNY-ESO-1-特異的CD8
+T細胞クローン(ESO-CD8)とともに、または無しでSCIDマウス(6マウス/グループ)に接種された。腫瘍増殖は2〜3日ごとに測定された。(B)腫瘍は、接種後45日で切除され重量測定された。
【0015】
【
図6】(A)実験で使用されたレトロウイルスベクター LTR:末端反復配列;Ψ:パッケージングシグナル;MCS:マルチクローニングサイト;IRES:配列内リボソーム進入部位;eGFP:高感度緑色蛍光タンパク質 (B)TCR発現カセット (I)TCRβ及びα鎖コードcDNA配列は、GSG(Gly-Ser-Gly)リンカー及びP2Aリボソームスキッピング配列によって連結される。(II)TCRβ及びα鎖コードcDNA配列は、フューリンプロテアーゼ認識部位(RAKR(Arg-Ala-Lys-Arg))、SGSG(Ser-Gly-Ser-Gly)リンカー、V5エピトープ、及び、P2Aリボソームスキッピング配列によって連結される。
【0016】
【
図7】多クローン性に活性化されたPBMCは、レトロウイルスベクター(A:JM-TCR;B:SB95-TCR)を導入された。それらは、ペプチドをパルスされた(図中ではパルス)またはパルスされなかった(図中では非パルス)HLA-DRB1
*01+DPB1
*04+細胞と、20時間共培養された。上清中のIFN-γレベルは、ELISAで測定された。NY-ESO-1
157-170及びNY-ESO-1
91-110ペプチドは、JM-TCR及びSB95-TCRの同族ペプチドとして、それぞれ使用された。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本開示は、腫瘍抗原及びMHCクラスII-発現癌細胞を直接認識できるように改変された免疫細胞(T細胞を含むが必ずしもそれらに限定されない)に関する。複数の実施形態において、前記免疫細胞は、CD4
+T細胞、CD8
+T細胞、ナチュラルキラーT細胞、γδT細胞、またはそれらの前駆細胞(造血幹細胞/前駆細胞など)である。いくつかの実施形態では、前記造血/前駆細胞は、CD34、CD117(c-kit)及びCD90(Thy-1)から選択される一以上のマーカーによって特徴付けられる。
【0018】
CD4
+T細胞は、一般的に、マクロファージや樹状細胞等の抗原提示細胞によってMHCクラスII(ヒトではHLAクラスII)上に提示されたペプチドフラグメントを認識することがよく知られている。抗原提示細胞に加えて、多くのヒト癌細胞も、恒常的にまたはIFN-γ-誘導的にMHCクラスIIを発現することが知られているが、ヒト癌細胞上のMHCクラスII発現の役割は、多くが依然として不明のままである。
【0019】
我々は、2つの異なる種類の腫瘍抗原特異的CD4
+T細胞があることを発見した。腫瘍抗原特異的CD4
+T細胞の1つの種類は、本明細書で腫瘍認識CD4
+T細胞(TR-CD4)と呼ばれる。この種類のCD4
+T細胞は、MHC(ヒトではHLA)クラスII発現癌細胞を、抗原特異的及びMHCクラスII拘束的に直接認識する。それに対して、従前から知られていたもう1つの種類の抗原特異的CD4
+T細胞は、本明細書中で、非腫瘍認識CD4
+T細胞(NTR-CD4)と呼ばれる。この種類のT細胞は、抗原提示細胞によって処理された後の外来性の腫瘍抗原ペプチドを認識するだけである。
図1A及び1Bは、これらの異なる機能を実証するデータを表し、TR-CD4による癌細胞の直接認識を明らかにする。
【0020】
癌細胞の直接認識に関するそれらの異なる能力のため、これら2種類のCD4
+T細胞(TR-CD4及びNTR-CD4)は、局所腫瘍部位において異なる役割を果たすと考えられる。何らかの特定の理論に制約されることは意図しないが、TR-CD4細胞は、癌細胞の直接認識によってCD4-ヘルプを提供すると考えられる。本発明は、新規な予防的及び/又は治療的処置方法及び組成物において使用するために、この機能を活用して、TCRポリペプチド及びそれらをコードする組換えポリヌクレオチドを提供する。本明細書に記載されるTCRを発現するようT細胞を操作することによって、我々は、CD4
+細胞に、抗原提示細胞による抗原の提示を必要とすることなく、腫瘍抗原発現癌細胞を直接認識する能力を与えることに成功した。それゆえ、本発明は、癌患者の改良された治療のために、TR-CD4細胞を創造し使用するのに有用な組成物及び方法を含む。
【0021】
組換えTCRを作り使用する試みは以前にもあった。例えば、米国特許第8,008,438(438特許)は、NY-ESO-1タンパク質(NY-ESO-1:157-165)に由来するペプチド配列SLLMWITQCに結合する組換えTCRを開示する。しかしながら、及び重要なことに、438特許の開示は、古典的CD8
+TCRに関係し、これはHLA-A
*0201クラスI拘束(制限)エレメントとの関連でNY-ESO-1:157-165ペプチドを認識するだけである。これは本発明とは大きな相違点を構成する、なぜなら上述したように、本発明の組換えTCRは、クラスII拘束性である。さらに、同じく上述したように、標準的なクラスII拘束と異なり、本発明の組換えTCRを発現するよう操作された細胞は、驚くべきことに、それらが特異的である抗原を認識するために、抗原提示細胞による補助を必要としない。代わりに、それらは、腫瘍細胞によって提示されたペプチドのように生体内に存在する抗原を認識できる。さらに、本発明のTCRは、438特許において開示されたものによってペプチドを認識する。したがって、本発明は、従来技術に対し著しく且つ予期できない発展である。一実施形態では、TR-CD4は、抗原(それに対してTCRがHLAII構成において特異的である)を発現する細胞に直接さらされた際、サイトカイン分泌(IFN-γ生成等)を示すCD4
+細胞である。この性能を有する自然発生細胞由来のTCRを導入することによって、CD4
+T細胞によるNY-ESO-1-発現腫瘍の直接認識性能を与える能力は、予期できなかった。
【0022】
一実施形態では、本発明は、本発明の組換えTCRをコードするポリヌクレオチドを多クローン性に増殖したCD4
+T細胞に導入し、当該ポリヌクレオチドのTCRポリペプチドコード領域を発現させることによって、CD4
+細胞をTR-CD4に変換することを含む。
【0023】
様々な実施形態において、本発明は、特定のTCRポリペプチドをコードする単離及び/又は組換えポリヌクレオチド、当該TCRポリペプチドを発現するよう操作された細胞、当該TCRポリペプチドを発現する細胞を含む医薬製剤、患者の癌に対して予防的及び/又は治療的効果を達成するために、当該医薬製剤を使用する方法を提供する。ある実施形態では、本発明は、異なる癌抗原に特異的な、複数のTCRを発現している細胞の混合物、または本明細書に記載された二以上のTCRを発現している細胞の混合物を提供し、それゆえ、TCRに関して多価と考えられる細胞集団を提示する。本開示において使用される「組換えTCR」は、細胞内に導入されたポリヌクレオチドから発現されたTCRを意味し、当該ポリヌクレオチドの導入前に、当該TCRが細胞の染色体の配列によってコードされていなかったことを意味する。
【0024】
本発明によって提供されるTCRは、アミノ酸配列SLLMWITQCFLPVFからなる抗原であるNY-ESO-1;157-170を認識する能力があるか、または、アミノ酸配列PFATPMEAELARからなる抗原であるNY-ESO-1;95-106を認識する能力がある。上述したように、ある実施形態では、本発明によって提供される細胞は、HLAクラスII分子と会合した抗原と相互作用するTCRを経てこれらの抗原を認識する能力のある改変CD4
+T細胞であり、前記HLAクラスII分子と抗原は、腫瘍細胞によって提示されている。
【0025】
本発明は、本発明の及び本明細書に開示された一以上のTCRポリペプチドをコードするあらゆるポリヌクレオチド配列を含み、DNA及びRNA配列を含み、そのような配列を含む及び/又はそのような配列からなる単離及び/又は組換えポリヌクレオチドを含む。本発明は、前記組換えポリヌクレオチドを含む細胞も含む。前記細胞は、単離細胞であっても、培養液中で成長及び/又は増殖及び/又は維持されている細胞であってもよく、原核細胞または真核細胞であってもよい。原核及び真核細胞培養物は、例えば、本発明のTCR発現ベクターを増殖あるいは増幅するために使用されることができる。複数の実施形態において、前記細胞は、パッケージング・プラスミド(例えば、偽ウイルス粒子のような組換えウイルス粒子中に、発現コンストラクトのRNAコピーを転写及びパッケージングするために使用されるいくつかあるいは全てのタンパク質を提供する)を含むことができる。複数の実施形態において、前記発現ベクターは、細胞内に一時的にまたは安定的に導入される。複数の実施形態において、前記発現ベクターは、それらの製造に使用される細胞の染色体中に組み込まれる。複数の実施形態において、ウイルス粒子等の発現ベクターによって細胞内に導入されるTCRをコードするポリヌクレオチドは、前記細胞の一以上の染色体に組み込まれる。このような細胞は増殖のために使用されてもよく、あるいはそれらは治療的及び/又は予防的アプローチのために使用される細胞であっても良い。前記真核細胞は、本発明のTCR発現コンストラクトがその中に導入された、CD4
+T細胞、CD8
+T細胞、ナチュラルキラーT細胞、γδT細胞、及びそれらの前駆細胞を含む。前記CD4
+T細胞は、いかなる起源に由来してもよく、前記起源はヒト患者を含むがそれに限定されず、当該ヒト患者は、本発明に係るTCRを発現するように一度改変されたCD4
+T細胞の最終的なレシピエントであってもよく、なくてもよい。
【0026】
この開示の実施形態で使用するための発現ベクターは、何らかの適切な発現ベクターであればよい。いくつかの実施形態において、前記発現ベクターは、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、レトロウイルスに由来するような改変ウイルスポリヌクレオチドを含む(レンチウイルスベクター等)。前記発現ベクターは、組換えウイルスに限定されず、DNAプラスミド、及びインビトロで転写されたmRNA等の非ウイルスベクターを含む。
【0027】
上述したポリヌクレオチドによってコードされたポリペプチドに関して、ある面では、本発明はTCRα及びTCRβ鎖を含む機能性TCRを提供し、ここで前記2本の鎖は、互いに物理的結合にて存在し(例えば、コンプレックスで)且つ、互いに非共有結合的につながっているか、または、前記2本の鎖は異なるポリペプチドであるものの、互いに共有結合的につながっている(ペプチド結合とは異なる、ジスルフィドあるいは他の共有結合によってなど)。他の適切な結合は、例えば、置換あるいは非置換ポリアルキレン・グリコール、及びエチレングリコールとプロピレングリコールの組み合わせ(例えば、コポリマーの形態による)を含むことができる。他の実施形態では、前記TCRα及びTCRβ鎖を構成する2つのポリペプチドは、両方とも、融合タンパク質等の単一のポリペプチド中に含まれることができる。ある実施形態では、前記融合タンパク質は、同じオープンリーディングフレーム(ORF)、または異なるORF、あるいは非連続翻訳をもたらすシグナルを含むORFから翻訳されたTCRα鎖アミノ酸配列とTCRβ鎖アミノ酸配列を含む。一実施形態では、前記ORFは、TCRαとTCRβ鎖の間に位置するP2A-介在翻訳スキッピングサイトを含む。P2A含有タンパク質を作るためのコンストラクト(2Aペプチド-結合マルチシストロン性ベクターとも呼ばれる)は、当該分野において既知である(例えば、Gene Transfer: Delivery and Expression of DNA and RNA, A Laboratory Manual, (2007), Friedman et al., International Standard Book Number (ISBN) 978-087969765-5参照)。手短に説明すると、2Aペプチド配列は、コード領域の間に含まれると、2Aペプチド配列中で発生する新規な切断現象を通じて、単一のベクター内で別々のタンパク質生成物の化学量論的な製造を可能にする。2Aペプチド配列は一般に、18〜22のアミノ酸を含む短い配列で、異なるアミノ末端配列を有することができる。それゆえ、一実施形態では、本発明の融合タンパク質は、P2Aアミノ酸配列を含む。複数の実施形態において、本発明の融合タンパク質は、TCRαとTCRβ鎖の間にリンカー配列を含むことができる。ある実施形態では、前記リンカー配列は、GSG(Gly-Ser-Gly)リンカーまたはSGSG(Ser-Gly-Ser-Gly)リンカーを含むことができる。ある実施形態では、前記TCRαとTCRβ鎖は、フューリンプロテアーゼ認識部位(RAKR[Arg-Ala-Lys-Arg]部位等)を含むアミノ酸配列によって互いに連結されている。
【0028】
一実施形態では、TCRをコードする前記発現コンストラクトは、さらなるポリヌクレオチドをコードすることもできる。前記さらなるポリヌクレオチドは、例えば検出可能マーカー(蛍光性または発光性タンパク質等)をコードすることによって、TCR発現細胞の同定(特定)を可能とするものであってもよい。前記さらなるポリヌクレオチドは、チミジンキナーゼ遺伝子等の、TCR発現細胞の選択的除去を可能にするエレメントをコードするものであってもよい。複数の実施形態において、前記さらなるポリヌクレオチドは、内因性にコードされたTCRの発現の阻害を促進するようなものであってもよい。一実施形態において、前記TCRをコードする前記発現コンストラクトは、一以上の内因性TCRのRNAi-介在下方制御を促進できるポリヌクレオチドもコードする。例えば、Okamoto S, et al. (2009) Cancer Research, 69:9003-9011,及び Okamoto S, et al. (2012). Molecular Therapy-Nucleic Acids, 1, e63を参照。一実施形態では、前記TCRをコードする発現コンストラクトは、内因性にコードされたTCRを標的とするshRNAまたはsiRNAをコードすることができる。別の実施形態では、内因性のTCR生成を下方制御するのに使用されるポリヌクレオチドをコードする第二の別の発現コンストラクトを使用することができる。
【0029】
図6は、本発明のTCRポリペプチド及びそれらをコードするポリヌクレオチド/発現ベクターの代表的な構造を提供する。一実施形態では、
図6に概要が示されているように、TCRβ鎖タンパク質のC末端側のアミノ酸配列は、フューリンプロテアーゼ介在切断によって除去され、機能性TCRα及びβ鎖タンパク質を生じる。また、TCR鎖は、β鎖がα鎖との関係でN末端側に配向された発現コンストラクトから発現されることができ、このように、本発明のTCRは、この鎖配向または他の配向も含むことができることが、
図6から認識できる。別の実施形態では、前記TCRα及びβ鎖タンパク質は、同じ細胞に導入された別々の発現ベクターから発現されることができる。
【0030】
本発明に関連して、我々は以下のことも発見した:ある例では、細胞内腫瘍抗原は、腫瘍中のHLAクラスIIのリサイクルを通じてHLAクラスII上に負荷される;腫瘍認識CD4
+T細胞による直接腫瘍認識が、インビボの腫瘍増殖阻害を導く;CD4
+T細胞が、直接腫瘍認識を通じてCD8
+T細胞による細胞傷害性を効率的に増大させる;CD4
+T細胞が、抗原提示細胞を利用しない直接の腫瘍認識を通じて同族の抗原-特異的CD8
+T細胞の増殖、生存、及びメモリー分化をサポートする;同様に、本発明の臨床の場での実施は、改変された腫瘍認識CD4
+T細胞による直接腫瘍認識をもたらし、ヒト患者においてインビボ腫瘍増殖阻害を導き、改変CD4
+T細胞によりCD8
+T細胞の細胞傷害性を効率的に増大させ、且つ、本発明によって改変されたCD4
+T細胞を投与されたヒト患者において、改変CD4
+T細胞が、同族の抗原-特異的CD8
+T細胞の増殖、生存、及びメモリー分化をサポートすると予期される。
【0031】
本発明の改変されたCD4
+T細胞の使用に関して、前記方法は、一般的に、前記CD4
+T細胞を含む組成物の有効量(静脈内または腹腔内注射により典型的には10
10細胞)を、それを必要とする個体に投与することを含む。それを必要とする個体は、様々な実施形態において、NY-ESO-Iを発現する悪性細胞を特徴とする癌を有する、または有する疑いのある、または発症のリスクがある個体である。当該分野においてよく知られているように、NY-ESO-Iは、様々な癌細胞及び腫瘍タイプによって発現される。特定の且つ非限定的な例では、そのような癌は、膀胱癌、脳癌、乳癌、卵巣癌、非小細胞肺癌、骨髄腫、前立腺癌、肉腫及びメラノーマを含む。特定の実施形態は、脂肪肉腫及び肝内胆管癌を含むが、これらに限定されない。前記個体は、初期または進行型のこれらの癌のいずれかを有していてもよく、あるいはこれらの癌のいずれかから完解している状態であってもよい。一実施形態では、本発明の組成物を投与される前記個体は、NY-ESO-1を発現する何らかの癌タイプの再発のリスクを有する。ある実施形態では、前記個体は、NY-ESO-1:157-170及び/又はNY-ESO-1:95-106によって定義されるアミノ酸配列を含むタンパク質を発現する細胞を含む腫瘍を有しているか、有している疑いがあるか、発症するもしくは再発するリスクがある。複数の実施形態において、本開示は、15から24の間のアミノ酸残基長を有するNY-ESO-1のペプチドフラグメントに特異的な組換えTCRを含み、ここでそのようなペプチドは、HLA-IIとの複合体において提示されている。複数の実施形態において、本開示は、HLA-IIとの複合体を形成しているペプチドに特異的な組換えTCRを含み、ここで、前記ペプチドは、NY-ESO-1:157-170及び/又はNY-ESO-1:95-106のアミノ酸配列を含むか、それからなる。
【0032】
本開示は、TCRによって認識される、HLA-クラスII複合体と組み合わされたNY-ESO-1抗原の提示に関与する、組換えTCR、それらを発現している細胞、及び、治療/予防方法を含む。複数の実施形態では、前記HLA-IIは、HLA-DP、HLA-DQ、及びHLA-DRから選択される。複数の実施形態では、前記NY-ESO-1抗原は、HLA-DRB1*01またはHLA-DPB1*04と協働するTCRによって認識される。
【0033】
我々は、この発明において、我々が作製したTR-CD4が、癌細胞の直接認識を通じて複数の分子を製造し、癌細胞のアポトーシスを誘導することを実証する(
図2A及び2B)。重要なことに、TR-CD4が、抗原提示細胞の不存在下で癌細胞の直接認識を経て、腫瘍抗原特異的CD8
+T細胞の細胞傷害活性を効率的に増強することが見出された(
図3)。さらに、癌細胞によってTR-CD4と同時刺激されたCD8
+T細胞は、セントラルメモリーT細胞マーカーを能動的に増殖し、上方制御した(
図4A及び4B)。
【0034】
TR-CD4は、免疫不全マウスにおけるヒト癌細胞の増殖を阻害するために、有意なインビボ抗腫瘍活性を示した(
図5)。さらに、TR-CD4と腫瘍抗原特異的CD8
+T細胞は、生体内の腫瘍増殖を協同的に阻害した(
図5)。このように、本明細書で提示されるデータは、局所腫瘍部位でのTR-CD4の動員が、抗腫瘍免疫応答を増強し、その結果、クリニックにおける広範な使用のために、効果的且つ従来利用できなかった治療的アプローチとなるであろうということを強く示唆する。
【0035】
以下の説明は、本発明の様々な実施形態を作製し使用するために用いられる物質や方法の説明に役立つ実例を提供する。
【0036】
腫瘍認識T細胞レセプター(TCR)遺伝子を用いた遺伝子工学によって、多数のTR-CD4を効率的に産生する方法を開発するために、3つのTR-CD4クローンに由来する完全長のTCR遺伝子が、5'-RACE-PCR技術を使用してクローン化され、配列決定された。以下のTCRが作製された:
1.HLA-DRB1*01-拘束NY-ESO-1:96-106-特異的TR-CD4
(本明細書では、クローン「SB95」と呼ばれる)
2.HLA-DPB1*04-拘束NY-ESO-1:157-170-特異的TR-CD4
(本明細書では、クローン「5B8」と呼ばれる)
3.HLA-DPB1*04-拘束NY-ESO-1:157-170-特異的TR-CD4
(本明細書では、クローン「JM」と呼ばれる)
【0037】
SB95とJMに由来するTCR遺伝子が、レトロウイルス発現ベクター(MSCV-由来pMIG-IIあるいはpMIG-wベクター等)に挿入された。5B8TCR-発現ベクターが同じ方法で作られた。
【0038】
これらのTCR遺伝子のレトロウイルスによる形質導入は、健康な個体から得た末梢血単核細胞(PBMC)由来の多クローン性に増殖したT細胞に、同族ペプチドに対する反応性を効率的に導入した。以下に示されるヌクレオチドとアミノ酸配列は、本発明を実証するために使用されたものを表す。本発明は、本明細書に記載されたTCRコンストラクトのアミノ酸配列をコードするあらゆるポリヌクレオチド配列を含む。さらに、前記TCR中のアミノ酸配列におけるバリエーションが、それらが前記TCRの機能に悪影響を与えない限り、予期される。様々な実施形態において、本発明の組換えTCRを発現する細胞が、NY-ESO-1を発現する腫瘍細胞を直接及び特異的に認識できる限り(ここで、認識は、NY-ESO-1の発現及び、腫瘍細胞によるHLAクラスII拘束様式においてそれから加工されたペプチドの提示に依存する)、本明細書に提示された配列と比較して一以上のアミノ酸の変化を含むTCRは、保存的アミノ酸置換または他の置換、追加あるいは削除を含むであろう。複数の実施形態において、本発明のTCRは、抗原提示細胞の関与なしで、腫瘍細胞上の腫瘍抗原の直接認識を促進するアミノ酸配列を含む。複数の実施形態において、本開示によって提供されるTCRのアミノ酸配列は、本開示の一部である配列表において提供されたアミノ酸配列と、少なくとも95%、96%、97%、98%または99%同様である。様々な実施形態において、本発明のTCRは、同じエピトープについて、自然発生的なTR-CD4のTCRによって示される同族エピトープのためのK
off値と本質的に同じである、本明細書で定義されたその同族エピトープのためのK
off値を有することができる。複数の実施形態において、前記TCRアミノ酸配列は、それらの定常領域における変更を含むことができる。これに関連して、当該分野において、一般に、TCRの定常領域が抗原認識に実質的に寄与しないことが知られている。例えば、TCRのヒト定常領域の一部を、マウス配列に置き換えて、TCRの機能を保持することは可能である(例えば、Goff SL et al. (2010) Cancer Immunology, Immunotherapy, 59: 1551-1560参照)。それゆえ、本明細書に開示されたTCR配列の様々な修正が予期され、それは、特定の鎖の組み合わせを改良する、またはCD3複合体のT細胞シグナルタンパク質とのより強い会合を促進する、または内因性と導入されたTCR間の二量体の形成を阻害する変更を含むが、これらに限定されない。複数の実施形態において、前記アミノ酸の変更は、CDR領域(CDR3領域等)中に存在してもよく、CDR3配列中の、1,2,3またはより多くのアミノ酸の置換を含むが、必ずしもそれらに限定されない。複数の実施形態において、前記アミノ酸の変更は、前記TCRの機能に影響を及ぼさない。
【0039】
特定の具体的な実施形態では、本発明のTCRをコードする前記ポリヌクレオチド配列、前記ポリヌクレオチドによってコードされるTCRα及びTCRβ鎖のアミノ酸配列は以下の通りであり、当該ポリヌクレオチド配列中の翻訳開始及び終始コドンは太字で表される:
「JM」 HLA-DPB1*0401/0402-拘束NY-ESO-1
157-170-特異的腫瘍認識CD4
+T細胞クローン
(a) TCRα及びβ鎖のcDNAヌクレオチド配列
【数1】
(b)TCRα及びβ鎖のアミノ酸配列(TCR可変領域はイタリック体、CDR3領域は太字で表される)
【数2】
「5B8」HLA-DPB1*0401/0402-拘束NY-ESO-1
157-170-特異的腫瘍認識CD4
+T細胞クローン
(a)TCRα及びβ鎖のcDNAヌクレオチド配列
【数3】
(b)TCRα及びβ鎖のアミノ酸配列(TCR可変領域はイタリック体、CDR3領域は太字で表される)
【数4】
「SB95」HLA-DRB1*0101-拘束NY-ESO-1
95-106-特異的腫瘍認識CD4
+T細胞クローン
(a)TCRα及びβ鎖のcDNAヌクレオチド配列
【数5】
(b)TCRα及びβ鎖のアミノ酸配列(TCR可変領域はイタリック体、CDR3領域は太字で表される)
【数6】
【0040】
TCR発現ベクターの説明
ウイルス形質導入は、マウス幹細胞ウイルスベクターpMSCV-由来プラスミド(pMIG-IIやpMIG-w等)を使用して行われた(
図6A)。TCR-発現コンストラクトは、pMIGプラスミドのマルチクローニングサイト(MCS)に挿入された。pMIGプラスミドは、形質導入の有効性が、GFP発現によってモニターできるように、マルチクローニングサイトの後にIRES-GFPを有する。
【0041】
TCRα及びβ鎖タンパク質の等モル発現を誘発するために、TCRα及びβ鎖をコードするcDNAがP2A翻訳スキッピングサイトを含むリンカー配列によって連結された(
図6B(I))。この配列を使用して、mRNAが一つの配列として転写された。P2A配列によるリボソーム・スキッピングのため、2つのタンパク質が前記mRNAから翻訳され、TCRβ-P2A融合タンパク質及びP(Pro)-TCRα鎖タンパク質を産生した。
【0042】
TCR発現カセット(I)におけるTCRβ鎖タンパク質の後に付加されたP2Aペプチドによる潜在的な機能阻害を避けるために、TCRβ鎖遺伝子の後にフューリンプロテアーゼ認識サイト(RAKR)を導入するもう一つのTCR発現カセットが構築された(
図6B(II))。この発現カセットにおいて、TCBβ鎖タンパク質の後の付加ペプチドが、フューリンプロテアーゼ-介在切断によって除去され、その結果、最小の改変を伴うTCRα及びβ鎖タンパク質が発現する。特に、RAKR配列有りまたは無しの発現カセットにおいて、本明細書に示される配列と比べて、アミノ酸は除去されない。しかしながら、RAKR無しのカセットでは(
図6B(I))、GSGリンカーとP2A配列がβ鎖のC末端に付加され、プロリン(P2A由来)が、α鎖のN末端に付加される。RAKR有りのカセットでは(
図6B(II))、アルギニン(RAKR由来)がβ鎖のC末端に付加され、プロリン(P2A由来)が、α鎖のN末端に付加される。このように、いくつかの実施形態では、前記発現ベクターがTCRアミノ酸配列を含む融合タンパク質をコードする。いくつかの実施形態ではTCRアミノ酸配列のみが、本明細書に示されるTCRアミノ酸から選択される。
【0043】
前記TCR発現配列は、pMIGプラスミドのマルチクローニングサイトにクローン化された。レトロウイルスは、クロンテック社(Clontech)から販売されているGP2-293とPT67パッケージング細胞株を使用して、一時的にまたは安定的に製造された。手短に説明すると、GP2-293は、ウイルスgag-pol遺伝子を安定に発現し、それらはpMIGとpVSV-Gの同時導入後、一時的にVSV-Gウイルス・エンベロープ発現プラスミドを製造する。PT67は、ウイルスgag-pol及び10A1ウイルス・エンベロープ遺伝子を安定に発現する。GP2-293から製造されたレトロウイルスによる感染後、PT67は、pMIG由来の発現コンストラクトと一体化され、それゆえ安定的に(持続的に)レトロウイルスを産生する。一実施形態では、5'-LTR(末端反復配列)のプロモーター活性は、導入遺伝子発現を行わせるために使用される。しかしながら、EF-1αプロモーター等の他のプロモーターが、導入遺伝子発現の増強のために導入されることができる。
【0044】
PBMC-由来T細胞へのレトロウイルスの感染
PBMC(全細胞)が、密度勾配分離法によって得られ、使用するまで、90%のウシ胎児血清(FBS)と10%のジメチルスルホキシド(DMSO)中で、液体窒素タンク中で保管された。PBMC(3-4×10
6細胞/ウェル;24-ウェル培養プレート)は、培地(10%FBS、L-グルタミン、ストレプトマイシン、ペニシリン及びヒト組換えIL-2を含むRPMI1640培地)中で2日間、10μg/mLのフォトヘマグルチニン(PHA)によって多クローン的に活性化された。100μL培地中の1×10
5のプレ活性化PBMCが、PBS中の20〜25μg/mLのレトロネクチンでプレコートされ、PBS中の2%のウシ血清アルブミン(BSA)でブロックされた96ウェル培養プレートのウェルに添加された。いくつかの実験では、5μg/mLの抗CD3モノクローナル抗体(クローン:OKT3)が、レトロネクチンとともにコートされた。100μLのレトロウイルスを含む上清が、PBMCに添加され24時間インキュベートされた。レトロウイルス感染は、24時間ごとに2〜3回実施された。感染後、細胞は10〜14日間増殖され、機能分析のために使用された。
【0046】
高力価レトロウイルス産生PT67クローンが樹立された。以下のレトロウイルス産生クローンが樹立された。
(1)pMIG-II/JM-TCR(II)
(2)pMIG-II/SB95-TCR(II)
(3)pMIG-w/JM-TCR(I)
(4)pMIG-w/SB95-TCR(I)
(5)pMIG-w/JM-TCR(II)
(6)pMIG-w/SB95-TCR(II)
【0047】
上に列挙されたリストにおいて、(I)及び(II)は、
図6Bにそれぞれ示されるように、フューリンプロテアーゼ認識サイト(RAKR)無し及び有りの発現カセットである。ジャーカット細胞への単独感染後のGFP発現によって測定された形質導入の有効性は、(1)で60%、(2)で55%、(3)で75%、(4)で75%、(5)で64%;及び(6)で62%であった。
【0048】
レトロウイルスベクター(1)及び(2)は、多クローン性に活性化されたPBMCに導入された。GFP発現によって測定された形質導入の有効性は、約40〜50%であった。レトロウイルスによって発現されたTCRの反応性は、元のTR-CD4クローンによって認識される同じNY-ESO-1-由来同族ペプチド(SB95-TCRについてはNY-ESO-1:91-110、及びJM-TCRについてはNY-ESO-1:157-170)に対してテストされた。ペプチド-非パルス標的細胞よりも、ペプチド-パルス標的細胞に対して、有意に多いIFN-γが産生され(
図7)、これはクローン化TCR遺伝子が、それらがウイルスベクターによって形質導入された際、元のTR-CD4クローンと同じ抗原特異性を導入する機能があることを実証する。残りのTCR発現ベクターの機能テストは、同じ方法(本明細書に開示されたTCR遺伝子を移入するレトロウイルスで、活性化ヒト末梢血単核細胞を感染させることによって等)で実施されることができる。TCR遺伝子が形質導入された細胞及び形質導入されなかった細胞は、NY-ESO-1-発現細胞株または腫瘍サンプル、及び、適切な手段(ELISA等)を使用して測定される当該形質導入細胞によって産生されたIFN-γとともに、24時間共培養されることができる。TCR遺伝子が形質導入された細胞による、上清中のIFN-γ濃度は、NY-ESO-1を発現する細胞又はNY-ESO-1ペプチドパルス細胞とともに共培養された際により高くなり、他方、NY-ESO-1を発現しない細胞とともに共培養された細胞は、有意に少ないIFN-γ産生を示すであろう。同様に、形質導入無しの細胞等のネガティブコントロールは、有意に少ないIFN-γ産生を示すであろう。このように、代表的な組換えTCRの遺伝子導入は、癌細胞上のNY-ESO-1抗原を直接認識する同じ抗原特異性を有するという細胞の能力をもたらすであろう(前記細胞は、その中に当該TCRをコードするポリヌクレオチドを含む)。
【0049】
本発明は、説明の目的のために詳細に記載されてきたが、そのような詳細は単に説明の目的のためであり、続く特許請求の範囲によって定義される本発明の精神及び範囲を逸脱しない限り、当業者によって変更が加えられてもよいことが理解される。