特許第6612963号(P6612963)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6612963腫瘍抗原を直接認識するために組換えT細胞レセプターを使用するための組成物及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6612963
(24)【登録日】2019年11月8日
(45)【発行日】2019年11月27日
(54)【発明の名称】腫瘍抗原を直接認識するために組換えT細胞レセプターを使用するための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/10 20060101AFI20191118BHJP
   C12N 5/0789 20100101ALI20191118BHJP
   A61K 35/28 20150101ALI20191118BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20191118BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20191118BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20191118BHJP
【FI】
   C12N5/10ZNA
   C12N5/0789
   A61K35/28
   A61K48/00
   A61P35/00
   !C12N15/12
【請求項の数】4
【外国語出願】
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2018-244112(P2018-244112)
(22)【出願日】2018年12月27日
(62)【分割の表示】特願2016-501939(P2016-501939)の分割
【原出願日】2014年3月13日
(65)【公開番号】特開2019-80568(P2019-80568A)
(43)【公開日】2019年5月30日
【審査請求日】2018年12月28日
(31)【優先権主張番号】61/778,673
(32)【優先日】2013年3月13日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504206056
【氏名又は名称】ヘルス リサーチ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】HEALTH RESEARCH, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】特許業務法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】オドゥンシ,クンレ
(72)【発明者】
【氏名】松崎 順子
(72)【発明者】
【氏名】辻 武正
【審査官】 小林 薫
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/038055(WO,A1)
【文献】 国際公開第2007/131092(WO,A2)
【文献】 特表2003−520606(JP,A)
【文献】 特表2009−544328(JP,A)
【文献】 特表2009−506753(JP,A)
【文献】 特表平11−503014(JP,A)
【文献】 J. Immunother., 2006, Vol.29, No.4, p.398-406
【文献】 J. Immunol., 2008. Vol.180, No.9, p.6116-6131
【文献】 Int. J. Cancer, 2009, Vol.125, p.649-655
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00− 7/08
C12N 15/00−15/90
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
T細胞レセプタ−(TCR)をコードする組換えポリヌクレオチドを含む改変ヒト造血幹細胞であって、
前記組換えポリヌクレオチドが、配列番号3の配列を有するTCRα鎖及び配列番号4の配列を有するTCRβ鎖をコードするか、または前記組換えポリヌクレオチドが、配列番号11の配列を有するTCRα鎖及び配列番号12の配列を有するTCRβ鎖をコードすること
を特徴とする、改変ヒト造血幹細胞。
【請求項2】
前記α鎖及び/又は前記β鎖をコードする配列がイントロンを含まない、請求項1に記載の改変ヒト造血幹細胞。
【請求項3】
癌が発症または再発していると診断された、その疑いがある、またはそのリスクがある個体を予防及び/又は治療するための組成物であって、前記癌は、NY-ESO-1抗原を発現する癌細胞を有し、当該組成物は、T細胞レセプタ−(TCR)をコードする組換えポリヌクレオチドを含む改変ヒト造血幹細胞を含み、前記組換えポリヌクレオチドは、配列番号3の配列を有するTCRα鎖及び配列番号4の配列を有するTCRβ鎖をコードしているか、または配列番号11の配列を有するTCRα鎖及び配列番号12の配列を有するTCRβ鎖をコードしている、組成物。
【請求項4】
前記癌細胞が、膀胱癌細胞、脳癌細胞、乳癌細胞、胃癌細胞、食道癌細胞、頭頸部癌細胞、肝胆道癌細胞、腎臓癌細胞、卵巣癌細胞、非小細胞肺癌細胞、骨髄腫 、前立腺癌細胞、肉腫細胞、精巣癌細胞、メラノーマ細胞、またはそれらの組み合わせから選択される、請求項3に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
この出願は、2013年3月13日に出願された米国出願61/778,673に基づく優先権を主張し、その開示は参照により本明細書中に包含される。
【技術分野】
【0002】
本開示は、一般に免疫療法に関し、より具体的には、T細胞に直接腫瘍認識能力を付与できる組換えT細胞レセプターに関する。
【背景技術】
【0003】
腫瘍抗原特異的CD4+ヘルパーT細胞は、「CD4-ヘルプ」を提供することによって、抗腫瘍免疫応答の誘導及び維持に重要な役割を果たす。局所腫瘍部位におけるCD4+T細胞の活性化は、多重免疫抑制メカニズムを克服するのに役立ち、免疫システムによる腫瘍根絶を促進すると信じられている。しかしながら、局所腫瘍部位における機能的抗原提示細胞の頻繁な欠如により、局所腫瘍部位におけるCD4+T細胞の活性化及びそれに基づくCD4-ヘルプの提供は非常に制限される。したがって、CD4+T細胞の活性化及びそれに基づくCD4-ヘルプの提供を達成できる新規な組成物及び方法を提供するという、満たされていない継続したニーズが存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示は、様々な癌の予防及び/又は治療のための組成物及び方法を提供する。一般に、前記癌は、周知のNY-ESO-1抗原を発現する癌である。いくつかの実施形態では、前記開示は、組換えT細胞レセプター(TCR)、それらをコードするポリヌクレオチド、前記ポリヌクレオチドを含む発現ベクター、前記ポリヌクレオチドが導入された細胞を含み、前記細胞には、CD4+T細胞、CD8+T細胞、ナチュラルキラーT細胞、γδT細胞、及び造血幹細胞等の前駆細胞が含まれるが、必ずしもこれらに限定されない。いくつかの実施形態において、前記ポリヌクレオチドが導入された前記細胞は、リンパ球前駆細胞、未熟胸腺細胞(ダブルネガティブCD4-CD8-)、またはダブルポジティブ胸腺細胞(CD4+CD8+)である。いくつかの実施形態において、前記前駆細胞は、CD34, CD117(c-kit)及びCD90(Thy-1)等のマーカーを含む。
【0005】
一形態において、本開示は、TCRをコードする組換えポリヌクレオチドを含む改変ヒトT細胞を含み、当該T細胞は、NY-ESO-1抗原を発現している癌細胞を直接認識する能力があり、当該癌細胞の直接認識は、前記癌細胞によって発現されたNY-ESO-1抗原への、TCRの、ヒト白血球抗原(HLA)クラスII-拘束(制限)性結合を含む。特定の実施形態において、前記ポリヌクレオチドによってコードされた及び前記細胞によって発現されたTCRは、配列番号3の配列を有するTCRα鎖及び配列番号4の配列を有するTCRβ鎖、または配列番号7の配列を有するTCRα鎖及び配列番号8の配列を有するTCRβ鎖、または配列番号11の配列を有するTCRα鎖及び配列番号12の配列を有するTCRβ鎖を有する。このようなα及びβ鎖の組み合わせの全ては、本開示中に含まれる。一実施形態では、請求項1の改変細胞において、前記α鎖及び/又は前記β鎖をコードする配列は、イントロンを含まない。いくつかの実施形態では、本開示のTCRは、本明細書に開示されたアミノ酸配列の長さにわたり95%、96%、97%、98%または99%のアミノ酸配列相同性を有するアミノ酸配列を含む。
【0006】
別の形態では、本開示は、癌が発症または再発していると診断された、その疑いのある、またはそのリスクがある個体を予防及び/又は治療する方法を含み、ここで、前記癌は、NY-ESO-1抗原を発現するがん細胞を有する。このアプローチは、前記個体に、TCRをコードする組換えポリヌクレオチドを含む改変ヒトT細胞を投与することを含み、前記T細胞は、NY-ESO-1抗原を発現している癌細胞を直接認識する能力を有し、前記癌細胞の直接認識は、前記癌細胞によって発現されたNY-ESO-1抗原への、TCRのHLAクラスII-拘束性結合を含む。いくつかの実施形態では、前記組換えTCRを含む細胞は、ヒトCD4+T細胞である。いくつかの実施形態では、前記個体に投与される前記組換えTCRを含む細胞は、同種細胞、同系細胞、または自己細胞である。それゆえ、一実施形態において、前記細胞は、第一の個体から採取され、改変され及びそれを必要とする第二の個体に投与される。別の実施形態において、前記細胞は、事前に個体から取り除かれ、組換えTCRを発現するよう改変され、同じ個体に投与される。
【0007】
いくつかの実施形態では、前記NY-ESO-1抗原を発現する癌は、膀胱癌細胞、脳癌細胞、乳癌細胞、胃癌細胞、食道癌細胞、頭頸部癌細胞、肝胆道癌細胞、腎臓癌細胞、卵巣癌細胞、非小細胞肺癌細胞、骨髄腫、前立腺癌細胞、肉腫細胞、精巣癌細胞、メラノーマ細胞、及びそれらの組み合わせから選択される。
【0008】
別の形態では、本開示は一以上の発現ベクターを含む。前記発現ベクター(単数または複数)は、それを発現する細胞に、NY-ESO-1抗原を発現する癌細胞を直接認識する能力を付与することができるTCRをコードし、前記癌細胞の直接認識は、前記癌細胞によって発現されたNY-ESO-1抗原への、TCRのHLAクラスII-拘束性結合を含む。
【0009】
別のアプローチでは、発現ベクター及び/又は組換えTCRを発現する細胞を製造する方法が提供される。前記方法は、個体から複数のT細胞を採取すること、当該T細胞に対してNY-ESO-1抗原を提示する抗原提示細胞が無くても、HLAクラスIIに制限された様式にて、NY-ESO-1抗原を呈する癌細胞を直接認識する能力を有するT細胞を同定すること、前記TCRのα鎖の配列及び前記TCRのβ鎖の配列を決定すること、前記TCRのα鎖の配列及び前記TCRのβ鎖の配列をコードするポリヌクレオチド配列を発現ベクターに導入することを含む。一実施形態では、この方法は、前記発現ベクターを、前記TCRが発現されるように、細胞に導入することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】(A)は、JM CD4+T細胞クローンによる癌細胞の直接認識を示す。NY-ESO-1157-170ペプチド-特異的腫瘍認識CD4+T細胞クローン(Clone:JM)(TR-CD4)及び非腫瘍認識CD4+T細胞クローン(NTR-CD4)のインターフェロン(IFN)-γ及びCD107発現は、NY-ESO-1-発現SK-MEL-37(SK37)と、同族NY-ESO-1157-170(ESO157-170)ペプチドをパルシングした又はしなかったNY-ESO-1-ネガティブSK-MEL-29(SK29)と共培養後、細胞内サイトカイン染色によって調べられた。(B)は、NY-ESO-1-特異的CD4+及びCD8+T細胞クローンによる細胞内及び細胞外NY-ESO-1認識の差を示す。NY-ESO-1-ネガティブSK-MEL-29は、パルスされないか(図中では非パルス)または、NY-ESO-1157-170ペプチド(図中ではペプチド)もしくは組換えNY-ESO-1タンパク質(図中ではタンパク質)でパルスされるか、細胞内NY-ESO-1発現を誘発するアデノウイルスベクターに感染されられた。TR-CD4、NTR-CD4及びNY-ESO-1-特異的CD8+T細胞クローンによる認識は、IFN-γELISPOTアッセイで評価された。
【0011】
図2】(A)TR-CD4(Clone:JM)は、SK-MEL-37と共培養された。培養上清は、培養の1〜4日後に収集された。表示された上清中のサイトカイン及び溶解性分子のレベルは、ELISAによって測定された。(B)TR-CD4及びNTR-CD4は、SK-MEL-37と共培養され、SK-MEL-37(SK37)における初期アポトーシスマーカー、アネキシンVの発現はフローサイトメトリーで測定された。
【0012】
図3】表示された比率のTR-CD4(Clone:JM)の存在下または不存在下で、NY-ESO-1-特異的CD8+T細胞クローン(ESO-CD8)は、SK-MEL-37と1:2の比率で共培養された。SK-MEL-37におけるESO-CD8による細胞傷害活性は、CFSEによる細胞毒性試験によって評価された。
【0013】
図4】(A)NY-ESO-1-特異的CD8+T細胞クローン(ESO-CD8)は、TR-CD4(Clone:JM)の存在下または不存在下で、SK-MEL-37(SK37)によってまたはそれ無しで刺激された。4日後、CD8+T細胞の数は、フローサイトメトリーによるCD8染色と組み合わされたトリパンブルー排除分析によって数えられた。(B)ESO-CD8は、TR-CD4の存在下または不存在化で、SK37で刺激された。刺激前(0日)及び刺激後(1日及び2日)、ESO-CD8における活性マーカー(CD25、CD69及びCD122)またはセントラルT細胞分化マーカー(CD62L、CCR7及びCD127)の発現は、フローサイトメトリーによって測定された。
【0014】
図5】(A)SK-MEL-37は、腫瘍認識CD4+T細胞クローン(JM:TR-CD4)、非腫瘍認識CD4+T細胞クローン(NTR-CD4)、及び/又はNY-ESO-1-特異的CD8+T細胞クローン(ESO-CD8)とともに、または無しでSCIDマウス(6マウス/グループ)に接種された。腫瘍増殖は2〜3日ごとに測定された。(B)腫瘍は、接種後45日で切除され重量測定された。
【0015】
図6】(A)実験で使用されたレトロウイルスベクター LTR:末端反復配列;Ψ:パッケージングシグナル;MCS:マルチクローニングサイト;IRES:配列内リボソーム進入部位;eGFP:高感度緑色蛍光タンパク質 (B)TCR発現カセット (I)TCRβ及びα鎖コードcDNA配列は、GSG(Gly-Ser-Gly)リンカー及びP2Aリボソームスキッピング配列によって連結される。(II)TCRβ及びα鎖コードcDNA配列は、フューリンプロテアーゼ認識部位(RAKR(Arg-Ala-Lys-Arg))、SGSG(Ser-Gly-Ser-Gly)リンカー、V5エピトープ、及び、P2Aリボソームスキッピング配列によって連結される。
【0016】
図7】多クローン性に活性化されたPBMCは、レトロウイルスベクター(A:JM-TCR;B:SB95-TCR)を導入された。それらは、ペプチドをパルスされた(図中ではパルス)またはパルスされなかった(図中では非パルス)HLA-DRB1*01+DPB1*04+細胞と、20時間共培養された。上清中のIFN-γレベルは、ELISAで測定された。NY-ESO-1157-170及びNY-ESO-191-110ペプチドは、JM-TCR及びSB95-TCRの同族ペプチドとして、それぞれ使用された。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本開示は、腫瘍抗原及びMHCクラスII-発現癌細胞を直接認識できるように改変された免疫細胞(T細胞を含むが必ずしもそれらに限定されない)に関する。複数の実施形態において、前記免疫細胞は、CD4+T細胞、CD8+T細胞、ナチュラルキラーT細胞、γδT細胞、またはそれらの前駆細胞(造血幹細胞/前駆細胞など)である。いくつかの実施形態では、前記造血/前駆細胞は、CD34、CD117(c-kit)及びCD90(Thy-1)から選択される一以上のマーカーによって特徴付けられる。
【0018】
CD4+T細胞は、一般的に、マクロファージや樹状細胞等の抗原提示細胞によってMHCクラスII(ヒトではHLAクラスII)上に提示されたペプチドフラグメントを認識することがよく知られている。抗原提示細胞に加えて、多くのヒト癌細胞も、恒常的にまたはIFN-γ-誘導的にMHCクラスIIを発現することが知られているが、ヒト癌細胞上のMHCクラスII発現の役割は、多くが依然として不明のままである。
【0019】
我々は、2つの異なる種類の腫瘍抗原特異的CD4+T細胞があることを発見した。腫瘍抗原特異的CD4+T細胞の1つの種類は、本明細書で腫瘍認識CD4+T細胞(TR-CD4)と呼ばれる。この種類のCD4+T細胞は、MHC(ヒトではHLA)クラスII発現癌細胞を、抗原特異的及びMHCクラスII拘束的に直接認識する。それに対して、従前から知られていたもう1つの種類の抗原特異的CD4+T細胞は、本明細書中で、非腫瘍認識CD4+T細胞(NTR-CD4)と呼ばれる。この種類のT細胞は、抗原提示細胞によって処理された後の外来性の腫瘍抗原ペプチドを認識するだけである。図1A及び1Bは、これらの異なる機能を実証するデータを表し、TR-CD4による癌細胞の直接認識を明らかにする。
【0020】
癌細胞の直接認識に関するそれらの異なる能力のため、これら2種類のCD4+T細胞(TR-CD4及びNTR-CD4)は、局所腫瘍部位において異なる役割を果たすと考えられる。何らかの特定の理論に制約されることは意図しないが、TR-CD4細胞は、癌細胞の直接認識によってCD4-ヘルプを提供すると考えられる。本発明は、新規な予防的及び/又は治療的処置方法及び組成物において使用するために、この機能を活用して、TCRポリペプチド及びそれらをコードする組換えポリヌクレオチドを提供する。本明細書に記載されるTCRを発現するようT細胞を操作することによって、我々は、CD4+細胞に、抗原提示細胞による抗原の提示を必要とすることなく、腫瘍抗原発現癌細胞を直接認識する能力を与えることに成功した。それゆえ、本発明は、癌患者の改良された治療のために、TR-CD4細胞を創造し使用するのに有用な組成物及び方法を含む。
【0021】
組換えTCRを作り使用する試みは以前にもあった。例えば、米国特許第8,008,438(438特許)は、NY-ESO-1タンパク質(NY-ESO-1:157-165)に由来するペプチド配列SLLMWITQCに結合する組換えTCRを開示する。しかしながら、及び重要なことに、438特許の開示は、古典的CD8+TCRに関係し、これはHLA-A*0201クラスI拘束(制限)エレメントとの関連でNY-ESO-1:157-165ペプチドを認識するだけである。これは本発明とは大きな相違点を構成する、なぜなら上述したように、本発明の組換えTCRは、クラスII拘束性である。さらに、同じく上述したように、標準的なクラスII拘束と異なり、本発明の組換えTCRを発現するよう操作された細胞は、驚くべきことに、それらが特異的である抗原を認識するために、抗原提示細胞による補助を必要としない。代わりに、それらは、腫瘍細胞によって提示されたペプチドのように生体内に存在する抗原を認識できる。さらに、本発明のTCRは、438特許において開示されたものによってペプチドを認識する。したがって、本発明は、従来技術に対し著しく且つ予期できない発展である。一実施形態では、TR-CD4は、抗原(それに対してTCRがHLAII構成において特異的である)を発現する細胞に直接さらされた際、サイトカイン分泌(IFN-γ生成等)を示すCD4+細胞である。この性能を有する自然発生細胞由来のTCRを導入することによって、CD4+T細胞によるNY-ESO-1-発現腫瘍の直接認識性能を与える能力は、予期できなかった。
【0022】
一実施形態では、本発明は、本発明の組換えTCRをコードするポリヌクレオチドを多クローン性に増殖したCD4+T細胞に導入し、当該ポリヌクレオチドのTCRポリペプチドコード領域を発現させることによって、CD4+細胞をTR-CD4に変換することを含む。
【0023】
様々な実施形態において、本発明は、特定のTCRポリペプチドをコードする単離及び/又は組換えポリヌクレオチド、当該TCRポリペプチドを発現するよう操作された細胞、当該TCRポリペプチドを発現する細胞を含む医薬製剤、患者の癌に対して予防的及び/又は治療的効果を達成するために、当該医薬製剤を使用する方法を提供する。ある実施形態では、本発明は、異なる癌抗原に特異的な、複数のTCRを発現している細胞の混合物、または本明細書に記載された二以上のTCRを発現している細胞の混合物を提供し、それゆえ、TCRに関して多価と考えられる細胞集団を提示する。本開示において使用される「組換えTCR」は、細胞内に導入されたポリヌクレオチドから発現されたTCRを意味し、当該ポリヌクレオチドの導入前に、当該TCRが細胞の染色体の配列によってコードされていなかったことを意味する。
【0024】
本発明によって提供されるTCRは、アミノ酸配列SLLMWITQCFLPVFからなる抗原であるNY-ESO-1;157-170を認識する能力があるか、または、アミノ酸配列PFATPMEAELARからなる抗原であるNY-ESO-1;95-106を認識する能力がある。上述したように、ある実施形態では、本発明によって提供される細胞は、HLAクラスII分子と会合した抗原と相互作用するTCRを経てこれらの抗原を認識する能力のある改変CD4+T細胞であり、前記HLAクラスII分子と抗原は、腫瘍細胞によって提示されている。
【0025】
本発明は、本発明の及び本明細書に開示された一以上のTCRポリペプチドをコードするあらゆるポリヌクレオチド配列を含み、DNA及びRNA配列を含み、そのような配列を含む及び/又はそのような配列からなる単離及び/又は組換えポリヌクレオチドを含む。本発明は、前記組換えポリヌクレオチドを含む細胞も含む。前記細胞は、単離細胞であっても、培養液中で成長及び/又は増殖及び/又は維持されている細胞であってもよく、原核細胞または真核細胞であってもよい。原核及び真核細胞培養物は、例えば、本発明のTCR発現ベクターを増殖あるいは増幅するために使用されることができる。複数の実施形態において、前記細胞は、パッケージング・プラスミド(例えば、偽ウイルス粒子のような組換えウイルス粒子中に、発現コンストラクトのRNAコピーを転写及びパッケージングするために使用されるいくつかあるいは全てのタンパク質を提供する)を含むことができる。複数の実施形態において、前記発現ベクターは、細胞内に一時的にまたは安定的に導入される。複数の実施形態において、前記発現ベクターは、それらの製造に使用される細胞の染色体中に組み込まれる。複数の実施形態において、ウイルス粒子等の発現ベクターによって細胞内に導入されるTCRをコードするポリヌクレオチドは、前記細胞の一以上の染色体に組み込まれる。このような細胞は増殖のために使用されてもよく、あるいはそれらは治療的及び/又は予防的アプローチのために使用される細胞であっても良い。前記真核細胞は、本発明のTCR発現コンストラクトがその中に導入された、CD4+T細胞、CD8+T細胞、ナチュラルキラーT細胞、γδT細胞、及びそれらの前駆細胞を含む。前記CD4+T細胞は、いかなる起源に由来してもよく、前記起源はヒト患者を含むがそれに限定されず、当該ヒト患者は、本発明に係るTCRを発現するように一度改変されたCD4+T細胞の最終的なレシピエントであってもよく、なくてもよい。
【0026】
この開示の実施形態で使用するための発現ベクターは、何らかの適切な発現ベクターであればよい。いくつかの実施形態において、前記発現ベクターは、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、レトロウイルスに由来するような改変ウイルスポリヌクレオチドを含む(レンチウイルスベクター等)。前記発現ベクターは、組換えウイルスに限定されず、DNAプラスミド、及びインビトロで転写されたmRNA等の非ウイルスベクターを含む。
【0027】
上述したポリヌクレオチドによってコードされたポリペプチドに関して、ある面では、本発明はTCRα及びTCRβ鎖を含む機能性TCRを提供し、ここで前記2本の鎖は、互いに物理的結合にて存在し(例えば、コンプレックスで)且つ、互いに非共有結合的につながっているか、または、前記2本の鎖は異なるポリペプチドであるものの、互いに共有結合的につながっている(ペプチド結合とは異なる、ジスルフィドあるいは他の共有結合によってなど)。他の適切な結合は、例えば、置換あるいは非置換ポリアルキレン・グリコール、及びエチレングリコールとプロピレングリコールの組み合わせ(例えば、コポリマーの形態による)を含むことができる。他の実施形態では、前記TCRα及びTCRβ鎖を構成する2つのポリペプチドは、両方とも、融合タンパク質等の単一のポリペプチド中に含まれることができる。ある実施形態では、前記融合タンパク質は、同じオープンリーディングフレーム(ORF)、または異なるORF、あるいは非連続翻訳をもたらすシグナルを含むORFから翻訳されたTCRα鎖アミノ酸配列とTCRβ鎖アミノ酸配列を含む。一実施形態では、前記ORFは、TCRαとTCRβ鎖の間に位置するP2A-介在翻訳スキッピングサイトを含む。P2A含有タンパク質を作るためのコンストラクト(2Aペプチド-結合マルチシストロン性ベクターとも呼ばれる)は、当該分野において既知である(例えば、Gene Transfer: Delivery and Expression of DNA and RNA, A Laboratory Manual, (2007), Friedman et al., International Standard Book Number (ISBN) 978-087969765-5参照)。手短に説明すると、2Aペプチド配列は、コード領域の間に含まれると、2Aペプチド配列中で発生する新規な切断現象を通じて、単一のベクター内で別々のタンパク質生成物の化学量論的な製造を可能にする。2Aペプチド配列は一般に、18〜22のアミノ酸を含む短い配列で、異なるアミノ末端配列を有することができる。それゆえ、一実施形態では、本発明の融合タンパク質は、P2Aアミノ酸配列を含む。複数の実施形態において、本発明の融合タンパク質は、TCRαとTCRβ鎖の間にリンカー配列を含むことができる。ある実施形態では、前記リンカー配列は、GSG(Gly-Ser-Gly)リンカーまたはSGSG(Ser-Gly-Ser-Gly)リンカーを含むことができる。ある実施形態では、前記TCRαとTCRβ鎖は、フューリンプロテアーゼ認識部位(RAKR[Arg-Ala-Lys-Arg]部位等)を含むアミノ酸配列によって互いに連結されている。
【0028】
一実施形態では、TCRをコードする前記発現コンストラクトは、さらなるポリヌクレオチドをコードすることもできる。前記さらなるポリヌクレオチドは、例えば検出可能マーカー(蛍光性または発光性タンパク質等)をコードすることによって、TCR発現細胞の同定(特定)を可能とするものであってもよい。前記さらなるポリヌクレオチドは、チミジンキナーゼ遺伝子等の、TCR発現細胞の選択的除去を可能にするエレメントをコードするものであってもよい。複数の実施形態において、前記さらなるポリヌクレオチドは、内因性にコードされたTCRの発現の阻害を促進するようなものであってもよい。一実施形態において、前記TCRをコードする前記発現コンストラクトは、一以上の内因性TCRのRNAi-介在下方制御を促進できるポリヌクレオチドもコードする。例えば、Okamoto S, et al. (2009) Cancer Research, 69:9003-9011,及び Okamoto S, et al. (2012). Molecular Therapy-Nucleic Acids, 1, e63を参照。一実施形態では、前記TCRをコードする発現コンストラクトは、内因性にコードされたTCRを標的とするshRNAまたはsiRNAをコードすることができる。別の実施形態では、内因性のTCR生成を下方制御するのに使用されるポリヌクレオチドをコードする第二の別の発現コンストラクトを使用することができる。
【0029】
図6は、本発明のTCRポリペプチド及びそれらをコードするポリヌクレオチド/発現ベクターの代表的な構造を提供する。一実施形態では、図6に概要が示されているように、TCRβ鎖タンパク質のC末端側のアミノ酸配列は、フューリンプロテアーゼ介在切断によって除去され、機能性TCRα及びβ鎖タンパク質を生じる。また、TCR鎖は、β鎖がα鎖との関係でN末端側に配向された発現コンストラクトから発現されることができ、このように、本発明のTCRは、この鎖配向または他の配向も含むことができることが、図6から認識できる。別の実施形態では、前記TCRα及びβ鎖タンパク質は、同じ細胞に導入された別々の発現ベクターから発現されることができる。
【0030】
本発明に関連して、我々は以下のことも発見した:ある例では、細胞内腫瘍抗原は、腫瘍中のHLAクラスIIのリサイクルを通じてHLAクラスII上に負荷される;腫瘍認識CD4+T細胞による直接腫瘍認識が、インビボの腫瘍増殖阻害を導く;CD4+T細胞が、直接腫瘍認識を通じてCD8+T細胞による細胞傷害性を効率的に増大させる;CD4+T細胞が、抗原提示細胞を利用しない直接の腫瘍認識を通じて同族の抗原-特異的CD8+T細胞の増殖、生存、及びメモリー分化をサポートする;同様に、本発明の臨床の場での実施は、改変された腫瘍認識CD4+T細胞による直接腫瘍認識をもたらし、ヒト患者においてインビボ腫瘍増殖阻害を導き、改変CD4+T細胞によりCD8+T細胞の細胞傷害性を効率的に増大させ、且つ、本発明によって改変されたCD4+T細胞を投与されたヒト患者において、改変CD4+T細胞が、同族の抗原-特異的CD8+T細胞の増殖、生存、及びメモリー分化をサポートすると予期される。
【0031】
本発明の改変されたCD4+T細胞の使用に関して、前記方法は、一般的に、前記CD4+T細胞を含む組成物の有効量(静脈内または腹腔内注射により典型的には1010細胞)を、それを必要とする個体に投与することを含む。それを必要とする個体は、様々な実施形態において、NY-ESO-Iを発現する悪性細胞を特徴とする癌を有する、または有する疑いのある、または発症のリスクがある個体である。当該分野においてよく知られているように、NY-ESO-Iは、様々な癌細胞及び腫瘍タイプによって発現される。特定の且つ非限定的な例では、そのような癌は、膀胱癌、脳癌、乳癌、卵巣癌、非小細胞肺癌、骨髄腫、前立腺癌、肉腫及びメラノーマを含む。特定の実施形態は、脂肪肉腫及び肝内胆管癌を含むが、これらに限定されない。前記個体は、初期または進行型のこれらの癌のいずれかを有していてもよく、あるいはこれらの癌のいずれかから完解している状態であってもよい。一実施形態では、本発明の組成物を投与される前記個体は、NY-ESO-1を発現する何らかの癌タイプの再発のリスクを有する。ある実施形態では、前記個体は、NY-ESO-1:157-170及び/又はNY-ESO-1:95-106によって定義されるアミノ酸配列を含むタンパク質を発現する細胞を含む腫瘍を有しているか、有している疑いがあるか、発症するもしくは再発するリスクがある。複数の実施形態において、本開示は、15から24の間のアミノ酸残基長を有するNY-ESO-1のペプチドフラグメントに特異的な組換えTCRを含み、ここでそのようなペプチドは、HLA-IIとの複合体において提示されている。複数の実施形態において、本開示は、HLA-IIとの複合体を形成しているペプチドに特異的な組換えTCRを含み、ここで、前記ペプチドは、NY-ESO-1:157-170及び/又はNY-ESO-1:95-106のアミノ酸配列を含むか、それからなる。
【0032】
本開示は、TCRによって認識される、HLA-クラスII複合体と組み合わされたNY-ESO-1抗原の提示に関与する、組換えTCR、それらを発現している細胞、及び、治療/予防方法を含む。複数の実施形態では、前記HLA-IIは、HLA-DP、HLA-DQ、及びHLA-DRから選択される。複数の実施形態では、前記NY-ESO-1抗原は、HLA-DRB1*01またはHLA-DPB1*04と協働するTCRによって認識される。
【0033】
我々は、この発明において、我々が作製したTR-CD4が、癌細胞の直接認識を通じて複数の分子を製造し、癌細胞のアポトーシスを誘導することを実証する(図2A及び2B)。重要なことに、TR-CD4が、抗原提示細胞の不存在下で癌細胞の直接認識を経て、腫瘍抗原特異的CD8+T細胞の細胞傷害活性を効率的に増強することが見出された(図3)。さらに、癌細胞によってTR-CD4と同時刺激されたCD8+T細胞は、セントラルメモリーT細胞マーカーを能動的に増殖し、上方制御した(図4A及び4B)。
【0034】
TR-CD4は、免疫不全マウスにおけるヒト癌細胞の増殖を阻害するために、有意なインビボ抗腫瘍活性を示した(図5)。さらに、TR-CD4と腫瘍抗原特異的CD8+T細胞は、生体内の腫瘍増殖を協同的に阻害した(図5)。このように、本明細書で提示されるデータは、局所腫瘍部位でのTR-CD4の動員が、抗腫瘍免疫応答を増強し、その結果、クリニックにおける広範な使用のために、効果的且つ従来利用できなかった治療的アプローチとなるであろうということを強く示唆する。
【0035】
以下の説明は、本発明の様々な実施形態を作製し使用するために用いられる物質や方法の説明に役立つ実例を提供する。
【0036】
腫瘍認識T細胞レセプター(TCR)遺伝子を用いた遺伝子工学によって、多数のTR-CD4を効率的に産生する方法を開発するために、3つのTR-CD4クローンに由来する完全長のTCR遺伝子が、5'-RACE-PCR技術を使用してクローン化され、配列決定された。以下のTCRが作製された:
1.HLA-DRB1*01-拘束NY-ESO-1:96-106-特異的TR-CD4
(本明細書では、クローン「SB95」と呼ばれる)
2.HLA-DPB1*04-拘束NY-ESO-1:157-170-特異的TR-CD4
(本明細書では、クローン「5B8」と呼ばれる)
3.HLA-DPB1*04-拘束NY-ESO-1:157-170-特異的TR-CD4
(本明細書では、クローン「JM」と呼ばれる)
【0037】
SB95とJMに由来するTCR遺伝子が、レトロウイルス発現ベクター(MSCV-由来pMIG-IIあるいはpMIG-wベクター等)に挿入された。5B8TCR-発現ベクターが同じ方法で作られた。
【0038】
これらのTCR遺伝子のレトロウイルスによる形質導入は、健康な個体から得た末梢血単核細胞(PBMC)由来の多クローン性に増殖したT細胞に、同族ペプチドに対する反応性を効率的に導入した。以下に示されるヌクレオチドとアミノ酸配列は、本発明を実証するために使用されたものを表す。本発明は、本明細書に記載されたTCRコンストラクトのアミノ酸配列をコードするあらゆるポリヌクレオチド配列を含む。さらに、前記TCR中のアミノ酸配列におけるバリエーションが、それらが前記TCRの機能に悪影響を与えない限り、予期される。様々な実施形態において、本発明の組換えTCRを発現する細胞が、NY-ESO-1を発現する腫瘍細胞を直接及び特異的に認識できる限り(ここで、認識は、NY-ESO-1の発現及び、腫瘍細胞によるHLAクラスII拘束様式においてそれから加工されたペプチドの提示に依存する)、本明細書に提示された配列と比較して一以上のアミノ酸の変化を含むTCRは、保存的アミノ酸置換または他の置換、追加あるいは削除を含むであろう。複数の実施形態において、本発明のTCRは、抗原提示細胞の関与なしで、腫瘍細胞上の腫瘍抗原の直接認識を促進するアミノ酸配列を含む。複数の実施形態において、本開示によって提供されるTCRのアミノ酸配列は、本開示の一部である配列表において提供されたアミノ酸配列と、少なくとも95%、96%、97%、98%または99%同様である。様々な実施形態において、本発明のTCRは、同じエピトープについて、自然発生的なTR-CD4のTCRによって示される同族エピトープのためのKoff値と本質的に同じである、本明細書で定義されたその同族エピトープのためのKoff値を有することができる。複数の実施形態において、前記TCRアミノ酸配列は、それらの定常領域における変更を含むことができる。これに関連して、当該分野において、一般に、TCRの定常領域が抗原認識に実質的に寄与しないことが知られている。例えば、TCRのヒト定常領域の一部を、マウス配列に置き換えて、TCRの機能を保持することは可能である(例えば、Goff SL et al. (2010) Cancer Immunology, Immunotherapy, 59: 1551-1560参照)。それゆえ、本明細書に開示されたTCR配列の様々な修正が予期され、それは、特定の鎖の組み合わせを改良する、またはCD3複合体のT細胞シグナルタンパク質とのより強い会合を促進する、または内因性と導入されたTCR間の二量体の形成を阻害する変更を含むが、これらに限定されない。複数の実施形態において、前記アミノ酸の変更は、CDR領域(CDR3領域等)中に存在してもよく、CDR3配列中の、1,2,3またはより多くのアミノ酸の置換を含むが、必ずしもそれらに限定されない。複数の実施形態において、前記アミノ酸の変更は、前記TCRの機能に影響を及ぼさない。
【0039】
特定の具体的な実施形態では、本発明のTCRをコードする前記ポリヌクレオチド配列、前記ポリヌクレオチドによってコードされるTCRα及びTCRβ鎖のアミノ酸配列は以下の通りであり、当該ポリヌクレオチド配列中の翻訳開始及び終始コドンは太字で表される:
「JM」 HLA-DPB1*0401/0402-拘束NY-ESO-1157-170-特異的腫瘍認識CD4+T細胞クローン
(a) TCRα及びβ鎖のcDNAヌクレオチド配列
【数1】
(b)TCRα及びβ鎖のアミノ酸配列(TCR可変領域はイタリック体、CDR3領域は太字で表される)
【数2】
「5B8」HLA-DPB1*0401/0402-拘束NY-ESO-1157-170-特異的腫瘍認識CD4+T細胞クローン
(a)TCRα及びβ鎖のcDNAヌクレオチド配列
【数3】
(b)TCRα及びβ鎖のアミノ酸配列(TCR可変領域はイタリック体、CDR3領域は太字で表される)
【数4】
「SB95」HLA-DRB1*0101-拘束NY-ESO-195-106-特異的腫瘍認識CD4+T細胞クローン
(a)TCRα及びβ鎖のcDNAヌクレオチド配列
【数5】
(b)TCRα及びβ鎖のアミノ酸配列(TCR可変領域はイタリック体、CDR3領域は太字で表される)
【数6】
【0040】
TCR発現ベクターの説明
ウイルス形質導入は、マウス幹細胞ウイルスベクターpMSCV-由来プラスミド(pMIG-IIやpMIG-w等)を使用して行われた(図6A)。TCR-発現コンストラクトは、pMIGプラスミドのマルチクローニングサイト(MCS)に挿入された。pMIGプラスミドは、形質導入の有効性が、GFP発現によってモニターできるように、マルチクローニングサイトの後にIRES-GFPを有する。
【0041】
TCRα及びβ鎖タンパク質の等モル発現を誘発するために、TCRα及びβ鎖をコードするcDNAがP2A翻訳スキッピングサイトを含むリンカー配列によって連結された(図6B(I))。この配列を使用して、mRNAが一つの配列として転写された。P2A配列によるリボソーム・スキッピングのため、2つのタンパク質が前記mRNAから翻訳され、TCRβ-P2A融合タンパク質及びP(Pro)-TCRα鎖タンパク質を産生した。
【0042】
TCR発現カセット(I)におけるTCRβ鎖タンパク質の後に付加されたP2Aペプチドによる潜在的な機能阻害を避けるために、TCRβ鎖遺伝子の後にフューリンプロテアーゼ認識サイト(RAKR)を導入するもう一つのTCR発現カセットが構築された(図6B(II))。この発現カセットにおいて、TCBβ鎖タンパク質の後の付加ペプチドが、フューリンプロテアーゼ-介在切断によって除去され、その結果、最小の改変を伴うTCRα及びβ鎖タンパク質が発現する。特に、RAKR配列有りまたは無しの発現カセットにおいて、本明細書に示される配列と比べて、アミノ酸は除去されない。しかしながら、RAKR無しのカセットでは(図6B(I))、GSGリンカーとP2A配列がβ鎖のC末端に付加され、プロリン(P2A由来)が、α鎖のN末端に付加される。RAKR有りのカセットでは(図6B(II))、アルギニン(RAKR由来)がβ鎖のC末端に付加され、プロリン(P2A由来)が、α鎖のN末端に付加される。このように、いくつかの実施形態では、前記発現ベクターがTCRアミノ酸配列を含む融合タンパク質をコードする。いくつかの実施形態ではTCRアミノ酸配列のみが、本明細書に示されるTCRアミノ酸から選択される。
【0043】
前記TCR発現配列は、pMIGプラスミドのマルチクローニングサイトにクローン化された。レトロウイルスは、クロンテック社(Clontech)から販売されているGP2-293とPT67パッケージング細胞株を使用して、一時的にまたは安定的に製造された。手短に説明すると、GP2-293は、ウイルスgag-pol遺伝子を安定に発現し、それらはpMIGとpVSV-Gの同時導入後、一時的にVSV-Gウイルス・エンベロープ発現プラスミドを製造する。PT67は、ウイルスgag-pol及び10A1ウイルス・エンベロープ遺伝子を安定に発現する。GP2-293から製造されたレトロウイルスによる感染後、PT67は、pMIG由来の発現コンストラクトと一体化され、それゆえ安定的に(持続的に)レトロウイルスを産生する。一実施形態では、5'-LTR(末端反復配列)のプロモーター活性は、導入遺伝子発現を行わせるために使用される。しかしながら、EF-1αプロモーター等の他のプロモーターが、導入遺伝子発現の増強のために導入されることができる。
【0044】
PBMC-由来T細胞へのレトロウイルスの感染
PBMC(全細胞)が、密度勾配分離法によって得られ、使用するまで、90%のウシ胎児血清(FBS)と10%のジメチルスルホキシド(DMSO)中で、液体窒素タンク中で保管された。PBMC(3-4×106細胞/ウェル;24-ウェル培養プレート)は、培地(10%FBS、L-グルタミン、ストレプトマイシン、ペニシリン及びヒト組換えIL-2を含むRPMI1640培地)中で2日間、10μg/mLのフォトヘマグルチニン(PHA)によって多クローン的に活性化された。100μL培地中の1×105のプレ活性化PBMCが、PBS中の20〜25μg/mLのレトロネクチンでプレコートされ、PBS中の2%のウシ血清アルブミン(BSA)でブロックされた96ウェル培養プレートのウェルに添加された。いくつかの実験では、5μg/mLの抗CD3モノクローナル抗体(クローン:OKT3)が、レトロネクチンとともにコートされた。100μLのレトロウイルスを含む上清が、PBMCに添加され24時間インキュベートされた。レトロウイルス感染は、24時間ごとに2〜3回実施された。感染後、細胞は10〜14日間増殖され、機能分析のために使用された。
【0045】
結果
【0046】
高力価レトロウイルス産生PT67クローンが樹立された。以下のレトロウイルス産生クローンが樹立された。
(1)pMIG-II/JM-TCR(II)
(2)pMIG-II/SB95-TCR(II)
(3)pMIG-w/JM-TCR(I)
(4)pMIG-w/SB95-TCR(I)
(5)pMIG-w/JM-TCR(II)
(6)pMIG-w/SB95-TCR(II)
【0047】
上に列挙されたリストにおいて、(I)及び(II)は、図6Bにそれぞれ示されるように、フューリンプロテアーゼ認識サイト(RAKR)無し及び有りの発現カセットである。ジャーカット細胞への単独感染後のGFP発現によって測定された形質導入の有効性は、(1)で60%、(2)で55%、(3)で75%、(4)で75%、(5)で64%;及び(6)で62%であった。
【0048】
レトロウイルスベクター(1)及び(2)は、多クローン性に活性化されたPBMCに導入された。GFP発現によって測定された形質導入の有効性は、約40〜50%であった。レトロウイルスによって発現されたTCRの反応性は、元のTR-CD4クローンによって認識される同じNY-ESO-1-由来同族ペプチド(SB95-TCRについてはNY-ESO-1:91-110、及びJM-TCRについてはNY-ESO-1:157-170)に対してテストされた。ペプチド-非パルス標的細胞よりも、ペプチド-パルス標的細胞に対して、有意に多いIFN-γが産生され(図7)、これはクローン化TCR遺伝子が、それらがウイルスベクターによって形質導入された際、元のTR-CD4クローンと同じ抗原特異性を導入する機能があることを実証する。残りのTCR発現ベクターの機能テストは、同じ方法(本明細書に開示されたTCR遺伝子を移入するレトロウイルスで、活性化ヒト末梢血単核細胞を感染させることによって等)で実施されることができる。TCR遺伝子が形質導入された細胞及び形質導入されなかった細胞は、NY-ESO-1-発現細胞株または腫瘍サンプル、及び、適切な手段(ELISA等)を使用して測定される当該形質導入細胞によって産生されたIFN-γとともに、24時間共培養されることができる。TCR遺伝子が形質導入された細胞による、上清中のIFN-γ濃度は、NY-ESO-1を発現する細胞又はNY-ESO-1ペプチドパルス細胞とともに共培養された際により高くなり、他方、NY-ESO-1を発現しない細胞とともに共培養された細胞は、有意に少ないIFN-γ産生を示すであろう。同様に、形質導入無しの細胞等のネガティブコントロールは、有意に少ないIFN-γ産生を示すであろう。このように、代表的な組換えTCRの遺伝子導入は、癌細胞上のNY-ESO-1抗原を直接認識する同じ抗原特異性を有するという細胞の能力をもたらすであろう(前記細胞は、その中に当該TCRをコードするポリヌクレオチドを含む)。
【0049】
本発明は、説明の目的のために詳細に記載されてきたが、そのような詳細は単に説明の目的のためであり、続く特許請求の範囲によって定義される本発明の精神及び範囲を逸脱しない限り、当業者によって変更が加えられてもよいことが理解される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]