(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
コアと、前記コアの外周面を囲むクラッドと、前記クラッドの外周面を被覆する内側樹脂層及び前記内側樹脂層の外周面を被覆する外側樹脂層を含む樹脂被覆層と、を有する光ファイバの製造方法であって、
上方が開放し下方に第1ダイス口を有するとともに前記内側樹脂層の一部となる内側樹脂が貯留される第1収容室に、当該第1収容室の上方から前記コア及び前記クラッドを有する光ファイバ裸線を挿入し前記第1ダイス口から抜き出して、前記光ファイバ裸線の外周面に前記内側樹脂層の一部となる前記内側樹脂を塗布する第1樹脂塗布工程と、
上方に第1挿入口を有し下方に第2ダイス口を有するとともに前記内側樹脂層の他の一部となる前記内側樹脂が所定の圧力で充填される第2収容室に、前記内側樹脂層の一部となる前記内側樹脂が塗布された前記光ファイバ裸線を前記第1挿入口から挿入し前記第2ダイス口から抜き出して、前記内側樹脂層の一部となる前記内側樹脂が塗布された前記光ファイバ裸線の外周面に前記内側樹脂層の他の一部となる前記内側樹脂を塗布する第2樹脂塗布工程と、
上方に第2挿入口を有し下方に第3ダイス口を有するとともに前記外側樹脂層となる外側樹脂が所定の圧力で充填される第3収容室に、前記内側樹脂層の他の一部となる前記内側樹脂が塗布された前記光ファイバ裸線を前記第2挿入口から挿入し前記第3ダイス口から抜き出して、前記内側樹脂層の他の一部となる前記内側樹脂が塗布された前記光ファイバ裸線の外周面に前記外側樹脂を塗布する第3樹脂塗布工程と、
を備え、
少なくとも前記第1収容室に収容される前記内側樹脂内において前記光ファイバ裸線の外周面と離間して前記光ファイバ裸線を囲うガイド部材が配置され、
前記ガイド部材は、当該ガイド部材の内側の領域に前記内側樹脂を流入可能とされ、
前記ガイド部材には、上端から下端まで上下方向に延びるとともに前記上下方向に対して垂直な方向の幅が前記光ファイバ裸線の外径よりも大とされる1つのスリットが形成される
ことを特徴とする光ファイバの製造方法。
上方に第3挿入口を有し下方に第4ダイス口を有するとともに所定の樹脂が所定の圧力で充填される第4収容室に、前記外側樹脂が塗布された前記光ファイバ裸線を前記第3挿入口から挿入し前記第4ダイス口から抜き出して、前記外側樹脂が塗布された前記光ファイバ裸線の外周面に前記所定の樹脂を塗布する第4樹脂塗布工程を更に備え、
前記第1収容室、前記第2収容室、及び前記第3収容室は、第1ダイス本体に形成され、
前記第4収容室は、前記第1ダイス本体と離間する第2ダイス本体に形成される
ことを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の光ファイバの製造方法。
コアと、前記コアの外周面を囲むクラッドと、前記クラッドの外周面を被覆する内側樹脂層及び前記内側樹脂層の外周面を被覆する外側樹脂層を含む樹脂被覆層と、を有する光ファイバの製造装置であって、
上方が開放し下方に第1ダイス口を有するとともに前記内側樹脂層の一部となる内側樹脂が貯留される第1収容室と、上方に第1挿入口を有し下方に第2ダイス口を有するとともに前記内側樹脂層の他の一部となる前記内側樹脂が所定の圧力で充填される第2収容室と、上方に第2挿入口を有し下方に第3ダイス口を有するとともに前記外側樹脂層となる外側樹脂が所定の圧力で充填される第3収容室とを含む第1ダイス本体と、
ガイド部材と、
を備え、
前記第1収容室には、前記コアと前記クラッドとを有する光ファイバ裸線が上方から前記第1ダイス口へ抜けるように通され、
前記第2収容室には、前記第1収容室を通過した前記光ファイバ裸線が前記第1挿入口から前記第2ダイス口へ抜けるように通され、
前記第3収容室には、前記第2収容室を通過した前記光ファイバ裸線が前記第2挿入口から前記第3ダイス口へ抜けるように通され、
前記ガイド部材は、少なくとも前記第1収容室に貯留される前記内側樹脂内において前記光ファイバ裸線の外周面と離間して前記光ファイバ裸線を囲うとともに、当該ガイド部材の内側の領域に前記内側樹脂を流入可能とされ、
前記ガイド部材には、上端から下端まで上下方向に延びるとともに前記上下方向に対して垂直な方向の幅が前記光ファイバ裸線の外径よりも大とされる1つのスリットが形成される
ことを特徴とする光ファイバの製造装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載の一方の製造方法のように第1収容室の上方が開放されたダイス本体を用いる場合、未硬化状態の内側樹脂は上方が開放された第1収容室に貯留されるため、第1収容室を通過する光ファイバ裸線の動きに伴い内側樹脂に対流が生じ、気体と接する内側樹脂の液面に光ファイバ裸線を中心として凹状に窪むメニスカスが形成される。この対流は内側樹脂の粘性や光ファイバ裸線の抜き出し速度等に起因して不安定になる場合がある。対流が不安定になると、光ファイバ裸線とともにダイス口から注出される未硬化状態の内側樹脂の圧力に変動が生じ、塗布される内側樹脂の厚みに偏りが生じて内側樹脂層の厚みに偏りが生じる場合があり、その結果、樹脂被覆層の厚みに偏りが生じることがある。例えば、内側樹脂層が外側クラッドであるダブルクラッド構造の光ファイバにおいて内側樹脂層の厚みが薄くなると、内側樹脂層の厚みが薄くなる部位から励起光の漏れが生じる場合がある。このため、樹脂被覆層の厚みに偏りが生じることを抑制したいとの要望がある。
【0007】
一方、上記特許文献1に記載の他方の製造方法のように第1収容室の上方に挿入口が形成されるダイス本体を用いる場合、未硬化状態の内側樹脂は第1収容室に所定の圧力で充填される。このため、内側樹脂に上記のようなメニスカスが形成されることが抑制され、内側樹脂の流れが不安定になることが抑制される。従って、このような製造方法では、光ファイバ裸線とともにダイス口から注出される未硬化状態の内側樹脂の圧力に変動が生じることが抑制され、内側樹脂層の厚みに偏りが生じることが抑制されることで、樹脂被覆層の厚みに偏りが生じることが抑制され得る。
【0008】
ところで、光ファイバの製造方法では、光ファイバ用母材を線引きしてコアの外周がクラッドによって囲われた光ファイバ裸線を形成する際に、光ファイバ用母材を回転させて光ファイバ裸線に恒久的なねじれを付与することがある。このため、上記特許文献1の光ファイバの製造方法において、例えば、光ファイバ用母材を回転させながら線引きして形成する光ファイバ裸線を用いることが考えられる。この場合、光ファイバ用母材の回転による遠心力によって光ファイバ裸線に長手方向と垂直な方向への振れが発生することがある。上記のように第1収容室に未硬化状態の内側樹脂を所定の圧力で充填させる場合、光ファイバ裸線の外周面がダイス本体における第1収容室の挿入口の縁に接触して光ファイバ裸線の外周面に傷がつき、光ファイバの機械的な強度が低下する虞がある。
【0009】
そこで、本発明は、樹脂被覆層の厚みに偏りが生じることを抑制しつつ光ファイバの機械的な強度が低下することを抑制し得る光ファイバの製造方法及び光ファイバの製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的の達成のため、本発明の光ファイバの製造方法は、コアと、前記コアの外周面を囲むクラッドと、前記クラッドの外周面を被覆する内側樹脂層及び前記内側樹脂層の外周面を被覆する外側樹脂層を含む樹脂被覆層と、を有する光ファイバの製造方法であって、上方が開放し下方に第1ダイス口を有するとともに前記内側樹脂層の一部となる内側樹脂が貯留される第1収容室に、当該第1収容室の上方から前記コア及び前記クラッドを有する光ファイバ裸線を挿入し前記第1ダイス口から抜き出して、前記光ファイバ裸線の外周面に前記内側樹脂層の一部となる前記内側樹脂を塗布する第1樹脂塗布工程と、上方に第1挿入口を有し下方に第2ダイス口を有するとともに前記内側樹脂層の他の一部となる前記内側樹脂が所定の圧力で充填される第2収容室に、前記内側樹脂層の一部となる前記内側樹脂が塗布された前記光ファイバ裸線を前記第1挿入口から挿入し前記第2ダイス口から抜き出して、前記内側樹脂層の一部となる前記内側樹脂が塗布された前記光ファイバ裸線の外周面に前記内側樹脂層の他の一部となる前記内側樹脂を塗布する第2樹脂塗布工程と、上方に第2挿入口を有し下方に第3ダイス口を有するとともに前記外側樹脂層となる外側樹脂が所定の圧力で充填される第3収容室に、前記内側樹脂層の他の一部となる前記内側樹脂が塗布された前記光ファイバ裸線を前記第2挿入口から挿入し前記第3ダイス口から抜き出して、前記内側樹脂層の他の一部となる前記内側樹脂が塗布された前記光ファイバ裸線の外周面に前記外側樹脂を塗布する第3樹脂塗布工程と、を備えることを特徴とする。
【0011】
この光ファイバの製造方法では、第1樹脂塗布工程及び第2樹脂塗布工程によって内側樹脂層となる未硬化状態の内側樹脂が光ファイバ裸線の外周面に塗布され、第3樹脂塗布工程によって未硬化状態の内側樹脂が塗布された光ファイバ裸線の外周面に外側樹脂層となる未硬化状態の外側樹脂が塗布される。このように塗布された未硬化状態の内側樹脂及び外側樹脂が硬化されて内側樹脂層及び外側樹脂層が形成される。この光ファイバの製造方法では、光ファイバ裸線は第1収容室、第2収容室、第3収容室の順に通され、第1収容室の上方は開放されている。このため、上記特許文献1に記載の製造方法のように第1収容室に未硬化状態の内側樹脂が充填される場合と比べて、光ファイバ裸線に長手方向と垂直な方向への振れが生じたとしても、第1収容室が形成される部材に光ファイバ裸線の外周面が接触して光ファイバ裸線の外周面に傷がつくことを抑制でき、光ファイバの機械的な強度が低下することを抑制することができる。また、この光ファイバの製造方法では、第2樹脂塗布工程において、内側樹脂層の他の一部となる内側樹脂が所定の圧力で充填される第2収容室に内側樹脂層の一部となる内側樹脂が塗布された光ファイバ裸線を通す。そして、内側樹脂層の一部となる内側樹脂が塗布された光ファイバ裸線の外周面に内側樹脂層の他の一部となる内側樹脂を塗布する。第2収容室には内側樹脂が所定の圧力で充填されているため、内側樹脂層の一部となる内側樹脂が塗布された光ファイバ裸線とともに第2ダイス口から注出される未硬化状態の内側樹脂の圧力に変動が生じることが抑制される。従って、第1樹脂塗布工程において光ファイバ裸線の外周面に塗布される内側樹脂の厚みに偏りが生じたとしても、第2樹脂塗布工程においてこの偏りを平準化するように内側樹脂を塗布し得、内側樹脂層の厚みに偏りが生じることを抑制し得る。また、第3樹脂塗布工程では、所定の圧力で外側樹脂が充填される第3収容室に内側樹脂が塗布された光ファイバ裸線を通すことで内側樹脂が塗布された光ファイバ裸線の外周面に外側樹脂を塗布する。このため、外側樹脂層の厚みに偏りが生じることが抑制される。このようにして、この光ファイバの製造方法では、樹脂被覆層における内側樹脂層及び外側樹脂層の厚みに偏りが生じることが抑制され、樹脂被覆層の厚みに偏りが生じることを抑制し得る。
【0012】
また、少なくとも前記第1収容室に収容される前記内側樹脂内において前記光ファイバ裸線の外周面と離間して前記光ファイバ裸線を囲う筒状のガイド部材が配置され、前記ガイド部材は、当該ガイド部材の内側の領域に前記内側樹脂を流入可能とされることとしても良い。
【0013】
このようにすることで、第1収容室に貯留される内側樹脂に生じる対流がガイド部材よりも光ファイバ裸線側の領域内に形成されるようにし得る。このため、ガイド部材が配置されない場合と比べて、この内側樹脂における対流が生じる領域を狭めて凹状に窪むメニスカスを小さくして対流を安定させ得る。このため、第1樹脂塗布工程において光ファイバ裸線の外周面に塗布される内側樹脂の厚みに偏りが生じることを抑制し得る。
【0014】
また、前記第1収容室に前記内側樹脂を貯留する前に前記ガイド部材を配置することとしても良い。
【0015】
このようにすることで、第1収容室に内側樹脂を貯留した後にガイド部材を配置する場合と比べて、ガイド部材を容易に配置し得る。
【0016】
また、第1収容室にガイド部材が配置される場合、前記ガイド部材の側面には、前記内側樹脂内における当該ガイド部材の外側の領域と内側の領域とを連通する連通部が形成されることとしても良い。
【0017】
このようにすることで、ガイド部材の側面に連通部が非形成とされる場合と比べて、ガイド部材の外側の領域に位置する内側樹脂をガイド部材の内側の領域に流入させ易くし得、第1収容室に貯留される内側樹脂における対流をより安定させ得る。このため、第1樹脂塗布工程において光ファイバ裸線の外周面に塗布される内側樹脂の厚みに偏りが生じることをより抑制し得る。
【0018】
前記内側樹脂層を構成する樹脂は、前記クラッドの屈折率よりも低い屈折率の樹脂とされることとしても良い。
【0019】
このようにすることで、光ファイバ裸線のクラッドが内側クラッドであり、内側樹脂層が外側クラッドであるダブルクラッド構造の光ファイバを製造し得る。
【0020】
また、上記光ファイバの製造方法は、光ファイバ用母材を当該光ファイバ用母材の中心軸周りに回転させつつ線引きして前記光ファイバ裸線を形成する線引工程を更に備えることとしても良い。
【0021】
このようにすることで、光ファイバ裸線に恒久的なねじれを付与し得る。例えば、光ファイバ裸線のクラッドが内側クラッドとされ、内側樹脂層が外側クラッドとされるダブルクラッド構造の増幅用光ファイバでは、光ファイバ裸線に恒久的なねじれが付与されることによって、スキュー光をより抑制して内側クラッドを伝搬する光をコアに入射し易くし得る。このため、ダブルクラッド構造の増幅用光ファイバにおける励起光の吸収効率を上げ得る。なお、光ファイバ用母材を当該光ファイバ用母材の中心軸周りに回転させつつ線引きする場合、光ファイバ裸線に長手方向と垂直な方向への振れが生じ易くなる傾向にある。しかし、上記の光ファイバの製造方法によれば、光ファイバ裸線に長手方向と垂直な方向への振れが生じる場合であっても光ファイバの機械的な強度が低下することを抑制し得る。このため、この光ファイバの製造方法は、このように光ファイバ用母材を当該光ファイバ用母材の中心軸周りに回転させつつ線引きして光ファイバ裸線を形成する場合に特に有用である。
【0022】
また、前記第3収容室に充填される前記外側樹脂の圧力は、前記第2収容室に充填される前記内側樹脂の圧力よりも小とされることとしても良い。
【0023】
また、前記第1収容室の前記第1ダイス口は前記第2収容室の前記第1挿入口を兼ねることとしても良い。
【0024】
この製造方法では、光ファイバ裸線は第1ダイス口を通ることによって内側樹脂層の一部となる内側樹脂が塗布されるとともに第2収容室に挿入される。このため、光ファイバ裸線に長手方向と垂直な方向への振れが生じたとしても、第1収容室の第1ダイス口が第2収容室の第1挿入口を兼ねない場合と比べて、第2収容室の第1挿入口の縁に光ファイバ裸線に塗布された内側樹脂が接触することを抑制し得る。このため、第1ダイス口が第2収容室の第1挿入口を兼ねない場合と比べて、光ファイバ裸線に長手方向と垂直な方向への振れが生じたとしても、光ファイバ裸線に塗布される内側樹脂の厚さに偏りが生じることをより抑制し得る。
【0025】
また、前記第2収容室の前記第2ダイス口は前記第3収容室の前記第2挿入口を兼ねることとしても良い。
【0026】
このようにすることで、光ファイバ裸線は第2ダイス口を通ることによって内側樹脂層の他の一部となる内側樹脂が塗布されるとともに第3収容室に挿入される。このため、光ファイバ裸線に長手方向と垂直な方向への振れが生じたとしても、第2収容室の第2ダイス口が第3収容室の第2挿入口を兼ねない場合と比べて、第3収容室の第2挿入口の縁に光ファイバ裸線に塗布された内側樹脂が接触することを抑制し得る。このため、第2ダイス口が第3収容室の第2挿入口を兼ねない場合と比べて、光ファイバ裸線に長手方向と垂直な方向への振れが生じたとしても、光ファイバ裸線に塗布される内側樹脂の厚さに偏りが生じることをより抑制し得る。
【0027】
また、上記光ファイバの製造方法は、上方に第3挿入口を有し下方に第4ダイス口を有するとともに所定の樹脂が所定の圧力で充填される第4収容室に、前記外側樹脂が塗布された前記光ファイバ裸線を前記第3挿入口から挿入し前記第4ダイス口から抜き出して、前記外側樹脂が塗布された前記光ファイバ裸線の外周面に前記所定の樹脂を塗布する第4樹脂塗布工程を更に備えることとしても良い。
【0028】
このようにすることで、3つの樹脂層を含む樹脂被覆層を有する光ファイバを製造できる。
【0029】
また、本発明の光ファイバの製造装置は、コアと、前記コアの外周面を囲むクラッドと、前記クラッドの外周面を被覆する内側樹脂層及び前記内側樹脂層の外周面を被覆する外側樹脂層を含む樹脂被覆層と、を有する光ファイバの製造装置であって、上方が開放し下方に第1ダイス口を有するとともに前記内側樹脂層の一部となる内側樹脂が貯留される第1収容室と、上方に第1挿入口を有し下方に第2ダイス口を有するとともに前記内側樹脂層の他の一部となる前記内側樹脂が所定の圧力で充填される第2収容室と、上方に第2挿入口を有し下方に第3ダイス口を有するとともに前記外側樹脂層となる外側樹脂が所定の圧力で充填される第3収容室とを含むダイス本体を備え、前記第1収容室には、前記コアと前記クラッドとを有する光ファイバ裸線が上方から前記第1ダイス口へ抜けるように通され、前記第2収容室には、前記第1収容室を通過した前記光ファイバ裸線が前記第1挿入口から前記第2ダイス口へ抜けるように通され、前記第3収容室には、前記第2収容室を通過した前記光ファイバ裸線が前記第2挿入口から前記第3ダイス口へ抜けるように通されることを特徴とする。
【0030】
この光ファイバの製造装置では、光ファイバ裸線は第1収容室、第2収容室、第3収容室の順に通され、第1収容室の上方は開放されている。このため、上記のように、光ファイバ裸線に長手方向と垂直な方向への振れが生じたとしても、光ファイバ裸線の外周面がダイス本体に接触して光ファイバ裸線の外周面に傷がつくことを抑制でき、光ファイバの機械的な強度が低下することを抑制することができる。また、この光ファイバの製造装置では、内側樹脂層の一部となる内側樹脂が塗布された光ファイバ裸線が内側樹脂層の他の一部となる内側樹脂が所定の圧力で充填される第2収容室を通過する。このため、上記のように、光ファイバ裸線の外周面に塗布される内側樹脂層の一部となる内側樹脂の厚みに偏りが生じたとしても、この偏りを平準化するように内側樹脂層の他の一部となる内側樹脂を塗布し得、内側樹脂層の厚みに偏りが生じることを抑制し得る。また、この光ファイバの製造装置では、内側樹脂が塗布された光ファイバ裸線が所定の圧力で外側樹脂が充填される第3収容室を通過するため、上記のように、外側樹脂層の厚みに偏りが生じることが抑制される。このようにして、この光ファイバの製造装置は、樹脂被覆層の厚みに偏りが生じることを抑制しつつ光ファイバの機械的な強度の低下を抑制し得る。
【0031】
上記光ファイバの製造装置は、少なくとも前記第1収容室に貯留される前記内側樹脂内において前記光ファイバ裸線の外周面と離間して前記光ファイバ裸線を囲う筒状のガイド部材を更に備え、前記ガイド部材は、当該ガイド部材の内側の領域に前記内側樹脂を流入可能とされることとしても良い。
【0032】
この光ファイバの製造装置は、上記のように、ガイド部材によって第1収容室に貯留される内側樹脂における対流を安定させ、光ファイバ裸線の外周面に塗布する内側樹脂の厚みに偏りが生じることを抑制し得る。
【0033】
光ファイバの製造装置がガイド部材を備える場合、前記ガイド部材の側面には、前記内側樹脂内における当該ガイド部材の外側の領域と内側の領域とを連通する連通部が形成されることとしても良い。
【0034】
このようにすることで、ガイド部材の側面に連通部が非形成とされる場合と比べて、ガイド部材の外側の領域に位置する内側樹脂をガイド部材の内側の領域に流入させ易くし得、第1収容室に貯留される内側樹脂における対流をより安定させ得る。このため、光ファイバ裸線の外周面に塗布される内側樹脂の厚みに偏りが生じることをより抑制し得る。
【0035】
また、前記第1収容室の前記第1ダイス口は前記第2収容室の前記第1挿入口を兼ねることとしても良い。
【0036】
このような構成にすることで、ダイス本体を小型化し得る。また、この光ファイバの製造装置では、上記のように、光ファイバ裸線は第1ダイス口を通ることによって内側樹脂層の一部となる内側樹脂が塗布されるとともに第2収容室に挿入される。このため、光ファイバ裸線に長手方向と垂直な方向への振れが生じたとしても、第1収容室の第1ダイス口が第2収容室の第1挿入口を兼ねない場合と比べて、第2収容室の第1挿入口の縁に光ファイバ裸線に塗布された内側樹脂が接触することを抑制し得る。このため、第1ダイス口が第2収容室の第1挿入口を兼ねない場合と比べて、光ファイバ裸線に長手方向と垂直な方向への振れが生じたとしても、光ファイバ裸線に塗布される内側樹脂の厚さに偏りが生じることをより抑制し得る。
【0037】
また、前記第2収容室の前記第2ダイス口は前記第3収容室の前記第2挿入口を兼ねることとしても良い。
【0038】
このような構成にすることで、ダイス本体を小型化し得る。また、この光ファイバの製造装置では、上記のように、光ファイバ裸線は第2ダイス口を通ることによって内側樹脂層の他の一部となる内側樹脂が塗布されるとともに第3収容室に挿入される。このため、光ファイバ裸線に長手方向と垂直な方向への振れが生じたとしても、第2収容室の第2ダイス口は第3収容室の第2挿入口を兼ねない場合と比べて、第3収容室の第2挿入口の縁に光ファイバ裸線に塗布された内側樹脂が接触することを抑制し得る。このため、第2ダイス口が第3収容室の第2挿入口を兼ねない場合と比べて、光ファイバ裸線に長手方向と垂直な方向への振れが生じたとしても、光ファイバ裸線に塗布される内側樹脂の厚さに偏りが生じることをより抑制し得る。
【発明の効果】
【0039】
以上のように、本発明によれば、樹脂被覆層の厚みに偏りが生じることを抑制しつつ光ファイバの機械的な強度が低下することを抑制し得る光ファイバの製造方法及び光ファイバの製造装置が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明に係る光ファイバの製造方法及び光ファイバの製造装置の好適な実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。以下に例示する実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良することができる。なお、以下で参照する図面では、理解を容易にするために、各部材の寸法を変えて示す場合がある。
【0042】
図1は、本発明の実施形態に係る光ファイバの長手方向に垂直な断面を示す図である。
図1に示すように、光ファイバ1は、光ファイバ裸線1Nと、少なくとも2つの樹脂層を含み光ファイバ裸線1Nの外周面を被覆する樹脂被覆層12と、を主な構成として備える。本実施形態の光ファイバ裸線1Nは、コア10及びコア10の外周面を囲むクラッド11からなる。本実施形態の樹脂被覆層12は、クラッド11の外周面を被覆する内側樹脂層13、内側樹脂層13の外周面を被覆する外側樹脂層14、及び外側樹脂層14の外周面を被覆する樹脂保護層15からなる。本実施形態では、光ファイバ1は、クラッド11が内側クラッドとされ内側樹脂層13が外側クラッドとされるダブルクラッド構造の増幅用光ファイバとされる。従って、本実施形態では、クラッド11が内側クラッドで、内側樹脂層13が外側クラッドと理解することができる。このため、内側クラッドとしてのクラッド11の屈折率はコア10の屈折率よりも低く、外側クラッドとしての内側樹脂層13の屈折率は内側クラッドとしてのクラッド11の屈折率よりも低くされている。また、コア10は、クラッド11の中心に配置されている。
【0043】
本実施形態のコア10を構成する材料として、励起光により励起されるイッテルビウム(Yb)等の活性元素を含有するシリカガラスが挙げられる。活性元素として、イッテルビウム以外の希土類元素を挙げることもでき、希土類元素としては、上記イッテルビウムの他にツリウム(Tm)、セリウム(Ce)、ネオジウム(Nd)、ユーロピウム(Eu)、エルビウム(Er)等が挙げられる。さらに活性元素として、希土類元素の他に、ビスマス(Bi)等を挙げることができる。この活性元素は一般的にコア10の屈折率を上昇させるドーパントとしての性質を有する。また、コア10を構成する材料には、活性元素の他に屈折率を調整するためのゲルマニウム(Ge)、リン(P)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、塩素(Cl)、ホウ素(B)、フッ素(F)等のドーパントが添加されても良い。さらに、コア10を構成する材料には、屈折率を調整するために、フッ素(F)やホウ素(B)等の屈折率を下げる元素が添加されてもよい。
【0044】
本実施形態では、長手方向に垂直な断面においてクラッド11の外周は概ね正七角形とされる。つまり、長手方向に垂直な断面における光ファイバ裸線1Nの外形は概ね正七角形とされる。このように、本実施形態では、クラッド11の外形が非円形とされているため、クラッド11を伝搬する光が光ファイバ裸線1Nの外周面であるクラッド11の外周面において反射角を変えながら反射を繰り返すようにし得、クラッド11を伝搬する光をコア10に入射し易くし得る。このため、クラッド11の外形が円形とされる場合と比べて、スキュー光を抑制し得る。また、本実施形態では、光ファイバ裸線1Nには、コア10の中心軸を中心とするねじれが付与されている。このため、非円形のクラッド11の外周面が長手方向に向かってねじれており、スキュー光をより抑制してクラッド11を伝搬する光をコア10に入射し易くし得る。このため、ダブルクラッド構造の増幅用光ファイバである光ファイバ1における励起光の吸収効率を上げ得る。
【0045】
このような内側クラッドとしてのクラッド11を構成する材料として、例えば何らドーパントが添加されていない純粋なシリカガラスを挙げることができる。なお、クラッド11を構成する材料には、屈折率を低下させるフッ素(F)等の元素が添加されてもよい。
【0046】
外側クラッドとしての内側樹脂層13は、樹脂から成り、当該樹脂として例えば紫外線硬化性樹脂や熱硬化性樹脂が挙げられる。
【0047】
外側樹脂層14は、内側樹脂層13を構成する樹脂とは異なる樹脂から成り、当該樹脂として例えば紫外線硬化性樹脂や熱硬化性樹脂が挙げられる。
【0048】
樹脂保護層15は、外側樹脂層14を構成する樹脂とは異なる樹脂から成り、当該樹脂として例えば紫外線硬化性樹脂や熱硬化性樹脂が挙げられる。
【0049】
外側樹脂層14及び樹脂保護層15を構成する樹脂は、内側樹脂層13が紫外線硬化性樹脂とされる場合、紫外線硬化性樹脂とされることが好ましく、内側樹脂層13が熱硬化性樹脂とされる場合、熱硬化性樹脂とされることが好ましい。このようにすることで、内側樹脂層13となる樹脂、外側樹脂層14となる樹脂、及び樹脂保護層15となる樹脂を一度に硬化することができ、光ファイバ1の生産性を向上し得る。
【0050】
次に、本発明の実施形態に係る光ファイバの製造装置について説明する。
【0051】
図2は、本実施形態に係る光ファイバの製造装置を概略的に示す図である。
図2に示す光ファイバ1の製造装置100は、母材送り出し装置20、加熱炉25、冷却装置30、被覆層形成装置40、ターンプーリー80、引取装置81、巻取装置82を主な構成として備える。光ファイバの製造装置100によって、上記光ファイバ1が製造される。
【0052】
母材送り出し装置20は、光ファイバ用母材1Pを下端側から加熱炉25内に所定の速度で送り込む装置である。本実施形態では、母材送り出し装置20は、光ファイバ裸線1Nとなる光ファイバ用母材1Pの上端部に取り付けられ、光ファイバ用母材1Pを当該光ファイバ用母材1Pの中心軸周りに所定の速度で回転させつつ加熱炉25内に送り込むができる構成とされる。
【0053】
加熱炉25は、母材送り出し装置20によって送り込まれる光ファイバ用母材1Pを加熱する炉である。本実施形態では、加熱炉25は、炉心管26、発熱体27、及び断熱材28を主な構成として備え、母材送り出し装置20によって送り込まれる光ファイバ用母材1Pが炉心管26内に挿入される。発熱体27は炉心管26の外周面側から炉心管26を加熱できるように設けられ、例えば抵抗型の発熱体とされる。なお、発熱体27は、炉心管26の一部とされてもよい。炉心管26及び発熱体27は断熱材28によって囲われており、発熱体27が発する熱を有効に利用することができる。
【0054】
加熱炉25内の最高温度は、光ファイバ用母材1Pの大きさや光ファイバ用母材1Pから線引きされる光ファイバ裸線1Nの目標とする外径や光ファイバ裸線1Nに加えられる張力等によるが、2000℃程度の高温とされる場合がある。そのため、炉心管26、発熱体27及び断熱材28を構成する材料は、例えばカーボンであることが好ましい。
【0055】
冷却装置30は、加熱炉25の下方に配置され、光ファイバ用母材1Pが線引きされて形成される光ファイバ裸線1Nを冷却する装置である。冷却装置30として、例えば内部に冷却水が流通する部材によって光ファイバ裸線1Nを囲う構成が挙げられる。
【0056】
被覆層形成装置40は、光ファイバ裸線1Nの外周面を被覆する樹脂被覆層12を形成する装置である。本実施形態では、被覆層形成装置40は、塗布部41と硬化部42とを備える。塗布部41は第1塗布部41Fと第2塗布部41Sとを有し、硬化部42は第1硬化部42Fと第2硬化部42Sとを有する。第1塗布部41Fでは、光ファイバ裸線1Nの外周面に内側樹脂層13となる未硬化状態の内側樹脂が塗布され、未硬化状態の内側樹脂が塗布された光ファイバ裸線1Nの外周面に外側樹脂層14となる未硬化状態の外側樹脂が塗布される。このように第1塗布部41Fによって光ファイバ裸線1Nに塗布された未硬化状態の内側樹脂及び外側樹脂が第1硬化部42Fによって硬化され、内側樹脂層13及び外側樹脂層14が形成される。第2塗布部41Sでは、このように形成された外側樹脂層14の外周面に樹脂保護層15となる未硬化状態の保護樹脂が塗布される。この未硬化状態の保護樹脂が第2硬化部42Sによって硬化されて保護樹脂が硬化され、樹脂保護層15が形成される。
【0057】
図3は、
図2に示される塗布部を概略的に示す図であり、塗布部の鉛直方向の断面を概略的に示す図である。
図3に示すように、本実施形態の塗布部41は、上記のように第1塗布部41Fと第2塗布部41Sとを有する。第1塗布部41Fは、第1収容室44と第2収容室45と第3収容室46とが形成される第1ダイス本体43、及びガイド部材70を主な構成として備える。第1ダイス本体43は、第1ブロック51、第2ブロック52、及び第3ブロック53を有する。第2塗布部41Sは、第4収容室47が形成される第2ダイス本体54を主な構成として備える。
【0058】
第1塗布部41Fにおける第1ダイス本体43の第1ブロック51は、上下方向に延在する筒状の側壁部51sと、側壁部51sの下方側の開口を閉塞する底壁部51bとを有し、底壁部51bには第1ダイス55が取り付けられる。第1ダイス55は概ね円筒状の部材とされ、底壁部51bに形成される円形の貫通孔に嵌め込まれて底壁部51bに固定される。このような第1ダイス55の下部は底壁部51bから下方へ突出する。第1ダイス55における底壁部51bから下方へ突出する部位の外周面は下方に向かって中心側へ傾斜している。また、第1ダイス55の内周面は下方に向かって中心側へ傾斜する。このため、第1ダイス55の内径が最小となる部位は、第1ダイス55の下端の開口である第1ダイス口55Hであり、この第1ダイス口55Hの直径は光ファイバ裸線1Nの外径よりも大とされる。このような第1ブロック51の内部空間が第1収容室44とされる。この第1収容室44の上方は開放されて開口44Hが形成され、第1収容室44は下方に第1ダイス口55Hを有する。
【0059】
この第1収容室44には、光ファイバ裸線1Nが上方の開口44Hから第1ダイス口55Hへ抜けるように通される。この開口44Hの縁と光ファイバ裸線1Nの外周面との隙間は、例えば10mm以上とされる。また、第1ダイス口55Hの直径は、例えば光ファイバ裸線1Nの外径より大とされ、光ファイバ裸線1Nの外径の2倍以下とされる。
【0060】
また、第1収容室44には、上方の開口44Hから樹脂被覆層12における内側樹脂層13の一部となる未硬化状態の内側樹脂61が供給されて当該内側樹脂61が貯留され、気体と接する内側樹脂61の液面が第1収容室44内に形成されている。
【0061】
第1ダイス本体43の第2ブロック52は、第1ブロック51の側壁部51sの外周面と離間して側壁部51sを囲う筒状の側壁部52sと、第1ブロック51の底壁部51bの下面と離間して側壁部52sの下方側の開口を閉塞する底壁部52bと、側壁部52sの上端部の全周から第1ブロック51の側壁部51s側に延在して側壁部51sに接続する頂壁部52tとを有する。底壁部52bには第2ダイス56が取り付けられる。第2ダイス56は概ね円筒状の部材とされ、第2ダイス56の中心軸が第1ダイス55の中心軸と概ね一致するように、底壁部52bに形成される円形の貫通孔に嵌め込まれて底壁部52bに固定される。このような第2ダイス56の下部は底壁部52bから下方へ突出する。第2ダイス56における底壁部52bから下方へ突出する部位の外周面は下方に向かって中心側へ傾斜している。また、第2ダイス56の内周面は下方に向かって中心側へ傾斜する。このため、第2ダイス56の内径が最小となる部位は、第2ダイス56の下端の開口である第2ダイス口56Hとなる。このような第2ブロック52と第1ブロック51とによって囲われる空間が第2収容室45とされる。この第2収容室45は第1ダイス口55Hを介して第1収容室44と連通するとともに、下方に第2ダイス口56Hを有する。また、第2ブロック52の頂壁部52tには、第2収容室45に連通する樹脂供給口64が形成されている。
【0062】
上記のように第2収容室45は第1ダイス口55Hを介して第1収容室44と連通しているため、第1ダイス口55Hを通過した光ファイバ裸線1Nは第2収容室45に挿入される。つまり、第1ダイス口55Hは、第2収容室45に光ファイバ裸線1Nを挿入するための第1挿入口を兼ねていると理解できる。そして、第2収容室45には、第1収容室44を通過した光ファイバ裸線1Nが第1挿入口としての第1ダイス口55Hから第2ダイス口56Hへ抜けるように通される。第2ダイス口56Hの直径は、例えば光ファイバ裸線1Nの外径よりも大とされ、光ファイバ裸線1Nの外径の2倍以下とされる。
【0063】
また、第2収容室45には、樹脂供給口64から樹脂被覆層12における内側樹脂層13の他の一部となる未硬化状態の内側樹脂61が供給されて当該内側樹脂61が所定の圧力で充填される。このため、第2収容室45内は内側樹脂61によって満たされており、第2収容室45内では、内側樹脂61の気体と接する液面が非形成とされている。本実施形態では、第2収容室45に充填される内側樹脂61の圧力は、第1収容室44に貯留される内側樹脂61における第1ダイス口55H近傍での圧力よりも大とされる。
【0064】
第1ダイス本体43の第3ブロック53は、第2ブロック52の側壁部52sの外周面と離間して側壁部52sを囲う筒状の側壁部53sと、第2ブロック52の底壁部52bの下面と離間して側壁部53sの下方側の開口を閉塞する底壁部53bと、側壁部53sの上端部の全周から第2ブロック52の側壁部52s側に延在して側壁部52sに接続する頂壁部53tとを有する。底壁部53bには第3ダイス57が取り付けられる。第3ダイス57は概ね円筒状の部材とされ、第3ダイス57の中心軸が第2ダイス56の中心軸と概ね一致するように、底壁部53bに形成される円形の貫通孔に嵌め込まれて底壁部53bに固定される。このような第3ダイス57の下部は底壁部53bから下方へ突出する。第3ダイス57における底壁部53bから下方へ突出する部位の外周面は下方に向かって中心側へ傾斜している。また、第3ダイス57の内周面は下方に向かって中心側へ傾斜する。このため、第3ダイス57の内径が最小となる部位は、第3ダイス57の下端の開口である第3ダイス口57Hとなる。このような第3ブロック53と第2ブロック52の側壁部52s及び底壁部53bとによって囲われる空間が第3収容室46とされる。この第3収容室46は第2ダイス口56Hを介して第2収容室45と連通するとともに、下方に第3ダイス口57Hを有する。また、第3ブロック53の頂壁部53tには、第3収容室46に連通する樹脂供給口65が形成されている。
【0065】
上記のように第3収容室46は第2ダイス口56Hを介して第2収容室45と連通しているため、第2ダイス口56Hを通過した光ファイバ裸線1Nは第3収容室46に挿入される。つまり、第2ダイス口56Hは、第3収容室46に光ファイバ裸線1Nを挿入するための第2挿入口を兼ねていると理解できる。そして、第3収容室46には、第2収容室45を通過した光ファイバ裸線1Nが第2挿入口としての第2ダイス口56Hから第3ダイス口57Hへ抜けるように通される。第3ダイス口57Hの直径は、例えば、第2ダイス口56Hの直径よりも大とされ、第2ダイス口56Hの直径の2倍以下とされる。
【0066】
また、第3収容室46には、樹脂供給口65から樹脂被覆層12における外側樹脂層14となる未硬化状態の外側樹脂62が供給されて当該外側樹脂62が所定の圧力で充填される。このため、第3収容室46内は外側樹脂62によって満たされており、第3収容室46内では、外側樹脂62の気体と接する液面が非形成とされている。本実施形態では、第3収容室46に充填される外側樹脂62の圧力は、第1収容室44に貯留される内側樹脂61における第1ダイス口55H近傍での圧力よりも大とされる。また、第3収容室46に充填される外側樹脂62の圧力は、第2収容室45に充填される内側樹脂61の圧力よりも小とされる。
【0067】
第2塗布部41Sの第2ダイス本体54は、第1塗布部41Fの第1ダイス本体43と離間しており、第1ダイス本体43よりも下方に配置される。第2ダイス本体54は、上下方向に延在する筒状の側壁部54sと、側壁部54sの下方側の開口を閉塞する底壁部54bと、側壁部54sの上方側の開口を閉塞する頂壁部54tとを有する。底壁部54bには第4ダイス58が取り付けられ、頂壁部54tにはニップル59が取り付けられる。第4ダイス58は概ね円筒状の部材とされ、第4ダイス58の中心軸が第3ダイス57の中心軸と概ね一致するように、底壁部54bに形成される円形の貫通孔に嵌め込まれて底壁部54bに固定される。このような第4ダイス58の下部は底壁部54bから下方へ突出する。第4ダイス58における底壁部54bから下方へ突出する部位の外周面は下方に向かって中心側へ傾斜している。また、第4ダイス58の内周面は下方に向かって中心側へ傾斜する。このため、第4ダイス58の内径が最小となる部位は、第4ダイス58の下端の開口である第4ダイス口58Hとなる。ニップル59は概ね円筒状の部材とされ、ニップル59の中心軸が第3ダイス57の中心軸と概ね一致するように、頂壁部54tに形成される円形の貫通孔に嵌め込まれて頂壁部54tに固定される。このようなニップル59の下部は頂壁部54tから下方へ突出する。ニップル59における頂壁部54tから下方へ突出する部位の外周面は下方に向かって中心側へ傾斜している。また、ニップル59の内周面は下方に向かって中心側へ傾斜する。このため、ニップル59の内径が最小となる部位は、ニップル59の下端の開口である第3挿入口59Hである。このような第2ダイス本体54の内部空間が第4収容室47とされ、この第4収容室47は上方に第3挿入口59Hを有し下方に第4ダイス口58Hを有する。また、第2ダイス本体54の頂壁部54tには、第4収容室47に連通する樹脂供給口66が形成されている。
【0068】
第4収容室47には、第3収容室46を通過した光ファイバ裸線1Nが第3挿入口59Hから第4ダイス口58Hへ抜けるように通される。このようにして、光ファイバ裸線1Nは、順次第1収容室44、第2収容室45、第3収容室46、及び第4収容室47を通過する。第3挿入口59Hの直径は、例えば、第3ダイス口57Hの直径よりも大とされ、第3ダイス口57Hの直径の5倍以下とされる。また、第4ダイス口58Hの直径は、例えば、第3ダイス口57Hの直径よりも大とされ、第3ダイス口57Hの直径の2倍以下とされる。
【0069】
また、第4収容室47には、樹脂供給口66から樹脂被覆層12における樹脂保護層15となる未硬化状態の保護樹脂63が供給されて当該保護樹脂63が所定の圧力で充填される。このため、第4収容室47内は保護樹脂63によって満たされており、第4収容室47内では、保護樹脂63の気体と接する液面が非形成とされている。なお、保護樹脂63は、ニップル59における第3挿入口59Hから第4収容室47の外部に溢れ出ていても良い。本実施形態では、第4収容室47に充填される保護樹脂63の圧力は、第1収容室44に貯留される内側樹脂61における第1ダイス口55H近傍での圧力よりも大とされる。しかし、この保護樹脂63の圧力は特に限定されるものではない。
【0070】
図4は、
図3に示されるガイド部材を概略的に示す斜視図である。本実施形態のガイド部材70は、上下方向に延在する円筒状の部材とされる。ガイド部材70の側面には、ガイド部材70の外側の領域と内側の領域とを連通する連通部としての3つのスリット71が形成されている。3つのスリット71は、当該ガイド部材70の下端から上方へ所定の位置まで延びており、ガイド部材70の周方向において概ね等間隔で位置するように形成されている。このようなガイド部材70は、
図3に示すように下方側の端が第1ブロック51の底壁部51bと離間しつつ第1収容室44に貯留される内側樹脂61内に少なくともスリット71の一部が位置し、ガイド部材70の内側の領域を光ファイバ裸線1Nが通過するように配置される。このように配置されるガイド部材70は、少なくとも第1収容室44に貯留される内側樹脂61内において光ファイバ裸線1Nの外周面と離間して光ファイバ裸線1Nを囲う。なお、ガイド部材70の内径は、ガイド部材70の内側の領域に光ファイバ裸線1Nが挿通された際にガイド部材70の内周面と光ファイバ裸線1Nの外周面との間に所定の隙間、例えば5mm以上の隙間が形成される径とされる。また、ガイド部材70がこのように配置されることで、内側樹脂61は、スリット71やガイド部材70の下方側の端の開口からガイド部材70の内側の領域に流入可能である。つまり、ガイド部材70は、当該ガイド部材70の内側の領域に内側樹脂61を流入可能とされている。
【0071】
図2に示される硬化部42は、上記のように第1硬化部42Fと第2硬化部42Sとを有する。第1硬化部42Fは、第1塗布部41Fと第2塗布部41Sとの間に配置される。第1硬化部42Fは、例えば第1塗布部41Fによって光ファイバ裸線1Nに塗布される内側樹脂61及び外側樹脂62が紫外線硬化性樹脂とされる場合、内側樹脂61及び外側樹脂62が塗布された光ファイバ裸線1Nに紫外線を照射する装置とされる。一方、第1塗布部41Fによって光ファイバ裸線1Nに塗布される内側樹脂61及び外側樹脂62が熱硬化性樹脂とされる場合、第1硬化部42Fは、内側樹脂61及び外側樹脂62が塗布された光ファイバ裸線1Nに熱を加える装置とされる。また、第1塗布部41Fによって光ファイバ裸線1Nに塗布される内側樹脂61及び外側樹脂62の一方が紫外線硬化性樹脂とされ他方が熱硬化性樹脂とされる場合、第1硬化部42Fは、内側樹脂61及び外側樹脂62が塗布された光ファイバ裸線1Nに紫外線を照射するとともに熱を加える構成とされる。
【0072】
第2硬化部42Sは、第2塗布部41Sの下方に配置される。第2硬化部42Sは、例えば第2塗布部41Sによって光ファイバ裸線1Nに塗布される保護樹脂63が紫外線硬化性樹脂とされる場合、保護樹脂63が塗布された光ファイバ裸線1Nに紫外線を照射する装置とされる。一方、第2塗布部41Sによって光ファイバ裸線1Nに塗布される保護樹脂63が熱硬化性樹脂とされる場合、第2硬化部42Sは、保護樹脂63が塗布された光ファイバ裸線1Nに熱を加える装置とされる。
【0073】
引取装置81は、ターンプーリー80によって向きが変えられた光ファイバ1を所定の引き取り速度で引き取る装置であり、巻取装置82は光ファイバ1をボビンに巻き取る装置である。
【0074】
次に、本発明の実施形態に係る光ファイバの製造方法について説明する。
【0075】
図5は、本発明の実施形態に係る光ファイバの製造方法を示すフローチャートである。本実施形態の光ファイバの製造方法によって、光ファイバの製造装置100を用いて上記光ファイバ1が製造される。
図5に示すように、本実施形態の光ファイバ1の製造方法は、準備工程P1と、線引工程P2と、冷却工程P3と、第1樹脂塗布工程P4と、第2樹脂塗布工程P5と、第3樹脂塗布工程P6と、第1硬化工程P7と、第4樹脂塗布工程P8と、第2硬化工程P9とを主な工程として備える。
【0076】
<準備工程P1>
本工程では、まず光ファイバ1のコア10となるコアガラス体と、クラッド11となるクラッドガラス体とを有する光ファイバ用母材1Pを準備する。
図6は、準備工程P1で準備される光ファイバ用母材1Pの長手方向に垂直な断面を示す図である。
図6に示すように、光ファイバ用母材1Pは、光ファイバ1のコア10となるコアガラス体10Pと、クラッド11となるクラッドガラス体11Pと、を有する。コアガラス体10Pは、クラッドガラス体11Pの中心に配置されている。長手方向に垂直な断面においてクラッドガラス体11Pの外周は概ね正七角形とされる。つまり、長手方向に垂直な断面における光ファイバ用母材1Pの外形は概ね正七角形とされる。光ファイバ用母材1Pの作製方法は特に限定されない。例えば、MCVD法(Modified chemical vapor deposition method)によって外形が円形の光ファイバ用母材を制作し、この外形が円形の光ファイバ用母材を切削して外形が概ね正七角形の光ファイバ用母材1Pを作製する。
【0077】
次に、光ファイバ用母材1Pを加熱炉25内に設置する。
図2に示すように、光ファイバ用母材1Pの上端部は母材送り出し装置20に固定され、光ファイバ用母材1Pは下端部から加熱炉25の炉心管26に挿入される。
【0078】
<線引工程P2>
本工程は、光ファイバ用母材1Pの下端部を加熱炉25において加熱しながら線引きする工程である。
【0079】
上記のように準備工程P1において光ファイバ用母材1Pを加熱炉25に設置する。本実施形態では、このように設置される光ファイバ用母材1Pを当該光ファイバ用母材1Pの中心軸Pa周りに回転させる。また、加熱炉25の発熱体27を発熱させて、回転している光ファイバ用母材1Pの下端部を加熱する。光ファイバ用母材1Pの下端部は、加熱炉25内において加熱されることによって溶融状態となり、テーパー状のネックダウンNDが形成されて縮径され、ガラス線として加熱炉25から引き出される。線引きされたガラス線は、加熱炉25から出ると、すぐに固化し、コア10及びクラッド11からなる光ファイバ裸線1Nとなる。上記のようにコアガラス体10Pはクラッドガラス体11Pの中心に配置され、光ファイバ用母材1Pは当該光ファイバ用母材1Pの中心軸Pa周りに回転されて線引きされる。このため、この光ファイバ裸線1Nにはコア10の中心軸を中心とする恒久的なねじれが付与される。また、上記のように長手方向に垂直な断面における光ファイバ用母材1Pの外形は概ね正七角形とされるため、長手方向に垂直な断面における光ファイバ裸線1Nの外形は概ね正七角形とされる。
【0080】
光ファイバ裸線1Nに付与されるねじれ量は、引取装置81による光ファイバ1の引き取り速度と、母材送り出し装置20によって光ファイバ用母材1Pを当該光ファイバ用母材1Pの中心軸Pa周りに回転させる速度と、を調整することによって調整される。
【0081】
<冷却工程P3>
本工程は、光ファイバ裸線1Nを適切な温度まで冷却する工程である。光ファイバ裸線1Nは冷却装置30を通過することで冷却される。冷却装置30に入る際、光ファイバ裸線1Nの温度は、例えば200℃程度であるが、冷却装置30を出る際には、光ファイバ裸線1Nの温度は、例えば20℃〜50℃となる。
【0082】
<第1樹脂塗布工程P4>
本工程は、光ファイバ裸線1Nの外周面に内側樹脂層13の一部となる未硬化状態の内側樹脂61を塗布する工程である。
【0083】
まず、第1樹脂塗布工程P4を行う準備段階として、冷却装置30から送り出される光ファイバ裸線1Nを、各収容室44,45,46,47に樹脂が収容されていない状態の塗布部41に通す。具体的には、光ファイバ裸線1Nを第1収容室44の上方から第1収容室44に挿入して第1ダイス口55Hを通す。この際、ガイド部材70の内側の領域に光ファイバ裸線1Nを通す。第1収容室44と第2収容室45とは第1ダイス口55Hを介して連通されているため、第1ダイス口55Hを通った光ファイバ裸線1Nは第2収容室45に挿入される。第2収容室45に挿入された光ファイバ裸線1Nを第2ダイス口56Hに通す。第2収容室45と第3収容室46とは第2ダイス口56Hを介して連通されているため、第2ダイス口56Hを通った光ファイバ裸線1Nは第3収容室46に挿入される。第3収容室46に挿入された光ファイバ裸線1Nを第3ダイス口57Hに通して第3収容室46から出す。第3収容室46から出た光ファイバ裸線1Nを第3挿入口59Hから第4収容室47に挿入し、第4ダイス口58Hに通して第4収容室47から出す。このようにして、送り出される光ファイバ裸線1Nが第1収容室44、第2収容室45、第3収容室46、及び第4収容室47を順次通過する状態にする。
【0084】
また、各収容室44,45,46,47に樹脂を収容させる。まず、ダイス口が最も下方に位置する第4収容室47に樹脂保護層15となる未硬化状態の保護樹脂63を供給して保護樹脂63を所定の圧力で第4収容室47に充填する。次に、第4収容室47の第4ダイス口58Hよりダイス口が上方に位置する第3収容室46に外側樹脂層14となる未硬化状態の外側樹脂62を供給して外側樹脂62を第3収容室46に所定の圧力で充填する。次に、第3収容室46の第3ダイス口57Hよりもダイス口が上方に位置する第2収容室45に内側樹脂層13の他の一部となる未硬化状態の内側樹脂61を供給して内側樹脂61を所定の圧力で第2収容室45に充填する。次に、第2収容室45の第2ダイス口56Hよりもダイス口が上方に位置する第1収容室44に内側樹脂層13の一部となる未硬化状態の内側樹脂61を供給して内側樹脂61を第1収容室44に貯留する。このようにして、各収容室44,45,46,47に樹脂を収容させる。なお、各収容室44,45,46,47に樹脂を供給し始める時期は特に限定されるものではない。しかし、上記のように、ダイス口が最も下方に位置する第4収容室47から第3収容室46、第2収容室45、第1収容室44の順に樹脂を供給することが好ましい。このようにすることで、内側樹脂61が第3収容室46内に流れ込んで内側樹脂61と外側樹脂62とが混ざりあったり、内側樹脂61や外側樹脂62が第4収容室47内に流れ込んで内側樹脂61や外側樹脂62と保護樹脂63とが混ざりあったりすることを抑制し得る。
【0085】
このようにして、
図3に示すように、光ファイバ裸線1Nが第1収容室44、第2収容室45、第3収容室46、及び第4収容室47を順次通過するとともに、各収容室44,45,46,47に樹脂が収容された状態にする。このようにすることで、光ファイバ裸線1Nは未硬化状態の内側樹脂61が貯留される第1収容室44を通ることになる。つまり、光ファイバ裸線1Nを、内側樹脂層13の一部となる未硬化状態の内側樹脂61が貯留される第1収容室44に、第1収容室44の上から挿入し第1ダイス口55Hから抜き出すことになる。上記のように第1ダイス口55Hの直径は光ファイバ裸線1Nの外径よりも大とされるため、光ファイバ裸線1Nの外周面と第1ダイス口55Hの縁との間には隙間が形成される。このため、第1ダイス口55Hから光ファイバ裸線1Nを抜き出すことによってこの隙間から内側樹脂61が注出し、光ファイバ裸線1Nの外周面に内側樹脂61が塗布される。このようにして塗布される内側樹脂61の厚みはこの隙間の幅と概ね同じであり、内側樹脂61が塗布された光ファイバ裸線1Nの外径は第1ダイス口55Hの直径と概ね同じとされる。なお、内側樹脂61は上方が開放する第1収容室44に貯留されている。このため、光ファイバ裸線1Nが第1収容室44を通過することで光ファイバ裸線1Nの周囲の内側樹脂61に対流Cfが生じる。この対流Cfは光ファイバ裸線1N側では下方に向かい光ファイバ裸線1N側と反対側では上方に向かうような周回状の流れである。そして、この内側樹脂61の液面に光ファイバ裸線1Nを中心として凹状に窪むメニスカスMeが形成される。本実施形態では、上記のように、内側樹脂61内において光ファイバ裸線1Nを囲うガイド部材70が配置されている。このため、この対流Cfは、ガイド部材70よりも光ファイバ裸線1N側の領域内に形成されるように規制され、メニスカスMeもガイド部材70よりも光ファイバ裸線1N側の領域内に形成されるように規制されている。このため、ガイド部材70が配置されない場合と比べて、この内側樹脂61における対流Cfが生じる領域を狭めて凹状に窪むメニスカスMeを小さくして対流Cfを安定させ得る。このようなガイド部材70の側面に形成されるスリット71は、上記のように内側樹脂61内に位置している。このため、内側樹脂61はこのスリット71を通ってガイド部材70の外側の領域とガイド部材70の内側の領域とを行き来し得る。また、ガイド部材70の下方側の端は、第1ブロック51の底壁部51bと離間している。このため、内側樹脂61はガイド部材70の下方側の開口を通ってガイド部材70の外側の領域とガイド部材70の内側の領域とを行き来し得る。
【0086】
<第2樹脂塗布工程P5>
本工程は、第1樹脂塗布工程P4において内側樹脂層13の一部となる未硬化状態の内側樹脂61が塗布された光ファイバ裸線1Nの外周面に内側樹脂層13の他の一部となる未硬化状態の内側樹脂61を塗布する工程である。
【0087】
上記のように内側樹脂61が所定の圧力で第2収容室45に充填されることで、第1樹脂塗布工程P4において内側樹脂61が塗布された光ファイバ裸線1Nは未硬化状態の内側樹脂61が所定の圧力で充填される第2収容室45を通ることになる。つまり、第1樹脂塗布工程P4において内側樹脂61が塗布された光ファイバ裸線1Nを、内側樹脂層13の他の一部となる未硬化状態の内側樹脂61が所定の圧力で充填される第2収容室45に、第1ダイス口55Hから挿入し第2ダイス口56Hから抜き出すことになる。上記のように第2ダイス口56Hの直径は光ファイバ裸線1Nの外形よりも大とされる。例えば、第2ダイス口56Hの直径が第1ダイス口55Hの直径よりも大とされる場合、第1樹脂塗布工程P4において内側樹脂61が塗布された光ファイバ裸線1Nの外周面と第2ダイス口56Hの縁との間には隙間が形成される。なお、
図3において、第1樹脂塗布工程P4において内側樹脂61が塗布された光ファイバ裸線1Nの外周面は破線で示されている。このため、第2ダイス口56Hから光ファイバ裸線1Nを抜き出すことによってこの隙間から内側樹脂61が注出し、第1樹脂塗布工程P4において内側樹脂61が塗布された光ファイバ裸線1Nの外周面に内側樹脂61が塗布される。このようにして、光ファイバ裸線1Nに塗布される内側樹脂61の全体の厚みが光ファイバ裸線1Nの外周面と第2ダイス口56Hの縁との間の隙間と概ね同じとなるように調節される。一方、第2ダイス口56Hの直径が第1ダイス口55Hの直径よりも小とされる場合、第1樹脂塗布工程P4において光ファイバ裸線1Nの外周面に塗布された内側樹脂61の一部が剥がれる。ここで、第2収容室45では内側樹脂61が所定の圧力で充填されている。このため、第2収容室45に充填される内側樹脂61が光ファイバ裸線1Nに塗布され、光ファイバ裸線1Nに塗布される内側樹脂61の全体の厚みが光ファイバ裸線1Nの外周面と第2ダイス口56Hの縁との間の隙間と概ね同じとなるように調節される。このようにして本工程によって内側樹脂61が塗布された光ファイバ裸線1Nの外径は第2ダイス口56Hの直径と概ね同じとされる。
【0088】
<第3樹脂塗布工程P6>
本工程は、第2樹脂塗布工程P5において内側樹脂層13の他の一部となる未硬化状態の内側樹脂61が塗布された光ファイバ裸線1Nの外周面に未硬化状態の外側樹脂層14となる外側樹脂62を塗布する工程である。
【0089】
上記のように外側樹脂62が所定の圧力で第3収容室46に充填されることで、第2樹脂塗布工程P5において内側樹脂61が塗布された光ファイバ裸線1Nは未硬化状態の外側樹脂62が所定の圧力で充填される第3収容室46を通ることになる。つまり、第2樹脂塗布工程P5において内側樹脂61が塗布された光ファイバ裸線1Nを、外側樹脂層14となる未硬化状態の外側樹脂62が所定の圧力で充填される第3収容室46に、第2ダイス口56Hから挿入し第3ダイス口57Hから抜き出すことになる。上記のように第3ダイス口57Hの直径は第2ダイス口56Hの直径よりも大とされるため、第2樹脂塗布工程P5において内側樹脂61が塗布された光ファイバ裸線1Nの外周面と第3ダイス口57Hの縁との間には隙間が形成される。このため、第3ダイス口57Hから光ファイバ裸線1Nを抜き出すことによってこの隙間から外側樹脂62が注出し、第2樹脂塗布工程P5において内側樹脂61が塗布された光ファイバ裸線1Nの外周面に外側樹脂62が塗布される。このようにして塗布される外側樹脂62の厚みはこの隙間の幅と概ね同じであり、本工程によって外側樹脂62が塗布された光ファイバ裸線1Nの外径は第3ダイス口57Hの直径と概ね同じとされる。
【0090】
<第1硬化工程P7>
本工程は、光ファイバ裸線1Nに塗布された未硬化状態の内側樹脂61及び外側樹脂62を硬化する工程である。光ファイバ裸線1Nに塗布された未硬化状態の内側樹脂61及び外側樹脂62は第1硬化部42Fによって硬化され、内側樹脂61は内側樹脂層13となり、外側樹脂62は外側樹脂層14となる。
【0091】
<第4樹脂塗布工程P8>
本工程は、第1硬化工程P7において内側樹脂61及び外側樹脂62が硬化された光ファイバ裸線1Nの外周面に未硬化状態の樹脂保護層15となる保護樹脂63を塗布する工程である。
【0092】
上記のように保護樹脂63が所定の圧力で第4収容室47に充填されることで、第1硬化工程P7において内側樹脂61及び外側樹脂62が硬化された光ファイバ裸線1Nが未硬化状態の保護樹脂63が所定の圧力で充填される第4収容室47を通ることになる。つまり、第1硬化工程P7において内側樹脂61及び外側樹脂62が硬化された光ファイバ裸線1Nを、樹脂保護層15となる未硬化状態の保護樹脂63が所定の圧力で充填される第4収容室47に、第3挿入口59Hから挿入し第4ダイス口58Hから抜き出すことになる。上記のように第4ダイス口58Hの直径は第3ダイス口57Hの直径よりも大とされるため、第1硬化工程P7において内側樹脂61及び外側樹脂62が硬化された光ファイバ裸線1Nの外周面と第4ダイス口58Hの縁との間には隙間が形成される。このため、第4ダイス口58Hから光ファイバ裸線1Nを抜き出すことによってこの隙間から保護樹脂63が注出し、第1硬化工程P7において内側樹脂61及び外側樹脂62が硬化された光ファイバ裸線1Nの外周面に保護樹脂63が塗布される。このようにして塗布される保護樹脂63の厚みはこの隙間の幅と概ね同じであり、本工程によって保護樹脂63が塗布された光ファイバ裸線1Nの外径は第4ダイス口58Hの直径と概ね同じとされる。
【0093】
<第2硬化工程P9>
本工程は、光ファイバ裸線1Nに塗布された未硬化状態の保護樹脂63を硬化する工程である。光ファイバ裸線1Nに塗布された未硬化状態の保護樹脂63は第2硬化部42Sによって硬化され、保護樹脂63は樹脂保護層15となり、樹脂被覆層12が形成される。その結果、光ファイバ裸線1Nは
図1に示す光ファイバ1となる。
【0094】
そして、光ファイバ1は、ターンプーリー80により方向が変換され、巻取装置82により巻き取られる。
【0095】
以上説明したように、本実施形態の光ファイバ1の製造方法では、準備工程P1、線引工程P2、冷却工程P3、第1樹脂塗布工程P4、第2樹脂塗布工程P5、第3樹脂塗布工程P6、第1硬化工程P7、第4樹脂塗布工程P8、及び第2硬化工程P9を経て、
図1に示す光ファイバ1が製造される。
【0096】
本実施形態の製造方法では、第1樹脂塗布工程P4及び第2樹脂塗布工程P5によって内側樹脂層13となる未硬化状態の内側樹脂61が光ファイバ裸線1Nの外周面に塗布される。また、第3樹脂塗布工程P6によって未硬化状態の内側樹脂61が塗布された光ファイバ裸線1Nの外周面に外側樹脂層14となる未硬化状態の外側樹脂62が塗布される。このように塗布された未硬化状態の内側樹脂61及び外側樹脂62が硬化されて内側樹脂層13及び外側樹脂層14が形成される。本実施形態の製造方法では、光ファイバ裸線1Nは第1収容室44、第2収容室45、第3収容室46の順に通され、第1収容室の上方は開放されている。このため、上記特許文献1に記載の製造方法のように第1収容室44に未硬化状態の内側樹脂61が充填される場合と比べて、光ファイバ裸線1Nに長手方向と垂直な方向への振れが生じたとしても、第1収容室44が形成される第1ダイス本体43に光ファイバ裸線1Nの外周面が接触して光ファイバ裸線1Nの外周面に傷がつくことを抑制できる。従って、本実施形態の製造方法は、光ファイバ1の機械的な強度が低下することを抑制することができる。
【0097】
また、本実施形態の製造方法では、第2樹脂塗布工程P5において、内側樹脂層13の他の一部となる内側樹脂61が所定の圧力で充填される第2収容室45に内側樹脂層13の一部となる内側樹脂61が塗布された光ファイバ裸線1Nを通す。そして、内側樹脂層13の一部となる内側樹脂61が塗布された光ファイバ裸線1Nの外周面に内側樹脂層13の他の一部となる内側樹脂61を塗布する。第2収容室45には内側樹脂61が所定の圧力で充填されているため、内側樹脂層13の一部となる内側樹脂61が塗布された光ファイバ裸線1Nとともに第2ダイス口56Hから注出される未硬化状態の内側樹脂61の圧力に変動が生じることが抑制される。従って、第1樹脂塗布工程P4において光ファイバ裸線1Nの外周面に塗布される内側樹脂61の厚みに偏りが生じたとしても、第2樹脂塗布工程P5においてこの偏りを平準化するように内側樹脂61を塗布し得、内側樹脂層13の厚みに偏りが生じることを抑制し得る。また、第3樹脂塗布工程P6では、所定の圧力で外側樹脂62が充填される第3収容室46に内側樹脂61が塗布された光ファイバ裸線1Nを通すことで内側樹脂61が塗布された光ファイバ裸線1Nの外周面に外側樹脂62を塗布する。このため、外側樹脂層14の厚みに偏りが生じることが抑制される。このようにして、本実施形態の製造方法では、樹脂被覆層12の厚みに偏りが生じることを抑制し得る。
【0098】
また、本実施形態の製造方法では、少なくとも第1収容室44に収容される内側樹脂61内において光ファイバ裸線1Nの外周面と離間して光ファイバ裸線1Nを囲う筒状のガイド部材70が配置される。このガイド部材70は、当該ガイド部材70の内側の領域に内側樹脂61を流入可能とされている。
【0099】
このようにすることで、上記のように、第1収容室44に貯留される内側樹脂61に生じる対流Cfがガイド部材70よりも光ファイバ裸線1N側の領域内に形成されるようにし得る。このため、ガイド部材70が配置されない場合と比べて、この内側樹脂61における対流Cfが生じる領域を狭めて凹状に窪むメニスカスMeを小さくして対流Cfを安定させ得る。このため、第1樹脂塗布工程P4において光ファイバ裸線1Nの外周面に塗布される内側樹脂61の厚みに偏りが生じることを抑制し得る。
【0100】
また、本実施形態の製造方法では、第1収容室44に内側樹脂61を貯留する前にガイド部材70を配置する。このため、第1収容室44に内側樹脂61を貯留した後にガイド部材70を配置する場合と比べて、ガイド部材70を容易に配置し得る。
【0101】
また、本実施形態の製造方法では、ガイド部材70の側面には、内側樹脂61内における当該ガイド部材70の外側の領域と内側の領域とを連通する連通部としてのスリット71が形成されている。このため、ガイド部材70の側面にスリット71が非形成とされる場合と比べて、ガイド部材70の外側の領域に位置する内側樹脂61をガイド部材70の内側の領域に流入させ易くし得、第1収容室44に貯留される内側樹脂61における対流Cfをより安定させ得る。このため、第1樹脂塗布工程P4において光ファイバ裸線1Nの外周面に塗布される内側樹脂61の厚みに偏りが生じることをより抑制し得る。
【0102】
また、本実施形態の製造方法では、内側樹脂層13を構成する樹脂は、クラッド11の屈折率よりも低い屈折率の樹脂とされる。このため、光ファイバ裸線1Nのクラッド11が内側クラッドであり、内側樹脂層13が外側クラッドであるダブルクラッド構造の光ファイバ1を製造できる。
【0103】
また、本実施形態の製造方法では、コア10は励起光により励起される活性元素を含有するシリカガラスから成る。このため、本実施形態の製造方法は、ダブルクラッド構造の増幅用光ファイバを製造できる。
【0104】
また、本実施形態の製造方法は、光ファイバ用母材1Pを当該光ファイバ用母材1Pの中心軸Pa周りに回転させつつ線引きして光ファイバ裸線1Nを形成する線引工程P2を備える。このため、光ファイバ裸線1Nに恒久的なねじれを付与し得る。例えば、本実施形態のように、光ファイバ裸線1Nのクラッド11が内側クラッドとされ、内側樹脂13層が外側クラッドとされるダブルクラッド構造の増幅用光ファイバでは、光ファイバ裸線1Nに恒久的なねじれが付与されることによって、スキュー光を抑制して内側クラッドであるクラッド11を伝搬する光をコア10に入射し易くし得る。このため、ダブルクラッド構造の増幅用光ファイバにおける励起光の吸収効率を上げ得る。なお、光ファイバ用母材1Pを当該光ファイバ用母材1Pの中心軸Pa周りに回転させつつ線引きする場合、光ファイバ裸線1Nに長手方向と垂直な方向への振れが生じ易くなる傾向にある。しかし、上記のように、本実施形態の光ファイバの製造方法によれば、光ファイバ裸線1Nに長手方向と垂直な方向への振れが生じる場合であっても光ファイバの機械的な強度が低下することを抑制し得る。このため、本実施形態の光ファイバの製造方法は、このように光ファイバ用母材1Pを当該光ファイバ用母材1Pの中心軸Pa周りに回転させつつ線引きして光ファイバ裸線1Nを形成する場合に特に有用である。
【0105】
また、本実施形態の製造方法では、長手方向に垂直な断面における光ファイバ裸線1Nの外形は、非円形とされる。光ファイバ裸線1Nの外形を非円形にすることで、クラッド11を伝搬する光が光ファイバ裸線1Nの外周面であるクラッド11の外周面において反射角を変えながら反射を繰り返すようにし得、クラッド11を伝搬する光をコア10に入射し易くし得る。従って、本実施形態の製造方法では、長手方向に垂直な断面における光ファイバ裸線1Nの外形が円形とされる場合と比べて、スキュー光を抑制し得るダブルクラッド構造の増幅用光ファイバを製造し得る。
【0106】
また、本実施形態の製造方法では、第1収容室44の第1ダイス口55Hは第2収容室45に光ファイバ裸線1Nを挿入するための第1挿入口を兼ねる。このため、本実施形態の製造方法では、光ファイバ裸線1Nは第1ダイス口55Hを通ることによって内側樹脂層13の一部となる内側樹脂61が塗布されるとともに第2収容室45に挿入される。このため、光ファイバ裸線1Nに長手方向と垂直な方向への振れが生じたとしても、第1収容室44の第1ダイス口55Hが第2収容室45の第1挿入口を兼ねない場合と比べて、第2収容室45の第1挿入口の縁に光ファイバ裸線1Nに塗布された内側樹脂61が接触することを抑制し得る。従って、第1ダイス口55Hが第2収容室45の第1挿入口を兼ねない場合と比べて、光ファイバ裸線1Nに長手方向と垂直な方向への振れが生じたとしても、光ファイバ裸線1Nに塗布される内側樹脂61の厚さに偏りが生じることをより抑制し得る。
【0107】
また、本実施形態の製造方法では、第2収容室45の第2ダイス口56Hは第3収容室46に光ファイバ裸線1Nを挿入するための第2挿入口を兼ねている。このため、本実施形態の製造方法では、光ファイバ裸線1Nは第2ダイス口56Hを通ることによって内側樹脂層13の他の一部となる内側樹脂61が塗布されるとともに第3収容室46に挿入される。このため、光ファイバ裸線1Nに長手方向と垂直な方向への振れが生じたとしても、第2収容室45の第2ダイス口56Hが第3収容室46の第2挿入口を兼ねない場合と比べて、第3収容室46の第2挿入口の縁に光ファイバ裸線1Nに塗布された内側樹脂61が接触することを抑制し得る。従って、第2ダイス口56Hが第3収容室46の挿入口を兼ねない場合と比べて、光ファイバ裸線1Nに長手方向と垂直な方向への振れが生じたとしても、光ファイバ裸線1Nに塗布される内側樹脂61の厚さに偏りが生じることをより抑制し得る。
【0108】
なお、本実施形態のように第2ダイス口56Hが第3収容室46の第2挿入口を兼ねる場合、第3収容室46に充填される外側樹脂62の圧力は、第2収容室45に充填される内側樹脂61の圧力よりも小とされることが好ましい。このようにすることで、第3収容室46に充填される外側樹脂62が第2収容室45に流れ込むことを抑制し得る。また、第3収容室46に充填される外側樹脂62の圧力が第2収容室45に充填される内側樹脂61の圧力よりも大とされる場合と比べて、光ファイバ裸線1Nに塗布される内側樹脂61の厚みを厚くし得る。
【0109】
また、本実施形態の製造方法では、第4樹脂塗布工程P8を更に備えるため、3つの樹脂層を含む樹脂被覆層12を有する光ファイバ1を製造できる。
【0110】
また、本実施形態の光ファイバ1の製造装置100は、第1収容室44と第2収容室45と第3収容室46とを含む第1ダイス本体43を備える。第1収容室44の上方は開放され、第1収容室44は下方に第1ダイス口55Hを有する。第2収容室45は上方に挿入口としての第1ダイス口55Hを有し下方に第2ダイス口56Hを有する。第3収容室46は上方に挿入口としての第2ダイス口56Hを有し下方に第3ダイス口57Hを有する。第1収容室44には内側樹脂層13の一部となる内側樹脂61が貯留され、第2収容室45には内側樹脂層13の他の一部となる内側樹脂61が所定の圧力で充填され、第3収容室46には外側樹脂層14となる外側樹脂62が所定の圧力で充填される。第1収容室44には、光ファイバ裸線1Nが上方から第1ダイス口55Hへ抜けるように通される。第2収容室45には、第1収容室44を通過した光ファイバ裸線1Nが挿入口としての第1ダイス口55Hから第2ダイス口56Hへ抜けるように通される。第3収容室46には、第2収容室45を通過した光ファイバ裸線1Nが挿入口としての第2ダイス口56Hから第3ダイス口57Hへ抜けるように通される。
【0111】
本実施形態の製造装置100では、光ファイバ裸線1Nは第1収容室44、第2収容室45、第3収容室46の順に通され、第1収容室44の上方は開放されている。このため、上記のように、光ファイバ裸線1Nに長手方向と垂直な方向への振れが生じたとしても、光ファイバ裸線1Nの外周面が第1ダイス本体43に接触して光ファイバ裸線1Nの外周面に傷がつくことを抑制でき、光ファイバ1の機械的な強度が低下することを抑制することができる。また、本実施形態の製造装置100では、内側樹脂層13の一部となる内側樹脂61が塗布された光ファイバ裸線1Nが内側樹脂層13の他の一部となる内側樹脂61が所定の圧力で充填される第2収容室45を通過する。このため、上記のように、光ファイバ裸線1Nの外周面に塗布される内側樹脂層13の一部となる内側樹脂61の厚みに偏りが生じたとしても、この偏りを平準化するように内側樹脂層13の他の一部となる内側樹脂61を塗布し得、内側樹脂層13の厚みに偏りが生じることを抑制し得る。また、本実施形態の製造装置100では、内側樹脂61が塗布された光ファイバ裸線1Nが所定の圧力で外側樹脂62が充填される第3収容室46を通過するため、上記のように、外側樹脂層14の厚みに偏りが生じることが抑制される。このようにして、本実施形態の製造装置100は、樹脂被覆層12の厚みに偏りが生じることを抑制しつつ光ファイバ1の機械的な強度の低下を抑制し得る。
【0112】
また、本実施形態の製造装置100は、ガイド部材70を備えるため、上記のように、光ファイバ裸線1Nの外周面に塗布する内側樹脂61の厚みに偏りが生じることを抑制し得る。
【0113】
また、ガイド部材70の側面には、内側樹脂61内における当該ガイド部材70の外側の領域と内側の領域とを連通する連通部としてのスリット71が形成されている。このため、ガイド部材70の側面にスリット71が非形成とされる場合と比べて、ガイド部材70の外側の領域に位置する内側樹脂61をガイド部材70の内側の領域に流入させ易くし得、第1収容室44に貯留される内側樹脂61における対流Cfをより安定させ得る。このため、光ファイバ裸線1Nの外周面に塗布される内側樹脂61の厚みに偏りが生じることをより抑制し得る。
【0114】
また、本実施形態の製造装置100では、第1収容室44の第1ダイス口55Hは第2収容室45に光ファイバ裸線1Nを挿入するための第1挿入口を兼ねるため、第1ダイス本体43を小型化し得る。また、本実施形態の製造装置100では、上記のように、光ファイバ裸線1Nは第1ダイス口55Hを通ることによって内側樹脂層13の一部となる内側樹脂61が塗布されるとともに第2収容室45に挿入される。このため、光ファイバ裸線1Nに長手方向と垂直な方向への振れが生じたとしても、第1収容室44の第1ダイス口55Hが第2収容室45の第1挿入口を兼ねない場合と比べて、第2収容室45の第1挿入口の縁に光ファイバ裸線1Nに塗布された内側樹脂61が接触することを抑制し得る。このため、第1ダイス口55Hが第2収容室45の挿入口を兼ねない場合と比べて、光ファイバ裸線1Nに長手方向と垂直な方向への振れが生じたとしても、光ファイバ裸線1Nに塗布される内側樹脂61の厚さに偏りが生じることをより抑制し得る。
【0115】
また、本実施形態の製造装置100では、第2収容室45の第2ダイス口56Hは第3収容室46に光ファイバ裸線1Nを挿入するための第2挿入口を兼ねるため、第1ダイス本体43を小型化し得る。また、本実施形態の製造装置100では、上記のように、光ファイバ裸線1Nは第2ダイス口56Hを通ることによって内側樹脂層13の他の一部となる内側樹脂61が塗布されるとともに第3収容室46に挿入される。このため、光ファイバ裸線1Nに長手方向と垂直な方向への振れが生じたとしても、第2収容室45の第2ダイス口56Hが第3収容室46の第2挿入口を兼ねない場合と比べて、第3収容室46の第2挿入口の縁に光ファイバ裸線1Nに塗布された内側樹脂61が接触することを抑制し得る。このため、第2ダイス口56Hが第3収容室46の挿入口を兼ねない場合と比べて、光ファイバ裸線1Nに長手方向と垂直な方向への振れが生じたとしても、光ファイバ裸線1Nに塗布される内側樹脂61の厚さに偏りが生じることをより抑制し得る。
【0116】
以上、本発明について、実施形態を例に説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0117】
例えば、上記実施形態では、ダブルクラッド構造の増幅用光ファイバとされる光ファイバ1を例に説明した。しかし、光ファイバは、コアと、コアの外周面を囲むクラッドと、クラッドの外周面を被覆する内側樹脂層及び内側樹脂層の外周面を被覆する外側樹脂層を含む樹脂被覆層と、を有する限りにおいて、特に限定されるものではない。例えば、光ファイバは、励起光により励起される活性元素がコアに添加されていない光ファイバとされも良く、内側樹脂層13が外側クラッドとされないシングルクラッド構造の光ファイバとされも良く、複数のコアを有するマルチコアファイバとされても良い。また、上記実施形態の樹脂被覆層12は、外側樹脂層14の外周面を被覆する樹脂保護層15を有していた。しかし、樹脂被覆層12は少なくとも内側樹脂層13と外側樹脂層14とを有していればよく、樹脂被覆層12は樹脂保護層15を有していなくてもよく、樹脂保護層15よりも外側に他の樹脂層を有していてもよい。例えば、樹脂被覆層12が樹脂保護層15を有さない場合、光ファイバの製造方法は、第4樹脂塗布工程P8と第2硬化工程P9を備えず、塗布部41の構成は第2塗布部41Sを有さない構成とされ、硬化部42の構成は第2硬化部42Sを有さない構成とされる。
【0118】
また、上記実施形態では、長手方向に垂直な断面における光ファイバ裸線1Nの外形は、非円形であり、概ね正七角形とされていた。しかし、長手方向に垂直な断面における光ファイバ裸線1Nの外形は、特に限定されるものではなく、六角形や七角形や八角形等の多角形や多角形の角に丸みを帯びた形状等の非円形とされても良く、円形とされても良い。
【0119】
また、上記実施形態の線引工程P2は、光ファイバ用母材1Pを当該光ファイバ用母材1Pの中心軸Pa周りに回転させつつ、光ファイバ用母材1Pの下端部を加熱炉25において加熱しながら線引きする工程とされた。しかし、線引工程P2は、光ファイバ用母材1Pを回転させずに、光ファイバ用母材1Pの下端部を加熱炉25において加熱しながら線引きする工程とされても良い。線引工程P2がこのような工程とされる場合には、光ファイバ裸線1Nに恒久的なねじれが付与されない光ファイバを製造し得る。
【0120】
また、上記実施形態では、第1収容室44と第2収容室45と第3収容室46とが形成される第1ダイス本体43、及びガイド部材70を備える第1塗布部41Fを例に説明した。しかし、第1塗布部41Fはガイド部材70を備えなくても良い。しかし、内側樹脂層13の厚みに偏りが生じることを抑制する観点において、第1塗布部41Fはガイド部材70を備えていることが好ましい。
【0121】
また、上記実施形態では、下端から上方に延びる3つのスリット71が形成された円筒状のガイド部材70を例に説明した。しかし、ガイド部材は、少なくとも第1収容室44に貯留される内側樹脂61内において光ファイバ裸線1Nの外周面と離間して光ファイバ裸線1Nを囲う筒状の部材とされるとともに、当該ガイド部材の内側の領域に内側樹脂61を流入可能とする限りにおいて、特に限定されるものではない。また、ガイド部材70の側面に形成される連通部は、内側樹脂61内におけるガイド部材70の外側の領域と内側の領域とを連通する限りにおいて、特に限定されるものではない。例えば、ガイド部材70の側面に形成されるスリット71は、上端から下方に延びるスリットとされても良い。この場合、ガイド部材70は、第1収容室44に貯留される内側樹脂61内に少なくともスリット71の一部が位置するように配置される。また、3つのスリット71は、ガイド部材70の周方向において概ね等間隔に位置しなくても良い。しかし、内側樹脂61における対流Cfを安定させる観点において、3つのスリット71は、ガイド部材70の周方向において概ね等間隔に位置していることが好ましい。なお、スリット71の数は特に限定されるものではなく、1つや2つであっても良く、4つ以上であっても良い。また、ガイド部材70の側面には、スリット71に替わって、外周面から内周面に貫通する連通部としての貫通孔が形成されても良く、連通部として貫通孔とスリット71とが形成されても良い。また、ガイド部材70の側面に連通部が形成される場合、ガイド部材70の上端が内側樹脂61の液面よりも上方に位置するとともに、ガイド部材70の下端が第1ブロック51の底壁部51bに接触していても良い。このようなガイド部材70であっても、ガイド部材70の連通部から当該ガイド部材70の内側の領域に内側樹脂61が流入する。
【0122】
また、ガイド部材70は、
図7に示されるような部材とされても良い。
図7は、変形例に係るガイド部材を示す図であり、
図7(A)は変形例に係るガイド部材70の斜視図であり、
図7(B)は別の変形例に係るガイド部材70の斜視図であり、
図7(C)は更に別の変形例に係るガイド部材70が第1収容室44に配置される状態を示す図である。
【0123】
図7(A)に示すガイド部材70は、上方から下方に向かって外径及び内径が縮径された円筒状部材であり、このガイド部材70の側面には連通部として上端から下端まで上下方向に延びる1つのスリット71が形成されている。このガイド部材70における最小の内径となる下端における内径は、光ファイバ裸線1Nの外径よりも大とされる。このようなガイド部材70であっても、上記実施形態のガイド部材70と同様にして、内側樹脂61における対流Cfが生じる領域を狭めて凹状に窪むメニスカスMeを小さくして対流Cfを安定させ得る。また、スリット71の幅が光ファイバ裸線1Nの外形よりも大とされる場合には、光ファイバ裸線1Nが第1収容室44を通過する状態であっても、ガイド部材70を取り外したり取り付けたりし得る。このため、光ファイバ用母材1Pの線引きを中断しなくてもガイド部材70を取り外したり取り付けたりし得る。
【0124】
図7(B)に示すガイド部材70は、上下方向に延在する四角筒状部材であり、このガイド部材70の側面には連通部として上端から下端まで上下方向に延びる1つのスリット71が形成されている。ガイド部材70の延在方向と垂直な断面において、ガイド部材70の内周面に接する円の直径は、光ファイバ裸線1Nの外径よりも大とされる。このようなガイド部材70であっても、上記実施形態のガイド部材70と同様にして、内側樹脂61における対流Cfが生じる領域を狭めて凹状に窪むメニスカスMeを小さくして対流Cfを安定させ得る。また、スリット71の幅が光ファイバ裸線1Nの外形よりも大とされる場合には、
図7(A)に示されるガイド部材70と同様にして、光ファイバ用母材1Pの線引きを中断しなくてもガイド部材70を取り外したり取り付けたりし得る。しかし、内側樹脂61における対流Cfを安定させる観点において、上記実施形態のガイド部材70や
図7(A)に示されるガイド部材70のように、ガイド部材70の延在方向と垂直な断面において、ガイド部材70の内周の形状が円形とされることが好ましい。
【0125】
図7(C)に示すガイド部材70は、スリット71が非形成とされる点、上下方向の長さが短い点において、上記実施形態におけるガイド部材70と異なる。なお、
図7(C)では、理解を容易にするために、第1ダイス本体43の第2ブロック52及び第3ブロック53と、第2ダイス本体54との記載は省略されている。このようなガイド部材70は、例えば第1収容室44に貯留される内側樹脂61内に全体が位置するとともに、下端が第1ブロック51の底壁部51bと離間しつつガイド部材70の内側の領域を光ファイバ裸線1Nが通過するように配置される。このように配置されるガイド部材70では、ガイド部材70の上端の開口や下端の開口から当該ガイド部材70の内側の領域に内側樹脂61が流入可能である。このようなガイド部材70であっても、上記実施形態のガイド部材70と同様にして、内側樹脂61における対流Cfが生じる領域を狭めて凹状に窪むメニスカスMeを小さくして対流Cfを安定させ得る。なお、
図7(C)に示すようにガイド部材70の下端が第1ブロック51の底壁部51bと離間している場合、ガイド部材70の上端は内側樹脂61の液面よりも上方に位置していても良い。また、ガイド部材70の上端が内側樹脂61の液面よりも下方に位置している場合、ガイド部材70の下端は第1ブロック51の底壁部51bに接触していても良い。このようなガイド部材70であっても、ガイド部材70の上端の開口や下端の開口から当該ガイド部材70の内側の領域に内側樹脂61が流入する。
【0126】
また、上記実施形態では、第1収容室44の第1ダイス口55Hは第2収容室45に光ファイバ裸線1Nを挿入するための第1挿入口を兼ね、第2収容室45の第2ダイス口56Hは第3収容室46に光ファイバ裸線1Nを挿入するための第2挿入口を兼ねていた。しかし、第1ダイス口55Hは第2収容室45に光ファイバ裸線1Nを挿入するための第1挿入口を兼ねなくても良く、第2ダイス口56Hは第3収容室46に光ファイバ裸線1Nを挿入するための第2挿入口を兼ねなくても良い。第1ダイス口55Hが第2収容室45に光ファイバ裸線1Nを挿入するための第1挿入口を兼ねない第1ダイス本体43として、例えば上記第2ブロック52が第1ブロック51から離間し頂壁部52tに光ファイバ裸線1Nを挿入するためのニップルを取り付け第2収容室45に内側樹脂61を所定の圧力で充填可能とする構成が挙げられる。また、第2ダイス口56Hが第3収容室46に光ファイバ裸線1Nを挿入するための第2挿入口を兼ねない第1ダイス本体43として、例えば上記第3ブロック53が第1ブロック51から離間し頂壁部53tに光ファイバ裸線1Nを挿入するためのニップルを取り付け第3収容室46に外側樹脂62を所定の圧力で充填可能とする構成が挙げられる。ここでのニップルは、上記第2ダイス本体54に取り付けられるニップル59と同様に円筒状の部材とされる。なお、第1ブロック51と第2ブロック52とが離間しつつ第2ブロック52と第3ブロック53が互いに連結されていても良い。また、第2ブロック52と第3ブロック53とが離間しつつ第1ブロック51と第2ブロック52が互いに連結されていても良い。
【0127】
また、上記実施形態では、第1硬化部42Fによって光ファイバ裸線1Nに塗布された未硬化状態の内側樹脂61及び外側樹脂62を硬化し、第2硬化部42Sによって光ファイバ裸線1Nに塗布された未硬化状態の保護樹脂63を硬化させた。しかし、硬化部42は、光ファイバ裸線1Nに塗布される未硬化状態の樹脂を硬化させる限りにおいて特に限定されるものではない。例えば、1つの硬化部によってこれら未硬化状態の樹脂61,62,63を硬化させても良い。例えば、硬化部は、第2塗布部41Sの下方に配置され、光ファイバ裸線1Nに塗布された未硬化状態の内側樹脂61、外側樹脂62、及び保護樹脂63を硬化させる構成とされても良い。この場合、未硬化状態の内側樹脂61及び外側樹脂62が塗布された光ファイバ裸線1Nを、樹脂保護層15となる未硬化状態の保護樹脂63が所定の圧力で充填される第4収容室47に、第3挿入口59Hから挿入し第4ダイス口58Hから抜き出すことになる。そして、内側樹脂61及び外側樹脂62が塗布された光ファイバ裸線1Nの外周面に保護樹脂63が塗布される。硬化部は、このようにして光ファイバ裸線1Nに塗布された未硬化状態の内側樹脂61、外側樹脂62、及び保護樹脂63を硬化させる。このような場合、第3収容室46の第3ダイス口57Hが第2本体部のニップル59の第3挿入口59Hを兼ねても良く、第1ダイス本体43と第2ダイス本体54とが互いに連結されることになる。
【0128】
また、上記実施形態では、線引工程P2によって光ファイバ裸線1Nを形成し、この光ファイバ裸線1Nに樹脂被覆層12を形成して光ファイバ1を製造した。しかし、光ファイバの製造方法は、線引工程P2を備えていなくても良い。この場合、例えば準備工程P1において光ファイバ裸線1Nを準備し、この光ファイバ裸線1Nを被覆層形成装置40に通すことで光ファイバ裸線1Nに樹脂被覆層12を形成して光ファイバ1を製造しても良い。
【0129】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明の内容をより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものでは無い。
【0130】
(実施例1)
図8は、実施例1で用いた塗布部を
図3と同様に示す図であり、
図9は、実施例1で製造される光ファイバを
図1と同様に示す図である。
図8において
図3と同様の構成のものには同じ符号を付し、
図9において
図1と同様の構成のものには同じ符号を付している。実施例1で用いた塗布部41は、第2塗布部41Sを有さずに第1塗布部41Fから成る点が上記実施形態で例示した塗布部41と異なる。このような塗布部41を有する被覆層形成装置40を備える製造装置100を用いて、
図9に示すように、長手方向に垂直な断面における光ファイバ裸線1Nの外形が円形である点及び樹脂被覆層12が樹脂保護層15を有さない点が上記実施形態で例示した光ファイバ1と異なる光ファイバ1を製造した。この光ファイバ1は、上記実施形態で例示した光ファイバ1と同様に、クラッド11が内側クラッドとされ内側樹脂層13が外側クラッドとされるダブルクラッド構造の増幅用光ファイバとされる。具体的には、長手方向と垂直な方向の断面における外形が円形とされた光ファイバ用母材1Pを、当該光ファイバ用母材1Pの中心軸Pa周りに250rpmで回転させつつ、15m/minの線引速度で線引きした。この線引きによって外径が250μmである光ファイバ裸線1Nが形成され、この光ファイバ裸線1Nを被覆層形成装置40に通すことで、
図9に示される光ファイバ1が製造された。本実施例では、長さが5kmの光ファイバ1を10ロット製造した。被覆層形成装置40の第2収容室45に充填される内側樹脂61の圧力は0.10MPaとされ、第3収容室46に充填される外側樹脂62の圧力は0.05MPaとされ、第1収容室44に貯留される内側樹脂61では安定したメニスカスMeが形成されていた。
【0131】
(比較例1)
図10は、比較例1で用いた塗布部を
図8と同様に示す図であり、
図10において
図8と同様の構成のものには同じ符号を付している。比較例1で用いた塗布部41は、第1ダイス本体43に第1収容室44が形成されない点が主に上記実施例1で用いた塗布部41と異なる。比較例1における第1ダイス本体43の第2ブロック52では、頂壁部52tに第1ダイス55が取り付けられている。第1ダイス55は、中心軸が第2ダイス56の中心軸と概ね一致するように、頂壁部52tに形成される円形の貫通孔に嵌め込まれて頂壁部52tに固定される。このような第2ブロック52の内部空間が第2収容室45とされる。
【0132】
塗布部41を
図10に示される塗布部41とする以外は実施例1と同様にして、長さが5kmの光ファイバ1を10ロット製造した。
【0133】
(比較例2)
図11は、比較例2で用いた塗布部を
図8と同様に示す図であり、
図11において
図8と同様の構成のものには同じ符号を付している。比較例2で用いた塗布部41は、第1ダイス本体43に第2収容室45が形成されない点及びガイド部材70が配置されない点が主に上記実施例1で用いた塗布部41と異なる。本比較例における第1ダイス本体43の第3ブロック53では、側壁部53sは第1ブロック51の側壁部51sの外周面と離間して側壁部51sを囲い、底壁部53bは第1ブロック51の底壁部51bの下面と離間して側壁部53sの下方側の開口を閉塞し、頂壁部53tは側壁部53sの上端部の全周から第1ブロック51の側壁部51s側に延在して側壁部51sに接続する。このような第3ブロック53の内部空間が第3収容室46とされる。また、第1ブロック51における第1ダイス口55Hの直径は、
図8に示す第2ダイス口56Hの直径と概ね同じとされる。
【0134】
塗布部41を
図11に示される塗布部41とする以外は実施例1と同様にして、長さが5kmの光ファイバ1を10ロット製造した。
【0135】
(プルーフ生存長)
このようにして製造された各光ファイバ1について曲げ試験を行いながら巻き返しを行った。
図12は、光ファイバの曲げ試験の様子の一部を示す図である。この曲げ試験では、光ファイバ1を複数の滑車90にかけまわすことで、順次異なる方向に光ファイバ1を曲げながら巻き取る。
図12には、巻き取る方向を示す矢印が記載されている。光ファイバ1を曲げる方向は、長手方向と垂直な断面における8つの径方向とされ、隣接する2つの方向は周方向に概ね45度ずれた方向とされる。光ファイバ1の曲げにおける曲率径は、光ファイバ裸線1Nを1%の伸ばす際に光ファイバ裸線1Nに加わる応力が光ファイバ1の外周面に加わるような径とした。そして、この曲げ試験を行った光ファイバの全長を、曲げ試験の際に光ファイバが破断した回数で割った値をプルーフ生存長として算出した。実施例1の光ファイバ1のプルーフ生存長は10km/回であり、比較例1の光ファイバ1のプルーフ生存長は0.2km/回であり、比較例2の光ファイバ1のプルーフ生存長は10km/回であった。比較例1の光ファイバ1のプルーフ生存長は、実施例1及び比較例2の光ファイバ1のプルーフ生存長よりも短く、比較例1の光ファイバ1は実施例1及び比較例2の光ファイバ1よりも機械的な強度が低かった。これは、比較例1の光ファイバの製造では、光ファイバ用母材1Pの回転に起因して光ファイバ裸線1Nに振れが生じ、第2収容室45の第1ダイス55に光ファイバ裸線1Nの外周面が接触して光ファイバ裸線1Nの外周面に傷がついたためと考えられ得る。
【0136】
(光漏れ)
このようにして製造された各光ファイバ1について、光ファイバ1の一端から内側クラッドであるクラッド11に可視光を入射した際に光ファイバ1の外周面から光の漏れが発生するかどうかを確認した。実施例1及び比較例1の光ファイバ1では光の漏れはなく、比較例2の光ファイバ1では光の漏れが発生していた。比較例2の光ファイバ1における光の漏れが発生した部位を観察したところ、この部位には内側樹脂層13が殆ど形成されていない部位があった。これは、比較例2の光ファイバ1の製造では、内側樹脂層13の厚みに偏りが生じたためと考えられ得る。一方、実施例1及び比較例1の光ファイバ1の製造では、内側樹脂層13及び外側樹脂層14の厚みに偏りが生じることが抑制されていると考え得る。
【0137】
このように、本発明における製造方法によれば、内側樹脂層13及び外側樹脂層14を有する樹脂被覆層12における各樹脂層の厚みに偏りが生じることを抑制し、樹脂被覆層12を形成する際に光ファイバ裸線1Nに振れが生じたとしても光ファイバ1の機械的な強度が低下することを抑制し得る光ファイバ1を製造し得ることが確認された。
【課題】 樹脂被覆層の厚みに偏りが生じることを抑制しつつ光ファイバの機械的な強度が低下することを抑制し得る光ファイバの製造方法及び光ファイバの製造装置を提供する。
【解決手段】 光ファイバ1の製造方法は、上方が開放し内側樹脂61が貯留される第1収容室44に当該第1収容室の上方から光ファイバ裸線1Nを挿入し第1ダイス口55Hから抜き出す第1樹脂塗布工程P4と、内側樹脂61が所定の圧力で充填される第2収容室45に光ファイバ裸線1Nを第1ダイス口55Hから挿入し第2ダイス口56Hから抜き出す第2樹脂塗布工程P5と、外側樹脂62が所定の圧力で充填される第3収容室46に光ファイバ裸線1Nを第2ダイス口56Hから挿入し第3ダイス口57Hから抜き出す第3樹脂塗布工程P6と、を備える。