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特許6612981ファスニング具、及びファスニング具の組
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6612981
(24)【登録日】2019年11月8日
(45)【発行日】2019年11月27日
(54)【発明の名称】ファスニング具、及びファスニング具の組
(51)【国際特許分類】
   A44B 18/00 20060101AFI20191118BHJP
【FI】
   A44B18/00
【請求項の数】11
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2018-523083(P2018-523083)
(86)(22)【出願日】2016年6月14日
(86)【国際出願番号】JP2016067698
(87)【国際公開番号】WO2017216881
(87)【国際公開日】20171221
【審査請求日】2018年9月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006828
【氏名又は名称】YKK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】奥山 光
(72)【発明者】
【氏名】張 万里
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 雅道
(72)【発明者】
【氏名】猿渡 瑛
【審査官】 冨江 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第93/22120(WO,A1)
【文献】 国際公開第97/31549(WO,A1)
【文献】 特開平11−155613(JP,A)
【文献】 特表2012−526567(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A44B18/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材(10,20)と、前記基材(10,20)上に設けられた複数の係合素子(13,23)を備え、前記複数の係合素子(13,23)に含まれる各係合素子(13,23)が、柱部(14,24)と、前記柱部(14,24)に連結し、前記柱部(14,24)よりも幅が広い頭部(15,25)を含む、ファスニング具(100,200)であって、
前記複数の係合素子(13,23)は、同心円状の仮想円(30)に含まれる各仮想円(30)に属し、同一の仮想円(30)に属する係合素子(13,23)が、同一の仮想円(30)沿いに配列され、
前記同心円状の仮想円(30)の径方向内側の領域において隣接する第1及び第2仮想円(30)に属する全ての係合素子(13,23)が、前記第1及び第2仮想円(30)に属する係合素子(13,23)と結合した状態の相手方のファスニング具(100,200)の係合素子(13,23)の前記仮想円(30)沿いの周方向移動を許容するように設けられ、
前記同心円状の仮想円(30)の径方向外側の領域において隣接する第3及び第4仮想円(30)それぞれに属する少なくとも一対の係合素子(13,23)が、前記第3及び第4仮想円(30)に属する少なくとも一対の係合素子(13,23)と結合した状態の相手方のファスニング具(100,200)の係合素子(13,23)の前記仮想円(30)沿いの周方向移動を阻止するように設けられる、ファスニング具。
【請求項2】
前記第1及び第2仮想円(30)の径方向間隔が、前記第3及び第4仮想円(30)の径方向間隔よりも大きい、請求項1に記載のファスニング具。
【請求項3】
前記ファスニング具(100,200)同士の結合は、前記第1及び第2仮想円(30)に属する3つの係合素子(13,23)と前記相手方のファスニング具(100,200)の1つの係合素子(13,23)から構築される結合単位を含む、請求項1又は2に記載のファスニング具。
【請求項4】
前記第1又は第2仮想円(30)は、前記同心円状の仮想円(30)の径方向において最も内側に位置する、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のファスニング具。
【請求項5】
前記第3及び第4仮想円(30)に属する全ての係合素子(13,23)が、前記第3及び第4仮想円(30)に属する係合素子(13,23)と結合した状態の相手方のファスニング具(100,200)の係合素子(13,23)の前記仮想円(30)沿いの周方向移動を阻止するように設けられる、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のファスニング具。
【請求項6】
前記第3又は第4仮想円(30)は、前記同心円状の仮想円(30)の径方向において最も外側に位置する、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のファスニング具。
【請求項7】
前記ファスニング具(100,200)同士の結合は、前記第3及び第4仮想円(30)に属する3つの係合素子(13,23)と前記相手方のファスニング具(100,200)の1つの係合素子(13,23)から構築される結合単位を含む、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のファスニング具。
【請求項8】
前記同心円状の仮想円(30)の径方向の最も内側で隣接する仮想円(30)の径方向間隔が、前記同心円状の仮想円(30)の径方向の最も外側で隣接する仮想円(30)の径方向間隔よりも大きい、請求項1乃至7のいずれか一項に記載のファスニング具。
【請求項9】
前記同心円状の仮想円(30)の径方向において隣接する仮想円(30)の径方向間隔が、前記同心円状の仮想円(30)の径方向内側から外側に向けて減少する、請求項1乃至8のいずれか一項に記載のファスニング具。
【請求項10】
第1基材(10)と、前記第1基材(10)上に設けられた複数の第1係合素子(13)を備え、前記複数の第1係合素子(13)に含まれる各第1係合素子(13)が、第1柱部(14)と、前記第1柱部(14)に連結し、前記第1柱部(14)よりも幅が広い第1頭部(15)を含む、第1ファスニング具(100)と、
第2基材(20)と、前記第2基材(20)上に設けられた複数の第2係合素子(23)を備え、前記複数の第2係合素子(23)に含まれる各第2係合素子(23)が、第2柱部(24)と、前記第2柱部(24)に連結し、前記第2柱部(24)よりも幅が広い第2頭部(25)を含む、第2ファスニング具を備え、
前記複数の第1係合素子(13)は、同心円状の各仮想円(30)に属し、同一の仮想円(30)に属する第1係合素子(13)が、同一の仮想円(30)沿いに配列され、
前記同心円状の仮想円(30)の径方向内側の領域において隣接する第1及び第2仮想円(30)に属する全ての第1係合素子(13)が、前記第1及び第2仮想円(30)に属する第1係合素子(13)と結合した状態の前記第2ファスニング具の第2係合素子(23)の前記仮想円(30)沿いの周方向移動を許容するように設けられ、
前記同心円状の仮想円(30)の径方向外側の領域において隣接する第3及び第4仮想円(30)それぞれに属する少なくとも一対の第1係合素子(13)が、前記第3及び第4仮想円(30)に属する少なくとも一対の第1係合素子(13)と結合した状態の前記第2ファスニング具の第2係合素子(23)の前記仮想円(30)沿いの周方向移動を阻止するように設けられ、
前記複数の第2係合素子(23)は、同心円状の仮想円(30)に含まれる各仮想円に属し、同一の仮想円(30)に属する第2係合素子(23)が、同一の仮想円(30)沿いに配列され、
前記同心円状の仮想円(30)の径方向内側の領域において隣接する第1及び第2仮想円(30)に属する全ての第2係合素子(23)が、前記第1及び第2仮想円(30)に属する第2係合素子(23)と結合した状態の前記第1ファスニング具(100)の第1係合素子(13)の前記仮想円(30)沿いの周方向移動を許容するように設けられ、
前記同心円状の仮想円(30)の径方向外側の領域において隣接する第3及び第4仮想円(30)それぞれに属する少なくとも一対の第2係合素子(23)が、前記第3及び第4仮想円(30)に属する少なくとも一対の第2係合素子(23)と結合した状態の前記第1ファスニング具(100)の第1係合素子(13)の前記仮想円(30)沿いの周方向移動を阻止するように設けられる、ファスニング具の組。
【請求項11】
前記第1及び第2仮想円(30)の径方向間隔が、前記第3及び第4仮想円(30)の径方向間隔よりも大きい、請求項10に記載のファスニング具の組。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ファスニング具、及びファスニング具の組に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の図4は同心円状に配置された係合素子を具備するファスナー部材を開示する。同文献の段落0028には、結合状態の一組のファスナー部材に付与され得る剪断力に対する耐性が改善されると説明されている。同文献の図4から見て取れるように、rとsの値が固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3476867号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願発明者らは、各々が係合素子を有する一対のファスニング具の結合に関し、必要な結合力を維持しつつも結合に関する各ファスニング具の相対的な配向の自由度を高めることの意義を見出した。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様に係るファスニング具は、基材(10,20)と、前記基材(10,20)上に設けられた複数の係合素子(13,23)を備え、前記複数の係合素子(13,23)に含まれる各係合素子(13,23)が、柱部(14,24)と、前記柱部(14,24)に連結し、前記柱部(14,24)よりも幅が広い頭部(15,25)を含む、ファスニング具(100,200)であって、
前記複数の係合素子(13,23)は、同心円状の仮想円(30)に含まれる各仮想円(30)に属し、同一の仮想円(30)に属する係合素子(13,23)が、同一の仮想円(30)沿いに配列され、
前記同心円状の仮想円(30)の径方向内側の領域において隣接する第1及び第2仮想円(30)に属する全ての係合素子(13,23)が、前記第1及び第2仮想円(30)に属する係合素子(13,23)と結合した状態の相手方のファスニング具(100,200)の係合素子(13,23)の前記仮想円(30)沿いの周方向移動を許容するように設けられ、
前記同心円状の仮想円(30)の径方向外側の領域において隣接する第3及び第4仮想円(30)それぞれに属する少なくとも一対の係合素子(13,23)が、前記第3及び第4仮想円(30)に属する係合素子(13,23)と結合した状態の相手方のファスニング具(100,200)の係合素子(13,23)の前記仮想円(30)沿いの周方向移動を阻止するように設けられる。
【0006】
幾つかの場合、前記第1及び第2仮想円(30)の径方向間隔が、前記第3及び第4仮想円(30)の径方向間隔よりも大きい。
【0007】
幾つかの場合、前記ファスニング具(100,200)同士の結合は、前記第1及び第2仮想円(30)に属する3つの係合素子(13,23)と前記相手方のファスニング具(100,200)の1つの係合素子(13,23)から構築される結合単位を含む。
【0008】
幾つかの場合、前記第1又は第2仮想円(30)は、前記同心円状の仮想円(30)の径方向において最も内側に位置する。
【0009】
幾つかの場合、前記第3及び第4仮想円(30)に属する全ての係合素子(13,23)が、前記第3及び第4仮想円(30)に属する係合素子(13,23)と結合した状態の相手方のファスニング具(100,200)の係合素子(13,23)の前記仮想円(30)沿いの周方向移動を阻止するように設けられる。
【0010】
幾つかの場合、前記第3又は第4仮想円(30)は、前記同心円状の仮想円(30)の径方向において最も外側に位置する。
【0011】
幾つかの場合、前記ファスニング具(100,200)同士の結合は、前記第3及び第4仮想円(30)に属する3つの係合素子(13,23)と前記相手方のファスニング具(100,200)の1つの係合素子(13,23)から構築される結合単位を含む。
【0012】
幾つかの場合、前記同心円状の仮想円(30)の径方向の最も内側で隣接する仮想円(30)の径方向間隔が、前記同心円状の仮想円(30)の径方向の最も外側で隣接する仮想円(30)の径方向間隔よりも大きい。
【0013】
幾つかの場合、前記同心円状の仮想円(30)の径方向において隣接する仮想円(30)の径方向間隔が、前記同心円状の仮想円(30)の径方向内側から外側に向けて減少する。
【0014】
本開示の別態様に係るファスニング具の組は、
第1基材(10)と、前記第1基材(10)上に設けられた複数の第1係合素子(13)を備え、前記複数の第1係合素子(13)に含まれる各第1係合素子(13)が、第1柱部(14)と、前記第1柱部(14)に連結し、前記第1柱部(14)よりも幅が広い第1頭部(15)を含む、第1ファスニング具(100)と、
第2基材(20)と、前記第2基材(20)上に設けられた複数の第2係合素子(23)を備え、前記複数の第2係合素子(23)に含まれる各第2係合素子(23)が、第2柱部(24)と、前記第2柱部(24)に連結し、前記第2柱部(24)よりも幅が広い第2頭部(25)を含む、第2ファスニング具を備え、
前記複数の第1係合素子(13)は、同心円状の各仮想円(30)に属し、同一の仮想円(30)に属する第1係合素子(13)が、同一の仮想円(30)沿いに配列され、
前記同心円状の仮想円(30)の径方向内側の領域において隣接する第1及び第2仮想円(30)に属する全ての第1係合素子(13)が、前記第1及び第2仮想円(30)に属する第1係合素子(13)と結合した状態の前記第2ファスニング具の第2係合素子(23)の前記仮想円(30)沿いの周方向移動を許容するように設けられ、
前記同心円状の仮想円(30)の径方向外側の領域において隣接する第3及び第4仮想円(30)それぞれに属する少なくとも一対の第1係合素子(13)が、前記第3及び第4仮想円(30)に属する少なくとも一対の第1係合素子(13)と結合した状態の前記第2ファスニング具の第2係合素子(23)の前記仮想円(30)沿いの周方向移動を阻止するように設けられ、
前記複数の第2係合素子(23)は、同心円状の仮想円(30)に含まれる各仮想円に属し、同一の仮想円(30)に属する第2係合素子(23)が、同一の仮想円(30)沿いに配列され、
前記同心円状の仮想円(30)の径方向内側の領域において隣接する第1及び第2仮想円(30)に属する全ての第2係合素子(23)が、前記第1及び第2仮想円(30)に属する第2係合素子(23)と結合した状態の前記第1ファスニング具(100)の第1係合素子(13)の前記仮想円(30)沿いの周方向移動を許容するように設けられ、
前記同心円状の仮想円(30)の径方向外側の領域において隣接する第3及び第4仮想円(30)それぞれに属する少なくとも一対の第2係合素子(23)が、前記第3及び第4仮想円(30)に属する少なくとも一対の第2係合素子(23)と結合した状態の前記第1ファスニング具(100)の第1係合素子(13)の前記仮想円(30)沿いの周方向移動を阻止するように設けられる。
【発明の効果】
【0015】
本開示の一態様によれば、必要な結合力を維持しつつも結合に関する各ファスニング具の相対的な配向の自由度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本開示の例示形態に係るファスニング具の組の概略的な側面図であり、各ファスニング具が間隔をあけて対面し、ファスニング具同士が結合していない状態を示す。
図2】本開示の例示形態に係るファスニング具の組に含まれる第1ファスニング具の概略的な斜視図である。複数の係合素子が同心円状に配置されていることを模式的に示す。複数の係合素子は、同心円状の各仮想円に属する。
図3】本開示の例示形態に係るファスニング具の組に含まれる第1ファスニング具の概略的な上面模式図である。複数の係合素子が同心円状の合計7つの仮想円に個別に配列される。
図4】本開示の例示形態に係るファスニング具の組に含まれる第2ファスニング具の概略的な上面模式図である。複数の係合素子が同心円状の合計7つの仮想円に個別に配列される。第2ファスニング具上の仮想円に加えて、第2ファスニング具に結合した状態の第1ファスニング具上の仮想円も示す。第2ファスニング具上の同心円状の仮想円の径方向にて隣接する仮想円の間に、第1ファスニング具上の仮想円が位置付けられることを示す。なお、一点鎖線が第1ファスニング具上の仮想円を示し、二点鎖線が第2ファスニング具上の仮想円を示す。
図5】本開示の例示形態に係るファスニング具の組の結合状態の第1及び第2ファスニング具それぞれに関する同心円状の仮想円の重なり状態を示す概略的な模式図である。
図6】本開示の例示形態に係るファスニング具の組に含まれる第1及び第2ファスニング具に関して、同心円状の仮想円の径方向にて最も内側で隣接する仮想円の径方向間隔と、同心円状の仮想円の径方向にて最も外側で隣接する仮想円の径方向間隔の大小関係を示す模式図である。
図7】本開示の例示形態に係るファスニング具の組の結合状態の第1及び第2ファスニング具に関して、同心円状の仮想円の径方向内側領域において第1ファスニング具の係合素子の頭部の間の環状通路沿いに第2ファスニング具の係合素子の柱部が自由に移動することができることを示す概略的な模式図である。
図8】本開示の例示形態に係るファスニング具の組の結合状態の第1及び第2ファスニング具に関して、同心円状の仮想円の径方向外側領域において、第1ファスニング具の係合素子の柱部が第2ファスニング具の係合素子の頭部により保持された状態を示す概略的な模式図である。第2ファスニング具の3つの係合素子により第1ファスニング具の一つの係合素子の柱部が保持される。第2ファスニング具の係合素子の頭部により仮想円沿いの第1ファスニング具の係合素子の柱部の移動が阻止される。
図9】第1ファスニング具の係合素子の頭部の仮想円沿いの移動を許容する第2ファスニング具の係合素子の配置態様を示す概略的な模式図である。図9(a)及び(b)は、隣接する異なる仮想円上の第2ファスニング具の係合素子の柱部の間の環状通路を第1ファスニング具の係合素子の頭部が移動可能なことを示す概略的及び部分的な平面模式図及び側面模式図である。
図10】第1ファスニング具の係合素子の柱部の仮想円沿いの移動を阻止する第2ファスニング具の係合素子の配置態様を示す概略的な模式図である。図10(a)及び(b)は、隣接する異なる仮想円上の第2ファスニング具の係合素子の頭部により、第1ファスニング具の係合素子の柱部が保持されて仮想円沿いの移動が阻止されることを示す概略的及び部分的な平面模式図及び側面模式図である。
図11】仮想円沿いの第1ファスニング具の係合素子の移動を許容する第2ファスニング具の係合素子の配置関係を説明する際に参照される概略的な平面図である。
図12】仮想円沿いの第1ファスニング具の係合素子の移動を阻止する第2ファスニング具の係合素子の配置関係を説明する際に参照される概略的な平面図である。
図13】本開示の別の例示形態に係るファスニング具の組に含まれる第1ファスニング具の概略的な上面模式図である。
図14】本開示のまた別の例示形態に係るファスニング具の組に含まれる第1ファスニング具の概略的な上面模式図である。
図15】本開示のまた更に別の例示形態に係るファスニング具の組に含まれる第1ファスニング具の概略的な上面模式図である。
図16】第1ファスニング具の係合素子の柱部の仮想円沿いの移動を阻止する第2ファスニング具の係合素子の別の配置態様を示す概略的な模式図である。第1ファスニング具の係合素子の柱部が、隣接する異なる仮想円上の第2ファスニング具の係合素子の頭部の間の隙間を通過できないことが示される。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図1乃至図16を参照しつつ、本発明の非限定の例示の実施の形態について説明する。開示の1以上の実施形態及び実施形態に包含される各特徴は、個々に独立したものではない。当業者は、過剰説明を要せず、各実施形態、各特徴を組み合わせることができる。また、当業者は、この組み合わせによる相乗効果も理解可能である。実施形態間の重複説明は、原則的に省略する。参照図面は、発明の記述を主たる目的とするものである。参照図面は、作図の便宜のために簡略化されている場合がある。
【0018】
図1は、ファスニング具の組の概略的な側面図であり、各ファスニング具が間隔をあけて対面し、ファスニング具同士が結合していない状態を示す。図2は、ファスニング具の組に含まれる第1ファスニング具の概略的な斜視図である。複数の係合素子が同心円状に配置されていることを模式的に示す。複数の係合素子は、同心円状の各仮想円に属する。図3は、ファスニング具の組に含まれる第1ファスニング具の概略的な上面模式図である。複数の係合素子が同心円状の合計7つの仮想円に個別に配列される。図4は、ファスニング具の組に含まれる第2ファスニング具の概略的な上面模式図である。複数の係合素子が同心円状の合計7つの仮想円に個別に配列される。第2ファスニング具上の仮想円に加えて、第2ファスニング具に結合した状態の第1ファスニング具上の仮想円も示す。第2ファスニング具上の同心円状の仮想円の径方向にて隣接する仮想円の間に、第1ファスニング具上の仮想円が位置付けられることを示す。なお、一点鎖線が第1ファスニング具上の仮想円を示し、二点鎖線が第2ファスニング具上の仮想円を示す。図5は、ファスニング具の組の結合状態の第1及び第2ファスニング具それぞれに関する同心円状の仮想円の重なり状態を示す概略的な模式図である。図6は、ファスニング具の組に含まれる第1及び第2ファスニング具に関して、同心円状の仮想円の径方向にて最も内側で隣接する仮想円の径方向間隔と、同心円状の仮想円の径方向にて最も外側で隣接する仮想円の径方向間隔の大小関係を示す模式図である。図7は、ファスニング具の組の結合状態の第1及び第2ファスニング具に関して、同心円状の仮想円の径方向内側領域において第1ファスニング具の係合素子の頭部の間の環状通路沿いに第2ファスニング具の係合素子の柱部が自由に移動することができることを示す概略的な模式図である。図8は、ファスニング具の組の結合状態の第1及び第2ファスニング具に関して、同心円状の仮想円の径方向外側領域において、第1ファスニング具の係合素子の柱部が第2ファスニング具の係合素子の頭部により保持された状態を示す概略的な模式図である。第2ファスニング具の3つの係合素子により第1ファスニング具の一つの係合素子の柱部が保持される。第2ファスニング具の係合素子の頭部により仮想円沿いの第1ファスニング具の係合素子の柱部の移動が阻止される。図9は、第1ファスニング具の係合素子の頭部の仮想円沿いの移動を許容する第2ファスニング具の係合素子の配置態様を示す概略的な模式図である。図9(a)及び(b)は、隣接する異なる仮想円上の第2ファスニング具の係合素子の柱部の間の環状通路を第1ファスニング具の係合素子の頭部が移動可能なことを示す概略的及び部分的な平面模式図及び側面模式図である。図10は、第1ファスニング具の係合素子の柱部の仮想円沿いの移動を阻止する第2ファスニング具の係合素子の配置態様を示す概略的な模式図である。図10(a)及び(b)は、隣接する異なる仮想円上の第2ファスニング具の係合素子の頭部により、第1ファスニング具の係合素子の柱部が保持されて仮想円沿いの移動が阻止されることを示す概略的及び部分的な平面模式図及び側面模式図である。図11は、仮想円沿いの第1ファスニング具の係合素子の移動を許容する第2ファスニング具の係合素子の配置関係を説明する際に参照される概略的な平面図である。図12は、仮想円沿いの第1ファスニング具の係合素子の移動を阻止する第2ファスニング具の係合素子の配置関係を説明する際に参照される概略的な平面図である。図13は、ファスニング具の組に含まれる第1ファスニング具の概略的な上面模式図である。図14は、ファスニング具の組に含まれる第1ファスニング具の概略的な上面模式図である。図15は、ファスニング具の組に含まれる第1ファスニング具の概略的な上面模式図である。図16は、第1ファスニング具の係合素子の柱部の仮想円沿いの移動を阻止する第2ファスニング具の係合素子の別の配置態様を示す概略的な模式図である。第1ファスニング具の係合素子の柱部が、隣接する異なる仮想円上の第2ファスニング具の係合素子の頭部の間の隙間を通過できないことが示される。
【0019】
図1乃至図4に示すように、ファスニング具の組300は、第1及び第2ファスニング具100,200を含む。第1及び第2ファスニング具100,200は、ともに樹脂製である。別例においては、第1及び第2ファスニング具100,200は、部分的に樹脂以外の材料、例えば、金属又はセラミックを含む。
【0020】
第1ファスニング具100は、後述する第2主面(裏面)に加工が施され、接着、嵌合、融着、磁着などの様々な態様により不図示の第1部材に固定される。第2ファスニング具200は、後述する第2主面(裏面)に加工が施され、同様に、接着、嵌合、融着、磁着などの様々な態様により不図示の第2部材に固定される。第1部材に固定された第1ファスニング具100と第2部材に固定された第2ファスニング具200を結合することにより、結合状態の第1及び第2ファスニング具100,200を介して第1部材と第2部材が連結される。第1部材や第2部材は、様々な部材であり得る。一例としては、第1部材が車体フレームであり、第2部材が内装材である。この場合、例えば、車体フレームに被係合部が形成され、第1ファスニング具100の裏面に係合部が一体的に形成され得る。一方、第2部材は、内装材裏面と、第2ファスニング具100の裏面が融着され得る。別例としては、第1部材が窓枠であり、第2部材が日差し遮断用のシート材である。この場合、例えば、第1ファスニンング具100の裏面と窓枠の表面が接着剤を介して固定され、第2ファスニング具200の裏面と日差し遮断用のシートの裏面が接着剤を介して固定される。様々な他の例が多様な応用分野で該分野の設計者により想起される。
【0021】
図1乃至図4に示すように、第1ファスニング具100は、基材10と、基材10上に設けられた複数の係合素子13を備える。第2ファスニング具200は、基材20と、基材20上に設けられた複数の係合素子23を備える。より具体的には、第1ファスニング具100の基材10は、平板材であり、平坦な第1主面11と、第1主面11の反対側の第2主面12を有する。同様に、第2ファスニング具200の基材20は、平板材であり、平坦な第1主面21と、第1主面21の反対側の第2主面22を有する。第1及び第2ファスニング具100,200が結合する時、第1ファスニング具100の第1主面11と第2ファスニング具200の第1主面21が対向配置される。従って、第1主面11、21を対向面と呼んでも良い。基材10、20は、本実施例において、各々、円形状の外形を有し、従って、これらを円盤材と呼ぶ場合がある。但し、基材10、20は必ずしも円形状とする必要はなく、三角形、四角形など任意の外周形状とすることが可能である。また、基材は平板材であるが、例えば別部材と固定するために第2主面12、22に別部材と嵌合するための図示しない突起や凹みを設けても良い。
【0022】
説明の明瞭さのため、基材10、基材20を第1基材10、第2基材20と呼び、係合素子13、係合素子23を第1係合素子13、第2係合素子23と呼ぶ場合がある。第1、第2、第3等は、主として、同一用語により参照される対象を区別するために用いられる。従って、第1、第2、第3等は、個数の特定を何ら意図しないものと理解されるべきである。この点は、本願の開示全体に当てはまる。
【0023】
幾つかの場合、第1基材10と第2基材20が同一の平面形状を有し、図示例では、実質的に同一の円形状を有する。第1基材10と第2基材20の外形の一致に基づいて又は両者の重ね合いに基づいて、第1及び第2ファスニング具100,200の結合に際しての両者のアライメントを確保することができる。このようにして第1及び第2ファスニング具100,200の適切なアライメントを確保することにより、第1及び第2ファスニング具100,200は、設計者の意図した通りの結合力を発揮することができる。
【0024】
別例においては、第1基材10と第2基材20が異なる平面形状を有する。必要に応じて、第1基材10と第2基材20の少なくとも一方又は両方には位置決め要素が設けられる。位置決め要素とは、例えば、第1基材10から突出する係合素子とは異なる突出部であり、第2基材20に凹設された孔である。このような方法で、第1及び第2ファスニング具100,200の結合に際しての両者の整列具合を調整しても良い。
【0025】
第1ファスニング具100の複数の係合素子13に含まれる各係合素子13は、柱部14と、柱部14に連結し、柱部14よりも幅が広い頭部15を含む。同様に、第2ファスニング具200の複数の係合素子23に含まれる各係合素子23は、柱部24と、柱部24に連結し、柱部24よりも幅が広い頭部25を含む。必ずしもこの限りではないが、図示例では、柱部14,24が円柱部であり、頭部15,25が半球部である。頭部15,25は、基材10,20の第1主面11,21に対向する略平坦な係合面を有する。第1及び第2ファスニング具100,200が結合する時、第1ファスニング具100の頭部15の係合面と、第2ファスニング具200の頭部25の係合面が接触若しくは面接触する。第1ファスニング具100の頭部15の係合面は、第2ファスニング具200の頭部25の係合面と接触する接触領域を含む。第2ファスニング具200の頭部25の係合面は、第1ファスニング具100の頭部15の係合面と接触する接触領域を含む。接触領域は、係合面の全域を占めず、係合面の一部の領域である。
【0026】
半球状の頭部15、25は、柱部14、24の中心軸上で最も厚みが大きい。半球状の頭部15、25は、柱部14、24の中心軸から径方向外側に離れるに従い第1及び第2ファスニング具100,200の第1主面11,21に接近する曲面を有する。ここで述べた径方向は、円柱状の柱部から理解できる径方向であり、半球状の頭部から理解できる径方向ではない。更に述べれば、ここで述べた径方向は、例えば、頭部15,25の係合面が存在する平面における柱部の円形断面から理解できる方向である。径方向外側に向かい第1主面11,21に接近する頭部15,25の曲面は、頭部15,25同士の円滑な結合を促進する。
【0027】
柱部14、柱部24を区別するため、第1柱部14、第2柱部24と呼ぶ場合がある。頭部15、頭部25を区別するため、第1頭部15、第2頭部25と呼ぶ場合がある。
【0028】
第1係合素子13と第2係合素子23は、双方ともキノコ又はマッシュルーム形状を有する。第1柱部14が、円柱部分であり、第1基材10に結合した基端と、この基端の反対側の先端を有する。第1頭部15は、第1柱部14の先端に結合した略半球部分である。第1柱部14の幅よりも第1頭部15の幅が広い。換言すれば、第1頭部15と第1柱部14は同心円の関係にあり、第1柱部14の直径よりも第1頭部15の直径が広い。第1頭部15は、球体を二分する切断面に対応する円形底面を有し、円形底面の中心で第1柱部14の先端に結合する。円形底面は、上述の係合面を含む。第1柱部14及び第1頭部15に関する説明は、同様に、第2柱部24及び第2頭部25にも該当し、重複説明は省略する。図示例においては、第1係合素子13と第2係合素子23が同一形状を取る。しかしながら、別例においては、第1係合素子13と第2係合素子23が非同一形状を取り得る。
【0029】
図2及び図3に端的に示すように、第1ファスニング具100の複数の係合素子13は、同心円状の仮想円30に含まれる各仮想円30に属し、同一の仮想円30に属する係合素子13が、同一の仮想円30沿いに配列される。各仮想円30は、複数の係合素子13の分類基準である。従って、同一の仮想円30上に位置する1以上の係合素子13は、同一のグループに属する。仮想円30の数に応じてグループ数が増減する。
【0030】
図2に示すように、図示例に係る第1ファスニング具100上には合計7つの仮想円30が同心円状に設定されており、同心円状の仮想円30の径方向内側から外側に向けて、1番目の仮想円IC1〜7番目の仮想円IC7が図示される。1番目の仮想円IC1沿いに合計8個の第1係合素子13が等しい周方向間隔で環状に配列される。この合計8個の第1係合素子13は、同一の仮想円IC1に沿って配列され、従って、同一の仮想円IC1に属する。2番目の仮想円IC2沿いに合計19個の第1係合素子13が密に環状に配列される。この合計19個の第1係合素子13は、同一の仮想円IC2に沿って配列され、従って、同一の仮想円IC2に属する。1番目及び2番目の仮想円に関して説明した上述の記述が、3番目〜7番目の仮想円についても同様に該当し、従って、冗長及び重複説明は省略する。上述した合計27個以外の残りの第1係合素子13は、3番目〜7番目のいずれかの仮想円に属する。図示例においては、いずれの仮想円に属する第1係合素子13も環状に連続的に配置され、第1係合素子13の環状列を構築し、これらの環状列が同心円を構築する。
【0031】
図4に端的に示すように、第2ファスニング具200の複数の係合素子23は、同心円状の仮想円30に含まれる各仮想円30に属し、同一の仮想円30に属する係合素子23が、同一の仮想円30沿いに配列される。図2及び図3を参照して第1ファスニング具100の第1係合素子13についてした説明が、同様に、図4に図示される第2ファスニング具200の第2係合素子23についても当てはまる。しかしながら、第1係合素子13の配置パターン又は同心円パターンと、第2係合素子23の配置パターン又は同心円パターンは非同一である。
【0032】
図4に示すように、図示例に係る第2ファスニング具200上には合計7つの仮想円30が同心円状に設定されており、同心円状の仮想円30の径方向内側から外側に向けて、1番目の仮想円IC11〜7番目の仮想円IC17が図示される。1番目の仮想円IC11沿いに合計11個の第2係合素子23が等しい周方向間隔で環状に配列される。この合計11個の第2係合素子23は、同一の仮想円IC11に沿って配列され、従って、同一の仮想円IC11に属する。2番目の仮想円IC12沿いに合計22個の第2係合素子23が密に環状に配列される。この合計22個の第2係合素子23は、同一の仮想円IC12に沿って配列され、従って、同一の仮想円IC12に属する。1番目及び2番目の仮想円に関して説明した上述の記述が、3番目〜7番目の仮想円についても同様に該当し、従って、冗長及び重複説明は省略する。上述した合計33個以外の残りの第2係合素子23は、3番目〜7番目の仮想円に属する。図示例においては、いずれの仮想円30に属する第2係合素子23も環状に連続的に配置され、第2係合素子23の環状列を構築し、これらの環状列が同心円を構築する。
【0033】
図4に付加的に図示される第2ファスニング具200に結合した状態の第1ファスニング具100上の1番目〜7番目の仮想円の位置から分かるように、第1及び第2ファスニング具100、200が結合状態の時、第1ファスニング具100の仮想円と第2ファスニング具200の仮想円は、径方向において交互に配される。径方向で隣接する第1ファスニング具100上の仮想円の間に第2ファスニング具200上の仮想円が配される。同様に、径方向で隣接する第2ファスニング具200上の仮想円の間に第1ファスニング具100上の仮想円が配される。
【0034】
より具体的には、図4に示すように、第1ファスニング具100上の仮想円IC1と仮想円IC2の間に第2ファスニング具200上の仮想円IC11が配される。第1ファスニング具100上の仮想円IC2と仮想円IC3の間に第2ファスニング具200上の仮想円IC12が配される。他の仮想円については図示の通りである。このような第1ファスニング具100上の仮想円と第2ファスニング具200上の仮想円の位置関係は、第1及び第2ファスニング具100,200が結合する時、隣接する2つの仮想円に属する第1係合素子13の間で第2ファスニング具200の第2係合素子23が結合することを意味し得る。幾つかの場合、第1ファスニング具100上の同心円状の仮想円30の径方向で隣接する第1係合素子13の間で第2ファスニング具200の第2係合素子23が結合する。
【0035】
同様に、第1及び第2ファスニング具100,200が結合する時、隣接する2つの仮想円に属する第2係合素子23の間で第1ファスニング具100の第1係合素子13が結合する。幾つかの場合、第2ファスニング具200上の同心円状の仮想円30の径方向で隣接する第2係合素子23の間で第1ファスニング具100の第1係合素子13が結合する。
【0036】
図5は、第1及び第2ファスニング具100,200が結合する時、第1ファスニング具100上の同心円状の仮想円IC1〜IC7と第2ファスニング具200上の同心円状の仮想円IC11〜IC17の配置関係を模式的に示す。第1ファスニング具100上の仮想円30と第2ファスニング具200上の仮想円30が互いに重ならない。第1ファスニング具100上の仮想円30と第2ファスニング具200上の仮想円30が同心円状に配される。図5の同心円の径方向において最も内側の仮想円30は、第1ファスニング具100上の仮想円IC1である。図5の同心円の径方向において最も外側の仮想円30は、第2ファスニング具200上の仮想円IC17である。
【0037】
図5及び図6は、第1ファスニング具100の仮想円IC1とIC2の径方向間隔IN1が、第1ファスニング具100の仮想円IC6とIC7の径方向間隔IN6よりも大きいことを示す。図5及び図6は、第2ファスニング具200の仮想円IC11とIC12の径方向間隔IN11が、第2ファスニング具200の仮想円IC16とIC17の径方向間隔IN6よりも大きいことを示す。第1及び第2ファスニング具100,200の双方について、同心円中心側に配置された隣接する仮想円30の径方向間隔は、同心円中心よりも離れて配置された隣接する仮想円30の径方向の間隔よりも大きい。言いかえれば、第1及び第2ファスニング具100,200の双方について、同心円状の仮想円30の径方向の最も内側で隣接する仮想円30の径方向間隔が、同心円状の仮想円30の径方向の最も外側で隣接する仮想円30の径方向間隔よりも大きい。幾つかの場合、第1及び第2ファスニング具100,200の一方又は双方について、同心円状の仮想円30の径方向において隣接する仮想円30の径方向間隔が、同心円状の仮想円30の径方向内側から外側に向けて減少する。
【0038】
図1に示すように、第1基材10上の同心円状の仮想円30の中心軸AXと第2基材20上の同心円状の仮想円30の中心軸AXが同軸上に位置付けられ、一方が他方側に押し付けられ、又は双方の基材が接近するようにお互いに押し付けられて第1ファスニング具100と第2ファスニング具200が結合する。各頭部15,25の上述の曲面が、第1及び第2ファスニング具100,200の結合の容易さを促進する。なお、図1に示すように、第1基材10上の第1係合素子13の同心円の最大径MD1は、第2基材20上の第2係合素子23の同心円の最大径MD2よりも2×D2分だけ小さい。なお、D2は、第1基材10上の第1係合素子13の同心円の最大径MD1と、第2基材20上の第2係合素子23の同心円の最大径MD2の差の1/2の値に等しい。第1基材10と第2基材20は、各々、同一の半径Ra1を有する正円の円盤材である。幾つかの場合、第1基材10の第2主面12や第2基材20の第2主面22には、第1又は第2部材との結合用の1以上の凸部や凹部が設けられる。別例においては、このような凸部や凹部が設けられず、接着剤が用いられる。
【0039】
図7及び図8から分かるように、第1及び第2ファスニング具100,200が結合する時、同心円状の仮想円30の径方向内側の領域では、第1係合素子13と第2係合素子23が弱く結合し、同心円状の仮想円30の径方向外側では第1係合素子13と第2係合素子23が強く結合する。
【0040】
図7に示すように、同心円状の仮想円の径方向内側の領域で径方向に隣接する2つの仮想円30に属する第1係合素子13の頭部15の間の環状通路に第2係合素子23の柱部24が配される。これらの第1係合素子13は、この環状通路沿いの柱部24の移動を許容するように配される。言い換えれば、径方向内側の領域においては、第1係合素子13はこの環状通路内であれば任意の場所に配置可能である。なお、第1及び第2ファスニング具100,200が結合した後、第2ファスニング具200に対する第1ファスニング具100の回転や第1ファスニング具100に対する第2ファスニング具200の回転は許容されない。
【0041】
図示はしないが、図7と同様に理解できるように、径方向で隣接する2つの仮想円30に属する第2係合素子23の頭部25の間の環状通路に第1係合素子13の柱部14が配される。これらの第2係合素子23は、この環状通路沿いの柱部14の移動を許容するように配される。言い換えれば、径方向内側の領域においては、第2の係合素子23はこの環状通路内であれば任意の場所に配置可能である。なお、第1及び第2ファスニング具100,200が結合した後、第2ファスニング具200に対する第1ファスニング具100の回転や第1ファスニング具100に対する第2ファスニング具200の回転は許容されない。
【0042】
図8に示すように、同心円状の仮想円の径方向外側で径方向に隣接する2つの仮想円30に属する第2係合素子23の頭部25により第1係合素子13の柱部14が保持される。より具体的には、径方向で隣接する仮想円30の内側の仮想円30の2つの頭部25と、径方向で隣接する仮想円30の外側の仮想円30の1つの頭部25により、第1係合素子13の柱部14が保持される。第1係合素子13の柱部14は、同心円状の仮想円30の周方向沿いに動くことができない。共通の第1係合素子13を保持するべく、隣接する仮想円30上に設けられた第2係合素子23が三角形状に配され、十分な結合が確保される。図8の場合、図7を参照して説明したように、径方向で隣接する2つの仮想円30に属する第2係合素子23の頭部25の間の環状通路が形成されない。図8の場合、三角形状に配された第2係合素子23の単位が、第1係合素子13の頭部15の受容用の受容部を規定する。図8の場合、この受容部が同心円状の仮想円の周方向沿いに配される。
【0043】
図7における「第1係合素子の頭部15と第2係合素子23の柱部24」の関係は「第2係合素子の頭部25と第1係合素子13の柱部14」と置き換えて説明できる。図8における「第2係合素子23の頭部25と第1係合素子13の柱部14」の関係は「第1係合素子13の頭部15と第2係合素子23の柱部24」に置き換えて説明することができる。
係合素子の周方向移動を許容するため、第1及び第2ファスニング具100,200は、図7における「第1係合素子の頭部15と第2係合素子23の柱部24」の関係と「第2係合素子の頭部25と第1係合素子13の柱部14」の関係の両方を満足する。
係合素子の周方向移動を阻止するため、第1及び第2ファスニング具100,200は、図8における「第2係合素子23の頭部25と第1係合素子13の柱部14」の関係と「第1係合素子13の頭部15と第2係合素子23の柱部24」の関係のいずれか一方を満足する。
【0044】
図示はしないが、図8と同様に理解できるように、径方向で隣接する2つの仮想円30に属する第1係合素子13の頭部15により第2係合素子23の柱部24が保持される。より具体的には、径方向で隣接する仮想円30の外側の仮想円30の2つの頭部15と、径方向で隣接する仮想円30の内側の仮想円30の1つの頭部15により、第2係合素子23の柱部24が保持される。第2係合素子23の柱部24は、同心円状の仮想円30の周方向沿いに動くことができない。
【0045】
本実施形態においては、第1ファスニング具100に関して、係合素子13が次の条件を満足するように配置される。すなわち、同心円状の仮想円30の径方向内側の領域において隣接する第1及び第2仮想円30に属する全ての係合素子13が、第1及び第2仮想円30に属する係合素子13と結合した状態の相手方のファスニング具200の係合素子23の仮想円30沿いの周方向移動を許容するように設けられる。また、同心円状の仮想円30の径方向外側の領域において隣接する第3及び第4仮想円30それぞれに属する少なくとも一対の係合素子13が、第3及び第4仮想円30に属する少なくとも一対の係合素子13と結合した状態の相手方のファスニング具200の係合素子23の仮想円30沿いの周方向移動を阻止するように設けられる。
【0046】
幾つかの場合、製造容易化等の観点から第1及び第2ファスニング具100,200において実質的に同一形状及び同一寸法の係合素子を採用する。この場合、同心円状の仮想円30の径方向内側の領域において隣接する第1及び第2仮想円30に属する全ての係合素子13が、第1及び第2仮想円30に属する係合素子13と結合した状態の相手方のファスニング具200の係合素子23の仮想円30沿いの周方向移動を許容するように、第1及び第2仮想円30の径方向間隔が設定される。同心円状の仮想円30の径方向外側の領域において隣接する第3及び第4仮想円30それぞれに属する少なくとも一対の係合素子13が、第3及び第4仮想円30に属するその少なくとも一対の係合素子13と結合した状態の相手方のファスニング具200の係合素子23の仮想円30沿いの周方向移動を阻止するように第3及び第4仮想円30の径方向間隔が設定される。この場合、第1及び第2仮想円の径方向間隔は、第3及び第4仮想円の径方向間隔よりも大きい。
【0047】
なお、第1及び第2仮想円は、仮想円IC1と仮想円IC2に限られない。第1及び第2仮想円は、仮想円IC2と仮想円IC3であり得、若しくはこれら以外の仮想円であり得る。第3及び第4仮想円は、仮想円IC6と仮想円IC7に限られない。第3及び第4仮想円は、仮想円IC5と仮想円IC6であり得、若しくはこれら以外の仮想円であり得る。
【0048】
同心円状の仮想円30の径方向内側の領域では、隣接する仮想円30に属するファスニング具100の係合素子13の間でファスニング具200の係合素子23が弱く結合する。換言すれば、ファスニング具100の係合素子13の係合面とファスニング具200の係合素子23の係合面とが接触する領域が少ない。同心円状の仮想円30の径方向内側の領域では、ファスニング具100の係合素子13は、ファスニング具200の係合素子23の係合解除方向への移動に有効に抵抗する。他方、同心円状の仮想円30の径方向内側の領域では、ファスニング具100の係合素子13は、ファスニング具200の係合素子23の周方向変位に有効に抵抗せず、その周方向変位を許容する。
【0049】
同心円状の仮想円30の径方向外側の領域では、隣接する仮想円30に属するファスニング具100の係合素子13の間でファスニング具200の係合素子23が強く結合する。径方向外側の領域において隣接する2列の係合素子に関して、ファスニング具100の係合素子13の係合面とファスニング具200の係合素子23の係合面が直に接触した領域の合計面積は、径方向内側の領域において隣接する2列の係合素子に関して、ファスニング具100の係合素子13の係合面とファスニング具200の係合素子23の係合面が直に接触した領域の合計面積よりも大きい。同心円状の仮想円30の径方向外側の領域でファスニング具100の係合素子13は、ファスニング具200の係合素子23の係合解除方向への移動に有効に抵抗する。同心円状の仮想円30の径方向外側の領域でファスニング具100の係合素子13は、ファスニング具200の係合素子23の周方向変位に有効に抵抗して阻止する。
【0050】
図3等の場合、仮想円IC1〜IC3上の第1係合素子13が、仮想円IC11〜IC13上の結合相手の第2係合素子23の周方向移動を許容するように設けられる。仮想円IC4〜IC7上の第1係合素子13が、仮想円IC14〜IC17上の結合相手の第2係合素子23の周方向移動を阻止するように設けられる。
【0051】
本実施形態においては、第2ファスニング具200に関して、係合素子23が次の条件を満足するように配置される。すなわち、同心円状の仮想円30の径方向内側の領域において隣接する第1及び第2仮想円30に属する全ての係合素子23が、第1及び第2仮想円30に属する係合素子23と結合した状態の相手方のファスニング具100の係合素子13の仮想円30沿いの周方向移動を許容するように設けられる。また、同心円状の仮想円30の径方向外側の領域において隣接する第3及び第4仮想円30それぞれに属する少なくとも一対の係合素子23が、第3及び第4仮想円30に属する少なくとも一対の係合素子23と結合した状態の相手方のファスニング具100の係合素子13の仮想円30沿いの周方向移動を阻止するように設けられる。
【0052】
幾つかの場合、製造容易化等の観点から第1及び第2ファスニング具100,200において実質的に同一形状及び同一寸法の係合素子を採用する。この場合、第2ファスニング具200の同心円状の仮想円30の径方向内側の領域において隣接する第1及び第2仮想円30に属する全ての係合素子23が、第1及び第2仮想円30に属する係合素子23と結合した状態の相手方のファスニング具100の係合素子13の仮想円30沿いの周方向移動を許容するように、第1及び第2仮想円30の径方向間隔が設定される。同心円状の仮想円30の径方向外側の領域において隣接する第3及び第4仮想円30それぞれに属する少なくとも一対の係合素子23が、第3及び第4仮想円30に属するその少なくとも一対の係合素子23と結合した状態の相手方のファスニング具100の係合素子13の仮想円30沿いの周方向移動を阻止するように第3及び第4仮想円30の径方向間隔が設定される。第1及び第2仮想円の径方向間隔は、第3及び第4仮想円の径方向間隔よりも大きい。
【0053】
なお、第1及び第2仮想円は、1番目の仮想円IC11と2番目の仮想円IC12に限られない。第1及び第2仮想円は、2番目の仮想円IC12と3番目の仮想円IC13であり得、若しくはこれら以外の仮想円であり得る。第3及び第4仮想円は、6番目の仮想円IC16と7番目の仮想円IC17に限られない。第3及び第4仮想円は、5番目の仮想円IC15と6番目の仮想円IC16であり得、若しくはこれら以外の仮想円であり得る。
【0054】
同心円状の仮想円30の径方向内側の領域では、隣接する仮想円30に属するファスニング具200の係合素子23の間でファスニング具100の係合素子13が弱く結合する。ファスニング具200の係合素子23によりファスニング具100の係合素子13の周方向変位が阻害されない。同心円状の仮想円30の径方向外側の領域では、隣接する仮想円30に属するファスニング具200の係合素子23の間でファスニング具100の係合素子13が強く結合する。ファスニング具200の係合素子23によりファスニング具100の係合素子13の周方向変位が阻止される。
【0055】
図4等の場合、仮想円IC11〜IC13上の第2係合素子23が、仮想円IC1〜IC3上の結合相手の第1係合素子13の周方向移動を許容するように設けられる。仮想円IC14〜IC17上の第2係合素子23が、仮想円IC4〜IC7上の結合相手の第1係合素子13の周方向移動を阻止するように設けられる。仮想円IC11とIC12の径方向間隔は、仮想円IC12とIC13の径方向間隔に等しい。仮想円IC11とIC12の径方向間隔及び仮想円IC12とIC13の径方向間隔それぞれは、仮想円IC4とIC5の径方向間隔、仮想円IC5とIC6の径方向間隔、及び仮想円IC6とIC7の径方向間隔それぞれよりも大きい。
【0056】
図9に示すように、第1及び第2ファスニング具100,200同士の結合は、第2ファスニング具200の径方向内側の隣接する仮想円30に属する3つの係合素子23と相手方の第1ファスニング具100の1つの係合素子13から構築される結合単位を含む。換言すれば、第1及び第2ファスニング具100,200同士の結合は、第1ファスニング具100の径方向内側の隣接する仮想円30に属する3つの係合素子13と相手方の第2ファスニング具200の1つの係合素子23から構築される結合単位を含む。なお、言うまでも無く、このような3:1の結合単位以外の、2:1の結合単位、1:1の結合単位を追加的又は代替的に含むことができる。
【0057】
図10に示すように、第1及び第2ファスニング具100,200同士の結合は、第2ファスニング具200の径方向外側の隣接する仮想円30に属する3つの係合素子23と相手方の第1ファスニング具100の1つの係合素子13から構築される結合単位を含む。換言すれば、第1及び第2ファスニング具100,200同士の結合は、第1ファスニング具100の径方向外側の隣接する仮想円30に属する3つの係合素子13と相手方の第2ファスニング具200の1つの係合素子23から構築される結合単位を含む。なお、言うまでも無く、このような3:1の結合単位以外の、2:1の結合単位、1:1の結合単位を追加的又は代替的に含むことができる。図9に関して述べた3つの係合素子よりも、図10に関して述べた3つの係合素子は、より高密度に配置される。
【0058】
図9に示すように、同心円の径方向内側領域では、径方向で隣接する2つの仮想円30に属する第2係合素子23の柱部24の間で第1係合素子13の頭部15が周方向に移動可能であり、端的には、そのように2つの仮想円30の径方向間隔が設定される。同様に、径方向で隣接する2つの仮想円30に属する第2係合素子23の頭部25の間で第1係合素子13の柱部14が周方向に移動可能であり、端的には、そのように2つの仮想円30の径方向間隔が設定される。
【0059】
図9は、第2係合素子23に対して弱く結合した第1係合素子13を示す。第1係合素子13の頭部15の直径D15は、径方向に隣接した第2係合素子23の柱部24の最小間隔SP1以下又は未満である。第1係合素子13の柱部14の直径D14は、径方向に隣接した第2係合素子23の頭部25の最小間隔SP2以下又は未満である。SP1>SP2を満足する。SP1<D15+(D15−D14)を満足し、幾つかの場合、SP1<D15+((D15−D14)/2)を満足する。
【0060】
図9において、第2係合素子23は、径方向で隣接した第2係合素子23の間を第1係合素子13が通過できるように配置されている。詳細には、第2係合素子23は、径方向で隣接した第2係合素子23の柱部24の間を第1係合素子13の頭部15が通過できるように配置されている。第2係合素子23は、径方向で隣接した第2係合素子23の頭部25の間を第1係合素子13の柱部14が通過できるように配置されている。なお、上述から繰り返し述べているように、第1及び第2ファスニング具100,200が結合した後、第2ファスニング具200に対する第1ファスニング具100の回転や第1ファスニング具100に対する第2ファスニング具200の回転は許容されない。
【0061】
図9(a)に示す状態の時、第1係合素子13の頭部15は、隣接する合計3つの第2係合素子23の柱部24に対して非接触である。また、第1係合素子13の柱部14は、隣接する合計3つの第2係合素子23の頭部25に対して非接触である。図9に関しては、隣接する合計3つの第2係合素子23は、第2ファスニング具200上で隣接する仮想円30の外側の仮想円30上の2つの第2係合素子23の柱部24と内側の仮想円30上の1つの第2係合素子23の柱部24を意味する。なお、第1及び第2ファスニング具100,200の結合の状態によっては、第1係合素子13の頭部15が第2係合素子23の柱部24に接触し、第1係合素子13の柱部14が第2係合素子23の頭部25に接触し得る。
【0062】
図9(b)に示すように、第1係合素子13は、直径D14の円柱状の柱部14と直径D15の半球状の頭部15を有する。第1係合素子13の頭部15は、第1係合素子13の柱部14よりも柱部14の径方向に関して外側に突出した突出部16を有する。突出部16は、第1係合素子13の柱部14の周方向の全域に亘り連続して設けられる。突出部16は、突出幅D16を有する。
【0063】
図9(b)に示すように、第2係合素子23は、直径D24の円柱状の柱部24と直径D25の半球状の頭部25を有する。第2係合素子23の頭部25は、第2係合素子23の柱部24よりも柱部24の径方向に関して外側に突出した突出部26を有する。突出部26は、第2係合素子23の柱部24の周方向の全域に亘り連続して設けられる。突出部26は、突出幅D26を有する。突出部16、突出部26を第1突出部16、第2突出部26と呼ぶ場合がある。図示例においては、第1係合素子13と第2係合素子23が同一形状を取る。従って、直径D14=直径D24、直径D15=直径D25である。図9(b)に示すように、第2係合素子23の頭部25の高さH25は、その柱部14の高さH24未満である。この点は、第1係合素子13についても同様である。
【0064】
図10に示すように、径方向で隣接する仮想円30に各々が属する2つの第2係合素子23の頭部25により第1係合素子13の柱部14の周方向移動が阻止される。図10に示すように、径方向で隣接する仮想円30に各々が属する合計3つの第2係合素子23の頭部25により第1係合素子13の柱部14が保持される。つまり、第2係合素子23と第1係合素子13は、3:1の関係で結合する。
【0065】
同様に、径方向で隣接する仮想円30に各々が属する2つの第2係合素子23の柱部24により第1係合素子13の頭部25の周方向移動が阻止される。径方向で隣接する仮想円30に各々が属する合計3つの第2係合素子23の柱部24により第1係合素子13の頭部25が保持される。
【0066】
図10(b)は、第2係合素子23に対して強く結合した第1係合素子13を示す。第1係合素子13の頭部15の直径D15は、径方向に隣接した第2係合素子23の柱部24の最小間隔SP1よりも大きい。第1係合素子13の柱部14の直径D14は、径方向に隣接した第2係合素子23の頭部25の最小間隔SP2よりも大きい。SP1>SP2を満足する。SP1>D14を満足する。
【0067】
第2係合素子23は、径方向で隣接した第2係合素子23の間を第1係合素子13が通過できないように配置されている。詳細には、第2係合素子23は、径方向で隣接した第2係合素子23の柱部24の間を第1係合素子13の頭部15が通過できないように配置されている。第2係合素子23は、径方向で隣接した第2係合素子23の頭部25の間を第1係合素子13の柱部14が通過できないように配置されている。図8及び図10に示す係合素子13、23の回転非許容配置のため、さもなければ図7及び図9に示した係合素子13、23の回転許容配置により許容される第1及び第2ファスニング具100,200の回転可能な結合が達成不能になる。図8及び図10に示す係合素子13、23の回転非許容配置は、上述した環状通路を個別の受容部に分断する。なお、図8及び図10に示す回転非許容配置の全ての係合素子13、23を除去し、図7及び図9に示す回転許容配置の係合素子13、23のみを残存させれば、第1及び第2ファスニング具100,200は回転可能に結合する。
【0068】
図10(a)に示す状態の時、第1係合素子13の頭部15は、隣接する合計3つの第2係合素子23の柱部24の1つ又は2つ又は全てに対して接触する。また、第1係合素子13の柱部14は、隣接する合計3つの第2係合素子23の頭部25の1つ又は2つ又は全てに対して接触する。図10に関しては、隣接する合計3つの第2係合素子23は、第2ファスニング具200上で隣接する仮想円30の外側の仮想円30上の2つの第2係合素子23の柱部24と内側の仮想円30上の1つの第2係合素子23の柱部24を意味する。なお、1つの第1係合素子13の周囲近傍に3つの第2係合素子23が存在しない例も想定される。同様に、1つの第2係合素子23の周囲近傍に3つの第1係合素子13が存在しない例も想定される。
【0069】
図9及び図10に示すように、第1係合素子13と第2係合素子23の結合は、第1突出部16と第2突出部26の係合又は嵌合により確保される。一つの第1係合素子13の第1突出部16とこの一つの第1係合素子13が結合する合計2つの第2係合素子23の第2突出部26の重複範囲の合計値、OR1+OR2,OR2+OR3,OR1+OR3は、図9に示す場合よりも図10に示す場合のほうが大きい。一つの第1係合素子13の第1突出部16とこの一つの第1係合素子13が結合する合計3つの第2係合素子23の第2突出部26の重複範囲の合計値、OR1+OR2+OR3は、図9に示す場合よりも図10に示す場合のほうが大きい。
【0070】
同心円状の仮想円30の径方向内側の領域において係合素子13、23を高密度に配置することにより、端的には、その径方向内側の領域において図7の態様ではなく図8に示す態様で係合素子13、23を配置することにより、より小面積で所望の結合力を確保できる。しかしながら、この場合、第1及び第2ファスニング具100,200を対面させて結合する時、同心円状の仮想円30の中心軸周りに相対的に大きく制限された角度範囲で両者を結合することが要求される。
【0071】
例えば、図10に示す第1係合素子13の頭部15は、3つの第2係合素子23の柱部24の中央に位置する限定された空間の受容部に進入することが要求される。同心円状の仮想円30の径方向内側領域に配置可能な係合素子13,23の個数は少ない。例えば、第2ファスニング具200の同心円状の仮想円30の最も内側に6つの受容部が配され、この6つの受容部に対して第1ファスニング具100の6つの第1係合素子13を進入させることを想定する。この場合、第2ファスニング具200に対する第1ファスニング具100の結合が360°/6=60°毎に制限される。幾つかの用途においては、第1及び第2ファスニング具100,200を小型化したり所望の結合力を維持しつつ、この制限を解放することが望まれる。
【0072】
この点に関して、上述したように、本実施形態においては、第1ファスニング具100に関して、係合素子13が次の条件を満足するように配置される。すなわち、同心円状の仮想円30の径方向内側の領域において隣接する第1及び第2仮想円30に属する全ての係合素子13が、第1及び第2仮想円30に属する係合素子13と結合した状態の相手方のファスニング具200の係合素子23の仮想円30沿いの周方向移動を許容するように設けられる。また、同心円状の仮想円30の径方向外側の領域において隣接する第3及び第4仮想円30それぞれに属する少なくとも一対の係合素子13が、第3及び第4仮想円30に属する少なくとも一対の係合素子13と結合した状態の相手方のファスニング具200の係合素子23の仮想円30沿いの周方向移動を阻止するように設けられる。また、第2ファスニング具200に関して、係合素子23が次の条件を満足するように配置される。すなわち、同心円状の仮想円30の径方向内側の領域において隣接する第1及び第2仮想円30に属する全ての係合素子23が、第1及び第2仮想円30に属する係合素子23と結合した状態の相手方のファスニング具100の係合素子13の仮想円30沿いの周方向移動を許容するように設けられる。また、同心円状の仮想円30の径方向外側の領域において隣接する第3及び第4仮想円30それぞれに属する少なくとも一対の係合素子23が、第3及び第4仮想円30に属する少なくとも一対の係合素子23と結合した状態の相手方のファスニング具100の係合素子13の仮想円30沿いの周方向移動を阻止するように設けられる。従って、必要な結合力を維持しつつも結合に関する各ファスニング具の相対的な配向の自由度を高めることができる。
【0073】
図11及び図12を参照して同心円状の仮想円30の径方向内側領域と径方向外側領域における係合素子13、23の配置態様について補足的に説明する。図11において、K1〜K3は、共通の第1係合素子13に結合するべく設けられた3つの第2係合素子23の中心軸間距離を示す。K1及びK2は、隣接する異なる仮想円30上の第2係合素子23の中心軸間距離を示す。K3は、同一の仮想円30上の第2係合素子23の中心軸間距離を示す。
【0074】
次の条件が満足される。
MAX(K1)=D15+D25
MIN(K1)=D15+D24
D15+D24<K1<D15+D25
ここで、MAX(K1)は、K1の最大値を示す。MIN(K1)は、K1の最小値を示す。D15、D25、D24は、図9及び図10を参照して説明したとおりである。
【0075】
次の条件が満足される。
MAX(K2)=D15+D25
MIN(K2)=D15+D24
D15+D24<K2<D15+D25
ここで、MAX(K2)は、K2の最大値を示す。MIN(K2)は、K2の最小値を示す。
次の条件も満足する。
D25<K3
【0076】
図12において、L1、L3は、共通の第1係合素子13に結合するべく設けられた3つの第2係合素子23の中心軸間距離を示す。L1は、隣接する異なる仮想円30上の第2係合素子23の中心軸間距離を示す。L3は、同一の仮想円30上の第2係合素子23の中心軸間距離を示す。L2は、第1係合素子13と第2係合素子23の中心軸間距離を示す。θ1は、L1とL2の為す角を示す。
次の条件が満足される。
MAX(L2)=(D25/2)+(D15/2)
MIN(L2)=(D24/2)+(D15/2)
(D24/2)+(D15/2)<L2<(D25/2)+(D15/2)
ここで、MAX(L2)は、L2の最大値を示す。MIN(L2)は、L2の最小値を示す。
【0077】
1=2×L2cosθ1
従って、次の条件が満足される。
2((D24/2)+(D15/2))cosθ1<L1<2(D25/2)+(D15/2))cosθ1
【0078】
次の条件が満足される。
D25<L3<D25+D15
【0079】
図13に示す別例の第1ファスニング具100は、図3に示した第1ファスニング具100と比べて第1係合素子13が全体的に粗に配置される。このような例においても上述の1以上の実施例又は構造又は特徴と同一又は類似の効果が得られる。図1乃至4の図示例と比較して、第1及び第2ファスニング具100,200の結合強度が弱まり、両者の分離が簡単になる。図13の場合、仮想円IC1〜IC3上の第1係合素子13が、結合相手の第2係合素子23の周方向移動を許容するように設けられる。仮想円IC4〜IC5上の第1係合素子13が、結合相手の第2係合素子23の周方向移動を阻止するように設けられる。図13に示した第1ファスニング具100と結合する相手方の第2ファスニング具200における第2係合素子23の配置態様については図示を省略する。結合相手の第2ファスニング具200は、図13のように径方向内側の領域の第2係合素子23が全体的に粗に配置され、径方向外側の領域の第2係合素子23が密に配置された構成を取り得る。結合相手の第2ファスニング具200は、図4のように径方向内側の領域及び径方向外側の領域の第2係合素子23がともに密に配置された構成を取り得る。このような構造とすることで、上述の1以上の実施例又は構造又は特徴と同一又は類似の効果が得られる。
【0080】
図14に示す別例の第1ファスニング具100は、図3に示した第1ファスニング具100と比べて第1係合素子13が全体的に粗に配置されるものの、仮想円IC3上の第1係合素子13が密に配置されたままである。このような例においても上述の1以上の実施例又は構造又は特徴と同一又は類似の効果が得られる。図1乃至4の図示例と比較して、第1及び第2ファスニング具100,200の結合強度が弱まり、両者の分離が簡単になる。図14の例では、仮想円IC1〜IC3上の第1係合素子13が、結合相手の第2係合素子23の周方向移動を許容するように設けられる。仮想円IC4〜IC5の第1係合素子13が、結合相手の第2係合素子23の周方向移動を阻止するように設けられる。図14に示した第1ファスニング具100と結合する相手方の第2ファスニング具200における第2係合素子23の配置態様については図示を省略する。結合相手の第2ファスニング具200は、図14と同様の第2係合素子23の配列構成を取り得る。結合相手の第2ファスニング具200は、図4のように径方向内側の領域及び径方向外側の領域の両方で第2係合素子23が密に配置された構成を取り得る。このような構造とすることで、上述の1以上の実施例又は構造又は特徴と同一又は類似の効果が得られる。
【0081】
図15に示す別例の第1ファスニング具100は、図3に示した第1ファスニング具100と比べて第1係合素子13が局所的に除去されている。具体的には、同心円状の仮想円30の中心軸線AXに直交するある軸線VX沿いの第1係合素子13が全て除去されている。除去の範囲は仮想円の円周において、半分以下であることが好ましい。半分以下とすることで十分な係合強度を確保する。このような例においても上述の1以上の実施例又は構造又は特徴と同一又は類似の効果が得られる。図15の例では、仮想円IC1〜IC2上の第1係合素子13が、結合相手の第2係合素子23の周方向移動を許容するように設けられる。仮想円IC3〜IC5の第1係合素子13が、結合相手の第2係合素子23の周方向移動を阻止するように設けられる。除去された領域には、例えば、配電用コードなどを挿通させても良い。図15に示した第1ファスニング具100と結合する相手方の第2ファスニング具200における第2係合素子23の配置態様については図示を省略する。結合相手の第2ファスニング具200は、図15と同様の第2係合素子23の配列構成を取り得る。結合相手の第2ファスニング具200は、図4のように径方向内側の領域及び径方向外側の領域の両方で第2係合素子23が密に配置された構成を取り得る。このような構造とすることで、上述の1以上の実施例又は構造又は特徴と同一又は類似の効果が得られる。
【0082】
なお、図15に示す例では、各仮想円30上の第1係合素子13は、軸線VXの一方側の弧状部と、軸線VXの他方側の弧状部に分割されている。各弧状部は、仮想円30沿いに同一の長さを延びるが、必ずしもこの限りではない。
【0083】
上述の例においては、同心円状の仮想円30の径方向外側において3つの第2係合素子23により一つの第1係合素子13が保持され、3つの第1係合素子13により一つの第2係合素子23が保持される。しかしながら、図16の別例においては、必ずしもこの限りではない。すなわち、仮想円30A上にはただ一つの第2係合素子23が設けられ、仮想円30Cにはただ一つの第2係合素子23が設けられる。仮想円30B上にはただ一つの第1係合素子13が設けられる。隣接する仮想円30A,30Cに属する合計2つの第2係合素子23は、第1係合素子13の周方向移動を阻止するように設けられる。このような例においても上述の1以上の構造又は特徴と同一又は類似の効果が得られる。
【0084】
図16に示す時、仮想円30Aに属する係合素子23と仮想円30Cに属する係合素子23と、この仮想円30A,30Cに属する係合素子23と結合した状態の相手方のファスニング具100の係合素子13は、1:1:1の関係で結合する。
【0085】
第1及び第2ファスニング具100,200を結合する過程で第1係合素子13と第2係合素子23が撓み又は変形し又は傾く。第1及び第2ファスニング具100,200の結合のためには、第1係合素子13の頭部15は、結合対象の1以上の第2係合素子23の頭部25を乗り越え、第2基材20の第1主面21側に到達することが要求される。同様に、第2係合素子23の頭部25は、結合対象の1以上の第1係合素子13の頭部15を乗り越え、第1基材10の第1主面11側に到達することが要求される。各係合素子は、ある程度の硬さを有する。従って、第1及び第2ファスニング具100,200の結合時、パチといった結合音が発生する。
【0086】
第1及び第2ファスニング具100,200を誤った態様で結合すると、1以上の第1係合素子13や1以上の第2係合素子23が塑性変形し、例えば、過度に傾き、元形状に復帰不能になる。これは、第1及び第2ファスニング具100,200の結合力が減じられることに帰結する。第1及び第2ファスニング具100,200の繰り返しの脱着を回避することが有利である。第1基材10と第2基材20が同一形状であることは、第1及び第2ファスニング具100,200の適切な結合を確保する上で有益である。第1係合素子13が同心円状に配され、第2係合素子23が同心円状に配されることは、第1及び第2ファスニング具100,200の適切な結合を確保する上で有益である。同心円状の径方向外側領域において弱く第1及び第2係合素子が結合することは、第1及び第2ファスニング具100,200の適切な結合を確保する上で有益である。
【0087】
一例としては、係合素子の柱部は、例えば、0.6mm程の直径、及び1mm前後の高さを有する。頭部は、1.0mm程の直径を有する。幾つかの場合、このような微細な係合素子が用いられる。
【0088】
上述の教示を踏まえ、当業者は、各実施形態に対して様々な変更を加えることができるはずである。請求の範囲に盛り込まれた符号は、参考のためであり、請求の範囲を限定解釈する目的で参照されるべきものではない。ファスニング具の製造方法は、出願時の技術水準に照らして当業者により適切に決定される。例えば、同心円状の複数の柱部が基部上に設けられたプリフォームを射出成形する。その後、各柱部の先端部を局所的に溶融し、頭部を形成する。これ以外の製造方法も想定される。仮想円は、必ずしも正円に限られるべきではない。全ての係合素子が同一の高さを有する必要はない。係合素子は、同心円状の仮想円の仮想円毎に異なる高さを有し得る。
【符号の説明】
【0089】
10 第1基材(基材)
20 第2基材(基材)
13 第1係合素子(係合素子)
23 第2係合素子(係合素子)
14 第1柱部(柱部)
24 第2柱部(柱部)
15 第1頭部(頭部)
25 第2頭部(頭部)
30 仮想円
100 第1ファスニング具(ファスニング具)
200 第2ファスニング具(ファスニング具)
300 ファスニング具の組
図1
図2
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