(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6612985
(24)【登録日】2019年11月8日
(45)【発行日】2019年11月27日
(54)【発明の名称】試料保持具
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20191118BHJP
H02N 13/00 20060101ALI20191118BHJP
【FI】
H01L21/68 R
H02N13/00 D
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2018-529465(P2018-529465)
(86)(22)【出願日】2017年6月30日
(86)【国際出願番号】JP2017024133
(87)【国際公開番号】WO2018020956
(87)【国際公開日】20180201
【審査請求日】2018年12月11日
(31)【優先権主張番号】特願2016-145188(P2016-145188)
(32)【優先日】2016年7月25日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】赤羽 賢一
【審査官】
宮久保 博幸
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−216774(JP,A)
【文献】
特開2002−329775(JP,A)
【文献】
特開2002−261157(JP,A)
【文献】
特開2006−156938(JP,A)
【文献】
特開2002−237375(JP,A)
【文献】
特開2010−123843(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
H02N 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面が試料を保持する試料保持面となる円板状のセラミック体と、該セラミック体の内部に設けられた吸着電極とを備え、
前記セラミック体の上面には、外周に沿って突出して設けられた環状の第1の周壁部と該第1の周壁部の内側に設けられた複数の凸部とを有し、前記第1の周壁部の上面と側面との間の角部がR面になっており、
前記セラミック体を平面視による中心を通るように切断した切断面で見たときに、前記第1の周壁部における内側に位置するR面の曲率半径よりも外側に位置するR面の曲率半径のほうが小さく、
前記セラミック体の上面には、前記第1の周壁部よりも内側に離して設けられた環状の第2の周壁部を有し、該第2の周壁部の上面と側面との間の角部がR面になっており、前記第1の周壁部の外側に位置するR面の曲率半径よりも前記第2の周壁部のR面の曲率半径のほうが大きい試料保持具。
【請求項2】
上面が試料を保持する試料保持面となる円板状のセラミック体と、該セラミック体の内部に設けられた吸着電極とを備え、
前記セラミック体の上面には、外周に沿って突出して設けられた環状の第1の周壁部と該第1の周壁部の内側に設けられた複数の凸部とを有し、前記第1の周壁部の上面と側面との間の角部がR面になっており、
前記セラミック体を平面視による中心を通るように切断した切断面で見たときに、前記第1の周壁部における内側に位置するR面の曲率半径よりも外側に位置するR面の曲率半径のほうが小さく、
前記複数の凸部の上面と側面との間の角部がR面になっており、前記第1の周壁部の外側に位置するR面の曲率半径よりも前記複数の凸部のR面の曲率半径のほうが大きい試料保持具。
【請求項3】
前記セラミック体の上面には、前記第1の周壁部よりも内側に離して設けられた環状の第2の周壁部を有し、該第2の周壁部の上面と側面との間の角部がR面になっており、前記第1の周壁部の外側に位置するR面の曲率半径よりも前記第2の周壁部のR面の曲率半径のほうが大きい請求項2に記載の試料保持具。
【請求項4】
前記複数の凸部の高さが前記第1の周壁部の高さよりも低くなっている請求項1乃至請求項3のうちのいずれかに記載の試料保持具。
【請求項5】
前記第1の周壁部の上面の表面粗さよりも前記複数の凸部の上面の表面粗さのほうが大きい請求項1乃至請求項4のうちのいずれかに記載の試料保持具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体集積回路の製造工程等で半導体ウエハ等の試料を保持するために用いられる試料保持具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体製造装置等に用いられる試料保持具として、例えば、特開2010−123843号公報(以下、特許文献1ともいう)に記載の試料保持具が知られている。特許文献1に記載の試料保持具は、上面に試料保持面を有するセラミック体と、セラミック体の内部に設けられた吸着電極とを備えている。セラミック体の上面には複数の凸部および凸部を囲むように設けられた周壁部が設けられている。試料保持具は、複数の凸部の上面において試料を保持する。周壁部は、上面が試料に接触するとともに、複数の凸部を取り囲むようにリング状に設けられている。これにより、周壁部と試料とによって周壁部の内側の空間を封止している。周壁部の内側であって、複数の凸部の間にはヘリウムガス等の冷却用のガスが供給される。これにより、試料に熱が生じたときに、試料を冷却することができる。試料に熱が生じる例としては、例えば、プラズマが試料に照射される場合が挙げられる。また、試料保持具は、一般的に真空環境下で用いられることから、周壁部の外側は真空状態になっている。
【発明の概要】
【0003】
本開示の試料保持具は、上面が試料を保持する試料保持面となる円板状のセラミック体と、該セラミック体に設けられた吸着電極とを備え、前記セラミック体の上面には、外周に沿って突出して設けられた環状の第1の周壁部と該第1の周壁部の内側に設けられた複数の凸部とを有し、前記第1の周壁部の上面と側面との間の角部がR面になっており、前記セラミック体を平面視による中心を通るように切断した切断面で見たときに、前記第1の周壁部における内側に位置するR面の曲率半径よりも外側に位置するR面の曲率半径のほうが小さ
く、前記セラミック体の上面には、前記第1の周壁部よりも内側に離して設けられた環状の第2の周壁部を有し、該第2の周壁部の上面と側面との間の角部がR面になっており、前記第1の周壁部の外側に位置するR面の曲率半径よりも前記第2の周壁部のR面の曲率半径のほうが大きい。
【図面の簡単な説明】
【0004】
【
図2】
図1に示した試料保持具をA−A線で切った断面図である。
【
図3】
図2に示した試料保持具のうち領域Bを拡大した部分断面図である。
【
図6】
図5に示した試料保持具をC−C線で切った断面図である。
【
図7】
図6に示した試料保持具のうち領域Dを拡大した部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0005】
以下、試料保持具10について、図面を参照して説明する。
【0006】
図1、2に示すように、試料保持具10は、セラミック体1と、吸着電極2と、ベースプレート3とを備えている。
【0007】
セラミック体1は、上面が試料を保持する試料保持面4となる円板状の部材である。セラミック体1は、試料保持面4において、例えば、シリコンウエハ等の試料を保持する。セラミック体1は、例えばアルミナ、窒化アルミニウム、窒化ケイ素またはイットリア等のセラミック材料を有している。セラミック体1の寸法は、例えば、径を200〜500mm、厚みを2〜15mmに設定できる。
【0008】
セラミック体1を用いて試料を保持する方法としては様々な方法を用いることができるが、本例の試料保持具10は静電気力によって試料を保持する。そのため、試料保持具10はセラミック体1の内部に吸着電極2を備えている。吸着電極2は、2つの電極から構成される。2つの電極は、一方が電源の正極に接続され、他方が負極に接続される。2つの電極は、それぞれ略半円板状に形成され、半円の弦同士が対向するように、セラミック体1の内部に配置される。それら2つの電極が合わさって、吸着電極2全体の外形が円形状となっている。この吸着電極2全体による円形状の外形の中心は、同じく円形状のセラミック体1の外形の中心と同一に設定される。吸着電極2は、例えば白金、タングステンまたはモリブデン等の金属材料を有している。
【0009】
ベースプレート3は、セラミック体1の土台となる部材である。ベースプレート3は、例えば、円板状の部材である。ベースプレート3は、例えば、金属材料を有している。金属材料としては、例えば、アルミニウムを用いることができる。ベースプレート3とセラミック体1とは、例えば、接着層5を介して接合される。接着層5としては、例えば、シリコーン接着剤を用いることができる。
【0010】
セラミック体1の上面には、第1の周壁部6と、第1の周壁部6の内側に位置する凸部7とが設けられている。また、セラミック体1には、複数のガス孔8が設けられており、このガス孔8を通じて冷却ガスがセラミック体1の上面に導入される。ガス孔8は、セラミック体1を貫通するとともに、セラミック体1の下側に位置する接着層5およびベースプレート3も貫通している。
【0011】
第1の周壁部6は、セラミック体1の上面において外周に沿って突出して設けられている。第1の周壁部6は、試料とともに、第1の周壁部6の内側を封止することができる。第1の周壁部6は、上面視したときの形状が環状である。具体的には、内周の形状が円形状であって、外周の形状が円形状である。第1の周壁部6は、断面視したときの形状が、四角形状であって、上面と側面との間の角部がR面になっている。より具体的には、上面と内周面との間の角部および上面と外周面との間の角部がR面になっている。これにより、第1の周壁部6の上面に接触するように試料を保持したときに、第1の周壁部6の角部と試料とが接触して第1の周壁部6の角部に欠け等が生じるおそれを低減できる。
【0012】
複数の凸部7は、第1の周壁部6の内側に設けられている。複数の凸部7は、試料を保持するために設けられている。複数の凸部7は、上面に対して垂直な方向に突出している。複数の凸部7は、第1の周壁部6の内側の全体にわたって分散して設けられている。複数の凸部7は、例えば、円柱状の部材である。複数の凸部7は、断面視したときの形状が、四角形状であって上面と側面との間の角部がR面である。複数の凸部7の寸法は、例えば、直径を0.5〜1.5mmに、高さを5〜15μmに設定できる。
【0013】
複数の凸部7および第1の周壁部6は、例えば、以下の方法で形成することができる。具体的には、セラミック体1の上面に対してブラストマスクを貼付または形成した後にブラスト加工を施す。これにより、複数の凸部7および第1の周壁部6となる凸状部を上面に形成することができる。そして、これらの凸状部に対してラップ機またはブラシ研磨機による加工を行なうことによって、角部をR面に加工する。以上のようにして、複数の凸部7および第1の周壁部6を形成できる。
【0014】
図3に示すように、試料保持具10においては、切断面を見たときに、第1のシール部における内側に位置するR面の曲率半径R2よりも外側に位置するR面の曲率半径R1のほうが小さい。言い換えると、上面と内周面との間の角部における曲率半径よりも、上面と外周面との間の角部における曲率半径のほうが小さい。この切断面は、セラミック体1を平面視したときのセラミック体1の中心を通るように切断した面である。これにより、試料の均熱性を向上させることができる。具体的には、内側に位置するR面の曲率半径を大きくすることによって、第1の周壁部6と試料との間の一部に冷却ガスを位置させることができる。また、外側に位置するR面の曲率半径を小さくすることによって、第1の周壁部6と試料との間に生じてしまう空間(真空になる部分)を小さくすることができる。
【0015】
第1の周壁部6の寸法は、例えば、内周の直径を240〜260mmに、外周の直径を290〜310mmに、厚みを6〜15μmに設定できる。第1の周壁部6の上面と内周面との間の角部における曲率半径は、例えば、3〜15μmに、上面と外周面との間の角部における曲率半径は、例えば、2〜5μmに設定できる。
【0016】
また、
図4に示すように、複数の凸部7の高さが第1の周壁部6の高さよりも低くなっていてもよい。これにより、吸着電極2による吸着によって試料の中心が下方向に撓んだときに、試料を第1の周壁部6および複数の凸部7の複数点で支持することができる。これにより、試料保持具10および試料の特定の部位に力が集中してしまうことによって、セラミック体1または試料の表面の粒子の脱粒を低減することができる。なお、ここでいう「凸部7の高さ」とは、セラミック体1の上面のうち第1の周壁部6の内側に位置する領域であって複数の凸部7および第1の周壁部6が設けられていない領域から凸部7の頂部までの長さを示している。なお、ここでいう「長さ」とは、セラミック体1の上面に対して垂直な方向の長さを示している。このとき、複数の凸部7の高さは、例えば、第1の周壁部6の高さよりも2〜5μm程度低くすることができる。
【0017】
なお、複数の凸部7の高さと第1の周壁部6の高さとを測定することが困難な場合には、例えば、以下の方法で複数の凸部7の高さが第1の周壁部6の高さよりも低くなっていることを確認できる。具体的には、
図4に示すように、第1の周壁部6の上面を含む仮想平面Pよりも第1の周壁部6の上面が下側に位置していればよい。
【0018】
また、
図5、6に示すようにセラミック体1の上面には、第1の周壁部6よりも内側に離して設けられた環状の第2の周壁部9を有していてもよい。第2の周壁部9を設けることによって、第2の周壁部9の内側と外側とを区分けすることができるので、第2の周壁部9の内側と外側とで冷却ガスの流量を変えることができる。そのため、より精度の高い温度管理を行なうことができるので、試料の均熱性を向上できる。
【0019】
そして、
図7に示すように、断面視したときに、第2の周壁部9の上面と側面との間の角部がR面になっており、第1の周壁部6の外側に位置するR面の曲率半径R1よりも第2の周壁部9のR面の曲率半径R3のほうが大きくてもよい。これにより、冷却ガスが第2のシール部と試料との間にまで供給されることになるため、均熱性をさらに向上できる。第2の周壁部9のR面の曲率半径は、例えば、5〜10μmに設定できる。なお、
図7においては、第2の周壁部9は外周側と内周側とに2つのR面を有している。第2の周壁部9のR面の曲率半径R3を求めるときは、第2の周壁部9における外周側と内周側の2つのR面のうちどちらのR面を測定してもよい。
【0020】
また、断面視したときに、複数の凸部7の上面と側面との間の角部がR面になっており、第1の周壁部6の外側に位置するR面の曲率半径R1よりも複数の凸部7のR面の曲率半径R4のほうが大きくてもよい。これにより、凸部7の上面と試料との間に冷却ガスが供給されることになるため、均熱性をさらに向上できる。なお、
図7においては、凸部7は外周側と内周側とに2つのR面を有している。凸部7のR面の曲率半径R4を求めるときは、凸部7における外周側と内周側の2つのR面のうちどちらのR面を測定してもよい。
また、第1の周壁部6の上面の表面粗さよりも複数の凸部7の上面の表面粗さのほうが大きくてもよい。これにより、第1の周壁部6において封止を行ないつつも、試料を吸着した後の複数の凸部7からの試料の離脱を容易に行なうことができる。凸部7の上面の表面粗さは、例えば、Ra0.15〜0.25μmに設定できる。第1の周壁部6の上面の表面粗さは、例えば、Ra0.05〜0.15μmに設定できる。
【符号の説明】
【0021】
1:セラミック体
2:吸着電極
3:ベースプレート
4:試料保持面
5:接着層
6:第1の周壁部
7:凸部
8:ガス孔
9:第2の周壁部
10:試料保持具