【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、フェノキシ樹脂と、有機化層状珪酸塩とを含有
し、上記有機化層状珪酸塩の動的光散乱式粒子径測定装置で測定された平均一次粒子径が10nm以上200nm以下であるトップエミッション型有機エレクトロルミネッセンス表示素子封止用樹脂組成物である。
以下に本発明を詳述する。
【0008】
有機EL表示素子封止用樹脂組成物のバリア性(透湿防止性)を向上させる方法として、樹脂にタルクやシリカ等の無機充填剤を分散させる方法が知られているが、樹脂にこのような無機充填剤を分散した組成物は一般的に透明性に劣るものとなる。また、透明性を改善するために無機充填剤の粒子径を可視光線の波長よりも小さくすることによりことも試みられているが、透明性を得られる程度に無機充填剤が分散されたとしても、バリア性が不充分となるという問題があった。
そこで本発明者らは鋭意検討した結果、熱可塑性樹脂であるフェノキシ樹脂と有機化層状珪酸塩とを組み合わせて用いることにより、高い透明性を保持しながら、優れたバリア性を発現できる有機EL表示素子封止用樹脂組成物を得ることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
本発明の有機EL表示素子封止用樹脂組成物は、フェノキシ樹脂を含有する。
熱可塑性樹脂である上記フェノキシ樹脂を有機化層状珪酸塩と組み合わせて含有することにより、本発明の有機EL表示素子封止用樹脂組成物は、バリア性に優れるものとなる。また、上記フェノキシ樹脂は、本発明の有機EL表示素子封止用樹脂組成物の耐屈曲性を向上させる効果も有する。
【0010】
上記フェノキシ樹脂のエポキシ基当量の好ましい上限は5万g/molである。上記フェノキシ樹脂のエポキシ基当量が5万g/molを超えると、得られる有機EL表示素子封止用樹脂組成物が接着性やバリア性に劣るものとなることがある。上記フェノキシ樹脂のエポキシ基当量のより好ましい上限は45000g/molである。
また、上記フェノキシ樹脂のエポキシ基当量の好ましい下限は2000g/molである。上記フェノキシ樹脂のエポキシ基当量が2000g/mol未満であると、得られる有機EL表示素子封止用樹脂組成物が、加熱や変形によってクラックを発生させることがある。上記フェノキシ樹脂のエポキシ基当量のより好ましい下限は3000g/molである。
なお、上記フェノキシ樹脂のエポキシ基当量は、フェノキシ樹脂の重量(g)をフェノキシ樹脂中に含まれるエポキシ基のモル数(mol)で除して求められる値である。
【0011】
上記フェノキシ樹脂の重量平均分子量の好ましい下限は1万、好ましい上限は10万である。上記フェノキシ樹脂の重量平均分子量が1万未満であると、得られる有機EL表示素子封止用樹脂組成物が、充分なバリア性を発揮できないことがある。上記フェノキシ樹脂の重量平均分子量が10万を超えると、得られる有機EL表示素子封止用樹脂組成物が塗布性に劣るものとなることがある。上記フェノキシ樹脂の重量平均分子量のより好ましい下限は2万、より好ましい上限は9万である。
なお、本明細書において、上記「重量平均分子量」は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定を行い、ポリスチレン換算により求められる値である。GPCによってポリスチレン換算による重量平均分子量を測定する際に用いるカラムとしては、例えば、Shodex LF−804(昭和電工社製)等が挙げられる。
【0012】
上記フェノキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール骨格を有するフェノキシ樹脂や、ナフタレン骨格を有するフェノキシ樹脂や、アントラセン骨格を有するフェノキシ樹脂や、ビフェニル骨格を有するフェノキシ樹脂等が挙げられる。なかでも、ビスフェノール骨格を有するフェノキシ樹脂が好ましい。
上記フェノキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、YP−50、YP−50S、YP−70、ZX−1356−2、FX−316(いずれも新日鉄住金化学社製)、jER1256、jER4250、jER4275(いずれも三菱化学社製)、PKHB、PKHC、PKHH、PKHJ(いずれもInChem社製)等が挙げられる。
【0013】
本発明の有機EL表示素子封止用樹脂組成物全体100重量部中における上記フェノキシ樹脂の含有量の好ましい下限は20重量部、好ましい上限は85重量部である。上記フェノキシ樹脂の含有量が20重量部未満であると、得られる有機EL表示素子封止用樹脂組成物を用いて樹脂シートを形成する際、シートの強度が乏しく、作業性が低下することがある。上記フェノキシ樹脂の含有量が85重量部を超えると、相対的に有機化層状珪酸塩の含有量が少なくなりバリア性が低下してしまうことがある。上記フェノキシ樹脂の含有量のより好ましい下限は25重量部、より好ましい上限は80重量部である。
【0014】
本発明の有機EL表示素子封止用樹脂組成物は、本発明の目的を阻害しない範囲において、上記フェノキシ樹脂に加えて、その他の熱可塑性樹脂を含有してもよい。
【0015】
上記その他の熱可塑性樹脂としては、例えば、塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂等が挙げられる。
【0016】
本発明の有機EL表示素子封止用樹脂組成物は、有機化層状珪酸塩を含有する。
上記有機化層状珪酸塩を含有することにより、本発明の有機EL表示素子封止用樹脂組成物が特にバリア性に優れるものとなる。
【0017】
上記有機化層状珪酸塩は、層状珪酸塩の結晶層間に存在する交換性陽イオンを有機カチオンに置換したものであり、層状珪酸塩を有機オニウム塩で処理(イオン交換)したものであることが好ましい。
具体的には、上記有機化層状珪酸塩は、イオン交換容量50〜130ミリ当量/100gの層状珪酸塩の交換性陽イオンの50〜90ミリ当量/100gが有機オニウムイオンにより置換された層状珪酸塩であることが好ましい。
【0018】
上記層状珪酸塩としては、例えば、モンモリロナイト、ヘクトライト、サポナイト、バイデライト、スティブンサイト、ノントロナイト等のスメクタイト系粘土鉱物や、膨潤性マイカや、バーミキュライトや、ハロイサイト等が挙げられる。なかでも、膨潤性に優れることから、モンモリロナイト、ヘクトライト、サポナイト、膨潤性マイカ、及び、バーミキュライトからなる群より選択される少なくとも1種が好適に用いられる。これらの層状珪酸塩は、単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0019】
上記層状珪酸塩のイオン交換容量の好ましい下限は50ミリ当量/100g、好ましい上限は130ミリ当量/100gである。上記層状珪酸塩のイオン交換容量が50ミリ当量/100g未満であると、カチオン交換により層状珪酸塩の結晶層間にインターカレートされるカチオン性物質の量が少なくなるために、結晶層間が充分に有機化されないことがある。上記層状珪酸塩のイオン交換容量が130ミリ当量/100gを超えると、層状珪酸塩の結晶層間の結合力が強固になりすぎて、結晶薄片が剥離し難くなることがある。上記層状珪酸塩のイオン交換容量のより好ましい下限は80ミリ当量/100g、より好ましい上限は120ミリ当量/100g、更に好ましい下限は100ミリ当量/100g、更に好ましい上限は105ミリ当量/100gである。
なお、上記層状珪酸塩のイオン交換容量は、メチレンブルーの吸着量により測定することができる。上記メチレンブルーの吸着量は、イオン交換する前の状態の層状珪酸塩を秤量し、1重量%分散液を作製した後、メチレンブルーで滴定を行い、滴定に要するメチレンブルー量と、使用した層状珪酸塩の量から算出することができる。
【0020】
上記有機オニウム塩としては、例えば、4級アンモニウム塩、4級ホスホニウム塩、イミダゾリウム塩等が挙げられる。なかでも、着色を可能な限り抑制する観点から、4級アンモニウム塩が好ましい。上記有機オニウム塩は、単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0021】
上記4級アンモニウム塩としては、例えば、ラウリルトリメチルアンモニウム塩、ステアリルトリメチルアンモニウム塩等のトリメチルアルキルアンモニウム塩や、トリエチルアルキルアンモニウム塩や、トリブチルアルキルアンモニウム塩や、トリオクチルメチルアンモニウム塩等のトリオクチルアルキルアンモニウム塩や、ジステアリルジメチルアンモニウム塩、ジ硬化牛脂ジメチルアンモニウム塩等のジメチルジアルキルアンモニウム塩や、ジブチルジアルキルアンモニウム塩や、トリアルキルメチルアンモニウム塩や、トリアルキルエチルアンモニウム塩や、トリアルキルブチルアンモニウム塩や、メチルベンジルジアルキルアンモニウム塩、ジステアリルジベンジルアンモニウム塩等のジベンジルジアルキルアンモニウム塩、トリメチルフェニルアンモニウム塩等の芳香環を有する4級アンモニウム塩や、ポリエチレングリコール鎖を2つ有するジアルキル4級アンモニウム塩や、ポリプロピレングリコール鎖を2つ有するジアルキル4級アンモニウム塩や、N−ポリオキシエチレン−N−ラウリル−N,N−ジメチルアンモニウム塩等のポリエチレングリコール鎖を1つ有するトリアルキル4級アンモニウム塩や、ポリプロピレングリコール鎖を1つ有するトリアルキル4級アンモニウム塩等が挙げられる。なかでも、層状珪酸塩の分散性向上の観点から、ラウリルトリメチルアンモニウム塩、ステアリルトリメチルアンモニウム塩、トリオクチルメチルアンモニウム塩、ジステアリルジメチルアンモニウム塩、ジ硬化牛脂ジメチルアンモニウム塩、ジステアリルジベンジルアンモニウム塩、N−ポリオキシエチレン−N−ラウリル−N,N−ジメチルアンモニウム塩がより好ましい。これらの4級アンモニウム塩は、単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0022】
上記4級ホスホニウム塩としては、例えば、ドデシルトリフェニルホスホニウム塩、メチルトリフェニルホスホニウム塩、ラウリルトリメチルホスホニウム塩、ステアリルトリメチルホスホニウム塩、トリオクチルホスホニウム塩、ジステアリルジメチルホスホニウム塩、ジステアリルジベンジルホスホニウム塩等が挙げられる。
【0023】
上記イミダゾリウム塩としては、例えば、ジメチルブチルイミダゾリウム塩、ジメチルオクチルイミダゾリウム塩、ジメチルデシルイミダゾリウム塩、ジメチルドデシルイミダゾリウム塩、ジメチルヘキサデシルイミダゾリウム塩等が挙げられる。
【0024】
上記4級ホスホニウム塩及び上記イミダゾリウム塩は、それぞれ単独で用いられてもよいし、1種のみが4級アンモニウム塩と併用されてもよいし、2種以上が4級アンモニウム塩と併用されてもよい。
【0025】
上述したように、上記有機化層状珪酸塩は、上記層状珪酸塩中の交換性陽イオンの50〜90ミリ当量/100gが有機オニウムイオンにより置換されたものであることが好ましい。即ち、交換性陽イオンに対する有機オニウムイオンの置換率が50〜90%に調整されていることが好ましい。上記交換性陽イオンに対する有機オニウムイオンの置換率が50%未満であると、有機化層状珪酸塩の分散性が低下して、得られる有機EL表示素子封止用樹脂組成物の透明性が悪化することがある。上記交換性陽イオンに対する有機オニウムイオンの置換率が90%を超えると、溶媒を除去する乾燥工程等で有機EL表示素子封止用樹脂組成物を加熱した場合に有機オニウムイオンの熱分解が起こりやすくなり、着色が生じることがある。
なお、上記交換性陽イオンに対する有機オニウムイオンの置換率は、上記有機オニウム塩の使用量を調整すること等により、任意の割合に調整することができる。
【0026】
上記層状珪酸塩を上記有機オニウム塩で処理(イオン交換)する方法としては、例えば、上記層状珪酸塩が分散した水中に、上記有機オニウム塩を添加する方法等が挙げられる。
【0027】
上記有機化層状珪酸塩は、シランカップリング剤で処理されていることが好ましい。有機化層状珪酸塩をシランカップリング剤で処理することにより、上記フェノキシ樹脂との相溶性が向上し、上記有機化層状珪酸塩を多量に配合した場合でも有機化層状珪酸塩同士の凝集を抑制することができる。その結果、得られる有機EL表示素子封止用樹脂組成物に、良好な透明性を維持した状態で、優れたバリア性を付与することが可能となる。
【0028】
上記シランカップリング剤としては、例えば、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトシシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノシランや、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン等のビニルシランや、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等のメタクリルシランや、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトシシシラン、3−メルカプトプロピルエトキシシラン等のメルカプトシランや、3−グルシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等のエポキシシランや、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等のウレイドシランや、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のイソシアネートシランや、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、イソプロピルジメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン等のアルキルシランや、フェニルトリメトキシシラン等が挙げられる。なかでも、上記フェノキシ樹脂との相溶性を向上させる効果に優れることから、アミノシランが好ましい。
【0029】
上記有機化層状珪酸塩をシランカップリング剤で処理する方法としては、例えば、上記有機化層状珪酸塩が分散している溶液中で処理する湿式法、上記有機化層状珪酸塩を粉体のまま直接処理する乾式法、上記有機化層状珪酸塩が樹脂中に分散している樹脂組成物中で処理するインテグラルブレンド法等が挙げられる。なかでも、シランカップリング剤による有機化層状珪酸塩の凝集を抑制する観点から、有機化層状珪酸塩がよく分散している状態で処理できる湿式法が好ましい。上記湿式法を行う場合、シランカップリング剤で処理した後、有機化層状珪酸塩を溶液から単離することなく、溶液に分散させたまま上記フェノキシ樹脂と混合することが好ましい。
【0030】
上記シランカップリング剤の使用量は、上記有機化層状珪酸塩100重量部に対して、好ましい下限が0.5重量部、好ましい上限が10重量部である。上記シランカップリング剤の使用量が0.5重量部以上であることにより、上記有機化層状珪酸塩と上記フェノキシ樹脂との相溶性が向上し、有機化層状珪酸塩同士の凝集を抑制できる。上記シランカップリング剤の使用量が10重量部以下であることにより、シランカップリング剤による有機化層状珪酸塩同士の結合が起こり難くなる。上記シランカップリング剤の使用量のより好ましい下限は1重量部、より好ましい上限は5重量部である。
【0031】
上記有機化層状珪酸塩の平均一次粒子径の好ましい下限は10nm、好ましい上限は200nmである。上記有機化層状珪酸塩の平均一次粒子径が10nm未満であると、バリア性が低下することがある。上記有機化層状珪酸塩の平均一次粒子径が200nmを超えると、透明性が損なわれることがある。上記有機化層状珪酸塩の平均一次粒子径のより好ましい下限は20nm、より好ましい上限は100nmである。
なお、上記有機化層状珪酸塩の平均一次粒子径は、動的光散乱式粒子径測定装置(大塚電子社製、「ELSZ−1000S」)等を用いて測定することができる。
【0032】
上記有機化層状珪酸塩の含有量は、上記フェノキシ樹脂100重量部に対して、好ましい下限が20重量部、好ましい上限が250重量部である。上記有機化層状珪酸塩の含有量が20重量部未満であると、得られる有機EL表示素子封止用樹脂組成物がバリア性に劣るものとなることがある。上記有機化層状珪酸塩の含有量が250重量部を超えると、得られる有機EL表示素子封止用樹脂組成物の透明性が悪化することがある。上記有機化層状珪酸塩の含有量のより好ましい下限は30重量部、より好ましい上限は200重量部、更に好ましい下限は50重量部、更に好ましい上限は150重量部である。
また、上述したように、上記有機化層状珪酸塩がシランカップリング剤で処理されている場合、上記フェノキシ樹脂中に多量に配合した場合でも有機化層状珪酸塩同士の凝集が起こり難くなるため、より多くの有機化層状珪酸塩を配合することが可能となる。この場合の上記有機化層状珪酸塩の含有量は、上記フェノキシ樹脂100重量部に対して、好ましい下限が100重量部、好ましい上限が220重量部である。シランカップリング剤で処理された上記有機化層状珪酸塩の配合量がこの範囲であることにより、良好な透明性を維持した状態で、バリア性をより向上させることができる。上記有機化層状珪酸塩の含有量のより好ましい下限は130重量部である。
【0033】
本発明の有機EL表示素子封止用樹脂組成物は、可塑剤を含有することが好ましい。
上記可塑剤としては、例えば、フタル酸エステル類、トリメリット酸エステル類、脂肪族二塩基酸エステル類、リン酸エステル類、リシノール酸エステル類、ポリエステル類、スルホンアミド類等の可塑剤が挙げられる。
【0034】
また、多官能カチオン重合性化合物を上記可塑剤として使用することができる。
上記多官能カチオン重合性化合物は、1分子中に2個以上のカチオン重合性基を有し、可塑剤としての効果のみでなく、重合により架橋硬化して強固な接着力を発現させる効果も有する。
上記多官能カチオン重合性化合物の有するカチオン重合性基としては、例えば、エポキシ基、オキセタニル基、ビニルエーテル基等が挙げられる。なかでも、エポキシ基が好ましい。
【0035】
上記多官能カチオン重合性化合物のカチオン重合性基当量の好ましい下限は50g/mol、好ましい上限は400g/molである。上記多官能カチオン重合性化合物のカチオン重合性基当量が50g/mol未満であると、得られる有機EL表示素子封止用樹脂組成物が、加熱や変形によってクラックを発生させることがある。上記多官能カチオン重合性化合物のカチオン重合性基当量が400g/molを超えると、得られる有機EL表示素子封止用樹脂組成物がバリア性に劣るものとなることがある。上記多官能カチオン重合性化合物のカチオン重合性基当量のより好ましい下限は70g/mol、より好ましい上限は300g/molである。
なお、上記多官能カチオン重合性化合物のカチオン重合性基当量は、多官能カチオン重合性化合物の重量(g)を多官能カチオン重合性化合物中に含まれるカチオン重合性基のモル数(mol)で除して求められる値である。
【0036】
上記多官能カチオン重合性化合物の分子量の好ましい下限は150、好ましい上限は1000である。上記多官能カチオン重合性化合物の分子量が150未満であると、アウトガス発生の原因となることがある。上記多官能カチオン重合性化合物の分子量が1000を超えると、得られる有機EL表示素子封止用樹脂組成物に対する可塑剤としての流動接着性を向上する効果が低下することがある。上記多官能カチオン重合性化合物の分子量のより好ましい下限は200、より好ましい上限は700、更に好ましい下限は250、更に好ましい上限は500である。
なお、上記多官能カチオン重合性化合物の分子量は、分子構造が特定される化合物については、構造式から求められる分子量であるが、重合度の分布が広い化合物及び変性部位が不特定な化合物については、重量平均分子量を用いて表す場合がある。
【0037】
上記多官能カチオン重合性化合物としては、例えば、ビスフェノールA骨格、ビスフェノールF骨格、水添ビスフェノールA骨格、水添ビスフェノールF骨格、フェノールノボラック骨格、ビフェニル骨格、水添ビフェニル骨格、ジシクロペンタジエン骨格、ナフタレン骨格、トリアジン骨格等を有するモノマー又はオリゴマーが挙げられる。なかでも、吸湿や水蒸気の透過率が低減し、得られる有機EL表示素子の発光の劣化をより抑制することができることから、水添ビスフェノールA骨格、水添ビスフェノールF骨格、ジシクロペンタジエン骨格等の脂環骨格を有するモノマー又はオリゴマーが好ましい。また、脂環式骨格とカチオン重合性を兼ね備えた脂環エポキシモノマー又はオリゴマーも好ましい。上記多官能カチオン重合性化合物として脂環骨格を有するモノマー又はオリゴマーや脂環エポキシモノマー又はオリゴマーを用いることにより、熱や光による樹脂組成物の着色が起こりにくく、樹脂組成物の吸光によるEL発光の損失や色調の変化を小さくすることができる。これらの多官能カチオン重合性化合物は、単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0038】
上記多官能カチオン重合性化合物としては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビフェノールジグリシジルエーテル、水添ビフェニルジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、ジシクロペンタジエンジメタノールジグリシジルエーテル等が挙げられる。なかでも、架橋による接着性の向上効果が良好であることから、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテルが好ましい。
【0039】
上記可塑剤の含有量は、上記フェノキシ樹脂100重量部に対して、好ましい下限が10重量部、好ましい上限が150重量部である。上記可塑剤の含有量が10重量部未満であると、柔軟性を向上させる等の効果が充分に得られないことがある。上記可塑剤の含有量が150重量部を超えると、得られる有機EL表示素子封止用樹脂組成物のバリア性が低下することがある。上記可塑剤の含有量のより好ましい下限は30重量部、より好ましい上限は100重量部である。
【0040】
本発明の有機EL表示素子封止用樹脂組成物は、硬化剤を含有してもよい。上記硬化剤を用いることにより、上記フェノキシ樹脂は、熱硬化性や光硬化性を有するものとなる。
上記硬化剤としては、熱硬化剤及び/又はカチオン重合開始剤を用いることができる。
【0041】
上記熱硬化剤は、加熱により上記多官能カチオン重合性化合物の硬化を開始させるとともに、硬化を促進させる機能を有する。
【0042】
上記熱硬化剤としては、例えば、ヒドラジド化合物、イミダゾール誘導体、2級アミン化合物、3級アミン化合物、酸無水物、ジシアンジアミド、グアニジン誘導体、変性脂肪族ポリアミン、各種アミンとエポキシ樹脂との付加生成物等が挙げられる。
これらの熱硬化剤は、単独で用いられてもよいし、2種類以上が併用されてもよい。
【0043】
上記ヒドラジド化合物としては、例えば、1,3−ビス(ヒドラジノカルボノエチル−5−イソプロピルヒダントイン)等が挙げられる。
上記イミダゾール誘導体としては、例えば、2−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、2,3−ジヒドロ−1H−ピロロ[1,2−a]ベンズイミダゾール等のイミダゾール化合物や、2−メチルイミダゾリン、2−フェニルイミダゾリン等のイミダゾリン類や、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテート、エポキシ−イミダゾールアダクト等のイミダゾール誘導体が挙げられる。
上記2級アミン化合物としては、例えば、ピペリジン等が挙げられる。
上記3級アミン化合物としては、例えば、N,N−ジメチルピペラジン、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等が挙げられる。
上記酸無水物としては、例えば、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルナジック酸無水物、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、水素化メチルナジック酸無水物、エチレングリコール−ビス(アンヒドロトリメリテート)等が挙げられる。なかでも、二重結合を含まない脂環式の酸無水物が好ましい。
【0044】
上記熱硬化剤の分子量の好ましい下限は80、好ましい上限は800である。上記熱硬化剤の分子量が80未満であると、揮発性が高くなってアウトガスが発生することがある。上記熱硬化剤の分子量が800を超えると、有機EL表示素子封止用樹脂組成物を素子に熱圧着する際の流動性が低下したり、組成物中での拡散性が低下し、充分な硬化性が得られなかったりすることがある。上記熱硬化剤の分子量のより好ましい下限は100、より好ましい上限は500、更に好ましい下限は120、更に好ましい上限は250である。
【0045】
上記カチオン重合開始剤としては、熱によって硬化反応を開始する熱カチオン重合開始剤や光によって硬化反応を開始する光カチオン重合開始剤を用いることができる。
【0046】
上記熱カチオン重合開始剤としては、例えば、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、4級アンモニウム塩、ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩等が挙げられる。なかでも、スルホニウム塩が好ましい。
上記熱カチオン重合開始剤における対アニオンとしては、例えば、AsF
6−、SbF
6−、PF
6−、B(C
6F
5)
4−等が挙げられる。
上記スルホニウム塩としては、例えば、トリフェニルスルホニウム四フッ化ホウ素、トリフェニルスルホニウム六フッ化アンチモン、トリフェニルスルホニウム六フッ化ヒ素、トリ(4−メトキシフェニル)スルホニウム六フッ化ヒ素、ジフェニル(4−フェニルチオフェニル)スルホニウム六フッ化ヒ素等が挙げられる。
上記ホスホニウム塩としては、例えば、エチルトリフェニルホスホニウム六フッ化アンチモン、テトラブチルホスホニウム六フッ化アンチモン等が挙げられる。
上記4級アンモニウム塩としては、例えば、N,N−ジメチル−N−ベンジルアニリニウム六フッ化アンチモン、N,N−ジエチル−N−ベンジルアニリニウム四フッ化ホウ素、N,N−ジメチル−N−ベンジルピリジニウム六フッ化アンチモン、N,N−ジエチル−N−ベンジルピリジニウムトリフルオロメタンスルホン酸、N,N−ジメチル−N−(4−メトキシベンジル)ピリジニウム六フッ化アンチモン、N,N−ジエチル−N−(4−メトキシベンジル)ピリジニウム六フッ化アンチモン、N,N−ジエチル−N−(4−メトキシベンジル)トルイジニウム六フッ化アンチモン、N,N−ジメチル−N−(4−メトキシベンジル)トルイジニウム六フッ化アンチモン等が挙げられる。
【0047】
上記熱カチオン重合開始剤のうち市販されているものとしては、例えば、アデカオプトンCP−66、アデカオプトンCP−77(いずれもADEKA社製)や、熱活性だけでなく光活性も有している熱カチオン重合開始剤である、サンエイドSI−60、サンエイドSI−80、サンエイドSI−100、サンエイドSI−110、サンエイドSI−180(いずれも三新化学工業社製)等が挙げられる。
【0048】
上記光カチオン重合開始剤としては、光照射によりプロトン酸又はルイス酸を発生するものであれば特に限定されず、イオン性光酸発生型であってもよいし、非イオン性光酸発生型であってもよい。
なかでも、得られる有機EL表示素子封止用樹脂組成物が、NiメッキCuガラスや無アルカリガラス等の基材に対する接着性に特に優れたものとなることから、アンチモン錯体、6フッ化リンイオンを有する塩、又は、下記式(1)で表される塩が好ましい。
【0049】
【化1】
【0050】
式(1)中、nは1〜12の整数を表し、mは1〜5の整数を表し、Rfは、アルキル基の全部又は一部の水素がフッ素に置換されてなるフルオロアルキル基を表す。
【0051】
上記アンチモン錯体は特に限定されないが、スルホニウム塩であることが好ましい。
上記アンチモン錯体であるスルホニウム塩としては、具体的には例えば、テトラフェニル(ジフェニルスルフィド−4,4’−ジイル)ビススルホニウム・ジ(六フッ化アンチモン)、テトラ(4−メトキトフェニル)[ジフェニルスルフィド−4,4’−ジイル]ビススルホニウム・ジ(六フッ化アンチモン)、ジフェニル(4−フェニルチオフェニル)スルホニウム・六フッ化アンチモン、ジ(4−メトキシフェニル)[4−フェニルチオフェニル]スルホニウム・六フッ化アンチモン等が挙げられる。
上記アンチモン錯体のうち市販されているものとしては、例えば、アデカオプトマーSP170(ADEKA社製)等が挙げられる。
【0052】
上記6フッ化リンイオンを有する塩としては、例えば、ジフェニルヨードニウムヘキサフロロホスフェート、トリフェニルスルホニウムヘキサフロロホスフェート等が挙げられる。上記6フッ化リンイオンを有する塩のうち市販されているものとしては、例えば、WPI−113(和光純薬工業社製)、CPI−100P(サンアプロ社製)等が挙げられる。
【0053】
上記式(1)で表される塩のうち市販されているものとしては、例えば、CPI−200K、CPI−210S(いずれもサンアプロ社製)等が挙げられる。
【0054】
上記硬化剤の含有量は、上記多官能カチオン重合性化合物100重量部に対して、好ましい下限が0.1重量部、好ましい上限が10重量部である。上記硬化剤の含有量が0.1重量部未満であると、得られる有機EL表示素子封止用樹脂組成物を充分に硬化させることができないことがある。上記硬化剤の含有量が10重量部を超えると、得られる有機EL表示素子封止用樹脂組成物が着色したり、保存安定性に劣るものとなったりすることがある。上記硬化剤の含有量のより好ましい下限は0.5重量部、より好ましい上限は5重量部である。
なお、上記硬化剤として上記酸無水物を用いる場合、上記酸無水物の配合量は、上記多官能カチオン重合性化合物100重量部に対して、好ましい下限が50重量部、好ましい上限が150重量部である。
【0055】
上記硬化剤として上記酸無水物を用いる場合、本発明の有機EL表示素子封止用樹脂組成物は、硬化促進剤を含有してもよい。
上記硬化促進剤としては、例えば、4級アンモニウム塩、4級スルホニウム塩、DBU脂肪酸塩、各種金属塩、イミダゾール、3級アミン等が挙げられる。
上記4級アンモニウム塩としては、例えば、テトラメチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムブロマイド等が挙げられる。
上記4級スルホニウム塩としては、例えば、テトラフェニルホスホニウムブロマイド、テトラブチルホスホニウムブロマイド等が挙げられる。
上記DBU脂肪酸塩としては、例えば、DBUの2−エチルヘキサン酸塩等が挙げられる。
上記金属塩としては、例えば、オクチル酸亜鉛、オクチル酸スズ等が挙げられる。
上記イミダゾールとしては、例えば、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール等が挙げられる。
上記3級アミンとしては、例えば、トリス(ジメチルアミノメチルフェノール)、ベンジルジメチルアミン等が挙げられる。
【0056】
上記硬化促進剤の含有量は、上記多官能カチオン重合性化合物100重量部に対して、好ましい上限が10重量部である。上記硬化促進剤を10重量部以下の含有量となるように添加することにより、上記硬化剤として上記酸無水物を用いる場合の硬化温度を適切に調整することができる。
【0057】
また、上記硬化剤として上記光カチオン重合開始剤を用いる場合、下記式(2)で表されるベンゾフェノン誘導体からなる増感剤を含有することが好ましい。上記増感剤は、上記光カチオン重合開始剤の重合開始効率をより向上させて、本発明の有機EL表示素子封止用樹脂組成物の硬化反応を適度に促進させる役割を有する。
【0058】
【化2】
【0059】
式(2)中、R
1及びR
2は、水素、下記式(3−1)で表される置換基、又は、下記式(3−2)で表される置換基を表す。上記R
1及びR
2は互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0060】
【化3】
【0061】
式(3−1)、(3−2)中、R
3は、水素、炭素数1〜20の直鎖状又は分枝状のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシル基、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、又は、炭素数1〜20のカルボン酸アルキルエステル基を表す。
【0062】
上記式(2)で表されるベンゾフェノン誘導体としては、具体的には例えば、ベンゾフェノン、2,4−ジクロロベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド等が挙げられる。
【0063】
上記増感剤の含有量は、上記多官能カチオン重合性化合物100重量部に対して、好ましい下限が0.05重量部、好ましい上限が3重量部である。上記増感剤の含有量が0.05重量部未満であると、増感効果が充分に得られないことがある。上記増感剤の含有量が3重量部を超えると、吸収が大きくなりすぎて深部まで光が伝わらないことがある。上記増感剤の含有量のより好ましい下限は0.1重量部、より好ましい上限は1重量部である。
【0064】
本発明の有機EL表示素子封止用樹脂組成物は、硬化遅延剤を含有してもよい。上記硬化遅延剤を含有することにより、得られる有機EL表示素子封止用樹脂組成物のポットライフを長くすることができる。
【0065】
上記硬化遅延剤としては、例えば、ベンジルアミン、グリシジルアミン等のアミン類やポリエーテル化合物等が挙げられる。
上記ポリエーテル化合物としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、クラウンエーテル化合物等が挙げられる。
【0066】
上記硬化遅延剤の含有量は、多官能カチオン重合性化合物100重量部に対して、好ましい下限が0.05重量部、好ましい上限が5.0重量部である。上記硬化遅延剤の含有量が0.05重量部未満であると、得られる有機EL表示素子封止用樹脂組成物に遅延効果を充分に付与できないことがある。上記硬化遅延剤の含有量が5.0重量部を超えると、得られる有機EL表示素子封止用樹脂組成物を硬化させる際にアウトガスが多量に発生することがある。上記硬化遅延剤の含有量のより好ましい下限は0.1重量部、より好ましい上限は3.0重量部である。
【0067】
本発明の有機EL表示素子封止用樹脂組成物は、シランカップリング剤を含有することが好ましい。上記シランカップリング剤は、本発明の有機EL表示素子封止用樹脂組成物と被着体との接着性を向上させる役割を有する。
【0068】
上記シランカップリング剤は、カチオン重合性基を有することが好ましい。
上記シランカップリング剤が有することが好ましいカチオン重合性基としては、例えば、エポキシ基、オキセタニル基等が挙げられる。
上記カチオン重合性基を有するシランカップリング剤としては、例えば、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−エチル−[(トリエトキシシリルプロポキシ)メチル]オキセタン等が挙げられる。なかでも、上記多官能カチオン重合性化合物との相溶性や安定性の観点から、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランが好ましい。これらのシランカップリング剤は、単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0069】
上記シランカップリング剤の含有量は、上記多官能カチオン重合性化合物100重量部に対して、好ましい下限が0.1重量部、好ましい上限が5重量部である。上記シランカップリング剤の含有量が0.1重量部未満であると、得られる有機EL表示素子封止用樹脂組成物の接着性を向上させる効果が充分に発揮されないことがある。上記シランカップリング剤の含有量が5重量部を超えると、得られる有機EL表示素子封止用樹脂組成物が、架橋密度の低下によりバリア性に劣るものとなったり、余剰のシランカップリング剤がブリードアウトしたりすることがある。上記シランカップリング剤の含有量のより好ましい下限は0.3重量部、より好ましい上限は2重量部である。
【0070】
本発明の有機EL表示素子封止用樹脂組成物は、界面活性剤を含有してもよい。上記界面活性剤を含有することにより、後述する本発明の有機EL表示素子封止用樹脂組成物をシート状に成形する際の塗布後の平坦性を更に向上させることができる。
上記界面活性剤は、消泡剤等の機能を有していてもよい。
【0071】
上記界面活性剤としては、例えば、フッ素系、シリコーン系、アクリル系等のものが挙げられる。なかでも、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤が好ましく、フッ素系界面活性剤がより好ましい。
【0072】
上記フッ素系界面活性剤としては、末端、主鎖及び側鎖の少なくともいずれかの部位にフルオロアルキル基又はフルオロアルキレン基を有する化合物を好適に用いることができ、具体的には例えば、1,1,2,2−テトラフロロオクチル(1,1,2,2−テトラフロロプロピル)エーテル、1,1,2,2−テトラフロロオクチルヘキシルエーテル、オクタエチレングリコールジ(1,1,2,2−テトラフロロブチル)エーテル、ヘキサエチレングリコール(1,1,2,2,3,3−ヘキサフロロペンチル)エーテル、オクタプロピレングリコールジ(1,1,2,2−テトラフロロブチル)エーテル、ヘキサプロピレングリコールジ(1,1,2,2,3,3−ヘキサフロロペンチル)エーテル、パーフロロドデシルスルホン酸ナトリウム、1,1,2,2,8,8,9,9,10,10−デカフロロドデカン、1,1,2,2,3,3−ヘキサフロロデカン、フルオロアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、フルオロアルキルホスホン酸ナトリウム、フルオロアルキルカルボン酸ナトリウム、フルオロアルキルポリオキシエチレンエーテル、ジグリセリンテトラキス(フルオロアルキルポリオキシエチレンエーテル)、フルオロアルキルアンモニウムヨージド、フルオロアルキルベタイン、フルオロアルキルポリオキシエチレンエーテル、パーフルオロアルキルポリオキシエタノール、パーフルオロアルキルアルコキシレート、フッ素系アルキルエステル等が挙げられる。
【0073】
また、上記フッ素系界面活性剤のうち市販されているものとしては、例えば、BM−1000、BM−1100(いずれもBM HEMIE社製)、メガファックF142D、メガファックF172、メガファックF173、メガファックF183、メガファックF178、メガファックF191、メガファックF471、メガファックF476(いずれもDIC社製)、フロラードFC170C、FC−171、FC−430、FC−431(いずれも住友スリーエム社製)、サーフロンS−112、サーフロンS−113、サーフロンS−131、サーフロンS−141、サーフロンS−145、サーフロンS−382、サーフロンSC−101、サーフロンSC−102、サーフロンSC−103、サーフロンSC−104、サーフロンSC−105、サーフロンSC−106(いずれも旭硝子社製)、エフトップEF301、エフトップEF303、エフトップEF352(いずれも三菱マテリアル電子化成社製)、フタージェントFT−100、フタージェントFT−110、フタージェントFT−140A、フタージェントFT−150、フタージェントFT−250、フタージェントFT−251、フタージェントFTX−251、フタージェントFTX−218、フタージェントFT−300、フタージェントFT−310、フタージェントFT−400S(いずれもネオス社製)等が挙げられる。
【0074】
また、上記シリコーン系界面活性剤としては、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエステル変性ポリジメチルシロキサンが好ましく、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサンがより好ましい。
【0075】
上記シリコーン系界面活性剤のうち市販されているものとしては、例えば、BYK−354、BYK−300、BYK−302、BYK−306、BYK−307、BYK−310、BYK−313、BYK−315、BYK−320、BYK−322、BYK−323、BYK−325、BYK−330、BYK−331、BYK−333、BYK−342、BYK−345、BYK−346、BYK−347、BYK−348、BYK−349、BYK−370、BYK−378、BYK−3455(いずれもビッグケミー・ジャパン社製)、サーフロンS−611(AGCセイミケミカル社製)、トーレシリコーンDC3PA、トーレシリコーンDC7PA、トーレシリコーンSH11PA、トーレシリコーンSH21PA、トーレシリコーンSH28PA、トーレシリコーンSH29PA、トーレシリコーンSH30PA、トーレシリコーンSH−190、トーレシリコーンSH−193、トーレシリコーンSZ−6032、トーレシリコーンSF−8428、トーレシリコーンDC−57、トーレシリコーンDC−190(いずれも東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)、TSF−4440、TSF−4300、TSF−4445、TSF−4446、TSF−4460、TSF−4452(いずれもモメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製)等が挙げられる。
【0076】
また、上記界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類や、ポリオキシエチレンn−オクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンn−ノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアリールエーテル類や、ポリオキシエチレンジラウレート、ポリオキシエチレンジステアレート等のポリオキシエチレンジアルキルエステル類等を用いることもできる。
【0077】
上記界面活性剤は、単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わせて用いられてもよい。
上記界面活性剤の含有量は、上記多官能カチオン重合性化合物100重量部に対して、好ましい下限が0.01重量部、好ましい上限が5重量部である。上記界面活性剤の含有量が0.01重量部未満であると、塗布後の平坦性を向上させる効果が充分に発揮されないことがある。上記界面活性剤の含有量が5重量部を超えると、塗布後の平坦性が逆に損なわれたり、本発明の有機EL表示素子封止用樹脂組成物と被着体との接着性が低下したりすることがある。上記界面活性剤の含有量は、フッ素系界面活性剤では、より好ましい下限は0.02重量部、より好ましい上限は1重量部である。また、シリコーン系界面活性剤では、より好ましい下限は0.1重量部、より好ましい上限は2重量部である。
【0078】
また、本発明の有機EL表示素子封止用樹脂組成物は、本発明の目的を阻害しない範囲で、必要に応じて、保存安定剤、粘弾性調整剤等の公知の各種添加剤を含有してもよい。
【0079】
本発明の有機EL表示素子封止用樹脂組成物を製造する方法としては、例えば、上記フェノキシ樹脂を溶解可能な溶剤に上記有機化層状珪酸塩を分散させた分散液と、上記フェノキシ樹脂及び必要に応じて用いられる可塑剤等の他の成分(以下、「フェノキシ樹脂等」ともいう)とを混合して、上記有機化層状珪酸塩を上記フェノキシ樹脂中に分散させる方法が好ましく用いられる。上記フェノキシ樹脂等は、予め上記有機化層状珪酸塩を分散させる溶剤と同様の溶剤で溶解させた溶液として用いてもよい。ここで、透明性及びバリア性の観点から、上記有機化層状珪酸塩は、上記フェノキシ樹脂中に高度に分散していることが好ましい。ここで、上記「高度に」とは、電子顕微鏡観察によりクレイの凝集がなく、層間剥離及び分散が確認できる状態のことを言う。
【0080】
上記溶剤としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族類や、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類や、N,N’−ジメチルホルムアミド、N,N’−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等のアミド類や、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン等のラクトン類や、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート類や、モノグライム、ジグライム、トリグライム等のグライム類や、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒類等が挙げられる。なかでも、N,N’−ジメチルホルムアミドが好ましい。
【0081】
上記有機化層状珪酸塩を溶剤に分散させた分散液と上記フェノキシ樹脂等とを混合する方法としては、例えば、ホモディスパー、ホモミキサー、万能ミキサー、プラネタリーミキサー、ニーダー、3本ロール等の混合機を用いる方法等が挙げられる。
【0082】
上記有機化層状珪酸塩を溶剤に分散させた分散液と上記フェノキシ樹脂等とを混合して本発明の有機EL表示素子封止用樹脂組成物を製造した場合、得られた有機EL表示素子封止用樹脂組成物を用いて有機EL表示素子を封止する際には、乾燥等により溶剤を除去する必要がある。
上記溶剤を除去する方法として、有機EL表示素子上に該溶剤を含む有機EL表示素子封止用樹脂組成物を直接塗布してから乾燥させる方法を用いると、有機EL表示素子が溶剤との接触や乾燥時の加熱により劣化する場合がある。
そのため、上記溶剤を除去する方法としては、溶剤を含む有機EL表示素子封止用樹脂組成物を、ガラスやガスバリアフィルムのような透明防湿性基材上に塗布してから乾燥させる方法が好ましく用いられる。乾燥させて上記溶剤を除去した後、有機EL表示素子封止用樹脂組成物を介して、有機発光材料層を有する積層体を形成した基板(以下、「有機EL表示素子基板」ともいう)と、透明防湿性基材とを貼り合わせ、有機EL表示素子封止用樹脂組成物を硬化させることにより有機EL表示素子の封止を行うことができる。
また、上記溶剤を除去する方法としては、離型処理を施したPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムのような支持体上に、溶剤を含む有機EL表示素子封止用樹脂組成物を塗布してから乾燥させる方法も好ましく用いられる。乾燥させて上記溶剤を除去した後、上記支持体上に塗布し、乾燥させた有機EL表示素子封止用樹脂組成物を、有機EL表示素子基板上、又は、ガラス等の透明防湿性基材上にラミネートして転写した後、有機EL表示素子封止用樹脂組成物を介して有機EL表示素子基板と透明防湿性基材とを貼り合わせ、有機EL表示素子封止用樹脂組成物を硬化させることにより有機EL表示素子の封止を行うことができる。
【0083】
溶剤を含む有機EL表示素子封止用樹脂組成物を乾燥させる方法としては、例えば、熱風、赤外線、遠赤外線、輻射、電気ヒーター等により加熱乾燥を行う方法や、減圧下において乾燥を行う方法等が挙げられる。溶剤を含む有機EL表示素子封止用樹脂組成物を乾燥させる際、有機EL表示素子の劣化を防止する観点から、120℃以下で乾燥を行うことが好ましく、100℃以下で乾燥を行うことがより好ましい。
【0084】
本発明の有機EL表示素子封止用樹脂組成物は、厚さ20μmに成形した時、波長400〜800nmの可視光透過率が95%以上であることが好ましい。上記可視光透過率が95%未満であると、透明性に劣り、トップエミッション型の有機EL表示素子に適用できなくなることがある。上記可視光透過率のより好ましい下限は97%である。なお、上記可視光透過率は、分光光度計を用いて測定できる。
【0085】
本発明の有機EL表示素子封止用樹脂組成物をシート状に成形してなる有機EL表示素子封止用樹脂シートもまた、本発明の1つである。
【0086】
本発明の有機EL表示素子封止用樹脂組成物をシート状に成形する方法としては、比較的低温で均一な膜厚のシートを形成することができることから、溶液塗布法が好ましい。具体的には例えば、溶剤を含有する本発明の有機EL表示素子封止用樹脂組成物溶液を、離型処理を施したPET(ポリエチレンテレフタレート)等のフィルム(以下、「離型フィルム」ともいう)上に所定の厚みに塗布し、溶剤を乾燥することによりフィルムを得る方法が好適に用いられる。
【0087】
溶剤を含有する本発明の有機EL表示素子封止用樹脂組成物溶液を離型フィルム上に塗布する方法としては、例えば、ロールコート、スリットコート、コンマコート、グラビアコート、キスコート、ダイコート、リップコート、ブレードコート、バーコート等の公知の方法を用いることができる。
【0088】
本発明の有機EL表示素子封止用樹脂組成物及び/又は本発明の有機EL表示素子封止用樹脂シートを用いて製造される有機EL表示素子もまた、本発明の1つである。
本発明の有機EL表示素子を製造する方法としては、例えば、離型フィルム上に形成した本発明の有機EL表示素子封止用樹脂シートを、ロール貼り合わせにより有機EL表示素子基板上に熱ラミネートし、離型フィルムを剥離した後に、極薄ガラスやガスバリア性を有するプラスチックシートを、本発明の有機EL表示素子封止用樹脂シートを介して有機EL表示素子基板の有機発光材料層を有する積層体上に積層して有機EL表示素子の封止を行う方法や、離型フィルム上に形成した本発明の有機EL表示素子封止用樹脂シートを、ロール貼り合わせによりガラスやガスバリア性を有するプラスチックシート上に熱ラミネートし、離型フィルムを剥離した後に、更に本発明の有機EL表示素子封止用樹脂シートを介して有機発光材料層を有する積層体を形成した基板に積層して有機EL表示素子の封止を行う方法等が挙げられる。
【0089】
有機EL表示素子の損傷や劣化を防ぐ観点から、本発明の有機EL表示素子の製造は、50〜100℃程度の温度範囲で行うことが好ましい。そのため、本発明の有機EL表示素子封止用樹脂シートは、この温度領域で流動性を発現する溶融粘度を有することが好ましい。
【0090】
本発明の有機EL表示素子封止用樹脂組成物及び本発明の有機EL表示素子封止用樹脂シートは、反応性をもたないシート状粘着剤やシート状の熱可塑性樹脂等の従来の封止材料と比較して、耐熱性やバリア性に優れるものとなる。
また、本発明の有機EL表示素子封止用樹脂シートは、着色がなく透明性に優れるため、発光の取り出し効率に優れるトップエミッション型の有機EL表示素子に適用できる。
更に、本発明の有機EL表示素子は、本発明の有機EL表示素子封止用樹脂組成物及び/又は有機EL表示素子封止用樹脂シートを用いて、有機発光材料層を有する積層体が形成されたガラス又はフィルムと、対向するガラス又はフィルムとの間隙を封止することにより、水分の浸入を抑制してダークスポットの発生や該ダークスポットの成長による表示の劣化を抑制することができ、寿命や信頼性に優れるものとなる。