(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記連続式生物処理槽は、槽内を複数の領域に区画すると共に、区画された領域を槽の上部及び槽の下部で連通させる隔壁と、前記領域の少なくとも1つの領域に配置される散気装置と、を備え、前記散気装置により供給される空気流により、槽内の排水が前記隔壁を越えて前記領域間を循環することで、槽内に無酸素状態及び好気状態を作成して前記生物処理を行う反応槽であることを特徴とする請求項1記載の排水処理方法。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、本実施形態は本発明を実施する一例であって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
【0015】
図1は、本実施形態に係る排水処理装置の構成の一例を示す模式図である。
図1に示す排水処理装置1は、連続式生物処理槽10、半回分式生物処理槽12、固液分離槽14、排水貯留槽16を備えている。本明細書において、「連続式」とは、回分式に対する方式であり、半回分式のように、排水の流入、生物処理、汚泥の沈降、処理水の排出を一つの反応槽にて繰り返し行う半回分式処理と区別されるものである。また、本実施形態において、連続式は、連続して反応槽に排水を投入して運転する方式に限定されるものではなく、ダイヤフラムポンプ等の往復運動のような原理を利用したポンプにより、反応槽に排水を供給して運転する方式等であってもよいし、反応槽の前段に原水槽を設置し、その原水槽の水位に応じてポンプの稼動−停止を制御(水位が高い場合にはポンプを稼動、水位が低い場合にはポンプを停止)して、反応槽に排水を供給する模擬連続通水方式等であってもよい。
【0016】
図1に示す排水処理装置1は、排水流入ライン20a,20b,20c、処理水排出ライン22a,22b、汚泥返送ライン24、汚泥排出ライン26、生物汚泥供給ライン28を備えている。また、
図1に示す排水処理装置1は、第1排水流入ポンプ30、第2排水流入ポンプ32、処理水排出ポンプ34、汚泥供給ポンプ36、汚泥返送ポンプ38を備えている。第1排水流入ポンプ30は排水流入ライン20aに設置され、第2排水流入ポンプ32は排水流入ライン20bに設置され、処理水排出ポンプ34は処理水排出ライン22bに設置され、汚泥供給ポンプ36は生物汚泥供給ライン28に設置され、汚泥返送ポンプ38は汚泥返送ライン24に設置されている。また、汚泥排出ライン26にはバルブ40が設けられている。
【0017】
排水流入ライン20aの一端は排水貯留槽16の排水出口に接続され、他端は連続式生物処理槽10の排水入口に接続されている。また、排水流入ライン20bの一端は排水貯留槽16の排水出口に接続され、他端は半回分式生物処理槽12の排水入口に接続されている。また、排水流入ライン20cの一端は連続式生物処理槽10の排水出口に接続され、他端は固液分離槽14の排水入口に接続されている。処理水排出ライン22aは固液分離槽14の処理水出口に接続されている。汚泥返送ライン24の一端は固液分離槽14の汚泥出口に接続され、他端は連続式生物処理槽10の汚泥入口に接続されている。汚泥排出ライン26は汚泥返送ライン24に接続されている。生物汚泥供給ライン28の一端は半回分式生物処理槽12の汚泥出口に接続され、他端は連続式生物処理槽10の汚泥供給口に接続されている。処理水排出ライン22bの一端は半回分式生物処理槽12の処理水出口に接続され、他端は連続式生物処理槽10の処理水入口に接続されている。
【0018】
図2は、
図1の排水処理装置で用いられる半回分式生物処理槽の構成の一例を示す模式図である。
図2に示す半回分式生物処理槽12では、(1)排水の流入、(2)生物汚泥による排水の生物処理、(3)生物汚泥の沈降、(4)処理水の排出といった4つの工程を繰り返すことでグラニュール汚泥が形成される。
図2に示す半回分式生物処理槽12は、撹拌装置48、エアポンプ50、散気装置52を備えている。散気装置52はエアポンプ50に接続されており、エアポンプ50から供給される空気が散気装置52を通して槽内に供給される。また、撹拌装置48は、モータの駆動により、モータに取り付けられたシャフトが回転し、シャフトの回転と共にシャフトの先端に取り付けられた撹拌羽根が回転する構造となっている。なお、撹拌装置48は上記構成に制限されるものではない。半回分式生物処理槽12には、排水入口12a、処理水出口12bが設けられ、排水入口12aには排水流入ライン20bが接続され、処理水出口12bには処理水排出ライン22bが接続されている。また、半回分式生物処理槽12には、汚泥出口12cが設けられ、生物汚泥供給ライン28が接続されている。
【0019】
図2に示す排水流入ライン20b及び第2排水流入ポンプ32は、排水を半回分式生物処理槽12に間欠的に供給する半回分式側排水供給装置として機能する。本実施形態では、第2排水流入ポンプ32の稼働・停止により、排水の間欠供給が行われるが、例えば、排水流入ライン20bにバルブ等を設置して、バルブの開閉により排水の間欠供給を行ってもよい。
【0020】
図2に示す処理水排出ライン22b及び処理水排出ポンプ34は、処理水を連続式生物処理槽10に供給する処理水供給装置として機能する。なお、適宜処理水排出ライン22bにバルブ等を設置してもよい。本実施形態では、処理水排出ライン22bが連続式生物処理槽10に接続される構成となっているが、これに制限されず、固液分離槽14や、処理水排出ライン22aに接続される構成としてもよい
【0021】
図2に示す生物汚泥供給ライン28及び汚泥供給ポンプ36は、グラニュール汚泥を連続式生物処理槽10に供給する汚泥供給装置として機能する。なお、適宜生物汚泥供給ライン28にバルブ等を設置してもよい。
【0022】
図1に示す排水流入ライン20a及び第1排水流入ポンプ30は、排水を連続式生物処理槽10に供給する連続式側排水供給装置として機能する。また、
図1に示す連続式生物処理槽10は、例えば、散気装置等によって排水を曝気する好気条件下で、且つ半回分式生物処理槽12から供給されたグラニュール汚泥等の生物汚泥の存在下で、連続的に流入する排水を生物処理する(例えば、排水中の有機物を二酸化炭素にまで酸化処理する)ものである。
【0023】
本実施形態の固液分離槽14は、生物汚泥を含む水から生物汚泥と処理水とに分離するための分離装置であり、例えば、沈降分離、加圧浮上、濾過、膜分離等の分離装置が挙げられる。
【0024】
本実施形態の排水処理装置1の動作の一例について説明する。
【0025】
図1に示す排水貯留槽16内には、処理対象となる排水が貯留されている。処理対象となる排水は、例えば、食品加工工場排水、化学工場排水、半導体工場排水、機械工場排水、下水、し尿、河川水等の排水が挙げられる。また、排水中には、一般的に生物分解性の有機物等が含まれている。なお、排水中に生物難分解性の有機物が含まれている場合には、予め浮上分離、凝集加圧浮上装置、吸着装置等の物理化学的処理を施し、除去することが望ましい。
【0026】
まず、第1排水流入ポンプ30を稼働させ、排水貯留槽16内の処理対象排水を排水流入ライン20aから連続式生物処理槽10に供給する。連続式生物処理槽10において、好気条件下で、生物汚泥による排水の生物処理を実施する。なお、生物処理を実施する際の連続式生物処理槽10内の生物汚泥量については、後述する。
【0027】
連続式生物処理槽10で処理された処理水を排水流入ライン20cから固液分離槽14に供給して、処理水から生物汚泥を分離する。汚泥返送ポンプ38を稼働させ、固液分離された汚泥を汚泥返送ライン24から連続式生物処理槽10に返送する。また、バルブ40を開放し、汚泥排出ライン26から固液分離された汚泥を系外へ排出する。また、固液分離槽14内の処理水も処理水排出ライン22aから系外へ排出する。
【0028】
半回分式生物処理槽12を稼働させる場合には、第2排水流入ポンプ32を稼働させ、排水貯留槽16内の排水を排水流入ライン20bから半回分式生物処理槽12に供給する((1)排水の流入)。半回分式生物処理槽12に排水を所定量になるまで導入し、第2排水流入ポンプ32を停止する。次に、エアポンプ50を稼働し、散気装置52から半回分式生物処理槽12内に空気を導入すると共に、撹拌装置48を稼働させ、半回分式生物処理槽12内の排水を撹拌することで、排水の生物処理を行う((2)排水の生物処理)。
【0029】
排水の生物処理工程を所定時間実施した後、エアポンプ50及び撹拌装置48を停止し、生物処理工程を終了する。生物処理終了後、半回分式生物処理槽12内の生物汚泥を所定時間沈降させ、半回分式生物処理槽12内で、生物汚泥と処理水とに分離する((3)生物汚泥の沈降)。次に 処理水排出ポンプ34を稼働させ、半回分式生物処理槽12内の処理水を処理水排出ライン22bから排出させ((4)処理水の排出)、処理水排出ライン22bから連続式生物処理槽10に供給する。そして、(1)〜(4)の工程を繰り返すことで、半回分式生物処理槽12内の生物汚泥がグラニュール化され、グラニュール汚泥が形成される。
【0030】
また、汚泥供給ポンプ36を稼働させ、半回分式生物処理槽12内で形成されたグラニュール汚泥を生物汚泥供給ライン28から連続式生物処理槽10に供給する。なお、半回分式生物処理槽12からのグラニュール汚泥の供給は、(3)生物汚泥の沈降工程で行ってもよいし、(2)排水の生物処理工程で行ってもよいし、(4)処理水の排出工程で行ってもよい。半回分式生物処理槽12で形成されるグラニュール汚泥とは、自己造粒が進んだ汚泥のことであり、例えば汚泥の平均粒径が200μm以上の生物汚泥である。また、本実施形態では、グラニュール汚泥が形成されたか否かは、半回分式生物処理槽12内の汚泥の粒径分布を測定し、その平均粒径が200μm以上となった段階で、グラニュール汚泥が形成されたと判断することが可能である。又は、半回分式生物処理槽12内の汚泥の沈降性試験によりSVI値を定期的に測定し、5分沈降後の体積割合から算出されるSVI5の値が所定値以下(例えば80mL/g以下)となった段階で、グラニュール汚泥が形成されたと判断してもよい(なお、SVI値が低いほど、平均粒径が大きいほど良好なグラニュール汚泥であると判断可能である)。
【0031】
本実施形態では、半回分式生物処理槽12で生成したグラニュール汚泥を生物汚泥供給ライン28から連続式生物処理槽10に供給して、連続式生物処理槽10内の生物汚泥のうち、200μm以上の粒径を有するグラニュール汚泥の割合を30%以上、好ましくは50%以上にして、生物処理を行う。200μm以上の粒径を有するグラニュール汚泥の割合を10%以上にすることで、連続式生物処理槽10内で微生物による酸素消費速度を向上させることが可能となる。その結果、200μm以上の粒径を有するグラニュール汚泥の割合が30%以上の方が、当該割合が30%未満の場合と比較して、同じ曝気量でも、排水中への酸素の溶解速度が向上するため、曝気量に掛かるエネルギーを抑えながら、処理水の水質悪化を抑制することが可能となる。また、200μm以上の粒径を有するグラニュール汚泥は非常に高い沈降性を有していることから、固液分離槽14での固液分離が容易となるため、通常の活性汚泥と比べて、連続式生物処理槽10内の汚泥濃度を高く保つことが可能となる。したがって、排水中への酸素の溶解速度を向上させることが可能となる。なお、通常、排水中への酸素の溶解速度は、槽内の汚泥濃度が高くなるにつれて低下する傾向にあるが、これは、汚泥含有排水の粘性が上昇してしまうためである。しかし、グラニュール汚泥は通常の活性汚泥よりも粘性が低いため、汚泥含有排水の粘性を上げることなく、汚泥濃度を高めることが可能となる。
【0032】
連続式生物処理槽10内のグラニュール汚泥の割合を調整する方法の一例を以下に説明する。まず、汚泥供給ポンプ36の稼働時間及び出力等を調節し、所定時間及び所定流量で半回分式生物処理槽12から連続式生物処理槽10へ、200μm以上の粒径を有するグラニュール汚泥を含む生物汚泥を供給する。そして、連続式生物処理槽10内の生物汚泥に対する200μm以上の粒径を有するグラニュール汚泥の割合をレーザー回折式粒度分布計などにより求める。ここで、上記割合が30%に達していない場合には、再度、所定時間及び所定流量で半回分式生物処理槽12から連続式生物処理槽10へ、200μm以上の平均粒径を有するグラニュール汚泥を含む生物汚泥を供給する。このような操作を上記割合が30%以上となるまで繰り返し行う。なお、上記操作は作業者が行ってもよいし、また、連続式生物処理槽10内の汚泥の粒径分布をレーザー回折式粒度分布計などで測定しながら、適宜グラニュール汚泥の供給量を調整してもよい。
図1に示す装置の場合、半回分式反応槽12で形成した200μm以上のグラニュール汚泥を連続式生物処理槽10内の汚泥の30%以上となるように投入し、半回分式反応槽12でグラニュール汚泥を増殖、形成させることも可能であるし、半回分式反応槽12で形成した200μm以上のグラニュール汚泥を半回分式反応槽12の汚泥濃度が一定になるように引き抜き、その余剰のグラニュール汚泥を定期的に連続式生物処理槽10内に投入してもよい。
【0033】
また、通常、グラニュール汚泥を半回分式生物処理槽12から連続式生物処理槽10へ供給すると、連続式生物処理槽10の水量が一時的に増加して、連続式生物処理槽10から排出される処理水の水質悪化が引き起こされる場合がある。そこで、半回分式生物処理槽12から連続式生物処理槽10へ供給する際には、第1排水流入ポンプ30の出力を低下、或いは稼働を停止し、連続式生物処理槽10に供給される排水の流量を低下又は零にすることが好ましい。
【0034】
半回分式生物処理槽12のMLSS濃度は、2000〜20000mg/Lの範囲で運転されることが望ましい。また、生物汚泥の健全性(沈降性、活性等)を維持するためには、適切な汚泥負荷に保つことが望ましく、好ましくは0.05〜0.60kgBOD/MLSS/dayの範囲、より好ましくは0.1〜0.5kgBOD/MLSS/dayの範囲に保たれるように、槽内からグラニュール汚泥を引き抜くことが望ましい。
【0035】
半回分式生物処理槽12でのグラニュール汚泥の形成においては、沈降時間の管理と1バッチあたりの排水流入率を適切にコントロールすることが望ましい。攪拌(曝気による攪拌を含む)を停止して汚泥を沈降させる沈降時間は水面から目的とする汚泥界面位置までの距離と汚泥の沈降速度とから計算され、例えば、4分/mから15分/mの間で設定されることが好ましく、5分/mから10分/mの間で設定されることがより好ましい。また、排水流入率(反応時有効容積に対する流入水の割合)は、例えば20%以上120%以下の範囲であることが好ましく、40%以上120%以下の範囲であることがより好ましい。処理対象物質である有機物濃度が非常に高い状態(流入工程の直後、飽食状態)と有機物濃度が非常に低い状態(生物処理工程の終盤、飢餓状態)を汚泥が繰り返し経験することによって、汚泥のグラニュール化が進行すると考えられているため、グラニュール汚泥を形成する観点では排水流入率は出来るだけ高くとった方がよいが、その一方で、排水流入率を高くすればする程、流入ポンプの容量が大きくなりコスト高となる。そのため、グラニュール汚泥の形成及びコスト削減の点で、排水流入率は40%以上120%以下の範囲が好ましい。
【0036】
半回分式生物処理槽12内のpHは、一般的な生物処理に適する6〜9の範囲に調整することが好ましく、6.5〜7.5の範囲に調整することがより好ましい。pH値が前記範囲外となる場合は酸、アルカリを利用してpH調整を実施することが好ましい。半回分式生物処理槽12においてpH調整を実施する場合、pH値を適切に測定する点で、半回分式生物処理槽12が撹拌されていない状態より、撹拌されている状態でpH調整を実施することが望ましい。半回分式生物処理槽12内の溶存酸素(DO)は、一般的な生物処理に適する0.5mg/L以上とすることが好ましく、1mg/L以上とすることがより好ましい。
【0037】
本実施形態では、(1)排水の流入、(2)排水の生物処理、(3)生物汚泥の沈降、(4)処理水の排出を繰り返し行って、200μm以上の粒径を有するグラニュール汚泥を形成する半回分式生物処理槽12を用いているが、必ずしも当該半回分式生物処理槽12を用いる必要はない。半回分式生物処理槽12以外にも、グラニュール汚泥を形成することが可能な装置(グラニュール汚泥形成装置)であればよく、例えば、脱窒処理で添加する水素供与体の添加を制御してグラニュールを形成させる方法や、嫌気グラニュールを投入する方法などが挙げられる。
【0038】
また、本実施形態の排水処理装置1では、例えば、半回分式生物処理槽12のようなグラニュール汚泥形成装置を備えているが、必ずしもグラニュール汚泥形成装置を備える必要はない。例えば、別系統の排水処理システムにおいて、200μm以上の粒径を有するグラニュール汚泥が形成されている場合には、そのグラニュール汚泥が連続式生物処理槽10に供給されるように、生物汚泥供給装置(生物汚泥供給ライン28)を設置すればよい。
【0039】
連続式生物処理槽10では、有機物等を処理対象とした標準活性汚泥法により生物処理を行う形態を例に説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、A2O(Anaerobic−Anoxic−Oxic Process)やAO(Anaerobic−Oxic Process)等の栄養塩除去型システム(無酸素処理槽や嫌気処理槽を設置するシステム)、オキシデーションディッチ法、ステップ流入型多段活性汚泥法等のシステムにより生物処理を行う装置であってもよい。また、ポリウレタン、プラスチック、樹脂等の担体の存在下で、生物処理を行う装置であってもよい。
【0040】
また、上記のように、連続式生物処理槽10内の生物汚泥のうち、200μm以上の粒径を有するグラニュール汚泥を30%以上にすることで、曝気槽内のグラニュールの外側では好気状態、グラニュールの内部では無酸素状態を作り出すことが可能となり、バルク水中に溶存酸素が存在している状態(好気状態)においても脱窒反応が起こり、必ずしも無酸素槽を設置しなくても、1槽で硝化脱窒反応を起こすことが可能となる。
【0041】
図5及び6は、連続式生物処理槽の構成の他の一例を示す模式図である。
図5に示す連続式生物処理槽10は、槽内の中央部に、槽の水深方向に沿って配置される隔壁62を備えている。隔壁62の上端及び下端は開放されている。これにより、連続式生物処理槽10内は、槽の上部及び下部で連通された2つの領域A,Bに区画される。
図5に示す連続式生物処理槽10は、領域Aに設置された散気装置64を備える。散気装置64により供給される空気流により、槽内の排水が隔壁62を越えて領域A,B間を循環する循環流が形成される(
図5に示す矢印X)。このような循環流を形成することで、主に散気装置64の上方の領域Aで好気状態が形成され、主に散気装置64の下方の領域A,Bで無酸素状態が形成され、生物処理が行われる。
【0042】
図6に示す連続式生物処理槽10では、槽内の中央部に、槽内の水深方向に沿って2列の隔壁(62a,62b)が所定の間隔を空けて配置され、3つの領域A,B,Cに区画されている。散気装置64は、一方の隔壁62aと他方の隔壁62bとの間の領域Bに設けられている。
図6に示す連続式生物処理槽10では、散気装置64により供給される空気流により、槽内の排水は領域Bを上昇する上昇流となり、次いで、一方の隔壁62a及び他方の隔壁62bを越えて領域A,Cに流れ、領域A及びB間、領域C及びB間を循環する循環流となる(
図6に示す矢印X)。このような循環流を形成することで、主に散気装置64の上方の領域Bで好気状態が形成され、主に領域A,Cで無酸素状態が形成され、生物処理が行われる。
【0043】
図5及び
図6に示すような連続式生物処理槽10を用い、且つ連続式生物処理槽10内の生物汚泥のうち、200μm以上の粒径を有するグラニュール汚泥を30%以上にすることで、連続式生物処理槽10内で微生物による酸素消費速度を向上させ、排水中への酸素溶解速度を促進させることができるため、循環流により一定以上の底部流速を確保しながら、より効率的に反応槽内で好気部位(硝化反応)と無酸素部位(脱窒反応)を作り出し、排水中の窒素成分の処理が可能となる。
【0044】
連続式生物処理槽10は、例えば槽内の汚泥濃度が2000〜20000mg/Lの範囲で運転されることが望ましい。また、生物汚泥の健全性(沈降性、活性等)を維持するために、汚泥負荷は、0.05〜0.6kgBOD/MLSS/dayの範囲にすることが好ましく、0.1〜0.5kgBOD/MLSS/dayの範囲にすることがより好ましい。
【0045】
排水処理装置1では、固液分離槽14を備える形態を例に説明したが、固液分離槽14を必ずしも備える必要はない。しかし、排水処理装置1は、グラニュール汚泥を循環させて、排水の処理効率を向上させる等の点で、連続式生物処理槽10から排出される処理水から生物汚泥を分離する固液分離槽14と、固液分離槽14から排出される生物汚泥(グラニュール汚泥を含む)を連続式生物処理槽10に返送する汚泥返送ライン24を備えることが好ましい。
【0046】
図3は、本実施形態に係る排水処理装置の構成の他の一例を示す模式図である。
図3の排水処理装置2において、
図1に示す排水処理装置1と同様の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。
図3に示す排水処理装置2では、排水流入ライン20aに排水流入ポンプ31及びバルブ44が設けられ、排水流入ライン20bには、バルブ46が設けられている。そして、排水流入ライン20bの一端は、排水流入ポンプ31とバルブ44の間の排水流入ライン20aに接続され、他端は半回分式生物処理槽15の排水入口に接続されている。また、
図3に示す排水処理装置2は、半回分式生物処理槽15から排出される処理水及びグラニュール汚泥を連続式生物処理槽10に供給する汚泥処理水供給ライン58を備えている。汚泥処理水供給ライン58には、バルブ60が設けられている。汚泥処理水供給ライン58は、半回分式生物処理槽15から排出される処理水を連続式生物処理槽10に供給する処理水供給装置としての機能及びグラニュール汚泥を連続式生物処理槽10に供給する汚泥供給装置としての機能を備えている。
【0047】
図4は、
図3に示す排水処理装置に用いられる半回分式生物処理槽の構成の一例を示す模式図である。
図4に示す半回分式生物処理槽15において、
図2に示す半回分式生物処理槽12と同様の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。
図4に示す半回分式生物処理槽15では、処理水及びグラニュール汚泥を排出する汚泥処理水出口12dが設けられ、汚泥処理水出口12dに、汚泥処理水供給ライン58の一端が接続されている。汚泥処理水供給ライン58の他端は、連続式生物処理槽10に接続されている。
図4に示す半回分式生物処理槽15では、排水が流入する排水入口12aは、汚泥処理水出口12dより低い位置に設けられている。
【0048】
図4に示す半回分式生物処理槽15では、排水の流入と処理水の排出が同時に行われる。すなわち、排水の流入及び処理水の排出、処理対象物質の生物処理、生物汚泥の沈降といった工程が繰り返し行われる。
図4に示す半回分式生物処理槽15の動作の一例については、
図3に示す排水処理装置2の動作と共に、以下に説明する。
【0049】
まず、排水流入ポンプ31を稼働させると共に、バルブ44を開放し、排水貯留槽16内の処理対象排水を排水流入ライン20aから連続式生物処理槽10に連続的に供給する。連続式生物処理槽10において排水の生物処理を実施した後、処理水を排水流入ライン20cから固液分離槽14に供給する。そして、半回分式生物処理槽15を稼働させる場合には、バルブ46及びバルブ60を開放し、排水を排水流入ライン20bから半回分式生物処理槽15に供給すると共に、半回分式生物処理槽15内の処理水及びグラニュール汚泥を汚泥処理水供給ライン58から連続式生物処理槽10に供給する(排水の流入/処理水の排出)。この際、撹拌装置48を稼働させることで、半回分式生物処理槽15内のグラニュール汚泥を効率的に汚泥処理水供給ライン58から連続式生物処理槽10に供給することが可能となる。そして、前述したように、連続式生物処理槽10内の生物汚泥のうち、200μmの粒径を有するグラニュール汚泥を供給した後、バルブ46及びバルブ60を閉じる。次に、撹拌装置48を稼働させたまま、エアポンプ50を稼働させ、半回分式生物処理槽15内に空気の供給を開始し、排水の生物処理を行う(生物処理工程)。
【0050】
所定時間経過後、エアポンプ50の動作を停止することで空気の供給を停止し、また、撹拌装置48を停止することで、生物処理を終了する。生物処理終了後、半回分式生物処理槽15内の生物汚泥を所定時間沈降させ、半回分式生物処理槽15内で、生物汚泥と処理水とに分離する(生物汚泥の沈降)。そして、再度、排水の流入/処理水の排出工程に移行する。
【0051】
本実施形態では、半回分式生物処理槽15に設けられる排水入口12aが汚泥処理水出口12dより低い位置に配置されているため、半回分式生物処理槽15内に流入した排水が生物処理されることなく半回分式生物処理槽15から排出される(排水のショートカット)ことが抑制される。その結果、半回分式生物処理槽15で効率的にグラニュール汚泥を形成することが可能となる。また、半回分式生物処理槽15内の処理水は、流入してくる排水により押し上げられる形で排出されるため、沈降性の低い生物汚泥(グラニュール化していない汚泥等)を積極的に系外に排出することが可能となる。その結果、沈降性の高い生物汚泥が半回分式生物処理槽15内に残るため、より効率的にグラニュール汚泥を形成することが可能となる。
【実施例1】
【0052】
以下、実施例を挙げ、本発明をより具体的に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0053】
実施例では
図2に示す半回分式生物処理槽を用いて、排水の流入、排水の生物処理、生物汚泥の沈降、処理水の排出を繰り返し行い、グラニュールを形成した。使用した排水は下水を用いた。
【0054】
半回分式生物処理槽で形成したグラニュール汚泥をMLSS濃度が1000〜1500mg/Lになるように、下水に混合し、汚泥混合液を調製した。汚泥混合液中の生物汚泥の粒度分布をレーザー回折式粒度分布計により測定した。その結果を
図7に示す。
図7に示す粒度分布における粒径200μm以上のピーク面積を全ピーク面積で除することにより、汚泥混合液中の生物汚泥に対する200μm以上の粒径を有するグラニュール汚泥の割合を求めた。その結果、汚泥混合液中の生物汚泥に対する200μm以上の粒径を有するグラニュール汚泥の割合は70%であった。
【0055】
次に、上記汚泥混合液中に酸素が溶解するように、汚泥混合液を激しく撹拌した。この汚泥混合液をフラン瓶に分注し、スターラーにより緩速で撹拌を行いながら溶存酸素計により、汚泥混合液中の溶存酸素濃度の推移を記録し、溶存酸素の消費速度を求めた。この溶存酸素の消費速度、MLSS及びMLVSSから、単位汚泥当たりの酸素消費速度を算出した。単位汚泥当たりの酸素消費速度が高いほど、排水中の微生物の酸素消費速度が高いことを意味している。表1に、実施例の溶存酸素の消費速度、MLVSS、単位汚泥当たりの酸素消費速度の結果をまとめた。
【0056】
比較例では、連続式生物処理槽を用いて、上記模擬排水に対して活性汚泥法による生物処理を行った。連続式生物処理槽内の生物汚泥を取り出し、MLSS濃度が1000〜1500mgとなるように、模擬排水に混合し、汚泥混合液を調製した。汚泥混合液中の生物汚泥の粒度分布をレーザー回折式粒度分布計により測定した。その結果を
図7に示す。
図7に示す粒度分布から、実施例と同様に、汚泥混合液中の生物汚泥に対する200μm以上の粒径を有するグラニュール汚泥の割合を求めた結果20%であった。
【0057】
上記汚泥混合液を用いて、実施例と同様に、溶存酸素の消費速度、MLSS及びMLVSSから、単位汚泥当たりの酸素消費速度を算出した。表1に、比較例の溶存酸素の消費速度、MLVSS、単位汚泥当たりの酸素消費速度の結果をまとめた。
【0058】
【表1】
【0059】
表1の結果から分かるように、比較例の単位汚泥当たりの酸素消費速度は0.53kgO/kgVSS/dであるのに対し、実施例の単位汚泥当たりの酸素消費速度は0.97kgO/kgVSS/dであり、比較例と比べて1.8倍高い値となった。すなわち、実施例の方が、比較例より、排水中の微生物の酸素消費速度が高いと言える。したがって、実施例の方が、比較例より、排水中に供給した酸素の溶解速度が速く、微生物が効率的に酸素を利用していることを示している。