【実施例】
【0020】
本発明に係る天井固定部材の実施例を、
図1〜8において説明する。この天井固定部材1は、
図1(a)、(b)に示すように、浴室の壁2に、浴室の天井3を固定するものである。天井3は、平天井6と斜め天井7を備えている。
【0021】
本明細書および本発明の説明では、建物の梁8(
図1(a)参照)を避けてシステムバス11を設置するが、建物の梁8に向かってシステムバス11を正面視し、手前側(
図1(a)では右側)を前方とし、建物の梁8側(
図1(a)では左側)を後方とし、左右側を側方とする。また、浴室を構成する壁2および天井3等について、浴室内側を表面側(内面側)とし、浴室の外側を裏面側(外面側)とする。
【0022】
壁2は、
図2(a)、(b)に示すように、鋼板から成る本体部14と、本体部14の裏面18に貼り付けられた補強および断熱のための石膏ボード15と、を備えている。壁2における、建物の梁8に対応する上部は、組立現場において、
図2(a)に示すように、斜めに切断され、傾斜面16が形成されている。
【0023】
壁2の上端は、
図2(b)に示すように、壁2の本体部14の表面17から裏面18に向かって折り返し部21が設けられている。この折り返し部21は、水平部22と、その先端側から表面17側に向け斜め下方に折り曲げたフック部23と、を備えている。なお、壁2の前端および後端についても、同様の折り返し部21が設けられている。
【0024】
平天井6は、
図3(a)に示すように、鋼板から成る平面視で矩形の本体部26と、本体部26の裏面に貼り付けられた補強および断熱のための石膏ボード27と、を備えている。
【0025】
本体部26の周囲には、
図3(b)、(c)に示すように、上方への立ち上がり部28が形成されている。立ち上がり部28の上端から内側への折り返し部29が形成され、さらに下方への折り曲げ部30が形成されている。
【0026】
斜め天井7は、
図4(a)に示すように、鋼板から成る本体部34と、本体部34の裏面に貼り付けられた補強および断熱のための石膏ボード35と、を備えている。斜め天井7の側端は、
図4(b)に示すように、上方への立ち上がり部36が形成されている。
【0027】
そして、立ち上がり部36の上端から内側に向けた折り返し部37が形成され、さらに下方への折り曲げ部38が形成されている。立ち上がり部36の前端側には、後記する結束バンド66を挿通するための結束バンド挿通孔39が形成されている。この結束バンド挿通孔39は、立ち上がり部36にではなく、折り返し部37に設けても良い。
【0028】
斜め天井7の後端には、
図4(c)に示すように、側端と同様に、上方への立ち上がり部36、折り返し部37および折り曲げ部38が形成されている。斜め天井7の前端は、
図4(a)、(d)に示すように、前端縁に沿って、鋼製の断面矩形のパイプから成る補強材40が、例えば両面接着テープで貼り付けられている。
【0029】
天井固定部材1は、鋼板を材料として、
図5に示すような形状で形成されており、その概要は、本体部としての垂直壁45を有し、壁固定部46と、平天井押さえ部47と、斜め天井固定部48と、を備えている。
【0030】
壁固定部46は、垂直壁45の下端の前部(前側半分程度の部分)52から内側方に水平に折り曲げられた水平部53と、水平部53の先端が垂直壁45に向け斜め上方に折り返されたフック状の壁引っ掛け部54と、を有する。垂直壁45の下端の後部(後側半分程度の部分)56には、壁固定部46は形成されていない。
【0031】
平天井押さえ部47は、垂直壁45の上端が内側方に水平に折り曲げられて形成されている。斜め天井固定部48は、垂直壁45の前後に、中央部61を挟んで形成された前部固定用孔62と後部固定用孔63を備えている。前部固定用孔62と後部固定用孔63は、それぞれ結束バンド66を通すことが可能であり、上下方向が長い長孔形状に形成されている。
【0032】
結束バンド66は、樹脂等の材料で形成され、その基端に形成された基端孔67に先端部69を挿通して結束ループ68を形成し、先端部69を引っ張って結束ループ68を縮めることで、結束ループ68内に物を結束する周知の構成のものを使用する。
【0033】
(取り付け工程、作用)
次に、天井固定部材1の構成をより明確にするために、天井固定部材1を使用して、浴室の壁2に、平天井6と斜め天井7を取り付ける取り付け構造を、その取り付け工程、作用とともに、以下説明する。
【0034】
壁2の傾斜面16上に斜め天井7を載置した状態で、
図6(a)に示すように、天井固定部材1を、その壁固定部46側から、壁2の折り返し部21と石膏ボード15との間に差し込む。
【0035】
そして、天井固定部材1を、
図6(b)に示すように、外側に回転しながら、壁固定部46の壁引っ掛け部54を、壁2の折り返し部21、より詳細にはそのフック部23に引っ掛けて、
図6(c)に示すような状態にする。
【0036】
天井固定部材1の下端の後部56には、前部52のように内側に突き出した壁固定部46が設けられていないので、天井固定部材1の後側の内面は、斜め天井7の前端における側部の立ち上がり部36に当接させることができる(
図6(c)、
図7(a)、(b)参照)。これによって、天井固定部材1は、平天井6と斜め天井7をまたぐ位置に設けられることとなる(
図7(a)、(b)参照)。
【0037】
この状態で、結束バンド66の先端部69を、後部固定用孔63から挿入して、斜め天井7の立ち上がり部36に形成された結束バンド挿通孔39に挿通し、さらに前部固定用孔62に挿通して外側に取り出し、結束バンド66の基端孔67に挿通して、結束バンド66の先端部69を引っ張って、
図7(a)、(b)に示すように、天井固定部材1と斜め天井7を結束して固定する。
【0038】
次に、平天井6を、
図8(a)に示すように、天井固定部材1の壁固定部46と壁2の折り返し部21との間に、滑り込ませるように差し込み、
図8(b)に示すように、平天井6を、壁2の折り返し部21上に載置する。
【0039】
これによって、平天井6は、天井固定部材1の壁固定部46と壁2の折り返し部21の間に挟持されることとなる。以上の工程によって、天井固定部材1を使用して、浴室の壁2に、平天井6と斜め天井7を取り付ける取り付け構造が完成する。
【0040】
以上のとおり、天井固定部材1を使用すれば、その壁引っ掛け部54を、壁2の上端の折り返し部21に引っ掛けて、平天井6をその壁固定部46と壁2の上端の折り返し部21の間に挟持し、しかも、結束バンド66で斜め天井7と壁2を結束することで、従来技術のように、両面接着テープや複数の固定部品等を使用せずに、壁2に、斜め天井7および平天井6を、きわめて簡単な作業で取り付けることができる。
【0041】
特に、天井固定部材1は、
図5に示すように、きわめて簡単な構造であるが、斜め天井7を結束バンド66で結束して壁2の傾斜面16上に取り付けることができ、しかも平天井6を壁固定部46と壁2の上端の折り返し部21の間に挟持して取り付けることができる、という複数の機能を一つの部材で発揮できるので、部材の点数が減らすことが可能となる。
【0042】
ところで、建物の梁8を回避するために壁2を切断して傾斜面16を形成するが、建物内における梁8の張り出し状態等の建物の構造に応じて、切断して形成する傾斜面16の傾斜角度は異なり、その結果、斜め天井7の取り付け角度も異なる。
【0043】
しかし、天井固定部材1を使用すれば、斜め天井7の取り付け角度がいろいろな角度であっても、斜め天井7および平天井6を取り付けることが可能である。
【0044】
特に、天井固定部材1に形成した前部固定用孔62および後部固定用孔63は、長孔形状に形成されているので、施工現場で切断して形成する傾斜面16の傾斜角度の異なり、或いは傾斜面の切断の際の加工のばらつき、等に起因する傾斜面16に対応する斜め天井7の取り付け角度がいろいろな角度となっても、結束バンド66による結束作業は、容易に行うことができる。
【0045】
また、壁2を切断して形成した傾斜面16に、従来技術のように、天井固定ピースを有する帯片を貼り付けるようなことをしないので、傾斜面16に切断の際に生じる多少の粗面があっても、影響を受けずに、斜め天井7を壁2に取り付けることが可能となる。
【0046】
以上、本発明に係る天井固定部材を実施するための形態を実施例に基づいて説明したが、本発明はこのような実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された技術的事項の範囲内でいろいろな実施例があることは言うまでもない。