(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
用水路からの水を圃場に給水する給水部と、前記圃場の水を排水路に排水する排水部と、前記圃場の水温を検知する圃場水温検知部と、前記圃場の水位を検知する圃場水位検知部と、時刻を検知する時刻検知部と、を備えた圃場水管理システムを用いた圃場水管理方法であって、
前記給水部及び前記排水部を停止させ、予め前記圃場に前記水を満たした状態で、前記時刻を検知情報として取得する工程と、
前記検知情報で取得された前記時刻が所定の時刻になった場合に、前記排水部による排水を開始する工程と、
前記圃場水位検知部で前記圃場の水位を検知し、前記圃場の水が全て排水されたと検知された時刻に、前記給水部による給水を開始する工程と、
を有し、
前記時刻検知部によって得られた前記時刻が、日没時刻になったときに、前記排水部を作動させて前記圃場の水を排水路に排水する、
圃場水管理方法。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を適用した実施形態である圃場水管理システム及び圃場水管理方法について、図面を参照して説明する。なお、以下の説明で用いる図面は模式的なものであり、長さ、幅、及び厚みの比率等は実際のものと同一とは限らず、適宜変更することができる。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態である圃場水管理システム1の概略図である。
圃場水管理システム1は、用水路ULからの水を圃場Hに給水する給水部2と、圃場Hの水を排水路DLに排水する排水部4と、圃場Hの水温を検知する圃場水温検知部6と、圃場Hの水位を検知する圃場水位検知部8と、時刻を検知する時刻検知部10と、圃場水温検知部6で検知した圃場Hの水温、圃場水位検知部8で検知した圃場Hの水位、及び時刻検知部で検知した時刻のうち少なくとも前記時刻の検知情報に基づいて、給水部2による給水の開始及び停止と、排水部4による排水の開始及び停止と、を制御する制御部20と、を備えている。さらに、圃場水管理システム1は、用水路ULの水圧を検知する用水路水圧検知部16と、用水路ULの水温を検知する用水路水温検知部18と、を備えている。
【0020】
用水路ULは、川等の水源から水を圃場Hに引く目的で設けられた水路であり、この目的を達成可能であれば、特に制限されない。
排水路DLは、圃場Hから排水された水を不図示の排水処理機構等に導く目的で設けられた水路であり、この目的を達成可能であれば、特に制限されない。
なお、用水路UL及び排水路DLはそれぞれ、用水管又は排水管であってもよい。
【0021】
給水部2は、用水路ULと圃場Hとの間に設けられ、本実施形態では給水栓12である。用水路ULと圃場Hとの間を開閉可能に構成されていれば、給水栓12の構成は特に制限されず、例えば、グローブ弁やゲート弁、ボール弁、バタフライ弁を具備しているバルブや、その他の種類のバルブ、これら以外の公知の給水栓と同様の構成を備えていてもよい。
給水栓12の設置数及び位置は、特に制限されない。給水栓12は、例えば、
図1に実線で例示するように、用水路ULの延在方向において圃場Hの略中央に一つ設けられていてもよく、二点鎖線で例示するように、用水路ULの延在方向において圃場Hの両側に一つずつ設けられていてもよく、圃場Hの面積や概形、圃場Hへの給水量等を考慮して適切な個数と位置に設けられていればよい。
【0022】
なお、給水部2は、用水路ULと圃場Hとの間を接続状態又は非接続状態に切り替え可能に構成されていれば、給水栓12以外の構成を備えていてもよく、その構成は限定されない。例えば、給水部2は、用水路ULと圃場Hとを接続する導水管と、用水路ULの水を該導水管の下流側に組み上げて圃場Hに供給するポンプと、を備えていてもよい。そして、ポンプによる組み上げ開始と組み上げ停止とが制御可能とされていればよい。
【0023】
排水部4は、圃場Hと排水路DLとの間に設けられ、本実施形態では排水栓14である。圃場Hと排水路DLとの間を開閉可能に構成されていれば、排水栓14の構成は特に制限されず、給水栓12と同様のバルブやその他の公知の排水栓と同様の構成を備えていてもよい。
排水栓14の設置数及び位置は、特に制限されない。排水栓14は、例えば、
図1に実線で例示するように、排水路DLの延在方向において圃場Hの略中央に一つ設けられていてもよく、二点鎖線で例示するように、排水路DLの延在方向において圃場Hの両側に一つずつ設けられていてもよく、圃場Hの面積や概形、圃場Hからの排水量等を考慮して適切な個数と位置に設けられていればよい。
【0024】
なお、排水部4は、圃場Hと排水路DLとの間を接続状態又は非接続状態に切り替え可能に構成されていれば、排水栓14以外の構成を備えていてもよく、その構成は限定されない。
【0025】
圃場水温検知部6は、圃場Hの水温センサであって、公知の水温計や水温センサと同様の構成を備えている。
圃場水温検知部6の設置数及び位置は、特に制限されない。圃場水温検知部6は、例えば、
図1に実線で例示するように、圃場Hの略中央に一つ設けられていてもよく、二点鎖線で例示するように、排水栓14の付近に設けられていてもよく、図示していないが、圃場H内において所定の間隔をあけて複数設けられていてもよい。要は、圃場水温検知部6は、圃場H全体の水温分布を効率良く検知できることが重要であって、使用する水温センサ等の装置の感度、圃場Hの面積や概形等を考慮して適切な個数と位置に設けられていればよい。
なお、排水栓14の付近に圃場水温検知部6は、圃水圧を検知する水圧検知部も兼ね備えていることが好ましい。これにより、排水栓14に流入する圃場Hの水圧を検知し、該水圧が所定の水圧でなければ、排水栓14を閉じる等の対策を講じることができ、排水栓14の破損、故障等を未然に防ぐことができる。
【0026】
圃場水位検知部8は、圃場Hの水位センサであって、公知の水位計や水位センサと同様の構成を備えている。例えば、圃場水位検知部8は、圃場Hの水が作物に好適な上限水位以上であることを検知可能なセンサ(以下、上限水位センサとする)と、圃場Hの水が作物の生育に必要な下限水位以上であることを検知可能なセンサ(以下、下限水位センサとする)と、を備えている。さらに、圃場水位検知部8は、圃場Hの水が作物にダメージを与え得る異常に高い水位(以下、異常高水位とする)以上であることを検知可能なセンサ(以下、異常高水位センサとする)も備えている。
圃場水位検知部8の設置数及び位置は、特に制限されない。圃場水位検知部8は、例えば、
図1に例示するように、圃場Hの四隅に一つずつ設けられていてもよく、図示していないが、圃場Hの略中央に設けられていてもよい。要は、圃場水位検知部8は、圃場H全体の水位分布を効率良く検知できることが重要であって、使用する水位センサ等の装置の感度、圃場Hの面積や概形等を考慮して適切な個数と位置に設けられていればよい。
【0027】
時刻検知部10は、時計やタイマー機能を有するものであって、特に制限されない。時刻検知部10の設置数及び位置も、時刻を検知可能であれば特に制限されない。
【0028】
用水路水圧検知部16は、用水路ULの水圧センサであって、公知の水圧計や水圧センサと同様の構成を備えている。
用水路水圧検知部16は、
図1に例示するように、給水部2に接する用水路ULの位置に設けられていることが好ましい。これにより、圃場Hに給水するために給水部2に導入される用水路ULの水圧が確実に検知される。
【0029】
用水路水温検知部18は、用水路ULの水温センサであって、公知の水温計や水温センサと同様の構成を備えている。
用水路水温検知部18の設置数及び位置は、用水路ULにおいて水が流れている部分に接触可能であれば、特に制限されない。用水路水温検知部18は、
図1に例示するように、用水路水圧検知部16の付近に設けられていてもよい。
【0030】
制御部20は、圃場水温検知部6で検知した圃場Hの水温、圃場水位検知部8で検知した圃場Hの水位、時刻検知部10で検知した時刻、用水路水圧検知部16で検知した用水路ULの水圧、及び、用水路水温検知部18で検知した用水路ULの水温を全て受信可能な情報機器であって、例えばコンピュータやタブレット端末等が挙げられるが、圃場Hの水温及び水位、時刻、用水路ULの水圧及び水温を確実に受信できれば、特に限定されない。
制御部20の設置数は、一つで充分であるが、圃場Hの水温及び水位、時刻、用水路ULの水圧及び水温を確実に受信できれば、特に制限されない。また、制御部20の位置は、
図1に例示するように、複数の圃場Hを含む領域内の一箇所であればよいが、特に限定されず、管理者が持ち運ぶ場合のように不定であってもよい。
【0031】
なお、圃場Hの水温及び水位、時刻、用水路ULの水圧及び水温を確実に検知できれば、上記説明した圃場水温検知部6、圃場水位検知部8、時刻検知部10、用水路水圧検知部16、用水路水温検知部18、及び、制御部20の何れか二以上が複合化され、その複合型検知部が圃場Hの面積や概形等を考慮して適切な個数と位置に設けられていてもよい。
また、上記説明した圃場水温検知部6、圃場水位検知部8、時刻検知部10、用水路水圧検知部16、用水路水温検知部18、及び、制御部20はそれぞれ、通信機能を有していてもよく、遠隔操作可能であってもよい。これにより、管理者は任意の場所から通信ネットワーク等を介して、これらの検知部を操作することができ、圃場水管理システム1を管理する負担が軽減される。
【0032】
以上説明した上記実施形態の圃場水管理システム1によれば、作物の生育等に大きく影響を与え得る圃場Hの環境(水温、水位)、時刻、及び、用水路ULの環境(水圧、水温)がそれぞれ、圃場水温検知部6、圃場水位検知部8、時刻検知部10、用水路水圧検知部16、用水路水温検知部18によって所望のタイミングで検出される。また、これらの検知情報のうち少なくとも時刻に基づき、制御部20によって、所望のタイミングで給水栓12の開閉による給水の開始及び停止と、排水栓14の開閉による排水の開始及び停止と、が制御され、自動管理される。従って、圃場Hの水温や水位等が作物の好適な生育環境になるように効率良く管理される。
【0033】
また、上記実施形態の圃場水管理システム1によれば、用水路水圧検知部16によって用水路ULの水圧が検知され、その検知情報を考慮して給水栓12の開閉、及び、排水栓14の開閉を行うことができる。従って、給水部2による給水の開始及び停止と、排水部4による排水の開始及び停止と、が自動的に管理される。このように管理されることで、用水路ULから高水圧の水が給水されることによる給水栓12の破損や作物へのダメージ発生等が未然に防止される。また、用水路ULから低水圧の水が給水される、又は水圧不足により水が給水されないことによる圃場Hへの給水不足、乾燥、これらによる作物へのダメージ等も未然に防止される。
【0034】
また、上記実施形態の圃場水管理システム1によれば、用水路水温検知部18によって用水路ULの水温が検知され、その検知情報を考慮して給水栓12の開閉、及び、排水栓14の開閉を行うことができる。従って、給水部2による給水の開始及び停止と、排水部4による排水の開始及び停止と、が自動的に管理される。このように管理されることで、用水路ULから作物に好適な所定の温度より高温又は低温の水が給水されることによる給水栓12の動作不良や作物へのダメージ等が未然に防止される。
【0035】
次いで、本発明を適用した圃場水管理方法について、説明する。
以下の圃場水管理方法は、上述した圃場水管理システム1を用いた圃場水管理方法であって、圃場Hの水温、圃場Hの水位、及び、時刻の少なくとも一つを検知して検知情報を取得する工程と、前記検知情報に基づいて、排水部4による排水の開始及び停止を制御する工程と、前記検知情報に基づいて、給水部2による給水の開始及び停止を制御する工程と、を有する。
【0036】
(第一実施形態)
先ず、本発明を適用した第一実施形態の圃場水管理方法について説明する。
図2は第一実施形態の圃場水管理方法を説明するためのチャートである。
図2 に示すように、第一実施形態の圃場水管理方法では、日中、即ち、時刻検知部10によって日没時刻
(所定の時刻)を検知するとき(タイミングT1)より前は、給水部2の給水栓12及び排水部4の排水栓14は閉じておく。圃場Hには、予め作物の生育等に好適な上限水位の水が満たされ、圃場水位検知部8 の上限水位センサ及び下限水位センサが共にONになっており、圃場Hの水位は「高」である。また、太陽光が照射されれば圃場Hの水が温められるので、圃場Hの水温は「高」である。なお、下限水位は、圃場Hの水が全て排水された状態、即ち地面の高さとする。
【0037】
日没時刻になったタイミングT1に、時刻検知部10から制御部20に日没時刻を検知したことを知らせる信号S1(図示略)が送信される。制御部20は信号S1を受信すると、排水栓14を開け、圃場Hの水を排水路DLに排水する。このとき、給水栓12は閉じたままである。これにより、圃場Hの水位が減少し(即ち、「高」から「低」に変化し)、上限水位より低く、且つ下限水位以上となるため、圃場水位検知部8の上限水位センサがONからOFFになり、下限水位センサはONのままである。
但し、用水路水圧検知部16によって用水路ULの水が圃場Hへの給水に好適な所定の水圧ではないこと、及び、用水路水温検知部18によって用水路ULの水が日没時刻後の作物に好適な所定の水温ではないこと、の少なくとも一方が検知されたときは、制御部20によって、排水栓14を一旦閉じ、圃場Hの水を確保する。そして、用水路水圧検知部16によって用水路の水が所定の水圧であること、及び、用水路水温検知部18によって用水路の水が所定の水温であることが検知されたとき、制御部20によって、再び排水栓14を開ける。
【0038】
圃場Hの水が全て排水されたタイミングT2に、圃場水位検知部8の下限水位センサがONからOFFになり、圃場水位検知部8から制御部20に圃場Hの水が下限水位に達したことを知らせる信号S2(図示略)が送信される。制御部20は信号S2を受信すると、排水栓14を閉じ、用水路水圧検知部16によって用水路の水が所定の水圧であること、及び、用水路水温検知部18によって用水路の水が所定の水温であることが検知されていることを確認したうえで、給水栓12を開け、用水路ULの水を圃場Hへと速やかに給水する。これにより、圃場Hの水位が増加し(即ち、「低」から「高」に変化し)、下限水位より高く、且つ上限水位以下となるため、圃場水位検知部8の上限水位センサはOFFのままで、下限水位センサがOFFからONになる。また、用水路の水が圃場Hに導入されることで、圃場Hの水温は「高」から「低」に変化する。
【0039】
圃場Hの水が上限水位に達すると、圃場水位検知部8の上限水位センサがONになる。このように、圃場Hの水が上限水位に達したタイミングT3に、圃場水位検知部8から制御部20に圃場Hの水が上限水位に達したことを知らせる信号S3(図示略)が送信される。制御部20は信号S3を受信すると、排水栓14を閉じる。これにより、圃場Hの水は、作物に好適な所定の水温及び水位となる。図示していないが、日の出後には、例えば時刻検知部10によって次の日没時刻を検知するまでに、日照条件や天候に応じて、圃場Hの水温と水位が変化する。
以後は、タイミングT1からタイミングT3までの動作を繰り返す。
【0040】
以上説明したように、第一実施形態の圃場水管理方法によれば、作物の生育等に影響を与える圃場Hの水温、圃場Hの水位、及び、時刻をそれぞれ圃場水温検知部6、圃場水位検知部8、及び、時刻検知部10によって所望のタイミングで検出し、これらの検知情報のうち少なくとも時刻に基づき、制御部20によって、所望のタイミングで給水栓12の開閉による給水の開始及び停止と、排水栓14の開閉による排水の開始及び停止と、を制御し、自動管理することができる。従って、圃場Hの水を作物に好適な水温及び水位にし、作物の生育特性に合わせて、排水栓14を開け、圃場Hの水を排水路DLに排水するので、日没時刻前に温められた水を圃場Hから除去して、給水を行う準備を行うことができる。
【0041】
また、第一実施形態の圃場水管理方法によれば、用水路水圧検知部16によって用水路ULの水が所定の水圧であることを検知したときに、排水部4による排水を開始又は停止し、給水部2による給水を開始又は停止するので、例えば用水路ULの水が所定の水圧であることを検知している間に、即ち用水路ULの水が所定の水圧であることを確認したうえで、給水栓12を開けて給水を行うことができる。これにより、圃場Hへの過剰給水又は給水不足、作物へのダメージ、給水栓12の破損等を未然に防ぐことができる。
【0042】
また、第一実施形態の圃場水管理方法によれば、用水路水温検知部18によって用水路ULの水が所定の水温であることを検知したときに、排水部4による排水を開始又は停止し、給水部2による給水を開始又は停止するので、例えば用水路ULの水が所定の水温であることを検知している間に、即ち用水路ULの水が所定の水温であることを確認したうえで、給水栓12を開けて給水部2による給水を行うことができる。これにより、例えば稲のように日没時刻後の水温が高すぎることによって生じる高温障害や、低すぎることによって生じる冷温障害等が懸念される場合であっても、圃場Hに稲等の作物に好適な所定の水温の水を確実に給水することができる。これにより、作物の高温障害や冷温障害の発生等を未然に防ぐことができる。
【0043】
(第二実施形態)
次いで、本発明を適用した第二実施形態の圃場水管理方法について説明する。第二実施形態の圃場水管理方法は、第一実施形態の圃場水管理方法と同様に、時刻検知部10によって時刻を管理した状態における管理方法である。
図3は第二実施形態の圃場水管理方法を説明するためのチャートである。
【0044】
通常、給水栓12及び排水栓14は閉めているので、例えば暴雨等が発生すると、圃場Hに水が供給され、圃場Hの水位が上限水位よりさらに高くなる(即ち、「高」から「異常高」に変化する)。
図3に示すように、第二実施形態の圃場水管理方法では、圃場Hの水が異常高水位になったタイミングT4に、圃場水位検知部8の異常高水位センサがOFFからONになり、圃場水位検知部8から制御部20に圃場Hの水が異常高水位になったことを検知したことを知らせる信号S4(図示略)が送信される。なお、この際に圃場水位検知部8の上限水位センサはONであり、図示していないが圃場水位検知部8の下限水位センサもONである。
制御部20は信号S4を受信すると、排水栓14を開け、圃場Hの水を排水路DLに排水する。このとき、給水栓12は閉じたままである。これにより、圃場Hの水位が減少し(即ち、「異常高」から「高」に変化し)、異常高水位より低く、且つ上限水位以上となるため、圃場水位検知部8の異常高水位センサがONからOFFになる。
【0045】
圃場Hの水が上限水位に達してから、上限水位から僅かに低くなると、圃場水位検知部8の上限水位センサが瞬時にONからOFFになる。このように、圃場Hの水が上限水位に達したタイミングT5に、圃場水位検知部8の上限水位センサから制御部20に圃場Hの水が上限水位に達したことを知らせる信号S5(図示略)が送信される。制御部20は信号S5を受信すると、排水栓14を閉じる。これにより、圃場Hの水は、作物に好適な所定の水温及び水位となる。
以後は、タイミングT4が発生しない限り、タイミングT5以降の状態を保持する。
【0046】
以上説明したように、第二実施形態の圃場水管理方法では、圃場水位検知部8の上限水位センサによって圃場Hの水が所定の上限水位より高くなったことを検知したときに、排水栓14を開けて圃場Hの水を排水路DLに排水し、圃場水位検知部8の下限水位センサによって圃場Hの水が所定の下限水位になったことを検知したときに、排水栓14を閉めて排水を停止させる。また、圃場水位検知部8の下限水位センサによって圃場Hの水が所定の下限水位より低くなったことを検知したときに、給水栓12を開けて用水路ULの水を圃場Hに給水し、圃場水位検知部8の上限水位センサによって圃場Hの水が所定の上限水位になったことを検知したときに、給水栓12を閉めて給水を停止させる。
上記圃場水管理方法によれば、時刻を検知したうえで、圃場Hの水が所定の上限水位より高くなった場合であっても、圃場Hの水が所定の上限水位以下になったことを検知するまで圃場Hの水を自動的に排水する。また、圃場Hの水が所定の下限水位より低くなった場合であっても、圃場Hの水が所定の下限水位以上になったことを検知するまで圃場Hに水を自動的に給水する。このようにして、圃場Hの水を所定の上限水位以下、且つ下限水位に効率良く維持することができる。
【0047】
また、第二実施形態の圃場水管理方法では、圃場水位検知部8の異常高水位センサによって圃場Hの水が所定の異常高水位に達したことを検知したときに、排水栓14を開けることで排水部4を作動させて圃場Hの水を排水路DLに排水し、圃場水位検知部8の上限水位センサによって圃場Hの水が所定の上限水位に達したことを検知したときに、排水栓14を閉じることで排水部4による排水を停止させる。
上記圃場水管理システムによれば、例えば暴雨等で圃場Hの水位が所定の異常高水位より高くなった場合であっても、その状態を圃場水位検知部8で検知し、圃場Hの水位が所定の上限水位以下になったことを検知するまで圃場Hの水を自動的且つ速やかに排水する。このようにして、圃場Hの水を所定の上限水位以下に効率良く維持するとともに、圃場Hの水が異常高水位に達することによる作物へのダメージを未然に防ぐことができる。
【0048】
(第三実施形態)
次いで、本発明を適用した第三実施形態の圃場水管理方法について説明する。
図4は第三実施形態の圃場水管理方法を説明するためのチャートである。
図4に示すように、第三実施形態の圃場水管理方法では、時刻と、圃場水位検知部8の上限水位センサ及び下限水位センサのON/OFFによって、給水部2による給水の開始及び停止と、排水部4による排水の開始と停止と、を制御する。
【0049】
通常、給水栓12及び排水栓14は閉じている。
日没時刻になったタイミングT6に、時刻検知部10から制御部20に日没時刻を検知したことを知らせる信号S6(図示略)が送信される。制御部20は信号S6を受信すると、排水栓14を開け、圃場Hの水を排水路DLに排水する。このとき、給水栓12は閉じたままである。これにより、第一実施形態の圃場水管理方法と同様に、圃場Hの水位が減少し、上限水位より低く、且つ下限水位以上となるため、圃場水位検知部8の上限水位センサがONからOFFになり、下限水位センサはONのままである。
なお、第一実施形態の圃場水管理方法と同様に、用水路水圧検知部16及び用水路水温検知部18の検知情報を考慮して、排水栓14の開閉を行ってもよい。
【0050】
圃場Hの水が全て排水されたタイミングT7に、圃場水位検知部8の下限水位センサがONからOFFになり、圃場水位検知部8から制御部20に圃場Hの水が下限水位に達したことを知らせる信号S7(図示略)が送信される。制御部20は信号S7を受信すると、排水栓14を閉じる。
上記のように排水栓14を閉じたときを含めて何らかの要因から排水栓14が閉まったタイミングT8に、排水部4から何らかの形で制御部20に排水部4の排水栓14が閉じたことを知らせる信号S8(図示略)が送信される。
制御部20は信号S7又は信号S8の何れかを受信すると、給水栓12を開け、用水路ULの水を圃場Hへと速やかに給水する。これにより、圃場Hの水位が増加し、下限水位より高く、且つ上限水位以下となるため、圃場水位検知部8の上限水位センサはOFFのままで、下限水位センサがOFFからONになる。
【0051】
圃場Hの水が上限水位に達すると、圃場水位検知部8の上限水位センサがOFFからONになる。このように、圃場Hの水が上限水位に達したタイミングT9に、圃場水位検知部8から制御部20に圃場Hの水が上限水位に達したことを知らせる信号S9(図示略)が送信される。制御部20は信号S9を受信すると、給水部2の給水栓12を閉じる。これにより、圃場Hの水は、作物に好適な水位となる。
以後は、タイミングT6からタイミングT9までの動作を繰り返す。
【0052】
以上説明したように、第三実施形態の圃場水管理方法によれば、作物の生育等に影響を与える圃場Hの水位と、時刻をそれぞれ圃場水位検知部8の上限水位センサと下限水位センサ、及び、時刻検知部10によって所望のタイミングで検出し、これらの検知情報の少なくとも一つに基づき、制御部20によって、所望のタイミングで給水栓12の開閉による給水の開始及び停止と、排水栓14の開閉による排水の開始及び停止と、を制御し、自動管理することができる。さらに、給水栓12の開閉による給水の開始及び停止は、排水栓14の開閉による排水の開始及び停止に応じても自動管理することができる。従って、圃場Hの水を作物に好適な水温及び水位にし、作物の生育特性に合わせて、圃場Hの状態を効率良く管理することができる。
【0053】
また、第三実施形態の圃場水管理方法によれば、圃場Hの水が所定の上限水位より高くなった場合は圃場Hの水を自動的に排水し、圃場Hの水が所定の下限水位より低くなった場合は圃場Hに水を自動的に給水する。このようにして、圃場Hの水を所定の上限水位以下、且つ下限水位に効率良く維持することができる。
【0054】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0055】
例えば、圃場水温検知部6及び用水路水温検知部18の検知情報を考慮して、給水栓12の開閉及び排水栓14の開閉を行ってもよい。具体的には、作物の生育等にとって、圃場Hの水が用水路の水のように比較的低い水温であることが好適である場合は、制御部20において同じタイミングで圃場水温検知部6及び用水路水温検知部18によって検知された圃場Hの水温と用水路ULの水温との差を算出し、この水温差が所定値を超えた場合に、先ず排水栓14を開けることで圃場Hの水を排水路DLに排水し、その後排水栓14を閉めて給水栓12を開けることで用水路ULの水を圃場Hに給水することができる。
また、上記構成によって圃場Hの水温と用水路ULの水温との差を算出すれば、例えば第一実施形態の圃場水管理方法において、日中が雨や曇り等であることによって圃場Hの水温がタイミングT1において「高」ではない場合には、圃場Hの水温と用水路ULの水温との差が小さくなるので、それに応じて排水部4による排水の開始及び停止を行わずに済む。このようにして、圃場Hの水を作物に好適な水温にし、作物の生育特性に合わせて、圃場Hの状態をより効率良く管理することができる。
【0056】
さらに、圃場水管理システム1は、圃場水温検知部6、圃場水位検知部8、時刻検知部10、用水路水圧検知部16、用水路水温検知部18に加えて、作物の生育等に重要な要素やパラメータを検知可能な検知部等を備えていてもよい。例えば、圃場水管理システム1が、所定の水温より高い、或いは低い場合に発生し易い特定の色素を検知できる圃場水色素検知部を備えていれば、圃場Hの水が濁ったことや着色したことを検知し、その検知情報に応じて制御部20が排水栓14を開けることで圃場Hの水を排水路DLに排水し、その後排水栓14を閉めて給水栓12を開けることで用水路ULの水を圃場Hに給水し、該色素や着色の原因を除去することができる。また、例えば、圃場水管理システム1が、定の水温より高い、或いは低い場合に発生し易い特定の微生物を検知できる微生物検知部を備えていれば、圃場Hの水に何らかの原因で該微生物が大量発生したことを検知し、その検知情報に応じて制御部20が排水栓14を開けることで圃場Hの水を排水路DLに排水し、その後排水栓14を閉めて給水栓12を開けることで用水路ULの水を圃場Hに給水し、該微生物を除去することができる。