特許第6613092号(P6613092)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6613092
(24)【登録日】2019年11月8日
(45)【発行日】2019年11月27日
(54)【発明の名称】鞍乗型車両
(51)【国際特許分類】
   B62J 99/00 20090101AFI20191118BHJP
   B62M 7/02 20060101ALI20191118BHJP
【FI】
   B62J99/00 J
   B62J99/00 G
   B62M7/02 Z
【請求項の数】7
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-190002(P2015-190002)
(22)【出願日】2015年9月28日
(65)【公開番号】特開2017-65307(P2017-65307A)
(43)【公開日】2017年4月6日
【審査請求日】2018年4月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】東 誠治
(72)【発明者】
【氏名】吉田 敦哉
(72)【発明者】
【氏名】西田 幸司
【審査官】 米澤 篤
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−310764(JP,A)
【文献】 特開2006−283619(JP,A)
【文献】 特開2014−69696(JP,A)
【文献】 特開2015−45244(JP,A)
【文献】 特開2012−171410(JP,A)
【文献】 特開2011−31717(JP,A)
【文献】 特開2010−228676(JP,A)
【文献】 特開2006−151239(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第2554467(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62J 99/00
B62M 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前輪及び後輪と、
前記前輪と前記後輪との間に配置されるエンジンと、
燃料タンクと、
前記エンジンの上方に配置されるエアクリーナボックスと、
前記エアクリーナボックスの底壁面よりも上方で前記エアクリーナボックスの周囲に配置される車体挙動センサと、を備え
車体上方から見て、前記車体挙動センサが、前記燃料タンクに隠れた位置に配置されている、鞍乗型車両。
【請求項2】
前記エアクリーナボックスの前記車体挙動センサと対向する位置に配置されたプレート材を更に備える、請求項1に記載の鞍乗型車両。
【請求項3】
前記エアクリーナボックスは、その外壁面に前記車体挙動センサの少なくとも一部が収容される凹部が形成され、
前記プレート材が、前記凹部の内部に配置されている、請求項2に記載の鞍乗型車両。
【請求項4】
前記エアクリーナボックスの前部には、吸気口が形成され、
前記エアクリーナボックスの後部には、排気口が形成され、
前記エアクリーナボックスの上壁面は、後方に進むにつれて上向きに傾斜する第1傾斜面部と、前記第1傾斜面部の後方に位置して、後方に進むにつれて下向きに傾斜する第2傾斜面部とが形成され、
前記車体挙動センサが、前記第2傾斜面部に配置されている、請求項1乃至のいずれか1項に記載の鞍乗型車両。
【請求項5】
前輪及び後輪と、
前記前輪と前記後輪との間に配置されるエンジンと、
前記エンジンの上方に配置されるエアクリーナボックスと、
前記エアクリーナボックスの底壁面よりも上方で前記エアクリーナボックスの周囲に配置される車体挙動センサと、を備え、
前記エアクリーナボックスの前部には、吸気口が形成され、
前記エアクリーナボックスの後部には、排気口が形成され、
前記エアクリーナボックスの上壁面には、後方に進むにつれて上向きに傾斜する第1傾斜面部と、前記第1傾斜面部の後方に位置して、後方に進むにつれて下向きに傾斜する第2傾斜面部とが形成され、
前記車体挙動センサが、前記第2傾斜面部に配置されている、鞍乗型車両。
【請求項6】
前輪及び後輪と、
前記前輪と前記後輪との間に配置されるエンジンと、
燃料タンクと、
前記エンジンの上方に設けられる車両装備品と、
前記車両装備品の底壁面よりも上方に配置される車体挙動センサと、を備え、
車体上方から見て、前記車体挙動センサが、前記燃料タンクに隠れた位置に配置されている、鞍乗型車両。
【請求項7】
前記車体挙動センサの前端が、前記燃料タンクの前端よりも後方に位置している、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の鞍乗型車両
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鞍乗型車両に関し、特に車体挙動センサを備える鞍乗型車両に関する。
【背景技術】
【0002】
自動二輪車等の鞍乗型車両には、走行中の車体挙動を検出する車体挙動センサが搭載される場合がある。例えば、車体挙動センサの一種であるジャイロセンサが、車体のヘッドパイプ付近に配置されている構成(例えば、特許文献1参照)、又は運転者が着座するシート下方の空間に配置されている構成等が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5319357号公報
【特許文献2】特許第4489567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1及び2に示すジャイロセンサはいずれも、エンジンから離れた位置に配置されているため、エンジン付近に車体重心が位置する場合、当該車体重心における車体挙動とセンサが検出する車体挙動にずれが生じてしまう。また、車体挙動センサをエンジンに近づけて配置しようとすると、エンジンの熱気に対する耐熱性が当該センサに必要となる。
【0005】
そこで本発明は、鞍乗型車両において、耐熱性を確保しつつ、車体重心位置における車体挙動に近い出力信号を得ることが可能な好適なセンサレイアウトを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態に係る鞍乗型車両は、前輪及び後輪と、前記前輪と前記後輪との間に配置されるエンジンと、前記エンジンの上方に配置されるエアクリーナボックスと、前記エアクリーナボックスの下面よりも上方で前記エアクリーナボックスの周囲に配置される車体挙動センサと、を備える。
【0007】
前記構成によれば、エアクリーナボックスの底壁面によって、エンジンの熱気が上方へと通流することが抑制されることで、車体挙動センサの温度上昇を防ぎつつ、当該センサが車体重心位置に近いエアクリーナボックスの周囲に配置されることで、車体重心位置における車体挙動に対してずれが少ない車体挙動を信号として出力することができる。したがって、耐熱性を確保しつつ、車体重心位置における車体挙動に近い出力信号を得ることが可能なセンサレイアウトを提供することができる。
【0008】
前記形態において、前記エアクリーナボックスの少なくとも一部は、前記車体挙動センサと前記エンジンとを結ぶ直線上に配置されてもよい。
【0009】
前記構成によれば、エアクリーナボックスによってエンジンの熱気が車体挙動センサへと到達するのを防ぐことができる。
【0010】
前記形態において、前記車体挙動センサは、前記エアクリーナボックスに取り付けられて支持されてもよい。
【0011】
前記構成によれば、車体フレームに車体挙動センサが固定される構成と比較して、エンジンの振動に起因する振幅が当該センサに伝わるのを防いで、車体重心位置における車体挙動に近い出力信号を得ることができる。
【0012】
前記形態において、前記エアクリーナボックスは、前記車体挙動センサを支持する支持面の厚み方向の振動を抑制する補強構造を有してもよい。
【0013】
エンジンの吸気行程において、ピストンの昇降運動によって生じる空気の吸入圧がエアクリーナボックスに伝達されるが、当該吸入圧はエンジンの吸気弁が閉じると遮断され、エアクリーナボックスからエンジンに向けて流れる空気に脈動が生じる。エアクリーナボックスの内部空間において吸気脈動が発生すると、当該エアクリーナボックスに固定された車体挙動センサに伝達する可能性がある。前記構成によれば、エアクリーナボックスに補強構造が設けられることによって、吸気脈動が発生することに起因してエアクリーナボックスの支持面が振動するのを防ぐことができ、当該吸気脈動が車体挙動センサに与える影響を低減することができる。
【0014】
前記形態において、前記エアクリーナボックスは、その外壁面に前記車体挙動センサの少なくとも一部が収容される凹部が形成されてもよい。
【0015】
前記構成によれば、車体挙動センサをエアクリーナボックスに取り付けて支持する場合に、他部品のレイアウトに関する自由度を維持しつつ、当該センサを配置することができる。例えば、燃料タンクとエアクリーナボックスとの間に車体挙動センサが配置される場合、燃料タンクの容量を確保しながら、燃料タンクと車体挙動センサとの干渉を防ぐことができる。また、燃料タンクと車体フレームとの間の空間を側面視で覆うカバー部材に対して車幅方向にエアクリーナボックスが対向し、カバー部材とエアクリーナボックスとの間に車体挙動センサが配置される場合に、当該カバー部材の車幅方向外側への膨らみを防ぎつつ、カバー部材と車体挙動センサとの干渉も防ぐことができる。
【0016】
前記形態において、前記エアクリーナボックスの上方に配置される燃料タンクを更に備え、前記車体挙動センサは、前記燃料タンクと前記エアクリーナボックスとの間に配置されてもよい。
【0017】
前記構成によれば、第三者が車体挙動センサにアクセスしにくくなり、当該第三者によって車体挙動センサが不所望に着脱されるのを防止することができる。
【0018】
前記形態において、前記車体挙動センサは、前記エアクリーナボックスの側壁面に配置されてもよい。
【0019】
前記構成によれば、車体挙動センサが上下方向において他部品と干渉するのを防止することができる。
【0020】
前記形態において、前記車体挙動センサの少なくとも一部は、前記エアクリーナボックスと前記エンジンとを接続する吸気接続路と前後方向位置が同じであってもよい。
【0021】
前記構成によれば、車体重心位置であるエンジンのスロットルボディ周辺に車体挙動センサセンサを配置することができ、当該車体重心位置における車体挙動により近い出力信号を得ることができる。
【0022】
本発明の一形態に係る鞍乗型車両は、前輪及び後輪と、前記前輪と前記後輪との間に配置されるエンジンと、前記エンジンの上方に設けられる車両装備品と、前記車両装備品の底壁面よりも上方に配置される車体挙動センサと、を備える。
【0023】
前記構成によれば、車両装備品の底壁面によって、エンジンの熱気が上方へと通流することが抑制されることで、車体挙動センサの温度上昇を防ぎつつ、当該センサが車体重心位置に近いエンジンの周辺に配置されることで、車体重心位置における車体挙動に近い出力信号を得ることができる。ことができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、鞍乗型車両において、耐熱性を確保しつつ、車体重心位置での車体挙動に近い出力信号を得ることが可能なセンサレイアウトを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、第1実施形態に係る鞍乗型車両の一例である自動二輪車の左側面図である。
図2図2は、図1に示すエアクリーナボックス周辺の拡大斜視図である。
図3図3は、図1に示すエアクリーナボックス及びその近傍を車体挙動センサを通る面で切断した側方から見た断面図である。
図4図4は、図1に示すエアクリーナボックスの平面図である。
図5図5は、図4に示すV-V線断面図である。
図6図6は、第2実施形態に係る鞍乗型車両の一例である自動二輪車に設けられたエアクリーナボックスの左側面図である。
図7図7は、第2実施形態に係るエアクリーナボックス周辺の背面図である。
図8図8は、第3実施形態に係る鞍乗型車両の一例である自動二輪車に設けられたエアクリーナボックスの図3相当の図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照しながら実施形態について説明する。なお、同一の又は対応する要素には全ての図を通じて同一の符号を付して重複する詳細説明を省略する。以下の説明における方向の概念は、自動二輪車に搭乗した運転者が見る方向を基準としている。なお、車幅方向は左右方向に相当する。
【0027】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る自動二輪車1の左側面図である。図1に示すように、自動二輪車1は、前輪2と、後輪3と、前輪2と後輪3との間に配置される車体フレーム4とを備える。前輪2は、略上下方向に延びるフロントフォーク5の下端部にて回転可能に接続されている。フロントフォーク5の上端部は左右方向に延びるハンドル6がステアリングシャフト(図示せず)を介して取り付けられている。後輪3は、スイングアーム7を介して車体フレーム4に支持されている。車体フレーム4は、ヘッドパイプ8と、ヘッドパイプ8から後方に延びる前側フレーム9、前側フレーム9の後端から後方に延びる後側フレーム(図示せず)とを有している。
【0028】
前輪2と後輪3との間で前側フレーム9の下方にはエンジンEが配置されている。本実施形態では、エンジンEは4サイクル並列4気筒のエンジンであり、4つのシリンダが左右方向に並んでいる。また、エンジンEは、車体11の前後方向に延びる車体中心線L0と平面視で重なるように配置されている。エンジンEの上方には、エアクリーナボックス(車両装備品)20が配置されている。エアクリーナボックス20は、スロットルボディ14を介してエンジンEに接続されている。
【0029】
ここで、本実施形態の自動二輪車1では、車体重心位置Gが、前後輪の間でシート19の前方に設定されている。また、エンジンEが前後輪の間で、かつ、スイングアーム7よりも前方に配置される場合、例えば、車体重心位置Gは、エンジンEのシリンダの後部付近に設定される。本実施形態では、車体重心位置Gはスロットルボディ14付近、具体的にはスロットルボディ14のやや後方に設定されている。
【0030】
エアクリーナボックス20には、外部から空気を導くエアダクト(図示せず)が接続されている。エアダクトを介して進入した空気は、エアクリーナボックス20のエアクリーナエレメント41でろ過されて、清浄な空気となってエンジンEに吸入される。このように、エアクリーナボックス20の内部空間には、エンジンEに吸入される空気が流れる空気層Aが形成される。そして、エアクリーナボックス20は、自動二輪車1においてエンジンEへの吸入空気を清浄にするという機能を有する車両機能部品である。
【0031】
エアクリーナボックス20の上方には燃料タンク12が設けられている。上下方向において燃料タンク12と前側フレーム9との間にはカバー部材13が設けられており、当該カバー部材13によって、燃料タンク12と前側フレーム9との間の空間が覆われている。そして、エンジンEと燃料タンク12とを結ぶ直線上にエアクリーナボックス20の後部が配置されている。エアクリーナボックス20の外壁面には、車体挙動センサ10が取り付けられて支持されている。本実施形態では、エアクリーナボックス20の外壁面のうち、上壁面S1に車体挙動センサ10が取り付けられているため、当該上壁面S1は車体挙動センサ10を支持する支持面である。
【0032】
車体挙動センサ10は、自動二輪車1の車体挙動(車体11の動き)を検出するためのセンサである。車体挙動センサ10は、センサ取付部分における物理的な運動又はセンサ取付部分に付与される外力のいずれかを検出してもよい。物理的な運動として、前後軸、上下軸、左右軸いずれかの軸方向における位置の時間変化(速度、加速度)又は前後軸、上下軸、左右軸いずれかの軸回りの位置の時間変化(角速度、角加速度)が挙げられる。車体挙動センサ10は、これらの時間変化のうち少なくとも1つを物理的な運動として検出してもよい。また、車体挙動センサ10は、重力成分、慣性力成分および遠心力成分のいずれかを含む力を外力として検出してもよい。更に、車体挙動センサ10は、車体11の位置の時間変化又は車体姿勢の時間変化に限らず、車体11の位置自体又は車体姿勢自体を検出してもよい。
【0033】
本実施形態では、車体挙動センサ10は、角速度センサの一種であるジャイロセンサである。ジャイロセンサ10は、走行中における車体姿勢を検出するために用いられる。後に詳述するように、本実施形態のジャイロセンサ10は、車体11の前後方向に延びる軸線(ロール軸)周り及び車体11の上下方向に延びる軸線(ヨーイング軸)周りの角速度を検出する。ジャイロセンサ10の検出結果に基づき、演算装置によって、車体11に設定される軸の傾斜角度(車体姿勢)を算出することができる。 自動二輪車1には、ブレーキの液圧を車両状態に応じて自動的に増減圧するABS(Anti-Lock Brake System)装置が搭載されており、ジャイロセンサ10は、当該ABSを制御するABS制御装置15(図4参照)にセンサハーネス16を介して電気的に接続されている。例えば、ABS制御装置15は、ジャイロセンサ10によって検出された車体姿勢に応じて自動二輪車1が旋回走行中であると判定すると、車輪に対して適切なブレーキの液圧を設定して、旋回走行時における車輪のロックを回避する。
【0034】
また、ジャイロセンサ10は、エンジンECU50(図4参照)にも接続されている。エンジンECU50は、ジャイロセンサ10によって検出された車体姿勢に応じてエンジンEの点火時期、インジェクタ21,22(図3参照)による燃料噴射量等を制御することで、走行状態に適したエンジン出力の制御を行う。
【0035】
図2は、図1に示すエアクリーナボックス20周辺の拡大斜視図である。図3は、図1に示すエアクリーナボックス20及びその近傍をジャイロセンサ10を通る面で切断した側方から見た断面図である。図4は、図1に示すエアクリーナボックス20の平面図である。図5は、図4に示すV-V線断面図である。以下では、図2図5を適宜参照しながら、エアクリーナボックス20の形状及び構成、ジャイロセンサ10がエアクリーナボックス20に固定されている構造について具体的に説明する。
【0036】
図2及び3に示すように、エアクリーナボックス20は、上側ケース30と下側ケース40とが複数の締結部材51で締結されることによって構成されている。上側ケース30及び下側ケース40はいずれも樹脂材料によって形成されている。エアクリーナボックス20(の下側ケース40)の前端部20aは、車体フレーム4の前側フレーム9に第1弾性部材(例えば、ゴムブッシュ)17を介して支持されている。他方、後端部20bは、第2弾性部材(例えば、ゴムブッシュ)18を介してスロットルボディ14に支持されている。このように、エアクリーナボックス20は、車体フレーム4及びスロットルボディ14にそれぞれラバーマウントにより支持されている。
【0037】
エアクリーナボックス20のうち下側ケース40の前部には、吸気口40aが前方に向けて形成されている。また、下側ケース40の後部には、スロットルボディ14と連通する排気口40bが形成されている。また、エアクリーナボックス20の上壁面S1において、その後部には車幅方向に延びる燃料供給管23が複数の締結部材(例えば、ボルト及びナット)24によって固定されている。燃料供給管23は図示しないパイプを介して燃料タンク12に接続されており、上流側インジェクタ21に燃料を供給する。上流側インジェクタ21は各気筒に対して個別に設けられており、本実施形態では、4つの上流側インジェクタ21が車幅方向に並んでいる(図4参照)。
【0038】
上流側インジェクタ21は、インジェクタコネクタ21aと、燃料噴射部21bとを有している。インジェクタコネクタ21aはインジェクタハーネス25を介してエンジンECU50に接続されている。先端に噴射口21cが形成されている燃料噴射部21bは、エアクリーナボックス20の上壁面S1を貫通し、エアクリーナボックス20の内部空間に設けられている。即ち、上流側インジェクタ21はエンジンECU50によって制御されて、エアクリーナボックス20の内部空間に燃料を噴射する。これにより、エアクリーナボックス20の内部空間では、清浄化された空気と上流側インジェクタ21から噴射される燃料とが混合されて混合気となり、その混合気がガイド部材35を介してスロットルボディ14へと流れる。
【0039】
スロットルボディ14は、エンジンEの燃焼室と連通する内部通路が形成された通路部14aを有している。このように、エアクリーナボックス20がスロットルボディ14を介してエンジンEに接続されることで、エアクリーナボックス20とエンジンEの燃焼室とを接続する吸気接続路Pが形成される。ここで、吸気接続路Pは、スロットルボディ14の通路部14aに形成された内部通路のことである。また、スロットルボディ14の通路部14aには、下流側インジェクタ22が固定されている。下流側インジェクタ22は、燃料供給管23から供給された燃料を通路部14aの内部通路に噴射する。このように、自動二輪車1の燃料供給方式では、上流側インジェクタ21及び下流側インジェクタ22を用いた、いわゆるダブルインジェクタ方式が採用されている。
【0040】
上側ケース30の前部には、その前壁面を後方に窪ませてなる溝部31が形成されている。上側ケース30の溝部31には、吸気温センサ(図示せず)が固定されている。吸気温センサはエンジンEに吸入される空気の温度を計測し、当該センサに接続されたケーブル26を介してエンジンECU50に計測値を出力している。ケーブル26の先端には吸気温センサに接続されるコネクタ26a(図4参照)が設けられている。上側ケース30の溝部31には、コネクタ26aの振動を吸収するために当該コネクタ26aを覆うスポンジ材27が挿入されている。
【0041】
上側ケース30の溝部31より後方には、燃料タンク12と上下方向に対向する上壁面S1の一部を下方に凹ませた凹部32が形成されている。凹部32には、ジャイロセンサ10の全体が収容されている。これより、ジャイロセンサ10は、エアクリーナボックス20の底壁面S2よりも上方で、エアクリーナボックス20の周囲に配置されている。具体的には、ジャイロセンサ10は、複数の締結部材28によって、凹部32の内面32a(底面)に固定されている。即ち、ジャイロセンサ10は、当該センサ10よりも十分に大きな車両機能部品(エアクリーナボックス20)に固定されている。更に、ジャイロセンサ10が凹部32に収容されていることから、ジャイロセンサ10は、エアクリーナボックス20の前端部20aと後端部20bとの間に配置されている。
【0042】
また、エアクリーナボックス20の上方には燃料タンク12が設けられているため、ジャイロセンサ10は、燃料タンク12とエアクリーナボックス20との間に配置されている。燃料タンク12は、ジャイロセンサ10に対して十分に大きな形状であるため、車体上方から視ると、ジャイロセンサ10は燃料タンク12に隠れた位置に配置されている。
【0043】
図3に示すように、エアクリーナボックス20の上壁面S1は、前後方向に延びる車体中心線L0及び上下方向に延びる鉛直線V0いずれに対しても傾斜した傾斜面部S11,S12を有している。上壁面S1の第1傾斜面部S11は、その前端から後端にかけてやや上向きに傾斜している。他方、上壁面S1の第2傾斜面部S12は、その前端から後端にかけて下向きに傾斜している。凹部32は第2傾斜面部S12に形成されており、当該凹部32の固定面32aにジャイロセンサ10が固定されている。これにより、ジャイロセンサ10は、車体11の前後方向に延びる軸線(ロール軸)周りの角速度及び上下方向に延びる軸線(ヨーイング軸)周りの角速度を検出することが可能となる。
【0044】
ジャイロセンサ10は、凹部32の固定面32aに対してボルト28a及びナット28bによって前後方向に固定されている。ナット28bは、固定面32aに形成されたナット保持部33において保持されている。本実施形態では、ナット28bとして、袋ナットが用いられている。ナット28bは、上側ケース30の樹脂成形時にインサート成形されることによって、ナット保持部33に固着されている。また、ジャイロセンサ10の後部は、吸気接続路Pと前後方向位置が同じになるように配置されている。即ち、ジャイロセンサ10は、前後方向において、スロットルボディ14の近傍に配置されている。
【0045】
図4及び5に示すように、ジャイロセンサ10は、本体部10aと、フランジ部10bと、コネクタ接続部10cとを有している。本体部10aは略直方体状であり、その内部には振動素子及びIC等が実装された回路基板が収容されている。フランジ部10bは、本体部10aの前後方向両側から突出しており、ボルト28aが挿通される挿通孔を有している。コネクタ接続部10cは、本体部10aの上部から車幅方向一方側(本実施形態では、右側)に突出してコネクタ16aに接続される。
【0046】
また、ジャイロセンサ10が収容される凹部32は、固定面32aと、当該固定面32aの車幅方向両端からそれぞれ上側に突出する突出面32b,32cとによって形成されている。ここで、平面視で2つのボルト28aの軸心を互いに結ぶ仮想線VLと車幅方向他方側(本実施形態では、左側)の突出面32bとの間の距離L1は、仮想線VLとコネクタ接続部10cの先端面との間の距離L2よりも短い。また、仮想線VLは、車体中心線L0に対してやや左側にずれた状態で前後方向に延びている、即ち、ジャイロセンサ10は、車体11の車幅方向中心の近くに固定されている。
【0047】
ここで、エアクリーナボックス20には、エンジンEの吸気行程においてピストンの昇降運動によって生じる空気の吸入圧が伝達されるが、当該吸入圧はエンジンEの吸気弁が閉じると遮断され、エアクリーナボックス20からエンジンEに向けて流れる空気に吸気脈動が生じる。吸気脈動が発生すると、エアクリーナボックス20の外壁面は、その厚み方向に振動する。
【0048】
図2〜5に示すように、エアクリーナボックス20は、ジャイロセンサ10を支持する上壁面(支持面)S1の厚み方向の振動を抑制する補強構造29を有している。本実施形態では、補強構造29は、複数の板状のプレート材によって構成されている。第1プレート材29aは、エアクリーナボックス20の上壁面S1のうちジャイロセンサ10と対向する領域、具体的には、本体部10aの底壁面と固定面32aとの間に設けられている。そして、エアクリーナボックス20の内壁面において、第1プレート材29aが固定される固定面32aと上下方向に対向する領域には複数のリブ部34が設けられている。
【0049】
また、第2プレート材29b及び第3プレート材29cは、ジャイロセンサ10の周辺領域に固定されている。第2プレート材29bは、固定面32aにおいて本体部10aの右側に固定されており、第3プレート材29cは、エアクリーナボックス20の上壁面S1のうち凹部32に対して左側の領域に固定されている。
【0050】
以上のように構成された鞍乗型車両の一種である自動二輪車1は、以下の効果を奏する。
【0051】
ジャイロセンサ10は、エアクリーナボックス20の底壁面S2よりも上方で、かつ、車体重心位置Gに近いエンジンEの周辺であるエアクリーナボックス20の周囲に配置されている。具体的には、ジャイロセンサ10は、上下方向から見たエアクリーナボックス20の外縁よりも内側であって、エアクリーナボックス20の上壁面S1に固定されている。これにより、エアクリーナボックス20の底壁面S2によって、エンジンEの熱気が上方へと通流することが抑制される。よって、ジャイロセンサ10の温度上昇を防ぎつつ、車体重心位置Gにおける車体挙動に対してずれが少ない車体挙動を信号としてジャイロセンサ10が出力することができる。したがって、自動二輪車1において、耐熱性を確保しつつ、車体重心位置Gにおける車体挙動に近い出力信号を得ることが可能なセンサレイアウトを提供することができる。
【0052】
また、車体11に搭載される車両装備品の一種であるエアクリーナボックス20にジャイロセンサ10が固定されることによって、自動二輪車1の組立作業時に、エアクリーナボックス20にジャイロセンサ10が固定されたサブユニットを車体11に搭載することが可能となり、組立性を向上することができる。
【0053】
また、エアクリーナボックス20の後部がジャイロセンサ10とエンジンEとを結ぶ直線上に配置されているため、エアクリーナボックス20によってエンジンEの熱気がジャイロセンサ10へと到達するのを防ぐことができる。
【0054】
車両装備品(車両機能部品)であるエアクリーナボックス20は、ジャイロセンサ10への熱気の到達を防ぐ機能だけではなく、車両走行のためにエンジンEへの吸入空気を清浄にするという別の機能を有する。これにより、ジャイロセンサ10への熱気の到達を防ぐための専用部材を別途設ける構成と比べて、部品点数を削減することができる。
【0055】
ジャイロセンサ10が固定される固定部分(本実施形態では、エアクリーナボックス20のうち上側ケース30の凹部32)が、樹脂材料からなる上側ケース30の成型加工と同時に形成される。これにより、エアクリーナボックス20とは別体のブラケットを介してジャイロセンサとエアクリーナボックスとを固定する構成と比べて、部品点数及び組立工数を削減することができる。
【0056】
また、ジャイロセンサ10がエアクリーナボックス20(車両装備品)に固定される場合、当該エアクリーナボックス20におけるジャイロセンサ10の固定部分が樹脂材料によって形成されることで、エンジンEの振動又は凹凸な路面を走行することによる車体フレーム4の振動がジャイロセンサ10に伝わるのを防ぐことができる。
【0057】
エンジンEの熱気は、エアクリーナボックス20の底壁面S2に伝わった後、ジャイロセンサ10が取り付けられて支持される支持面(上壁面)S1へと通流する。ここで、エアクリーナボックス20において、底壁面S2と支持面S1との間に空気層Aが介在している。これにより、エンジンEからエアクリーナボックス20の底壁面S2に伝わった熱気が、支持面S1に直接伝わることを防ぐことができる。また、空気層Aが介在していることにより、底壁面S2から支持面S1との間の空間において、熱気がエンジンEへの吸入空気によって冷却される。これにより、エンジンEからエアクリーナボックス20の底壁面S2に伝わった熱気が支持面S1に伝わるのを更に防ぐことができる。また、エンジンEに近い位置にジャイロセンサ10を配置しつつ、ジャイロセンサ10の温度上昇を防ぐこともできる。
【0058】
また、単一のジャイロセンサで複数軸の軸周りの角速度を検出するためには、当該ジャイロセンサが固定される固定面を水平面に対して傾斜させる必要がある。本実施形態では、ジャイロセンサ10は、エアクリーナボックス20の上壁面S1のうち第2傾斜面部S12に形成された凹部32に固定されている。エアクリーナボックス20の上壁面S1は、空気がスロットルボディ14と連通する排気口40bに円滑に導かれるように水平面に対して傾斜して形成されるため、傾斜した固定面を形成し易い。したがって、ジャイロセンサ10のレイアウト設計が容易となる。
【0059】
車体中心線L0と平面視で重なるエンジンEに対して吸気経路を最小とするために、エアクリーナボックス20も車体11の車幅方向中央に配置され易い。そのため、エアクリーナボックス20に固定されるジャイロセンサ10も車体11の車幅方向中央に配置し易く、車幅方向に関して車体重心位置Gに対するジャイロセンサ10の取付位置を近づけ易くなる。よって、車体重心位置Gにおける車体挙動に近い出力信号を得ることができる。
【0060】
また、ジャイロセンサ10は、エアクリーナボックス20の上壁面S1に取り付けられて支持されているため、ジャイロセンサが車体フレームに固定される構成と比較して、エンジンEの振動に起因する振幅がジャイロセンサ10に伝わるのを防ぐことができ、当該センサ10の出力精度を向上させることができる。
【0061】
エアクリーナボックス20の上壁面S1に形成された凹部32にジャイロセンサ10が収容されているため、ジャイロセンサ10をエアクリーナボックス20に取り付けて支持する場合に、他部品(本実施形態では、燃料タンク12)のレイアウトに関する自由度を維持しつつ、ジャイロセンサ10を配置することができる。
【0062】
具体的には、ジャイロセンサ10が燃料タンク12とエアクリーナボックス20との間に配置する場合、大型化の要求がある燃料タンクを車体に搭載する場合、元来車載スペースの狭い鞍乗型車両では、燃料タンクのレイアウト設計に苦慮する。ジャイロセンサ10は、上壁面S1を下方に窪ませてなる凹部32に収容されているため、燃料タンク12の容量を確保しながら、燃料タンク12とジャイロセンサ10との干渉を防ぐことができる。
【0063】
また、ジャイロセンサ10が燃料タンク12とエアクリーナボックス20との間に配置されることによって、第三者がジャイロセンサ10にアクセスしにくくなり、当該第三者によってジャイロセンサ10が不所望に着脱されるのを防止することができる。更には、ジャイロセンサ10は車体11の上方から視ると燃料タンク12に隠れた位置に配置されているため、ジャイロセンサ10が紫外線照射によって劣化するのを防ぐことができると共に、走行中に跳ね上げられた泥水がジャイロセンサ10にかかるのも防ぐことができる。
【0064】
エアクリーナボックス20の前端部20aが車体フレーム4に、後端部20bがスロットルボディ14にそれぞれ弾性部材17,18を介して固定されている構成で、車体挙動に急激な変化が発生した場合、当該弾性部材17,18において車体挙動の急変化が緩和される。そのため、ジャイロセンサをエアクリーナボックスの前端部又は後端部に固定すると、緩和された車体挙動の変化がジャイロセンサに入力される可能性があり、車体自体の挙動変化に対応する正確な信号がセンサから出力されず、センサの出力精度が低下する可能性がある。本実施形態では、ジャイロセンサ10は、エアクリーナボックス20の前端部20aと後端部20bとの間の部分に固定されているので、弾性部材17,18を介した固定構造によって車体挙動の変化が緩和されることによる影響を受けにくくなり、ジャイロセンサ10の出力精度が低下するのを防ぐことができる。
【0065】
エアクリーナボックス20は、ジャイロセンサ10を支持する支持面(上壁面S1)の厚み方向の振動を抑制する補強構造29(プレート材29a〜29c)を有している。このように、エアクリーナボックス20にプレート材29a〜29cが設けられることによって、吸気脈動が発生することに起因してエアクリーナボックス20が振動するのを防ぐことができ、吸気脈動がジャイロセンサ10に与える影響を低減することができる。
【0066】
また、エアクリーナボックス20の内壁面において、第1プレート材29aが固定される固定面32aと上下方向に対向する領域には複数のリブ部34が設けられている。これにより、ジャイロセンサ10を支持するエアクリーナボックス20の壁面の剛性を大きくすることができ、吸気脈動が発生した場合でも、エアクリーナボックス20の壁面が振動するのを防ぎ、ジャイロセンサ10に与える影響を軽減することができる。
【0067】
更に、ジャイロセンサ10の後部は、エアクリーナボックス20とエンジンEとを接続する吸気接続路Pと前後方向位置が同じである。これにより、前後方向において、車体重心位置GであるエンジンEのスロットルボディ14の近傍にジャイロセンサ10を配置することができ、当該車体重心位置Gにおける車体挙動により近い出力信号を得ることができる。
【0068】
また、ジャイロセンサ10の車幅方向一方側に突出したコネクタ接続部10cがABS制御装置15とセンサハーネス16を介して接続されるにあたって、平面視で複数のボルト28aの軸心を互いに結んだ仮想線VLと車幅方向他方側の突出面32bとの間の距離L1が、当該仮想線VLとコネクタ接続部10cの先端面との間の距離L2よりも小さいため、ジャイロセンサ10をエアクリーナボックス20の凹部32に固定する際に、作業者が当該センサ10を固定する向きを誤ることを防ぎ、作業性を向上させることができる。
【0069】
(第2実施形態)
第2実施形態に係る自動二輪車は、第1実施形態に係る自動二輪車1のエアクリーナボックス20の形状を一部変形すると共に、ジャイロセンサ10の固定位置を変更したものである。以下では、第2実施形態に係るエアクリーナボックス20Aと、ジャイロセンサ10の固定位置について、第1実施形態と異なる点について説明する。
【0070】
図6は、第2実施形態に係る自動二輪車に設けられたエアクリーナボックス20Aの側面図である。図7は、第2実施形態に係るエアクリーナボックス20A周辺の背面図である。図6及び7に示すように、エアクリーナボックス20Aのうち上側ケース30Aの左壁面S3には、ジャイロセンサ10が収容される凹部32Aが形成されている。そして、ジャイロセンサ10は、凹部32Aの内面32Aaに固定されている。ここで、左壁面S3は、上壁面S1に比べて平面積が小さい。よって、エアクリーナボックス20の内部空間において吸気脈動が発生しても、左壁面S3に作用する振動の振幅は上壁面S1に比べて小さい。
【0071】
また、図7に示すように、ジャイロセンサ10の本体部10aの一部及びフランジ部10bは、カバー部材13、車体フレーム4(の前側フレーム9)及びエアクリーナボックス20Aによって区画された空間に配置されている。カバー部材13、前側フレーム9及びエアクリーナボックス20Aによって区画される空間では元来、各種のハーネスが前後方向に延びている。これ以外の構成は、第1実施形態と同様である。
【0072】
以上に説明した構成によれば、第1実施形態と同様に、ジャイロセンサ10は、エアクリーナボックス20Aの底壁面S2よりも上方でエアクリーナボックス20Aの周囲(この例では、エアクリーナボックス20のうち左壁面S3)に配置されていることにより、エアクリーナボックス20Aの底壁面S2によって、エンジンEの熱気が上方へと通流することが抑制されるので、ジャイロセンサ10の温度上昇を防ぎつつ、車体重心位置Gに近いエンジンEの周辺に当該センサ10を配置することで、車体重心位置Gにおける車体挙動に対してずれが少ない車体挙動を信号として出力することができる。したがって、耐熱性を確保しつつ、車体重心位置Gにおける車体挙動に近い出力信号を得ることが可能なセンサレイアウトを提供することができる。
【0073】
また、車体11に搭載される車両装備品の一種であるエアクリーナボックス20にジャイロセンサ10が固定されることによって、自動二輪車1の組立作業時に、エアクリーナボックス20にジャイロセンサ10が固定されたサブユニットを車体11に搭載することが可能となり、組立性を向上することができる。
【0074】
また、ジャイロセンサ10がエアクリーナボックス20Aの左壁面S3に固定されていることにより、ジャイロセンサ10が上下方向において他部品(例えば、燃料タンク12)と干渉するのを防止することができる。
【0075】
更に、ジャイロセンサ10が左壁面S3に形成された凹部32Aに収容されることにより、車幅方向においてカバー部材13及び車体フレーム4(前側フレーム9)に対して、ジャイロセンサ10が干渉するのを防止することができる。
【0076】
エアクリーナボックス20Aの内部空間において吸気脈動が発生した場合に上壁面S1に比べて平面積が小さい左壁面S3では、振動の振幅が小さいことから、ジャイロセンサ10を当該左壁面S3に取り付けて支持することにより、ジャイロセンサ10に対して支持面の振動が与える影響を低減することができる。また、エアクリーナボックス20Aに補強構造を設ける必要が無く、部品点数を削減することができる。
【0077】
また、ジャイロセンサ10はカバー部材13、前側フレーム9及びエアクリーナボックス20Aによって区画された空間に配置されていることにより、ハーネス等を収容するために元来、スペースが確保されていた箇所にジャイロセンサ10を配置することが可能となり、大型化の要求のある燃料タンク12及びエアクリーナボックス20Aの容量減少を防ぐことができる。
【0078】
なお、ジャイロセンサ10は、エアクリーナボックス20Aの右壁面に固定されてもよい。また、ジャイロセンサ10は、エアクリーナボックス20Aのうち下側ケース40Aの側壁面に固定されてもよい。この場合、エアクリーナボックス20Aの内部空間に設けられたエアクリーナエレメント41を交換する際に、ジャイロセンサ10を下側ケース40Aに固定したまま上側ケース30Aを取り外せばよい。これにより、エアクリーナエレメント41の交換作業によって、ジャイロセンサ10の固定位置が変動するのを防止でき、ジャイロセンサ10の出力精度を維持することができる。
【0079】
(第3実施形態)
第3実施形態に係る自動二輪車は、第1実施形態に係るジャイロセンサ10の固定位置を変更したものである。以下では、ジャイロセンサ10の固定位置について、第1実施形態と異なる点について説明する。
【0080】
図8は、第3実施形態に係る自動二輪車に設けられたエアクリーナボックス20の図3相当の図である。図8に示すように、ジャイロセンサ10は、エアクリーナボックス20の上側ケース30Bのうち第1傾斜面部S11に固定されている。即ち、ジャイロセンサ10は、エアクリーナボックス20の上壁面S1の前部に固定されている。これ以外の構成は、第1実施形態と同様である。
【0081】
以上に説明した構成によれば、第1実施形態と同様に、ジャイロセンサ10は、エアクリーナボックス20Aの底壁面S2よりも上方でエアクリーナボックス20Aの周囲(この例では、エアクリーナボックス20のうち上壁面S1の前部)に配置されていることにより、エアクリーナボックス20Aの底壁面S2によって、エンジンEの熱気が上方へと通流することが抑制されるので、車体重心位置Gに近いエンジンEの周辺でジャイロセンサ10を配置しつつ、当該センサ10の温度上昇を防ぐことができる。
【0082】
また、車体11に搭載される車両装備品の一種であるエアクリーナボックス20にジャイロセンサ10が固定されることによって、自動二輪車1の組立作業時に、エアクリーナボックス20にジャイロセンサ10が固定されたサブユニットを車体11に搭載することが可能となり、組立性を向上することができる。
【0083】
また、ジャイロセンサ10は、エアクリーナボックス20の上壁面S1のうち第1傾斜面部S11に固定されていることにより、第1傾斜面部S11は、前後方向に延びる車体中心線及び上下方向に延びる鉛直線いずれに対しても傾斜しているため、ジャイロセンサ10はロール軸周りの角速度及びヨーイング軸周りの角速度を検出することが可能となる。
【0084】
なお、本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲でその構成を変更、追加又は削除することができる。車体挙動センサ10は、エンジンEの真上に配置される車両装備品の底壁面よりも上方に配置されることが好ましい。前述の実施形態では、ジャイロセンサ10はエアクリーナボックス20,20Aの底壁面S2より上方に配置されていたが、この構成に限らず、エンジンEの上方に設けられる他の車両装備品の底壁面よりも上方に配置されてもよい。例えば、燃料タンクからの燃料蒸発量を規制するエバポレータユニット、燃料タンクからエンジンに燃料を供給する燃料ポンプユニット、各種機器のECU、リレーボックス又はヒューズボックス等の他の車両装備品をエンジンEの上方に設けることで、当該車両装備品の底壁面よりも上方に車体挙動センサ10を配置されてもよい。
【0085】
また、車体挙動センサ10は、エアクリーナボックス20よりも上方に配置される車両装備品、例えば、燃料タンク又は燃料配管に固定されてもよい。このように、車体挙動センサ10へ向かう熱気を防ぐ位置に配置される車両装備品と、車体挙動センサ10が固定されるセンサ固定用の車両装備品とが異なる場合も本発明に含まれる。この場合、センサ固定用の車両装備品は、車体挙動センサ10の固定する機能の他に、車両走行のために別の機能を有する。これにより、車体挙動センサを固定するための専用部材を別途設ける構成と比べて、部品点数を削減することができる。また、エンジンEの振動又は凹凸な路面を走行することによる車体フレーム4の振動が車体挙動センサ10に伝わるのを防ぐために、センサ固定用の車両装備品は樹脂材料によって形成されていることが好ましく、車体挙動センサはセンサ固定用の車両装備品に振動吸収部材を介して固定されてもよい。
【0086】
また、前述の実施形態では、ジャイロセンサ10は締結部材28(ボルト28a及びナット28b)によってエアクリーナボックス20の外壁面に固定されていたが、この構成に限らない。例えば、金属製のブラケットにジャイロセンサ10を締結部材(例えば、ボルト及びナット)で固定した後、当該ブラケットをエアクリーナボックス20の外壁面に弾性部材を介して固定してもよい。また、前述の実施形態では、ジャイロセンサ10は、エアクリーナボックス20のうち上壁面S1の第2傾斜面部S12に固定されることで、ロール軸周りの角速度及びヨーイング軸周りの角速度を検出していたが、この構成に限らず、ジャイロセンサはロール軸、ヨーイング軸、ピッチング軸いずれかの軸周りの角速度を検出するセンサであってもよいし、3軸すべての軸周りの角速度を検出するセンサであってもよい。また、車体挙動センサ10はジャイロセンサに限らず、自動二輪車の前後、上下、左右いずれかの方向の加速度を検出する加速度センサ等であってもよい。
【0087】
前述の実施形態では、車体挙動センサ10は、ABS制御及びエンジン出力の制御のために用いられていたが、車体11に搭載される他のアクチュエータの制御のために用いられてもよい。例えば、車体挙動センサ10の出力に基づいて、旋回方向に補助ランプを点灯させる点灯制御が実行されてもよい。また、車体挙動センサ10の出力結果を記録することで、車体挙動を走行後に確認し、運転操作の向上に利用してもよい。また、前述の実施形態では、補強構造29として、板状のプレート材29a〜29cをジャイロセンサ10が支持される外壁面に固定する構成であったが、この構成に限らず、例えば、外壁面にリブを形成することでエアクリーナボックスの剛性を向上させる構成であってもよい。また、鞍乗型車両は自動二輪車1に限らず、例えば、ATV(All Terrain Vehicle:不整地走行車両)等であってもよい。
【符号の説明】
【0088】
1 自動二輪車(鞍乗型車両)
2 前輪
3 後輪
10 ジャイロセンサ(車体挙動センサ)
12 燃料タンク
20 エアクリーナボックス(車両装備品)
29 補強構造
32 凹部
E エンジン
P 吸気接続路
S1 上壁面(外壁面,支持面)
S2 底壁面
S3 左壁面(側壁面,支持面)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8