特許第6613145号(P6613145)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6613145
(24)【登録日】2019年11月8日
(45)【発行日】2019年11月27日
(54)【発明の名称】車両のイグニッションスイッチ
(51)【国際特許分類】
   H01H 19/00 20060101AFI20191118BHJP
   H01H 35/00 20060101ALI20191118BHJP
【FI】
   H01H19/00 Y
   H01H35/00 T
   H01H35/00 M
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-5037(P2016-5037)
(22)【出願日】2016年1月14日
(65)【公開番号】特開2017-126480(P2017-126480A)
(43)【公開日】2017年7月20日
【審査請求日】2018年10月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000170598
【氏名又は名称】株式会社アルファ
(74)【代理人】
【識別番号】100093986
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 雅男
(74)【代理人】
【識別番号】100128864
【弁理士】
【氏名又は名称】川岡 秀男
(72)【発明者】
【氏名】岡田 高裕
【審査官】 関 信之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−149232(JP,A)
【文献】 特開平05−028879(JP,A)
【文献】 特開2010−015881(JP,A)
【文献】 特開2002−029334(JP,A)
【文献】 特開2011−165645(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第1657475(EP,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 19/00
H01H 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータの回転角度に応じて所定の出力端子を電源端子に短絡させ、当該出力端子に給電する車両のイグニッションスイッチであって、
前記ロータの回転中心周りに適数の受光素子と発光素子とが実装される実装基板と、
前記ロータに連結されて前記実装基板の素子実装面上を回転駆動され、ロータの複数の回転角度の各々に対して少なくとも一の発光素子と、当該動作角に対して予め定められた適数の受光素子に投受光部を正対させ、正対した受光素子に発光素子からの照射光を受光させる導光部材とを有するとともに、
前記実装基板には、前記発光素子からの照射光を受光した受光素子に対応する出力端子を電源端子に電気的に接続するスイッチ回路が実装される車両のイグニッションスイッチ。
【請求項2】
前記導光部材は、先端に直角プリズム状の投受光部を備えた導光脚部を回転中心から放射状に突設して形成される請求項1記載の車両のイグニッションスイッチ。
【請求項3】
前記導光部材は、透明合成樹脂材を射出成形して形成される請求項2記載の車両のイグニッションスイッチ。
【請求項4】
前記実装基板は、前記受発光素子に対峙して透孔が開設される天井壁を備えたベース部材に密閉状に収容されるとともに、
発光素子は、ベース部材の天井壁と実装基板との間に介装される筒状の遮光パッキンにより包囲され、
かつ、前記導光部材は前記ベース部材に対して相対回転駆動されるロータに形成された嵌合凹部内に嵌合状態で固定されてベース部材の天井壁に沿って回転駆動される請求項1、2または3記載の車両のイグニッションスイッチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両のイグニッションスイッチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両のエンジン始動操作に使用するイグニッションスイッチは、ロータへの回転操作により可動電極を固定電極に対して回転させ、所定の回転角度の時に固定電極と電源電極とを可動電極を介して機械的に短絡させ、所定の固定電極に給電する構成が取られているが、機械的接点を含むこの種のイグニッションスイッチは、スイッチング動作時のアーク放電、あるいは機械的磨耗による接点の劣化が避けられないという欠点がある。
【0003】
この欠点を解消するために、特許文献1に記載のような光学的な結合を利用したロータリースイッチを利用することも可能である。
【0004】
この従来例において、ロータリースイッチは、受発光素子が実装されるベースと、ベースに対して回転中心周りに回転駆動され、回転中心、およびその周囲に透孔を開設した回転板と、回転板上に固定されるプリズムとを有する。
【0005】
ベース上には、回転板の回転中心に対応する位置に発光素子が、上記回転中心を中心とする同一円周上に複数の受光素子が配置されており、回転板を回転させて透孔を発光素子に対峙させると、発光素子とプリズムに対応する受光素子とが光学的に結合され、受発光素子に対応する出力端子間が電気的に短絡される。
【0006】
しかし、上述した従来例をイグニッションスイッチの接点部に転用した場合、発光素子を回転板の回転中心に配置し、回転軸内に光路を設定すると、ベース上に中空の回転軸を立設させることに加え、ベースの厚み方向中心部に発光素子を実装させる必要が生じるために、紙フェノール等の汎用の基材を使用したプリント基板上に全ての受発光素子を表面実装することが構造上困難となり、製造コストが上昇してしまうという問題がある。
【0007】
また、上述した従来例においては、スイッチの切り替えに際して途上にある他の受光素子との光結合が発生し、これを防ぐためには、当該受光素子上を通過する際には、発光素子の発光を停止させる等、面倒な制御が必要になるという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平5-28879号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、以上の欠点を解消すべくなされたもので、接点の摩耗を防止すること可能で、かつ、発光素子への特別な制御を要することなく、所望の出力端子に給電することのできる車両のイグニッションスイッチの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば上記目的は、
ロータ1の回転角度に応じて所定の出力端子を電源端子に短絡させ、当該出力端子に給電する車両のイグニッションスイッチであって、
前記ロータ1の回転中心周りに適数の受光素子2と発光素子3とが実装される実装基板4と、
前記ロータ1に連結されて前記実装基板4の素子実装面上を回転駆動され、ロータ1の複数の回転角度の各々に対して少なくとも一の発光素子3と、当該動作角に対して予め定められた適数の受光素子2に投受光部5を正対させ、正対した受光素子2に発光素子3からの照射光を受光させる導光部材6とを有するとともに、
前記実装基板4には、前記発光素子3からの照射光を受光した受光素子2に対応する出力端子を電源端子に電気的に接続するスイッチ回路が実装される車両のイグニッションスイッチを提供することにより達成される。
【0011】
本発明において、実装基板4上には適数の受発光素子2、3が実装され、該実装基板4に沿って導光部材6が回転駆動される。導光部材6は複数の投受光部5を有しており、発光素子3からの発光光は発光素子3に対峙して位置する投受光部5から導光部材6内に導入され、導光部材6の壁面で反射を繰り返した後、受光素子2に対峙して位置する投受光部5から出射され受光素子2を照射する。
【0012】
導光部材6の壁面には、必要に応じ、投受光部5からの導入光の壁面からの外部への漏光等を防ぎ他の投受光部5からの出射光量を増加させるために、反射膜等を形成することができる。
【0013】
発光素子3の発光光が導光部材6を経由して受光素子2により受光されると、受光素子2から光検出信号が出力され、該光検出信号により適宜のスイッチ回路が駆動されて受光素子2に対応して配置された出力端子と、電源端子との電気的接続が行われ、当該出力端子に出力電位が発生する。スイッチ回路の駆動は、受光素子2にフォトダイオードを使用し、受光時の検出電流、あるいは抵抗値の変化によりトランジスタスイッチ回路のトランジスタのベース部材10への電流供給を断接する等、種々の周知の手法を使用することができる。
【0014】
出力端子と電源端子との間の断接に機械的接点を含まない本発明において、接点の劣化による絶縁不良等の問題が完全に解消される。
【0015】
また、実装基板4に導光路を備えた回転軸を立設する必要がないために、構造を簡単にすることができる。
【0016】
さらに、受発光素子2、3の双方を導光部材6の回転中心周りに配置する本発明において、投受光部5が発光素子3に対峙しない回転位置においては、導光部材6への発光素子3からの検出光の供給はされることがないために、例えば、同一円周上に複数の受光素子2が配置される場合であっても、投受光部5の発光素子3に対応する位置を異らせることによって、受光素子2の受光タイミングを実装位置の配列から独立させることができる。
【0017】
この結果、導光部材6の投受光部5と受発光素子2、3の実装基板4上での位置を好適に設定するだけで、発光素子3に対する発光制御をすることなく受光素子2での受光タイミングを適宜設定することが可能になる。
【0018】
加えて、実装基板4には発光素子3に光結合された受光素子2をトリガとしてスイッチング動作するスイッチ回路が実装されているために、従来の機械接点式のイグニッションスイッチの接点部分を交換するだけで同様の機能を有するイグニッションスイッチを容易に構成することができるために、機械接点式のイグニッションスイッチに対する高い互換性を保持することが可能になる。
【0019】
また、上記目的を達成するための本発明の他の態様として、
前記導光部材6は、先端に直角プリズム状の投受光部5を備えた導光脚部7を回転中心から放射状に突設して形成される車両のイグニッションスイッチを構成することができる。
【0020】
導光部材6は、投受光部5における内部への導光と、外部との境界壁面からのロスが防止できるものであれば、例えば、円板状の透明基体の壁面に投受光部5を除いて反射膜を形成したものを使用することが可能であるが、投受光部5を実装基板4に平行な投受光面と、透明基体中を実装基板4に対して平行方向に進行する導入光を実装基板4がわに屈折させる実装基板4に対して45°程度傾いた反射用傾斜面とを有する直角プリズム状に形成することにより、導光部材6をエッジ型バックライトのように作用させることができる。
【0021】
また、プリズム状の投受光部5を導光脚部7の先端に形成することにより、導光脚部7の長さ、すなわち回転中心から投受光部5までの間隔を適宜変更し、かつ、投受光素子2を径の異なる同心円上に配置することにより、接点数が多いものにも対応することが可能になる。
【0022】
この場合、
前記導光部材6は、透明合成樹脂材を射出成形して形成される車両のイグニッションスイッチを構成することにより製造コストを低減させることが可能になる。
【0023】
さらに、上記目的を達成するための本発明の他の態様として、
前記実装基板4は、前記受発光素子2、3に対峙して透孔8が開設される天井壁9を備えたベース部材10に密閉状に収容されるとともに、
発光素子3は、ベース部材10の天井壁9と実装基板4との間に介装される筒状の遮光パッキン11により包囲され、
かつ、前記導光部材6は前記ベース部材10に対して相対回転駆動されるドライバに形成された嵌合凹部12内に嵌合状態で固定されてベース部材10の天井壁9に沿って回転駆動される車両のイグニッションスイッチを構成することができる。
【0024】
本発明において、実装基板4は密閉状のベース部材10に収容されて外光の侵入が防止され、さらに、実装基板4上の発光素子3は遮光パッキン11により包囲されて実装基板4上の受光素子2への直接照射が防止される。
【0025】
さらに、透孔8を経由して上記発光素子3からの発光光が導入され、受光素子2を照射する導光部材6は、ドライバの嵌合凹部12に嵌合されて表面を除く全面が遮蔽されるため、簡単な構造で外乱光の侵入を防止することが可能になる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、発光素子と受光素子との光結合の有無により接点を操作するために、接点の摩耗による性能劣化を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】イグニッションスイッチが組み込まれたステアリングロック装置を示す断面図である。
図2】イグニッションスイッチの分解斜視図である。
図3】イグニッションスイッチを示す図で、(a)は正面図、(b)は(a)の3B-3B線断面図、(c)は(b)の3C-3C線断面図である。
図4】導光部材を示す図で、(a)は正面図、(b)は(a)の4B方向矢視図、(c)は(a)の4C方向矢視図、(d)は(a)の4D-4D線断面図である。
図5】ベース部材を示す図で、(a)は正面図、(b)は背面図である。
図6】本発明の動作を示す図で、(a)はLOCKポジション、(b)はONポジション、(c)はSTARTポジションを示す図である。
図7】本発明の動作シーケンスを示す図である。
図8】導光部材の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1に本発明のイグニッションスイッチが組み込まれたステアリングロック装置を示す。ステアリングロック装置は、ステアリングカラムに固定されるフレーム13、フレーム13内に挿入されるプラグ14、プラグ14に連結されて該プラグ14ととともに回転するカム部材15、およびプラグ14への回転操作により上記ステアリングシャフトに係脱してステアリングの操作を禁止、解除するロックピース16とを有する。
【0029】
プラグ14は真正な解錠キーによって、初期回転位置であるLOCK位置と、上記イグニッションスイッチの接点の接続をエンジン起動状態に変更するSTART位置との間を回転操作することができる。LOCK位置とSTART位置との間には、イグニッションスイッチにおける接点接続がON状態となる回転位置が設定され、プラグ14の前方への抜去を防止するためにフレーム13に固定されるキャップ部材17には、初期回転位置、およびイグニッションスイッチにおける接点切り替え位置を表示するために"LOCK"、"ON"、および"START"というポジションマーク(図示せず)が表示される。
【0030】
イグニッションスイッチは、上記フレーム13の後端に開設されたイグニッション装着開口13aに固定されて装着され、図2以下に示すように、ハウジング18内に収容されるロータ1、ベース部材10、および実装基板4を有する。
【0031】
ハウジング18は、外周壁に上記フレーム13への取付用係止片18aを備えて後方(以下、図2において左側を「前方」とする。)に開放された有底筒形状に形成され、筒部内上記ロータ1を回転自在に保持する。
【0032】
ロータ1は前面に十字形状の連結凹部1aを備えており、イグニッションスイッチをフレーム13に固定した状態でカム部材15の後端部が連結凹部1aに嵌合し、カム部材15、すなわちプラグ14と回転方向に連結される。
【0033】
さらに、ロータ1には後方に向けて開放される嵌合凹部12が設けられて導光部材6が嵌め込まれる。嵌合凹部12は導光部材6の側壁面との間に可及的に隙間が生じないように形成されて漏光が防止される(図3(b)参照)。
【0034】
図4に示すように、導光部材6は、アクリル等の透明な合成樹脂材を射出成形して形成され、位置決め孔6aから放射状に3本の導光脚部7を突設して形成される。
【0035】
各導光脚部7は等厚で、2本は矩形状に、1本は扇形状に形成される。また、位置決め孔6aから各導光脚部7の先端までの間隔は等しく、各導光脚部7の先端に投受光部5が形成される。
【0036】
投受光部5は、図4(c)、(d)に示すように、導光脚部7の先端壁面と前部壁面との間に45°の面取を施して形成される斜面5bと、互いに直交する二面の入出射面5cとを備えて直角プリズム状に形成される。
【0037】
したがって本例において、図4(c)、(d)に示すように、いずれかの投受光部5の後部壁面に位置する入出射面5cから厚み方向に照射された光(L1)は、該入出射面5cから導光部材6内に導入された後、斜面5bにより導光部材6の前後面に沿う方向に折り曲げられ、導光部材6の前後面壁において全反射しながら導光部材6の前後面に沿って導光脚部7内を進行する。
【0038】
以上のようにして導光脚部7内を進行する光(L2)は、導光脚部7の交差部位に形成された反射面6bにより再び反射されて他の導光脚部7の投受光部5に向かい、該投受光部5における斜面5bにより導光脚部7の厚み方向への光に折り曲げられ、入出射面から照射される(L3)。
【0039】
後述するように、本例において、スイッチ動作時には、矩形の2本の導光脚部7は発光素子3の照射光の受光用として、扇型の導光脚部7は受光素子2への投光用として機能しており、上記反射面は、2本の矩形状の導光脚部7のいずれかから導入された光を効率的に扇形状の導光脚部7方向に反射される形状に形成することができる。
【0040】
以上のように構成される導光部材6は、ロータ1に嵌合した状態で後部壁面がロータ1の後部壁面とほぼ同一面に位置し、ロータ1の回転に伴って各投受光部5の入出射面5cがロータ1の回転軸に対して直交平面内を回転する。
【0041】
上記ベース部材10は、上記導光部材6の回転面に平行な前面壁(天井壁9)の外周から後方に側壁を立設して円筒形状に形成され、上記天井壁9の前方壁面の中心部には、導光部材6の位置決め孔6aに嵌合する嵌合突起10aが突設される。
【0042】
また、天井壁9には、嵌合突起10aを包囲するように環状突部10bが突設され、導光部材6が回転する際の投受光部5との摺接が防止される。
【0043】
さらに、ベース部材10の天井壁9には3個のスリット状の透孔8が開設される。これら透孔8は、嵌合突起10aを中心とし、径寸法が上記導光部材6の投受光部5の回転径に一致する円周上に配置される。図5に示すように、これら透孔8間の角度は、プラグの"LOCK"、"ON"間の操作角度(θ1)、"ON"、"START"間の操作角度(θ2)に一致しており、LOCK用透孔8(以下、透孔8を区別する際には、図5(a)においてθ1の基線側透孔8から時計回りに「LOCK用透孔8」、「ON用透孔8」、「START用透孔8」とする。)の周りには環状のパッキン保持溝10cが形成される。
【0044】
一方、実装基板4は上記ベース部材10の前面壁に平行姿勢でベース部材10の後方に配置される。図3(c)に示すように、実装基板4上には、ベース部材10のLOCK用透孔8に対向する位置に発光素子3が、ON用透孔8、およびSTART用透孔8に対する対向位置に受光素子2が実装される。
【0045】
また、上記ベース部材10のパッキン保持溝10cには後方に向けて漸次広がる截頭円錐筒形状の遮光パッキン11の前端部が嵌合される。この遮光パッキン11は、図3(b)に示すように、実装基板4をハウジング18に固定した状態で、後端が実装基板4の実装面に圧接し、発光素子3の実装基板4表面への漏光が防止される。
【0046】
したがって本例において、イグニッションスイッチを組み立てた状態で受発光素子2、3はベース部材10の透孔8に各々対応しており、プラグがLOCKポジションにあるときには、図6(a)に示すように、導光部材6は、扇形の導光脚部7の投受光部5を発光素子3に対向させた姿勢をとる。
【0047】
この状態で、発光素子3からの発光光はいずれの受光素子2をも照射しないために、図7に示すように、ON用受光素子2(ON用透孔8に対向する受光素子2)とSTART用受光素子2(START用透孔8に対向する受光素子2)とは双方受光することがない。
【0048】
上記実装基板4上には、図外のスイッチ回路が実装されており、ハウジング18の蓋部材19に固定されるコネクタケース20内の出力端子に接続される。コネクタ出力端子は、電源端子、ON出力端子、START出力端子を含み、スイッチ回路は、対応する受光素子2の受光により発生する信号により電源と各出力端子との接続を制御するように構成される。
【0049】
この結果、プラグ14がLOCKポジションにあるときには、上述したようにON用受光素子2、およびSTART用受光素子2は受光しないために、ON出力端子、START出力端子ともに電源端子に接続されることはなく、端子電圧は出力されない。
【0050】
この状態からプラグ14をONポジションまで回転操作すると(操作角θ1)、図6(b)に示すように、導光部材6の一方の矩形状導光脚部7が発光素子3に対応するとともに、扇形の導光脚部7がON用受光素子2に正対する。この結果、発光素子3の発光光は導光部材6を経て扇形導光脚部7の投受光部5から出力され、対応するON用受光素子2を照射し、図7に示すように、ON出力端子への給電が開始される。
【0051】
これからさらに、プラグ14をθ2だけ回転させてSTARTポジションに位置させると、他方の矩形状導光脚部7が発光素子3に対応するとともに、扇形導光脚部7はON用受光素子2とSTART用受光素子2に対応する。この結果、ON用受光素子2とSTART用受光素子2の双方が受光し、ON出力端子とSTART出力端子の双方に出力が発生する。
【0052】
また、STARTポジションからLOCKポジションにプラグ14を回転操作すると、まず、ONポジションへの移行に伴ってSTART出力端子への出力が停止された後、LOCKポジションへの移行によりON出力端子への給電が停止される。
【0053】
なお、図6において、ONポジションとSTARTポジションとの間を移行する際の発光素子3に正対する矩形状導光脚部7の入れ替わりに際して導光部材6への入光が瞬断し、ON出力端子への出力が瞬断するが、これを防ぐために、図8に示すように、2本の矩形状導光脚部7まとめて扇形に形成してもよい。
(付記)
(付記1)ロータ1の回転角度に応じて所定の出力端子を電源端子に短絡させ、当該出力端子に給電する車両のイグニッションスイッチであって、
前記ロータ1の回転中心周りに適数の受発光素子2、3、および前記発光素子3に光結合した受光素子2に対応する出力端子を電源端子に電気的に接続するスイッチ回路を実装した実装基板4と、
ロータ1に連結されて前記実装基板4の素子実装面上を回転駆動され、ロータ1の複数の回転角度の各々に対して少なくとも一の発光素子3と、当該動作角に対して予め定められた適数の受光素子2に投受光部5を正対させて受光素子2を発光素子3に光結合させる導光部材6とを有する車両のイグニッションスイッチ。
(付記2)前記導光部材6は、先端に直角プリズム状の投受光部5を備えた導光脚部7を回転中心から放射状に突設して形成される付記1記載の車両のイグニッションスイッチ。
(付記3)前記導光部材6は、透明合成樹脂材を射出成形して形成される付記2記載の車両のイグニッションスイッチ。
(付記4)前記実装基板4は、前記受発光素子2、3に対峙して透孔8が開設される天井壁9を備えたベース部材10に密閉状に収容されるとともに、
発光素子3は、ベース部材10の天井壁9と実装基板4との間に介装される筒状の遮光パッキン11により包囲され、
かつ、前記導光部材6は前記ベース部材10に対して相対回転駆動されるドライバに形成された嵌合凹部12内に嵌合状態で固定されてベース部材10の天井壁9に沿って回転駆動される付記1、2または3記載の車両のイグニッションスイッチ。
(付記5)回転操作可能なロータ1と、
前記ロータ1の回転中心周りに適数の受発光素子2、3を実装した実装基板4と、
前記ロータ1に連結されて前記実装基板4の素子実装面上を回転駆動され、ロータ1の複数の回転角度の各々に対して少なくとも一の発光素子3と、当該動作角に対して予め定められた適数の受光素子2に投受光部5を正対させて受光素子2を発光素子3に光結合させる導光部材6とを有するロータリースイッチ。
【符号の説明】
【0054】
1 ロータ
2 受光素子
3 発光素子
4 実装基板
5 投受光部
6 導光部材
7 導光脚部
8 透孔
9 天井壁
10 ベース部材
11 遮光パッキン
12 嵌合凹部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8